説明

アンテナ装置およびアンテナモジュール

【課題】アンテナ装置の高利得化および小型化を図りつつ、安価に製造することができるアンテナ装置およびアンテナモジュールを提供すること。
【解決手段】本発明ンおアンテナ装置2は、樹脂材料を主材料として構成された誘電体基板21と、誘電体基板21内に埋設され、金属材料で構成された反射器24と、誘電体基板21の一方の面側に設けられた第1の導体膜22とを備える。また、誘電体基板21の他方の面側には、第2の導体膜23が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ装置およびアンテナモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ波やミリ波の電磁波を受信・送信するアンテナ装置としては、誘電体基板上に導体膜で構成されたアンテナ素子を設けたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
例えば、特許文献1に記載されたアンテナ装置は、セラミックで構成された複数の誘電体層が重ねられることで形成された多層構造の誘電体基板と、その所定の誘電体層同士の間に挟まれるように配置された平面アンテナ(導体膜)と、平面視したときに平面アンテナを囲むように各誘電体層同士の間に配置された複数の金属環と備えている。
【0004】
このようなアンテナ装置は、上述したような複数の金属環を設けることにより、小型化および高利得化を図ることができる。
【0005】
しかし、特許文献1に記載のアンテナ装置では、各誘電体層がセラミックで構成されているため、装置の高コスト化を招くと言う問題がある。
【0006】
特に、特許文献1に記載のアンテナ装置では、高利得化を図るために誘電体層と金属環とを交互に多数積層しなければならず、製造工程が複雑化し、その結果、かかる問題が顕著となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−206781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、アンテナ装置の高利得化および小型化を図りつつ、安価に製造することができるアンテナ装置、および、かかるアンテナ装置を備えるアンテナモジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的は、下記(1)〜(17)に記載の本発明により達成される。
(1) 樹脂材料を主材料として構成された誘電体基板と、
前記誘電体基板内に埋設され、金属材料で構成された反射器と、
前記誘電体基板の一方の面側に設けられた導体膜とを備えることを特徴とするアンテナ装置。
【0010】
(2) 前記反射器は、前記誘電体基板の前記一方の面側から他方の面側に向けて漸次拡がるような形状をなす内周面を有する上記(1)に記載のアンテナ装置。
【0011】
(3) 前記反射器の前記内周面は、前記誘電体基板の前記一方の板面の法線を軸とする回転体形状をなしている上記(2)に記載のアンテナ装置。
【0012】
(4) 前記反射器の前記内周面は、放物面またはそれに類似する面で構成されている上記(3)に記載のアンテナ装置。
【0013】
(5) 前記導体膜は、前記誘電体基板を平面視したときに前記反射器の内側に位置し、アンテナ素子を構成する導体パターンを含む上記(2)ないし(4)のいずれかに記載のアンテナ装置。
【0014】
(6) 前記導体膜は、前記誘電体基板の前記一方の面付近に埋設されている上記(1)ないし(5)のいずれかに記載のアンテナ装置。
【0015】
(7) 前記誘電体基板の他方の面側には、金属膜が設けられている上記(2)ないし(6)のいずれかに記載のアンテナ装置。
【0016】
(8) 前記金属膜は、前記誘電体基板を平面視したときに前記反射器の内側に位置し、無給電素子を構成する金属パターンを含む上記(7)に記載のアンテナ装置。
【0017】
(9) 前記金属膜は、前記誘電体基板の前記他方の面付近に埋設されている上記(7)または(8)に記載のアンテナ装置。
【0018】
(10) 前記反射器は、金属板をプレス成形して得られたものである上記(1)ないし(9)のいずれかに記載のアンテナ装置。
【0019】
(11) 前記樹脂材料の周波数45GHzにおける比誘電率が、2.7以下であり、誘電正接が1×10−3未満である上記(1)ないし(10)のいずれかに記載のアンテナ装置。
【0020】
(12) 前記樹脂材料のガラス転移点は、200℃以上である上記(1)ないし(11)のいずれかに記載のアンテナ装置。
【0021】
(13) 前記樹脂材料は、硬化性樹脂または重合性樹脂である上記(1)ないし(12)のいずれかに記載のアンテナ装置。
【0022】
(14) 前記重合性樹脂は、ノルボルネン系樹脂である上記(13)に記載のアンテナ装置。
【0023】
(15) ミリ波の受信および送信のうちの少なくとも一方を行う上記(1)ないし(14)のいずれかに記載のアンテナ装置。
【0024】
(16) 上記(1)ないし(15)のいずれかに記載のアンテナ装置と、
前記導体膜に電気的に接続された電子部品とを備えることを特徴とするアンテナモジュール。
【0025】
(17) 前記電子部品は、電磁波の送信および受信のうちの少なくとも一方を行う半導体素子を備えている上記(16)に記載のアンテナモジュール。
【発明の効果】
【0026】
本発明のアンテナ装置によれば、誘電体基板が樹脂を主材料として構成されているので、任意の形状の反射器を誘電体基板内に簡単に埋設させることができる。そのため、かかるアンテナ装置は、高利得化および小型化を図りつつ、安価に製造することができる。
【0027】
また、かかるアンテナ装置を備えるアンテナモジュールも、高利得化および小型化を図りつつ、安価に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態にかかるアンテナモジュールの概略構成を示す斜視図である。
【図2】図1中のA−A線断面図である。
【図3】図2に示すアンテナモジュールの製造方法を説明するための図である。
【図4】図2に示すアンテナモジュールの製造方法を説明するための図である。
【図5】図2に示すアンテナモジュールの製造方法を説明するための図である。
【図6】図2に示すアンテナモジュールの製造方法を説明するための図である。
【図7】図2に示すアンテナモジュールの製造方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明のアンテナ装置およびアンテナモジュールの実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0030】
図1は、本発明の第1実施形態にかかるアンテナモジュールの概略構成を示す斜視図、図2は、図1中のA−A線断面図である。なお、以下の説明では、説明の便宜上、図2中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0031】
図1に示すアンテナモジュール1は、マイクロ波やミリ波等の電磁波を送信・受信するものである。
【0032】
このアンテナモジュール1は、図2に示すように、アンテナ装置2と、電子部品3と、導体部41、42、43とを有し、アンテナ装置2と電子部品3とが導体部41、42、43を介して電気的に接続されている。
【0033】
このようなアンテナモジュール1においては、アンテナ装置2で受信した電磁波を電子部品3で処理したり、電子部品3からの給電によりアンテナ装置2が電磁波を送信したりする。なお、アンテナモジュール1は、電磁波の送信のみを行うものであってもよいし、電磁波の受信のみを行うものであってもよい。
【0034】
以下、アンテナモジュール1を構成する各部を順次詳細に説明する。
(アンテナ装置)
アンテナ装置2は、図2に示すように、誘電体基板21と、この誘電体基板21の一方の面側(図2にて下面側)に設けられた第1の導体膜(第1の導体パターン)22と、誘電体基板21の他方の面側(図2にて上面側)に設けられた第2の導体膜(第2の導体パターン)23と、誘電体基板21内に埋設された反射器24とを有している。
【0035】
[誘電体基板]
誘電体基板21は、板状をなしている。本実施形態では、誘電体基板21は、平面視にて、正方形をなしている。なお、誘電体基板21の平面視形状は、正方形に限らず、任意であり、例えば、長方形、台形、平行四辺形、菱形等の他の四角形であってもよいし、3角形、5角形等の他の多角形や、円形、楕円形等であってもよい。
この誘電体基板21は、樹脂材料を主材料として構成されている。
【0036】
すなわち、誘電体基板21は、樹脂(前記樹脂材料)を構成する低分子量成分を主材料として構成された液状の組成物を硬化することにより形成されたものである。なお、誘電体基板21の構成材料については、後述するアンテナ装置2(アンテナモジュール1)の製造方法の説明において、詳述する。
【0037】
また、誘電体基板21の平均厚さは、特に限定されないが、0.05〜50mm程度である。
【0038】
[反射器]
反射器24は、前述した誘電体基板21内に埋設されている。これにより、アンテナ装置2の小型化を図りつつ、アンテナ装置2のアンテナ利得を高めることができる。
【0039】
反射器24は、電磁波を反射する機能を有する。この反射器24は、金属材料で構成されている。また、本実施形態では、反射器24は、図示しない配線を介して接地されている。
【0040】
また、反射器24は、誘電体基板21を平面視したときに、環状をなしている。そして、反射器24は、誘電体基板21の一方の面側(図2にて下面側)から他方の面側(図2にて上面側)に向けて延びる壁状をなしている。
【0041】
本実施形態では、反射器24は、誘電体基板21の一方の面側(図2にて下面側)から他方の面側(図2にて上面側)に向けて漸次拡がるように形成された内周面241を有する。これにより、反射器24の内周面241が電磁波を好適に反射して、アンテナ装置2のアンテナ利得を高めることができる。
【0042】
また、反射器24の内周面241は、誘電体基板21の前記一方の板面の法線を軸とする回転体形状をなしている。これにより、アンテナ装置2のアンテナ利得を簡単かつ確実に高めることができる。
【0043】
そして、反射器24の内周面241は、放物面またはそれに類似する面で構成されている。これにより、後述する第2の導体膜23を1次反射器として機能させるとともに、反射器24を2次反射器として機能させることにより、アンテナ装置2のアンテナ利得を高めることができる。
【0044】
このような反射器24は、金属板をプレス成形して得られたものである。これにより、反射器24の寸法精度を高めることができる。その結果、所望の周波数の電磁波におけるアンテナ利得をより確実に高めることができる。また、このようなプレス成形は、従来のように金属層をセラミックス層と交互に複数回形成するよりも、簡単かつ安価である。なお、反射器24の製造方法については、後に詳述する。
【0045】
このような反射器24の構成材料としては、特に限定されず、各種金属材料を用いることができるが、例えば、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)等の各種金属材料が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、反射器24の構成材料としては、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、金(Au)、銀(Ag)が好適に用いられる。
【0046】
また、反射器24の大径側の端部における内径(内周面241の径)は、送信・受信の対象となる電磁波の周波数や第2の導体膜23の大きさ等に応じて適宜設定されるものであり、特に限定されないが、例えば、10〜200mm程度である。
【0047】
また、反射器24の壁厚は、特に限定されないが、例えば、0.05〜5mm程度である。
【0048】
[第1の導体膜]
第1の導体膜22は、前述した誘電体基板21の一方の面側(図2にて下面側)に設けられている。
【0049】
より具体的には、第1の導体膜(導体膜)22は、誘電体基板21の一方の面(図2にて下面)付近に埋設されている。本実施形態では、誘電体基板21の下面と第1の導体膜22の下面とで平坦面をなすように、第1の導体膜22が誘電体基板21の下面付近に埋設されている。これにより、誘電体基板21の前記一方の面における第1の導体膜22による凹凸の発生を防止または抑制することができる。その結果、得られるアンテナ装置2の実装性を向上させることができる。
【0050】
また、第1の導体膜22には、アンテナ素子221と、1対の電極222、223と、1対の接続電極224、225とが形成されている。すなわち、第1の導体膜22は、アンテナ素子221を構成する導体パターンと、1対の電極222、223を構成する導体パターンと、1対の接続電極224、225を構成する導体パターンとを含んでいる。
【0051】
アンテナ素子221は、電子部品3からの給電により、電磁波を放射する機能を有するもの(給電素子)である。
【0052】
このアンテナ素子221は、誘電体基板21を平面視したときに、前述した反射器24の内側に位置している。これにより、アンテナ素子221から放射された電磁波を反射器24で反射して、アンテナ装置2の高利得化を図ることができる。
【0053】
本実施形態では、アンテナ素子221は、平面視にて、4角形をなしている。なお、アンテナ素子の平面視形状は、4角形に限定されず、例えば、5角形、6角形等の他の多角形状、円形、楕円形等であってもよい。
【0054】
このようなアンテナ素子221の一辺の長さ(平面視形状が円形である場合には直径)は、送信・受信の対象となる電磁波の周波数等に応じて適宜設定され、前述したように誘電体基板21を平面視したときに反射器24の内側に位置し得る長さであれば、特に限定されないが、例えば、1〜50mm程度である。
【0055】
また、電極222は、図示しない配線を介して、接続電極224に電気的に接続され、また、電極223は、図示しない配線を介して、接続電極225に電気的に接続されている。
【0056】
このような第1の導体膜22の構成材料としては、特に限定されず、有機導電性材料や金属材料等の各種導電性材料を用いることができるが、例えば、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)等の各種金属材料が好適に用いられる。
【0057】
また、このような第1の導体膜22の平均厚さは、特に限定されないが、例えば、1〜35μm程度である。
【0058】
[第2の導体膜]
第2の導体膜23は、前述した誘電体基板21の他方の面側(図2にて上面側)に設けられている。
【0059】
より具体的には、第2の導体膜(導体膜)23は、誘電体基板21の他方の面(図2にて上面)付近に埋設されている。本実施形態では、誘電体基板21の上面が平坦面をなすように、第2の導体膜23が誘電体基板21の上面付近に埋設されている。すなわち、第2の導体膜23の下面と、誘電体基板21の上面のうちの第2の導体膜23が埋設されていない部分とが同一面となるように、第2の導体膜23が誘電体基板21の上面付近に埋設されている。
この第2の導体膜23は、金属材料で構成された金属膜である。
【0060】
本実施形態では、第2の導体膜23は、誘電体基板21を平面視したときに、前述した反射器24の内側に位置する無給電素子を構成する導体パターン(金属パターン)である。
【0061】
また、第2の導体膜23は、誘電体基板21を平面視したときに、円環状をなしている。ここで、第2の導体膜23の内周部231で囲まれた領域がスロットを構成する。なお、第2の導体膜23の平面視形状は、円環状に限定されず、例えば、四角環状、五画環状等の他の環状をなしていてもよいし、四角形、五角形等の多角形、円形、楕円形等の環状以外の形状をなしていてもよい。また、第2の導体膜23は、分割された複数の導体膜で構成されていてもよい。この場合、複数の導体膜同士の間の領域がスロットを構成する。
【0062】
このような第2の導体膜23は、反射器(1次反射器)として機能させることができる。本実施形態では、第2の導体膜23は、前述した反射器24の放物面またはこれに類似する面で構成された内周面241の焦点付近に設けられている。これにより、第2の導体膜を1次反射器として機能させるとともに反射器24を2次反射器として機能させて、アンテナ装置2のアンテナ利得を高めることができる。
【0063】
なお、第2の導体膜23は、反射器として機能する導体パターン以外の導体パターンを含んでいてもよい。例えば、第2の導体膜23は、電磁波の送信・受信や信号の伝達に関与しないダミー回路が形成された導体パターンを含んでいてもよい。このようなダミー回路を適宜形成することにより、第1の導体膜22と誘電体基板21との間の残留応力を緩和することができる。
【0064】
このような第2の導体膜23の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)等の各種金属材料が挙げられる。
【0065】
このような第2の導体膜23の内周部231の直径(スロットの幅)は、送信・受信の対象となる電磁波の周波数等に応じて適宜設定され、特に限定されないが、例えば、1〜50mm程度である。
【0066】
また、第2の導体膜23(1次反射器)の外径は、送信・受信の対象となる電磁波の周波数等に応じて適宜設定され、前述したように反射器24の大径側の端部における内周面241の径よりも小さければ、特に限定されないが、例えば、2〜70mm程度である。
【0067】
また、このような第2の導体膜23の平均厚さは、特に限定されないが、例えば、1〜35μm程度である。
【0068】
(電子部品)
電子部品3は、例えばMMIC(モノリシックマイクロ波集積回路)であり、前述したアンテナ素子221に給電する機能を有する。
【0069】
また、電子部品3に搭載される回路としては、特に限定されないが、例えば、信号の周波数を小さく変換する機能を有するダウンコンバータ回路、信号の周波数を大きく変換する機能を有するアップコンバータ回路、信号を増幅する機能を有する増幅回路、電磁波を送信するための送信回路、電磁波を受信するための受信回路、信号を変調する機能を有する変調回路、信号を復調する機能を有する復調回路等が挙げられ、特に、電子部品3には、送信回路および受信回路の少なくとも一方の回路が搭載される。
【0070】
このような電子部品3には、図示しない複数の端子が設けられており、これらの端子には、導体部42を介してアンテナ素子221に電気的に接続され、導体部41を介して電極222に電気的に接続され、導体部43を介して電極223に電気的に接続されている。これにより、1対の接続電極224、225と電子部品3とが1対の電極222、223および導体部41、43を介して電気的に接続される。そして、電子部品3が導体部42を介してアンテナ素子221に給電することができる。
【0071】
(導体部)
各導体部41、42、43は、各種ハンダ、各種ろう材等で構成されている。例えば、各導体部41、42、43を構成するハンダまたはろう材としては、Sn−Pb系の鉛ハンダ、Sn−Ag−Cu系、Sn−Zn−Bi系、Sn−Cu系、Sn−Ag−In−Bi系、Sn−Zn−Al系の各種鉛フリーハンダ、JISに規定された各種低温ろう材等が挙げられる。
【0072】
以上説明したように構成されたアンテナモジュール1およびアンテナ装置2によれば、誘電体基板21が樹脂材料を主材料として構成されているので、安価に製造することができる。
【0073】
また、かかるアンテナ装置2は、反射器24が設けられているので、高利得化を図ることができる。
【0074】
また、かかるアンテナ装置2によれば、反射器24が誘電体基板21内に埋設されているため、小型化を図ることができる。
【0075】
<アンテナ装置の製造方法>
次に、前述したアンテナモジュール1の製造方法の一例を説明する。
【0076】
図3ないし図7は、それぞれ、図2に示すアンテナモジュールの製造方法を説明するための図である。
【0077】
図2に示すアンテナモジュール1の製造方法は、[1]アンテナ装置2を製造する工程と、[2]アンテナ装置2と電子部品3とを導体部41、42、43を介して接続する工程とを有する。
【0078】
以下、各工程を順次詳細に説明する。
[1]アンテナ装置2の製造工程(アンテナ装置の製造方法)
[1−1]反射器24の形成工程
まず、反射器24を製造する。
【0079】
具体的には、まず、図3(a)に示すように、金属板124を用意する。
この金属板124は、前述した反射器24を形成するためのものである。この金属板124は、前述した反射器24の構成材料と同様の金属材料で構成されている。
【0080】
そして、図3(b)に示すように、凸型の成形面101aを備える第1の型101と、凹型の成形面102aを備える第2の型102とを用いて、金属板124をプレス成形する。ここで、第1の型101の成形面101aは、反射器24の内周面の形状に対応した形状をなし、第2の型102の成形面102aは、反射器24の外周面の形状に対応した形状をなしている。
【0081】
かかるプレス成形により、図3(c)に示すように、反射器24が得られる。
なお、プレス成形後に、バリ等の不要部分を除去するために、必要に応じて、反射器24に化学研磨やレーザー加工等を施してもよい。
【0082】
[1−2]第1の導体膜22の形成工程
一方、図4(a)に示すように、シート状の第1のキャリア103上に形成された第1の導体膜122を用意する。
【0083】
この第1の導体膜122は、前述した第1の導体膜22を形成するためのものであり、パターンニングが施される前のものである。このような第1の導体膜122は、例えば、第1のキャリア103上を覆うように一様に形成されている。また、第1の導体膜122は、前述した第1の導体膜22の構成材料と同様の導電性材料で構成されている。
【0084】
この第1の導体膜122の平均厚さ(第1の導体膜22の平均厚さ)は、第1の導体膜122の構成材料や第1の導体膜22に要求される特性等に応じて適宜設定されるものであり、特に限定されないが、例えば、1〜35μm程度である。
【0085】
第1のキャリア103は、第1の導体膜122を支持するものである。また、この第1のキャリア103は、第1の導体膜122をパターンニングして形成された第1の導体膜22をも支持するものであり、後述するキャリア除去工程[1−6]において除去されるものである。
【0086】
また、この第1のキャリア103は、第1の導体膜122に対して剥離可能に接合されているのが好ましい。より具体的には、第1のキャリア103と第1の導体膜122とは、人手等により容易に、かつ、これらの界面で正確に剥離できる程度の接合力で接合されているのが好ましい。これにより、後述するキャリア除去工程[1−6]において、簡単かつ確実に、第1のキャリア103を除去することができる。
【0087】
この第1のキャリア103の構成材料としては、第1のキャリア103が第1の導体膜122(第1の導体膜22)を支持することができれば、特に限定されず、各種樹脂材料等の有機材料、各種金属材料や各種セラミックス材料等の無機材料を用いることができるが、後述するキャリア除去工程[1−6]におけるキャリア除去の容易性の観点から、樹脂材料、金属材料が好適に用いられる。
【0088】
また、第1のキャリア103の平均厚さとしては、第1のキャリア103の構成材料や、後述するキャリア除去工程[1−6]における第1のキャリア103の除去方法に応じて適宜設定されるものであり、特に限定されないが、例えば、第1のキャリア103が銅等の金属材料で構成されている場合、10〜1000μm程度である。第1のキャリア103の厚さをこのような範囲とすることにより、後述する各工程において、第1のキャリア103と第1の導体膜22とが接合されてなる接合体の取り扱い性を良好なものとすることができる。また、第1のキャリア103を所望時に簡単かつ確実に除去することができる。
【0089】
例えば、第1のキャリア103および第1の導体膜122をそれぞれ銅で構成した場合、第1のキャリア103および第1の導体膜122で構成される接合体として、例えば、銅箔キャリア付きの極薄銅箔(三井金属工業株式会社製 MTSD-H、Micro Thin Ex等)を用いることができる。
【0090】
なお、本実施形態では、第1のキャリア103の厚さが比較的薄い場合を例に説明するが、第1のキャリア103の厚さを上記の範囲よりも厚くしてもよい。この場合、第1のキャリア103の剛性が高められ、後述する基板形成工程[1−5]において、第1のキャリア103および第1の導体膜22の不本意な変形を抑えることができる。その結果、所望の形状を有する誘電体基板21を容易に形成することができる。
【0091】
そして、図4(b)に示すように、第1の導体膜122をパターンニングして、第1の導体膜22を形成する。
【0092】
第1の導体膜122のパターンニング法としては、特に限定されないが、例えば、フォトリソグラフィー法とエッチング法とを組み合わせた方法、レーザー加工等が挙げられる。
【0093】
[1−3]第2の導体膜23の形成工程
また、図4(c)に示すように、シート状の第2のキャリア104上に形成された第2の導体膜123を用意する。
【0094】
この第2の導体膜123は、前述した第2の導体膜23を形成するためのものであり、パターンニングが施される前のものである。このような第2の導体膜123は、例えば、第2の導体膜123は、第2のキャリア104上を覆うように一様に形成されている。また、第2の導体膜123は、前述した第2の導体膜23の構成材料と同様の金属材料で構成されている。
【0095】
この第2の導体膜123の平均厚さ(第2の導体膜23の平均厚さ)は、第2の導体膜123の構成材料や第2の導体膜23に要求される特性等に応じて適宜設定されるものであり、特に限定されないが、例えば、1〜35μm程度である。
【0096】
第2のキャリア104は、第2の導体膜123を支持するものである。また、この第2のキャリア104は、第2の導体膜123をパターンニングして形成された第2の導体膜23をも支持するものであり、後述するキャリア除去工程[1−6]において除去されるものである。
【0097】
また、この第2のキャリア104は、第2の導体膜123に対して剥離可能に接合されているのが好ましい。より具体的には、第2のキャリア104と第2の導体膜123とは、人手等により容易に、かつ、これらの界面で正確に剥離できる程度の接合力で接合されているのが好ましい。これにより、後述するキャリア除去工程[1−6]において、簡単かつ確実に、第2のキャリア104を除去することができる。
【0098】
この第2のキャリア104の構成材料としては、第2のキャリア104が第2の導体膜123を支持することができれば、特に限定されず、前述した第1のキャリア103と同様のものを用いることができる。
【0099】
また、第2のキャリア104の平均厚さとしては、第2のキャリア104の構成材料や、後述するキャリア除去工程[1−6]における第2のキャリア104の除去方法に応じて適宜設定されるものであり、特に限定されないが、例えば、第2のキャリア104が銅等の金属材料で構成されている場合、30〜100μm程度である。
【0100】
このような第2のキャリア104および第2の導体膜123で構成される接合体は、前述した第1のキャリア103および第1の導体膜122で構成される接合体と同じものを用いることができる。
【0101】
例えば、第2のキャリア104および第2の導体膜123をそれぞれ銅で構成した場合、第2のキャリア104および第2の導体膜123で構成される接合体として、例えば、銅箔キャリア付きの極薄銅箔(三井金属工業株式会社製 MTSD-H、Micro Thin Ex等)を用いることができる。
【0102】
なお、本実施形態では、第2のキャリア104の厚さが比較的薄い場合を例に説明するが、第2のキャリア104の厚さを上記の範囲よりも厚くしてもよい。この場合、第2のキャリア104の剛性が高められ、後述する基板形成工程[1−5]において、第2のキャリア104および第2の導体膜23の不本意な変形を抑えたり、液状の組成物121の液面と第2のキャリア104および第2の導体膜23との間に隙間が生じるのを防止したりすることができる。その結果、所望の形状を有する誘電体基板21を容易に形成することができる。
【0103】
そして、図4(d)に示すように、第2の導体膜123をパターンニングして、第2の導体膜23を形成する。
【0104】
第2の導体膜123のパターンニング法としては、特に限定されず、前述した第1の導体膜122のパターンニング法と同様の方法を用いることができる。
【0105】
[1−4]組成物供給工程
(1−4a)
次に、図5(a)に示すように、上方に開口する収納部C1を備える容器105を用意する。
【0106】
この容器105は、収納部C1の下面が平坦面で構成されている。すなわち、容器105は、平坦面で構成された底面105aを有している。この容器105は、底面105aが水平となるように設置されるのが好ましい。これにより、後述する基板形成工程[1−5]において、厚さの均一な誘電体基板21を容易に形成することができる。
【0107】
また、容器105の内周面には、離型処理が施されていてもよい。これにより、後述する工程(1−6a)において、誘電体基板21を容器105から簡単に取り出すことができる。かかる離型処理としては、特に限定されないが、例えば、容器105の内周面にフッ素系やシリコーン系の離型剤を塗布する処理等が挙げられる。
【0108】
なお、図5の図示では、容器105が1部材で構成されているが、容器105を分割可能な複数の部材で構成(例えば、底板と枠体とで構成)してもよい。これにより、後述する工程(1−6a)において、容器105から誘電体基板21を容易に取出すことができる。
【0109】
(1−4b)
そして、図5(b)に示すように、容器105の底面105a上に、第1のキャリア103を第1の導体膜22が形成された側の面を上側にして設置する。すなわち、第1のキャリア103の第1の導体膜22が形成されていない側の面が容器105の底面105aに対面かつ接するようにして、第1のキャリア103を収納部C1内に設置する。
【0110】
次いで、図5(c)に示すように、第1の導体膜22の第1のキャリア103とは反対の面側に、反射器24を設置する。このとき、反射器24は、容器105の収納部C1内に収められている。また、このとき、反射器24を、第1の導体膜22または第1のキャリア103に、エポキシ樹脂系接着剤やフェノール樹脂系接着剤等により固定してもよい。
【0111】
なお、本工程(1−4b)は、第1の導体膜22の第1のキャリア103とは反対の面側に反射器24を設置した後に、容器105の底面105a上に第1のキャリア103を設置してもよい。
【0112】
(1−4c)
次に、図6(a)に示すように、容器105の収納部C1内に、液状の組成物121を充填する。
【0113】
この液状の組成物121は、後述する基板形成工程[1−5]において、硬化または重合させることにより、誘電体基板21を形成するためのものである。
【0114】
したがって、収納部C1への組成物121の供給量は、誘電体基板21が所望の厚さとなるように調整する。その際、後述する基板形成工程[1−5]における組成物121の硬化または重合に伴う収縮量等を考慮して、かかる供給量を設定する。
【0115】
このような液状の組成物121は、樹脂の低分子量成分を主成分として構成されている。
【0116】
かかる硬化性樹脂としては、誘電体基板21に必要な機能を実現し得るものであれば、特に限定されず、各種熱硬化性樹脂の低分子量成分、各種熱可塑性樹脂の低分子量成分を用いることができる。
【0117】
また、かかる低分子量成分としては、モノマー、ダイマー、トリマー、オリゴマー、プレポリマーが挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0118】
特に、かかる硬化性樹脂の低分子量成分としては、エポキシ樹脂のプレポリマーと硬化剤の組合せを用いるのが好ましい。エポキシ樹脂は、比誘電率が比較的低く、また、ガラス転移点も比較的高い。
【0119】
また、熱可塑性樹脂の低分子量成分としては、重合性モノマーを用いるのが好ましい。
この重合性モノマーとしては、ノルボルネン系モノマー、(メタ)アクリル系モノマー等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0120】
また、液状の組成物121は、前述したような樹脂の低分子量成分以外の成分を実質的に含まずに、加熱により硬化または重合するように構成されているのが好ましい。ここで、『実質的に含まず』とは、組成物121中に含まれる低分子量成分以外の成分の含有量が5%以下の状態を指す。組成物121がこのように構成されていると、得られる誘電体基板21の構成材料中における極性基の構造の含有量を少なくすることができる。その結果、形成される誘電体基板21の比誘電率を低くすることができ、高利得化を図ることができる。
【0121】
これらの中でも、ノルボルネン系モノマーは、重合触媒等の添加剤を少なくしても、加熱により比較的容易に重合させることができるため好ましい。
【0122】
また、組成物121に含まれるノルボルネン系モノマーは、炭化水素以外の構造(極性の大きい構造)ができるだけ少ないものが好ましい。これにより、得られる誘電体基板21の比誘電率および誘電正接を低めることができる。
【0123】
前記ノルボルネン系モノマーとしては、特に制限はないが、下記一般式(1)で示される構造を有するノルボルネン系モノマーが好ましい。
【0124】
【化1】

[上記一般式(1)において、R〜Rは、水素、線状または分岐状の炭素数1〜20のアルキル基、芳香族基、脂環族基、グリシジルエーテル基、下記一般式(2)で表される置換基のいずれかであり、それぞれ同一でも異なっていてもよい。また、R〜Rの少なくとも1つは、炭素数1〜12のアルキル基または脂肪族炭化水素基である。mは0〜4の整数である。]
【0125】
【化2】

[上記一般式(2)において、Rは、それぞれ、水素、メチル基またはエチル基であり、R、RおよびRは、線状または分岐状の炭素数1〜20のアルキル基、線状または分岐状の炭素数1〜20のアルコキシ基、線状または分岐状の炭素数1〜20のアルキルカルボニルオキシ基、線状または分岐状の炭素数1〜20のアルキルペルオキシ基、置換もしくは未置換の炭素数6〜20のアリールオキシ基のいずれかであり、それぞれ同一でも異なっていてもよい。また、nは0〜5の整数である。]
【0126】
上記一般式(1)中の線状または炭素数1〜20の線状または分岐状のアルキル基としては、特に制限はないが、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等が挙げられるが、これらの中でも、誘電体基板21の脆性と剛性が両立するという理由からプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基が好ましい。
【0127】
上記一般式(1)中の芳香族基としては、特に制限はないが、フェニル基、フェネチル基、ナフチル基等が挙げられるが、これらの中でも、誘電体基板21の誘電特性と耐熱性の両立という理由からフェネチル基が好ましい。
【0128】
上記一般式(1)中の脂環族としては、特に制限はないが、シクロヘキシル基、ノルボルネニル基、ジヒドロジシクロペンタジエチル基、テトラシクロドデシル基、メチルテトラシクロドデシル基、テトラシクロドデカジエチル基、ジメチルテトラシクロドデシル基、エチルテトラシクロドデシル基、エチリデニルテトラシクロドデシル基、フエニルテトラシクロドデシル基、シクロペンタジエチル基の三量体等の脂環族基等が挙げられる。
【0129】
上記一般式(1)中のmは、0〜4の整数であり、特に制限はないが、0または1が好ましい。
【0130】
また、上記一般式(1)中R〜Rの少なくとも1つは、炭素数1〜12のアルキル基または脂肪族炭化水素基である。これにより、誘電体基板21の45GHzにおける比誘電率を2.7以下に、さらに、誘電正接を1×10−3未満にすることができる。
【0131】
上記一般式(2)の置換基中のRは、誘電特性が優れるという理由から水素が好ましい。
【0132】
上記置換基中のR、RおよびRは、独立に、線状または分岐状の炭素数1〜20のアルキル基、線状または分岐状の炭素数1〜20のアルコキシ基、線状または分岐状の炭素数1〜20のアルキルカルボニルオキシ基、線状または分岐状の炭素数1〜20のアルキルペルオキシ基そして置換もしくは未置換の炭素数6〜20のアリールオキシ基であれば、特に限定されるわけではないが、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチロキシ基、アセトキシ基、プロピオキシ基、ブチロキシ基、メチルペルオキシ基、イソプロピルペルオキシ基、t−ブチルペルオキシ基、フェノキシ基、ヒドロキシフェノキシ基、ナフチロキシ基、フェノキシ基、ヒドロキシフェノキシ基、ナフチロキシ基等が挙げられる。
【0133】
これらの中でも、導体層22、23との密着性に優れるという理由からメトキシ基、エトキシ基が好ましい。
【0134】
前記組成物121の重合性モノマーとしてノルボルネン系のモノマーを適用する場合、組成物121は重合触媒を含むことが好ましい。
【0135】
前記重合触媒としては、特に制限はないが、パラジウムイオンを含有する重合触媒触、ニッケルと白金を含有する重合触媒が好ましく、これらは、単独でも混合して用いてもよい。
【0136】
前記パラジウムイオンを含有する重合触媒触、ニッケルと白金を含有する重合触媒の添加量は、モル比で100,000(ノルボルネン系モノマー):0.3〜10(パラジウムイオンを含有する重合触媒触、ニッケルと白金を含有する重合触媒)であることが好ましく、100,000:0.5〜5であることが特に好ましい。かかる添加量とすることにより、誘電体基板21の誘電特性を向上することができる。
【0137】
また、硬化または重合後の組成物121の周波数45GHzにおける比誘電率(誘電体基板21の構成材料として用いられる樹脂材料の比誘電率)は、2.7以下であるのが好ましく、2.5以下であるのがより好ましい。また、硬化後または重合後の組成物121の周波数45GHzにおける誘電正接は1×10−3未満であるのが好ましく、8×10−4未満であることが特に好ましい。これにより、マイクロ波のような波長の短い電磁波を用いた場合であっても、誘電体基板21内での電磁波の減衰(損失)を抑えることができる。その結果、アンテナ装置2をマイクロ波用として用いた場合でも高利得化および小型化を図ることができる。
【0138】
ここで、比誘電率および誘電特性は、φ20mm、厚さ0.35mmに切り出したものを測定サンプルとし、測定サンプルを遮断円筒導波管の導体円筒の中央にセットした。この共振器の励振および検波は先端に微小ループを持つ外径1.2mmのUT−47セミリジッド同軸線路を用いた。比誘電率は共振周波数の測定値より、誘電正接はQ値より求めた。これらの測定法は、JIS1660−1、IEC61338−1−4に準ずるものである。
【0139】
また、硬化または重合後の組成物121のガラス転移点(誘電体基板21の構成材料として用いられる樹脂材料のガラス転移点)は、200℃以上であるのが好ましく、250〜300℃であるのがより好ましい。これにより、得られるアンテナ装置2は、半田実装における耐熱性に優れたものとなる。
【0140】
ここで、ガラス転移温度は、組成物121からなる測定サンプルを準備し、動的粘弾性測定装置(セイコーインスツル株式会社製、型番:DMS6100)により、測定サンプルサイズ:4mm(幅)×20mm(長さ)×100μm(厚み)、周波数:1Hz、測定温度範囲:30〜300℃、昇温速度:10℃/分により測定し、Tanδのピークが発現する温度を測定値とした。
【0141】
また、組成物121の粘度は、0.5〜200Pa・sであるのが好ましく、1〜150Pa・sであるのがより好ましい。これにより、液状の組成物121が所望の領域の全域に亘って容易に拡がるので、所望の形状をなす誘電体基板21を得ることができる。なお、かかる粘度は、例えば常温(25℃)でブルックフィールド型粘度計、E型粘度計等を用いて、測定条件0.5〜5rpmで評価することができる。
【0142】
なお、誘電体基板21に必要な機能を実現し得るものであれば、組成物121中には、低分子成分以外の成分を含んでいてもよい。かかる低分子量成分以外の成分としては、例えば、硬化剤、硬化助剤、硬化促進剤、重合開始剤、無機充填剤、酸化防止剤等が挙げられる。また、低分子量成分は、光、放射線等で硬化または重合するものであってもよい。
【0143】
組成物121中における前記低分子量成分の含有量は、例えば、90〜100wt%であるのが好ましく、95〜100wt%であるのがより好ましい。これにより、得られる誘電体基板21の構成材料中における極性基の含有量を少なくすることができる。
【0144】
(1−4d)
次に、図6(b)に示すように、液状の組成物121の第1の導体膜22とは反対の面側に、第2の導体膜23が下側となるようにして、第2のキャリア104および第2の導体膜23を設置する。すなわち、第2のキャリア104の第2の導体膜23が形成されていない側の面が上方を向くようにして、第2の導体膜23を液状の組成物121の液面上に設置する。
【0145】
以上説明したようにして、第1の導体膜22上に反射器24を埋めるように液状の組成物121を供給し、この組成物121の第1の導体膜22とは反対側の面上に第2の導体膜23を設置する。
【0146】
特に、この工程(組成物供給工程)[1−4]では、容器105の底面105a上に第1のキャリア103を設置した状態で、容器105内に組成物121を充填することにより、第1の導体膜22上に組成物121を供給する。これにより、容器105への組成物121の供給量に応じて、得られる誘電体基板21の厚さを調整することができる。そのため、所望の厚さを有する誘電体基板21を容易かつ安価に形成することができる。
【0147】
また、組成物121を容器105内に供給する前に、第1の導体膜122および第2の導体膜123をパターンニングして第1の導体膜22および第2の導体膜23を形成しているので、組成物121を容器105内に供給する際、容器105内の第1の導体膜22および第2の導体膜23は、それぞれ、パターンニングされている。これにより、得られるアンテナ装置2において、パターンニングされた第1の導体膜22を前述したように誘電体基板21の一方の面付近に配設(埋設)させることができる。そのため、誘電体基板21の一方の面における第1の導体膜22による凹凸の発生を防止または抑制することができる。同様に、得られるアンテナ装置2において、パターンニングされた第2の導体膜23を前述したように誘電体基板21の他方の面付近に配設(埋設)させることができる。そのため、誘電体基板21の他方の面における第2の導体膜23による凹凸の発生を防止または抑制することができる。その結果、得られるアンテナ装置2の実装性を向上させることができる。
【0148】
[1−5]誘電体基板21を形成する工程(基板形成工程)
次に、図6(c)に示すように、液状の組成物121を硬化または重合させて、誘電体基板21を形成する。
【0149】
このとき、誘電体基板21は容器105内に収納されており、その誘電体基板21内には、反射器24が埋設され、また、誘電体基板の一方の面側には、パターンニング済みの第1の導体膜22が第1のキャリア103と接合した状態のまま埋設され、誘電体基板21の他方の面側には、パターンニング済みの第2の導体膜23が第2のキャリア104と接合した状態のまま埋設されている。
【0150】
すなわち、容器105内には、アンテナ装置2が第1のキャリア103と第2のキャリア104との間に挟持された状態で収納されている。
【0151】
本実施形態では、組成物121を硬化または重合させる。なお、図6(c)では、液状の組成物121が加熱により硬化する場合を例として図示している。
【0152】
組成物121の加熱方法としては、特に限定されないが、例えば、加熱された熱盤上に容器105を載置して組成物121を加熱する方法、加熱されたオーブン内に容器105を載置して組成物121を加熱する方法、赤外線を組成物121に照射して加熱する方法等が挙げられる。
【0153】
この加熱温度は、組成物121の組成や加熱時間等に応じて適宜設定されるものであり、組成物121を硬化または重合させて誘電体基板21を形成することができるものであれば、特に限定されないが、例えば、樹脂の低分子量成分(重合性モノマー)としてノルボルネン系モノマーを用いた場合、30〜220℃程度である。
【0154】
また、加熱時間は、組成物121の組成や加熱温度等に応じて適宜設定されるものであり、組成物121を硬化または重合させて誘電体基板21を形成することができるものであれば、特に限定されないが、例えば、樹脂の低分子量成分(重合性モノマー)としてノルボルネン系モノマーを用いた場合、1〜24時間程度である。
【0155】
また、この加熱は、第2のキャリア104の上面を板状部材の板面等の面に貼り付けた状態で行ってもよい。これにより、第2のキャリア104および第2の導体膜23の不本意な変形を抑えたり、液状の組成物121の液面と第2のキャリア104および第2の導体膜23との間に隙間が生じるのを防止したりすることができる。その結果、所望の形状の誘電体基板21を容易に形成することができる。また、第2のキャリア104の上面に貼り付ける面の形状を適宜設定することにより、その面の形状に応じて誘電体基板21の板面を形成することもできる。
【0156】
[1−6]キャリア除去工程
(1−6a)
次に、図7(a)に示すように、誘電体基板21を第1のキャリア103および第2のキャリア104が接合された状態のまま容器105から取出す。
【0157】
(1−6b)
そして、図7(b)に示すように、第1のキャリア103および第2のキャリア104をそれぞれ誘電体基板21から除去する。これにより、アンテナ装置2が得られる。
【0158】
第1のキャリア103および第2のキャリア104の除去方法としては、第1のキャリア103および第2のキャリア104の構成材料や厚さ等に応じて適宜設定されるものであり、特に限定されないが、例えば、溶剤を用いて溶かす方法、機械加工により除去する方法、剥離する方法等を用いることができる。中でも、かかる除去方法としては、剥離する方法を用いるのが好ましい。この場合、例えば、前述したような銅箔キャリア付きの極薄銅箔を用いることができる。
【0159】
なお、本工程[1−6]は、第2のキャリア104を誘電体基板21から除去した後に、誘電体基板21を第1のキャリア103と接合した状態のまま容器105から取出し、その後、第1のキャリア103を誘電体基板21から除去してもよい。
【0160】
[2]アンテナ装置2と電子部品3との接続工程
その後、図7(c)に示すように、導体部41、42、43を介して、アンテナ装置2と電子部品3とを接続する。
【0161】
以上説明したようなアンテナモジュール1およびアンテナ装置2の製造方法によれば、
樹脂材料を用いて誘電体基板を形成するので、任意の形状の反射器を誘電体基板内に簡単に埋設させることができる。そのため、高利得でかつ小型なアンテナ装置を安価に製造することができる。
【0162】
特に、かかる製造方法によれば、前述したような容器105を用いているので、容器105への組成物121の供給量に応じて、得られる誘電体基板21の厚さを調整することができる。そのため、所望の厚さを有する誘電体基板21を容易かつ安価に形成することができる。
【0163】
以上、本発明について、好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0164】
例えば、本発明のアンテナ装置およびアンテナモジュールの各部の構成は、同様の機能を発揮する任意の構成のものに置換することができ、また、任意の構成を付加することもできる。
【0165】
また、前述した実施形態では、反射器をプレス成形により製造した例を説明したが、これに限定されず、例えば、反射器の製造方法としては、金属ブロックを切削する方法、反射器の形状に対応した凹部または凸部の表面上に各種成膜法を用いて金属膜を形成する方法等を用いてもよい。
【0166】
また、前述した実施形態では、アンテナ装置の反射器の内周面が放物面またはそれに類似する面で構成されている場合を例に説明したが、これに限定されず、例えば、反射器の内周面は、円錐面で構成されていてもよい。
【0167】
また、前述した実施形態では、アンテナ装置の反射器の内周面の横断面が円形をなす場合を例に説明したが、これに限定されず、例えば、反射器の横断面形状は、四角形、五角形等の多角形等であってもよい。
【0168】
また、前述した実施形態では、アンテナ装置の反射器の内周面が誘電体基板の一方の面側から他方の面側に向けて拡がる形状をなす場合を例に説明したが、これに限定されず、例えば、反射器の内周面は、誘電体基板の厚さ方向で一定となるような筒状をなしていてもよい。
【0169】
また、前述した実施形態では、反射器が誘電体基板の厚さ方向での略全域に亘って設けられている場合を説明したが、これに限定されず、反射器は、例えば、誘電体基板の厚さ方向での中央部のみに設けられていてもよいし、誘電体基板の厚さ方向での一部のみに設けられていてもよい。
【0170】
また、前述した実施形態では、給電されるアンテナ素子が反射器の小径側に設けられている場合を説明したが、これに限定されず、例えば、アンテナ素子が反射器の大径側(焦点付近)に設けられていてもよい。この場合、反射器の小径側は有底としてもよい。また、この場合、例えば、誘電体基板を貫通する貫通電極を設け、この貫通電極を介して、アンテナ素子と電子部品とを電気的に接続するように構成することができる。
【0171】
また、前述した実施形態では、反射器の大径側に1次反射器として機能する導体膜を設けた場合を説明したが、この導体膜を省略してもよい。
【0172】
また、前述した実施形態では、半田やろう材等で構成された導体部を介して第1の導体膜と電子部品とを電気的に接続した場合を説明したが、これに限定されず、例えば、第1の導体膜と電子部品との間に、両面プリント基板を介在させ、この両面プリント基板に対し第1の導体膜および電子部品をそれぞれ電気的に接続してもよい。この場合、両面プリント基板に対し第1の導体膜および電子部品をそれぞれ半田やろう材等を介して電気的に接続してもよいし、第1の導体膜が両面プリント基板の一方の面の導体膜を兼ねていてもよい。また、電子部品と第1の導体膜とは、電磁結合により電気的に接続されていてもよい。
【符号の説明】
【0173】
1 アンテナモジュール
2 アンテナ装置
3 電子部品
21 誘電体基板
22 導体膜
23 導体膜
24 反射器
41 導体部
42 導体部
43 導体部
101 第1の型
101a 成形面
102 第2の型
102a 成形面
103 第1のキャリア
104 第2のキャリア
105 容器
105a 底面
121 組成物
122 第1の導体膜
123 第2の導体膜
124 金属板
221 アンテナ素子
222 電極
223 電極
224 接続電極
225 接続電極
231 内周部
241 内周面
C1 収納部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂材料を主材料として構成された誘電体基板と、
前記誘電体基板内に埋設され、金属材料で構成された反射器と、
前記誘電体基板の一方の面側に設けられた導体膜とを備えることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
前記反射器は、前記誘電体基板の前記一方の面側から他方の面側に向けて漸次拡がるような形状をなす内周面を有する請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記反射器の前記内周面は、前記誘電体基板の前記一方の板面の法線を軸とする回転体形状をなしている請求項2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記反射器の前記内周面は、放物面またはそれに類似する面で構成されている請求項3に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記導体膜は、前記誘電体基板を平面視したときに前記反射器の内側に位置し、アンテナ素子を構成する導体パターンを含む請求項2ないし4のいずれかに記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記導体膜は、前記誘電体基板の前記一方の面付近に埋設されている請求項1ないし5のいずれかに記載のアンテナ装置。
【請求項7】
前記誘電体基板の他方の面側には、金属膜が設けられている請求項2ないし6のいずれかに記載のアンテナ装置。
【請求項8】
前記金属膜は、前記誘電体基板を平面視したときに前記反射器の内側に位置し、無給電素子を構成する金属パターンを含む請求項7に記載のアンテナ装置。
【請求項9】
前記金属膜は、前記誘電体基板の前記他方の面付近に埋設されている請求項7または8に記載のアンテナ装置。
【請求項10】
前記反射器は、金属板をプレス成形して得られたものである請求項1ないし9のいずれかに記載のアンテナ装置。
【請求項11】
前記樹脂材料の周波数45GHzにおける比誘電率が、2.7以下であり、誘電正接が1×10−3未満である請求項1ないし10のいずれかに記載のアンテナ装置。
【請求項12】
前記樹脂材料のガラス転移点は、200℃以上である請求項1ないし11のいずれかに記載のアンテナ装置。
【請求項13】
前記樹脂材料は、硬化性樹脂または重合性樹脂である請求項1ないし12のいずれかに記載のアンテナ装置。
【請求項14】
前記重合性樹脂は、ノルボルネン系樹脂である請求項13に記載のアンテナ装置。
【請求項15】
ミリ波の受信および送信のうちの少なくとも一方を行う請求項1ないし14のいずれかに記載のアンテナ装置。
【請求項16】
請求項1ないし15のいずれかに記載のアンテナ装置と、
前記導体膜に電気的に接続された電子部品とを備えることを特徴とするアンテナモジュール。
【請求項17】
前記電子部品は、電磁波の送信および受信のうちの少なくとも一方を行う半導体素子を備えている請求項16に記載のアンテナモジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−211447(P2011−211447A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−76400(P2010−76400)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】