説明

アンテナ取付金具

【課題】アンテナ支持物に対して簡単且つ安全に取り付けることができるようにする。
【解決手段】アンテナ支持杆8に対して組み付けを行うアンテナ保持部10と,アンテナ2の支持物101に対して組み付けを行う支持物挟み部100とを備える。支持物挟み部100は前記アンテナ保持部10と一体若しくは連結された当付片35と,当該当付片35と対向配置した挟持片55を枢着し,発条70によって常に一端を閉じた状態にある挟み具30を構成している。更にこの挟み具には,この一端を開閉自在に固定するための固定手段40を備えている。この挟み具は,他端側を押圧することで一端側が開放されてアンテナ支持物を簡単且つ素早く受け入れることができる。また,アンテナ支持物を受け入れた状態で押圧を解除すれば発条の付勢力によってアンテナ支持物に対して仮止めできる。更に前記固定手段で一端側を固定すればアンテナ支持物に対する取り付けが完了する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,主にアンテナをアンテナ支持物に取り付けるためのアンテナ取付金具の機構に関するものであり,特にアンテナを簡単にアンテナ支持物に簡単且つ素早く取り付けることができる取付金具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来,アンテナを接続対象であるアンテナ支持物に取り付けるための金具として,アンテナ支持杆を組み付ける取付アングルと,当該取付アングルと前記アンテナマストとの間に位置した受金具と,前記アンテナマストに添着して,当該アンテナマストを前記受金具と挟持する挟持片と,前記取付アングル,前記受金具及び前記挟持片の両端部に夫々挿通され,前記挟持片を前記受金具に近設するように抑制するための各別の螺子棒とこれら螺子棒に螺合するナットからなる取付金具が提案されている。
このような構成の取付金具を使ってアンテナマストにアンテナを取り付け場合は,受金具と挟持片を対向配置すると共に,夫々螺子棒を使うことによって緩やかに組み付けておいて,この前記受金具と挟持片との間にアンテナマストを挿入すると共に,アンテナを支持しつつ,前記螺子棒に対して前記蝶ナットを螺合することによって受金具と挟持片とでアンテナマストを挟持するのが一般的な取り付け手順である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−268955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが,従来技術のようなアンテナ取付金具では,一方でアンテナを支持しつつ,他方では蝶ナットの緊締操作をすることによって,初めて前記受金具と前記挟持片とでアンテナマストを挟持する構成であるので,その作業は一人で行うには作業性が良くないばかりでなく,アンテナの一般的な設置場所である,例えば屋根上やベランダの外側などの危険な場所に設置する場合を考えると,更にその設置作業における困難性が増すと言った問題があった。
また,近年普及が著しい地上デジタル放送を受信する場合のように,受信レベルだけでなく,その受信信号の質(C/N比,BER)が問題になる受信環境に対応するには,アンテナの設置において単にアンテナの方向調整を電波塔に向けるだけでなく,受信信号の質の良い電波を受信できるように,さまざま方向にアンテナを向けながら受信電波の質を確かめる必要がある状況において,従来の取付金具ではアンテナのきめ細かい方向調整を行うために,前記受金具と前記挟持片による挟持を緩めた状態で常時アンテナを支持しつつアンテナの方向調整を行うか,また,アンテナの方向を変えるごとに一々蝶ナットを緩めたり締めたりして受信電波の質を確かめなど,非常に手間がかかる状態にあるといった問題があったった。
そこで本願においては,こうした問題点を解決するためになされたものであり,
その目的は,アンテナを支持物に容易に取り付けることができるアンテナ取付金具を提供することにある。
他の目的は,アンテナを支持物に仮止め状態で固定でき,しかも支持物に対して回動可能に固定できアンテナ取付金具を提供することにある。
他の目的は,地上デジタル放送波の受信用アンテナに好適なアンテナ取付金具を提供することにある。
他の目的は,屋根上やベランダ等における設置作業が安全に行うことができるアンテナ取付金具を提供することにある。
他の目的は,以下の説明や説明図において明確にする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために,請求項1の発明は,アンテナ支持杆をアンテナの支持物に取り付けるためのアンテナ取付金具において,
アンテナ支持杆の一方の側面を受け入れる湾曲部を備えた受金具と,アンテナ支持杆の他方の側面に添着して,当該アンテナ支持杆を前記受金具とで挟持する挟持金具と,前記挟持金具を前記受金具に近接するように抑制するための抑制手段と,を備えてなるアンテナ保持部と,
前記受金具と一体若しくは連結するように備えられ,前記支持物の一方の側面に当て付ける当付片と,当該当付片と対向する位置に配置した前記支持物の他方の側面側から挟持する挟持片とからなり,前記当付片と前記挟持片の夫々の中間部位において枢着し,発条によって常に一端を閉じるように押圧する挟み具と,当該挟み具の前記一端を開閉自在に固定するための固定手段と,を備えてなる支持物挟み部と,
から構成される。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明によれば,常時は発条によって当付片と挟持片とからなる挟み具の一端が閉じた状態にあっても,挟み具の他端側に対する押圧操作によって,挟み具はその一端側が開放された状態になり,簡単且つ素早くアンテナマストやベランダ等の支持物に取り付けることができる。
また,挟み具の他端側に対する押圧を止めれば,挟み具は発条の付勢力によってその一端側が閉じ,アンテナ取付金具は前記アンテナマストやベランダ等の支持物に対して仮止めの状態で固定できるばかりでなく,前記支持物に対して回動可能に固定できる。つまり,このようにアンテナ取付金具がアンテナマストやベランダ当に回動可能に仮固定できることから,例えばアンテナの方向調整等において,アンテナを支持することなく,電界強度測定器等の操作をしながらの調整作業に専念できるので,極めて容易に方向調整ができる。
更に,本発明の実施形態に係るアンテナ取付金具を,特に地上デジタル放送波の受信用アンテナのように,受信レベルばかりでなく,多様な方向からの到来電波の受信電波の質を確認する必要があるアンテナに用いれば,他方向にわたる受信電波の質の確認作業を簡単且つ素早く行うことができ,短時間で最適な方向に方向調整ができる。
また,前記アンテナマストやベランダ等の支持物に対して簡単に取り付けができるので,高所でのアンテナ設置作業を安全に行うことができる。また,ベランダへの取り付け実施形態にあっては,ベランダの外側に大きく身を乗り出すこともないので安全な取り付け作業を行うことができる。
更に,アンテナの方向調整が終われば,前記固定手段で持って挟み具を固定することで容易にアンテナマストやベランダ等の支持物に対して強固に取り付けを行うことができる。
また,ベランダへの取り付け実施形態にあっては,ベランダの内側に挟み具が大きく突出することもなく,しかも,固定手段もベランダの内側に突出することがないので,ベランダに取り付けても,挟み具による危険性の低いアンテナ取付金具を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の第1実施形態に係るアンテナ取付金具の概略の構成を示す分解斜視図であり,(a)は支持物(アンテナマスト)への取り付け前の状態を示し,(b)は支持物(アンテナマスト)への取り付けが完了した状態を示す。
【図2】本発明の第1実施形態に係るアンテナ取付金具を図1(a)のX−X線から見た断面図であり,(a)はアンテナマストに取り付ける前の状態,(b)はアンテナマストへの取り付け時の状態,(c)は取付完了後の状態を示す。
【図3】本発明の第1実施形態に係るアンテナ取付金具の要部を拡大した斜視図であり,(a)は当付片と挟持片の枢着部を示す概略図であり,図2(c)におけるY−Y線から見た断面図である。(b)は本発明の第1実施形態に係るアンテナ取付金具を構成する挟み具の異なる実施形態である。
【図4】本発明の第1実施形態に係るアンテナ取付金具の具体的な取り付け状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0008】
本発明の第1実施形態におけるアンテナ取付金具1について,図1から図2を用いて説明する。本発明のアンテナ取付金具1は,アンテナ2のアンテナ支持杆8(8−2)に対して固着するように構成されたアンテナ保持部10と,アンテナ2の支持物としての例えばアンテナマスト101に対して固着するように構成されたアンテナマスト挟み部100から構成されている。
【0009】
前記アンテナ保持部10は,金属材料から構成されており,前記アンテナ支持杆9の一方の側面を受け入れる湾曲部12を備えた受金具11と,アンテナ支持杆8の他方の側面に添着して,当該アンテナ支持杆8を前記受金具11とで挟持する挟持金具20と,前記挟持金具20を前記受金具11に近接するように抑制するための抑制手段60と,からなる。
【0010】
本発明の実施形態における前記受金具11は,前記アンテナ支持杆8の軸線方向に長手方向を有した長方形状をしており,前記アンテナ支持杆8に対応する側の面には,前記アンテナ支持杆8の外周面に対応するように凹ました湾曲部12が形成されており,前記アンテナ支持杆8の一方の側面を受け入れるように構成されている。また,前記湾曲部12とは反対側の側面には,前記アンテナ支持杆8の軸線に平行な方向に長手方向を有した溝部13が形成されている。そして,この溝部13の底面13aには,当該底面13aから前記湾曲部12に貫通するように形成された孔であって,その軸線が前記アンテナ支持杆8の軸線と直交するように構成された貫通孔15・15が形成されている。
本発明の実施形態における前記挟持金具20は,前記アンテナ支持杆8の他方の側面を受け入れるように湾曲するように成型した金属体であって,前記受金具11に沿うような長さに形成されて,前記受金具11と共にアンテナ支持杆8を挟持するためのものである。この挟持金具20の両端部には,前記受金具11に形成された貫通孔15・15と対応する位置に貫通孔25・25が形成されている。
次に抑制手段60である。この抑制手段60は,前記挟持金具20と前記受金具11とでアンテナ支持杆8を挟み込んだ状態で,前記挟持金具20を前記受金具11に近接するように抑制するためのものであり,本発明の実施形態においては,U字状ボルト61と,このU字状ボルト61における雄ねじが形成された自由端部65・65に螺合する蝶ナット66・66からなる。
【0011】
アンテナ2のアンテナ支持杆8と前記アンテナ保持部10に組み付けは次のように行われる。先ず受金具11の前記溝部13側から,前記U字状ボルト61の自由端65・65を前記貫通孔15・15に挿通することでU字状ボルト61を受金具11に装着する。次に,前記自由端部65・65に前記アンテナ支持杆8に予め形成されているボルト挿通孔5・5を挿通し,前記アンテナ支持杆8の一方の側面を前記湾曲部12に当接するように組み付ける。更に,前記U字状ボルト61の自由端部65・65に前記挟持金具20の貫通孔25・25を挿入して,当該挟持金具20が前記アンテナ支持杆8の他方の側面に当接させ,更に前記自由端部45に形成された雄ねじに対して蝶ナット66・66を螺合すると共に緊締することによって,アンテナ支持杆8(即ち,アンテナ2)は,前記受金具11と前記挟持金具20とで挟持され,アンテナ2とアンテナ取付金具1の組み付けが完了する。
【0012】
次に,本発明の実施形態に係る支持物挟み部100について説明する。この支持物挟み部100も金属材料から構成されており,前記受金具11と一体若しくは連結するように備えられ,アンテナ2の支持物としての例えばアンテナマスト(以下の説明では,アンテナマスト101と記載する。)の一方の側面に当て付ける当付片35と,当該当付片35と対向する位置に配置した前記アンテナマスト101の他方の側面側から挟持する挟持片55を,夫々の中間部位において枢着し,発条70によって常に一端を閉じるように押圧するように構成された挟み具30と,当該挟み具30の前記一端を開閉自在に固定するための固定手段40と,からなる。
【0013】
本発明の実施形態における前記当付片35は,連結部31を介して前記受金具11と一体的若しくは連結するように構成されており,更に加えて,前記連結部31に延設するように形成され,前記アンテナマスト101の一方の側面に当て付けるように断面略く字状に形成された当付部33と,前記当付片35の先端部であって,前記固定手段40を装着するための装着部34からなる。また,連結部31の中間部位には,この当付片35と後述する挟持片55を枢着するための支持体32が形成されている。
また,本発明の実施形態における前記挟持片55は,前記当付片35とは別体に形成されたものであり,前記当付片35と同様に例えば金属材料等から構成されている。そしてこの挟持片55の構成は,前記挟み具30の開閉操作を行うためツマミ部51と,当該ツマミ部51に延設するように形成され,前記アンテナマスト101の他方の側面に当て付けるように断面略く字状に形成された抱持部53と,前記挟持片35の先端部であって,前記固定手段40を係合するための係合部54からなる。また,連結部51の中間部位には,前記当付片35と同様に,当該挟持片55と前記当付片35を枢着するための支持体52が形成されている。
【0014】
ここで,前記当付片35と前記挟持片55の組み付けについて図3(a)を用いて説明する。この図は図2(c)におけるY−Y線から見た断面図である。図に良く示されているように,前記当付片35に備えた支持体32の略中央部と前記挟持片55に備えた支持体52の略中央部には,夫々の支持体を貫通孔32a・52aが形成されており,前記支持体32と前記支持体52を重ね合わせ,前記当付片35と前記挟持片55を対向配置したときに前記貫通孔32a・52aの軸線は略一致する。そして,この状態で発条70を前記支持体の間に介在させながら,前記貫通孔32a・52a及び発条70に対して枢着軸71を圧入等の手段でもって固着することによって,前記当付片35と前記挟持片55は枢着されると共に,前記発条70の付勢力によって常に前記当付片35と前記挟持片55の一端(この実施形態では,装着部34と係合部54)を閉じるように押圧する状態に組み立てが完了する。尚,この組み付けられた構成が請求項に記載の挟み具30である。また,図中31a,51aで示されるのは前記発条の位置決めのための凸状部である。
【0015】
次に固定手段40である。本発明の実施形態に係る固定手段40は,図1及び図2に良く示されるように,前記当付片35と前記挟持片55とでアンテナマスト101を挟み込んだ状態で,前記挟持片55を前記当付片35に近接するように抑制するためのものであり,本発明の実施形態においては,ボルト41と,このボルト41に形成された雄ねじに螺合する蝶ナット42からなる。
尚,前記挟み具30と前記固定手段40とで請求項に記載の支持物挟み部100を構成している。
【0016】
次に本発明の実施形態に係る前記固定手段40の組み付け手順について詳しく説明する。この固定手段40は上述したようにボルト41と,当該ボルト41に螺合する蝶ナット42からなり,この実施形態では前記当付片35の装着部34に装着されている。
具体的には,この装着部34の中間位置には,前記ボルト41を挿通自在に挿通することができるような内径で形成された透孔34aが形成されており,当該透孔34aに対し,装着部34の外側からボルト41を挿通し,更には当付片35の内側から蝶ナット42を螺合することによってボルト41は装着部41に組み付けられる。このボルト41はボルト頭45と蝶ナット42の存在によって装着部41の透孔から外れることはない。しかも,前記透孔34aの内径を大きく形成しておくことによって,ボルト41は透孔34aに対して遊挿自在にあるばかりでなく,更には,ボルト41は透孔34aを回転の中心として,当該透孔34aの軸線に対して大きく円弧を描くように回動させることができるので,アンテナマスト101への取り付けの際に固定手段40が邪魔になることはない。
【0017】
次に,本発明の実施形態に係るアンテナ取付金具1を使ってアンテナマスト101に取り付ける手順を図2用いて説明すると共に,前記固定手段40を使った挟み具30の一端側の固定手順について説明する。
先ず図2(a)である。この図におけるアンテナ取付金具1はアンテナマスト101に取り付ける前の状態であり,挟み具30は発条70の付勢力(矢印A)によってその一端側,即ち,前記当付片35の装着部34側と前記挟持片55の係合部54側が押圧した状態にある。
この状態において固定手段40は上述したような手順で当付片35の装着部34に装着されている。一方,固定手段40と挟持片55の係合部54とは以下のように係合している。具体的には,前記係合部54には前記固定手段40を係合するための切欠部54aが形成されている。この係合部54aは前記係合部54の先端部からアンテナマスト101の軸線に直交する線に平行な軸線方向に前記ボルト41を受け入れるように凹部を備えるように構成されている。そして,図2(a)に示す初期状態にあっては,ボルト41は装着部34に形成された透孔34aに遊挿自在に装着されと共に,前記係合部54に形成された前記切欠部54aに挿通自在に嵌まり込むようにして装着されている。
【0018】
次に,図2(b)である。この図におけるアンテナ取付金具1はアンテナマスト101に取り付けるときの状態であり,挟持片55のツマミ51を当付片35の連結部31側に押圧(矢印B)することによって,挟み具30はその一端側,即ち,前記当付片35の装着部34側と前記挟持片55の係合部54側が開放された状態にある。この状態において前記固定手段40は装着部34の透孔34aに遊挿自在に装着されているが,蝶ナット42が螺合された側は矢印で示すように自由である。
このように挟み具30の一端側を開放した状態で,前記当付片35と前記挟持片55との間にアンテナマスト101を挿入するのであるが,アンテナマスト101の先端部に取り付けるなら,前記当付片35と前記挟持片55との間の下側(つまり,図2における奥側から)挿入しても良いし,アンテナマスト101の中間部位に取り付けるときは前記開放した一端側から挿入すればよく,何れの方法であっても固定手段40の存在はアンテナマスト101の挿入を邪魔しない。
【0019】
次に,図2(c)である。この図におけるアンテナ取付金具1はアンテナマスト101に取り付けが完了した状態を示しているが,本発明の実施形態におけるアンテナ取付金具1は,アンテナマスト101に取り付けに際し2様の状態を有するように構成されている。即ち,第1の状態は前記ツマミ51に対する押圧を止めることで,挟み具30は発条70の付勢力(矢印C)によってその一端側が閉じ,アンテナ取付金具1は前記アンテナマスト101に対して仮止めの状態で回動可能に取り付けることができる。つまりアンテナ取付金具1がアンテナマスト101に回動可能に仮固定できることから,例えばアンテナ2の方向調整等において,電界強度測定器等の操作をしながらの調整作業がきわめて容易に行うことができるようになるのである。
更に,アンテナ2の方向調整が終われば,前記固定手段40で持って挟み具30を固定することで第2の状態,即ち取り付け完了となるのである。この状態は前記ボルト41を係合部54の切欠部54a内に挿入すると共に,前記蝶ナット42を螺合することによって行われ,挟み具30はその一端側,即ち,前記当付片35の装着部34側と前記挟持片55の係合部54側が開閉自在に固定される。
この時,ボルト41は上述したように透孔34aに遊挿自在に装着されていることから,蝶ナット42を緊締すればボルト頭45と蝶ナット42による押圧力(矢印D)が前記装着部34と前記係合部54に対して最も加わるようにボルト41が誘導され,アンテナ取付金具1はアンテナマスト101に強固に固着される。
【0020】
次に,図3(b)には固定手段40と挟み具30の装着方法の異なる実施形態が示されている。この異なる実施形態と上記実施形態との違いは,固定手段40の装着位置と係合の方法である。先ず固定手段40の装着位置であるが,この異なる実施形態では前記固定手段40は挟持片55側に装着されている。つまり挟持片55の係合部54には前記切欠部54aに替えて透孔54bが形成されており,固定手段40は当該透孔54bに遊挿自在に装着されている。一方,当付片35の装着部34には前記透孔34aに替えて,前記装着部34aの上端に開口部34cを有するようにL字状切欠部34bが形成されている。
この構成による固定手順は次のように行われる。アンテナマスト101を挟んだなら,先ず挟み具30を第1の状態である仮固定の状態にする。そして,ボルト41のボルト頭45側を前記L字状切欠部34bの開口部34cから挿入し,当該L字状切欠部34bの最奥部34dにボルト41を収納しつつ,蝶ナット41を螺合することによって行われる。この実施形態では,ボルト41を係合部54の外方向に大きく突出するように配置することができ,挟み具30にアンテナマスト101を挿着時に固定手段40が邪魔になることはない。尚,図中34eはボルト41の抜け止め防止用の凸部である。
【0021】
このように構成されたアンテナ取付金具1の具体的な使用例について図1及び図4を用いて説明すると共に,その作用について説明する。この図において図1はアンテナマスト101に取り付ける場合の説明図であり,図4は例えばベランダ102への設置例を示している。この図から良く分かるように,挟持片55のツマミ51を当付片35の連結部31側に押圧するだけで,挟み具30はその一端側,即ち,前記当付片35の装着部34側と前記挟持片55の係合部54側が開放された状態になり,簡単且つ素早くアンテナマスト101やベランダ102の先端部や中間部位に取り付けることができる。また,前記ツマミ51に対する押圧を止めれば,挟み具30は発条70の付勢力によってその一端側が閉じ,アンテナ取付金具1は前記アンテナマスト101やベランダ102に対して仮止めの状態で回動可能に固定できる。つまり,アンテナ取付金具1がアンテナマスト101やベランダ102に回動可能に仮固定できることから,例えばアンテナ2の方向調整等において,アンテナを支持することなく,電界強度測定器等の操作をしながらの調整作業に専念できるので,極めて容易に方向調整ができる。
更に,アンテナマスト101やベランダ102に回動可能に仮固定できることは地上デジタル放送受信への移行に対して次のような効果が考えられる。即ち,本発明の実施形態に係るアンテナ取付金具を,特に地上デジタル放送波の受信用アンテナのように,受信レベルばかりでなく,多様な方向から到来する受信電波の質を確認する必要があるアンテナに用いれば,他方向にわたる受信電波の質の確認作業を簡単且つ素早く行うことができ,短時間で最適な方向に方向調整ができる。
また,前記アンテナマストやベランダ等の支持物に対して簡単に取り付けができるので,高所でのアンテナ設置作業を安全に行うことができる。また,ベランダへの取り付け実施形態にあっては,ベランダの外側に大きく身を乗り出すこともないので安全な取り付け作業を行うことができる。
更に,アンテナの方向調整が終われば,前記固定手段で持って挟み具を固定することで容易にアンテナマストやベランダ等の支持物に対して強固に取り付けを行うことができる。
また,ベランダへの取り付け実施形態にあっては,ベランダの内側に挟み具が大きく突出することもなく,しかも,固定手段もベランダの内側に突出することがないので,ベランダに取り付けても,挟み具による危険性の低いアンテナ取付金具を提供できる。
【符号の説明】
【0022】
1…アンテナ取付金具,2…アンテナ,3…放射器,4…放射エレメント,5…ボルト挿通孔,6…反射エレメント,7…導波エレメント,8…アンテナ支持杆,9…キャップ,10…アンテナ保持部,11…受金具,12…湾曲部,13…溝部,15…貫通孔,20…挟持金具,25…貫通孔,30…挟み具,31…連結部,31a…凸状部,32…支持体,32a…貫通孔,33…当付部,34…装着部,34a…透孔,34b…L字状切欠部,34c…開口部,34d…奥部,34e…凸部,35…当付片,40…固定手段,41…ボルト,42…蝶ナット,45…ボルト頭,51…ツマミ,51a…凸状部,52…支持体,52a…貫通孔,53…抱持部,54…係合部,54a…切欠部,54b…透孔,55…挟持片,60…抑制手段,61…U字状ボルト,65…自由端,66…蝶ナット,70…発条,71…枢着軸。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナを取り付け対象であるアンテナ支持物に取り付けるためのアンテナ取付金具において,
アンテナを構成するアンテナ支持杆の一方の側面を受け入れる湾曲部を備えた受金具と,前記アンテナ支持杆の他方の側面に添着して,当該アンテナ支持杆を前記受金具とで挟持する挟持金具と,前記挟持金具を前記受金具に近接するように抑制するための抑制手段と,を備えてなるアンテナ保持部と,
前記受金具と一体若しくは連結するように備えられ,前記アンテナ支持物の一方の側面に当て付ける当付片と,当該当付片と対向する位置に配置した前記アンテナ支持物の他方の側面側から挟持する挟持片とからなり,前記当付片と前記挟持片の夫々の中間部位において枢着し,発条によって常に一端を閉じるように押圧する挟み具と,当該挟み具の前記一端を開閉自在に固定するための固定手段と,を備えてなる支持物挟み部と,
からなるアンテナ取付金具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−239348(P2010−239348A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−84353(P2009−84353)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000113665)マスプロ電工株式会社 (395)
【Fターム(参考)】