説明

アンモニアの回収装置及び回収方法

【課題】アンモニアを効率良く回収でき且つエネルギー消費を抑えることができるとともに、スケールの影響を受けずに連続的運転を可能にしたアンモニア回収装置及び回収方法を提供する。
【手段】アンモニア回収装置1は、2重効用に接続される第1フラッシュ型蒸発器A1と第2フラッシュ型蒸発器A2を備える。蒸発器A1は缶B1と加熱器C1とを備え、蒸発器A2は缶B2と加熱器C2とを備える。加熱器C1には外部蒸気が供給される。缶B1で生成されたアンモニア含有蒸気は加熱器C2の加熱源として利用される。缶B2には外部から処理液が供給される管13が接続され、缶B2で蒸発されなかったアンモニア含有処理液は、缶B1に供給される。缶B2には凝縮器2が接続され、加熱器C2にはアンモニア水を排出する管19が接続され、管19は凝縮器2に接続される。缶B1にはアンモニアが除去された処理液を排出する管9が接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンモニアを含有する廃液よりアンモニアを回収する装置及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アンモニアを含有する廃液よりアンモニアを回収する方法としては、放散塔及び吸収塔を備えたアンモニアストリッピング設備を用いる方法が知られている。
しかし、上記の方法では、高効率でアンモニアを回収できない。加えて、蒸発分離したアンモニア含有蒸気は、そのまま吸収塔に送られ、冷却・凝縮させるためエネルギー消費が多いという問題もある。
そこで、複数の蒸発器を多重効用缶に構成したアンモニア回収装置が提案されている(以下の特許文献1参照)。このような構成により、アンモニアを効率良く回収でき、且つエネルギー消費を抑えることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−38098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1に記載の従来例では、蒸発器としては水平管型蒸発器が用いられているため、スケール成分の多い廃液の場合には、伝熱面にスケールが付着し、運転が困難となるという問題が生じる。
【0005】
本願発明は、上記課題に鑑みて考え出されたものであり、その目的は、アンモニアを効率良く回収でき且つエネルギー消費を抑えることができるとともに、スケールの影響を受けずに連続的運転を可能にしたアンモニア回収装置及び回収方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係るアンモニア回収装置は、アンモニアを含有する処理液からアンモニアを回収するアンモニア回収装置であって、アンモニア含有処理液を加熱する加熱器と、前記加熱器から供給されたアンモニア含有処理液をフラッシュ蒸発させるフラッシュ缶とから構成されるフラッシュ型蒸発器を複数連続的に接続し、各フラッシュ型蒸発器において蒸発処理が多工程で実行される多重効用缶を構成し、初段フラッシュ型蒸発器の加熱器には外部蒸気が供給されるように配管されるとともに、前記複数のフラッシュ型蒸発器の相互間においては、前段フラッシュ型蒸発器のフラッシュ缶で生成されたアンモニア含有蒸気を後段フラッシュ型蒸発器の加熱器の加熱源として導くように配管され、最終段フラッシュ型蒸発器のフラッシュ缶には、当該フラッシュ缶で生成されたアンモニア含有蒸気を凝縮しアンモニア水として排出する凝縮器を接続するとともに、初段を除く各段のフラッシュ型蒸発器の加熱器には、前段フラッシュ型蒸発器のフラッシュ缶から供給されたアンモニア含有蒸気がアンモニア含有処理液と熱交換され凝縮してアンモニア水として排出するアンモニア水排出ラインを接続したことを特徴とする。
【0007】
上記の如く、蒸発部と加熱部とを分離したフラッシュ型蒸発器を用いることにより、スケールの影響を受けにくくなり、連続的な装置の運転が可能になる。また、複数のフラッシュ型蒸発器を多重効用に接続した構成により、省エネルギー化が図られる。さらに、各段のフラッシュ型蒸発器にてアンモニア回収運転が行われることにより、全体としてアンモニア除去率が大幅に向上する。
なお、用語「フラッシュ缶」とは、液体を飽和蒸気圧以下の圧力の雰囲気中に配置することによりフラッシュ蒸発させ、缶内に水平管等の加熱手段を有さない蒸発缶を意味する。
【0008】
本発明は、前記最終段フラッシュ型蒸発器のフラッシュ缶には、外部からアンモニア含有処理液を供給する第1アンモニア含有処理液供給ラインを配管するとともに、前記複数のフラッシュ型蒸発器の相互間においては、後段フラッシュ型蒸発器のフラッシュ缶で蒸発されなかったアンモニア含有処理液を前段フラッシュ型蒸発器のフラッシュ缶に供給する第2アンモニア含有処理液供給ラインを配管し、初段フラッシュ型蒸発器のフラッシュ缶にはアンモニアが除去されたアンモニア除去処理液を排出するアンモニア除去処理液排出ラインを接続するように構成するのが好ましい。
【0009】
外部からアンモニア含有処理液を供給するのは、複数のフラッシュ缶の何れであってもよいが、特に、最終段フラッシュ型蒸発器のフラッシュ缶に供給する構成の場合が、最も効率良くアンモニアを回収でき、且つ省エネルギー化を実現できる。
【0010】
本発明は、さらに、各段フラッシュ型蒸発器のフラッシュ缶に設けられ、内部に貯留されるアンモニア含有処理液の液面が設定上限値及び設定下限値に達したことを検出する検知手段と、前記第1アンモニア含有処理液供給ラインに設けられる第1制御弁と、前記第2アンモニア含有処理液供給ライン毎に設けられる第2制御弁と、前記アンモニア除去処理液排出ラインに設けられる第3制御弁と、前記検知手段の検知結果により、前記第1〜第3制御弁の開閉を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、第1制御弁及び第2制御弁を閉状態し且つ第3制御弁を閉状態として各段フラッシュ缶にアンモニア含有処理液を供給する第1処理工程と、各段フラッシュ缶の液面が設定上限値に達した場合には第1制御弁及び第2制御弁を開状態として蒸発運転を行う第2処理工程と、各段フラッシュ缶のいずれかの液面が設定下限値に達した場合には第3制御弁を開状態としてアンモニアが除去された処理液を所定量排出する第3処理工程を、繰り返し行う場合もある。
【0011】
上記構成により、バッチ要素を付加した運転を行うことができ、アンモニア回収効率を向上させることができる。
【0012】
また、本発明に係るアンモニア回収方法は、アンモニアを含有する処理液からアンモニアを回収するアンモニア回収方法であって、アンモニア含有処理液を加熱する加熱器と、前記加熱器から供給された加熱アンモニア含有処理液をフラッシュ蒸発させるフラッシュ缶とから構成されるフラッシュ型蒸発器を複数備え、これら複数のフラッシュ型蒸発器を多重効用に接続し、初段フラッシュ型蒸発器の加熱器には外部蒸気を供給し、前記複数のフラッシュ型蒸発器の相互間においては、前段フラッシュ型蒸発器のフラッシュ管で生成されたアンモニア含有蒸気を後段フラッシュ型蒸発器の加熱器の加熱源として導き、最終段フラッシュ型蒸発器のフラッシュ缶に凝縮器を接続し、この凝縮器にて当該フラッシュ缶から供給されたアンモニア含有蒸気を凝縮させ生成されたアンモニア水を排出させるとともに、初段を除く各段のフラッシュ型蒸発器の加熱器では、前段フラッシュ型蒸発器のフラッシュ缶から供給されたアンモニア含有蒸気がアンモニア含有処理液と熱交換が行われることにより生成されたアンモニア水を排出させることを特徴とする。
【0013】
上記構成により、アンモニアを効率良く回収でき且つエネルギー消費を抑えることができるとともに、スケールの影響を受けずに連続的運転を可能にしたアンモニア回収方法が実現できる。
【0014】
本発明に係るアンモニア回収方法は、前記最終段フラッシュ型蒸発器のフラッシュ缶に、外部からアンモニア含有処理液を供給するとともに、前記複数のフラッシュ型蒸発器の相互間においては、後段フラッシュ型蒸発器のフラッシュ缶で蒸発されなかったアンモニア含有処理液を前段フラッシュ型蒸発器のフラッシュ缶に供給し、初段フラッシュ型蒸発器のフラッシュ缶にて、アンモニアが除去された処理液を排出させるのが好ましい。
【0015】
上記構成の回収方法であれば、最も効率良くアンモニアを回収でき、且つ省エネルギー化を実現できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、蒸発部と加熱部とを分離したフラッシュ型蒸発器を多重効用に接続することにより、アンモニアを効率良く回収でき且つエネルギー消費を抑えることができるとともに、スケールの影響を受けずに連続的運転を可能にしたアンモニア回収装置及び回収方法を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施の形態1に係るアンモニア回収装置の全体構成図。
【図2】実施の形態2に係るアンモニア回収装置の全体構成図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施の形態に基づいて詳述する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は実施の形態1に係るアンモニア回収装置の全体構成図である。本実施の形態において、対象となる処理液は、例えば太陽電池排水(CIGS)やバッファードフッ酸(BHF)排水である。また、アンモニア回収装置に供給される処理液としては、アンモニア濃度が高く、且つ、処理すべき液量が極めて大きいことを特徴とするものであり、具体的には、1日当たり約40〜200t、アンモニア濃度2%以上(好ましくは3%以上)のアンモニア含有処理液(原液)である。なお、アンモニア濃度の上限としては15%以下、多くても20%以下である。加えて、この原液は、酸化亜鉛等が含有されたスケール成分の多い処理液である。このような特質がある処理液からアンモニアを効率良く回収するため、本発明に係るアンモニア回収装置1が用いられる。
【0019】
アンモニア回収装置1は、第1フラッシュ型蒸発器A1[前段フラッシュ型蒸発器(初段フラッシュ型蒸発器)に相当]、第2フラッシュ型蒸発器A2[後段フラッシュ型蒸発器(最終段フラッシュ型蒸発器)に相当]、凝縮器2等を含んで構成されている。第1フラッシュ型蒸発器A1と第2フラッシュ型蒸発器A2とは、第1フラッシュ型蒸発器A1で生成された蒸気を、第2フラッシュ型蒸発器A2に供給して第2フラッシュ型蒸発器A2の加熱源として利用する2重効用蒸発器を構成する。
【0020】
第1フラッシュ型蒸発器A1、第2フラッシュ型蒸発器A2は液体を飽和蒸気圧以下の圧力の雰囲気中に配置することによりフラッシュ蒸発を行う装置である。本実施の形態における第1フラッシュ型蒸発器A1は、アンモニア含有処理液3を加熱して、アンモニア含有蒸気を排出するように形成されている。この第1フラッシュ型蒸発器A1はフラッシュ缶B1を備える。フラッシュ缶B1は、筒形に形成されており、内部に処理液3を貯留することができるようになっている。フラッシュ缶B1には、処理液を供給するための管4(第2アンモニア含有処理液供給ラインに相当)が接続されている。また、フラッシュ缶B1には、内部にて生成されたアンモニア含有蒸気を排出するための管5が接続されている。
【0021】
本実施の形態における第1フラッシュ型蒸発器A1は、フラッシュ缶B1に貯留するアンモニア含有処理液3を循環するための循環流路を含む。循環流路には、管6が配置されている。第1フラッシュ型蒸発器A1は循環ポンプ7を備えている。循環ポンプ7は、フラッシュ缶B1の底部に接続されている。第1フラッシュ型蒸発器A1は散布器8を備えている。散布器8は、循環ポンプ7に接続されている。散布器8は、フラッシュ缶B1の上部に配置されている。散布器8は、処理液3をフラッシュ缶B1の内部に散布できるように形成されている。また、循環ポンプ6は、管9(アンモニア除去処理液排出ラインに相当)を通してアンモニアが除去された処理液を排出することができるように形成されている。
【0022】
第1フラッシュ型蒸発器A1は、加熱器としてのヒータC1を備える。ヒータC1は、熱交換器である。ヒータC1は、循環ポンプ7によって循環する処理液3を加熱するように形成されている。このヒータC1には、蒸気発生機器としてのボイラで生成された生蒸気(外部蒸気)が管10を通って供給される。ヒータC1において、処理液3と生蒸気との間で熱交換が行われ処理液3が加熱される。ヒータC1の出口には、蒸気ト゛レンを排出する管11が接続されており、管11にはポンプ50が配置されている。
【0023】
第2フラッシュ型蒸発器A2は、基本的には第1フラッシュ型蒸発器A1と同様な構成を有している。即ち、本実施の形態における第2フラッシュ型蒸発器A2は、アンモニア含有処理液12を加熱して、アンモニア含有蒸気を排出するように形成されている。この第2フラッシュ型蒸発器A2はフラッシュ缶B2を備える。フラッシュ缶B2は、筒形に形成されており、内部に処理液12を貯留することができるようになっている。フラッシュ缶B2には、処理液(原液)を供給するための管13(第1アンモニア含有処理液供給ラインに相当)が接続されている。また、フラッシュ缶B2には、内部にて生成されたアンモニア含有蒸気を凝縮器2に導くための管14が接続されている。
【0024】
本実施の形態における第2フラッシュ型蒸発器A2は、フラッシュ缶B2に貯留するアンモニア含有処理液12を循環するための循環流路を含む。循環流路には、管15が配置されている。第2フラッシュ型蒸発器A2は循環ポンプ16を備えている。循環ポンプ16は、フラッシュ缶B2の底部に接続されている。第2フラッシュ型蒸発器A2は散布器17を備えている。散布器17は、循環ポンプ16に接続されている。散布器17は、フラッシュ缶B2の上部に配置されている。散布器17は、処理液12をフラッシュ缶B2の内部に散布できるように形成されている。また、循環ポンプ16は、管4を通して処理液(運転初期時には原液を、運転中においては一部アンモニア除去された処理液)をフラッシュ缶B1に供給するように形成されている。
【0025】
第2フラッシュ型蒸発器A2は、加熱器としてのヒータC2を備える。ヒータC2は、熱交換器である。ヒータC2は、循環ポンプ16によって循環する処理液12を加熱するように形成されている。このヒータC2には、フラッシュ缶B1で生成されたアンモニア含有蒸気が管5を通って供給され、処理液12とアンモニア含有蒸気との間で熱交換が行われ処理液12が加熱される。ヒータC2において、余剰アンモニア含有蒸気は管18、管14を通って凝縮器2に供給され、熱交換により凝縮されたアンモニア水は管19(アンモニア水排出ラインに相当)を通って凝縮器2の液貯部に供給される。
【0026】
凝縮器2には冷却水が供給されており、凝縮器2に導かれたアンモニア含有蒸気が凝縮された凝縮水(アンモニア水)は、管19を介して供給されるヒータC2からの凝縮水(アンモニア水)と伴に、凝縮器2の液貯の底部から凝縮水ポンプ20により系外に排出されるようになっている。凝縮器2にはアフター凝縮器21を接続されており、凝縮器2で凝縮されない余剰蒸気がアフター凝縮器21によって凝縮され、アンモニア回収効率の向上が図られている。なお、アフター凝縮器21には真空ポンプ22が接続されており、凝縮器2、フラッシュ缶B2、ヒータC2、フラッシュ缶B1、及びヒータC1が減圧状態に保持されている。
【0027】
次いで、上記構成のアンモニア回収装置1の処理動作について説明する。先ず、運転初期においては、アンモニア含有処理液(原液)が管13を介してフラッシュ缶B2に供給され、さらに管4を介してフラッシュ缶B1に供給される。そして、一定量レベルの液面になると、蒸発処理の運転が開始される。なお、運転中は、所定の液面を維持するようにアンモニア含有処理液(原液)が連続して供給される。
【0028】
運転中の処理は以下の通りである。
ヒータC1では、生蒸気と処理液3とが熱交換されて処理液3が加熱される。加熱された処理液3は散布器8からフラッシュ缶B1内部に散布され、フラッシュ蒸発し、アンモニア含有蒸気が生成される。このアンモニア含有蒸気は管5を通ってヒータC2に供給され、ヒータC2の加熱源として利用される。
【0029】
ヒータC2では、アンモニア含有蒸気と処理液12とが熱交換されて処理液12が加熱される。加熱された処理液12は散布器17からフラッシュ缶B2内部に散布され、フラッシュ蒸発し、アンモニア含有蒸気が生成される。また、ヒータC2にて、フラッシュ缶B1から供給されたアンモニア含有蒸気のうち余剰分は、管18、管14を介して凝縮器2に供給される。また、ヒータC2にて、アンモニア含有蒸気が処理液12と熱交換されることにより凝縮して生成されたアンモニア水は、管15を介して凝縮器2の液貯部に導かれる。そして、凝縮器2にて、管14を介して供給されるアンモニア含有蒸気が凝縮され、アンモニア水としてポンプ20によって系外に排出される。
【0030】
このようにして、第1フラッシュ型蒸発器A1及び第2フラッシュ型蒸発器A2により、アンモニア含有処理液の蒸発濃縮が行われ、アンモニア水はポンプ20によって系外に排出されるとともに、アンモニアが除去された処理液はポンプ7によって系外に排出される。従って、アンモニア濃度が高く、且つアンモニア含有処理液が多い場合であっても、第1フラッシュ型蒸発器A1及び第2フラッシュ型蒸発器A2にて、連続して蒸発濃縮処理が行われることにより、効率良くアンモニアを回収することができる。また、蒸発器としては、加熱部と蒸発部が分離したフラッシュ型を用いることにより、スケールの付着を抑制でき、装置の連続運転を可能とする。
【0031】
(実施の形態2)
図2は実施の形態2に係るアンモニア回収装置の全体構成図である。図2において、図1と同様の構成要素には同一の参照符号を付し、詳細な説明は省略する。この実施の形態2では、バッチ要素を考慮した運転を行うことを特徴とするものである。
【0032】
図2において、V1は第1制御弁、V2は第2制御弁、V3は第3制御弁であり、これら制御弁V1〜V3は制御装置60によって開閉動作が制御されている。また、フラッシュ缶B1には、液面を検知するレベルスイッチLS1a,LS1bが設けられている。レベルスイッチLS1aは上限設定レベルを検知するものであり、レベルスイッチLS1bは下限設定レベルを検知するものである。同様に、フラッシュ缶B2には、液面を検知するレベルスイッチLS2a,LS2bが設けられている。レベルスイッチLS2aは上限設定レベルを検知するものであり、レベルスイッチLS2bは下限設定レベルを検知するものである。
【0033】
次いで、上記構成のアンモニア回収装置の運転制御について説明する。先ず、第1制御弁V1及び第2制御弁V2を閉状態し且つ第3制御弁V3を閉状態として各段フラッシュ缶にアンモニア含有処理液を供給する(第1処理工程)。次いで、各段フラッシュ缶の液面が設定上限値に達した場合には第1制御弁V1及び第2制御弁V2を開状態として蒸発運転を行う(第2処理工程)。次いで、各段フラッシュ缶のいずれかの液面が設定下限値に達した場合には第3制御弁V3を開状態としてアンモニアが除去された処理液を所定量排出する(第3処理工程)。次いで、第1処理工程に戻り、その後、第1〜第3処理工程を繰り返し行う。このような運転により、アンモニア回収効率を向上させることができる。
【0034】
(その他の事項)
(1)上記実施の形態では、対象処理液としては、アンモニア濃度が極めて高く(アンモニア濃度が2%以上)且つ処理量が多い場合(1日当たりの処理量が40〜200t)を例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。但し、本発明は、アンモニア濃度が極めて高い処理液(アンモニア濃度が2%以上)の場合やアンモニア含有処理液の処理量が多い場合(1日当たりの処理量が40〜200t)に適用するのが好ましい。アンモニア含有処理液が少ない場合には、1つの容器に液を充填して蒸発させ、次いで、液を再度充填して蒸発させるバッチ処理の運転を行うことは可能である。しかし、アンモニア含有処理液が多い場合には、上記バッチ方式で処理することは、極めて大きな容器を必要とし設備が大型化し、現実的には困難である。一方、本発明のように、複数の蒸発器を多重効用缶に構成し、各段の蒸発器にてアンモニア回収を連続的に運転することにより、アンモニア含有処理液が多い場合にも効率よく回収が行われるので、アンモニア濃度が極めて高い処理液(アンモニア濃度が7〜8%)の場合に適用するのが好ましい。また、各段の蒸発器にてアンモニア回収を連続的に運転することにより、アンモニア除去率が大幅に向上するので、アンモニア濃度が極めて高い処理液(アンモニア濃度が7〜8%)の場合に適用するのが好ましい。
【0035】
(2)上記実施の形態におけるアンモニア回収装置の後段に、ヒートポンプ利用の蒸気圧縮型蒸発濃縮装置又はエゼクター駆動型の蒸発濃縮装置を備えたシステムを配置して、アンモニア回収装置からのアンモニア除去処理液をさらに減容・固形化処理を行うようにしてもよい。ヒートポンプ利用の蒸気圧縮型蒸発濃縮装置やエゼクター駆動型の蒸発濃縮装置では、アンモニア濃度が高い処理液の場合、効率の良い運転ができない。従って、アンモニア濃度が高い処理液の場合には、前段処理として本発明に係るアンモニア回収装置でアンモニアを除去しておくことにより、後段での高効率の運転が可能になるという利点がある。
【0036】
(3)上記実施の形態では、蒸発器は2重効用に接続したが、3重効用あるいはそれ以上の多重効用に接続した構成を用いてもよい。このような構成であれば、さらに蒸気消費量を少なくでき、省エネルギー化を達成できる。
【0037】
(4)上記実施の形態では、フラッシュ缶B2に、外部からアンモニア含有処理液を供給する管13(第1アンモニア含有処理液供給ラインに相当)が接続されていたが、フラッシュ缶B1に接続する構成であってもよい。但し、最も効率良くアンモニアを回収し、且つ省エネルギー化を実現するためには、管13をフラッシュ缶B2に接続する構成が好ましい。
なお、管13(第1アンモニア含有処理液供給ラインに相当)をフラッシュ缶B1に接続する構成の場合には、フラッシュ缶B2からフラッシュ缶B1にアンモニア含有処理液を供給する管4を省略し、フラッシュ缶B1からフラッシュ缶B2にアンモニア含有処理液を供給する新たな管を設けると共に、フラッシュ缶B2からアンモニア除去処理液を系外に排出するように構成するのが好ましい。
【0038】
(5)また、蒸発器を3重効用あるいはそれ以上の多重効用に接続した構成を用いる場合においても、上記(4)の2重効用の場合と同様に、外部からアンモニア含有処理液を供給する管13(第1アンモニア含有処理液供給ラインに相当)は、何れの段のフラッシュ型蒸発器のフラッシュ缶に接続する構成であってもよいが、特に、最終段フラッシュ型蒸発器のフラッシュ缶に接続する構成の場合が、最も効率良くアンモニアを回収でき、且つ省エネルギー化を実現できる。
なお、蒸発器を3重効用あるいはそれ以上の多重効用に接続し、且つ管13(第1アンモニア含有処理液供給ラインに相当)を最終段のフラッシュ缶以外の何れかのフラッシュ缶に接続する構成の場合には、上記(4)の2重効用の場合と同様に、管13が接続された当該缶からその他の各缶に順次連続してアンモニア含有処理液を供給できるように、複数のフラッシュ型蒸発器相互間にアンモニア含有処理液供給用管を介在させて各缶を直列に配管接続すると共に、直列接続された最後の缶からアンモニア除去処理液を系外に排出するように構成するのが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、アンモニアを含有する廃液からアンモニアを回収するアンモニア回収装置及びアンモニア回収方法に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0040】
1:アンモニア回収装置
2:凝縮器
4:管(第2アンモニア含有処理液供給ラインに相当)
9:管(アンモニア除去処理液排出ラインに相当)
13:管(第1アンモニア含有処理液供給ラインに相当)
19:管(アンモニア水排出ラインに相当)
60:制御装置
A1:第1フラッシュ型蒸発器[前段フラッシュ型蒸発器(初段フラッシュ型蒸発器)に相当]
A2:第1フラッシュ型蒸発器[後段フラッシュ型蒸発器(最終段フラッシュ型蒸発器)に相当]
B1:第1フラッシュ型蒸発器のフラッシュ缶
B2:第2フラッシュ型蒸発器のフラッシュ缶
C1:第1フラッシュ型蒸発器の加熱器
C2:第2フラッシュ型蒸発器の加熱器
V1:第1制御弁
V2:第2制御弁
V3:第3制御弁
LS1a,LS1b,LS2a,LS2b:レベルスイッチ(検知手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニアを含有する処理液からアンモニアを回収するアンモニア回収装置であって、
アンモニア含有処理液を加熱する加熱器と、前記加熱器から供給されたアンモニア含有処理液をフラッシュ蒸発させるフラッシュ缶とから構成されるフラッシュ型蒸発器を複数連続的に接続し、各フラッシュ型蒸発器において蒸発処理が多工程で実行される多重効用缶を構成し、
初段フラッシュ型蒸発器の加熱器には外部蒸気が供給されるように配管されるとともに、前記複数のフラッシュ型蒸発器の相互間においては、前段フラッシュ型蒸発器のフラッシュ缶で生成されたアンモニア含有蒸気を後段フラッシュ型蒸発器の加熱器の加熱源として導くように配管され、
最終段フラッシュ型蒸発器のフラッシュ缶には、当該フラッシュ缶で生成されたアンモニア含有蒸気を凝縮しアンモニア水として排出する凝縮器を接続するとともに、初段を除く各段のフラッシュ型蒸発器の加熱器には、前段フラッシュ型蒸発器のフラッシュ缶から供給されたアンモニア含有蒸気がアンモニア含有処理液と熱交換され凝縮してアンモニア水として排出するアンモニア水排出ラインを接続したことを特徴とするアンモニア回収装置。
【請求項2】
前記最終段フラッシュ型蒸発器のフラッシュ缶には、外部からアンモニア含有処理液を供給する第1アンモニア含有処理液供給ラインを配管するとともに、前記複数のフラッシュ型蒸発器の相互間においては、後段フラッシュ型蒸発器のフラッシュ缶で蒸発されなかったアンモニア含有処理液を前段フラッシュ型蒸発器のフラッシュ缶に供給する第2アンモニア含有処理液供給ラインを配管し、初段フラッシュ型蒸発器のフラッシュ缶にはアンモニアが除去されたアンモニア除去処理液を排出するアンモニア除去処理液排出ラインを接続するように構成した、請求項1記載のアンモニア回収装置。
【請求項3】
さらに、
各段フラッシュ型蒸発器のフラッシュ缶に設けられ、内部に貯留されるアンモニア含有処理液の液面が設定上限値及び設定下限値に達したことを検出する検知手段と、
前記第1アンモニア含有処理液供給ラインに設けられる第1制御弁と、
前記第2アンモニア含有処理液供給ライン毎に設けられる第2制御弁と、
前記アンモニア除去処理液排出ラインに設けられる第3制御弁と、
前記検知手段の検知結果により、前記第1〜第3制御弁の開閉を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、第1制御弁及び第2制御弁を閉状態し且つ第3制御弁を閉状態として各段フラッシュ缶にアンモニア含有処理液を供給する第1処理工程と、各段フラッシュ缶の液面が設定上限値に達した場合には第1制御弁及び第2制御弁を開状態として蒸発運転を行う第2処理工程と、各段フラッシュ缶のいずれかの液面が設定下限値に達した場合には第3制御弁を開状態としてアンモニアが除去された処理液を所定量排出する第3処理工程を、繰り返し行う、請求項2記載のアンモニア回収装置。
【請求項4】
アンモニアを含有する処理液からアンモニアを回収するアンモニア回収方法であって、
アンモニア含有処理液を加熱する加熱器と、前記加熱器から供給された加熱アンモニア含有処理液をフラッシュ蒸発させるフラッシュ缶とから構成されるフラッシュ型蒸発器を複数備え、これら複数のフラッシュ型蒸発器を多重効用に接続し、
初段フラッシュ型蒸発器の加熱器には外部蒸気を供給し、前記複数のフラッシュ型蒸発器の相互間においては、前段フラッシュ型蒸発器のフラッシュ管で生成されたアンモニア含有蒸気を後段フラッシュ型蒸発器の加熱器の加熱源として導き、
最終段フラッシュ型蒸発器のフラッシュ缶に凝縮器を接続し、この凝縮器にて当該フラッシュ缶から供給されたアンモニア含有蒸気を凝縮させ生成されたアンモニア水を排出させるとともに、初段を除く各段のフラッシュ型蒸発器の加熱器では、前段フラッシュ型蒸発器のフラッシュ缶から供給されたアンモニア含有蒸気がアンモニア含有処理液と熱交換が行われることにより生成されたアンモニア水を排出させることを特徴とするアンモニア回収方法。
【請求項5】
前記最終段フラッシュ型蒸発器のフラッシュ缶に、外部からアンモニア含有処理液を供給するとともに、前記複数のフラッシュ型蒸発器の相互間においては、後段フラッシュ型蒸発器のフラッシュ缶で蒸発されなかったアンモニア含有処理液を前段フラッシュ型蒸発器のフラッシュ缶に供給し、初段フラッシュ型蒸発器のフラッシュ缶にて、アンモニアが除去された処理液を排出させる、請求項4記載のアンモニア回収方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−153043(P2011−153043A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−15667(P2010−15667)
【出願日】平成22年1月27日(2010.1.27)
【出願人】(000143972)株式会社ササクラ (138)
【Fターム(参考)】