説明

アンモニアSCR触媒及び触媒の使用方法

触媒と低温でアンモニアにより窒素酸化物を選択的に還元する方法を提示する。当該触媒には第一成分として銅、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、鉄、ニオブ、前記各物質の各混合物のいずれかと、第二成分としてセリウム、ランタニド、ランタニド混合物、前記各物質の各混合物のいずれかと、ゼオライトが含まれる。当該触媒には付加的第二成分としてストロンチウムも入れることができる。当該触媒は水熱安定性が高い。当該触媒は排気流における窒素酸化物の変換の活性が高く、NO/NO2比率の影響を有意に受けることはない。ディーゼル車両から出る排ガスの温度は低く、排ガスは通常NO/NO2比率が高いため、当該触媒と当該方法はディーゼル車両の排ガス中の窒素酸化物を選択的に還元する特別な用途を有する可能性がある。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】

【技術分野】
【0001】
この発明は触媒と低温のアンモニアを用いた窒素酸化物の選択的接触還元法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンは通常、化学量論的な数値を超える空気燃料混合比で動作する。ディーゼル燃料車両からの窒素酸化物や粒子状物質の排出は有意な数値になる可能性がある。ディーゼル車両からの排出は米国と欧州のいずれにおいても規制の対象となる。
【0003】
窒素酸化物は発電所や工業プロセス、ガスタービンなどの固定汚染源からの排ガスにも含まれている。
【0004】
排ガス中のNOxの除去方法として、高温で触媒の存在下においてアンモニアなどの還元体に排気流を接触させる方法がある。NOxとの還元体の触媒反応は選択的接触還元(SCR)と呼ばれている。尿素、水酸化アンモニウム、蟻酸アンモニウムおよびその他の窒素含有化学物質もアンモニアの発生源として使用できる。
【0005】
従来のアンモニアSCR触媒はバナジア/チタニア系である。たとえば、Imanariら(米国特許4,833,113)はチタニウムの酸化物、タングステンの酸化物、バナジウムの酸化物からなるSCR触媒について記述している。バナジア/チタニアアンモニアSCR触媒は、通常、約250〜370℃の温度で作用する。軽量ディーゼル車両からの排出ガスは、通常、温度が約200℃以下である。バナジア/チタニアSCR触媒は200℃の低い温度では有意な活性をもたない。
【0006】
Byrne(米国特許4,961,917、Engelhard Corporationに承継)はアンモニア、窒素酸化物および酸素を鉄または銅促進ゼオライト触媒に通して、窒素酸化物の還元を選択的に触媒する方法を開示している。新鮮な銅促進触媒は活性が優れている。しかし、銅触媒はエージング時に著しく非活性化する。鉄触媒は銅触媒に比べてはるかに安定しているが、多くのディーゼル排気流で生じる200℃より有意に高い、およそ350〜500℃で活性が最大となる。
【0007】
エージングに対しても安定しており、かつ従来のアンモニアSCR触媒より低い温度で活性のあるアンモニアSCR触媒が必要とされている。
【発明の開示】
【0008】
この発明は触媒の存在下でガス流をアンモニアに接触させることによりガス流中の窒素酸化物をアンモニアで選択的に還元させる方法であり、当該触媒には銅、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、鉄、ニオブおよび前記各物質の各混合物で構成された群の少なくともひとつの物質からなる第一成分と、セリウム、ランタニド、ランタニドの混合物および前記各物質の各混合物で構成された群の少なくともひとつの物質からなる第二成分と、少なくともひとつのゼオライトとが含まれる。
【0009】
ある実施態様では、アンモニアを用いた窒素酸化物の選択的接触還元の触媒は、銅、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、鉄、ニオブおよび前記各物質の各混合物で構成された群の少なくともひとつの物質からなる第一成分と、セリウム、ランタニド、ランタニドの混合物および前記各物質の各混合物で構成された群の少なくともひとつの物質からなる第二成分と、少なくともひとつのゼオライトとからなる。
【0010】
ランタニドはY、La、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、HoまたはYbを意味するものと定義されている。
【0011】
別の実施様態では、アンモニアを用いた窒素酸化物の選択的接触還元の触媒は、銅、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、鉄、ニオブおよび前記各物質の各混合物で構成された群の少なくともひとつの物質からなる第一成分と、セリウム、ランタニド、ランタニドの混合物および前記各物質の各混合物で構成された群の少なくともひとつの物質からなる第二成分と、少なくともひとつのゼオライトとからなり、アンモニアを用いた窒素酸化物の還元のための触媒として機能するその他の物質は含まない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1は、マンガンを含む触媒と、セリウムを含む触媒と、第一成分としてセリウムを含み第二成分としてマンガンを含む触媒について熱水エージングの前後における、摂氏温度に対するパーセントNO変換を示す図である。
【0013】
図2は、NOを含む第一供給ガスならびにNOとNOの両方を含む第二供給ガスを用いて新鮮な鉄交換ゼオライトベータ触媒と熱水エージング後の同触媒とについて、摂氏温度に対するパーセントNOまたはNOx変換を示す図である。
【0014】
図3は、NOを含む第一供給ガスならびにNOとNOの両方を含む第二供給ガスを用いた、第一成分としてマンガン、第二成分としてセリウムを含む新鮮な触媒と熱水エージング後の触媒について、摂氏温度に対するパーセントNOまたはNO変換を示す図である。
【0015】
図4は、NOを含む第一供給ガスならびにNOとNOの両方を含む第二供給ガスを用いたマンガン/セリウム触媒についての摂氏温度に対するパーセントNOまたはNO変換ならびに鉄変換ゼオライトベータ触媒についてのパーセント変換を示す図である。
【0016】
図5は、付加的な第二成分であるストロンチウムを加える場合と加えない場合におけるさまざまな触媒について、摂氏温度に対するパーセントNO変換を示す図であり、ここでは当該触媒は試験前に熱水エージングを受けている。
【詳細な説明】
【0017】
自動車ならびにガスタービンなどのエンジンからの排ガスには窒素酸化物が含まれる。排ガス中の窒素酸化物は、選択的接触還元(SCR)触媒の存在下で排ガスをアンモニアなどの還元剤に接触させることで除去可能である。アンモニアまたはその他の還元剤は窒素酸化物と反応して窒素と水とを形成する。
【0018】
排ガス中の水蒸気はSCR触媒を非活性化し、NO変換を低下させることができる。従って、SCR触媒の熱水安定性は重要である。
【0019】
軽量ディーゼルエンジンからの排ガスは約200℃の低温である。それゆえ、SCR触媒の低温活性はディーゼルエンジン用途にとって重要である。この発明の実施態様によるとSCR触媒は低温におけるNO変換活性が優れている。
【0020】
Alcorn(米国特許4,912,726)によれば、NOの還元には酸素の存在が必要であるが、NOの還元には酸素の存在が不要だと考えられている。AlcornはさらにNOよりNOのほうが還元しやすいと主張している。
【0021】
以下の反応が並行して起こるアンモニアSCRプロセスの2段階プロセスは証拠に裏付けられていると思われるとAlcornは述べている。
NO+1/2O→NO
6NO+8NH→7N+12H
【0022】
SCR触媒はNO/NO比率が低い場合よりも高い場合のほうがNO変換の活性が低いことはよく知られている。ディーゼルオフガス中のNOのわずか約5%がNOである。それゆえ、NO/NO比率が高い場合のSCR触媒の低温活性はディーゼル用途にとって重要な要素となる。
【0023】
NO/NO比率はディーゼル酸化触媒(DOC)を用いて排ガス中のNOをNOに酸化することで低下させることができるが、DOC触媒はディーゼル排気に見られることのある低温条件下でNOをNOに変換する際に有効でない場合がある。さらに、DOC触媒はプラチナをベースにしていることが多く、高価な場合がある。そしてさらに、DOCはエージングおよび/または毒作用により時間とともに低温でNOをNOに変換する能力を失うことがある。
【0024】
次の諸実施例に示すように、この発明の実施態様によるSCR触媒はNO/NO NO比率が高い場合と低い場合のいずれにおいても従来技術の触媒より低温時活性が高い。この発明のSCR触媒は従来技術の触媒と比較して水熱安定性も高い。ディーゼル排気には通常、有意な量の水が含まれている。それゆえ、水熱安定性はディーゼル用途について重要な要素となる。
【0025】
この発明の触媒は、銅、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、鉄、ニオブおよび前記各物質の各混合物で構成される群の少なくとも一つの物質を含む第一成分と、セリウム、ランタニド、ランタニド混合物および前記各物質の各混合物で構成される群の少なくとも一つの物質を含む第二成分と、少なくとも一つのゼオライトとを含む。当該触媒は付加的な第二成分としてさらに任意にストロンチウムを含んでもよい。当該触媒は酸素貯蔵物質(「OSM」)もできれば含んでよい。下記詳細に述べるように、一般的に、酸素貯蔵物質は酸化セリウム系の物質とすることができる。
【0026】
次の緒実施例に示すように、この発明の実施態様による触媒の第一成分と第二成分とは互いに相乗効果を発揮することがある。この相乗効果は低温でNO/NO比率が高い場合に高いNO変換を示す一助となることがある。第一成分と第二成分との間の相乗効果は熱水エージングに対して触媒を安定化させる一助ともなることがある。付加的な第二成分で任意のストロンチウムは、この発明の実施態様による触媒のNO変換をさらに促進することがある。
【0027】
第一の成分
この発明の実施態様による触媒の第一成分は、銅、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、鉄、ニオブおよび前記各物質の各混合物のうち少なくともひとつを含んでよい。マンガンは典型的な第一成分である。
【0028】
この発明の触媒は、第一成分の重量パーセントを金属に基づいて計算した場合、第一成分を約1重量パーセント〜約20重量パーセント含んでよいが、約3重量パーセント〜約15重量パーセントの方が望ましく、最も望ましいのは約5重量パーセント〜約8重量パーセントである。
【0029】
第二成分
この発明の実施態様による触媒の第二成分は、セリウム、ランタニド、ランタニドの混合物および前記各物質の各混合物で構成される群から選択された少なくとも一つの成分を含んでよい。セリウムは典型的な第二成分である。
【0030】
この発明の触媒は、第二成分の重量パーセントを金属に基づいて計算した場合、第二成分を約2重量パーセント〜約35重量パーセント含んでよいが、約5重量パーセント〜約25重量パーセントのほうが望ましく、最も望ましいのは約8重量パーセント〜約15重量パーセントである。
【0031】
ストロンチウム成分
この発明の実施態様による触媒は、セリウム、ランタニド、ランタニドの混合物および前記各物質の各混合物で構成される群から選択された第二成分に加えて、またはその部分的代替品としてストロンチウム第二成分を含んでよい。
【0032】
この発明の実施態様による触媒がストロンチウム第二成分を含む場合、ストロンチウム第二成分の重量パーセントを金属に基づいて計算すると、当該触媒はストロンチウム第二成分を約2重量パーセント〜約35重量パーセント含んでよいが、約5重量パーセント〜約25重量パーセントのほうが望ましく、最も望ましいのは約8重量パーセント〜約15重量パーセントである。
【0033】
ゼオライト
この発明の実施態様による触媒は少なくとも一つのゼオライトを含んでよい。ゼオライトはZSM−5、ゼオライトベータ、ZSM型ゼオライト、MCM型ゼオライト、モルデナイト、フォージャサイト、フェリエライトおよび前記各物質の各混合物で構成される群から選択することができる。実施様態においては、ゼオライトはZSM−5、ZSM−11、ZSM−12、ZSM−18、ZSM−23、MCM ゼオライト、ゼオライトベータおよび前記各物質の各混合物で構成される群から選択することができる。ZSM−5はこの発明の実施態様による触媒の成分として使用する場合の典型的なゼオライトとすることができる。
【0034】
ゼオライトまたはゼオライト混合物はH型、Na型、アンモニウム型またはそれらの各混合物とすることができる。H型のゼオライトはゼオライトまたはゼオライト混合物の典型的な型とすることができる。
【0035】
ゼオライトは第一成分および/または第二成分と全部または一部を交換することもできる。ゼオライトのSiO/Al比率は約1〜約500の範囲内であればよいが、約10〜約150のほうが望ましく、最も望ましいのは約30〜約70の範囲内である。理論に拘束されることは望ましくないが、約10より大きいSiO/Al比率をもつゼオライトは触媒の水熱安定性を高める上で効果的な場合があると考えられている。約40というSiO/Al比率を典型的な比率としてもよい。
【0036】
実施態様では、第一成分、第二成分、または第一成分と第二成分の両方のうちの全部または一部はゼオライトまたはゼオライト混合物に含浸または交換することができる。実施様態では、第一成分および/または第二成分の一部はゼオライトまたはゼオライト混合物に交換することができ、第一成分および/または第二成分の一部はゼオライトまたはゼオライト混合物に含浸させることができる。
【0037】
触媒はゼオライトを約10重量パーセント〜90重量パーセント含んでよいが、約20重量パーセント〜約90重量パーセントのほうが望ましく、最も望ましいのは約40重量パーセント〜約80重量パーセントである。またゼオライトは複数のゼオライトの混合物であってもよい。
【0038】
酸素貯蔵物質
酸素貯蔵物質はこの発明の実施態様による触媒の任意成分であってもよい。この発明の触媒は少なくとも一つの酸素貯蔵物質を含むことが一般的に望ましい。酸素貯蔵物質は一般的に酸化セリウムベースの材料を含んでもよい。酸素貯蔵物質は酸素が豊富な供給流から酸素を吸収し、酸素が不足している供給流に酸素を放出ことができる。また酸素貯蔵物質は第一成分および/または第二成分の担体であってもよい。
【0039】
酸化セリウムベース物質が800℃以上の温度に加熱されると、酸化セリウムベース物質の総表面積は、一般的に低下することがある。ひとつ以上の酸化金属を酸化セリウムベース物質に添加して、高温にさらされている間に酸化セリウムベース物質の焼結度を低下させることができる。酸化セリウムベース物質に添加することができる酸化金属で望ましいのは、たとえばZrO、Al、Laまたはその他の希土類金属酸化物のうちのひとつ以上としてよい。希土類金属はスカンジウムとイットリウム、ならびに原子番号57〜71の元素と定義されている。この発明の一実施態様では、酸素貯蔵物質は化学式がCe1−aZrまたはCe1−c−dZrLanの組成をもつ酸化セリウムベース物質としてもよく、この場合LanはY、La、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Ho、Ybのうちの少なくともひとつである。
【0040】
典型的な実施態様では、この発明による触媒中の酸素貯蔵物質はCe0.24Zr0.66La0.040.06(CZLY)、Ce0.24Zr0.67Ln0.09(CZL)、Ce0.68Zr0.32(CZO)またはCe0.24Zr0.67Nd0.09(CZN)の化学式をもっていればよい。その他の酸素貯蔵物質も適切な場合がある。
【0041】
この発明の実施態様による触媒が少なくとも一つの酸素貯蔵物質を含む場合、当該触媒は酸素貯蔵物質を約10重量パーセント〜約90重量パーセント含んでいてよいが、約20重量パーセント〜約70重量パーセントのほうが望ましく、最も望ましいのは約30重量パーセント〜約60重量パーセントである。酸素貯蔵物質の重量パーセントは酸化物を基礎にしている。
【0042】
理論に限定されることは望ましくないが、酸素貯蔵物質はNOをNOに酸化する触媒の能力を向上させることにより、この発明の実施態様による触媒の性能を高める可能性があると考えられている。NOはNOより急速にアンモニアまたはその他の還元剤と反応することがある。従ってNOをNOに酸化する触媒の能力を向上させることは、NOの選択的還元をアンモニアで触媒する触媒の活性を向上させる可能性がある。酸化貯蔵物質は同物質を含む任意のウォッシュコート(下記に説明)に対する水性スラリーのレオロジーも向上させる可能性がある。
【0043】
無機酸化物
また、この発明の実施態様による触媒はアルミナ、シリカ、チタニア、シリカ・アルミナおよび前記物質の固溶体、化合物または混合物からなる群から選択された少なくとも一つの無機酸化物を含んでよい。アルミナはこの発明の実施態様による触媒で使用する典型的な無機酸化物である。無機酸化物は次に説明するようにたとえばウォッシュコートの一部として使用してもよい。無機酸化物は酸素貯蔵物質成分の全部または一部の代用にしてもよい。一実施態様では、酸素貯蔵物質の量と無機酸化物の量の合計は酸素貯蔵物質のみの場合について先に示した量としてよい。その他の無機酸化物は全部または一部を酸素貯蔵物質の代用にしてよいが、無機酸化物は酸素貯蔵物質とは異なる作用を有することがある。触媒をモノリス上に塗布すれば、無機酸化物は任意のウォッシュコートに対する水性スラリーのレオロジーを向上させ、基材へのウォッシュコートの付着を強化する可能性がある。
【0044】
成形触媒
一実施態様では、この発明の触媒はハニカム、ペレットまたはビーズなどの適切な形状に成形してもよい。別の実施態様では、触媒を押し出し成形品に押し出してもよい。
【0045】
一実施様態では、この発明の実施様態による触媒は、酸化物もしくは塩または銅、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、鉄、ニオブおよび前記物質の各混合物のその他の化合物からなる群のうちの少なくともひとつを含む第一成分と、セリウム、ランタニド、ランタニド混合物および前記物質の各混合物で構成される群のうちの少なくともひとつを含む第二成分と、ペーストを形成するための少なくとも一つのゼオライトとのなかから、少なくともひとつを粉砕または混練により形成してもよい。また任意の酸素貯蔵物質および/または任意のストロンチウム第二成分もその他の成分のいずれか、またはすべてといっしょに粉砕または混練してよい。触媒の残りの成分は当分野の技術者が熟知している方法で添加してよい。
【0046】
ペーストは金型から押し出して押し出し成形品を形成してもよい。押し出し成形品は

切な場合がある。
【0047】
触媒組成
有利なことに、この発明の実施態様による触媒は基材と組み合わせて触媒組成を形成してもよい。したがって、この発明の別の側面から以下を含む触媒組成が得られる。
(a)基材
(b)以下を含む触媒
銅、マンガン、鉄、クロム、コバルト、ニッケル、ニオブおよび前記物質の各混合物で構成される群のうちから少なくともひとつを含む第一成分
リウム、ランタニド、ランタニド混合物および前記物質の各混合物で構成される群のうちから少なくともひとつを含む第二成分
少なくとも一つのゼオライト。
【0048】
触媒は付加的第二成分として少なくとも一つの酸素貯蔵物質および/またはストロンチウムを任意でさらに含んでいてもよい。触媒はアルミナ、シリカ、チタニア、シリカ・アルミナおよび前記物質の固溶体、化合物または混合物で構成される群から選択された無機酸化物を任意でさらに含んでいてもよい。無機酸化物はウォッシュコートの一部としてもよく、あるいはウォッシュコートから分離していてもかまわない。典型的な実施態様では、無機酸化物はウォッシュコートの一部としてよい。
【0049】
基材
ここで使用する基材は触媒を支持するための技術的に知られたいずれかの支持構造体であればよい。この発明の一実施態様では、基材はビーズまたはペレットの形状としてもよい。ビーズまたはペレットはアルミナ、シリカ・アルミナ、シリカ、チタニア、前記物質の各混合物または適切な物質から形成してもよい。この発明の典型的な実施態様では、基材はハニカム担体としてもよい。ハニカム担体はセラミックハニカム担体または金属ハニカム担体としてもよい。セラミックハニカム担体はたとえばシリマナイト、ジルコニア、葉長石、スポジュミン、ケイ酸マグネシウム、ムライト、アルミナ、コージライト(MgAlSi18)、その他のアルミノケイ酸塩物質、炭化ケイ素または前記物質の各組合せから形成してもよい。その他のセラミック担体も適切な場合がある。
【0050】
担体が金属ハニカム担体であれば、金属は耐熱合金、特に鉄が実質的な成分または主要な成分である合金としてもよい。金属担体の表面は約1000℃を超える高温で酸化させて、合金の表面上に酸化被膜を形成することにより合金の耐食性を向上させてもよい。合金の表面上の酸化被膜はまたモノリス担体の表面へのウォッシュコートの付着を強化することもある。すべての基材担体は金属かセラミックかを問わずいずれも三次元的支持構造を有するものが望ましい。
【0051】
この発明の一実施態様では、基材はモノリスを通して延びている複数の細かい平行な流路を有するモノリス担体としてもよい。流路は適切な断面形状およびサイズのものであればよい。流路はたとえば台形、長方形、正方形、正弦曲線、六角形、楕円形または円形としてもよいが、その他の形状も適切である。モノリスは1平方インチの断面あたり約9個〜約1200個以上のガス吸入孔または流路を有してもよいが、これより少ない流路を使用してもかまわない。
【0052】
また基材は粒子状物質用の任意の適切なフィルターでもよい。基材の適切な形の一部には織布フィルター特に織布セラミックファイバーフィルター、金網、ディスクフィルター、セラミックハニカムモノリス、セラミックまたは金属の発泡体、壁流フィルターおよびその他の適切なフィルターを含めてもよい。壁流フィルターは自動車排ガス触媒用のハニカム基材と類似している。壁流フィルターは、排ガスが壁流フィルターの入口から出口へ移動する間に壁流フィルターの多孔性壁を通って強制的に流れるように壁流フィルターの流路が入口と出口で交互に栓をされているという点で、通常の自動車排ガス触媒を形成するのに使用されることがあるハニカム基材とは異なっていてもよい。
【0053】
ウォッシュコート
一実施態様では、この発明の触媒の少なくとも一部分をウォッシュコートの形態で基材上に配置してもよい。ここで使用する「ウォッシュコート」という用語は基材上または固体支持構造体上の酸化物固体のコーティングを指している。ウォッシュコート中の酸化物固体はひとつ以上の担体物質酸化物、ひとつ以上の触媒酸化物または担体物質酸化物と触媒酸化物との混合物でもよい。担体物質酸化物は分散相に大きな表面積を備えるために使用することのできる多孔性固体酸化物である。担体物質は通常、高温および還元・酸化条件の範囲下で安定している。ゼオライトと酸素貯蔵物質は酸化物固体としてもよい。また無機酸化物も酸化物固体としてもよい。
【0054】
一実施態様では、担体物質を水中に懸架して水性スラリーを形成し、かつ水性スラリーをウォッシュコートとして基材上に配置(配置には沈着、付着、硬化、コーティングおよび基材上に被膜をコーティングするためのあらゆる既知のコーティングプロセスが含まれるが、これらに限定されない)することにより、ウォッシュコートを基材上に形成してもよい。スラリー中の担体物質はゼオライトまたはゼオライトと酸素貯蔵物質とを含んでもよい。典型的な実施態様では、ウォッシュコートを含む酸化物固体はゼオライトおよび/または酸素貯蔵物質を任意に含んでもよい。別の実施態様では、ウォッシュコートはアルミナ、シリカ、チタニア、シリカ・アルミナおよび前記物質の固溶体、各化合物および各混合物からなる群から選択された少なくとも一つの無機酸化物をさらに含んでもよい。
【0055】
第一成分および/または第二成分の塩などその他の成分を水性スラリーに任意に添加してもよい。酸性溶液もしくは塩基溶液またはさまざまな塩もしくは有機化合物などその他の成分を水性スラリーに添加して、スラリーのレオロジーを調整してもよい。レオロジーを調節するために使用することができる化合物のいくつかの実施例には、水酸化アンモニウム、水酸化アルミニウム、酢酸、クエン酸、水酸化テトラエチルアンモニウム、その他のテトラアルキルアンモニウム塩、酢酸アンモニウム、クエン酸アンモニウム、グリセロール、ポリエチレングリコールなどの市販ポリマー、およびその他の適切なポリマーが含まれるが、これらに限定されない。
【0056】
一実施態様では、第一成分、第二成分、または第一成分と第二成分の両方を酸化物またはその他の成分、たとえば硝酸塩、酢酸塩またはその他の塩および/または前記物質の混合物として水性スラリーに添加してもよい。
【0057】
スラリーは任意の適切な方法で基材上に配置してもよい。たとえば、基材をスラリーに浸漬してもよいし、あるいはスラリーを基材に噴霧してもよい。当分野の技術者に知られている、スラリーを基材に沈着させるその他方法を別の実施態様で使用してもよい。基材が平行な流路を有するモノリス担体であれば、ウォッシュコートを流路の壁上に形成してもよい。流路を通って流れるガスはウォッシュコート上で支持されている物質だけでなく流路の壁上のウォッシュコートに接触してもよい。
【0058】
酸素貯蔵物質はウォッシュコートスラリーのレオロジーを向上させる可能性があると考えられている。そのような向上は触媒のプロセス制御および/または製造において見られることがある。酸素貯蔵物質の存在が理由であると考えられるウォッシュコートスラリーの強化されたレオロジーはウォッシュコートスラリーの基材への付着を強化することがある。
【0059】
この発明の一実施態様では、ゼオライトを基材に沈着し、任意に酸素貯蔵物質を基材に沈着させるスラリーによってウォッシュコートを形成してもよい。またウォッシュコートはアルミナ、シリカ、チタニア、シリカ・アルミナおよび前記物質の固溶体、各化合物および各混合物からなる群から選択された少なくとも一つの無機酸化物を含んでもよい。ウォッシュコートを基材上に配置したあと、第一成分および/または第二成分および/または任意のストロンチウム第二成分の水溶性前駆体塩類を含む溶液をウォッシュコートに含浸および/または交換してもよい。別の実施態様では、第一成分および/または第二成分および/または任意のストロンチウム第二成分の塩類をウォッシュコート用の水性スラリーに添加してもよい。さらに別の実施態様では、第一成分、第二成分および/または任意のストロンチウム第二成分の少なくともひとつを酸化物としてウォッシュコート用の水性スラリーに添加してもよい。
【0060】
基材、ウォッシュコートおよび含浸溶液または交換溶液(第一成分および/または第二成分および/または任意のストロンチウム第二成分の水溶性前駆体塩類を含む)は、

媒組成を形成してもよい。一実施態様では、ウォッシュコートおよび含浸溶液または交

【0061】
NO除去方法
排ガスはその中に含まれるNOを還元するのに十分なアンモニアの存在下でこの発明の実施態様による触媒と接触させてもよい。このアンモニアは通常、排ガスがこの発明の実施態様による触媒に接触する前に、排ガス中に導入してもよい。排ガスおよび還元剤としてのアンモニアは触媒と接触させ、それによって排ガス中の窒素酸化物を還元してもよい。
【0062】
アンモニアの供給源として尿素、水酸化アンモニウム、ギ酸アンモニウム、アンモニアガスまたはその他の適切なアンモニアの供給源を使用してもよい。
【0063】
アンモニア/NOモル比は約0.3〜約2.5の範囲内としてよいが、約0.7〜ら約2の範囲内のほうが望ましく、最も望ましいのは約0.8〜約1.2の範囲内である。排ガス中の過剰なアンモニアを最小限にするためには、低いアンモニア/NO比が一般的に望ましいと考えられる。排ガス中の過剰なアンモニアは健康問題または臭気の問題から望ましくないと思われる。
【0064】
触媒を通過する排ガスとアンモニアの空間速度は約5,000時間−1〜約180,000時間−1の範囲内としてよいが、約15,000時間−1〜約90,000時間−1の範囲内のほうが望ましく、最も望ましいのは約20,000時間−1〜約60,000時間−1の範囲内である。
【0065】
排ガスおよびアンモニアを触媒と接触させてよい温度は約140℃〜約700℃であるが、約150℃〜約600℃のほうが望ましく、最も望ましいのは約170℃〜約500℃である。
【0066】
排ガスの温度が約170℃より低い場合は、窒素酸化物の還元は減少する可能性がある。約400℃より高温の場合、アンモニアは参加する可能性がある。アンモニアが酸化すると、窒素酸化物を還元するための排ガス中のアンモニア還元剤が不十分になる可能性がある。
【0067】
過剰なアンモニアが排ガス中に存在する場合は、その過剰なアンモニアの少なくとも一部をこの発明の実施態様による触媒により酸化させて窒素にしてもよい。
【0068】
次の諸実施例はこの発明の適用範囲を明示することを目的としているが、この範囲に限定されるものではない。当分野の技術者に知られているその他の手順を代わりに使用してもよいと理解すべきである。
【実施例】
【0069】
実施例1:マンガン第一成分とセリウム第二成分の間の相乗効果
表1に示す組成をもつ触媒を調製し、窒素酸化物のアンモニアSCR還元について試験した。表中、マンガンおよびセリウムの重量パーセントを酸化物と金属の両方に基づいて示し、金属に基づく重量パーセントは括弧内に示す。
【表1】


【0070】
ゼオライトとOSMは約150g/Lの負荷時にウォッシュコートとして基材上に配置し

ンと硝酸セリウムの各水溶液を混合し、基材上のウォッシュコートに含浸させた。触媒

【0071】
表1の各触媒は新鮮触媒として、また約10%の水蒸気を含む空気中において750℃で20時間熱水エージングした後に試験した。
【0072】
350ppm NO、350ppm NH、5%CO、50ppm C、14%O10%HOに残りのNを加えた吸引組成を持つNOの選択的接触還元について各触媒を試験した。空間速度は30,000時間−1であった。温度は140℃〜400℃まで毎分20℃で上昇させた。図1は、マンガンを含むがセリウムを含まない触媒(触媒1)、セリウムを含むがマンガンを含まない触媒(触媒2)、そしてマンガンとセリウムの両方を含む触媒(触媒3)について摂氏温度に対するパーセントNO変換変換のグラフを示している。これらの触媒は新鮮な触媒として、また熱水エージング後において試験した。
【0073】
図1に示すように、新鮮なMn/Ce触媒(触媒3)は温度範囲の少なくとも大半において新鮮なMn触媒(触媒1)よりNO変換変換活性が高かった。一方、新鮮なMn触媒(触媒1)は新鮮なCe触媒(触媒2)よりNO変換変換活性が高かった。
【0074】
三つの触媒のいずれの活性も熱水エージング後には低下した。この発明の実施態様による触媒であるMn/Ce触媒(触媒3)の活性と比較して、Mnだけの触媒1の活性は熱水エージングによりはるかに低下した。熱水エージングによるCe触媒(触媒2)の活性低下は穏やかであったが、新鮮なCe触媒の活性は他の二つの新鮮な触媒の活性と比較してはるかに低かった。熱水エージング後のCe触媒は図1におけるすべての触媒のなかで一番活性が低かった。
【0075】
第一成分としてマンガン、第二成分としてセリウムを含む触媒3は、この発明の実施態様による触媒であり、第一成分としてマンガンを含む触媒1や第二成分としてセリウムを含む触媒2とそれぞれ比較しても活性が有意に高かった。Mn/Ce混合触媒である触媒3はMn触媒やCe触媒のどちらと比較しても熱水エージングに対しより安定していた。
【0076】
この発明の実施態様による触媒であるMn/Ce混合触媒の活性は、新鮮な場合とエージング後の場合のどちらにおいても、単一成分の触媒の活性より高かった。Mn第一成分とCe第二成分は互いに相乗効果を発揮する。
【0077】
実施例2:鉄ベータSCR活性に対するNOおよびNO/NO供給ガスの影響
鉄交換ゼオライトベータはTicat GmbH社[ドイツ、Bitterfeld)から供給された。表2に示す組成の触媒4は鉄交換ベータゼオライトで調製した。
【表2】

【0078】
触媒4は二種類の供給ガスを用いて新鮮な触媒として、また熱水エージング後において試験した。最初の供給ガスは350ppmのNOを含んでいたが、NOを含んでいなかった。二番目の供給ガスは175ppmのNOと175ppmのNOの混合物を含んでいた。両方の供給ガスについて温度に対するNO/NO変換図を図2に示す。
【0079】
NO/NO混合供給ガスとNOだけを含む供給ガスのどちらを用いた場合でも、熱水エージングは触媒4の活性に対してほとんど影響がなかった。
【0080】
NOを含むがNOを含まない供給ガスを用いた場合における新鮮な触媒4と熱水エージング後の触媒4のどちらの活性も、NO/NO混合供給ガスを用いた場合の触媒活性に比べはるかに低かった。200℃のNO供給ガスを用いた場合のNO変換は、新鮮な触媒4についてわずか約14%、熱水エージング後の触媒4について約11%であったのに対して、NO/NO混合供給ガスを用いた場合の新鮮な触媒については約84%、エージング後の触媒については約89%であった。鉄/ゼオライト触媒4は、供給ガスがNOを含むがNOを含んでいない場合はNO変換に効果的ではなかった。ディーゼル排気は通常、NO/NO比率が高い。したがって、鉄/ゼオライト触媒はディーゼル便におけるSCR NO変換の活性が低くなると予想される可能性がある。
【0081】
実施例3:Mn/Ce/ゼオライト/OSM触媒活性に対するNO供給ガスとNO/NO供給ガスの影響
実施例2におけるFe/ゼオライトベータ触媒である触媒4の場合と同じ方法でNOとNO/NOの供給流を用いて実施例3におけるSCR活性について、Mn/Ce/ゼオライト/OSM触媒であり、この発明の実施態様による触媒でもある触媒3を試験した。この触媒は新鮮な触媒として、また熱水エージング後において試験した。結果を図43にグラフで示す。
【0082】
NO/NO混合供給ガスを用いた場合の新鮮な触媒3と熱水エージング後の同触媒のNO変換活性は基本的に同じであった。
【0083】
NOを含むがNOを含んでいない供給流を用いた場合の新鮮なMn/Ce触媒と熱水エージング後の同触媒のNO変換は、NO/NO混合供給流を用いた場合の対応する活性より低かった。しかしながら、Mn/Ce/ゼオライト/OSM触媒である触媒3に係るNO/NO混合供給流と純粋なNO供給流の間の変換差は、実施例2のFe/ゼオライトベータ触媒である触媒4ほど大きくはなかった。NOを含むがNOを含まない供給ガスを用いた場合の触媒3と触媒4との間の活性の比較を実施例4にさらに詳しく示す。
【0084】
実施例4:NO供給ガスを用いたMn/Ce/ゼオライト/OSM触媒とFe/ゼオライトベータ/OSM触媒との比較
図4はNOを含むがNOを含まない供給流を用いた場合のMn/Ce/ゼオライト/OSM触媒である触媒3のNO変換活性とFe/ゼオライトベータ/OSM触媒である触媒4のNO変換活性との比較をグラフで示している。各グラフは新鮮な触媒と熱水エージング後の触媒の両方についての結果を示している。
【0085】
この発明の実施態様による触媒であるMn/Ce/ゼオライト/OSM触媒は、新鮮な触媒と熱水エージング後の触媒のどちらについても、図4に示す温度範囲全体にわたって、Fe/ゼオライトベータ触媒よりもNO供給ガスを用いた場合のNO変換の活性がはるかに高かった。
【0086】
温度が200℃のときのNO変換が、新鮮なMn/Ce/ゼオライト/OSM触媒3について約84%、と熱水エージング後の同触媒について約58%であったのに対して、同じ温度でのNO変換は新鮮なFe/ゼオライトベータ/OSM触媒4について約14%、熱水エージング後の同触媒について約11%であった。NOを含みNOを含まない供給流を用いた200℃の鉄触媒のNO変換活性は非常に低かった。
【0087】
この発明の実施態様による触媒である触媒3は、ディーゼル用途において遭遇する低い温度と高いNO/NO比率でNOを変換する際に有効であった。鉄/ゼオライト触媒である触媒4はこれらの条件下におけるNOの変換に有効ではなかった。
【0088】
実施例5:任意のストロンチウム第二成分を用いた場合と用いない場合の触媒の調製と試験
任意のストロンチウム第二成分を用いた場合と用いない場合の一連の触媒を合成し、試験した。これらの触媒の組成を次の表3に示す。表3の各触媒について熱水エージング後の温度に対するパーセントNO変換図を図5に示す。
【0089】
これらの触媒はいずれも他の成分に加えて約40重量パーセントのOSM CZLYと約40重量パーセントのゼオライトを含んでいた。各触媒は約7重量パーセントの第一成分(1種類以上)、約13重量パーセントの第二成分(1種類以上)、そしてストロンチウムが存在する場合は、最初の第二成分に部分的に置き換わって約8重量パーセントのストロンチウム第二成分を含んでいた。重量パーセントはいずれも金属酸化物に基づいている。表3におけるMLはモリコープから市販されている混合硝酸ランタニド溶液から得たランタニド混合物を表している。
【表3】

【0090】
図5は表3の各触媒について摂氏温度に対するNO変換の図を示す。各触媒は実施例1の場合と同じ条件下で試験した。
【0091】
触媒6、8および10は付加的な第二成分としてストロンチウムを含んでいた。触媒5、7および9はそれぞれ付加的な第二成分としてストロンチウムを含まない対応触媒であった。図5に示すように、付加的な第二成分としてストロンチウムを含む触媒は、温度範囲の少なくとも大部分にわたって付加的な第二成分としてストロンチウムを含まない触媒と比較して、NO変換活性が高かった。付加的な第二成分としてストロンチウムを含む触媒は、付加的な第二成分としてストロンチウムを含まない対応触媒と比較してNO変換活性が高い。
【0092】
実施例6:さまざまな第一成分と第二成分を含む触媒の調製ならびに試験
表3に示す組成をもつ一連の触媒を調製し、アンモニアSCR活性について試験する。これらの触媒はいずれもゼオライトとOSMを含んでいる。代表的なML(制限なく)は、7.5重量パーセントのPrO(Xは約1.5〜約2)、63重量パーセントのLaO1.5、7.5重量パーセントのCeO、22重量パーセントのNdO1.5の組成を持つと思われる。
【表4】


【0093】
各触媒について試験する。第一成分を含み第二成分を含まないか、第二成分を含み第一成分を含まない触媒は、第一成分と第二成分の両方を含む対応触媒と比較して低温時の活性が低く、かつ水熱安定性が低いと予想される。ディーゼル排気は通常は低温であるので、低温活性はディーゼル用途にとって重要である。ディーゼル排気は水蒸気を含むので、水熱安定性もディーゼル用途にとって重要である。
【0094】
この発明の実施態様による触媒は、先行技術の触媒よりもアンモニアによるNO選択的還元の活性が高い。さらに、この発明の実施態様による触媒は、ディーゼル排気で遭遇する低温や高いNO/NO比率においてNO変換活性が高い。この発明の実施態様による触媒はディーゼル用途において重要な要素である高い水熱安定性も備えている。
【0095】
この発明の実施態様による触媒は、NOを含むその他のガス流への適用、特に、高いNO/NO比率をもつ可能性のある排気流への適用ができるかもしれない。いくつかの適用例にはディーゼルエンジン車両からの排ガス、ガスタービンからの排ガス、ディーゼル発電機からの排ガス、発電所からの排ガス、化学プラントからの排ガスおよびその他の適切な適用が含まれるが、これらに限定されることはない。
【0096】
この発明はその本質的な特徴から逸脱することなくその他の特定形態で具現化してもよい。記載された実施態様は、あらゆる点において、説明的なものとしてのみ捉えるべきであり、制限的なものとして捉えてはならない。したがって、この発明の適用範囲は上記説明によるのではなく、添付の特許請求項によって示されている。特許請求項の意味および等価性の範囲内で行われるすべての変更は、それぞれの適用範囲内で受け入れられるべきである。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニアによる窒素酸化物の選択的接触還元のための触媒で、銅、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、鉄、ニオブおよび前記物質の各混合物からなる群のうちの少なくとも一つを含む第一成分と、
セリウム、ランタニド、ランタニド混合物および前記物質の各混合物からなる群のうちの少なくとも一つを含む第二成分と、
少なくとも一つのゼオライトを含む触媒。
【請求項2】
さらにストロンチウムを含む請求項1の触媒。
【請求項3】
さらに酸素貯蔵物質を含む請求項1の触媒。
【請求項4】
請求項1の触媒で、約1重量パーセント〜約20重量パーセントの第一成分と、約2重量パーセント〜約35重量パーセントの第二成分と、約10重量パーセント〜約90重量パーセントの少なくとも一つのゼオライトを含み、第一成分と第二成分の重量パーセントが金属に基づく触媒。
【請求項5】
さらに約2重量パーセント〜約35重量パーセントのストロンチウムを含む請求項4の触媒で、そのストロンチウムの重量パーセントがストロンチウム金属に基づく触媒。
【請求項6】
請求項1の触媒であって、ゼオライトがZSM−5、ZSM−11、ZSM−12、ZSM−18、ZSM−23、MCM−ゼオライト、モルデナイト、ファージャサイト、フェリエライト、ゼオライトベータおよび前記物質の各混合物からなる群から選択される触媒。
【請求項7】
請求項3の触媒であって、酸素貯蔵物質がCe1−aZrおよびCe1−c−dZrLanからなる群から選択され、かつLanがY、La、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Ho、Ybおよび前記物質の各混合物からなる群から選択される触媒。
【請求項8】
請求項1の触媒であって、第一成分がマンガンであり、第二成分がセリウムであり、ゼオライトがZSM−5である触媒。
【請求項9】
基材と、
アンモニアによる窒素酸化物の選択的接触還元のための触媒であって、銅、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、鉄、ニオブおよび前記物質の各混合物からなる群のうちの少なくとも一つを含む第一成分と、
セリウム、ランタニド、ランタニド混合物および前記物質の各混合物からなる群のうちの少なくとも一つを含む第二成分と、
少なくとも一つのゼオライトを含み、かつ触媒が基材上に配置される触媒を含む触媒組成。
【請求項10】
さらに酸素貯蔵物質を含む請求項9の触媒組成。
【請求項11】
請求項10の触媒組成であって、アルミナ、シリカ、チタニアおよびシリカ・アルミナ溶液ならびに前記物質の各化合物および各混合物からなる群から選択された少なくとも一つの無機酸化物をさらに含む触媒組成。
【請求項12】
請求項11の触媒組成であって、ゼオライト、酸素貯蔵物質および無機酸化物のうちの少なくとも一つがウォッシュコートの形態で基材上に配置される触媒組成。
【請求項13】
アンモニアによるガス流中の窒素酸化物を選択的に還元させる方法で、銅、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、鉄、ニオブおよび前記物質の各混合物からなる群のうちの少なくとも一つを含む第一成分と、
セリウム、ランタニド、ランタニド混合物および前記物質の各混合物からなる群のうちの少なくとも一つを含む第二成分と、
少なくとも一つのゼオライトを含む触媒の存在下でガス流をアンモニアに接触させることを含む方法。
【請求項14】
請求項13の方法で、ガス流を約140℃〜約700℃の温度でアンモニアと接触させ、かつ同ガス流のアンモニア/NOモル比が約0.6〜約2.0である方法。
【請求項15】
請求項13の方法で、触媒がさらにストロンチウムを含む方法。
【請求項16】
請求項13の方法で、触媒がさらに酸素貯蔵物質を含む方法。
【請求項17】
請求項13の方法であって、触媒が約1重量パーセント〜約20重量パーセントの第一成分と、約2重量パーセント〜約35重量パーセントの第二成分と、約10重量パーセント〜約90重量パーセントの少なくとも一つのゼオライトを含み、かつ第一成分と第二成分の重量パーセントが金属に基づく方法。
【請求項18】
請求項17の方法であって、触媒がさらに約2重量パーセント〜約35重量パーセントのストロンチウムを含み、かつストロンチウムの重量パーセントがストロンチウム金属に基づく方法。
【請求項19】
請求項13の方法で、ゼオライトがZSM−5、ZSM−11、ZSM−12、ZSM−18、ZSM−23、MCM−ゼオライト、モルデナイト、ファージャサイト、フェリエライト、ゼオライトベータおよび前記物質の各混合物からなる群から選択される方法。
【請求項20】
請求項16の方法で、酸素貯蔵物質がCe1−aZrおよびCe1−c−dZrLanからなる群から選択され、かつLanがY、La、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Ho、Ybおよび前記物質の各混合物からなる群から選択される方法。
【請求項21】
請求項13の方法で、第一成分がマンガンで、第二成分がセリウムで、ゼオライトがZSM−5である方法。
【請求項22】
請求項13の方法であって、アルミナ、シリカ、チタニアおよびシリカ・アルミナ溶液ならびに前記物質の各化合物および各混合物からなる群から選択された少なくとも一つの無機酸化物にガス流とアンモニアを接触させることをさらに含む方法。

【公表番号】特表2009−538735(P2009−538735A)
【公表日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−516601(P2009−516601)
【出願日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際出願番号】PCT/US2007/025490
【国際公開番号】WO2008/085265
【国際公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(000217228)田中貴金属工業株式会社 (146)
【Fターム(参考)】