イオンビーム測定方法および配向処理方法
【課題】 イオン源から引き出されたイオンビームの実際の進行方向を基板表面に投影した方向と実質的に等しい方向を、複雑な算出工程を用いずに測定する。
【解決手段】 上孔33を有する上板32および下孔35を有する下板34を備えていて少なくとも下孔35がスリット状をしている治具30と、治具30の上孔および下孔の両方を通過したイオンビーム12を受けてそのビーム電流を測定するビーム電流測定器60とを用いて、治具30およびビーム電流測定器60を、上孔33にイオン源10から引き出されたイオンビーム12が入射する場所に位置させた状態で、少なくとも下板34を軸38を中心に回転させて、イオン源10から引き出されたイオンビーム12を上孔33および下孔35の両方を通過させて、ビーム電流測定器60で測定するビーム電流が最大となるときの下孔の長さ方向51を測定する。
【解決手段】 上孔33を有する上板32および下孔35を有する下板34を備えていて少なくとも下孔35がスリット状をしている治具30と、治具30の上孔および下孔の両方を通過したイオンビーム12を受けてそのビーム電流を測定するビーム電流測定器60とを用いて、治具30およびビーム電流測定器60を、上孔33にイオン源10から引き出されたイオンビーム12が入射する場所に位置させた状態で、少なくとも下板34を軸38を中心に回転させて、イオン源10から引き出されたイオンビーム12を上孔33および下孔35の両方を通過させて、ビーム電流測定器60で測定するビーム電流が最大となるときの下孔の長さ方向51を測定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、イオン源から引き出されたイオンビームを配向膜付基板の表面に斜方から照射して当該配向膜付基板に配向処理を施す配向処理装置に用いられるイオンビーム測定方法、および当該配向処理を施す配向処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の配向処理装置の一例を図1に示す。この配向処理装置は、イオン源10から引き出されたイオンビーム12を配向膜付基板2の表面に斜方から照射して配向膜付基板2に(より具体的にはその表面に形成された配向膜に。以下同様)配向処理を施すものである。
【0003】
図中に記入しているように、直交3軸をx軸、y軸およびz軸とすると、この例では、配向膜付基板2は、その表面がxy平面に実質的に平行になるように配置されている。18は、配向膜付基板2の表面に立てた垂線であり、z軸に実質的に平行である。配向膜付基板2は、この例では、矢印Dで示すように、x軸に実質的に平行に搬送されて、配向膜付基板2の全面にイオンビーム12が照射される。
【0004】
イオン源10は、この例では、x軸に沿う方向よりもy軸に沿う方向が長くて、x軸に沿う方向の寸法よりもy軸に沿う方向の寸法が大きい、いわゆるリボン状のイオンビーム12を引き出すものであるが、それに限られるものではない。
【0005】
イオン源10から引き出されたイオンビーム12は、配向膜付基板2の表面に斜方から照射される。このときの照射角度をθ(0°<θ<90°)とする。
【0006】
イオンビーム12による配向膜付基板2の配向処理方向は、イオンビーム12の進行方向を配向膜付基板2の表面に投影(換言すれば射影。以下同様)した方向となることが従来から知られている。従って、配向膜付基板2に対する所望の配向処理方向20を実現するために、従来は、イオンビーム12の進行方向を配向膜付基板2の表面に投影した方向を、所望の配向処理方向20に合わせていた。具体的には、イオン源10から引き出されるイオンビーム12の設計上の進行方向14を配向膜付基板2の表面に投影した方向14aを、所望の配向処理方向20に合わせていた。
【0007】
なお、以下においては、所望の配向処理方向20は、配向膜付基板2の所定の辺(例えば長辺)2bに実質的に平行な方向であり、イオンビーム12の設計上の進行方向14を配向膜付基板2の表面に投影した方向14aは、x軸に実質的に平行な方向である場合を例に説明するが、これに限られるものではない。
【0008】
イオン源10から引き出されるイオンビーム12の設計上の進行方向14は、イオン源10の引出し面(換言すれば引出し電極系の面)11に垂直な方向であるが、イオンビーム12の実際の(換言すれば現実の。以下同様)進行方向16は、設計上の進行方向14から角度α(以下これを偏差角度と呼ぶ)だけずれている場合がある。その原因は、例えば、イオン源10の引出し電極系を構成する複数枚の電極のイオン引出し孔の相互の位置ずれ等による。この位置ずれには、組立時の位置ずれの他に、電極の熱膨張による位置ずれもある。
【0009】
上記のように二つの進行方向14、16が互いにずれると、イオンビーム12の実際の進行方向16を配向膜付基板2の表面に投影した方向16aも、イオンビーム12の設計上の進行方向14を配向膜付基板2の表面に投影した方向14aから角度β(以下これを投影ずれ角度と呼ぶ)だけずれてしまうので、所望の配向処理方向20を実現することができなくなる。
【0010】
ところで、例えば特許文献1には、イオンビームの一部を通過させる開口を有する遮蔽板と、当該遮蔽板の開口を通過したイオンビームのビーム電流を検出する検出器と、当該検出器を遮蔽板の開口の下流部を横切って移動させる検出器駆動装置とを用いてイオンビームの空間分布を測定し、その測定結果に基づいてイオンビームの実際の進行方向を算出し、更に上記偏差角度αに相当する偏差角度を算出する技術が記載されている。
【0011】
従ってこのような技術を用いて、上記イオン源10から引き出されたイオンビーム12の実際の進行方向16や、上記偏差角度αを算出することは一応可能である。
【0012】
【特許文献1】特開2007−278755号公報(段落0019、0020、0072−0074、図11)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
配向膜付基板2の配向処理においては、イオンビーム12の実際の進行方向16よりもむしろ、それを配向膜付基板2の表面に投影した方向16aが重要である。前述したようにこの投影した方向16aによって配向処理方向が決まるからである。
【0014】
しかし、上記特許文献1には、上記投影した方向16aを測定する技術は記載されていない。
【0015】
特許文献1に記載された技術を用いて、イオンビーム12の実際の進行方向16を測定した結果から、更に進んで、上記投影した方向16aを算出することは、種々の計算を用いれば可能かもしれない。
【0016】
しかし、特許文献1に記載の技術では、イオンビームの実際の進行方向を算出するまでに既にかなり複雑な算出工程が必要である。即ち、少なくとも(a)検出器と遮蔽板間の寸法、(b)検出器がx軸上で移動するとして、当該検出器で検出したイオンビームのガウス分布がピークとなる位置の検出器の中心位置をx座標で表したもの、および(c)遮蔽板の開口の中心に検出器の中心が位置するときのx座標を用いて演算を行って、イオンビームの実際の進行方向を算出する必要があるので、かなり複雑な算出工程が必要である。
【0017】
仮に、上述したイオンビームの実際の進行方向算出の後の工程で、更に、実際の進行方向を基板表面に投影した方向を算出するとすれば、更に算出工程が必要になり、算出工程が更に複雑になる。
【0018】
そこでこの発明は、イオン源から引き出されたイオンビームの実際の進行方向を基板表面に投影した方向と実質的に等しい方向を、複雑な算出工程を用いずに測定することができる測定方法を提供することを一つの目的としている。
【0019】
また、イオン源から引き出されたイオンビームの実際の進行方向を基板表面に投影した方向を、簡単な方法で配向膜付基板の所望の配向処理方向に合わせて配向処理を施すことができる配向処理方法を提供することを他の目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0020】
この発明に係るイオンビーム測定方法の一つは、イオン源から引き出されたイオンビームを配向膜付基板の表面に斜方から照射して当該配向膜付基板に配向処理を施す配向処理装置に用いられる測定方法であって、互いに上下に配置されているものであって上孔を有する上板および下孔を有する下板を備えていて、少なくとも下孔がスリット状をしている治具と、当該治具の上孔および下孔の両方を通過したイオンビームを受けてそのビーム電流を測定するビーム電流測定器とを用いて、前記治具および前記ビーム電流測定器を、前記治具の上孔に前記イオン源から引き出されたイオンビームが入射する場所に位置させた状態で、前記治具の少なくとも下板を、当該治具の表面に実質的に直交する軸を中心に回転させて、前記イオン源から引き出されたイオンビームを前記治具の上孔および下孔の両方を通過させて、前記ビーム電流測定器で測定するビーム電流が最大となるときの前記治具の下孔の長さ方向を測定することを特徴としている。
【0021】
この発明に係るイオンビーム測定方法の他のものは、イオン源から引き出されたイオンビームを配向膜付基板の表面に斜方から照射して当該配向膜付基板に配向処理を施す配向処理装置に用いられる測定方法であって、互いに上下に配置されているものであって上孔を有する上板および下孔を有する下板を備えていて、少なくとも上孔がスリット状をしている治具と、当該治具の上孔および下孔の両方を通過したイオンビームを受けてそのビーム電流を測定するビーム電流測定器とを用いて、前記治具および前記ビーム電流測定器を、前記治具の上孔に前記イオン源から引き出されたイオンビームが入射する場所に位置させた状態で、前記治具の少なくとも上板を、当該治具の表面に実質的に直交する軸を中心に回転させて、前記イオン源から引き出されたイオンビームを前記治具の上孔および下孔の両方を通過させて、前記ビーム電流測定器で測定するビーム電流が最大となるときの前記治具の上孔の長さ方向を測定することを特徴としている。
【0022】
治具としては、互いに上下に配置されているものであって上孔を有する上板および下孔を有する下板を備えていて、同一面に投影したときの上孔と下孔の位置が互いにずれている治具を用いても良い。
【0023】
治具を構成する上板および下板を一体で回転させても良い。
【0024】
治具およびビーム電流測定器としては、イオン源から引き出されたイオンビームを遮って陰を作る遮蔽突起を有している治具であってその表面に実質的に直交する軸を中心に回転可能な治具と、当該治具に対して、当該治具が所定の回転角度にあるときに前記陰に入る箇所に取り付けられていて、イオン源から引き出されたイオンビームを受けてそのビーム電流を測定するビーム電流測定器とを用いても良い。
【0025】
治具およびビーム電流測定器としては、直線状に伸びた溝を表面に有している治具であってその表面に実質的に直交する軸を中心に回転可能な治具と、当該治具の溝内に位置するように設けられていて、イオン源から引き出されたイオンビームを受けてそのビーム電流を測定するビーム電流測定器とを用いても良い。
【0026】
この発明に係る配向処理方法の一つは、イオン源から引き出されたイオンビームを配向膜付基板の表面に斜方から照射して当該配向膜付基板に配向処理を施す処理方法であって、互いに上下に配置されているものであって上孔を有する上板および下孔を有する下板を備えていて、少なくとも下孔がスリット状をしている治具と、当該治具の上孔および下孔の両方を通過したイオンビームを受けてそのビーム電流を測定するビーム電流測定器とを用いて、前記治具および前記ビーム電流測定器を、前記治具の上孔に前記イオン源から引き出されたイオンビームが入射する場所に位置させた状態で、前記治具を、その上板および下板を一体で、当該治具の表面に実質的に直交する軸を中心に回転させて、前記イオン源から引き出されたイオンビームを前記治具の上孔および下孔の両方を通過させて、前記ビーム電流測定器で測定するビーム電流が最大となるときの前記治具の方向を決定し、当該決定した方向を保った状態で、前記治具の表面に所定の位置関係で配向膜付基板を載せ、かつ当該配向膜付基板に前記イオン源から引き出されたイオンビームを照射して当該配向膜付基板に配向処理を施すことを特徴としている。
【0027】
この発明に係る配向処理方法においても、治具やビーム電流測定器としては、上記ビーム電流測定方法について述べたのと同様の治具やビーム電流測定器を用いても良い。
【発明の効果】
【0028】
請求項1に記載の発明によれば、治具を回転させてビーム電流測定器で測定するビーム電流が最大となるときの治具の下孔の長さ方向は、イオン源から引き出されたイオンビームの実際の進行方向を基板表面に投影した方向と実質的に等しい方向となる。この投影した方向を、この発明では、治具を回転させてビーム電流測定器で測定するビーム電流が最大となるときの下孔の長さ方向を測定することで測定することができるので、複雑な算出工程を用いずに簡単に測定することができる。
【0029】
しかも、イオン源から引き出されたイオンビームの実際の進行方向を基板表面に投影した方向と実質的に等しい方向を測定することができるので、配向膜付基板の配向処理を正確に行うことに供することが可能になる。請求項2〜7に記載の発明の場合も同様である。
【0030】
請求項2、4に記載の発明によれば、治具を回転させてビーム電流測定器で測定するビーム電流が最大となるときの、上記上孔の中心と下孔の中心とを結ぶ線の方向は、イオン源から引き出されたイオンビームの実際の進行方向を基板表面に投影した方向と実質的に等しい方向となる。この投影した方向を、この発明では、治具を回転させてビーム電流測定器で測定するビーム電流が最大となるときの上記線の方向を測定することで測定することができるので、複雑な算出工程を用いずに簡単に測定することができる。
【0031】
請求項3に記載の発明によれば、治具を回転させてビーム電流測定器で測定するビーム電流が最大となるときの治具の上孔の長さ方向は、イオン源から引き出されたイオンビームの実際の進行方向を基板表面に投影した方向と実質的に等しい方向となる。この投影した方向を、この発明では、治具を回転させてビーム電流測定器で測定するビーム電流が最大となるときの上孔の長さ方向を測定することで測定することができるので、複雑な算出工程を用いずに簡単に測定することができる。
【0032】
請求項5に記載の発明によれば、治具を構成する上板および下板を一体で回転させるので、治具の回転やそのための構成が簡単になる、という更なる効果を奏する。
【0033】
請求項6に記載の発明によれば、治具を回転させてビーム電流測定器で測定するビーム電流が最小となるときの、遮蔽突起の中心とビーム電流測定器の中心とを結ぶ線の方向は、イオン源から引き出されたイオンビームの実際の進行方向を基板表面に投影した方向と実質的に等しい方向となる。この投影した方向を、この発明では、治具を回転させてビーム電流測定器で測定するビーム電流が最小となるときの上記線の方向を測定することで測定することができるので、複雑な算出工程を用いずに簡単に測定することができる。
【0034】
請求項7に記載の発明によれば、治具を回転させてビーム電流測定器で測定するビーム電流が最大となるときの治具の溝の長さ方向は、イオン源から引き出されたイオンビームの実際の進行方向を基板表面に投影した方向と実質的に等しい方向となる。この投影した方向を、この発明では、治具を回転させてビーム電流測定器で測定するビーム電流が最大となるときの溝の長さ方向を測定することで測定することができるので、複雑な算出工程を用いずに簡単に測定することができる。
【0035】
請求項8、9、13に記載の発明によれば、ビーム電流測定器で測定するビーム電流が最大となるときの治具の方向は、イオン源から引き出されたイオンビームの実際の進行方向を基板表面に投影した方向と所定の関係にある。従って、治具の上記方向を決定してその方向を保った状態で、当該治具に所定の位置関係で配向膜付基板を載せることによって、イオン源から引き出されたイオンビームの実際の進行方向を基板表面に投影した方向を、配向膜付基板の所望の配向処理方向に合わせて配向処理を施すことができる。
【0036】
しかも、イオン源から引き出されたイオンビームの実際の進行方向を基板表面に投影した方向を、複雑な算出工程を用いて測定する必要がないので、処理が簡単である。また、治具の上記方向を保った状態で配向膜付基板を載せるので、治具の上記方向が具体的に何度であるかを測定する必要はなく、従ってそのような角度を測定する角度測定手段が不要となると共に、角度測定誤差の影響を排除することができる。治具の角度情報を記憶する手段も不要である。更に、治具が測定手段と基板保持手段とを兼ねているので、配向膜付基板を保持する基板ホルダ等を別途設ける必要がなく、従って構成を簡素化することができる。
【0037】
請求項10、11に記載の発明によれば、ビーム電流測定器で測定するビーム電流が最大となるときの治具の少なくとも上板の方向は、イオン源から引き出されたイオンビームの実際の進行方向を基板表面に投影した方向と所定の関係にある。従って、治具の少なくとも上板の上記方向を決定してその方向を保った状態で、当該治具に所定の位置関係で配向膜付基板を載せることによって、イオン源から引き出されたイオンビームの実際の進行方向を基板表面に投影した方向を、配向膜付基板の所望の配向処理方向に合わせて配向処理を施すことができる。
【0038】
しかも、イオン源から引き出されたイオンビームの実際の進行方向を基板表面に投影した方向を、複雑な算出工程を用いて測定する必要がないので、処理が簡単である。また、治具の上記方向を保った状態で配向膜付基板を載せるので、治具の上記方向が具体的に何度であるかを測定する必要はなく、従ってそのような角度を測定する角度測定手段が不要となると共に、角度測定誤差の影響を排除することができる。治具の角度情報を記憶する手段も不要である。更に、治具が測定手段と基板保持手段とを兼ねているので、配向膜付基板を保持する基板ホルダ等を別途設ける必要がなく、従って構成を簡素化することができる。
【0039】
請求項12に記載の発明によれば、ビーム電流測定器で測定するビーム電流が最小となるときの治具の方向は、イオン源から引き出されたイオンビームの実際の進行方向を基板表面に投影した方向と所定の関係にある。その他の作用効果は、請求項8について上述したのと同様である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
(1)イオンビーム測定方法について
図2は、この発明に係るイオンビーム測定方法の一実施形態を示す概略斜視図である。以下においては、図1に示した構成と同一または相当する部分には同一符号を付して、重複説明を省略する。
【0041】
このイオンビーム測定方法は、例えば図1を参照して上述したような、イオン源10から引き出されたイオンビーム12を配向膜付基板2の表面に斜方から照射して当該配向膜付基板2に配向処理を施す配向処理装置に用いられるものである。
【0042】
なお、図2以降においては、配向膜付基板2、イオン源10から引き出されるイオンビーム12の設計上の進行方向14、それを配向膜付基板2表面に投影した方向14a、イオンビーム12の実際の進行方向16、それを配向膜付基板2表面に投影した方向16a、所望の配向処理方向20等を図示していない場合もあるが、その場合は図1を参照するものとする。
【0043】
このイオンビーム測定方法は、治具30、ビーム電流測定器60等を用いる。
【0044】
治具30は、この実施形態では、図3も参照して、互いに上下に配置されている2枚の板であって、上孔33を有する上板32と、下孔35を有する下板34とを備えている。上孔33は円形をしており、下孔35は下板34の辺(例えば長辺)34bに実質的に平行なスリット状(換言すれば細長い長方形状。以下同様)をしている。但し上孔33は、円形以外、例えば四角形等でも良い。
【0045】
なお、図3では、x軸との関係で治具30の回転角度を例示する必要がないので、x、y、zの座標軸は図示していない。図6〜図8、図10〜図11、図13〜図18においても同様である。
【0046】
治具30は、この例では、その表面が上記配向膜付基板2の表面と実質的に平行になるように配置されている。後述する他の治具30も同様である。より具体的にはこの例では、治具30を構成する上板32および下板34の表面は、配向膜付基板2の表面と実質的に平行に、換言すればxy平面と実質的に平行に配置されている。図6〜図8に示す治具30も同様である。
【0047】
治具30は、それを構成する上板32および下板34の少なくとも一方を、即ち一方または両方を、下に示す(a)〜(f)の態様に応じて、当該治具30の表面に実質的に直交する軸38を中心にして、矢印Fで示すように、可逆転式の回転装置40によって回転させることができる。軸38はz軸に実質的に平行であるということもできる。軸38は、この例では、上孔33の中心および下孔35の中心を通っている。図6、図8に示す治具30の場合も同様である。
【0048】
ビーム電流測定器60は、治具30の上孔33および下孔35の両方を通過したイオンビーム12を受けてそのビーム電流を測定するものである。より具体的には、ビーム電流測定器60は、回転させられる板の孔33または35が後述するように所定の向きにあるときに、両孔33、35を通過したイオンビーム12が入射する位置に設けられている。ビーム電流測定器60は、例えば、ファラデーカップである。
【0049】
治具30を構成する上板32、下板34およびビーム電流測定器60の回転の態様は次のとおりである。回転させる場合は、上記軸38を中心にして上記回転装置40によって回転させる。
【0050】
(a)上板32、下板34およびビーム電流測定器60を一体で回転させる。この場合は上板32、下板34およびビーム電流測定器60を結合部材(図示省略。以下同様)で互いに結合しておけば良い。ビーム電流測定器60は、治具30と一体で回転させるので、次の(b)の場合に比べれば小さなもので済む。図4、図5、図12は、この(a)の態様を採用したときの例である。
【0051】
(b)上板32および下板34を一体で回転させ、ビーム電流測定器60は固定しておく。この場合は、上板32および下板34を結合部材で互いに結合しておけば良い。ビーム電流測定器60は固定部材(図示省略。以下同様)で固定部に固定しておく。このビーム電流測定器60は、イオン源10から引き出されるイオンビーム12の実際の進行方向16が設計上の進行方向14からずれていてもイオンビーム12を受けることができる程度に大きくしておけば良い。
【0052】
(c)上板32を固定しておき、下板34をビーム電流測定器60と一体にして回転させる。この場合は、上板32は固定部材で固定部に固定しておく。ビーム電流測定器60は下板34に結合しておく。
【0053】
(d)上板32およびビーム電流測定器60を固定しておき、下板34を回転させる。この場合は、上板32およびビーム電流測定器60は固定部材で固定部に固定しておく。ビーム電流測定器60をある程度大きくしておくことは上記(b)の場合と同様である。
【0054】
(e)下板34およびビーム電流測定器60を固定しておき、上板32を回転させる。この場合は、下板34およびビーム電流測定器60は固定部材で固定部に固定しておく。上記回転装置40によって上板32を回転させるためには、例えば、下板34に回転装置40の回転軸が通る貫通穴を設けておいても良いし、それができない場合は、下板34を避けて回転装置40の回転軸と上板32とを結合する結合部材を用いる等しても良い。いずれにしても、公知の手段で実現することができる。ビーム電流測定器60をある程度大きくしておくことは上記(b)の場合と同様である。
【0055】
(f)下板34を固定しておき、上板32をビーム電流測定器60と一体にして回転させる。これらを回転装置40によって回転させる方法の例は、上記(e)に示したとおりである。この場合は、下板34は固定部材で固定部に固定しておく。ビーム電流測定器60は上板32に結合しておく。
【0056】
上記(a)〜(d)の態様は、少なくとも下板34を回転させるという範疇に属する。上記(a)、(b)、(e)、(f)の態様は、少なくとも上板32を回転させるという範疇に属する。
【0057】
まず、少なくとも下板34を回転させる場合のイオンビーム測定方法の実施形態を説明する。
【0058】
測定に際しては、例えば図2に示す例のように、治具30およびビーム電流測定器60等を、治具30の上孔33にイオン源10から引き出されたイオンビーム12が入射する場所に位置させた状態で、治具30の少なくとも下板34を、上記(a)〜(d)に示した態様のいずれかで回転させて、イオン源10から引き出されたイオンビーム12を上孔33および下孔35の両方を通過させて、ビーム電流測定器60で測定するビーム電流が最大となるときの治具30の下孔35の長さ方向51を測定する。長さ方向51は、換言すれば、下孔35の長軸方向、あるいは下孔35の長辺に実質的に平行な方向である。
【0059】
例えば、図4に示す例のように、イオン源10から引き出されるイオンビーム12の実際の進行方向16が設計上の進行方向14と一致している場合は、治具30のx軸からの回転角度γが実質的に0度の状態で、イオンビーム12の実際の進行方向16をxy平面に(即ち治具30の表面や配向膜付基板2の表面に)投影した方向16aが、下孔35の長さ方向51と一致するので、両孔33、35をイオンビーム12が最も多く通過して、ビーム電流測定器60で測定するビーム電流が最大となる。下孔35の長さ方向51が投影方向16aからずれると、ビーム電流測定器60で測定するビーム電流は減少する。
【0060】
なお、図4および図5は平面図であり、イオンビーム12の設計上の進行方向14とそれを投影した方向14aとは重なって見えるので、投影した方向14aを括弧書きで示している。実際の進行方向16とそれを投影した方向16aとについても同様である。図9においても同様である。
【0061】
一方、例えば図5に示す例のように、イオン源10から引き出されるイオンビーム12の実際の進行方向16が設計上の進行方向14からずれていても、治具30を回転させて、イオンビーム12の上記投影した方向16aが下孔35の長さ方向51と一致した状態になると、両孔33、35をイオンビーム12が最も多く通過するので、ビーム電流測定器60で測定するビーム電流が最大となる。下孔35の長さ方向51が投影方向16aからずれると、ビーム電流測定器60で測定する上記電流は減少する。ビーム電流が最大になるときの治具30のx軸からの回転角度γは、この実施形態では、前述した投影ずれ角度βと実質的に等しくなる。
【0062】
このように、このイオンビーム測定方法によれば、治具30を回転させてビーム電流測定器60で測定するビーム電流が最大となるときの治具30の下孔35の長さ方向51は、イオン源10から引き出されたイオンビーム12の実際の進行方向16を基板表面に投影した方向16aと実質的に等しい方向となる。この投影した方向16aを、このイオンビーム測定方法では、治具30を回転させてビーム電流測定器60で測定するビーム電流が最大となるときの下孔35の長さ方向51を測定することで測定することができるので、複雑な算出工程を用いずに簡単に測定することができる。
【0063】
なお、下孔35の長さ方向51と治具30回転角度γとの間には一定の関係があり、この関係は予め分かっているので(例えばこの例の場合は、下孔35の長さ方向51のx軸からの角度は回転角度γに等しい)、下孔35の長さ方向51は、具体的には治具30の回転角度γで簡単に測定することができる。治具30の回転角度γは、例えば、回転装置40に設けている回転角度検出器(例えばエンコーダ)で簡単に測定することができる。後述する他の例においても同様である。
【0064】
しかも、このイオンビーム測定方法によれば、イオン源10から引き出されたイオンビーム12の実際の進行方向16を基板表面に投影した方向16aと実質的に等しい方向を実際に測定することができるので、配向膜付基板2の配向処理を正確に行うことに供することが可能になる。後述する他の例の治具30やビーム電流測定器60を用いる場合も同様である。
【0065】
治具30を構成する上板32の上孔33を小さくし、かつ下板34の下孔35の幅を小さくすると、ビーム電流測定器60で測定するビーム電流は全体的に小さくなるけれども、ビーム電流変化の尖鋭度はより大きくなるので、尖鋭度の観点から言えば、ビーム電流の最大点を検出しやすくなる。同様のことは、図6〜図8に示す例の治具30においても言える。
【0066】
治具30を構成する上板32の上孔33は、図6に示す例のように、下板34の下孔35と同様にスリット状をしていても良い。より具体的には、この例では、上孔33は上板32の辺(例えば長辺)32bに実質的に平行なスリット状をしている。但し、両孔33、35の幅や長さは、この例では上下で互いに実質的に同じにしているが、必ずしもそのようにしなくても良い。
【0067】
この例の場合も、図3の例の場合と同様の作用によって、少なくとも下板34を上記軸38を中心に回転させることによって、イオン源10から引き出されたイオンビーム12を上孔33および下孔35の両方を通過させて、ビーム電流測定器60で測定するビーム電流が最大となるときの下孔35の長さ方向51を測定することができる。またこの例の場合は、図3の例に比べて、両孔33、35を通過してビーム電流測定器60に入射するイオンビーム12の量を多くして、ビーム電流測定器60で測定するビーム電流を大きくすることができる。
【0068】
治具30を構成する上板32の上孔33および下板34の下孔35の両者を、スリット状以外の形状にしても良い。例えば図7に示す例のように円形の孔にしても良い。四角形等の孔でも良い。両孔33、35の形状や寸法は、この例では上下で互いに実質的に同じにしているが、必ずしもそのようにしなくても良い。但しこの例の場合は、同一面(この例ではxy平面。以下同様)に投影したときの両孔33、35の位置は互いにずらしておく。かつ、下板34の回転中心となる軸38は、少なくとも下孔35からずらしておく。もっとも軸38は、この例では、後述する線52上にある。
【0069】
この例の場合も、図3の例の場合と同様の作用によって、少なくとも下板34を上記軸38を中心に回転させることによって、イオン源10から引き出されたイオンビーム12を上孔33および下孔35の両方を通過させて、ビーム電流測定器60で測定するビーム電流が最大となるようにすることができる。同一面に投影したときの上孔33の中心と下孔35の中心とを結ぶ線52を考えると、この線52が図3の例の長さ方向51に相当している。従ってこの例では、ビーム電流測定器60で測定するビーム電流が最大となるときの線52の方向を測定する。
【0070】
上記線52の方向は、図3の例の場合と同様の作用によって、イオン源10から引き出されたイオンビーム12の実際の進行方向16を基板表面に投影した方向16aと実質的に等しい方向となる。この投影した方向を、このイオンビーム測定方法では、治具30を回転させてビーム電流測定器60で測定するビーム電流が最大となるときの上記線52の方向を測定することで測定することができるので、複雑な算出工程を用いずに簡単に測定することができる。
【0071】
なお、治具30の線52と治具30の回転角度γ(図4、図5参照)との間には一定の関係があり、この関係は予め分かっているので(例えばこの例の場合は、線52のx軸からの角度は回転角度γに等しい)、治具30の線52は、具体的には治具30の回転角度γで簡単に測定することができる。
【0072】
次に、少なくとも上板32を回転させる場合のイオンビーム測定方法の実施形態を、上述した少なくとも下板34を回転させる場合との相違点を主体に説明する。
【0073】
この場合に用いる治具30の一例を図8に示す。この治具30においては、上板32の上孔33は、図6において説明したのと同様のスリット状をしている。下板34の下孔35は、この例では円形をしているが、それ以外の四角形等の形状でも良い。図6等において説明したのと同様のスリット状にしても良い。
【0074】
測定に際しては、図2に示した例の場合と同様に、治具30およびビーム電流測定器60等を、治具30の上孔33にイオン源10から引き出されたイオンビーム12が入射する場所に位置させた状態で、治具30の少なくとも上板32を、上記(a)、(b)、(e)、(f)に示した態様のいずれかで回転させて、イオン源10から引き出されたイオンビーム12を上孔33および下孔35の両方を通過させて、ビーム電流測定器60で測定するビーム電流が最大となるときの治具30の上孔33の長さ方向50を測定する。長さ方向50は、換言すれば、上孔33の長軸方向、あるいは上孔33の長辺に実質的に平行な方向である。
【0075】
図9は、上記(e)に示した態様で、上板32だけを回転させた場合の例である。この例のように、イオン源10から引き出されるイオンビーム12の実際の進行方向16が設計上の進行方向14からずれていても、上板32を回転させて、イオンビーム12の上記投影した方向16aが上孔33の長さ方向50と一致した状態になると、両孔33、35をイオンビーム12が最も多く通過するので、ビーム電流測定器60で測定するビーム電流が最大となる。上孔33の長さ方向50が投影方向16aからずれると、ビーム電流測定器60で測定する上記電流は減少する。ビーム電流が最大になるときの上板32のx軸からの回転角度γは、この実施形態では、前述した投影ずれ角度βと実質的に等しくなる。
【0076】
上板32、下板34およびビーム電流測定器60の回転の態様は、上記(a)、(b)または(f)に示す態様でも良い。
【0077】
このイオンビーム測定方法によれば、治具30を回転させてビーム電流測定器60で測定するビーム電流が最大となるときの治具30の上孔33の長さ方向50は、イオン源10から引き出されたイオンビーム12の実際の進行方向16を基板表面に投影した方向16aと実質的に等しい方向となる。この投影した方向16aを、このイオンビーム測定方法では、治具30を回転させてビーム電流測定器60で測定するビーム電流が最大となるときの上孔33の長さ方向50を測定することで測定することができるので、複雑な算出工程を用いずに簡単に測定することができる。
【0078】
なお、上孔33の長さ方向50と治具30回転角度γとの間には一定の関係があり、この関係は予め分かっているので(例えばこの例の場合は、上孔33の長さ方向50のx軸からの角度は回転角度γに等しい)、上孔33の長さ方向50は、前述したように、具体的には治具30の回転角度γで簡単に測定することができる。治具30の回転角度γは、例えば、回転装置40に設けている回転角度検出器(例えばエンコーダ)で簡単に測定することができる。
【0079】
少なくとも上板32を回転させる場合も、上板32の上孔33を、あるいは当該上孔33および下板34の下孔35の両者を、スリット状以外の形状にしても良い。例えば図7に示した例のように、上孔33および下孔35を円形の孔にしても良い。四角形等の孔でも良い。この場合は、同一面(この例ではxy平面。以下同様)に投影したときの両孔33、35の位置は互いにずらしておく。かつ、上板32の回転中心となる軸38は、少なくとも上孔33からずらしておく。軸38は、この例では、前述した線52(即ち、同一面に投影したときの上孔33の中心と下孔35の中心とを結ぶ線52)上にある。
【0080】
この例の場合も、少なくとも下板34を回転させるときの図7の例の場合と同様の作用によって、少なくとも上板32を上記軸38を中心に回転させることによって、イオン源10から引き出されたイオンビーム12を上孔33および下孔35の両方を通過させて、ビーム電流測定器60で測定するビーム電流が最大となるようにすることができる。このときの線52の方向を測定する。
【0081】
上記線52の方向は、少なくとも下板34を回転させるときの図7の例の場合と同様の作用によって、イオン源10から引き出されたイオンビーム12の実際の進行方向16を基板表面に投影した方向16aと実質的に等しい方向となる。この投影した方向16aを、このイオンビーム測定方法では、治具30を回転させてビーム電流測定器60で測定するビーム電流が最大となるときの上記線52の方向を測定することで測定することができるので、複雑な算出工程を用いずに簡単に測定することができる。
【0082】
治具30の線52と治具30の回転角度γとの関係は前述したとおりである。
【0083】
図3、図6〜図8に示したような上孔33を上板32の面内に一次元または二次元で複数個設け、かつそれに対応するように、図3、図6〜図8に示したような下孔35を下板34の面内に一次元または二次元で複数個設けても良い。ビーム電流測定器60も、孔33、35の組に対応させて複数個設ける。このようにすれば、イオン源10から引き出されたイオンビーム12の実際の進行方向16を基板表面に投影した方向16aを、治具30の面内ひいては配向膜付基板2の面内の一次元または二次元の複数箇所において測定することができる。
【0084】
次に、治具30およびビーム電流測定器60の更に他の例を、図3に示した治具30およびビーム電流測定器60との相違点を主体に説明する。
【0085】
図10に示す例の治具30は、イオン源10から引き出されたイオンビーム12を遮って陰44を作る遮蔽突起42を端部に有している。この治具30の表面の向き、治具30を回転させる軸38、回転装置40等は、図3の例で説明したものと同様である。もっとも軸38は、この例では、後述する線54上にある。より具体的には、この例では、ビーム電流測定器60の中心を通っている。
【0086】
ビーム電流測定器60は、治具30に対して、治具30が所定の回転角度にあるときに陰44に入る箇所に取り付けられている。
【0087】
測定に際しては、図10に示す例のように、治具30およびビーム電流測定器60を、イオン源10から引き出されたイオンビーム12が遮蔽突起42に当たって上記陰44を作る場所に位置させた状態で、治具30を、ビーム電流測定器60と共に上記軸38を中心に回転させて、ビーム電流測定器60で測定するビーム電流が最小となるときの、遮蔽突起42の中心とビーム電流測定器60の中心とを結ぶ線54の方向を測定する。
【0088】
イオン源10から引き出されたイオンビーム12の実際の進行方向16を基板表面に投影した方向16aが上記線54と一致していると、ビーム電流測定器60は最も多く陰44内に位置して当該ビーム電流測定器60に入射するイオンビーム12の量が最小となるので、ビーム電流測定器60で測定するビーム電流は最小となる。線54が投影方向16aからずれると、ビーム電流測定器60に入射するイオンビーム12の量が増えて当該ビーム電流測定器60で測定するビーム電流は増大する。
【0089】
従って、図10に示す治具30およびビーム電流測定器60を用いたイオンビーム測定方法によれば、治具30を回転させてビーム電流測定器60で測定するビーム電流が最小となるときの上記線54の方向は、イオン源10から引き出されたイオンビーム12の実際の進行方向16を基板表面に投影した方向16aと実質的に等しい方向となる。この投影した方向を、このイオンビーム測定方法では、治具30を回転させてビーム電流測定器60で測定するビーム電流が最小となるときの上記線54の方向を測定することで測定することができるので、複雑な算出工程を用いずに簡単に測定することができる。
【0090】
なお、治具30の線54と治具30の回転角度γ(図4、図5参照)との間には一定の関係があり、この関係は予め分かっているので(例えばこの例の場合は、線54のx軸からの角度は回転角度γに等しい)、治具30の線54は、具体的には治具30の回転角度γで簡単に測定することができる。
【0091】
また、上記遮蔽突起42の幅(イオンビーム12の進行方向に交差する方向の寸法)を小さくすると共に、ビーム電流測定器60の寸法を遮蔽突起42の幅とほぼ等しくすると、ビーム電流測定器60で測定するビーム電流は全体的に小さくなるけれども、ビーム電流測定器60で測定するビーム電流の変化の尖鋭度はより大きくなるので、尖鋭度の観点から言えば、ビーム電流の最小点を検出しやすくなる。
【0092】
図11に示す例の治具30は、直線状に伸びた溝46を表面に有している。この治具30の表面の向き、治具30を回転させる軸38、回転装置40等は、図3の例で説明したものと同様である。もっとも軸38は、この例では、溝46の幅方向の中心を通っている。
【0093】
ビーム電流測定器60は、治具30の溝46内に位置するように設けられている。
【0094】
測定に際しては、図11に示す例のように、治具30およびビーム電流測定器60を、イオン源10から引き出されたイオンビーム12が溝46の空間部を通してビーム電流測定器60に入射する場所に位置させた状態で、治具30を、ビーム電流測定器60と共に上記軸38を中心に回転させて、ビーム電流測定器60で測定するビーム電流が最大となるときの上記溝46の長さ方向56を測定する。
【0095】
イオン源10から引き出されたイオンビーム12の実際の進行方向16を基板表面に投影した方向16aが溝46の長さ方向56と一致していると、イオンビーム12は溝46の側壁部48で遮られる量が最も少なくなってビーム電流測定器60に入射するイオンビーム12の量が最大となるので、ビーム電流測定器60で測定するビーム電流は最大となる。溝46の長さ方向56が投影方向16aからずれると、イオンビーム12は溝46の側壁部48で遮られてビーム電流測定器60に入射しにくくなるので、ビーム電流測定器60で測定するビーム電流は減少する。
【0096】
従って、図11に示す治具30およびビーム電流測定器60を用いたイオンビーム測定方法によれば、治具30を回転させてビーム電流測定器60で測定するビーム電流が最大となるときの上記溝46の長さ方向56は、イオン源10から引き出されたイオンビーム12の実際の進行方向16を基板表面に投影した方向16aと実質的に等しい方向となる。この投影した方向を、このイオンビーム測定方法では、治具30を回転させてビーム電流測定器60で測定するビーム電流が最大となるときの溝46の長さ方向56を測定することで測定することができるので、複雑な算出工程を用いずに簡単に測定することができる。
【0097】
なお、溝46の長さ方向56と治具30の回転角度γとの間には一定の関係があり、この関係は予め分かっているので(例えばこの例の場合は、溝46の長さ方向56のx軸からの角度は回転角度γに等しい)、溝46の長さ方向56は、具体的には治具30の回転角度γで簡単に測定することができる。
【0098】
また、上記溝46の幅(イオンビーム12の進行方向に交差する方向の寸法)を小さくすると共に、ビーム電流測定器60の寸法を溝46の幅とほぼ等しくすると、ビーム電流測定器60で測定するビーム電流は全体的に小さくなるけれども、ビーム電流測定器60で測定するビーム電流の変化の尖鋭度はより大きくなるので、尖鋭度の観点から言えば、ビーム電流の最大点を検出しやすくなる。溝46をより深くすることも、上記尖鋭度をより大きくすることにつながる。
【0099】
(2)配向処理方法について
次に、配向膜付基板2の表面にイオンビーム12を照射して配向処理を施す配向処理方法の例を説明する。これには、大別すると、次の二つの配向処理方法がある。
【0100】
(A)上記治具30とは別の、配向膜付基板2を保持する基板ホルダを用いて、当該基板ホルダに配向膜付基板2を載せて配向処理を施す配向処理方法。
【0101】
(B)上記治具30に配向膜付基板2を載せて配向処理を施す配向処理方法。
【0102】
上記(A)の配向処理方法を簡単に説明すると、この場合は、上記各実施形態のイオンビーム測定方法で測定した、治具30の下孔35の長さ方向(図2〜図6参照)、線52の方向(図7参照)、線54の方向(図10参照)および溝46の長さ方向56(図11参照)をそれぞれ表す情報、具体的には治具30の回転角度γを表す情報に基づいて、基板ホルダを搬送および回転させる機能を有するホルダ駆動装置(図示省略)を制御して、基板ホルダを回転させて基板ホルダの方向を治具30の方向と所定の関係になるように定める。典型的には、基板ホルダの方向を、治具30の方向と実質的に同一方向に定める。
【0103】
これによって、イオン源10から引き出されたイオンビーム12の実際の進行方向16を基板表面に投影した方向16aを、基板ホルダ上の配向膜付基板2の所望の配向処理方向20に合わせて配向処理を施すことができる。
【0104】
但し、上記(A)の配向処理方法では、治具30とは別に、基板ホルダおよびホルダ駆動装置が必要になると共に、上記回転角度γを測定する手段および当該回転角度γを表す情報を記憶する手段等が必要になる。この観点からは、以下に述べるように、上記(B)の配向処理方法の方が有利である。
【0105】
次に、上記(B)の配向処理方法に属する配向処理方法の実施形態の幾つかを詳述する。
【0106】
配向処理方法の第1の実施形態では、図2〜図6を参照して説明した治具30およびビーム電流測定器60を用いて、治具30およびビーム電流測定器60を、治具30の上孔33に上記イオン源10から引き出されたイオンビーム12が入射する場所に位置させた状態で、治具30を、その上板32および下板34を一体で、当該治具30の表面に実質的に直交する上記軸38を中心に回転させて、イオン源10から引き出されたイオンビーム12を治具30の上孔33および下孔35の両方を通過させて、ビーム電流測定器60で測定するビーム電流が最大となるときの治具30の方向を決定し、当該決定した方向を保った状態で、治具30の表面に所定の位置関係で配向膜付基板2を載せ、かつ当該配向膜付基板2にイオン源10から引き出されたイオンビーム12を照射して当該配向膜付基板2に配向処理を施す。
【0107】
この配向処理方法のより具体例を図12を参照して説明する。この例は前述した図5に対応している。即ち、治具30が図5の状態で、ビーム電流測定器60で測定するビーム電流が最大となるので、そのときの治具30の方向を決定し、当該決定した方向を保った状態で、治具30の表面に所定の位置関係で配向膜付基板2を載せ、かつ当該配向膜付基板2にイオン源10から引き出されたイオンビーム12を照射して配向処理を施す。この配向処理の際には、必要に応じて、図1の所でも説明したように、配向膜付基板2を、より具体的には治具30および配向膜付基板2を、矢印Dで示す方向(またはその逆の矢印D′方向)に搬送しながらイオンビーム12を照射しても良い。
【0108】
この配向処理方法の場合は、治具30の上記決定した方向を保った状態で配向膜付基板2を載せるので、前述したイオンビーム測定方法と違って、治具30の方向が、例えば上記回転角度γが、具体的に何度であるかを測定する必要はない。後述する他の実施形態においても同様である。
【0109】
上記治具30に配向膜付基板2を載せる動作は、真空中(例えばイオンビーム12の上記測定や配向膜付基板2に配向処理を行う真空容器内)で行っても良いし、大気中で行っても良い。その際に、必要に応じて、治具30を、治具搬送装置(図示省略)によって、例えば図12中に矢印D、D′で示すように搬送して、上記測定や配向処理を行う場所と、治具30に配向膜付基板2を載せる場所との間で搬送しても良い。例えば、治具30を回転させずに上記x軸に実質的に平行なガイド64に沿って治具30を搬送すると、治具30の上記決定した方向を保った状態で治具30を容易に搬送することができる。後述する他の実施形態においても同様である。
【0110】
治具30に配向膜付基板2を載せる動作は、真空中で行う場合は、ロボット等の機械装置によって行えば良い。大気中で行う場合は、人によって行っても良いし、ロボット等の機械装置によって行っても良い。後述する他の実施形態においても同様である。
【0111】
上記治具30の表面に所定の位置関係で配向膜付基板2を載せる態様の例を説明する。
【0112】
治具30の方向と、上記長さ方向50、51、線52の方向、線54の方向または長さ方向56とは、所定の(即ち予め定まった一定の。以下同様)関係にある。また、治具30の方向は、例えば、治具30の所定の辺(例えば辺30b)の方向で表すことができる。一方、配向膜付基板2と、それに対する所望の配向処理方向20とも、所定の関係にある。例えば、配向膜付基板2の所定の辺(例えば辺2b)と配向処理方向20とは実質的に平行な関係にある。従って、例えば、治具30の上記決定した方向を保った状態で、治具30に配向膜付基板2を、両辺30b、2bが互いに実質的に平行になるように載せれば良い。
【0113】
要は、治具30の上記長さ方向50、51、線52の方向、線54の方向または長さ方向56と、配向膜付基板2の所望の配向処理方向20とが実質的に平行になる位置関係で、治具30上に配向膜付基板2を載せれば良い。
【0114】
治具30上に配向膜付基板2を上記位置関係で載せるより具体的な方法の例を幾つか説明する。
【0115】
図13に示す例のように、治具30の表面に位置決め用のマーク66を設けておいて、それに配向膜付基板2の一つの辺(例えば辺2a)を合わせても良い。このマーク66の代わりに、またはそれと共に、配向膜付基板2の他方の辺(例えば辺2b)の位置決め用のマークを設けておいてそれに合わせても良い。
【0116】
図14に示す例のように、治具30の一つの辺(例えば辺30a)と、配向膜付基板2の一つの辺(例えば辺2a)とを合わせても良い。
【0117】
図15の示す例のように、治具30の他の一辺(例えば辺30b)と配向膜付基板2の他の一辺(例えば辺2b)とを合わせても良い。
【0118】
図16に示す例のように、治具30の隣り合う2辺(例えば辺30aおよび30b)と、配向膜付基板2の隣り合う2辺(例えば辺2aおよび2b)とを合わせても良い。
【0119】
但し、治具30の平面形状は、上記各例の四角形に限定されるものではなく、図17、図18に示す例のような円形や、それ以外の形状でも良い。
【0120】
その場合、図17に示す例のように、治具30の表面に位置決め用のマーク66を設けておいて、それに配向膜付基板2の一つの辺(例えば辺2a)を合わせても良い。このマーク66の代わりに、またはそれと共に、配向膜付基板2の他の一辺(例えば辺2b)の位置決め用のマークを設けておいてそれに合わせても良い。
【0121】
図18に示す例のように、治具30に位置決め用の切欠き68を設けておいて、その一つの辺68aと配向膜付基板2の一つの辺(例えば辺2a)とが実質的に直角に交わるように、配向膜付基板2を治具30上に載せても良い。上記辺68aと、配向膜付基板2の一つの辺(例えば辺2a)とが実質的に平行になるように配向膜付基板2を載せても良い。
【0122】
その他、図12〜図18に示した方法から類推される方法で、治具30上に配向膜付基板2を載せても良い。また、配向膜付基板2が落ちない程度であれば、配向膜付基板2が治具30からはみ出しても構わない。
【0123】
以上のことは、後述する他の実施形態についても適用することができる。
【0124】
この実施形態の配向処理方法によれば、前述したように、ビーム電流測定器60で測定するビーム電流が最大となるときの治具30の方向は、イオン源10から引き出されたイオンビーム12の実際の進行方向16を基板表面に投影した方向16aと所定の関係にある。従って、治具30の上記方向を決定してその方向を保った状態で、当該治具30に所定の位置関係で配向膜付基板2を載せることによって、イオン源10から引き出されたイオンビーム12の実際の進行方向16を基板表面に投影した方向16aを、配向膜付基板2の所望の配向処理方向20に合わせて配向処理を施すことができる。
【0125】
しかも、イオン源10から引き出されたイオンビーム12の実際の進行方向16を基板表面に投影した方向16aを、複雑な算出工程を用いて測定する必要がないので、処理が簡単である。また、治具30の上記方向を保った状態で配向膜付基板2を載せるので、治具30の上記方向が具体的に何度であるかを測定する必要はなく、従ってそのような角度を測定する角度測定手段が不要となると共に、角度測定誤差の影響を排除することができる。例えば、前述した回転装置40に回転角度検出器を設けておく必要はなく、従ってそれによる角度検出誤差の問題は生じない。治具30の角度情報を記憶する手段も不要である。更に、治具30が測定手段と基板保持手段とを兼ねているので、配向膜付基板2を保持する基板ホルダ等を別途設ける必要がなく、従って構成を簡素化することができる。
【0126】
次に、配向処理方法の他の実施形態を、上記第1の実施形態との相違点を主体に説明する。
【0127】
配向処理方法の第2の実施形態では、図7を参照して説明した治具30およびビーム電流測定器60を用いて、治具30およびビーム電流測定器60を、治具30の上孔33に上記イオン源10から引き出されたイオンビーム12が入射する場所に位置させた状態で、治具30を、その上板32および下板34を一体で、当該治具30の表面に実質的に直交しておりかつ下孔35からずれた位置の上記軸38を中心に回転させて、イオン源10から引き出されたイオンビーム12を治具30の上孔33および下孔35の両方を通過させて、ビーム電流測定器60で測定するビーム電流が最大となるときの治具30の方向を決定し、当該決定した方向を保った状態で、治具30の表面に所定の位置関係で配向膜付基板2を載せ、かつ当該配向膜付基板2にイオン源10から引き出されたイオンビーム12を照射して当該配向膜付基板2に配向処理を施す。
【0128】
治具30の表面に所定の位置関係で配向膜付基板2を載せる方法の詳細例は前述したとおりである。
【0129】
配向処理方法の第3の実施形態では、図10を参照して説明した治具30およびビーム電流測定器60を用いて、治具30およびビーム電流測定器60を、上記イオン源10から引き出されたイオンビーム12が遮蔽突起42に当たって上記陰44を作る場所に位置させた状態で、治具30を、ビーム電流測定器60と共に、治具30の表面に実質的に直交する上記軸38を中心に回転させて、ビーム電流測定器60で測定するビーム電流が最小となるときの治具30の方向を決定し、当該決定した方向を保った状態で、治具30の表面に所定の位置関係で配向膜付基板2を載せ、かつ当該配向膜付基板2にイオン源10から引き出されたイオンビーム12を照射して当該配向膜付基板2に配向処理を施す。
【0130】
この場合、遮蔽突起42は治具30の端部に設けているので、遮蔽突起42を避けて配向膜付基板2を載せれば良く、従って遮蔽突起42が障害にならずに治具30上に配向膜付基板2を載せることができる。遮蔽突起42を、治具30上での配向膜付基板2の位置決めに利用しても良い。
【0131】
治具30の表面に所定の位置関係で配向膜付基板2を載せる方法の詳細例は前述したとおりである。
【0132】
配向処理方法の第4の実施形態では、図11を参照して説明した治具30およびビーム電流測定器60を用いて、治具30およびビーム電流測定器60を、上記イオン源10から引き出されたイオンビーム12が上記溝46の空間部を通してビーム電流測定器60に入射する場所に位置させた状態で、治具30を、ビーム電流測定器60と共に、治具30の表面に実質的に直交する上記軸38を中心に回転させて、ビーム電流測定器60で測定するビーム電流が最大となるときの治具30の方向を決定し、当該決定した方向を保った状態で、治具30の表面に所定の位置関係で配向膜付基板2を載せ、かつ当該配向膜付基板2にイオン源10から引き出されたイオンビーム12を照射して当該配向膜付基板2に配向処理を施す。
【0133】
この場合、溝46は治具30の表面以下に形成されていて、溝46以外の部分で配向膜付基板2を支持することができるので、溝46が障害にならずに治具30上に配向膜付基板2を載せることができる。
【0134】
治具30の表面に所定の位置関係で配向膜付基板2を載せる方法の詳細例は前述したとおりである。
【0135】
この第2〜第4の実施形態の配向処理方法によれば、前述したように、ビーム電流測定器60で測定するビーム電流が最大(第3の実施形態の場合は最小)となるときの治具30の方向は、イオン源10から引き出されたイオンビーム12の実際の進行方向16を基板表面に投影した方向16aと所定の関係にある。従って、治具30の上記方向を決定してその方向を保った状態で、当該治具30に所定の位置関係で配向膜付基板2を載せることによって、イオン源10から引き出されたイオンビーム12の実際の進行方向16を基板表面に投影した方向16aを、配向膜付基板2の所望の配向処理方向20に合わせて配向処理を施すことができる。
【0136】
しかも、イオン源10から引き出されたイオンビーム12の実際の進行方向16を基板表面に投影した方向16aを、複雑な算出工程を用いて測定する必要がないので、処理が簡単である。また、治具30の上記方向を保った状態で配向膜付基板2を載せるので、治具30の上記方向が具体的に何度であるかを測定する必要はなく、従ってそのような角度を測定する角度測定手段が不要となると共に、角度測定誤差の影響を排除することができる。例えば、前述した回転装置40に回転角度検出器を設けておく必要はなく、従ってそれによる角度検出誤差の問題は生じない。治具30の角度情報を記憶する手段も不要である。更に、治具30が測定手段と基板保持手段とを兼ねているので、配向膜付基板2を保持する基板ホルダ等を別途設ける必要がなく、従って構成を簡素化することができる。
【0137】
配向処理方法の第5の実施形態では、図8を参照して説明した治具30およびビーム電流測定器60を用いて、治具30およびビーム電流測定器60を、治具30の上孔33に上記イオン源10から引き出されたイオンビーム12が入射する場所に位置させた状態で、治具30の少なくとも上板32を、当該治具30の表面に実質的に直交する軸38を中心に回転させて、イオン源10から引き出されたイオンビーム12を治具30の上孔33および下孔35の両方を通過させて、ビーム電流測定器60で測定するビーム電流が最大となるときの治具30の少なくとも上板32の方向を決定し、当該決定した方向を保った状態で、治具30の表面に所定の位置関係で配向膜付基板2を載せ、かつ当該配向膜付基板2にイオン源10から引き出されたイオンビーム12を照射して当該配向膜付基板2に配向処理を施す。
【0138】
この場合、治具30の下板34は、上板32と一体で回転させても良いし、回転させなくても(即ち固定でも)良い。図9は、前述したように、下板34を回転させない場合の例を示す。
【0139】
治具30の表面に所定の位置関係で配向膜付基板2を載せる方法の詳細例は前述したとおりである。
【0140】
配向処理方法の第6の実施形態では、図7を参照して説明した治具30およびビーム電流測定器60を用いて、治具30およびビーム電流測定器60を、治具30の上孔33に上記イオン源10から引き出されたイオンビーム12が入射する場所に位置させた状態で、治具30の少なくとも上板32を、当該治具30の表面に実質的に直交しておりかつ上孔33からずれた位置の軸38を中心に回転させて、イオン源10から引き出されたイオンビーム12を治具30の上孔33および下孔35の両方を通過させて、ビーム電流測定器60で測定するビーム電流が最大となるときの治具30の少なくとも上板32の方向を決定し、当該決定した方向を保った状態で、治具30の表面に所定の位置関係で配向膜付基板2を載せ、かつ当該配向膜付基板2にイオン源10から引き出されたイオンビーム12を照射して当該配向膜付基板2に配向処理を施す。
【0141】
この場合も、治具30の下板34は、上板32と一体で回転させても良いし、回転させなくても(即ち固定でも)良い。
【0142】
治具30の表面に所定の位置関係で配向膜付基板2を載せる方法の詳細例は前述したとおりである。
【0143】
この第6、第7の実施形態の配向処理方法によれば、前述したように、ビーム電流測定器60で測定するビーム電流が最大となるときの治具30の少なくとも上板32の方向は、イオン源10から引き出されたイオンビーム12の実際の進行方向16を基板表面に投影した方向16aと所定の関係にある。従って、治具30の少なくとも上板32の上記方向を決定してその方向を保った状態で、当該治具30に所定の位置関係で配向膜付基板2を載せることによって、イオン源10から引き出されたイオンビーム12の実際の進行方向16を基板表面に投影した方向16aを、配向膜付基板2の所望の配向処理方向20に合わせて配向処理を施すことができる。
【0144】
しかも、イオン源10から引き出されたイオンビーム12の実際の進行方向16を基板表面に投影した方向16aを、複雑な算出工程を用いて測定する必要がないので、処理が簡単である。また、治具30の上記方向を保った状態で配向膜付基板2を載せるので、治具30の上記方向が具体的に何度であるかを測定する必要はなく、従ってそのような角度を測定する角度測定手段が不要となると共に、角度測定誤差の影響を排除することができる。治具30の角度情報を記憶する手段も不要である。更に、治具30が測定手段と基板保持手段とを兼ねているので、配向膜付基板2を保持する基板ホルダ等を別途設ける必要がなく、従って構成を簡素化することができる。
【0145】
もっとも、上記第1〜第6の配向処理方法の実施形態と違って、上記治具30の回転角度γを前述したような角度測定手段によって測定しかつその情報を記憶手段に記憶しておいて、治具30を上記測定場所と基板載置場所との間で搬送したり、治具30上に配向膜付基板2を載せる際は、治具30を回転させてその回転角度γを一旦0度に戻しておき、その後、配向膜付基板2にイオンビーム12を照射して配向処理を施す前に、治具30を回転させて上記回転角度γに設定するようにしても良い。そのようにすると、治具30の搬送や治具30上に配向膜付基板2を載せる動作を回転角度γが0度の状態で行うことができるので、その動作を行うことが容易になる。
【0146】
また、例えば図19に示す例のように、イオン源10を、そのy軸に沿う方向の中心部75を通り、かつイオンビーム12の設計上の進行方向14と実際の進行方向16(図1参照)とを含む平面に垂直な軸76を中心にして矢印Hで示すように可逆式に回転させる投影方向調整用回転機構78を設けておいても良い。
【0147】
この投影方向調整用回転機構78を用いてイオン源10を矢印Hで示すように回転させることによって、イオン源10から引き出されたイオンビーム12の実際の進行方向16を基板表面に投影した方向16aを変化させることが可能である。この場合は、上記回転装置40を設ける必要はなく、治具30は固定しておいて、上記治具30の上孔33および下孔35の両方を通してビーム電流測定器60に入射するイオンビーム12のビーム電流が最大となるように、投影方向調整用回転機構78を用いてイオン源10を上記のように回転させれば良い。
【0148】
更に、図19に示す例のように、イオン源10をy軸に実質的に平行な軸72を中心にして矢印Gで示すように可逆式に回転させて、イオンビーム12の上記照射角度θ(図1参照)を調整する照射角度調整用回転機構74を設けておいても良い。
【0149】
また、上記照射角度調整用回転機構74を用いて次のような調整を行っても良い。即ち、上記のようにしてイオンビーム12の実際の進行方向16を基板表面に投影した方向16aを測定したり、その投影方向16aを所望の配向処理方向20に合わせた後に、更に、照射角度調整用回転機構74を用いてイオン源10を矢印Gで示すように回転させて、上記治具30の上孔33および下孔35の両方を通過してビーム電流測定器60に入射するイオンビーム12のビーム電流が最大となるように調整しても良い。これによって、xz平面内でのイオンビーム12の実際の進行方向を調整して、イオンビーム12のxz平面内での進行方向のずれ、即ち上記照射角度θの設定角度からのずれを修正することができるので、配向膜付基板2に対してより所望の配向処理を実現することが可能になる。
【0150】
この場合、治具30の上孔33および下孔35を、図7を参照して説明した例のように、比較的小さな円形や四角形等にしておくと、イオンビーム12のxy平面内でのずれの検出精度およびxz平面内でのずれの検出精度の両方を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0151】
【図1】配向処理装置の一例を示す概略斜視図である。
【図2】この発明に係るイオンビーム測定方法の一実施形態を示す概略斜視図である。
【図3】図2中の治具を示す概略図であり、(A)は平面図、(B)は線A−Aに沿う断面図である。
【図4】イオンビームの引出し方向と治具の方向との関係の一例を示す概略平面図である。
【図5】イオンビームの引出し方向と治具の方向との関係の他の例を示す概略平面図である。
【図6】治具の他の例を示す概略図であり、(A)は平面図、(B)は線B−Bに沿う断面図である。
【図7】治具の更に他の例を示す概略図であり、(A)は平面図、(B)は線C−Cに沿う断面図である。
【図8】治具の更に他の例を示す概略図であり、(A)は平面図、(B)は線I−Iに沿う断面図である。
【図9】イオンビームの引出し方向と治具の方向との関係の更に他の例を示す概略平面図である。
【図10】治具およびビーム電流測定器の他の例を示す概略図であり、(A)は平面図、(B)は側面図である。
【図11】治具およびビーム電流測定器の更に他の例を示す概略図であり、(A)は平面図、(B)は側面図である。
【図12】この発明に係る配向処理方法の実施形態を説明するための概略平面図である。
【図13】治具に配向膜付基板を所定の位置関係で載せる方法の一例を示す概略平面図である。
【図14】治具に配向膜付基板を所定の位置関係で載せる方法の他の例を示す概略平面図である。
【図15】治具に配向膜付基板を所定の位置関係で載せる方法の更に他の例を示す概略平面図である。
【図16】治具に配向膜付基板を所定の位置関係で載せる方法の更に他の例を示す概略平面図である。
【図17】治具に配向膜付基板を所定の位置関係で載せる方法の更に他の例を示す概略平面図である。
【図18】治具に配向膜付基板を所定の位置関係で載せる方法の更に他の例を示す概略平面図である。
【図19】イオン源を回転させる場合の例を示す概略斜視図である。
【符号の説明】
【0152】
2 配向膜付基板
10 イオン源
12 イオンビーム
14 設計上の進行方向
14a 設計上の進行方向を基板表面に投影した方向
16 実際の進行方向
16a 実際の進行方向を基板表面に投影した方向
20 所望の配向処理方向
30 治具
32 上板
33 上孔
34 下板
35 下孔
38 軸
40 回転装置
42 遮蔽突起
46 溝
60 ビーム電流測定器
【技術分野】
【0001】
この発明は、イオン源から引き出されたイオンビームを配向膜付基板の表面に斜方から照射して当該配向膜付基板に配向処理を施す配向処理装置に用いられるイオンビーム測定方法、および当該配向処理を施す配向処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の配向処理装置の一例を図1に示す。この配向処理装置は、イオン源10から引き出されたイオンビーム12を配向膜付基板2の表面に斜方から照射して配向膜付基板2に(より具体的にはその表面に形成された配向膜に。以下同様)配向処理を施すものである。
【0003】
図中に記入しているように、直交3軸をx軸、y軸およびz軸とすると、この例では、配向膜付基板2は、その表面がxy平面に実質的に平行になるように配置されている。18は、配向膜付基板2の表面に立てた垂線であり、z軸に実質的に平行である。配向膜付基板2は、この例では、矢印Dで示すように、x軸に実質的に平行に搬送されて、配向膜付基板2の全面にイオンビーム12が照射される。
【0004】
イオン源10は、この例では、x軸に沿う方向よりもy軸に沿う方向が長くて、x軸に沿う方向の寸法よりもy軸に沿う方向の寸法が大きい、いわゆるリボン状のイオンビーム12を引き出すものであるが、それに限られるものではない。
【0005】
イオン源10から引き出されたイオンビーム12は、配向膜付基板2の表面に斜方から照射される。このときの照射角度をθ(0°<θ<90°)とする。
【0006】
イオンビーム12による配向膜付基板2の配向処理方向は、イオンビーム12の進行方向を配向膜付基板2の表面に投影(換言すれば射影。以下同様)した方向となることが従来から知られている。従って、配向膜付基板2に対する所望の配向処理方向20を実現するために、従来は、イオンビーム12の進行方向を配向膜付基板2の表面に投影した方向を、所望の配向処理方向20に合わせていた。具体的には、イオン源10から引き出されるイオンビーム12の設計上の進行方向14を配向膜付基板2の表面に投影した方向14aを、所望の配向処理方向20に合わせていた。
【0007】
なお、以下においては、所望の配向処理方向20は、配向膜付基板2の所定の辺(例えば長辺)2bに実質的に平行な方向であり、イオンビーム12の設計上の進行方向14を配向膜付基板2の表面に投影した方向14aは、x軸に実質的に平行な方向である場合を例に説明するが、これに限られるものではない。
【0008】
イオン源10から引き出されるイオンビーム12の設計上の進行方向14は、イオン源10の引出し面(換言すれば引出し電極系の面)11に垂直な方向であるが、イオンビーム12の実際の(換言すれば現実の。以下同様)進行方向16は、設計上の進行方向14から角度α(以下これを偏差角度と呼ぶ)だけずれている場合がある。その原因は、例えば、イオン源10の引出し電極系を構成する複数枚の電極のイオン引出し孔の相互の位置ずれ等による。この位置ずれには、組立時の位置ずれの他に、電極の熱膨張による位置ずれもある。
【0009】
上記のように二つの進行方向14、16が互いにずれると、イオンビーム12の実際の進行方向16を配向膜付基板2の表面に投影した方向16aも、イオンビーム12の設計上の進行方向14を配向膜付基板2の表面に投影した方向14aから角度β(以下これを投影ずれ角度と呼ぶ)だけずれてしまうので、所望の配向処理方向20を実現することができなくなる。
【0010】
ところで、例えば特許文献1には、イオンビームの一部を通過させる開口を有する遮蔽板と、当該遮蔽板の開口を通過したイオンビームのビーム電流を検出する検出器と、当該検出器を遮蔽板の開口の下流部を横切って移動させる検出器駆動装置とを用いてイオンビームの空間分布を測定し、その測定結果に基づいてイオンビームの実際の進行方向を算出し、更に上記偏差角度αに相当する偏差角度を算出する技術が記載されている。
【0011】
従ってこのような技術を用いて、上記イオン源10から引き出されたイオンビーム12の実際の進行方向16や、上記偏差角度αを算出することは一応可能である。
【0012】
【特許文献1】特開2007−278755号公報(段落0019、0020、0072−0074、図11)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
配向膜付基板2の配向処理においては、イオンビーム12の実際の進行方向16よりもむしろ、それを配向膜付基板2の表面に投影した方向16aが重要である。前述したようにこの投影した方向16aによって配向処理方向が決まるからである。
【0014】
しかし、上記特許文献1には、上記投影した方向16aを測定する技術は記載されていない。
【0015】
特許文献1に記載された技術を用いて、イオンビーム12の実際の進行方向16を測定した結果から、更に進んで、上記投影した方向16aを算出することは、種々の計算を用いれば可能かもしれない。
【0016】
しかし、特許文献1に記載の技術では、イオンビームの実際の進行方向を算出するまでに既にかなり複雑な算出工程が必要である。即ち、少なくとも(a)検出器と遮蔽板間の寸法、(b)検出器がx軸上で移動するとして、当該検出器で検出したイオンビームのガウス分布がピークとなる位置の検出器の中心位置をx座標で表したもの、および(c)遮蔽板の開口の中心に検出器の中心が位置するときのx座標を用いて演算を行って、イオンビームの実際の進行方向を算出する必要があるので、かなり複雑な算出工程が必要である。
【0017】
仮に、上述したイオンビームの実際の進行方向算出の後の工程で、更に、実際の進行方向を基板表面に投影した方向を算出するとすれば、更に算出工程が必要になり、算出工程が更に複雑になる。
【0018】
そこでこの発明は、イオン源から引き出されたイオンビームの実際の進行方向を基板表面に投影した方向と実質的に等しい方向を、複雑な算出工程を用いずに測定することができる測定方法を提供することを一つの目的としている。
【0019】
また、イオン源から引き出されたイオンビームの実際の進行方向を基板表面に投影した方向を、簡単な方法で配向膜付基板の所望の配向処理方向に合わせて配向処理を施すことができる配向処理方法を提供することを他の目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0020】
この発明に係るイオンビーム測定方法の一つは、イオン源から引き出されたイオンビームを配向膜付基板の表面に斜方から照射して当該配向膜付基板に配向処理を施す配向処理装置に用いられる測定方法であって、互いに上下に配置されているものであって上孔を有する上板および下孔を有する下板を備えていて、少なくとも下孔がスリット状をしている治具と、当該治具の上孔および下孔の両方を通過したイオンビームを受けてそのビーム電流を測定するビーム電流測定器とを用いて、前記治具および前記ビーム電流測定器を、前記治具の上孔に前記イオン源から引き出されたイオンビームが入射する場所に位置させた状態で、前記治具の少なくとも下板を、当該治具の表面に実質的に直交する軸を中心に回転させて、前記イオン源から引き出されたイオンビームを前記治具の上孔および下孔の両方を通過させて、前記ビーム電流測定器で測定するビーム電流が最大となるときの前記治具の下孔の長さ方向を測定することを特徴としている。
【0021】
この発明に係るイオンビーム測定方法の他のものは、イオン源から引き出されたイオンビームを配向膜付基板の表面に斜方から照射して当該配向膜付基板に配向処理を施す配向処理装置に用いられる測定方法であって、互いに上下に配置されているものであって上孔を有する上板および下孔を有する下板を備えていて、少なくとも上孔がスリット状をしている治具と、当該治具の上孔および下孔の両方を通過したイオンビームを受けてそのビーム電流を測定するビーム電流測定器とを用いて、前記治具および前記ビーム電流測定器を、前記治具の上孔に前記イオン源から引き出されたイオンビームが入射する場所に位置させた状態で、前記治具の少なくとも上板を、当該治具の表面に実質的に直交する軸を中心に回転させて、前記イオン源から引き出されたイオンビームを前記治具の上孔および下孔の両方を通過させて、前記ビーム電流測定器で測定するビーム電流が最大となるときの前記治具の上孔の長さ方向を測定することを特徴としている。
【0022】
治具としては、互いに上下に配置されているものであって上孔を有する上板および下孔を有する下板を備えていて、同一面に投影したときの上孔と下孔の位置が互いにずれている治具を用いても良い。
【0023】
治具を構成する上板および下板を一体で回転させても良い。
【0024】
治具およびビーム電流測定器としては、イオン源から引き出されたイオンビームを遮って陰を作る遮蔽突起を有している治具であってその表面に実質的に直交する軸を中心に回転可能な治具と、当該治具に対して、当該治具が所定の回転角度にあるときに前記陰に入る箇所に取り付けられていて、イオン源から引き出されたイオンビームを受けてそのビーム電流を測定するビーム電流測定器とを用いても良い。
【0025】
治具およびビーム電流測定器としては、直線状に伸びた溝を表面に有している治具であってその表面に実質的に直交する軸を中心に回転可能な治具と、当該治具の溝内に位置するように設けられていて、イオン源から引き出されたイオンビームを受けてそのビーム電流を測定するビーム電流測定器とを用いても良い。
【0026】
この発明に係る配向処理方法の一つは、イオン源から引き出されたイオンビームを配向膜付基板の表面に斜方から照射して当該配向膜付基板に配向処理を施す処理方法であって、互いに上下に配置されているものであって上孔を有する上板および下孔を有する下板を備えていて、少なくとも下孔がスリット状をしている治具と、当該治具の上孔および下孔の両方を通過したイオンビームを受けてそのビーム電流を測定するビーム電流測定器とを用いて、前記治具および前記ビーム電流測定器を、前記治具の上孔に前記イオン源から引き出されたイオンビームが入射する場所に位置させた状態で、前記治具を、その上板および下板を一体で、当該治具の表面に実質的に直交する軸を中心に回転させて、前記イオン源から引き出されたイオンビームを前記治具の上孔および下孔の両方を通過させて、前記ビーム電流測定器で測定するビーム電流が最大となるときの前記治具の方向を決定し、当該決定した方向を保った状態で、前記治具の表面に所定の位置関係で配向膜付基板を載せ、かつ当該配向膜付基板に前記イオン源から引き出されたイオンビームを照射して当該配向膜付基板に配向処理を施すことを特徴としている。
【0027】
この発明に係る配向処理方法においても、治具やビーム電流測定器としては、上記ビーム電流測定方法について述べたのと同様の治具やビーム電流測定器を用いても良い。
【発明の効果】
【0028】
請求項1に記載の発明によれば、治具を回転させてビーム電流測定器で測定するビーム電流が最大となるときの治具の下孔の長さ方向は、イオン源から引き出されたイオンビームの実際の進行方向を基板表面に投影した方向と実質的に等しい方向となる。この投影した方向を、この発明では、治具を回転させてビーム電流測定器で測定するビーム電流が最大となるときの下孔の長さ方向を測定することで測定することができるので、複雑な算出工程を用いずに簡単に測定することができる。
【0029】
しかも、イオン源から引き出されたイオンビームの実際の進行方向を基板表面に投影した方向と実質的に等しい方向を測定することができるので、配向膜付基板の配向処理を正確に行うことに供することが可能になる。請求項2〜7に記載の発明の場合も同様である。
【0030】
請求項2、4に記載の発明によれば、治具を回転させてビーム電流測定器で測定するビーム電流が最大となるときの、上記上孔の中心と下孔の中心とを結ぶ線の方向は、イオン源から引き出されたイオンビームの実際の進行方向を基板表面に投影した方向と実質的に等しい方向となる。この投影した方向を、この発明では、治具を回転させてビーム電流測定器で測定するビーム電流が最大となるときの上記線の方向を測定することで測定することができるので、複雑な算出工程を用いずに簡単に測定することができる。
【0031】
請求項3に記載の発明によれば、治具を回転させてビーム電流測定器で測定するビーム電流が最大となるときの治具の上孔の長さ方向は、イオン源から引き出されたイオンビームの実際の進行方向を基板表面に投影した方向と実質的に等しい方向となる。この投影した方向を、この発明では、治具を回転させてビーム電流測定器で測定するビーム電流が最大となるときの上孔の長さ方向を測定することで測定することができるので、複雑な算出工程を用いずに簡単に測定することができる。
【0032】
請求項5に記載の発明によれば、治具を構成する上板および下板を一体で回転させるので、治具の回転やそのための構成が簡単になる、という更なる効果を奏する。
【0033】
請求項6に記載の発明によれば、治具を回転させてビーム電流測定器で測定するビーム電流が最小となるときの、遮蔽突起の中心とビーム電流測定器の中心とを結ぶ線の方向は、イオン源から引き出されたイオンビームの実際の進行方向を基板表面に投影した方向と実質的に等しい方向となる。この投影した方向を、この発明では、治具を回転させてビーム電流測定器で測定するビーム電流が最小となるときの上記線の方向を測定することで測定することができるので、複雑な算出工程を用いずに簡単に測定することができる。
【0034】
請求項7に記載の発明によれば、治具を回転させてビーム電流測定器で測定するビーム電流が最大となるときの治具の溝の長さ方向は、イオン源から引き出されたイオンビームの実際の進行方向を基板表面に投影した方向と実質的に等しい方向となる。この投影した方向を、この発明では、治具を回転させてビーム電流測定器で測定するビーム電流が最大となるときの溝の長さ方向を測定することで測定することができるので、複雑な算出工程を用いずに簡単に測定することができる。
【0035】
請求項8、9、13に記載の発明によれば、ビーム電流測定器で測定するビーム電流が最大となるときの治具の方向は、イオン源から引き出されたイオンビームの実際の進行方向を基板表面に投影した方向と所定の関係にある。従って、治具の上記方向を決定してその方向を保った状態で、当該治具に所定の位置関係で配向膜付基板を載せることによって、イオン源から引き出されたイオンビームの実際の進行方向を基板表面に投影した方向を、配向膜付基板の所望の配向処理方向に合わせて配向処理を施すことができる。
【0036】
しかも、イオン源から引き出されたイオンビームの実際の進行方向を基板表面に投影した方向を、複雑な算出工程を用いて測定する必要がないので、処理が簡単である。また、治具の上記方向を保った状態で配向膜付基板を載せるので、治具の上記方向が具体的に何度であるかを測定する必要はなく、従ってそのような角度を測定する角度測定手段が不要となると共に、角度測定誤差の影響を排除することができる。治具の角度情報を記憶する手段も不要である。更に、治具が測定手段と基板保持手段とを兼ねているので、配向膜付基板を保持する基板ホルダ等を別途設ける必要がなく、従って構成を簡素化することができる。
【0037】
請求項10、11に記載の発明によれば、ビーム電流測定器で測定するビーム電流が最大となるときの治具の少なくとも上板の方向は、イオン源から引き出されたイオンビームの実際の進行方向を基板表面に投影した方向と所定の関係にある。従って、治具の少なくとも上板の上記方向を決定してその方向を保った状態で、当該治具に所定の位置関係で配向膜付基板を載せることによって、イオン源から引き出されたイオンビームの実際の進行方向を基板表面に投影した方向を、配向膜付基板の所望の配向処理方向に合わせて配向処理を施すことができる。
【0038】
しかも、イオン源から引き出されたイオンビームの実際の進行方向を基板表面に投影した方向を、複雑な算出工程を用いて測定する必要がないので、処理が簡単である。また、治具の上記方向を保った状態で配向膜付基板を載せるので、治具の上記方向が具体的に何度であるかを測定する必要はなく、従ってそのような角度を測定する角度測定手段が不要となると共に、角度測定誤差の影響を排除することができる。治具の角度情報を記憶する手段も不要である。更に、治具が測定手段と基板保持手段とを兼ねているので、配向膜付基板を保持する基板ホルダ等を別途設ける必要がなく、従って構成を簡素化することができる。
【0039】
請求項12に記載の発明によれば、ビーム電流測定器で測定するビーム電流が最小となるときの治具の方向は、イオン源から引き出されたイオンビームの実際の進行方向を基板表面に投影した方向と所定の関係にある。その他の作用効果は、請求項8について上述したのと同様である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
(1)イオンビーム測定方法について
図2は、この発明に係るイオンビーム測定方法の一実施形態を示す概略斜視図である。以下においては、図1に示した構成と同一または相当する部分には同一符号を付して、重複説明を省略する。
【0041】
このイオンビーム測定方法は、例えば図1を参照して上述したような、イオン源10から引き出されたイオンビーム12を配向膜付基板2の表面に斜方から照射して当該配向膜付基板2に配向処理を施す配向処理装置に用いられるものである。
【0042】
なお、図2以降においては、配向膜付基板2、イオン源10から引き出されるイオンビーム12の設計上の進行方向14、それを配向膜付基板2表面に投影した方向14a、イオンビーム12の実際の進行方向16、それを配向膜付基板2表面に投影した方向16a、所望の配向処理方向20等を図示していない場合もあるが、その場合は図1を参照するものとする。
【0043】
このイオンビーム測定方法は、治具30、ビーム電流測定器60等を用いる。
【0044】
治具30は、この実施形態では、図3も参照して、互いに上下に配置されている2枚の板であって、上孔33を有する上板32と、下孔35を有する下板34とを備えている。上孔33は円形をしており、下孔35は下板34の辺(例えば長辺)34bに実質的に平行なスリット状(換言すれば細長い長方形状。以下同様)をしている。但し上孔33は、円形以外、例えば四角形等でも良い。
【0045】
なお、図3では、x軸との関係で治具30の回転角度を例示する必要がないので、x、y、zの座標軸は図示していない。図6〜図8、図10〜図11、図13〜図18においても同様である。
【0046】
治具30は、この例では、その表面が上記配向膜付基板2の表面と実質的に平行になるように配置されている。後述する他の治具30も同様である。より具体的にはこの例では、治具30を構成する上板32および下板34の表面は、配向膜付基板2の表面と実質的に平行に、換言すればxy平面と実質的に平行に配置されている。図6〜図8に示す治具30も同様である。
【0047】
治具30は、それを構成する上板32および下板34の少なくとも一方を、即ち一方または両方を、下に示す(a)〜(f)の態様に応じて、当該治具30の表面に実質的に直交する軸38を中心にして、矢印Fで示すように、可逆転式の回転装置40によって回転させることができる。軸38はz軸に実質的に平行であるということもできる。軸38は、この例では、上孔33の中心および下孔35の中心を通っている。図6、図8に示す治具30の場合も同様である。
【0048】
ビーム電流測定器60は、治具30の上孔33および下孔35の両方を通過したイオンビーム12を受けてそのビーム電流を測定するものである。より具体的には、ビーム電流測定器60は、回転させられる板の孔33または35が後述するように所定の向きにあるときに、両孔33、35を通過したイオンビーム12が入射する位置に設けられている。ビーム電流測定器60は、例えば、ファラデーカップである。
【0049】
治具30を構成する上板32、下板34およびビーム電流測定器60の回転の態様は次のとおりである。回転させる場合は、上記軸38を中心にして上記回転装置40によって回転させる。
【0050】
(a)上板32、下板34およびビーム電流測定器60を一体で回転させる。この場合は上板32、下板34およびビーム電流測定器60を結合部材(図示省略。以下同様)で互いに結合しておけば良い。ビーム電流測定器60は、治具30と一体で回転させるので、次の(b)の場合に比べれば小さなもので済む。図4、図5、図12は、この(a)の態様を採用したときの例である。
【0051】
(b)上板32および下板34を一体で回転させ、ビーム電流測定器60は固定しておく。この場合は、上板32および下板34を結合部材で互いに結合しておけば良い。ビーム電流測定器60は固定部材(図示省略。以下同様)で固定部に固定しておく。このビーム電流測定器60は、イオン源10から引き出されるイオンビーム12の実際の進行方向16が設計上の進行方向14からずれていてもイオンビーム12を受けることができる程度に大きくしておけば良い。
【0052】
(c)上板32を固定しておき、下板34をビーム電流測定器60と一体にして回転させる。この場合は、上板32は固定部材で固定部に固定しておく。ビーム電流測定器60は下板34に結合しておく。
【0053】
(d)上板32およびビーム電流測定器60を固定しておき、下板34を回転させる。この場合は、上板32およびビーム電流測定器60は固定部材で固定部に固定しておく。ビーム電流測定器60をある程度大きくしておくことは上記(b)の場合と同様である。
【0054】
(e)下板34およびビーム電流測定器60を固定しておき、上板32を回転させる。この場合は、下板34およびビーム電流測定器60は固定部材で固定部に固定しておく。上記回転装置40によって上板32を回転させるためには、例えば、下板34に回転装置40の回転軸が通る貫通穴を設けておいても良いし、それができない場合は、下板34を避けて回転装置40の回転軸と上板32とを結合する結合部材を用いる等しても良い。いずれにしても、公知の手段で実現することができる。ビーム電流測定器60をある程度大きくしておくことは上記(b)の場合と同様である。
【0055】
(f)下板34を固定しておき、上板32をビーム電流測定器60と一体にして回転させる。これらを回転装置40によって回転させる方法の例は、上記(e)に示したとおりである。この場合は、下板34は固定部材で固定部に固定しておく。ビーム電流測定器60は上板32に結合しておく。
【0056】
上記(a)〜(d)の態様は、少なくとも下板34を回転させるという範疇に属する。上記(a)、(b)、(e)、(f)の態様は、少なくとも上板32を回転させるという範疇に属する。
【0057】
まず、少なくとも下板34を回転させる場合のイオンビーム測定方法の実施形態を説明する。
【0058】
測定に際しては、例えば図2に示す例のように、治具30およびビーム電流測定器60等を、治具30の上孔33にイオン源10から引き出されたイオンビーム12が入射する場所に位置させた状態で、治具30の少なくとも下板34を、上記(a)〜(d)に示した態様のいずれかで回転させて、イオン源10から引き出されたイオンビーム12を上孔33および下孔35の両方を通過させて、ビーム電流測定器60で測定するビーム電流が最大となるときの治具30の下孔35の長さ方向51を測定する。長さ方向51は、換言すれば、下孔35の長軸方向、あるいは下孔35の長辺に実質的に平行な方向である。
【0059】
例えば、図4に示す例のように、イオン源10から引き出されるイオンビーム12の実際の進行方向16が設計上の進行方向14と一致している場合は、治具30のx軸からの回転角度γが実質的に0度の状態で、イオンビーム12の実際の進行方向16をxy平面に(即ち治具30の表面や配向膜付基板2の表面に)投影した方向16aが、下孔35の長さ方向51と一致するので、両孔33、35をイオンビーム12が最も多く通過して、ビーム電流測定器60で測定するビーム電流が最大となる。下孔35の長さ方向51が投影方向16aからずれると、ビーム電流測定器60で測定するビーム電流は減少する。
【0060】
なお、図4および図5は平面図であり、イオンビーム12の設計上の進行方向14とそれを投影した方向14aとは重なって見えるので、投影した方向14aを括弧書きで示している。実際の進行方向16とそれを投影した方向16aとについても同様である。図9においても同様である。
【0061】
一方、例えば図5に示す例のように、イオン源10から引き出されるイオンビーム12の実際の進行方向16が設計上の進行方向14からずれていても、治具30を回転させて、イオンビーム12の上記投影した方向16aが下孔35の長さ方向51と一致した状態になると、両孔33、35をイオンビーム12が最も多く通過するので、ビーム電流測定器60で測定するビーム電流が最大となる。下孔35の長さ方向51が投影方向16aからずれると、ビーム電流測定器60で測定する上記電流は減少する。ビーム電流が最大になるときの治具30のx軸からの回転角度γは、この実施形態では、前述した投影ずれ角度βと実質的に等しくなる。
【0062】
このように、このイオンビーム測定方法によれば、治具30を回転させてビーム電流測定器60で測定するビーム電流が最大となるときの治具30の下孔35の長さ方向51は、イオン源10から引き出されたイオンビーム12の実際の進行方向16を基板表面に投影した方向16aと実質的に等しい方向となる。この投影した方向16aを、このイオンビーム測定方法では、治具30を回転させてビーム電流測定器60で測定するビーム電流が最大となるときの下孔35の長さ方向51を測定することで測定することができるので、複雑な算出工程を用いずに簡単に測定することができる。
【0063】
なお、下孔35の長さ方向51と治具30回転角度γとの間には一定の関係があり、この関係は予め分かっているので(例えばこの例の場合は、下孔35の長さ方向51のx軸からの角度は回転角度γに等しい)、下孔35の長さ方向51は、具体的には治具30の回転角度γで簡単に測定することができる。治具30の回転角度γは、例えば、回転装置40に設けている回転角度検出器(例えばエンコーダ)で簡単に測定することができる。後述する他の例においても同様である。
【0064】
しかも、このイオンビーム測定方法によれば、イオン源10から引き出されたイオンビーム12の実際の進行方向16を基板表面に投影した方向16aと実質的に等しい方向を実際に測定することができるので、配向膜付基板2の配向処理を正確に行うことに供することが可能になる。後述する他の例の治具30やビーム電流測定器60を用いる場合も同様である。
【0065】
治具30を構成する上板32の上孔33を小さくし、かつ下板34の下孔35の幅を小さくすると、ビーム電流測定器60で測定するビーム電流は全体的に小さくなるけれども、ビーム電流変化の尖鋭度はより大きくなるので、尖鋭度の観点から言えば、ビーム電流の最大点を検出しやすくなる。同様のことは、図6〜図8に示す例の治具30においても言える。
【0066】
治具30を構成する上板32の上孔33は、図6に示す例のように、下板34の下孔35と同様にスリット状をしていても良い。より具体的には、この例では、上孔33は上板32の辺(例えば長辺)32bに実質的に平行なスリット状をしている。但し、両孔33、35の幅や長さは、この例では上下で互いに実質的に同じにしているが、必ずしもそのようにしなくても良い。
【0067】
この例の場合も、図3の例の場合と同様の作用によって、少なくとも下板34を上記軸38を中心に回転させることによって、イオン源10から引き出されたイオンビーム12を上孔33および下孔35の両方を通過させて、ビーム電流測定器60で測定するビーム電流が最大となるときの下孔35の長さ方向51を測定することができる。またこの例の場合は、図3の例に比べて、両孔33、35を通過してビーム電流測定器60に入射するイオンビーム12の量を多くして、ビーム電流測定器60で測定するビーム電流を大きくすることができる。
【0068】
治具30を構成する上板32の上孔33および下板34の下孔35の両者を、スリット状以外の形状にしても良い。例えば図7に示す例のように円形の孔にしても良い。四角形等の孔でも良い。両孔33、35の形状や寸法は、この例では上下で互いに実質的に同じにしているが、必ずしもそのようにしなくても良い。但しこの例の場合は、同一面(この例ではxy平面。以下同様)に投影したときの両孔33、35の位置は互いにずらしておく。かつ、下板34の回転中心となる軸38は、少なくとも下孔35からずらしておく。もっとも軸38は、この例では、後述する線52上にある。
【0069】
この例の場合も、図3の例の場合と同様の作用によって、少なくとも下板34を上記軸38を中心に回転させることによって、イオン源10から引き出されたイオンビーム12を上孔33および下孔35の両方を通過させて、ビーム電流測定器60で測定するビーム電流が最大となるようにすることができる。同一面に投影したときの上孔33の中心と下孔35の中心とを結ぶ線52を考えると、この線52が図3の例の長さ方向51に相当している。従ってこの例では、ビーム電流測定器60で測定するビーム電流が最大となるときの線52の方向を測定する。
【0070】
上記線52の方向は、図3の例の場合と同様の作用によって、イオン源10から引き出されたイオンビーム12の実際の進行方向16を基板表面に投影した方向16aと実質的に等しい方向となる。この投影した方向を、このイオンビーム測定方法では、治具30を回転させてビーム電流測定器60で測定するビーム電流が最大となるときの上記線52の方向を測定することで測定することができるので、複雑な算出工程を用いずに簡単に測定することができる。
【0071】
なお、治具30の線52と治具30の回転角度γ(図4、図5参照)との間には一定の関係があり、この関係は予め分かっているので(例えばこの例の場合は、線52のx軸からの角度は回転角度γに等しい)、治具30の線52は、具体的には治具30の回転角度γで簡単に測定することができる。
【0072】
次に、少なくとも上板32を回転させる場合のイオンビーム測定方法の実施形態を、上述した少なくとも下板34を回転させる場合との相違点を主体に説明する。
【0073】
この場合に用いる治具30の一例を図8に示す。この治具30においては、上板32の上孔33は、図6において説明したのと同様のスリット状をしている。下板34の下孔35は、この例では円形をしているが、それ以外の四角形等の形状でも良い。図6等において説明したのと同様のスリット状にしても良い。
【0074】
測定に際しては、図2に示した例の場合と同様に、治具30およびビーム電流測定器60等を、治具30の上孔33にイオン源10から引き出されたイオンビーム12が入射する場所に位置させた状態で、治具30の少なくとも上板32を、上記(a)、(b)、(e)、(f)に示した態様のいずれかで回転させて、イオン源10から引き出されたイオンビーム12を上孔33および下孔35の両方を通過させて、ビーム電流測定器60で測定するビーム電流が最大となるときの治具30の上孔33の長さ方向50を測定する。長さ方向50は、換言すれば、上孔33の長軸方向、あるいは上孔33の長辺に実質的に平行な方向である。
【0075】
図9は、上記(e)に示した態様で、上板32だけを回転させた場合の例である。この例のように、イオン源10から引き出されるイオンビーム12の実際の進行方向16が設計上の進行方向14からずれていても、上板32を回転させて、イオンビーム12の上記投影した方向16aが上孔33の長さ方向50と一致した状態になると、両孔33、35をイオンビーム12が最も多く通過するので、ビーム電流測定器60で測定するビーム電流が最大となる。上孔33の長さ方向50が投影方向16aからずれると、ビーム電流測定器60で測定する上記電流は減少する。ビーム電流が最大になるときの上板32のx軸からの回転角度γは、この実施形態では、前述した投影ずれ角度βと実質的に等しくなる。
【0076】
上板32、下板34およびビーム電流測定器60の回転の態様は、上記(a)、(b)または(f)に示す態様でも良い。
【0077】
このイオンビーム測定方法によれば、治具30を回転させてビーム電流測定器60で測定するビーム電流が最大となるときの治具30の上孔33の長さ方向50は、イオン源10から引き出されたイオンビーム12の実際の進行方向16を基板表面に投影した方向16aと実質的に等しい方向となる。この投影した方向16aを、このイオンビーム測定方法では、治具30を回転させてビーム電流測定器60で測定するビーム電流が最大となるときの上孔33の長さ方向50を測定することで測定することができるので、複雑な算出工程を用いずに簡単に測定することができる。
【0078】
なお、上孔33の長さ方向50と治具30回転角度γとの間には一定の関係があり、この関係は予め分かっているので(例えばこの例の場合は、上孔33の長さ方向50のx軸からの角度は回転角度γに等しい)、上孔33の長さ方向50は、前述したように、具体的には治具30の回転角度γで簡単に測定することができる。治具30の回転角度γは、例えば、回転装置40に設けている回転角度検出器(例えばエンコーダ)で簡単に測定することができる。
【0079】
少なくとも上板32を回転させる場合も、上板32の上孔33を、あるいは当該上孔33および下板34の下孔35の両者を、スリット状以外の形状にしても良い。例えば図7に示した例のように、上孔33および下孔35を円形の孔にしても良い。四角形等の孔でも良い。この場合は、同一面(この例ではxy平面。以下同様)に投影したときの両孔33、35の位置は互いにずらしておく。かつ、上板32の回転中心となる軸38は、少なくとも上孔33からずらしておく。軸38は、この例では、前述した線52(即ち、同一面に投影したときの上孔33の中心と下孔35の中心とを結ぶ線52)上にある。
【0080】
この例の場合も、少なくとも下板34を回転させるときの図7の例の場合と同様の作用によって、少なくとも上板32を上記軸38を中心に回転させることによって、イオン源10から引き出されたイオンビーム12を上孔33および下孔35の両方を通過させて、ビーム電流測定器60で測定するビーム電流が最大となるようにすることができる。このときの線52の方向を測定する。
【0081】
上記線52の方向は、少なくとも下板34を回転させるときの図7の例の場合と同様の作用によって、イオン源10から引き出されたイオンビーム12の実際の進行方向16を基板表面に投影した方向16aと実質的に等しい方向となる。この投影した方向16aを、このイオンビーム測定方法では、治具30を回転させてビーム電流測定器60で測定するビーム電流が最大となるときの上記線52の方向を測定することで測定することができるので、複雑な算出工程を用いずに簡単に測定することができる。
【0082】
治具30の線52と治具30の回転角度γとの関係は前述したとおりである。
【0083】
図3、図6〜図8に示したような上孔33を上板32の面内に一次元または二次元で複数個設け、かつそれに対応するように、図3、図6〜図8に示したような下孔35を下板34の面内に一次元または二次元で複数個設けても良い。ビーム電流測定器60も、孔33、35の組に対応させて複数個設ける。このようにすれば、イオン源10から引き出されたイオンビーム12の実際の進行方向16を基板表面に投影した方向16aを、治具30の面内ひいては配向膜付基板2の面内の一次元または二次元の複数箇所において測定することができる。
【0084】
次に、治具30およびビーム電流測定器60の更に他の例を、図3に示した治具30およびビーム電流測定器60との相違点を主体に説明する。
【0085】
図10に示す例の治具30は、イオン源10から引き出されたイオンビーム12を遮って陰44を作る遮蔽突起42を端部に有している。この治具30の表面の向き、治具30を回転させる軸38、回転装置40等は、図3の例で説明したものと同様である。もっとも軸38は、この例では、後述する線54上にある。より具体的には、この例では、ビーム電流測定器60の中心を通っている。
【0086】
ビーム電流測定器60は、治具30に対して、治具30が所定の回転角度にあるときに陰44に入る箇所に取り付けられている。
【0087】
測定に際しては、図10に示す例のように、治具30およびビーム電流測定器60を、イオン源10から引き出されたイオンビーム12が遮蔽突起42に当たって上記陰44を作る場所に位置させた状態で、治具30を、ビーム電流測定器60と共に上記軸38を中心に回転させて、ビーム電流測定器60で測定するビーム電流が最小となるときの、遮蔽突起42の中心とビーム電流測定器60の中心とを結ぶ線54の方向を測定する。
【0088】
イオン源10から引き出されたイオンビーム12の実際の進行方向16を基板表面に投影した方向16aが上記線54と一致していると、ビーム電流測定器60は最も多く陰44内に位置して当該ビーム電流測定器60に入射するイオンビーム12の量が最小となるので、ビーム電流測定器60で測定するビーム電流は最小となる。線54が投影方向16aからずれると、ビーム電流測定器60に入射するイオンビーム12の量が増えて当該ビーム電流測定器60で測定するビーム電流は増大する。
【0089】
従って、図10に示す治具30およびビーム電流測定器60を用いたイオンビーム測定方法によれば、治具30を回転させてビーム電流測定器60で測定するビーム電流が最小となるときの上記線54の方向は、イオン源10から引き出されたイオンビーム12の実際の進行方向16を基板表面に投影した方向16aと実質的に等しい方向となる。この投影した方向を、このイオンビーム測定方法では、治具30を回転させてビーム電流測定器60で測定するビーム電流が最小となるときの上記線54の方向を測定することで測定することができるので、複雑な算出工程を用いずに簡単に測定することができる。
【0090】
なお、治具30の線54と治具30の回転角度γ(図4、図5参照)との間には一定の関係があり、この関係は予め分かっているので(例えばこの例の場合は、線54のx軸からの角度は回転角度γに等しい)、治具30の線54は、具体的には治具30の回転角度γで簡単に測定することができる。
【0091】
また、上記遮蔽突起42の幅(イオンビーム12の進行方向に交差する方向の寸法)を小さくすると共に、ビーム電流測定器60の寸法を遮蔽突起42の幅とほぼ等しくすると、ビーム電流測定器60で測定するビーム電流は全体的に小さくなるけれども、ビーム電流測定器60で測定するビーム電流の変化の尖鋭度はより大きくなるので、尖鋭度の観点から言えば、ビーム電流の最小点を検出しやすくなる。
【0092】
図11に示す例の治具30は、直線状に伸びた溝46を表面に有している。この治具30の表面の向き、治具30を回転させる軸38、回転装置40等は、図3の例で説明したものと同様である。もっとも軸38は、この例では、溝46の幅方向の中心を通っている。
【0093】
ビーム電流測定器60は、治具30の溝46内に位置するように設けられている。
【0094】
測定に際しては、図11に示す例のように、治具30およびビーム電流測定器60を、イオン源10から引き出されたイオンビーム12が溝46の空間部を通してビーム電流測定器60に入射する場所に位置させた状態で、治具30を、ビーム電流測定器60と共に上記軸38を中心に回転させて、ビーム電流測定器60で測定するビーム電流が最大となるときの上記溝46の長さ方向56を測定する。
【0095】
イオン源10から引き出されたイオンビーム12の実際の進行方向16を基板表面に投影した方向16aが溝46の長さ方向56と一致していると、イオンビーム12は溝46の側壁部48で遮られる量が最も少なくなってビーム電流測定器60に入射するイオンビーム12の量が最大となるので、ビーム電流測定器60で測定するビーム電流は最大となる。溝46の長さ方向56が投影方向16aからずれると、イオンビーム12は溝46の側壁部48で遮られてビーム電流測定器60に入射しにくくなるので、ビーム電流測定器60で測定するビーム電流は減少する。
【0096】
従って、図11に示す治具30およびビーム電流測定器60を用いたイオンビーム測定方法によれば、治具30を回転させてビーム電流測定器60で測定するビーム電流が最大となるときの上記溝46の長さ方向56は、イオン源10から引き出されたイオンビーム12の実際の進行方向16を基板表面に投影した方向16aと実質的に等しい方向となる。この投影した方向を、このイオンビーム測定方法では、治具30を回転させてビーム電流測定器60で測定するビーム電流が最大となるときの溝46の長さ方向56を測定することで測定することができるので、複雑な算出工程を用いずに簡単に測定することができる。
【0097】
なお、溝46の長さ方向56と治具30の回転角度γとの間には一定の関係があり、この関係は予め分かっているので(例えばこの例の場合は、溝46の長さ方向56のx軸からの角度は回転角度γに等しい)、溝46の長さ方向56は、具体的には治具30の回転角度γで簡単に測定することができる。
【0098】
また、上記溝46の幅(イオンビーム12の進行方向に交差する方向の寸法)を小さくすると共に、ビーム電流測定器60の寸法を溝46の幅とほぼ等しくすると、ビーム電流測定器60で測定するビーム電流は全体的に小さくなるけれども、ビーム電流測定器60で測定するビーム電流の変化の尖鋭度はより大きくなるので、尖鋭度の観点から言えば、ビーム電流の最大点を検出しやすくなる。溝46をより深くすることも、上記尖鋭度をより大きくすることにつながる。
【0099】
(2)配向処理方法について
次に、配向膜付基板2の表面にイオンビーム12を照射して配向処理を施す配向処理方法の例を説明する。これには、大別すると、次の二つの配向処理方法がある。
【0100】
(A)上記治具30とは別の、配向膜付基板2を保持する基板ホルダを用いて、当該基板ホルダに配向膜付基板2を載せて配向処理を施す配向処理方法。
【0101】
(B)上記治具30に配向膜付基板2を載せて配向処理を施す配向処理方法。
【0102】
上記(A)の配向処理方法を簡単に説明すると、この場合は、上記各実施形態のイオンビーム測定方法で測定した、治具30の下孔35の長さ方向(図2〜図6参照)、線52の方向(図7参照)、線54の方向(図10参照)および溝46の長さ方向56(図11参照)をそれぞれ表す情報、具体的には治具30の回転角度γを表す情報に基づいて、基板ホルダを搬送および回転させる機能を有するホルダ駆動装置(図示省略)を制御して、基板ホルダを回転させて基板ホルダの方向を治具30の方向と所定の関係になるように定める。典型的には、基板ホルダの方向を、治具30の方向と実質的に同一方向に定める。
【0103】
これによって、イオン源10から引き出されたイオンビーム12の実際の進行方向16を基板表面に投影した方向16aを、基板ホルダ上の配向膜付基板2の所望の配向処理方向20に合わせて配向処理を施すことができる。
【0104】
但し、上記(A)の配向処理方法では、治具30とは別に、基板ホルダおよびホルダ駆動装置が必要になると共に、上記回転角度γを測定する手段および当該回転角度γを表す情報を記憶する手段等が必要になる。この観点からは、以下に述べるように、上記(B)の配向処理方法の方が有利である。
【0105】
次に、上記(B)の配向処理方法に属する配向処理方法の実施形態の幾つかを詳述する。
【0106】
配向処理方法の第1の実施形態では、図2〜図6を参照して説明した治具30およびビーム電流測定器60を用いて、治具30およびビーム電流測定器60を、治具30の上孔33に上記イオン源10から引き出されたイオンビーム12が入射する場所に位置させた状態で、治具30を、その上板32および下板34を一体で、当該治具30の表面に実質的に直交する上記軸38を中心に回転させて、イオン源10から引き出されたイオンビーム12を治具30の上孔33および下孔35の両方を通過させて、ビーム電流測定器60で測定するビーム電流が最大となるときの治具30の方向を決定し、当該決定した方向を保った状態で、治具30の表面に所定の位置関係で配向膜付基板2を載せ、かつ当該配向膜付基板2にイオン源10から引き出されたイオンビーム12を照射して当該配向膜付基板2に配向処理を施す。
【0107】
この配向処理方法のより具体例を図12を参照して説明する。この例は前述した図5に対応している。即ち、治具30が図5の状態で、ビーム電流測定器60で測定するビーム電流が最大となるので、そのときの治具30の方向を決定し、当該決定した方向を保った状態で、治具30の表面に所定の位置関係で配向膜付基板2を載せ、かつ当該配向膜付基板2にイオン源10から引き出されたイオンビーム12を照射して配向処理を施す。この配向処理の際には、必要に応じて、図1の所でも説明したように、配向膜付基板2を、より具体的には治具30および配向膜付基板2を、矢印Dで示す方向(またはその逆の矢印D′方向)に搬送しながらイオンビーム12を照射しても良い。
【0108】
この配向処理方法の場合は、治具30の上記決定した方向を保った状態で配向膜付基板2を載せるので、前述したイオンビーム測定方法と違って、治具30の方向が、例えば上記回転角度γが、具体的に何度であるかを測定する必要はない。後述する他の実施形態においても同様である。
【0109】
上記治具30に配向膜付基板2を載せる動作は、真空中(例えばイオンビーム12の上記測定や配向膜付基板2に配向処理を行う真空容器内)で行っても良いし、大気中で行っても良い。その際に、必要に応じて、治具30を、治具搬送装置(図示省略)によって、例えば図12中に矢印D、D′で示すように搬送して、上記測定や配向処理を行う場所と、治具30に配向膜付基板2を載せる場所との間で搬送しても良い。例えば、治具30を回転させずに上記x軸に実質的に平行なガイド64に沿って治具30を搬送すると、治具30の上記決定した方向を保った状態で治具30を容易に搬送することができる。後述する他の実施形態においても同様である。
【0110】
治具30に配向膜付基板2を載せる動作は、真空中で行う場合は、ロボット等の機械装置によって行えば良い。大気中で行う場合は、人によって行っても良いし、ロボット等の機械装置によって行っても良い。後述する他の実施形態においても同様である。
【0111】
上記治具30の表面に所定の位置関係で配向膜付基板2を載せる態様の例を説明する。
【0112】
治具30の方向と、上記長さ方向50、51、線52の方向、線54の方向または長さ方向56とは、所定の(即ち予め定まった一定の。以下同様)関係にある。また、治具30の方向は、例えば、治具30の所定の辺(例えば辺30b)の方向で表すことができる。一方、配向膜付基板2と、それに対する所望の配向処理方向20とも、所定の関係にある。例えば、配向膜付基板2の所定の辺(例えば辺2b)と配向処理方向20とは実質的に平行な関係にある。従って、例えば、治具30の上記決定した方向を保った状態で、治具30に配向膜付基板2を、両辺30b、2bが互いに実質的に平行になるように載せれば良い。
【0113】
要は、治具30の上記長さ方向50、51、線52の方向、線54の方向または長さ方向56と、配向膜付基板2の所望の配向処理方向20とが実質的に平行になる位置関係で、治具30上に配向膜付基板2を載せれば良い。
【0114】
治具30上に配向膜付基板2を上記位置関係で載せるより具体的な方法の例を幾つか説明する。
【0115】
図13に示す例のように、治具30の表面に位置決め用のマーク66を設けておいて、それに配向膜付基板2の一つの辺(例えば辺2a)を合わせても良い。このマーク66の代わりに、またはそれと共に、配向膜付基板2の他方の辺(例えば辺2b)の位置決め用のマークを設けておいてそれに合わせても良い。
【0116】
図14に示す例のように、治具30の一つの辺(例えば辺30a)と、配向膜付基板2の一つの辺(例えば辺2a)とを合わせても良い。
【0117】
図15の示す例のように、治具30の他の一辺(例えば辺30b)と配向膜付基板2の他の一辺(例えば辺2b)とを合わせても良い。
【0118】
図16に示す例のように、治具30の隣り合う2辺(例えば辺30aおよび30b)と、配向膜付基板2の隣り合う2辺(例えば辺2aおよび2b)とを合わせても良い。
【0119】
但し、治具30の平面形状は、上記各例の四角形に限定されるものではなく、図17、図18に示す例のような円形や、それ以外の形状でも良い。
【0120】
その場合、図17に示す例のように、治具30の表面に位置決め用のマーク66を設けておいて、それに配向膜付基板2の一つの辺(例えば辺2a)を合わせても良い。このマーク66の代わりに、またはそれと共に、配向膜付基板2の他の一辺(例えば辺2b)の位置決め用のマークを設けておいてそれに合わせても良い。
【0121】
図18に示す例のように、治具30に位置決め用の切欠き68を設けておいて、その一つの辺68aと配向膜付基板2の一つの辺(例えば辺2a)とが実質的に直角に交わるように、配向膜付基板2を治具30上に載せても良い。上記辺68aと、配向膜付基板2の一つの辺(例えば辺2a)とが実質的に平行になるように配向膜付基板2を載せても良い。
【0122】
その他、図12〜図18に示した方法から類推される方法で、治具30上に配向膜付基板2を載せても良い。また、配向膜付基板2が落ちない程度であれば、配向膜付基板2が治具30からはみ出しても構わない。
【0123】
以上のことは、後述する他の実施形態についても適用することができる。
【0124】
この実施形態の配向処理方法によれば、前述したように、ビーム電流測定器60で測定するビーム電流が最大となるときの治具30の方向は、イオン源10から引き出されたイオンビーム12の実際の進行方向16を基板表面に投影した方向16aと所定の関係にある。従って、治具30の上記方向を決定してその方向を保った状態で、当該治具30に所定の位置関係で配向膜付基板2を載せることによって、イオン源10から引き出されたイオンビーム12の実際の進行方向16を基板表面に投影した方向16aを、配向膜付基板2の所望の配向処理方向20に合わせて配向処理を施すことができる。
【0125】
しかも、イオン源10から引き出されたイオンビーム12の実際の進行方向16を基板表面に投影した方向16aを、複雑な算出工程を用いて測定する必要がないので、処理が簡単である。また、治具30の上記方向を保った状態で配向膜付基板2を載せるので、治具30の上記方向が具体的に何度であるかを測定する必要はなく、従ってそのような角度を測定する角度測定手段が不要となると共に、角度測定誤差の影響を排除することができる。例えば、前述した回転装置40に回転角度検出器を設けておく必要はなく、従ってそれによる角度検出誤差の問題は生じない。治具30の角度情報を記憶する手段も不要である。更に、治具30が測定手段と基板保持手段とを兼ねているので、配向膜付基板2を保持する基板ホルダ等を別途設ける必要がなく、従って構成を簡素化することができる。
【0126】
次に、配向処理方法の他の実施形態を、上記第1の実施形態との相違点を主体に説明する。
【0127】
配向処理方法の第2の実施形態では、図7を参照して説明した治具30およびビーム電流測定器60を用いて、治具30およびビーム電流測定器60を、治具30の上孔33に上記イオン源10から引き出されたイオンビーム12が入射する場所に位置させた状態で、治具30を、その上板32および下板34を一体で、当該治具30の表面に実質的に直交しておりかつ下孔35からずれた位置の上記軸38を中心に回転させて、イオン源10から引き出されたイオンビーム12を治具30の上孔33および下孔35の両方を通過させて、ビーム電流測定器60で測定するビーム電流が最大となるときの治具30の方向を決定し、当該決定した方向を保った状態で、治具30の表面に所定の位置関係で配向膜付基板2を載せ、かつ当該配向膜付基板2にイオン源10から引き出されたイオンビーム12を照射して当該配向膜付基板2に配向処理を施す。
【0128】
治具30の表面に所定の位置関係で配向膜付基板2を載せる方法の詳細例は前述したとおりである。
【0129】
配向処理方法の第3の実施形態では、図10を参照して説明した治具30およびビーム電流測定器60を用いて、治具30およびビーム電流測定器60を、上記イオン源10から引き出されたイオンビーム12が遮蔽突起42に当たって上記陰44を作る場所に位置させた状態で、治具30を、ビーム電流測定器60と共に、治具30の表面に実質的に直交する上記軸38を中心に回転させて、ビーム電流測定器60で測定するビーム電流が最小となるときの治具30の方向を決定し、当該決定した方向を保った状態で、治具30の表面に所定の位置関係で配向膜付基板2を載せ、かつ当該配向膜付基板2にイオン源10から引き出されたイオンビーム12を照射して当該配向膜付基板2に配向処理を施す。
【0130】
この場合、遮蔽突起42は治具30の端部に設けているので、遮蔽突起42を避けて配向膜付基板2を載せれば良く、従って遮蔽突起42が障害にならずに治具30上に配向膜付基板2を載せることができる。遮蔽突起42を、治具30上での配向膜付基板2の位置決めに利用しても良い。
【0131】
治具30の表面に所定の位置関係で配向膜付基板2を載せる方法の詳細例は前述したとおりである。
【0132】
配向処理方法の第4の実施形態では、図11を参照して説明した治具30およびビーム電流測定器60を用いて、治具30およびビーム電流測定器60を、上記イオン源10から引き出されたイオンビーム12が上記溝46の空間部を通してビーム電流測定器60に入射する場所に位置させた状態で、治具30を、ビーム電流測定器60と共に、治具30の表面に実質的に直交する上記軸38を中心に回転させて、ビーム電流測定器60で測定するビーム電流が最大となるときの治具30の方向を決定し、当該決定した方向を保った状態で、治具30の表面に所定の位置関係で配向膜付基板2を載せ、かつ当該配向膜付基板2にイオン源10から引き出されたイオンビーム12を照射して当該配向膜付基板2に配向処理を施す。
【0133】
この場合、溝46は治具30の表面以下に形成されていて、溝46以外の部分で配向膜付基板2を支持することができるので、溝46が障害にならずに治具30上に配向膜付基板2を載せることができる。
【0134】
治具30の表面に所定の位置関係で配向膜付基板2を載せる方法の詳細例は前述したとおりである。
【0135】
この第2〜第4の実施形態の配向処理方法によれば、前述したように、ビーム電流測定器60で測定するビーム電流が最大(第3の実施形態の場合は最小)となるときの治具30の方向は、イオン源10から引き出されたイオンビーム12の実際の進行方向16を基板表面に投影した方向16aと所定の関係にある。従って、治具30の上記方向を決定してその方向を保った状態で、当該治具30に所定の位置関係で配向膜付基板2を載せることによって、イオン源10から引き出されたイオンビーム12の実際の進行方向16を基板表面に投影した方向16aを、配向膜付基板2の所望の配向処理方向20に合わせて配向処理を施すことができる。
【0136】
しかも、イオン源10から引き出されたイオンビーム12の実際の進行方向16を基板表面に投影した方向16aを、複雑な算出工程を用いて測定する必要がないので、処理が簡単である。また、治具30の上記方向を保った状態で配向膜付基板2を載せるので、治具30の上記方向が具体的に何度であるかを測定する必要はなく、従ってそのような角度を測定する角度測定手段が不要となると共に、角度測定誤差の影響を排除することができる。例えば、前述した回転装置40に回転角度検出器を設けておく必要はなく、従ってそれによる角度検出誤差の問題は生じない。治具30の角度情報を記憶する手段も不要である。更に、治具30が測定手段と基板保持手段とを兼ねているので、配向膜付基板2を保持する基板ホルダ等を別途設ける必要がなく、従って構成を簡素化することができる。
【0137】
配向処理方法の第5の実施形態では、図8を参照して説明した治具30およびビーム電流測定器60を用いて、治具30およびビーム電流測定器60を、治具30の上孔33に上記イオン源10から引き出されたイオンビーム12が入射する場所に位置させた状態で、治具30の少なくとも上板32を、当該治具30の表面に実質的に直交する軸38を中心に回転させて、イオン源10から引き出されたイオンビーム12を治具30の上孔33および下孔35の両方を通過させて、ビーム電流測定器60で測定するビーム電流が最大となるときの治具30の少なくとも上板32の方向を決定し、当該決定した方向を保った状態で、治具30の表面に所定の位置関係で配向膜付基板2を載せ、かつ当該配向膜付基板2にイオン源10から引き出されたイオンビーム12を照射して当該配向膜付基板2に配向処理を施す。
【0138】
この場合、治具30の下板34は、上板32と一体で回転させても良いし、回転させなくても(即ち固定でも)良い。図9は、前述したように、下板34を回転させない場合の例を示す。
【0139】
治具30の表面に所定の位置関係で配向膜付基板2を載せる方法の詳細例は前述したとおりである。
【0140】
配向処理方法の第6の実施形態では、図7を参照して説明した治具30およびビーム電流測定器60を用いて、治具30およびビーム電流測定器60を、治具30の上孔33に上記イオン源10から引き出されたイオンビーム12が入射する場所に位置させた状態で、治具30の少なくとも上板32を、当該治具30の表面に実質的に直交しておりかつ上孔33からずれた位置の軸38を中心に回転させて、イオン源10から引き出されたイオンビーム12を治具30の上孔33および下孔35の両方を通過させて、ビーム電流測定器60で測定するビーム電流が最大となるときの治具30の少なくとも上板32の方向を決定し、当該決定した方向を保った状態で、治具30の表面に所定の位置関係で配向膜付基板2を載せ、かつ当該配向膜付基板2にイオン源10から引き出されたイオンビーム12を照射して当該配向膜付基板2に配向処理を施す。
【0141】
この場合も、治具30の下板34は、上板32と一体で回転させても良いし、回転させなくても(即ち固定でも)良い。
【0142】
治具30の表面に所定の位置関係で配向膜付基板2を載せる方法の詳細例は前述したとおりである。
【0143】
この第6、第7の実施形態の配向処理方法によれば、前述したように、ビーム電流測定器60で測定するビーム電流が最大となるときの治具30の少なくとも上板32の方向は、イオン源10から引き出されたイオンビーム12の実際の進行方向16を基板表面に投影した方向16aと所定の関係にある。従って、治具30の少なくとも上板32の上記方向を決定してその方向を保った状態で、当該治具30に所定の位置関係で配向膜付基板2を載せることによって、イオン源10から引き出されたイオンビーム12の実際の進行方向16を基板表面に投影した方向16aを、配向膜付基板2の所望の配向処理方向20に合わせて配向処理を施すことができる。
【0144】
しかも、イオン源10から引き出されたイオンビーム12の実際の進行方向16を基板表面に投影した方向16aを、複雑な算出工程を用いて測定する必要がないので、処理が簡単である。また、治具30の上記方向を保った状態で配向膜付基板2を載せるので、治具30の上記方向が具体的に何度であるかを測定する必要はなく、従ってそのような角度を測定する角度測定手段が不要となると共に、角度測定誤差の影響を排除することができる。治具30の角度情報を記憶する手段も不要である。更に、治具30が測定手段と基板保持手段とを兼ねているので、配向膜付基板2を保持する基板ホルダ等を別途設ける必要がなく、従って構成を簡素化することができる。
【0145】
もっとも、上記第1〜第6の配向処理方法の実施形態と違って、上記治具30の回転角度γを前述したような角度測定手段によって測定しかつその情報を記憶手段に記憶しておいて、治具30を上記測定場所と基板載置場所との間で搬送したり、治具30上に配向膜付基板2を載せる際は、治具30を回転させてその回転角度γを一旦0度に戻しておき、その後、配向膜付基板2にイオンビーム12を照射して配向処理を施す前に、治具30を回転させて上記回転角度γに設定するようにしても良い。そのようにすると、治具30の搬送や治具30上に配向膜付基板2を載せる動作を回転角度γが0度の状態で行うことができるので、その動作を行うことが容易になる。
【0146】
また、例えば図19に示す例のように、イオン源10を、そのy軸に沿う方向の中心部75を通り、かつイオンビーム12の設計上の進行方向14と実際の進行方向16(図1参照)とを含む平面に垂直な軸76を中心にして矢印Hで示すように可逆式に回転させる投影方向調整用回転機構78を設けておいても良い。
【0147】
この投影方向調整用回転機構78を用いてイオン源10を矢印Hで示すように回転させることによって、イオン源10から引き出されたイオンビーム12の実際の進行方向16を基板表面に投影した方向16aを変化させることが可能である。この場合は、上記回転装置40を設ける必要はなく、治具30は固定しておいて、上記治具30の上孔33および下孔35の両方を通してビーム電流測定器60に入射するイオンビーム12のビーム電流が最大となるように、投影方向調整用回転機構78を用いてイオン源10を上記のように回転させれば良い。
【0148】
更に、図19に示す例のように、イオン源10をy軸に実質的に平行な軸72を中心にして矢印Gで示すように可逆式に回転させて、イオンビーム12の上記照射角度θ(図1参照)を調整する照射角度調整用回転機構74を設けておいても良い。
【0149】
また、上記照射角度調整用回転機構74を用いて次のような調整を行っても良い。即ち、上記のようにしてイオンビーム12の実際の進行方向16を基板表面に投影した方向16aを測定したり、その投影方向16aを所望の配向処理方向20に合わせた後に、更に、照射角度調整用回転機構74を用いてイオン源10を矢印Gで示すように回転させて、上記治具30の上孔33および下孔35の両方を通過してビーム電流測定器60に入射するイオンビーム12のビーム電流が最大となるように調整しても良い。これによって、xz平面内でのイオンビーム12の実際の進行方向を調整して、イオンビーム12のxz平面内での進行方向のずれ、即ち上記照射角度θの設定角度からのずれを修正することができるので、配向膜付基板2に対してより所望の配向処理を実現することが可能になる。
【0150】
この場合、治具30の上孔33および下孔35を、図7を参照して説明した例のように、比較的小さな円形や四角形等にしておくと、イオンビーム12のxy平面内でのずれの検出精度およびxz平面内でのずれの検出精度の両方を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0151】
【図1】配向処理装置の一例を示す概略斜視図である。
【図2】この発明に係るイオンビーム測定方法の一実施形態を示す概略斜視図である。
【図3】図2中の治具を示す概略図であり、(A)は平面図、(B)は線A−Aに沿う断面図である。
【図4】イオンビームの引出し方向と治具の方向との関係の一例を示す概略平面図である。
【図5】イオンビームの引出し方向と治具の方向との関係の他の例を示す概略平面図である。
【図6】治具の他の例を示す概略図であり、(A)は平面図、(B)は線B−Bに沿う断面図である。
【図7】治具の更に他の例を示す概略図であり、(A)は平面図、(B)は線C−Cに沿う断面図である。
【図8】治具の更に他の例を示す概略図であり、(A)は平面図、(B)は線I−Iに沿う断面図である。
【図9】イオンビームの引出し方向と治具の方向との関係の更に他の例を示す概略平面図である。
【図10】治具およびビーム電流測定器の他の例を示す概略図であり、(A)は平面図、(B)は側面図である。
【図11】治具およびビーム電流測定器の更に他の例を示す概略図であり、(A)は平面図、(B)は側面図である。
【図12】この発明に係る配向処理方法の実施形態を説明するための概略平面図である。
【図13】治具に配向膜付基板を所定の位置関係で載せる方法の一例を示す概略平面図である。
【図14】治具に配向膜付基板を所定の位置関係で載せる方法の他の例を示す概略平面図である。
【図15】治具に配向膜付基板を所定の位置関係で載せる方法の更に他の例を示す概略平面図である。
【図16】治具に配向膜付基板を所定の位置関係で載せる方法の更に他の例を示す概略平面図である。
【図17】治具に配向膜付基板を所定の位置関係で載せる方法の更に他の例を示す概略平面図である。
【図18】治具に配向膜付基板を所定の位置関係で載せる方法の更に他の例を示す概略平面図である。
【図19】イオン源を回転させる場合の例を示す概略斜視図である。
【符号の説明】
【0152】
2 配向膜付基板
10 イオン源
12 イオンビーム
14 設計上の進行方向
14a 設計上の進行方向を基板表面に投影した方向
16 実際の進行方向
16a 実際の進行方向を基板表面に投影した方向
20 所望の配向処理方向
30 治具
32 上板
33 上孔
34 下板
35 下孔
38 軸
40 回転装置
42 遮蔽突起
46 溝
60 ビーム電流測定器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン源から引き出されたイオンビームを配向膜付基板の表面に斜方から照射して当該配向膜付基板に配向処理を施す配向処理装置に用いられる測定方法であって、
互いに上下に配置されているものであって上孔を有する上板および下孔を有する下板を備えていて、少なくとも下孔がスリット状をしている治具と、当該治具の上孔および下孔の両方を通過したイオンビームを受けてそのビーム電流を測定するビーム電流測定器とを用いて、
前記治具および前記ビーム電流測定器を、前記治具の上孔に前記イオン源から引き出されたイオンビームが入射する場所に位置させた状態で、前記治具の少なくとも下板を、当該治具の表面に実質的に直交する軸を中心に回転させて、前記イオン源から引き出されたイオンビームを前記治具の上孔および下孔の両方を通過させて、前記ビーム電流測定器で測定するビーム電流が最大となるときの前記治具の下孔の長さ方向を測定することを特徴とするイオンビーム測定方法。
【請求項2】
イオン源から引き出されたイオンビームを配向膜付基板の表面に斜方から照射して当該配向膜付基板に配向処理を施す配向処理装置に用いられる測定方法であって、
互いに上下に配置されているものであって上孔を有する上板および下孔を有する下板を備えていて、同一面に投影したときの上孔と下孔の位置が互いにずれている治具と、当該治具の上孔および下孔の両方を通過したイオンビームを受けてそのビーム電流を測定するビーム電流測定器とを用いて、
前記治具および前記ビーム電流測定器を、前記治具の上孔に前記イオン源から引き出されたイオンビームが入射する場所に位置させた状態で、前記治具の少なくとも下板を、当該治具の表面に実質的に直交しておりかつ前記下孔からずれた位置の軸を中心に回転させて、前記イオン源から引き出されたイオンビームを前記治具の上孔および下孔の両方を通過させて、前記ビーム電流測定器で測定するビーム電流が最大となるときの前記治具の、同一面に投影したときの上孔の中心と下孔の中心とを結ぶ線の方向を測定することを特徴とするイオンビーム測定方法。
【請求項3】
イオン源から引き出されたイオンビームを配向膜付基板の表面に斜方から照射して当該配向膜付基板に配向処理を施す配向処理装置に用いられる測定方法であって、
互いに上下に配置されているものであって上孔を有する上板および下孔を有する下板を備えていて、少なくとも上孔がスリット状をしている治具と、当該治具の上孔および下孔の両方を通過したイオンビームを受けてそのビーム電流を測定するビーム電流測定器とを用いて、
前記治具および前記ビーム電流測定器を、前記治具の上孔に前記イオン源から引き出されたイオンビームが入射する場所に位置させた状態で、前記治具の少なくとも上板を、当該治具の表面に実質的に直交する軸を中心に回転させて、前記イオン源から引き出されたイオンビームを前記治具の上孔および下孔の両方を通過させて、前記ビーム電流測定器で測定するビーム電流が最大となるときの前記治具の上孔の長さ方向を測定することを特徴とするイオンビーム測定方法。
【請求項4】
イオン源から引き出されたイオンビームを配向膜付基板の表面に斜方から照射して当該配向膜付基板に配向処理を施す配向処理装置に用いられる測定方法であって、
互いに上下に配置されているものであって上孔を有する上板および下孔を有する下板を備えていて、同一面に投影したときの上孔と下孔の位置が互いにずれている治具と、当該治具の上孔および下孔の両方を通過したイオンビームを受けてそのビーム電流を測定するビーム電流測定器とを用いて、
前記治具および前記ビーム電流測定器を、前記治具の上孔に前記イオン源から引き出されたイオンビームが入射する場所に位置させた状態で、前記治具の少なくとも上板を、当該治具の表面に実質的に直交しておりかつ前記上孔からずれた位置の軸を中心に回転させて、前記イオン源から引き出されたイオンビームを前記治具の上孔および下孔の両方を通過させて、前記ビーム電流測定器で測定するビーム電流が最大となるときの前記治具の、同一面に投影したときの上孔の中心と下孔の中心とを結ぶ線の方向を測定することを特徴とするイオンビーム測定方法。
【請求項5】
前記治具を構成する上板および下板を一体で回転させる請求項1ないし4のいずれかに記載のイオンビーム測定方法。
【請求項6】
イオン源から引き出されたイオンビームを配向膜付基板の表面に斜方から照射して当該配向膜付基板に配向処理を施す配向処理装置に用いられる測定方法であって、
前記イオン源から引き出されたイオンビームを遮って陰を作る遮蔽突起を有している治具であってその表面に実質的に直交する軸を中心に回転可能な治具と、当該治具に対して、当該治具が所定の回転角度にあるときに前記陰に入る箇所に取り付けられていて、前記イオン源から引き出されたイオンビームを受けてそのビーム電流を測定するビーム電流測定器とを用いて、
前記治具およびビーム電流測定器を、前記イオン源から引き出されたイオンビームが前記遮蔽突起に当たって前記陰を作る場所に位置させた状態で、前記治具を、前記ビーム電流測定器と共に前記軸を中心に回転させて、前記ビーム電流測定器で測定するビーム電流が最小となるときの、前記遮蔽突起の中心と前記ビーム電流測定器の中心とを結ぶ線の方向を測定することを特徴とするイオンビーム測定方法。
【請求項7】
イオン源から引き出されたイオンビームを配向膜付基板の表面に斜方から照射して当該配向膜付基板に配向処理を施す配向処理装置に用いられる測定方法であって、
直線状に伸びた溝を表面に有している治具であってその表面に実質的に直交する軸を中心に回転可能な治具と、当該治具の溝内に位置するように設けられていて、前記イオン源から引き出されたイオンビームを受けてそのビーム電流を測定するビーム電流測定器とを用いて、
前記治具およびビーム電流測定器を、前記イオン源から引き出されたイオンビームが前記溝の空間部を通して前記ビーム電流測定器に入射する場所に位置させた状態で、前記治具を、前記ビーム電流測定器と共に前記軸を中心に回転させて、前記ビーム電流測定器で測定するビーム電流が最大となるときの前記溝の長さ方向を測定することを特徴とするイオンビーム測定方法。
【請求項8】
イオン源から引き出されたイオンビームを配向膜付基板の表面に斜方から照射して当該配向膜付基板に配向処理を施す処理方法であって、
互いに上下に配置されているものであって上孔を有する上板および下孔を有する下板を備えていて、少なくとも下孔がスリット状をしている治具と、当該治具の上孔および下孔の両方を通過したイオンビームを受けてそのビーム電流を測定するビーム電流測定器とを用いて、
前記治具および前記ビーム電流測定器を、前記治具の上孔に前記イオン源から引き出されたイオンビームが入射する場所に位置させた状態で、前記治具を、その上板および下板を一体で、当該治具の表面に実質的に直交する軸を中心に回転させて、前記イオン源から引き出されたイオンビームを前記治具の上孔および下孔の両方を通過させて、前記ビーム電流測定器で測定するビーム電流が最大となるときの前記治具の方向を決定し、
当該決定した方向を保った状態で、前記治具の表面に所定の位置関係で配向膜付基板を載せ、
かつ当該配向膜付基板に前記イオン源から引き出されたイオンビームを照射して当該配向膜付基板に配向処理を施すことを特徴とする配向処理方法。
【請求項9】
イオン源から引き出されたイオンビームを配向膜付基板の表面に斜方から照射して当該配向膜付基板に配向処理を施す処理方法であって、
互いに上下に配置されているものであって上孔を有する上板および下孔を有する下板を備えていて、同一面に投影したときの上孔と下孔の位置が互いにずれている治具と、当該治具の上孔および下孔の両方を通過したイオンビームを受けてそのビーム電流を測定するビーム電流測定器とを用いて、
前記治具および前記ビーム電流測定器を、前記治具の上孔に前記イオン源から引き出されたイオンビームが入射する場所に位置させた状態で、前記治具を、その上板および下板を一体で、当該治具の表面に実質的に直交しておりかつ前記下孔からずれた位置の軸を中心に回転させて、前記イオン源から引き出されたイオンビームを前記治具の上孔および下孔の両方を通過させて、前記ビーム電流測定器で測定するビーム電流が最大となるときの前記治具の方向を決定し、
当該決定した方向を保った状態で、前記治具の表面に所定の位置関係で配向膜付基板を載せ、
かつ当該配向膜付基板に前記イオン源から引き出されたイオンビームを照射して当該配向膜付基板に配向処理を施すことを特徴とする配向処理方法。
【請求項10】
イオン源から引き出されたイオンビームを配向膜付基板の表面に斜方から照射して当該配向膜付基板に配向処理を施す処理方法であって、
互いに上下に配置されているものであって上孔を有する上板および下孔を有する下板を備えていて、少なくとも上孔がスリット状をしている治具と、当該治具の上孔および下孔の両方を通過したイオンビームを受けてそのビーム電流を測定するビーム電流測定器とを用いて、
前記治具および前記ビーム電流測定器を、前記治具の上孔に前記イオン源から引き出されたイオンビームが入射する場所に位置させた状態で、前記治具の少なくとも上板を、当該治具の表面に実質的に直交する軸を中心に回転させて、前記イオン源から引き出されたイオンビームを前記治具の上孔および下孔の両方を通過させて、前記ビーム電流測定器で測定するビーム電流が最大となるときの前記治具の少なくとも上板の方向を決定し、
当該決定した方向を保った状態で、前記治具の表面に所定の位置関係で配向膜付基板を載せ、
かつ当該配向膜付基板に前記イオン源から引き出されたイオンビームを照射して当該配向膜付基板に配向処理を施すことを特徴とする配向処理方法。
【請求項11】
イオン源から引き出されたイオンビームを配向膜付基板の表面に斜方から照射して当該配向膜付基板に配向処理を施す処理方法であって、
互いに上下に配置されているものであって上孔を有する上板および下孔を有する下板を備えていて、同一面に投影したときの上孔と下孔の位置が互いにずれている治具と、当該治具の上孔および下孔の両方を通過したイオンビームを受けてそのビーム電流を測定するビーム電流測定器とを用いて、
前記治具および前記ビーム電流測定器を、前記治具の上孔に前記イオン源から引き出されたイオンビームが入射する場所に位置させた状態で、前記治具の少なくとも上板を、当該治具の表面に実質的に直交しておりかつ前記上孔からずれた位置の軸を中心に回転させて、前記イオン源から引き出されたイオンビームを前記治具の上孔および下孔の両方を通過させて、前記ビーム電流測定器で測定するビーム電流が最大となるときの前記治具の少なくとも上板の方向を決定し、
当該決定した方向を保った状態で、前記治具の表面に所定の位置関係で配向膜付基板を載せ、
かつ当該配向膜付基板に前記イオン源から引き出されたイオンビームを照射して当該配向膜付基板に配向処理を施すことを特徴とする配向処理方法。
【請求項12】
イオン源から引き出されたイオンビームを配向膜付基板の表面に斜方から照射して当該配向膜付基板に配向処理を施す処理方法であって、
前記イオン源から引き出されたイオンビームを遮って陰を作る遮蔽突起を端部に有している治具であってその表面に実質的に直交する軸を中心に回転可能な治具と、当該治具に対して、当該治具が所定の回転角度にあるときに前記陰に入る箇所に取り付けられていて、前記イオン源から引き出されたイオンビームを受けてそのビーム電流を測定するビーム電流測定器とを用いて、
前記治具およびビーム電流測定器を、前記イオン源から引き出されたイオンビームが前記遮蔽突起に当たって前記陰を作る場所に位置させた状態で、前記治具を、前記ビーム電流測定器と共に前記軸を中心に回転させて、前記ビーム電流測定器で測定するビーム電流が最小となるときの前記治具の方向を決定し、
当該決定した方向を保った状態で、前記治具の表面に所定の位置関係で配向膜付基板を載せ、
かつ当該配向膜付基板に前記イオン源から引き出されたイオンビームを照射して当該配向膜付基板に配向処理を施すことを特徴とする配向処理方法。
【請求項13】
イオン源から引き出されたイオンビームを配向膜付基板の表面に斜方から照射して当該配向膜付基板に配向処理を施す処理方法であって、
直線状に伸びた溝を表面に有している治具であってその表面に実質的に直交する軸を中心に回転可能な治具と、当該治具の溝内に位置するように設けられていて、前記イオン源から引き出されたイオンビームを受けてそのビーム電流を測定するビーム電流測定器とを用いて、
前記治具およびビーム電流測定器を、前記イオン源から引き出されたイオンビームが前記溝の空間部を通して前記ビーム電流測定器に入射する場所に位置させた状態で、前記治具を、前記ビーム電流測定器と共に前記軸を中心に回転させて、前記ビーム電流測定器で測定するビーム電流が最大となるときの前記治具の方向を決定し、
当該決定した方向を保った状態で、前記治具の表面に所定の位置関係で配向膜付基板を載せ、
かつ当該配向膜付基板に前記イオン源から引き出されたイオンビームを照射して当該配向膜付基板に配向処理を施すことを特徴とする配向処理方法。
【請求項1】
イオン源から引き出されたイオンビームを配向膜付基板の表面に斜方から照射して当該配向膜付基板に配向処理を施す配向処理装置に用いられる測定方法であって、
互いに上下に配置されているものであって上孔を有する上板および下孔を有する下板を備えていて、少なくとも下孔がスリット状をしている治具と、当該治具の上孔および下孔の両方を通過したイオンビームを受けてそのビーム電流を測定するビーム電流測定器とを用いて、
前記治具および前記ビーム電流測定器を、前記治具の上孔に前記イオン源から引き出されたイオンビームが入射する場所に位置させた状態で、前記治具の少なくとも下板を、当該治具の表面に実質的に直交する軸を中心に回転させて、前記イオン源から引き出されたイオンビームを前記治具の上孔および下孔の両方を通過させて、前記ビーム電流測定器で測定するビーム電流が最大となるときの前記治具の下孔の長さ方向を測定することを特徴とするイオンビーム測定方法。
【請求項2】
イオン源から引き出されたイオンビームを配向膜付基板の表面に斜方から照射して当該配向膜付基板に配向処理を施す配向処理装置に用いられる測定方法であって、
互いに上下に配置されているものであって上孔を有する上板および下孔を有する下板を備えていて、同一面に投影したときの上孔と下孔の位置が互いにずれている治具と、当該治具の上孔および下孔の両方を通過したイオンビームを受けてそのビーム電流を測定するビーム電流測定器とを用いて、
前記治具および前記ビーム電流測定器を、前記治具の上孔に前記イオン源から引き出されたイオンビームが入射する場所に位置させた状態で、前記治具の少なくとも下板を、当該治具の表面に実質的に直交しておりかつ前記下孔からずれた位置の軸を中心に回転させて、前記イオン源から引き出されたイオンビームを前記治具の上孔および下孔の両方を通過させて、前記ビーム電流測定器で測定するビーム電流が最大となるときの前記治具の、同一面に投影したときの上孔の中心と下孔の中心とを結ぶ線の方向を測定することを特徴とするイオンビーム測定方法。
【請求項3】
イオン源から引き出されたイオンビームを配向膜付基板の表面に斜方から照射して当該配向膜付基板に配向処理を施す配向処理装置に用いられる測定方法であって、
互いに上下に配置されているものであって上孔を有する上板および下孔を有する下板を備えていて、少なくとも上孔がスリット状をしている治具と、当該治具の上孔および下孔の両方を通過したイオンビームを受けてそのビーム電流を測定するビーム電流測定器とを用いて、
前記治具および前記ビーム電流測定器を、前記治具の上孔に前記イオン源から引き出されたイオンビームが入射する場所に位置させた状態で、前記治具の少なくとも上板を、当該治具の表面に実質的に直交する軸を中心に回転させて、前記イオン源から引き出されたイオンビームを前記治具の上孔および下孔の両方を通過させて、前記ビーム電流測定器で測定するビーム電流が最大となるときの前記治具の上孔の長さ方向を測定することを特徴とするイオンビーム測定方法。
【請求項4】
イオン源から引き出されたイオンビームを配向膜付基板の表面に斜方から照射して当該配向膜付基板に配向処理を施す配向処理装置に用いられる測定方法であって、
互いに上下に配置されているものであって上孔を有する上板および下孔を有する下板を備えていて、同一面に投影したときの上孔と下孔の位置が互いにずれている治具と、当該治具の上孔および下孔の両方を通過したイオンビームを受けてそのビーム電流を測定するビーム電流測定器とを用いて、
前記治具および前記ビーム電流測定器を、前記治具の上孔に前記イオン源から引き出されたイオンビームが入射する場所に位置させた状態で、前記治具の少なくとも上板を、当該治具の表面に実質的に直交しておりかつ前記上孔からずれた位置の軸を中心に回転させて、前記イオン源から引き出されたイオンビームを前記治具の上孔および下孔の両方を通過させて、前記ビーム電流測定器で測定するビーム電流が最大となるときの前記治具の、同一面に投影したときの上孔の中心と下孔の中心とを結ぶ線の方向を測定することを特徴とするイオンビーム測定方法。
【請求項5】
前記治具を構成する上板および下板を一体で回転させる請求項1ないし4のいずれかに記載のイオンビーム測定方法。
【請求項6】
イオン源から引き出されたイオンビームを配向膜付基板の表面に斜方から照射して当該配向膜付基板に配向処理を施す配向処理装置に用いられる測定方法であって、
前記イオン源から引き出されたイオンビームを遮って陰を作る遮蔽突起を有している治具であってその表面に実質的に直交する軸を中心に回転可能な治具と、当該治具に対して、当該治具が所定の回転角度にあるときに前記陰に入る箇所に取り付けられていて、前記イオン源から引き出されたイオンビームを受けてそのビーム電流を測定するビーム電流測定器とを用いて、
前記治具およびビーム電流測定器を、前記イオン源から引き出されたイオンビームが前記遮蔽突起に当たって前記陰を作る場所に位置させた状態で、前記治具を、前記ビーム電流測定器と共に前記軸を中心に回転させて、前記ビーム電流測定器で測定するビーム電流が最小となるときの、前記遮蔽突起の中心と前記ビーム電流測定器の中心とを結ぶ線の方向を測定することを特徴とするイオンビーム測定方法。
【請求項7】
イオン源から引き出されたイオンビームを配向膜付基板の表面に斜方から照射して当該配向膜付基板に配向処理を施す配向処理装置に用いられる測定方法であって、
直線状に伸びた溝を表面に有している治具であってその表面に実質的に直交する軸を中心に回転可能な治具と、当該治具の溝内に位置するように設けられていて、前記イオン源から引き出されたイオンビームを受けてそのビーム電流を測定するビーム電流測定器とを用いて、
前記治具およびビーム電流測定器を、前記イオン源から引き出されたイオンビームが前記溝の空間部を通して前記ビーム電流測定器に入射する場所に位置させた状態で、前記治具を、前記ビーム電流測定器と共に前記軸を中心に回転させて、前記ビーム電流測定器で測定するビーム電流が最大となるときの前記溝の長さ方向を測定することを特徴とするイオンビーム測定方法。
【請求項8】
イオン源から引き出されたイオンビームを配向膜付基板の表面に斜方から照射して当該配向膜付基板に配向処理を施す処理方法であって、
互いに上下に配置されているものであって上孔を有する上板および下孔を有する下板を備えていて、少なくとも下孔がスリット状をしている治具と、当該治具の上孔および下孔の両方を通過したイオンビームを受けてそのビーム電流を測定するビーム電流測定器とを用いて、
前記治具および前記ビーム電流測定器を、前記治具の上孔に前記イオン源から引き出されたイオンビームが入射する場所に位置させた状態で、前記治具を、その上板および下板を一体で、当該治具の表面に実質的に直交する軸を中心に回転させて、前記イオン源から引き出されたイオンビームを前記治具の上孔および下孔の両方を通過させて、前記ビーム電流測定器で測定するビーム電流が最大となるときの前記治具の方向を決定し、
当該決定した方向を保った状態で、前記治具の表面に所定の位置関係で配向膜付基板を載せ、
かつ当該配向膜付基板に前記イオン源から引き出されたイオンビームを照射して当該配向膜付基板に配向処理を施すことを特徴とする配向処理方法。
【請求項9】
イオン源から引き出されたイオンビームを配向膜付基板の表面に斜方から照射して当該配向膜付基板に配向処理を施す処理方法であって、
互いに上下に配置されているものであって上孔を有する上板および下孔を有する下板を備えていて、同一面に投影したときの上孔と下孔の位置が互いにずれている治具と、当該治具の上孔および下孔の両方を通過したイオンビームを受けてそのビーム電流を測定するビーム電流測定器とを用いて、
前記治具および前記ビーム電流測定器を、前記治具の上孔に前記イオン源から引き出されたイオンビームが入射する場所に位置させた状態で、前記治具を、その上板および下板を一体で、当該治具の表面に実質的に直交しておりかつ前記下孔からずれた位置の軸を中心に回転させて、前記イオン源から引き出されたイオンビームを前記治具の上孔および下孔の両方を通過させて、前記ビーム電流測定器で測定するビーム電流が最大となるときの前記治具の方向を決定し、
当該決定した方向を保った状態で、前記治具の表面に所定の位置関係で配向膜付基板を載せ、
かつ当該配向膜付基板に前記イオン源から引き出されたイオンビームを照射して当該配向膜付基板に配向処理を施すことを特徴とする配向処理方法。
【請求項10】
イオン源から引き出されたイオンビームを配向膜付基板の表面に斜方から照射して当該配向膜付基板に配向処理を施す処理方法であって、
互いに上下に配置されているものであって上孔を有する上板および下孔を有する下板を備えていて、少なくとも上孔がスリット状をしている治具と、当該治具の上孔および下孔の両方を通過したイオンビームを受けてそのビーム電流を測定するビーム電流測定器とを用いて、
前記治具および前記ビーム電流測定器を、前記治具の上孔に前記イオン源から引き出されたイオンビームが入射する場所に位置させた状態で、前記治具の少なくとも上板を、当該治具の表面に実質的に直交する軸を中心に回転させて、前記イオン源から引き出されたイオンビームを前記治具の上孔および下孔の両方を通過させて、前記ビーム電流測定器で測定するビーム電流が最大となるときの前記治具の少なくとも上板の方向を決定し、
当該決定した方向を保った状態で、前記治具の表面に所定の位置関係で配向膜付基板を載せ、
かつ当該配向膜付基板に前記イオン源から引き出されたイオンビームを照射して当該配向膜付基板に配向処理を施すことを特徴とする配向処理方法。
【請求項11】
イオン源から引き出されたイオンビームを配向膜付基板の表面に斜方から照射して当該配向膜付基板に配向処理を施す処理方法であって、
互いに上下に配置されているものであって上孔を有する上板および下孔を有する下板を備えていて、同一面に投影したときの上孔と下孔の位置が互いにずれている治具と、当該治具の上孔および下孔の両方を通過したイオンビームを受けてそのビーム電流を測定するビーム電流測定器とを用いて、
前記治具および前記ビーム電流測定器を、前記治具の上孔に前記イオン源から引き出されたイオンビームが入射する場所に位置させた状態で、前記治具の少なくとも上板を、当該治具の表面に実質的に直交しておりかつ前記上孔からずれた位置の軸を中心に回転させて、前記イオン源から引き出されたイオンビームを前記治具の上孔および下孔の両方を通過させて、前記ビーム電流測定器で測定するビーム電流が最大となるときの前記治具の少なくとも上板の方向を決定し、
当該決定した方向を保った状態で、前記治具の表面に所定の位置関係で配向膜付基板を載せ、
かつ当該配向膜付基板に前記イオン源から引き出されたイオンビームを照射して当該配向膜付基板に配向処理を施すことを特徴とする配向処理方法。
【請求項12】
イオン源から引き出されたイオンビームを配向膜付基板の表面に斜方から照射して当該配向膜付基板に配向処理を施す処理方法であって、
前記イオン源から引き出されたイオンビームを遮って陰を作る遮蔽突起を端部に有している治具であってその表面に実質的に直交する軸を中心に回転可能な治具と、当該治具に対して、当該治具が所定の回転角度にあるときに前記陰に入る箇所に取り付けられていて、前記イオン源から引き出されたイオンビームを受けてそのビーム電流を測定するビーム電流測定器とを用いて、
前記治具およびビーム電流測定器を、前記イオン源から引き出されたイオンビームが前記遮蔽突起に当たって前記陰を作る場所に位置させた状態で、前記治具を、前記ビーム電流測定器と共に前記軸を中心に回転させて、前記ビーム電流測定器で測定するビーム電流が最小となるときの前記治具の方向を決定し、
当該決定した方向を保った状態で、前記治具の表面に所定の位置関係で配向膜付基板を載せ、
かつ当該配向膜付基板に前記イオン源から引き出されたイオンビームを照射して当該配向膜付基板に配向処理を施すことを特徴とする配向処理方法。
【請求項13】
イオン源から引き出されたイオンビームを配向膜付基板の表面に斜方から照射して当該配向膜付基板に配向処理を施す処理方法であって、
直線状に伸びた溝を表面に有している治具であってその表面に実質的に直交する軸を中心に回転可能な治具と、当該治具の溝内に位置するように設けられていて、前記イオン源から引き出されたイオンビームを受けてそのビーム電流を測定するビーム電流測定器とを用いて、
前記治具およびビーム電流測定器を、前記イオン源から引き出されたイオンビームが前記溝の空間部を通して前記ビーム電流測定器に入射する場所に位置させた状態で、前記治具を、前記ビーム電流測定器と共に前記軸を中心に回転させて、前記ビーム電流測定器で測定するビーム電流が最大となるときの前記治具の方向を決定し、
当該決定した方向を保った状態で、前記治具の表面に所定の位置関係で配向膜付基板を載せ、
かつ当該配向膜付基板に前記イオン源から引き出されたイオンビームを照射して当該配向膜付基板に配向処理を施すことを特徴とする配向処理方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2009−230056(P2009−230056A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−78400(P2008−78400)
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【出願人】(302054866)日新イオン機器株式会社 (161)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【出願人】(302054866)日新イオン機器株式会社 (161)
【Fターム(参考)】
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