アンテナスイッチ回路
【課題】送信系及び又は受信系のスイッチングダイオードを削除して、部品点数の削減とコストダウンを図ること。
【解決手段】信号入出力端1に対して受信回路10及び送信回路20が並列に接続され、受信回路10側にはλ/4のストリップライン11及びスイッチングダイオード16を設け、送信回路20側にはオフ時のインピーダンスを高インピーダンス化するストリップライン21を設ける。ストリップライン21は、分岐点P側から見たストリップライン21とオフ状態でのPA22との接続回路のインピーダンスがオープン状態とみなされる高インピーダンス状態となるようにストリップライン21を設定する。
【解決手段】信号入出力端1に対して受信回路10及び送信回路20が並列に接続され、受信回路10側にはλ/4のストリップライン11及びスイッチングダイオード16を設け、送信回路20側にはオフ時のインピーダンスを高インピーダンス化するストリップライン21を設ける。ストリップライン21は、分岐点P側から見たストリップライン21とオフ状態でのPA22との接続回路のインピーダンスがオープン状態とみなされる高インピーダンス状態となるようにストリップライン21を設定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種無線通信装置においてアンテナに接続する回路を切替えるためのアンテナスイッチ回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、移動体通信装置などにおいて、送信回路とアンテナとの接続及び受信回路とアンテナとの接続を切り換えるためにアンテナスイッチ回路が用いられており、送信信号の漏れを少なくしたアンテナスイッチ回路が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図13は、特許文献1記載のアンテナスイッチ回路の回路構成図である。アンテナスイッチ回路100、アンテナ端子Ant、送信端子Tx及び受信端子Rxを有しており、送信端子Txとアンテナ端子Antとの間に第1のスイッチングダイオードD1が配置され、アンテナ端子Antと受信端子Rxとの間に第1のストリップラインSL1が配置されている。第1のストリップラインSL1は送信信号の通信周波数の概略1/4波長の長さに相当する線路長に設定されている。また、第1のストリップラインSL1の受信端子Rx側端部B点とグランドとの間に、第2のスイッチングダイオードD2が直流成分遮断用のバイパスコンデンサである第1のコンデンサC1を介して配置されている。制御端子Vcは、送信端子Txと第1のスイッチングダイオードD1との間に配置され、第1、第2のスイッチングダイオードをオン・オフさせる制御電圧が供給される。制御電圧接地回路101は、抵抗R1と、第2のコンデンサC2と、第2のストリップラインSL2とからなり、第2のスイッチングダイオードD2と第1のコンデンサC1との接続点C点に接続される。第2のコンデンサC2及び第2のストリップラインSL2は、グランドに接続され、制御端子Vcに印加された送受信を切り替える制御電圧は、この回路によって接地されることとなる。
【0004】
上述したアンテナスイッチ回路100は、制御端子Vcに電圧を印加することによって、スイッチングダイオードD1、D2をオン・オフし、送受信信号を切り換える回路として機能する。このアンテナスイッチ回路100では、制御電圧接地回路101における抵抗R1が、第2のストリップラインSL2を介してグランドに接続されていることにより、第2のストリップラインSL2が制御電圧接地回路101のインピーダンスを高くするので、第1のストリップラインSL1の受信端子側端部B点において、第2のスイッチングダイオードD2と第1のコンデンサC1による直列共振によって、インピーダンが極小となる。従って、第1のストリップラインSL1の共振時に、第1のストリップラインSL1のアンテナ端子Ant側端部A点のインピーダンスが極大となり、送信信号の漏れを少なくすることができる。
【特許文献1】特開2004−120647号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のアンテナスイッチ回路は、送信系及び受信系の双方にスイッチングダイオードD1、D2を備える必要があるため、回路素子数が増大すると共にコストが高くなるという問題がある。
【0006】
本発明は、送信系の損失悪化を抑制した上で送信系のスイッチングダイオードを削除することができ、部品点数の削減とコストダウンを図ることのできるアンテナスイッチ回路を提供することを目的とする。
【0007】
また本発明は、送信系及び受信系のスイッチングダイオードをそれぞれ削除することができ、部品点数の削減とコストダウンを図ることのできるアンテナスイッチ回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のアンテナスイッチ回路は、アンテナが接続されたアンテナ端子と、前記アンテナ端子と当該アンテナ端子に接続された第一の回路との間に挿入された第一のストリップラインと、前記アンテナ端子と当該アンテナ端子に対して前記第一の回路と並列に接続された第二の回路との間に挿入された第二のストリップラインとを備え、前記アンテナ端子から見た前記第一のストリップラインと非動作状態での前記第一の回路との接続回路のインピーダンスがオープン状態とみなされる高インピーダンス状態となるように前記第一のストリップラインを設定したことを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、第二の回路を動作状態とし、かつ第一の回路を非動作状態とした時に、アンテナ端子から見た第一のストリップラインと第一の回路との接続回路のインピーダンスがオープン状態とみなされる高インピーダンス状態となるので、アンテナ端子と第一の回路との間にスイッチングダイオードを設けること無く、例えばアンテナから第二の回路へ入力すべき受信信号又は第二の回路からアンテナへ送出すべき送信信号の第二の回路への漏れ(電力損失)を抑制することができ、少なくとも1つのスイッチングダイオードを削減できる。
【0010】
また本発明は、上記アンテナスイッチ回路において、前記アンテナ端子から見た前記第一のストリップラインと動作状態での前記第一の回路との接続回路のインピーダンスが電力損失を抑えた所望のインピーダンスに整合するように前記第一のストリップラインを設定したことを特徴とする。
【0011】
この構成により、第一の回路の非動作時には第一の回路側を高インピーダンス状態にすることができると共に、第一の回路の動作時には第一の回路側を電力損失を抑えた所望のインピーダンスに整合させることができるので、第一の回路の動作状態のオン/オフによって高インピーダンス状態と電力損失の少ないインピーダンス整合状態とを作り出すことができ、切替信号を供給することなく第一の回路の動作状態のオン/オフによって動作モードの切替が可能になる。
【0012】
また本発明は、上記アンテナスイッチ回路において、前記アンテナ端子から見た前記第二のストリップラインと非動作状態での前記第二の回路との接続回路のインピーダンスがオープン状態とみなされる高インピーダンス状態となる一方、前記アンテナ端子から見た前記第二のストリップラインと動作状態での前記第二の回路との接続回路のインピーダンスが電力損失を抑えた所望のインピーダンスに整合するように、前記第二のストリップラインを設定したことを特徴とする。
【0013】
この構成により、第一の回路を動作状態とし、かつ第二の回路を非動作状態とした時に、アンテナ端子から見た第二のストリップラインと第二の回路との接続回路のインピーダンスがオープン状態とみなされる高インピーダンス状態となるので、アンテナ端子と第二の回路との間にスイッチングダイオードを設けること無く、例えばアンテナから第一の回路へ入力すべき受信信号又は第一の回路からアンテナへ送出すべき送信信号の第一の回路への漏れ(電力損失)を抑制することができ、双方のスイッチングダイオードを削減できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、送信系及び又は受信系のスイッチングダイオードを削除することができ、部品点数の削減とコストダウンを図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態は、送信系のスイッチングダイオードを削除したアンテナスイッチ回路の例である。図1は第1の実施の形態に係るアンテナスイッチ回路の回路図である。アンテナ端子となる信号入出力端1は図示しないアンテナに接続され、バンドパスフィルタ(BPF)2及び直流カットコンデンサ3を介して第二の回路となる受信回路10及び第一の回路となる送信回路20の分岐点Pに接続される。
【0016】
分岐点Pに接続された受信回路10は、第二のストリップラインとしてのストリップライン11を経由してローノイズアンプ(LNA)12が接続され、さらに図示しない周波数変換回路を構成する混合器が接続されている。LNA12は、例えばトランジスタで構成されていて、ベースにはストリップライン11の一端が接続され、コレクタに混合器が接続され、エミッタがグラウンドに接続される。さらに、LNA12のコレクタに信号線路13を経由してバイアス電圧が印加される。
【0017】
また、送受信切替端子14に送受信選択信号が供給される。送受信選択信号は、受信時にローレベルとなり送信時にハイレベルとなるように制御される。送受信切替端子14はインダクタ15を介してスイッチングダイオード16のアノードに接続されている。スイッチングダイオード16のアノードはストリップライン11の一端にも接続されており、スイッチングダイオード16のカソードはグラウンドに接続されている。ここで、ストリップライン11は送信信号の周波数に対して1/4波長の長さを有している。したがって、スイッチングダイオード16がオンすると、アンテナ側から見た受信系はλ/4のショートスタブを構成しインピーダンス無限大となる。
【0018】
一方、分岐点Pに接続された送信回路20は、第一のストリップラインとしてのストリップライン21を経由して電力増幅器(PA)22が接続され、さらに図示しない変調器が接続されている。PA22は、例えばトランジスタで構成されており、ベースには変調器から変調信号が印加され、コレクタには信号線路23を経由して送信電力用のバイアス電圧が印加され、エミッタはグラウンドに接続されている。
【0019】
本実施の形態では、送信回路20においてストリップライン21及びPA22にてλ/4ショートスタブに近い高インピーダンスを実現することで、送信回路20からスイッチングダイオードを排除可能にした。具体的には、ストリップライン21の線路長を合わせ込むことにより、受信モード時におけるストリップライン21及びPA22の出力インピーダンスがλ/4ショートスタブに近い高インピーダンスとなるように設定している。なお、ストリップライン21の寸法(線路長、幅)だけで調整仕切れない部分は、コンデンサ等を付加して調整しても良い。
【0020】
送信モードでは、受信回路10の受信経路を遮断して送信信号の電力損失を抑制した状態で、送信回路20から送出した送信信号を分岐点PからBPF2及び信号入出力端1を経由してアンテナへ供給する。
【0021】
送信モードにおいては、切替端子14にハイレベルの送受信選択信号が供給される。ハイレベルの送受信選択信号によりスイッチングダイオード16がオンすることで、分岐点Pから見た受信回路10は、図2(a)に示すようにλ/4ショートスタブとなり、高インピーダンスとなるので、送信回路20から受信回路10への送信信号の漏れ込みを遮断することができる。
【0022】
受信モードでは、送信回路20の送信経路を遮断して受信信号の電力損失を抑制した状態で、アンテナから出力される受信信号を分岐点Pから受信回路10へ入力する。従来回路(図13)では送信系に設けたスイッチングダイオードをオフさせることで高インピーダンス状態としているが、本実施の形態ではスイッチングダイオードを削除しているのでストリップライン21及びPA22の出力インピーダンスにて同様の高インピーダンス状態を作り出している。
【0023】
受信モードにおいて、切替端子14にローレベルの送受信選択信号が供給される。ローレベルの送受信選択信号によりスイッチングダイオード16がオフする。このとき、送信回路20のPA22はオフ状態である。PA22のコレクタのインピーダンスは、ベース−コレクタ間に逆バイアスが掛かっているPAオン時に対して、ベース−コレクタ間はゼロバイアスに近い状態にて低インピーダンスとなる。したがって、図2(b)に示すように、受信モード時に送信回路20はPA22を介して接地された状態となる。よって、ストリップライン21の線路超並びに及びストリップライン21及びPA22のインピーダンスを調整することで、送信モード時の受信回路10と同様に送信回路20においてストリップライン21及びPA22でλ/4ショートスタブに近似した高インピーダンス状態を実現することができる。
【0024】
このように、受信モード時において送信回路20は、ストリップライン21及びPA22でλ/4ショートスタブに近似した高インピーダンス状態となるので、スイッチングダイオードを設けて遮断することなく、分岐点Pから送信回路20へ流れ込む受信信号を遮断することができる。
【0025】
送信回路20においてストリップライン21及びPA22でλ/4ショートスタブに近似した高インピーダンス状態を実現できることについて、以下のシミュレーションにて検証した。
【0026】
図3(a)はPAとストリップラインの直列回路からなるシミュレーションモデルを示す。PAは本実施の形態と同様に3ポートであり、ストリップラインは幅=0.1mm、長さ=13.5mmの寸法に設定している。ストリップラインの寸法は、所望のインピーダンス特性となるように選定する。図3(b)は比較例のためのPAの単品回路である。
【0027】
図4(a)は図3(a)に示すシミュレーションモデルに関する送信モード時のシミュレーション結果を示す図である。送信モードでは、送信回路20はインピーダンス整合が取れている必要があるが、同図に示すように特定周波数(5.8GHz)に対して50Ωに整合している。すなわち、ストリップライン21を追加してもPA22がオンする送信モード時にはインピーダンス整合が取れていることが判る。
【0028】
図4(b)は図3(a)に示すシミュレーションモデルに関する受信モード時のシミュレーション結果を示す図である。受信モードでは、特定周波数(5.8GHz)に対してPAがオフしたことにより出力インピーダンスが高インピーダンスに変化していることが判る。特定周波数(5.8GHz)において図4(b)に示す高インピーダンスを実現できれば、送信回路20の遮断効果としては十分である。
【0029】
図5(a)は図3(a)の比較例に関する送信モード時のシミュレーション結果を示す図であり、同図(b)は同比較例に関する受信モード時のシミュレーション結果を示す図である。図5(a)に示すように、PAオン時に特定周波数(5.8GHz)に対して50Ωに整合するように設定した場合、図5(b)に示すようにPAオフ時の出力インピーダンスはある程度は高い状態であるが、図4(b)に比べるとやや低下していることが判る。よって、送信回路20にストリップライン21を設けて望ましい寸法に設定することはPAオフ時の出力インピーダンスを高インピーダンス状態とすることが検証された。
【0030】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態は、送信系及び受信系の双方からスイッチングダイオードを削除してLNA及びPAのオン/オフだけで送受信を切り替え可能にしたアンテナスイッチ回路の例である。
【0031】
図6は第2の実施の形態に係るアンテナスイッチ回路の回路図である。なお、上記第1の実施の形態と同一構成要素には同一符号を付して説明の重複を避ける。同図に示すように、分岐点PとLNA12のベースとの間にストリップライン31を直列に設けている。ストリップライン31は、LNA12がオフする送信モードのときにアンテナ側(分岐点P)から見た受信回路10のインピーダンスが高インピーダンスとなるように寸法が設定されている。
【0032】
LNA12は、LNAオフ時の入力インピーダンスが低インピーダンスであるので、ストリップライン31の寸法を合わせ込んで、第1の実施の形態における送信回路20と同様のオフ時の高インピーダンス化を期待することができる。
【0033】
図7はLNA12をオン/オフさせた時の受信回路10のインピーダンス変化をシミュレーションするためのシミュレーションモデルである。ストリップライン31は、幅=0.1mm、長さ=6mmの寸法に設定している。ストリップライン31の寸法は、LNA12オン時には受信回路10のインピーダンスが所定値(シミュレーションでは50Ω)に整合し、LNA12オフ時には受信回路10のインピーダンスが可能な限り大きくなるような値を選択することが望ましい。
【0034】
図7のシミュレーションモデルにおいてLNA12をオンした場合のインピーダンス変化を図8(a)に示し、LNA12をオフした場合のインピーダンス変化を図8(b)に示す。LNA12をオンした場合、すなわち受信モードの場合は図8(a)に示すように受信回路10のインピーダンスが50Ωに整合するように調整されている。そして、LNA12をオフした場合、すなわち送信モードの場合は図8(b)に示すように受信回路10のインピーダンスが高インピーダンス側へシフトしていることが判る。
【0035】
このように、受信回路10にスイッチングダイオードを設けなくても、LNA12をオフすることでアンテナ側(分岐点P)から見た受信回路10のインピーダンスを高インピーダンス状態にすることが可能である。
【0036】
図9は第2の実施の形態の全体回路に対応したシミュレーションモデルを示している。受信回路10のストリップライン31は幅=0.1mm、長さ=6mmの寸法に設定し、送信回路20のストリップライン21は幅=0.1mm、長さ=13.5mmの寸法に設定している。
【0037】
図10(a)は図9のシミュレーションモデルにおいてLNA12がオンしてPA22がオフする受信モードでの伝送特性を示している。特定周波数(5.8GHz)における受信回路10側の伝送特性(RX)は10dB程度のゲインを確保できていると共に送信回路20とは−14dB程度のアイソレーションが取れている。図10(b)は図9のシミュレーションモデルにおいてLNA12がオフしてPA22がオンする送信モードでの伝送特性を示している。特定周波数(5.8GHz)における送信回路20側の伝送特性(TX)はやはり10dB程度のゲインを確保できていると共に受信回路10とは−15dB程度のアイソレーションが取れている。
【0038】
このように、受信回路10、送信回路20の双方のラインに、オフ時のインピーダンスを高めるためのストリップライン31,21を挿入したことにより、特定周波数(5.8GHz)のオフ時のアイソレーションは受信側、送信側それぞれ−14dB、−15dB程度であり、スイッチングダイオードを設けた場合に比べて多少はアイソレーションが劣化するものの、それぞれのオン時のゲインは0.5dB程度の劣化に抑えられており、オフ側の回路(受信回路10又は送信回路20)の高インピーダンス化が図られていることが判る。
【0039】
なお、図5(b)に示すようにPA22単体でのオフ時における出力インピーダンスはもともと高い傾向にあるため、オフ時の高インピーダンス化を図るためのストリップライン21を挿入しなくても、オン側回路からみた影響(ロス)は少ないと考えられる。
【0040】
そこで、図11に示すように送信系10からはストリップラインを削除し、受信系20にだけオフ時の高インピーダンス化を図るためのストリップライン31を挿入した構成としてもある程度の性能を実現できる。
【0041】
図12(a)は図11に示すシミュレーションモデルにおいてLNA12がオンしてPA22がオフする受信モードでの伝送特性を示し、図12(b)はLNA12がオフしてPA22がオンする送信モードでの伝送特性を示している。同図に示す通り、特定周波数(5.8GHz)におけるオフ時のアイソレーションは、受信回路10、送信回路20それぞれ−13dB、−15dB程度であり、オン時のゲインはスイッチングダイオードを設けた場合に比べて0.3dB程度低下する。オン時のゲイン低下がある程度許容される用途であれば実用化可能である。
【0042】
また、以上の説明では受信回路10にはトランジスタで構成されるLNA12を設け、送信回路20にはトランジスタで構成されるPA22を設けているが、その他の増幅器であってもストリップラインとの組み合わせでオフ時の高インピーダンス化が可能であれば利用することができる。また、アンテナ端子に接続される回路は受信回路10、送信回路20に限定されるものではなく、アンテナ端子に並列接続されて切り替え対象となる回路であれば適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、アンテナ端子に対して複数の回路が並列に接続されるアンテナスイッチ回路に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】第1の実施の形態に係るアンテナスイッチ回路の構成図
【図2】(a)は第1の実施の形態において送信モード時の等価回路図、(b)は第1の実施の形態において受信モード時の等価回路図
【図3】(a)はPAとストリップラインを組み合わせたシミュレーションモデルを示す図、(b)はPA単品でのシミュレーションモデルを示す図
【図4】(a)は図3(a)のシミュレーションモデルでのPAオンでのインピーダンス特性を示す図、(b)は同シミュレーションモデルでのPAオフでのインピーダンス特性を示す図
【図5】(a)は図3(b)のシミュレーションモデルでのPAオンでのインピーダンス特性を示す図、(b)は同シミュレーションモデルでのPAオフでのインピーダンス特性を示す図
【図6】第2の実施の形態に係るアンテナスイッチ回路の構成図
【図7】LNAとストリップラインを組み合わせたシミュレーションモデルを示す図
【図8】(a)は図7のシミュレーションモデルでのLNAオンでのインピーダンス特性を示す図、(b)は同シミュレーションモデルでのLNAオフでのインピーダンス特性を示す図
【図9】第2の実施の形態に係るアンテナスイッチ回路全体のシミュレーションモデルを示す図
【図10】(a)は図9のシミュレーションモデルにおいて受信モードでの伝送特性を示す図、(b)は同シミュレーションモデルにおいて送信モードでの伝送特性を示す図
【図11】受信系にのみストリップラインを挿入した変形例のシミュレーションモデルを示す図
【図12】(a)は図11のシミュレーションモデルにおいて受信モードでの伝送特性を示す図、(b)は同シミュレーションモデルにおいて送信モードでの伝送特性を示す図
【図13】従来のアンテナスイッチ回路の構成図
【符号の説明】
【0045】
1…信号入出力端、2…バンドパスフィルタ(BPF)、3…直流カットコンデンサ、10…受信回路、11…ストリップライン(λ/4)、12…ローノイズアンプ(LNA)、13…信号線路、14…送受信切替端子、15…インダクタ、16…スイッチングダイオード、20…送信回路、21…ストリップライン(送信側)、22…電力増幅器(PA)、23…信号線路、31…ストリップライン(受信側)
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種無線通信装置においてアンテナに接続する回路を切替えるためのアンテナスイッチ回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、移動体通信装置などにおいて、送信回路とアンテナとの接続及び受信回路とアンテナとの接続を切り換えるためにアンテナスイッチ回路が用いられており、送信信号の漏れを少なくしたアンテナスイッチ回路が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図13は、特許文献1記載のアンテナスイッチ回路の回路構成図である。アンテナスイッチ回路100、アンテナ端子Ant、送信端子Tx及び受信端子Rxを有しており、送信端子Txとアンテナ端子Antとの間に第1のスイッチングダイオードD1が配置され、アンテナ端子Antと受信端子Rxとの間に第1のストリップラインSL1が配置されている。第1のストリップラインSL1は送信信号の通信周波数の概略1/4波長の長さに相当する線路長に設定されている。また、第1のストリップラインSL1の受信端子Rx側端部B点とグランドとの間に、第2のスイッチングダイオードD2が直流成分遮断用のバイパスコンデンサである第1のコンデンサC1を介して配置されている。制御端子Vcは、送信端子Txと第1のスイッチングダイオードD1との間に配置され、第1、第2のスイッチングダイオードをオン・オフさせる制御電圧が供給される。制御電圧接地回路101は、抵抗R1と、第2のコンデンサC2と、第2のストリップラインSL2とからなり、第2のスイッチングダイオードD2と第1のコンデンサC1との接続点C点に接続される。第2のコンデンサC2及び第2のストリップラインSL2は、グランドに接続され、制御端子Vcに印加された送受信を切り替える制御電圧は、この回路によって接地されることとなる。
【0004】
上述したアンテナスイッチ回路100は、制御端子Vcに電圧を印加することによって、スイッチングダイオードD1、D2をオン・オフし、送受信信号を切り換える回路として機能する。このアンテナスイッチ回路100では、制御電圧接地回路101における抵抗R1が、第2のストリップラインSL2を介してグランドに接続されていることにより、第2のストリップラインSL2が制御電圧接地回路101のインピーダンスを高くするので、第1のストリップラインSL1の受信端子側端部B点において、第2のスイッチングダイオードD2と第1のコンデンサC1による直列共振によって、インピーダンが極小となる。従って、第1のストリップラインSL1の共振時に、第1のストリップラインSL1のアンテナ端子Ant側端部A点のインピーダンスが極大となり、送信信号の漏れを少なくすることができる。
【特許文献1】特開2004−120647号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のアンテナスイッチ回路は、送信系及び受信系の双方にスイッチングダイオードD1、D2を備える必要があるため、回路素子数が増大すると共にコストが高くなるという問題がある。
【0006】
本発明は、送信系の損失悪化を抑制した上で送信系のスイッチングダイオードを削除することができ、部品点数の削減とコストダウンを図ることのできるアンテナスイッチ回路を提供することを目的とする。
【0007】
また本発明は、送信系及び受信系のスイッチングダイオードをそれぞれ削除することができ、部品点数の削減とコストダウンを図ることのできるアンテナスイッチ回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のアンテナスイッチ回路は、アンテナが接続されたアンテナ端子と、前記アンテナ端子と当該アンテナ端子に接続された第一の回路との間に挿入された第一のストリップラインと、前記アンテナ端子と当該アンテナ端子に対して前記第一の回路と並列に接続された第二の回路との間に挿入された第二のストリップラインとを備え、前記アンテナ端子から見た前記第一のストリップラインと非動作状態での前記第一の回路との接続回路のインピーダンスがオープン状態とみなされる高インピーダンス状態となるように前記第一のストリップラインを設定したことを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、第二の回路を動作状態とし、かつ第一の回路を非動作状態とした時に、アンテナ端子から見た第一のストリップラインと第一の回路との接続回路のインピーダンスがオープン状態とみなされる高インピーダンス状態となるので、アンテナ端子と第一の回路との間にスイッチングダイオードを設けること無く、例えばアンテナから第二の回路へ入力すべき受信信号又は第二の回路からアンテナへ送出すべき送信信号の第二の回路への漏れ(電力損失)を抑制することができ、少なくとも1つのスイッチングダイオードを削減できる。
【0010】
また本発明は、上記アンテナスイッチ回路において、前記アンテナ端子から見た前記第一のストリップラインと動作状態での前記第一の回路との接続回路のインピーダンスが電力損失を抑えた所望のインピーダンスに整合するように前記第一のストリップラインを設定したことを特徴とする。
【0011】
この構成により、第一の回路の非動作時には第一の回路側を高インピーダンス状態にすることができると共に、第一の回路の動作時には第一の回路側を電力損失を抑えた所望のインピーダンスに整合させることができるので、第一の回路の動作状態のオン/オフによって高インピーダンス状態と電力損失の少ないインピーダンス整合状態とを作り出すことができ、切替信号を供給することなく第一の回路の動作状態のオン/オフによって動作モードの切替が可能になる。
【0012】
また本発明は、上記アンテナスイッチ回路において、前記アンテナ端子から見た前記第二のストリップラインと非動作状態での前記第二の回路との接続回路のインピーダンスがオープン状態とみなされる高インピーダンス状態となる一方、前記アンテナ端子から見た前記第二のストリップラインと動作状態での前記第二の回路との接続回路のインピーダンスが電力損失を抑えた所望のインピーダンスに整合するように、前記第二のストリップラインを設定したことを特徴とする。
【0013】
この構成により、第一の回路を動作状態とし、かつ第二の回路を非動作状態とした時に、アンテナ端子から見た第二のストリップラインと第二の回路との接続回路のインピーダンスがオープン状態とみなされる高インピーダンス状態となるので、アンテナ端子と第二の回路との間にスイッチングダイオードを設けること無く、例えばアンテナから第一の回路へ入力すべき受信信号又は第一の回路からアンテナへ送出すべき送信信号の第一の回路への漏れ(電力損失)を抑制することができ、双方のスイッチングダイオードを削減できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、送信系及び又は受信系のスイッチングダイオードを削除することができ、部品点数の削減とコストダウンを図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態は、送信系のスイッチングダイオードを削除したアンテナスイッチ回路の例である。図1は第1の実施の形態に係るアンテナスイッチ回路の回路図である。アンテナ端子となる信号入出力端1は図示しないアンテナに接続され、バンドパスフィルタ(BPF)2及び直流カットコンデンサ3を介して第二の回路となる受信回路10及び第一の回路となる送信回路20の分岐点Pに接続される。
【0016】
分岐点Pに接続された受信回路10は、第二のストリップラインとしてのストリップライン11を経由してローノイズアンプ(LNA)12が接続され、さらに図示しない周波数変換回路を構成する混合器が接続されている。LNA12は、例えばトランジスタで構成されていて、ベースにはストリップライン11の一端が接続され、コレクタに混合器が接続され、エミッタがグラウンドに接続される。さらに、LNA12のコレクタに信号線路13を経由してバイアス電圧が印加される。
【0017】
また、送受信切替端子14に送受信選択信号が供給される。送受信選択信号は、受信時にローレベルとなり送信時にハイレベルとなるように制御される。送受信切替端子14はインダクタ15を介してスイッチングダイオード16のアノードに接続されている。スイッチングダイオード16のアノードはストリップライン11の一端にも接続されており、スイッチングダイオード16のカソードはグラウンドに接続されている。ここで、ストリップライン11は送信信号の周波数に対して1/4波長の長さを有している。したがって、スイッチングダイオード16がオンすると、アンテナ側から見た受信系はλ/4のショートスタブを構成しインピーダンス無限大となる。
【0018】
一方、分岐点Pに接続された送信回路20は、第一のストリップラインとしてのストリップライン21を経由して電力増幅器(PA)22が接続され、さらに図示しない変調器が接続されている。PA22は、例えばトランジスタで構成されており、ベースには変調器から変調信号が印加され、コレクタには信号線路23を経由して送信電力用のバイアス電圧が印加され、エミッタはグラウンドに接続されている。
【0019】
本実施の形態では、送信回路20においてストリップライン21及びPA22にてλ/4ショートスタブに近い高インピーダンスを実現することで、送信回路20からスイッチングダイオードを排除可能にした。具体的には、ストリップライン21の線路長を合わせ込むことにより、受信モード時におけるストリップライン21及びPA22の出力インピーダンスがλ/4ショートスタブに近い高インピーダンスとなるように設定している。なお、ストリップライン21の寸法(線路長、幅)だけで調整仕切れない部分は、コンデンサ等を付加して調整しても良い。
【0020】
送信モードでは、受信回路10の受信経路を遮断して送信信号の電力損失を抑制した状態で、送信回路20から送出した送信信号を分岐点PからBPF2及び信号入出力端1を経由してアンテナへ供給する。
【0021】
送信モードにおいては、切替端子14にハイレベルの送受信選択信号が供給される。ハイレベルの送受信選択信号によりスイッチングダイオード16がオンすることで、分岐点Pから見た受信回路10は、図2(a)に示すようにλ/4ショートスタブとなり、高インピーダンスとなるので、送信回路20から受信回路10への送信信号の漏れ込みを遮断することができる。
【0022】
受信モードでは、送信回路20の送信経路を遮断して受信信号の電力損失を抑制した状態で、アンテナから出力される受信信号を分岐点Pから受信回路10へ入力する。従来回路(図13)では送信系に設けたスイッチングダイオードをオフさせることで高インピーダンス状態としているが、本実施の形態ではスイッチングダイオードを削除しているのでストリップライン21及びPA22の出力インピーダンスにて同様の高インピーダンス状態を作り出している。
【0023】
受信モードにおいて、切替端子14にローレベルの送受信選択信号が供給される。ローレベルの送受信選択信号によりスイッチングダイオード16がオフする。このとき、送信回路20のPA22はオフ状態である。PA22のコレクタのインピーダンスは、ベース−コレクタ間に逆バイアスが掛かっているPAオン時に対して、ベース−コレクタ間はゼロバイアスに近い状態にて低インピーダンスとなる。したがって、図2(b)に示すように、受信モード時に送信回路20はPA22を介して接地された状態となる。よって、ストリップライン21の線路超並びに及びストリップライン21及びPA22のインピーダンスを調整することで、送信モード時の受信回路10と同様に送信回路20においてストリップライン21及びPA22でλ/4ショートスタブに近似した高インピーダンス状態を実現することができる。
【0024】
このように、受信モード時において送信回路20は、ストリップライン21及びPA22でλ/4ショートスタブに近似した高インピーダンス状態となるので、スイッチングダイオードを設けて遮断することなく、分岐点Pから送信回路20へ流れ込む受信信号を遮断することができる。
【0025】
送信回路20においてストリップライン21及びPA22でλ/4ショートスタブに近似した高インピーダンス状態を実現できることについて、以下のシミュレーションにて検証した。
【0026】
図3(a)はPAとストリップラインの直列回路からなるシミュレーションモデルを示す。PAは本実施の形態と同様に3ポートであり、ストリップラインは幅=0.1mm、長さ=13.5mmの寸法に設定している。ストリップラインの寸法は、所望のインピーダンス特性となるように選定する。図3(b)は比較例のためのPAの単品回路である。
【0027】
図4(a)は図3(a)に示すシミュレーションモデルに関する送信モード時のシミュレーション結果を示す図である。送信モードでは、送信回路20はインピーダンス整合が取れている必要があるが、同図に示すように特定周波数(5.8GHz)に対して50Ωに整合している。すなわち、ストリップライン21を追加してもPA22がオンする送信モード時にはインピーダンス整合が取れていることが判る。
【0028】
図4(b)は図3(a)に示すシミュレーションモデルに関する受信モード時のシミュレーション結果を示す図である。受信モードでは、特定周波数(5.8GHz)に対してPAがオフしたことにより出力インピーダンスが高インピーダンスに変化していることが判る。特定周波数(5.8GHz)において図4(b)に示す高インピーダンスを実現できれば、送信回路20の遮断効果としては十分である。
【0029】
図5(a)は図3(a)の比較例に関する送信モード時のシミュレーション結果を示す図であり、同図(b)は同比較例に関する受信モード時のシミュレーション結果を示す図である。図5(a)に示すように、PAオン時に特定周波数(5.8GHz)に対して50Ωに整合するように設定した場合、図5(b)に示すようにPAオフ時の出力インピーダンスはある程度は高い状態であるが、図4(b)に比べるとやや低下していることが判る。よって、送信回路20にストリップライン21を設けて望ましい寸法に設定することはPAオフ時の出力インピーダンスを高インピーダンス状態とすることが検証された。
【0030】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態は、送信系及び受信系の双方からスイッチングダイオードを削除してLNA及びPAのオン/オフだけで送受信を切り替え可能にしたアンテナスイッチ回路の例である。
【0031】
図6は第2の実施の形態に係るアンテナスイッチ回路の回路図である。なお、上記第1の実施の形態と同一構成要素には同一符号を付して説明の重複を避ける。同図に示すように、分岐点PとLNA12のベースとの間にストリップライン31を直列に設けている。ストリップライン31は、LNA12がオフする送信モードのときにアンテナ側(分岐点P)から見た受信回路10のインピーダンスが高インピーダンスとなるように寸法が設定されている。
【0032】
LNA12は、LNAオフ時の入力インピーダンスが低インピーダンスであるので、ストリップライン31の寸法を合わせ込んで、第1の実施の形態における送信回路20と同様のオフ時の高インピーダンス化を期待することができる。
【0033】
図7はLNA12をオン/オフさせた時の受信回路10のインピーダンス変化をシミュレーションするためのシミュレーションモデルである。ストリップライン31は、幅=0.1mm、長さ=6mmの寸法に設定している。ストリップライン31の寸法は、LNA12オン時には受信回路10のインピーダンスが所定値(シミュレーションでは50Ω)に整合し、LNA12オフ時には受信回路10のインピーダンスが可能な限り大きくなるような値を選択することが望ましい。
【0034】
図7のシミュレーションモデルにおいてLNA12をオンした場合のインピーダンス変化を図8(a)に示し、LNA12をオフした場合のインピーダンス変化を図8(b)に示す。LNA12をオンした場合、すなわち受信モードの場合は図8(a)に示すように受信回路10のインピーダンスが50Ωに整合するように調整されている。そして、LNA12をオフした場合、すなわち送信モードの場合は図8(b)に示すように受信回路10のインピーダンスが高インピーダンス側へシフトしていることが判る。
【0035】
このように、受信回路10にスイッチングダイオードを設けなくても、LNA12をオフすることでアンテナ側(分岐点P)から見た受信回路10のインピーダンスを高インピーダンス状態にすることが可能である。
【0036】
図9は第2の実施の形態の全体回路に対応したシミュレーションモデルを示している。受信回路10のストリップライン31は幅=0.1mm、長さ=6mmの寸法に設定し、送信回路20のストリップライン21は幅=0.1mm、長さ=13.5mmの寸法に設定している。
【0037】
図10(a)は図9のシミュレーションモデルにおいてLNA12がオンしてPA22がオフする受信モードでの伝送特性を示している。特定周波数(5.8GHz)における受信回路10側の伝送特性(RX)は10dB程度のゲインを確保できていると共に送信回路20とは−14dB程度のアイソレーションが取れている。図10(b)は図9のシミュレーションモデルにおいてLNA12がオフしてPA22がオンする送信モードでの伝送特性を示している。特定周波数(5.8GHz)における送信回路20側の伝送特性(TX)はやはり10dB程度のゲインを確保できていると共に受信回路10とは−15dB程度のアイソレーションが取れている。
【0038】
このように、受信回路10、送信回路20の双方のラインに、オフ時のインピーダンスを高めるためのストリップライン31,21を挿入したことにより、特定周波数(5.8GHz)のオフ時のアイソレーションは受信側、送信側それぞれ−14dB、−15dB程度であり、スイッチングダイオードを設けた場合に比べて多少はアイソレーションが劣化するものの、それぞれのオン時のゲインは0.5dB程度の劣化に抑えられており、オフ側の回路(受信回路10又は送信回路20)の高インピーダンス化が図られていることが判る。
【0039】
なお、図5(b)に示すようにPA22単体でのオフ時における出力インピーダンスはもともと高い傾向にあるため、オフ時の高インピーダンス化を図るためのストリップライン21を挿入しなくても、オン側回路からみた影響(ロス)は少ないと考えられる。
【0040】
そこで、図11に示すように送信系10からはストリップラインを削除し、受信系20にだけオフ時の高インピーダンス化を図るためのストリップライン31を挿入した構成としてもある程度の性能を実現できる。
【0041】
図12(a)は図11に示すシミュレーションモデルにおいてLNA12がオンしてPA22がオフする受信モードでの伝送特性を示し、図12(b)はLNA12がオフしてPA22がオンする送信モードでの伝送特性を示している。同図に示す通り、特定周波数(5.8GHz)におけるオフ時のアイソレーションは、受信回路10、送信回路20それぞれ−13dB、−15dB程度であり、オン時のゲインはスイッチングダイオードを設けた場合に比べて0.3dB程度低下する。オン時のゲイン低下がある程度許容される用途であれば実用化可能である。
【0042】
また、以上の説明では受信回路10にはトランジスタで構成されるLNA12を設け、送信回路20にはトランジスタで構成されるPA22を設けているが、その他の増幅器であってもストリップラインとの組み合わせでオフ時の高インピーダンス化が可能であれば利用することができる。また、アンテナ端子に接続される回路は受信回路10、送信回路20に限定されるものではなく、アンテナ端子に並列接続されて切り替え対象となる回路であれば適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、アンテナ端子に対して複数の回路が並列に接続されるアンテナスイッチ回路に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】第1の実施の形態に係るアンテナスイッチ回路の構成図
【図2】(a)は第1の実施の形態において送信モード時の等価回路図、(b)は第1の実施の形態において受信モード時の等価回路図
【図3】(a)はPAとストリップラインを組み合わせたシミュレーションモデルを示す図、(b)はPA単品でのシミュレーションモデルを示す図
【図4】(a)は図3(a)のシミュレーションモデルでのPAオンでのインピーダンス特性を示す図、(b)は同シミュレーションモデルでのPAオフでのインピーダンス特性を示す図
【図5】(a)は図3(b)のシミュレーションモデルでのPAオンでのインピーダンス特性を示す図、(b)は同シミュレーションモデルでのPAオフでのインピーダンス特性を示す図
【図6】第2の実施の形態に係るアンテナスイッチ回路の構成図
【図7】LNAとストリップラインを組み合わせたシミュレーションモデルを示す図
【図8】(a)は図7のシミュレーションモデルでのLNAオンでのインピーダンス特性を示す図、(b)は同シミュレーションモデルでのLNAオフでのインピーダンス特性を示す図
【図9】第2の実施の形態に係るアンテナスイッチ回路全体のシミュレーションモデルを示す図
【図10】(a)は図9のシミュレーションモデルにおいて受信モードでの伝送特性を示す図、(b)は同シミュレーションモデルにおいて送信モードでの伝送特性を示す図
【図11】受信系にのみストリップラインを挿入した変形例のシミュレーションモデルを示す図
【図12】(a)は図11のシミュレーションモデルにおいて受信モードでの伝送特性を示す図、(b)は同シミュレーションモデルにおいて送信モードでの伝送特性を示す図
【図13】従来のアンテナスイッチ回路の構成図
【符号の説明】
【0045】
1…信号入出力端、2…バンドパスフィルタ(BPF)、3…直流カットコンデンサ、10…受信回路、11…ストリップライン(λ/4)、12…ローノイズアンプ(LNA)、13…信号線路、14…送受信切替端子、15…インダクタ、16…スイッチングダイオード、20…送信回路、21…ストリップライン(送信側)、22…電力増幅器(PA)、23…信号線路、31…ストリップライン(受信側)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナが接続されたアンテナ端子と、前記アンテナ端子と当該アンテナ端子に接続された第一の回路との間に挿入された第一のストリップラインと、前記アンテナ端子と当該アンテナ端子に対して前記第一の回路と並列に接続された第二の回路との間に挿入された第二のストリップラインとを備え、
前記アンテナ端子から見た前記第一のストリップラインと非動作状態での前記第一の回路との接続回路のインピーダンスがオープン状態とみなされる高インピーダンス状態となるように前記第一のストリップラインを設定したことを特徴とするアンテナスイッチ回路。
【請求項2】
前記アンテナ端子から見た前記第一のストリップラインと動作状態での前記第一の回路との接続回路のインピーダンスが電力損失を抑えた所望のインピーダンスに整合するように前記第一のストリップラインを設定したことを特徴とする請求項1記載のアンテナスイッチ回路。
【請求項3】
前記アンテナ端子から見た前記第二のストリップラインと非動作状態での前記第二の回路との接続回路のインピーダンスがオープン状態とみなされる高インピーダンス状態となる一方、前記アンテナ端子から見た前記第二のストリップラインと動作状態での前記第二の回路との接続回路のインピーダンスが電力損失を抑えた所望のインピーダンスに整合するように、前記第二のストリップラインを設定したことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のアンテナスイッチ回路。
【請求項4】
前記第一の回路は送信回路であり、前記第二の回路は受信回路であることを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載のアンテナスイッチ回路。
【請求項5】
前記第二のストリップラインの一端と前記第二の回路との間の信号線路に接続され前記第一及び第二の回路を切り替えるための切替信号が供給される切替端子と、前記第二のストリップラインの一端とグラウンドとの間に設けられ前記第二の回路の非動作時に前記切替端子に供給されるハイレベルの切替信号により導通するスイッチングダイオードとを備え、前記第二のストリップラインの線路長をλ/4としたことを特徴とする請求項4記載のアンテナスイッチ回路。
【請求項1】
アンテナが接続されたアンテナ端子と、前記アンテナ端子と当該アンテナ端子に接続された第一の回路との間に挿入された第一のストリップラインと、前記アンテナ端子と当該アンテナ端子に対して前記第一の回路と並列に接続された第二の回路との間に挿入された第二のストリップラインとを備え、
前記アンテナ端子から見た前記第一のストリップラインと非動作状態での前記第一の回路との接続回路のインピーダンスがオープン状態とみなされる高インピーダンス状態となるように前記第一のストリップラインを設定したことを特徴とするアンテナスイッチ回路。
【請求項2】
前記アンテナ端子から見た前記第一のストリップラインと動作状態での前記第一の回路との接続回路のインピーダンスが電力損失を抑えた所望のインピーダンスに整合するように前記第一のストリップラインを設定したことを特徴とする請求項1記載のアンテナスイッチ回路。
【請求項3】
前記アンテナ端子から見た前記第二のストリップラインと非動作状態での前記第二の回路との接続回路のインピーダンスがオープン状態とみなされる高インピーダンス状態となる一方、前記アンテナ端子から見た前記第二のストリップラインと動作状態での前記第二の回路との接続回路のインピーダンスが電力損失を抑えた所望のインピーダンスに整合するように、前記第二のストリップラインを設定したことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のアンテナスイッチ回路。
【請求項4】
前記第一の回路は送信回路であり、前記第二の回路は受信回路であることを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載のアンテナスイッチ回路。
【請求項5】
前記第二のストリップラインの一端と前記第二の回路との間の信号線路に接続され前記第一及び第二の回路を切り替えるための切替信号が供給される切替端子と、前記第二のストリップラインの一端とグラウンドとの間に設けられ前記第二の回路の非動作時に前記切替端子に供給されるハイレベルの切替信号により導通するスイッチングダイオードとを備え、前記第二のストリップラインの線路長をλ/4としたことを特徴とする請求項4記載のアンテナスイッチ回路。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−72475(P2008−72475A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−249571(P2006−249571)
【出願日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】
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