説明

アーク炉における冶金処理のための多機能インジェクタ及び関連燃焼プロセス

亜音速または超音速のバーナとして動作するようになっているデ・ラバルノズル(20)を含み、前記デ・ラバルノズル(20)は前記デ・ラバルノズル(20)と同心且つ同軸の2つのリングに配列されている燃料及びコンビュラントのための複数のノズル(それぞれ、31、32)と組合され、前記ノズルは特別な形状を有する保護空洞(40)によって外部的に保護されている多機能インジェクタ(10、11、12)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アーク炉内における鉄の冶金処理のための燃焼を目的とする多機能インジェクタに関する。
【0002】
本発明は更に、アーク炉内における鉄の冶金処理のために前記多機能インジェクタを使用する燃焼プロセスに関する。
【背景技術】
【0003】
電気アーク炉(以下、単にアーク炉、もしくはEAF炉という)技術が、鋼生産の分野において急速に広がりつつある。このプロセスに商業的関心が寄せられるのは、スクラップ金属その他のスクラップ材料のリサイクルと、スクラップ回収のためのこれらの技術によってもたらされる優れた結果との組合せに対する要望が絶えず増加していることによる。
【0004】
アーク炉またはEAF炉を使用して鉄、鋼、及び鋳鉄を得るのに用いられるサイクルは、一般的にバッチで遂行される。即ち、スクラップは、ある間隔(先行生産ステップ中の残留浴内に注入後に約10分間持続する)中のプロセスの初期ステップ中にロードされる。
【0005】
従って、浴に漬かったある量のスクラップ金属を熔解するのに要する時間が、液体製品を得るためのサイクルの合計時間に大きく影響する。初期熔解ステップを加速させることができるどのような方法も、合計処理時間を短縮させ、製鋼の生産効率を向上させることは明白である。
【0006】
EAF炉においては、主として電極からの通電によるジュール効果によって金属にエネルギが与えられる。黒鉛電極の先端に電気アークを形成させることによって誘導される金属とスラグとの混合が、炉の全ての部分への熱伝導を促進する。この場合、スクラップへの熱エネルギの伝導は極めて遅いプロセスである。浴内の材料は直接伝導によって加熱されるが、スクラップの密度が低いために、上に位置する部分への熱伝導は妨げられる。ロードされた質量の残りの部分は放射によって加熱される。更に、ロードの最も外側部分が内側質量に対する遮蔽になって溶解プロセスをスローダウンさせる。
【0007】
加熱効率を改善するために、従って、ロード溶解時間を短縮させるために現在使用されているプロセスは、化学手段によってロードの外側部分に熱を直接供給するバーナに頼っている。この用途に適するバーナは燃料・酸素型(以下、オキシ・フューエルという)であり、燃料は例えばプロパン、天然ガス、または両者の混合体からなっている。コンビュラント(comburant)は純酸素であり、浴の頂部上の領域を含む広範な領域を加熱するためにバーナは比較的幅広い火炎で動作する。
【0008】
サイズの大きい炉においては、これらのシステムが共働して浴の温度を均一に維持する。US20030054301に記載されているように、火炎の特性を変更できるようなバーナを製造する幾つかの試みがなされてきている。
【0009】
ロードされた全ての材料が完全に溶解してしまうと、冶金的製品を得るための実際的なサイクルが開始される。これは鉄、鋳鉄、または液体鋼であることができる。このステップ中に所要の化学反応並びにエネルギを得るために、正確に平衡した量の炭素及び/または酸素を浴内に導入しなければならない。
【0010】
これを遂行するためには、適当なインジェクタによって発生させた高速超音波ジェットを使用してスラグの外側層を穿孔しなければならない。金属内へ噴射されるガスの軸に沿う、及び金属全体を泡立たせるのに十分なエネルギを維持しながら外側スラグ層を穿孔するのに十分に強い運動スラスト及び凝集を達成するために、幾つかの基準(ノズルの形状及び配列)と、そして最後になったが、シュラウディングと呼ぶ主ジェットをカバーする方法が採用されてきた。
【0011】
この技術(例えばPraxairの特許US5823762に開示されている)においては、超音速(>マッハ2)で浴内に噴射されるガスを、燃焼フェーズのガス混合体によって取り囲む。ジェットの走行方向の距離が長い場合には、外側リングの燃焼がシュラウドを形成する。このシュラウドは、一方では噴射される工業ガスを閉じこめ、一方では熱い保護層を生成して主ジェットによって捕捉される(エントレインメント)ガスの量を減少させるので、高速ゾーンの長さが増加する。
【0012】
2つのシステム、即ちバーナ及びインジェクタを説明する。これらは、これらの特定動作範囲においては極めて効率的であるが、これらの機能は生産サイクルの限定された期間に限定され、他の期間中は不活性になる。
【0013】
たとえ最適化されていても、例えばAirliquid社に譲渡された米国特許US6514310及びそれに対応する欧州特許EP1179602に開示されているような超音速インジェクタを使用すると、ジェットコヒーレンスが熱を効率的手法で放出することなく層を横切り、スクラップ質量を局部的に切断または穿孔してしまう可能性があるから(これは問題である)、総合スクラップ溶解ステージ中は効果的ではない。
【0014】
同様に、脱炭ステップ中は、バーナが発生するジェットはコヒーレンスが貧弱で液体金属を得ることができず、従ってスラグ上に、及びリング内に発生した熱は分散される。この問題を解消するためにある場合に採用されているようにノズルを液体浴に接近させ過ぎると、外来材料がノズルの上に堆積してしまうことによって機能が不十分になる可能性が増加する。
【0015】
従来技術のデバイスに伴う上述した諸問題を解消し、最大効率を達成するための最新世代EAF炉には、両方の型の設備(バーナ及び超音速インジェクタ)のアレイを設けなければならない。
【0016】
しかしながら、炉環境は特に厄介である。例えば、炉内に配置される全ての機器は極めて高い温度に曝され、種々の自然物の塵埃が全露出表面に堆積し、浴に近い場合には飛散するスラグに強打される危険性が増加し、凝固がノズルを塞ぐ恐れがあり、ノズルを支え、それらを源及び制御ラインに接続するトランスファ支持具は、炉壁上の耐火フェトリング内にセットされている適切な開口内に設置されている複雑な液冷パネルである。
【0017】
この理由から、2つの分離した装置を使用すると、たとえこれを初期投資(プラントの複雑さが大きい)、操業(制御に対する要望が大きい)、検査、保守、及び類似作業、消費(ノズル閉塞を防ぐための洗浄ガス)、並びに機械を停止させる可能性が大きい動作リスクであると称したとしても、全ての面においてかなりのコスト増がもたらされる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
従来技術が当面している上述した諸問題を解消する試みはなされている。これらの1つが特許出願US2001 / 0043639であり、この出願は、壁取付けされたインジェクタを異なるモードで動作させる、即ち、スクラップ熔解ステップ中にはインジェクタをバーナとして使用し、脱炭ステップ中にはノズルとして使用する方法を提唱している。
【0019】
しかしながら、この特許出願は、この装置がどのように構築されているかには言及していない。
【課題を解決するための手段】
【0020】
出願者は、炉の異なる動作状態の下で必要とされる多数のバーナ及びインジェクタを減少させる問題を解消し、オキシ・フューエルバーナに似た広い開口を有する1つの構造が発生する火炎を、中心の超音速ジェットのためのカバーリングまたはシュラウディング構成のように変更できる装置(多機能インジェクタ)を開発した。
【0021】
出願者は、更に、多機能インジェクタを設計した。この多機能インジェクタの供給制御システムは、EAF炉の全ての冶金ステージにおける熱貢献度を最適化するために、オキシ・フューエルとシュラウディングとの中間の各構成において得られる火炎を安定させることができる。
【0022】
従って、本発明の一般的な目的は、オキシ・フューエルバーナのそれに類似する広い開口を有する構成から出る火炎を、中心超音速ジェットのカバーリングまたはシュラウディング構成へ変化させることができるように配列された多機能インジェクタを提供することである。
【0023】
本発明の別の目的は、スクラップ溶解及び液体金属内への超音速酸素噴射の極限状態の下でだけではなく、中間状態の下でも化学反応を改善するために金属内への熱及び/または噴射の均質性を向上させ、ロード状態に従って熱伝導(局部的な加熱を介してを含む)を改善するのに適切であるように最適化することができる多機能インジェクタを実現することである。
【0024】
本発明のさらなる目的は、多機能インジェクタを使用してアーク炉内における冶金処理のための柔軟性に富んだ燃焼方法を提供することである。
【0025】
本発明による多機能インジェクタは、亜音速または超音速で動作するようになっているデ・ラバル(De Laval)ノズルを含む。このデ・ラバルノズルは、それと同心且つ同軸の2つのリング上に位置決めされている燃料及びコンビュラント噴射用の複数のノズルが組合され、これらのノズルは適当な形状の空洞によって外部的に保護されている。燃焼プロセスの柔軟性は、外部コンビュラント及び燃料を噴射する時に円周方向及び接線方向の速度成分を付加的に生成させることによって達成される。
【0026】
このようにして、内側ノズルからの酸素と、外側リング上に位置する孔からの酸素との間の配分を変えることによって、バーナステージ中の火炎の長さ及び広がりを調整することが可能になり、また、精製ステップ中に極めて大きい超音速ゾーンを有するジェットを得ることができる。同一の幾何学的条件の下で、炉の特定要望(炉の幅、スクラップのサイズ等)に適合するようにプロペラの角度を変えることによって、操業動作中にも、プロジェクト計画段階中にもこの柔軟性が存在する。
【0027】
本発明は、更に、アーク炉における冶金処理のために、以下のステップを遂行するように開発された多機能インジェクタを使用する燃焼プロセスに関する。即ち、
・多機能インジェクタの前面に位置するスクラップ塊を迅速且つ効率的に加熱することが可能な幅広の火炎を得るように、迅速燃焼ガス混合体を用いて亜音速デ・ラバルノズルと共にバーナとして動作させるステップと、
・スクラップを切断するための、従って多機能インジェクタの前面の塊形成物を破砕するように、凝集した且つ高いパルスレートの火炎を用いて超音速デ・ラバルノズルと共にバーナとして動作させるステップと、
・フレアを横方向に閉じこめるためにシュラウディング方法を使用し、デ・ラバルノズル開口の直径の70倍まで延びる超音速ゾーンを有する超音速の、且つこれらの条件の下においても液体金属浴内に酸素を直接噴射することができる酸素インジェクタとして動作させるステップと、
を含む。
【0028】
上述した目的に鑑みて、本発明によれば、アーク炉における冶金処理のための、特許請求の範囲に記載された特性を有する多機能インジェクタ及び関連燃焼プロセスが実現される。
【0029】
本発明の機能的及び構造的特色、並びに従来技術に勝る長所は、以下の添付図面に基づく詳細な説明からより一層明白になるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
図1に示す従来技術によるアーク炉1に設けられている普通のノズル2は、スラグSLのレベルより下の金属浴MLから高さH、距離Lの所から所定の角度α’で火炎を放出するようになっている。
【0031】
図2乃至6に示す本発明による多機能インジェクタ10は、亜音速または超音速のバーナとして動作するようになっているデ・ラバルノズル20を備えている。このデ・ラバルノズル20は、燃料ノズル31及びコンビュラントノズル32からなる複数のリングインジェクタを含むリングと組合されている。これらのリングインジェクタは、前記デ・ラバルノズル20と同心に、且つ同軸に配列されている。燃料ノズル31のリングはコンビュラントノズル32のリングよりも内側に位置決めされ、且つ中心のデ・ラバルノズルを取り囲んでいる。
【0032】
2つのリング及びノズルは、特別な形状をした保護空洞40によって外部的に保護されている。
【0033】
図5aにインジェクタ10の好ましい実施の形態を示す。特別な形状をした保護空洞40は、円錐が連続している第1の区分43及び第2の区分44を含み、これらは好ましくは20°及び30°である。
【0034】
図5bは、一定の円錐形状42(好ましくは、20°)になっている保護空洞40を有するインジェクタ11を示している。
【0035】
図5cに示すインジェクタ12には、円筒形区分41を有する保護空洞40が設けられている。
【0036】
これら3つの場合の全てにおいて、保護空洞40の広がりを、長さLq及び出口直径Doutで表してある。
【0037】
限定するものではないが、以下に保護空洞40の寸法例を示す。
・インジェクタ10 Lq=45.51mm、 Dout=103.6mm
・インジェクタ11 Lq=60mm、 Dout=103.6mm
・インジェクタ12 Lq=10mm、 Dout=60mm
【0038】
酸素を収斂/発散させるための中心ノズルは、優れた効率を保証しなければならない。図3を参照する。ノズル20は、マウスピース側から順番に、
・長さL1、入口直径Din、及び半入射角βを有する入口25を有する円錐形収斂入口区分21と、
・長さL2及びのど直径Dthを有する円筒形のど22と、
・前記円錐形入口区分21とそれに続く前記中心円筒形のど22との間の、半径R1を有する円周方向のテーパリングと、
・長さL3及び半入射角αを有する円錐形発散区分23と、
・前記のど22と、前記円錐形発散出口区分23との間の、半径R2を有する円周方向のテーパリングと、
・長さL4及び出口直径Dexitを有する最終円筒形酸素放出区分24と、
を含んでいる。
【0039】
前記円錐形発散出口区分23と前記最終円筒形酸素放出区分24との間の円周方向のテーパリングは、半径R3を有している。
【0040】
一般的に言えば、ノズルを識別するパラメータは、入口、のど、及び出口直径であり、これらが、入口速度、マッハ数、流れ、通過質量、及び出て行くガスの静圧に関連する。これら全ての変数は、種々の動作ステップにおいてそれらが遭遇する状態に関連する。
【0041】
EAF炉に要求される条件を検討した結果、出願人は、もし以下の条件が満たされれば性能が最適になることを見出した。即ち、
・収斂円錐入口区分21の半角βは、7°乃至20°であること;
・発散円錐区分23の半角αは、2°乃至7°であること;
・円錐形入口区分21と円筒形のど22との間のテーパリング半径R1は、のど直径Dthの1乃至10倍であること;
・円筒形のど22の長さL2は、のど自体の直径Dthの0.5乃至5倍であること;
・円筒形のど22と発散円錐形出口区分23との間のテーパリング半径R2は、のど直径Dthの1乃至15倍であること;
・発散円錐形区分23と最終円筒形区分24との間のテーパリング半径R3は、のど直径Dthの20乃至80倍であること;そして
・最終円筒形区分24の長さは、のど直径Dthの0乃至3倍であること。
【0042】
以上のようにすると、最も臨界的な状態の下で、即ち最大速度において酸素ジェットが最適化される。
【0043】
周辺の噴射ノズル31及び32、即ち燃料ノズル及びコンビュラントノズルに関して言えば、シュラウディング効果の長所を採り入れるために、中心の酸素ノズルの周囲の2つの同心リング状にノズルを配列する。即ち、
・燃料噴射ノズル31の数は8乃至20であり、それらの断面形状は台形、円形、または他の形状であることができる。これらのノズルは、デ・ラバル酸素ノズル20の周囲に完全な円として、且つコンビュラントノズル32の円の内側に位置決めする。
・コンビュラントノズル32は、デ・ラバル酸素ノズル20及び燃料ノズル31の第1のリングの周囲の第2のリングとして配列する。コンビュラントノズル32の数は好ましくは8乃至20であり、それらの個々の断面形状は円形、半円形、台形と変化させることはできるが、他の形状も効率的に使用することができる。
【0044】
インジェクタの最適化は、最も極端な動作条件を考えることによって、換言すれば中心ジェットがマッハ2である時にシュラウディング効果を適用することを考えることによって達成される。
【0045】
しかしながら、中間動作状態はこのプロジェクト配列によって否定的に影響され得るから、火炎の不安定または突然の消炎のような否定的な効果を防ぐために、特別な形状をした安定化保護空洞40を採用した。
【0046】
この保護空洞は、基本的にはインジェクタを内部に挿入するための保護トンネルである。このようにすると、ガスが低速で放出される場合にそれらの混合が改善され、不安定さをもたらす外部的な乱れによる影響を受け難くなる。
【0047】
この特定の場合には、この保護空洞40はノズル31、32上の特別の保護としても動作してスラグまたは液相金属からの飛沫を防ぐ。また、形状は円錐形または円筒形であることができる。設置の型に依存して、空洞は耐火壁またはインジェクタ冷却システム内の空洞内に形成することができる。実際には、インジェクタ冷却及び保護システムは、インジェクタを収容する金属構造からなる。この構造の外壁は、スラグ飛沫が表面に付着するように、従ってインジェクタのための天然耐火保護としてこの材料を利用するように構成されている。従って、空洞はエジェクタの表面を、冷却限界に比して後退した位置に維持するように作られる。
【0048】
燃料パルス値が十分に高く、且つ炉の動作温度にある場合には、インジェクタは外部限界、即ち空洞の直前から始まるローブのある、安定な火炎を発生する。
【0049】
円錐状の、即ちフレア付きのジオメトリを使用することによって熱いガスの局部的な循環が増加して炉混合体の温度は自己点火温度より高い温度に達し、消炎した場合には火炎の自己再点火を刺激し、空洞の外面に火炎が直接接触するのを防いで炉の動作寿命を大幅に改善する。
【0050】
この型ののどジオメトリを使用すると、燃料とコンビュラントの混合体を高精度で制御することができる。即ち、低パルス値テーパリングが燃料ガス膨張を生成し、それらの流れをゆっくりにしてより良い混合作用を可能にする。従って、広角度での、且つインジェクタに近接したゾーンにおいて燃焼が発生する。パルスを増加させることによって、火炎のコヒーレンスが増加する。基本的には、火炎はより狭く、より長くなり、保護空洞40の貢献度は比例的に徐々に少なくなるが、それでも、点火のための熱いガスの存在の有益な効果は保証し続ける。
【0051】
広がった火炎状態で動作中であるにも拘わらず、比較的高いパルスの利点を維持するために使用される1つの解法は、最も外側のリングの酸化ガスに、または内側リングによって噴射される燃料に渦巻き回転を与えることである。この回転運動は、バーナの軸に対してスパイラル状の勾配で設けられたダクト33によって達成され、この構造によって軸に対して接線方向モーメントをガス内に発生させる。横方向への拡散が増加することによって、特にバーナを見渡す領域内に異なる熱の場を作り、火炎の安定性に有益な効果をもたらす。
【0052】
図6に示すグラフは、図5aに概略を示した二重円錐保護空洞を有するインジェクタ10によって遂行される4つの燃焼例に関して、半径方向座標(m)に対する温度の進行(K)を表している。
【0053】
燃料(メタン)ノズル31の合計断面積は333mm2であり、一方コンビュラント(酸素)ノズル32の合計断面は757mm2である。
【0054】
4つの曲線A−Dは、以下のような異なる動作状態で測定されたものである。
・曲線A:12バールで1250Nm3/時、EAF炉環境内の炉の温度1530°C;
・曲線B:4MWt天然ガス、ノズルは500°Cの空気中に衝撃波を持つ出力を有する;
・曲線C:4MWt天然ガス、ノズルは500°Cの空気中;
・曲線D:4MWt天然ガス、バーナは500°Cの空気中。
【0055】
上述した酸素インジェクタの状態においては、コヒーレンスが約1.5mにわたって延びるものと考えられる。
【0056】
外側コンビュラント及び燃料噴射のために円周方向及び接線方向の速度に付加的な成分を発生させることを特徴とする関連インジェクタのジオメトリによって、本発明による燃焼プロセスは、
・多機能インジェクタの前面に位置するスクラップ塊を迅速且つ効率的に加熱することが可能な幅広の火炎を得るように、迅速燃焼ガス混合体を用いて亜音速デ・ラバルノズル(20)と共にバーナとして動作させるステップと、
・スクラップを切断するための、従って多機能インジェクタの前面の塊形成物を破砕するように、凝集した且つ高いパルスの火炎を用いて超音速デ・ラバルノズルと共にバーナとして動作させるステップと、
・フレアを横方向に閉じこめるためにシュラウディング方法を使用し、デ・ラバルノズル出口の直径の70倍まで延びる超音速領域を有する超音速の、且つこれらの条件の下においても液体金属浴内に酸素を直接噴射することができる酸素インジェクタとして動作させるステップと、
を含む。
【0057】
アーク炉における本発明による冶金処理のための燃焼プロセスは、極限的なスクラップ溶解状態においてだけではなく、液体金属内への超音速酸素噴射においても燃焼を最適化させる。詳述すれば、このプロセスは中間状態の下でも金属内への熱及び/または噴射の均質性を向上させて化学反応を改善し、局部的に加熱されるロードに従って付加的な熱容量及び工業材料を改善するように前記燃焼を適合させる。
【0058】
以上のように、本インジェクタは、固相が完全に排除されてしまうまでその前面のスクラップを取り囲むバーナのように動作する。塊が溶解を妨げているような場合には、火炎速度が超音速を僅かに超えるまで増加することが予測される(但し、シュラウディングによってもたらされる完全なコヒーレント効果を生ずることはない)。これらの状態の下では、ロードへの熱伝達を最適化するために火炎の角度を十分に広く維持したまま、突入パワーが増加される。
【0059】
精製中、中心デ・ラバルノズル20内において燃料供給圧力が約マッハ2の極めて高いエジェクション速度に到達するまで上昇する。同時に、燃焼フェーズのガスが中心ジェットを取り囲み、且つシュラウディング効果の最良可能な長所が採り入れられるように、燃料及びコンビュラントリングインジェクタが作動させられる。
【0060】
上述したプロセスは、主として、アーク炉内に存在する材料に依存して異なる燃焼ステップを遂行することができる多機能インジェクタに予見されるものである。
【0061】
添付図面に基づく以上の説明から、本発明による多機能インジェクタが特に有用であり、有利であって、前述した本発明の目的を達成していることが理解されたであろう。
【0062】
勿論、本発明によるデバイスの実施の形態、並びにその形状及び使用材料は、単なる説明のために図面に描かれ、本発明を限定することを意図していない形態から変化させることができる。
【0063】
本発明の範囲は、特許請求の範囲によってのみ限定されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】従来技術によるノズルを設けたアーク炉の概略斜視図である。
【図2】本発明によるインジェクタの概略斜視図である。
【図3】本発明によるインジェクタの一構成要素であるデ・ラバルノズルの側面図である。
【図4】図2に示すインジェクタの詳細を示す前端面図である。
【図5a】本発明の好ましい実施の形態によるインジェクタの概略側面図である。
【図5b】本発明の他の実施の形態によるインジェクタの概略側面図である。
【図5c】本発明の他の2つの実施の形態によるインジェクタの概略側面図である。
【図6】図2及び5aに示した好ましい実施の形態によって遂行されるインジェクタ動作の幾つかの例を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多機能インジェクタ(10、11、12)であって、亜音速または超音速のバーナとして動作するようになっているデ・ラバルノズル(20)を含み、前記デ・ラバルノズル(20)は前記デ・ラバルノズル(20)と同心且つ同軸の2つのリングに配列されている燃料及びコンビュラントのための複数のノズル(それぞれ、31、32)と組合され、前記ノズルは特別な形状を有する保護空洞(40)によって外部的に保護されていることを特徴とする多機能インジェクタ(10、11、12)。
【請求項2】
前記デ・ラバルノズル(20)は、マウスピース側から順番に、
・長さ(L1)、入口直径(Din)、及び半入射角(β)を有する入口(25)を有する円錐形収斂入口区分(21)と、
・長さ(L2)及びのど直径(Dth)を有する円筒形のど(22)と、
・前記円錐形入口区分(21)とそれに続く前記中心円筒形のど(22)との間の、半径(R1)を有する円周方向のテーパリングと、
・長さ(L3)及び半入射角(α)を有する円錐形発散区分(23)と、
・前記のど(22)と、前記円錐形発散出口区分(23)との間の、半径(R2)を有する円周方向のテーパリングと、
・長さ(L4)及び出口直径(Dexit)を有する最終円筒形酸素放出区分(24)と、
・前記円錐形発散区分(23)と前記最終円筒形酸素放出区分(24)との間の、半径(R3)を有する円周方向のテーパリングと、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の多機能インジェクタ(10、11、12)。
【請求項3】
前記デ・ラバルノズル(20)は、
・前記収斂円錐形入口区分(21)の半角(β)が、7°乃至20°であり、
・前記発散円錐形出口区分(23)の半角(α)が、2°乃至7°であり、
・前記円錐形入口区分(21)と前記円筒形のど(22)との間のテーパリング半径(R1)が、前記のど直径(Dth)の1乃至10倍であり、
・前記円筒形のど(22)の長さ(L2)が、前記のど自体の直径(Dth)の0.5乃至5倍であり、
・前記円筒形のど(22)と前記発散円錐形出口区分(23)との間のテーパリング半径(R2)が、前記のどの直径(Dth)の1乃至15倍であり、
・前記発散円錐形区分(23)と前記最終円筒形区分(24)との間のテーパリング半径(R3)が、前記のどの直径(Dth)の20乃至80倍であり、そして
・前記最終円筒形区分(24)の長さが、前記のどの直径(Dth)の0乃至3倍である、
というディメンション関係に従って構築されていることを特徴とする請求項2に記載の多機能インジェクタ(10、11、12)。
【請求項4】
前記燃料噴射ノズル(31)は、前記デ・ラバル酸素ノズル(20)の周囲の、且つ前記コンビュラントノズル(32)のリングの内側の、完全なリングに位置決めされていることを特徴とする請求項1に記載の多機能インジェクタ(10、11、12)。
【請求項5】
前記燃料噴射ノズル(31)の数は8乃至20であり、それらの断面形状は台形、円形、または他の形状であることができることを特徴とする請求項4に記載の多機能インジェクタ(10、11、12)。
【請求項6】
前記コンビュラント放出ノズル(32)の数は好ましくは8乃至20であり、それらの個々の断面形状は円形、半円形、または台形、または任意の他の幾何学的形状であることができることを特徴とする請求項1に記載の多機能インジェクタ(10、11、12)。
【請求項7】
前記特別な形状を有する保護空洞(40)は、好ましくは20°から30°の間の円錐形状が連続する第1の区分(43)及び第2の区分(44)を呈していることを特徴とする請求項1に記載の多機能インジェクタ(10、11、12)。
【請求項8】
前記特別な形状を有する保護空洞(40)は、好ましくは20°の一定の円錐形状(42)を呈していることを特徴とする請求項1に記載の多機能インジェクタ(10、11、12)。
【請求項9】
前記保護空洞(40)は、円筒形区分(41)を呈していることを特徴とする請求項1に記載の多機能インジェクタ(10、11、12)。
【請求項10】
電気アーク炉における冶金処理のために、請求項1乃至9の何れかに記載の多機能インジェクタを使用する燃焼プロセスであって、外側コンビュラント及び燃料の噴射に円周方向及び接線方向に付加的な速度成分を発生させるようになっており、
・前記多機能インジェクタの前面に位置するスクラップ塊を迅速且つ効率的に加熱することが可能な幅広の火炎を得るように、迅速燃焼ガス混合体を用いて亜音速デ・ラバルノズル(20)と共にバーナとして動作させるステップと、
・前記スクラップを切断するための、従って前記多機能インジェクタの前面の塊形成物を破砕するように、凝集した且つ高いパルスの火炎を用いて超音速デ・ラバルノズルと共にバーナとして動作させるステップと、
・フレアを横方向に閉じこめるためにシュラウディング方法を使用し、前記デ・ラバルノズル出口の直径の70倍まで延びる超音速領域を有する超音速の、且つこれらの条件の下においても液体金属浴内に酸素を直接噴射することができる酸素インジェクタとして動作させるステップと、
を含むことを特徴とする燃焼プロセス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図5c】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−534895(P2008−534895A)
【公表日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−555527(P2007−555527)
【出願日】平成18年2月13日(2006.2.13)
【国際出願番号】PCT/EP2006/001405
【国際公開番号】WO2006/087189
【国際公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【出願人】(501332415)テキント コンパニア テクニカ インテルナツィオナレ ソシエタ ペル アチオニ (7)
【Fターム(参考)】