説明

アーク処理を有する高ピーク電力パルス電源

本発明により、1kW/cmより大きいピーク電流密度を伴う0.1メガワットから数メガワットを有するピーク電流供給することが可能な直流パルス電源を含む新規のマグネトロンスパッタリング装置が提供されている。電源は、アーク状態の検出で、エネルギー蓄積コンデンサおよびプラズマから切断し、かつ、インダクタエネルギーをエネルギー蓄積コンデンサへ再循環させるスイッチ手段を有する直列接続されたインダクタを含むパルス回路を有する。エネルギー蓄積コンデンサおよび直列接続されたインダクタは、インピーダンス整合をプラズマへ提供し、アーク発生の場合には、電流の上昇速度および最大振幅を制限し、プラズマへの電圧パルスを成形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、概して高イオン化された高密度金属プラズマのマグネトロンスパッタリングする装置および方法に関する。特に、最大出力密度1kW/cm以上を有する最大出力0.1メガワットから数メガワットを、アーク処理能力を有するスパッタリングマグネトロンプラズマ負荷に供給するマグネトロンスパッタリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
金属イオンを生成し、イオンを引き付ける電気バイアスによりワークピースにイオンを引き付けることによって、基板をコーティングすることが所望される。このアプローチの有用性は、視野方向を基本的に必要とする通常のスパッタリングによる一様な堆積を妨げる凸凹を有する表面へのコーティングの適用を含む。実際に、半導体デバイスにおいて、高アスペクト比のトレンチをコーティングし、充填することは、Monterio氏によって、JVST B17(3),1999 pg.1094に報告され、またLu氏およびKushner氏によって、JVST A 19(5),2001 pg.2652に報告されるように、イオンを引き付けるために、ウエハーにバイアスをかけることによって可能である。
【0003】
高ピーク電力および低負荷時間率を持つ電気パルスを有する従来のスパッタリングマグネトロンを施すことによって、高イオン化された、高密度金属プラズマを生成する技術が、Kouznetzovら氏の「Surface and Coating Technology」 122(1999)pg.290によって報告されている。追加的な教示が、Macak氏らの「JVST A」18(4),2000pg.1533;Gudmundsson氏らの「APL」,Vol.78,No.22,28 May,2001,pg.3427;Ehiasarian氏らの「Vacuum」65(2002)p.147および特許文献1に見つけられる。
【0004】
この技術の魅力は、バイアス電圧の印加によってワークピースに、順に引きつけられる多くのイオン化種を生成する能力である。高ピーク電力技術についての上述の参照は、インダクタを介して、単純なコンデンサ放電を用いると思われる。しかしながら、これらの参照によって教示される技術は、アーク処理能力を開示しておらず、実際には、アークフリー領域が存在することを示唆する。ハードウェアにおける不可避な不完全は、たとえ、その存在が理論によって示唆されていても、動作の完全なアークフリー領域の物理的な実現を本質的に不可能にする。アーク処理能力を持たないこの技術の使用は、商業上の利用を非現実的なものにする。従って、許容される限界内のアーク放電のために、製品およびターゲットダメージを保持するアークエネルギーを最小限にすることによって、高密度高イオン化金属プラズマを生成するために、マグレトロンに対して高ピーク電力パルスを用いて製品化できる装置を提供することが所望される。
【0005】
代表的なアーク制御およびアーク分流装置は、アークを検出する回路か、負荷からの電源の切断する回路から成るか、または、アークをなくすために、電源を効率的に短絡させるスイッチング回路から成る。これらのタイプのアーク処理方法は、大変コストがかかる。なぜなら、高価な在庫の原材料を無駄にする処理の完全なシャットダウンの結果になり得るか、もしくは、電源回路に蓄積されているエネルギーの損失を必要とするからである。高電力用途において、電力供給への短絡は、電力供給それ自身の破壊を蓄積こし得る大変高い電流の結果になり得る。蓄積されているエネルギーの反復的な損失は、冷却する手段と同様に、高いピーク電力および高い平均電力が可能である高価な抵抗素子を必要とする。
【0006】
高い歩留まりの商業上の用途に対して、アーク処理能力を有する最大出力1メガワット以上を供給するマグネトロンスパッタリング装置および方法を提供されることが所望される。
【特許文献1】米国特許第6,296,742 B1号明細書(Oct.2,2001)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
アークを検出し、アークに供給されるエネルギーを制限する処置能力を有するマグネトロンスパッタリングプラズマシステムを提供することが本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の要旨)
本発明によって、効率的なアーク処理能力を有する高密度マグネトロンプラズマへ高ピーク電力を供給するのに適した高電圧パルスを生成する装置および方法が提供される。エネルギー蓄積コンデンサを含むパルス回路は、繰り返し充電され、プラズマに直列接続されているインダクタを介して放電される。インダクタとコンデンサの組み合わせは、パルスを成形する役目をし、プラズマにインピーダンス整合に提供し、アーク発生の場合には、電流の上昇速度および最大振幅を制限する。アークは、パルス中の現在の電圧のしきい値より低い放電電圧の低下、もしくは、現在の電圧のしきい値より大きい放電電流における上昇によって検出される。アークが検出されるとき、エネルギー蓄積コンデンサは、直列コンデンサから切断され、電流の上昇を止める。それから、パルス回路は、プラズマ負荷電流から接続が切られ、インダクタエネルギーは、エネルギー蓄積コンデンサへ戻して再循環される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1を参照して、マグレトロンプラズマ処理システム10が示されている。直流電源12は、パルス回路16を介して、マグネトロンプラズマ処理チャンバ14に接続されている。マグネトロンプラズマ処理チャンバは、当業者にとって既知の、マグネトロンカソード18およびアノード20を有する従来のマグネトロンチャンバであり得る。パルス電源16は、Advanced Energy Industries,Incによって製造されるMegaPulser(登録商標)モデルといったタイプであり得る。MegaPulser(登録商標)は、当業者にとって既知の様態で、カソード18およびアノード20に渡り高電圧パルスを供給することにより、電極間のパルスを点火する。従来のプラズマ処理チャンバと同様に、プラズマは、チャンバ内に位置する基板26上でコーティングの結果にするために、カソード18の材料に作用する。通常、高電圧で、チャンバ内の処理環境において分散を有するとき、アークの放電が、プラズマ22もしくはカソード18からアノード20へ発生し得ることが、よく知られており、理解されている。また、マグネトロンプラズマ処理チャンバに接続されているのは、マグネトロンへの最小電圧を保持し、パルス回路16からの高電圧パルス間のプラズマを点火状態に保つ、より小さい直流電源28である。この電源は、また、高パルス動作が始動する前に最初にプラズマを点火するために用いられ得る。
【0010】
マグネトロン処理チャンバへの高電圧パルスの用途に対して、パルス回路16は、スイッチSを介して、インダクタLに直列接続されているエネルギー蓄積コンデンサCを含む。インダクタLは、スイッチSを介して、マグネトロンのカソードに接続されている。
【0011】
図2は、回路の通常の動作に対する波形を示す。全体のシーケンスに対して、Sは、閉路であり、Sは、開路である。コンデンサCは、直流電源12によって初期電圧まで充電される。放電がSによって開始され、コンデンサCは、インダクタLを介して、プラズマ負荷に放電される。制御回路は、コンデンサCの充電時間および負荷へのそのパルス放電を制御するために、スイッチのタイミングを開始する。V、Iinductor、VLOADおよびIload波形の形状は、V初期値、Cの値、Lの値、またプラズマ負荷電流および出力ケーブルの特徴によってだけ決定される。
【0012】
図3は、パルス回路16からのパルス中に発生するアークを表す波形を示す。シーケンスは、図2に示されるように、また上述されるように始まるが、アークが発生するとき、アークが検出されるまで、電流は上昇し、電圧は低下する。アークは、2つの手段のうちの1つによって検出される。アーク検出手段をインプリメントするために要求される特定の回路技術は、当業者には良く知られている。第1に、アークは、現在のしきい値を超える負荷電流として検出され得る。このしきい値は、実際には、プラズマ負荷の特徴およびVの初期値、Cの値またLの値、出力電流を予測することによって、間違った検出を防ぐために余裕を加えることによっておよびパルスベースで、パルス上でアップデートされる。これらのパラメータに基づく出力電流の予測は、当業者には良く知られている。あるいは、電流のしきい値は、間違ったアーク検出を防ぐために加えられたいくらかマージン伴う平均ピーク電流に基づき得る。この場合には、高アーク電流を有するパルスを平均的な計算から除くことが所望される。第2に、アークは、負荷電流が、この第2の方法のみに用いられる第2の電流しきい値より大きいとき、現在のしきい値より小さい負荷電圧として、検出され得る。アークが検出されるとき、Sは、瞬時に開路し、Sは、少し遅れて、閉路する。それから、Sは、また少し遅れて、開路する。このことは、パルス回路16からの負荷の切断し、インダクタLからコンデンサCへのエネルギーのレゾナントトランスファを開始する。結果は、発生しているアークがコンデンサCへ再循環されるとき、インダクタLにエネルギーが存在することになる。このアーク処理シーケンスは、アーク発生の場合には、負荷に供給されるエネルギーを最小化する。アーク処理対策がないとき、Cに蓄積されているエネルギーおよびLに蓄積されているエネルギーは、アークに供給され、ターゲットおよびワークピースにほぼ確実にダメージを引き起こす。アーク処理対策は、この処理の商業用使用を可能にする。
【0013】
プラズマ負荷からパルス回路を切断することによって、また、アーク状態の検出で、高ピーク電力パルスのために蓄積されるインダクタエネルギーをエネルギー蓄積コンデンサへ再循環するアークによるダメージを最小化するアーク処理を有するパルスマグネトロンに対して新規の高ピーク電力プラズマパルス電源が提供されることが容易に理解される。
【0014】
特定の構造が図示され、また動作の詳細が記載されているが、これは、例示のための目的のみであり、変更および変形が、本発明の精神および範囲を逸脱することなく当業者によって容易にされることがはっきりと理解される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】マグネトロンプラズマ処理システム概略図である。
【図2】図2は、図1に示されるマグネトロンプラズマ処理システムの通常の動作に対する波形を示す。
【図3】アーク処理動作に対する示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続動作モードにおいてカソード材料をスパッタリング堆積することにより、基板上にコーティングを形成する装置であって、
a)イオンおよび電子を含むプラズマが作成されるプラズマチャンバと、
b)該プラズマチャンバにおいて堆積される少なくとも1つのターゲットであって、プラズマからのイオンによる照射に応答して、そこからスパッタリングされ得る原子を含み、該プラズマに近接した少なくとも1つ基板の表面上に膜を堆積する、少なくとも1つのターゲットと、
c)該プラズマチャンバにおいて堆積される該ターゲットに接続されているパルス回路を有する直流パルス電源であって、そこへ電圧パルスを供給する、直流パルス電源と
を備え
d)前記パルス回路がエネルギー蓄積コンデンサをさらに備え、該プラズマから該パルス回路を切断するスイッチング手段を有する直列接続されているインダクタに該パルスを供給し、アーク状態の検出で、該エネルギー蓄積コンデンサを該インダクタへ戻して再循環させる、装置。
【請求項2】
前記エネルギー蓄積コンデンサおよび前記直列接続されているインダクタは、前記プラズマにインピーダンス整合を提供する、請求項1に記載の連続動作モードにおいてカソード材料をスパッタリング堆積することにより、基板上にコーティングを形成する装置。
【請求項3】
前記エネルギー蓄積コンデンサおよび前記直列接続されているインダクタは、アーク発生の場合には、電流の上昇速度および最大振幅を制限する、請求項2に記載の連続動作モードにおいてカソード材料をスパッタリング堆積することにより、基板上にコーティングを形成する装置。
【請求項4】
前記エネルギー蓄積コンデンサおよび前記直列接続されているインダクタは、パルスを成形する、請求項3に記載の連続動作モードにおいてカソード材料をスパッタリング堆積することにより、基板上にコーティングを形成する装置。
【請求項5】
前記直流パルス電源は、1kW/cmより大きい最大出力密度を有する0.1メガワットから数メガワットを供給する、請求項4に記載の連続動作モードにおいてカソード材料をスパッタリング堆積することにより、基板上にコーティングを形成する装置。
【請求項6】
前記パルス回路は、前記エネルギー蓄積コンデンサの放電開始における初期の充電電圧、前記インダクタの値、コンデンサおよびプラズマ負荷特性に基づいてアーク電流のしきい値をアップデートする、請求項1に記載の連続動作モードにおいてカソード材料をスパッタリング堆積することにより、基板上にコーティングを形成する装置。
【請求項7】
前記パルス回路は、計算から除かれた高いアーク電流を有するパルスを伴う平均ピーク電流に基づいてアーク電流のしきい値をアップデートする、請求項1に記載の連続動作モードにおいてカソード材料をスパッタリング堆積することにより、基板上にコーティングを形成する装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−500473(P2006−500473A)
【公表日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−539892(P2004−539892)
【出願日】平成15年9月23日(2003.9.23)
【国際出願番号】PCT/US2003/030211
【国際公開番号】WO2004/029322
【国際公開日】平成16年4月8日(2004.4.8)
【出願人】(597088476)アドバンスド エナジー インダストリーズ, インコーポレイテッド (18)
【住所又は居所原語表記】1625 Sharp Point Drive, Fort Collins, Colorado 80525 U.S.A.
【Fターム(参考)】