説明

イオン交換膜充電用組成物、イオン交換膜の製造方法、イオン交換膜及びレドックスフロー電池

【課題】イオン交換膜充電用組成物、イオン交換膜の製造方法、イオン交換膜及びレドックスフロー電池を提供する。
【解決手段】イオン伝導性物質及び水溶性支持体を含むイオン交換膜充電用組成物。前記イオン伝導性物質は、イオン伝導性モノマー及びイオン伝導性ポリマーからなる群から選択された少なくとも1種の化合物を含むことが好ましい。また、前記水溶性支持体は、水溶性モノマー及び水溶性ポリマーからなる群から選択された少なくとも1種の化合物を含むことが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン交換膜充電用組成物、イオン交換膜の製造方法、イオン交換膜及びレドックスフロー電池に関する。さらに詳細には、イオン伝導性物質及び水溶性支持体を含むイオン交換膜充電用組成物、前記組成物を使用するイオン交換膜の製造方法、前記製造方法により製造されたイオン交換膜及び前記イオン交換膜を含むレドックスフロー電池が開示される。
【背景技術】
【0002】
一般的な二次電池は、充電過程を通じて入力された電気エネルギーを化学エネルギーに変換させて保存し、放電過程を通じて前記保存された化学エネルギーを電気エネルギーに変換させて出力する。
【0003】
レドックスフロー電池も、一般的な二次電池と同様に充電過程を通じて入力された電気エネルギーを化学エネルギーに変換させて保存し、放電過程を通じて前記保存された化学エネルギーを電気エネルギーに変換させて出力する。しかし、レドックスフロー電池は、エネルギーを保有している電極活物質が固体状態ではない液体状態で存在するため、電極活物質を保存するタンクが必要であるという点で一般的な二次電池とは異なる。
【0004】
具体的に、レドックスフロー電池では、カソード電解液とアノード電解液とが電極活物質の役割を行い、かかる電解液の最も一般的な例は、遷移金属酸化物溶液である。すなわち、レドックスフロー電池において、カソード電解液とアノード電解液とは、それぞれ酸化状態が変化できるレドックス遷移金属を含む溶液としてタンクに保存される。
【0005】
一方、レドックスフロー電池で電気エネルギーを発生させるセル部分は、燃料電池と同様にカソード/イオン交換膜/アノードの構造を持ち、ポンプにより供給されたカソード電解液とアノード電解液とはそれぞれの電極と接触し、各接触面で各電解液に含まれた遷移金属イオンが酸化または還元され、この時、ギブズの自由エネルギーに該当する部分の起電力が発生する。この時、電極は反応に直接参加せず、単にカソード電解液とアノード電解液とに含まれている遷移金属イオンの酸化/還元を手伝う役割を行う。
【0006】
レドックスフロー電池でイオン交換膜は、反応に直接参加せずに(i)カソード電解液とアノード電解液との間に電荷運搬体であるイオンを速く伝達する機能、(ii)カソードとアノードとの直接的な接触を遮断する隔離の機能、及び最も重要なものとして、(iii)カソード電解液とアノード電解液とに溶けていて反応に直接参加する電解液活性イオンのクロスオーバーを抑制する機能を行う。
【0007】
レドックスフロー電池に使われる従来のイオン交換膜は、主に水系でイオンを選択的に分離するのに応用されており、したがって、水溶液におけるイオン移動特性及び膜物性が最適化されている。しかし、非水系、すなわち、有機系で最適化したイオン移動特性及び膜物性を持つレドックスフロー電池用イオン交換膜についての研究はまだ微々たる実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の一実施形態は、イオン伝導性物質及び水溶性支持体を含むイオン交換膜充電用組成物を提供する。
【0009】
本発明の他の実施形態は、前記イオン交換膜充電用組成物を使用するイオン交換膜の製造方法を提供する。
【0010】
本発明のさらに他の実施形態は、前記イオン交換膜の製造方法により製造されたイオン交換膜を提供する。
【0011】
本発明のさらに他の実施形態は、前記イオン交換膜を含むレドックスフロー電池を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様は、イオン伝導性物質と、水溶性支持体と、を含むイオン交換膜充電用組成物を提供する。
【0013】
前記イオン伝導性物質は、イオン伝導性モノマー及びイオン伝導性ポリマーからなる群から選択された少なくとも1種の化合物を含む。
【0014】
前記イオン伝導性モノマーは、4級アンモニウム塩を含む。
【0015】
前記イオン伝導性ポリマーは、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)、ポリ(アクリルアミド−co−ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)及びポリ(ジメチルアミン−co−エピクロロヒドリン−co−エチレンジアミン)からなる群から選択された少なくとも1種の化合物を含む。
【0016】
前記水溶性支持体は、水溶性モノマー及び水溶性ポリマーからなる群から選択された少なくとも1種の化合物を含む。
【0017】
前記水溶性モノマーは、ビニルアルコール、ビニルアセテート、アクリロニトリル及びメチルメタクリレートからなる群から選択された少なくとも1種の化合物を含む。
【0018】
前記水溶性ポリマーは、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリ(アクリルアミド−co−アクリル酸)、ポリビニルアルコール、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)及びポリ(ナトリウム4−スチレンスルホン酸塩)からなる群から選択された少なくとも1種の化合物を含む。
【0019】
前記イオン伝導性物質対前記水溶性支持体の重量比は、70:30〜30:70である。
【0020】
前記イオン交換膜充電用組成物は、少なくとも1種の溶媒をさらに含む。
【0021】
前記溶媒は、水、メタノール、エタノール、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド及びテトラヒドロフランからなる群から選択された少なくとも1種の化合物を含む。
【0022】
前記溶媒の含有量は、前記イオン伝導性物質及び前記水溶性支持体の総重量100重量部を基準として0〜100重量部である。
【0023】
前記イオン交換膜充電用組成物は、熱重合開始剤または光重合開始剤をさらに含む。
【0024】
本発明の他の態様は、イオン交換性を持つ多孔性基材膜に、前記イオン交換膜充電用組成物を含浸させる段階と、前記含浸されたイオン交換膜充電用組成物を重合させる段階と、を含むイオン交換膜の製造方法を提供する。
【0025】
前記多孔性基材膜は、ポリオレフィン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリイミド及びポリアミドイミドからなる群から選択された少なくとも1種の化合物を含む。
【0026】
本発明のさらに他の態様は、前記イオン交換膜充電用組成物の重合生成物を含むイオン交換膜を提供する。
【0027】
前記イオン交換膜は、1.0×10−4S/cm以上のイオン伝導度を持つ。
【0028】
前記イオン交換膜は、20〜100μmの厚さを持つ。
【0029】
前記イオン交換膜は、陰イオン交換膜である。
【0030】
前記陰イオン交換膜は、BF、PF、CFSO、(CFSOからなる群から選択された少なくとも1種の陰イオンを透過させる。
【0031】
本発明のさらに他の態様は、カソード電解液と、アノード電解液と、前記カソード電解液と前記アノード電解液との間に配されたイオン交換膜を含むレドックスフロー電池を提供する。
【0032】
前記イオン交換膜は、陰イオン交換膜であり、前記カソード電解液と前記アノード電解液のうち少なくとも一つは有機電解液である。
【発明の効果】
【0033】
本発明の一実施形態によるイオン交換膜は、非水系、すなわち、有機系で最適化したイオン移動特性及び膜物性を持つことができる。また、前記イオン交換膜を含むレドックスフロー電池は、充放電効率、電圧効率及びエネルギー効率が高く、容量減少率が低いという利点を持つ。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施形態によるイオン交換膜の製造方法を説明するための図面である。
【図2】本発明の一実施形態によるレドックスフロー電池を概略的に示す図面である。
【図3】実施例1及び比較例2でそれぞれ製造されたレドックスフロー電池のセル抵抗特性を示すインピーダンス・スペクトルである。
【図4】実施例3及び比較例2でそれぞれ製造されたレドックスフロー電池の充放電効率、電圧効率及びエネルギー効率を示すグラフである。
【図5】実施例3で製造されたレドックスフロー電池の充放電サイクル回数による充電容量及び放電容量の変化を示すグラフである。
【図6】イオン伝導性物質のみを使用して製造されたイオン交換膜(比較例1)のSEM断面写真である。
【図7】イオン伝導性物質及び水溶性支持体を使用して製造されたイオン交換膜(実施例3)のSEM断面写真である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の一実施形態によるイオン交換膜充電用組成物を詳細に説明する。
【0036】
本発明の一実施形態によるイオン交換膜充電用組成物は、イオン伝導性物質及び水溶性支持体を含む。本明細書で、「イオン交換膜充電用組成物」とは、後述する「イオン交換性を持つ多孔性基材膜充電用組成物」を意味する。
【0037】
前記イオン伝導性物質は、後述するイオン交換膜の製造に使われて、前記イオン交換膜を介する有効イオンの透過率を高めつつ、前記有効イオンを除外した電解液成分のクロスオーバーを低減させる役割を行う。本明細書で、「有効イオン」とは、イオン交換膜を透過することで後述するレドックスフロー電池の充放電機能を発揮可能にする電解液成分を意味する。これらの有効イオンの例には、BF、PF、CFSO、(CFSOなどがある。
【0038】
前記イオン伝導性物質は、イオン伝導性モノマー及びイオン伝導性ポリマーからなる群から選択された少なくとも1種の化合物を含む。
【0039】
前記イオン伝導性モノマーは、4級アンモニウム塩を含む。
【0040】
前記4級アンモニウム塩は、下記化学式1ないし4からなる群から選択された少なくとも1種の化合物を含む。
【0041】
【化1】

【0042】
前記化学式1で、yに対するxの比(x/y)は、0.1〜0.5である。また、前記化学式1で表示される4級アンモニウム塩の重量平均分子量は、100,000〜500,000である。
【0043】
【化2】

【0044】
前記化学式4で、nは、100〜10,000の整数である。
【0045】
前記イオン伝導性ポリマーは、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)、ポリ(アクリルアミド−co−ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)及びポリ(ジメチルアミン−co−エピクロロヒドリン−co−エチレンジアミン)からなる群から選択された少なくとも1種の化合物を含む。
【0046】
前記水溶性支持体は、前記イオン伝導性物質またはその重合体が持つ硬くて割れやすい性質を補完して、柔軟で破れない性質を持つイオン交換膜を提供する。
【0047】
前記水溶性支持体は、水溶性モノマー及び水溶性ポリマーからなる群から選択された少なくとも1種の化合物を含む。
【0048】
前記水溶性モノマーは、ビニルアルコール、ビニルアセテート、アクリロニトリル及びメチルメタクリレートからなる群から選択された少なくとも1種の化合物を含む。
【0049】
前記水溶性ポリマーは、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリ(アクリルアミド−co−アクリル酸)、ポリビニルアルコール、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)及びポリ(ナトリウム4−スチレンスルホン酸塩)からなる群から選択された少なくとも1種の化合物を含む。
【0050】
前記イオン交換膜充電用組成物は、イオン伝導性モノマーと水溶性モノマーとの組み合わせ、イオン伝導性モノマーと水溶性ポリマーとの組み合わせ、またはイオン伝導性ポリマーと水溶性モノマーとの組み合わせを含む。
【0051】
前記イオン交換膜充電用組成物がイオン伝導性モノマーと水溶性モノマーとの組み合わせを含む場合、最終イオン交換膜は、イオン伝導性モノマーのホモポリマー、水溶性モノマーのホモポリマー、及び/またはイオン伝導性モノマーと水溶性モノマーとのコポリマーを含む。
【0052】
前記イオン交換膜充電用組成物がイオン伝導性モノマーと水溶性ポリマーとの組み合わせを含む場合、最終イオン交換膜は、イオン伝導性モノマーのホモポリマーと水溶性ポリマーとの複合体を含む。
【0053】
前記イオン交換膜充電用組成物がイオン伝導性ポリマーと水溶性モノマーとの組み合わせを含む場合、最終イオン交換膜は、イオン伝導性ポリマーと水溶性モノマーのホモポリマーとの複合体を含む。
【0054】
前記イオン伝導性物質対前記水溶性支持体の重量比は、70:30〜30:70でありうる。前記イオン伝導性物質に対する前記水溶性支持体の重量比が前記範囲以内ならば、均一な組成を持ってイオン移動特性及び膜物性の優秀なイオン交換膜を得ることができる(図7参照)。
【0055】
前記イオン交換膜充電用組成物は、少なくとも1種の溶媒をさらに含む。
【0056】
前記溶媒は、水、メタノール、エタノール、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド及びテトラヒドロフランからなる群から選択された少なくとも1種の化合物を含む。
【0057】
前記溶媒の含有量は、前記イオン伝導性物質及び前記水溶性支持体の総重量100重量部を基準として、0〜100重量部である。前記溶媒の含有量が前記範囲以内ならば、前記イオン交換膜充電用組成物を重合する場合、乾燥過程で乾燥時間を短縮できて均一な膜物性が得られる。
【0058】
前記イオン交換膜充電用組成物は、熱重合開始剤または光重合開始剤をさらに含む。
【0059】
前記熱重合開始剤は、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、重硫酸アンモニウム、重硫酸ナトリウム、アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(1−メチルブチロニトリル−3−スルホン酸ナトリウム)及び4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)からなる群から選択された少なくとも1種を含む。
【0060】
前記光重合開始剤は、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−オキソグルタル酸、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルメタノン及び2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオフェノンからなる群から選択された少なくとも1種を含む。
【0061】
前記熱重合開始剤の含有量は、前記イオン伝導性物質及び前記水溶性支持体の総重量を基準として0.1〜0.5wtppmでありうる。前記熱重合開始剤の含有量が前記範囲以内ならば、均一な組成を持つ重合体(すなわち、イオン交換膜)を得ることができる。
【0062】
前記光重合開始剤の含有量は、前記イオン伝導性物質及び前記水溶性支持体の総重量を基準として0.1〜0.5wtppmでありうる。前記光重合開始剤の含有量が前記範囲以内ならば、均一な組成を持つ重合体(すなわち、イオン交換膜)を得ることができる。
【0063】
以下、図1を参照して、本発明の一実施形態によるイオン交換膜の製造方法を詳細に説明する。
【0064】
図1は、本発明の一実施形態によるイオン交換膜の製造方法を説明するための図面である。
【0065】
図1を参照すれば、本発明の一実施形態によるイオン交換膜の製造方法は、イオン交換性を持つ多孔性基材膜110に、イオン伝導性物質120と水溶性支持体130とを含むイオン交換膜充電用組成物を含浸させる段階、及び前記多孔性基材膜に含浸されたイオン交換膜充電用組成物を重合させる段階を含む。
【0066】
前記多孔性基材膜110は、厚さが60μm以下でありうる。前記多孔性基材膜110の厚さが前記範囲以内ならば、膜抵抗を低減させられる。
【0067】
前記多孔性基材膜110は、ポリオレフィン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリイミド及びポリアミドイミドからなる群から選択された少なくとも1種の化合物を含む。これらの多孔性基材膜は、0.01〜0.1μmの孔隙サイズを持つ。
【0068】
一例として、前記イオン交換膜充電用組成物が熱重合される場合、前記重合段階は、40〜80℃の温度で2〜10時間行われる。この場合、前記重合段階では、前記イオン交換膜充電用組成物に含まれている揮発性物質(例えば、有機溶媒)が除去される。
【0069】
他の一例として、前記イオン交換膜充電用組成物が光重合される場合、前記重合段階は、紫外線の照射下に常温(例えば、20〜30℃)で30分〜1時間行われる。このように、前記イオン交換膜充電用組成物が光重合される場合、前記イオン交換膜の製造方法は、前記重合段階後に乾燥段階をさらに含む。前記乾燥段階は、40〜80℃の温度で2〜10時間行ってもよい。この場合、前記乾燥段階では、前記イオン交換膜充電用組成物に含まれている揮発性物質(例えば、有機溶媒)が除去される。
【0070】
前記イオン交換膜の製造方法は、イオン伝導性物質またはその重合体120に含まれている非有効イオンを、前述した有効イオンに置換する段階をさらに含む。本明細書で、「非有効イオン」とは、「有効イオン」ではないイオン(例えば、Cl)を意味する。前記置換段階は、PC(ポリカーボネート)/TEABF(トリエチルアミンテトラフルオロボラート)またはPC(ポリカーボネート)/LiTFSI(リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド)溶液などを使用して進まれる。
【0071】
前記方法で製造されたイオン交換膜は、前記多孔性基材膜110に比べてイオンの移動通路であるイオンチャンネルの数が多い。
【0072】
以下、本発明の一実施形態によるイオン交換膜を詳細に説明する。
【0073】
本発明の一実施形態によるイオン交換膜は、前述したイオン交換膜充電用組成物の重合生成物を含む。
【0074】
前記イオン交換膜は、1.0×10−4S/cm以上(例えば、2.0×10−4〜5.0×10−4S/cm)のイオン伝導度を持つ。
【0075】
前記イオン交換膜は、20〜100μmの厚さを持つ。
【0076】
前記有機電解液は、非水系溶媒、支持電解質及び金属−リガンド配位化合物を含む。
【0077】
前記非水系溶媒は、ジメチルアセトアミド、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、アセトニトリル、γ−ブチロラクトン(GBL)、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、フルオロエチレンカーボネート及びN,N−ジメチルアセトアミドからなる群から選択された少なくとも1種の化合物を含む。
【0078】
前記支持電解質は、反応に直接参加せずにカソード電解液とアノード電解液との電荷均衡を維持する役割を行う。これらの支持電解質は、LiBF、LiPF、LiClO、LiCFSO、Li(CFSON、TEABF(トリエチルアミンテトラフルオロボラート)、EMPBF(1−エチル−2−メチルピラゾリウムテトラフルオロボラート)、SBPBF(スピロ−(1,1’)−ビピロリジニウムテトラフルオロボラート)、PSPBF(ピペリジン−1−スピロ−1’−ピロリジニウムテトラフルオロボラート)、TBABF(トリブチルアミンテトラフルオロボラート)及びLiTFSI(リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド)からなる群から選択された少なくとも1種の化合物を含む。
【0079】
前記金属−リガンド配位化合物のうち金属は、Fe、Ni、Co、Ru、Zn、Mn、Y、Zr、Ti、Cr、Mg、Ce、Cu、Pb及びVからなる群から選択された少なくとも1種を含む。
【0080】
前記金属−リガンド配位化合物のうちリガンドは、ジピリジル、ターピリジル、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、フェナントロリン及び2,6−ビス(メチルイミダゾール−2−イリデン)ピリジンからなる群から選択された少なくとも1種を含む。
【0081】
酸化還元時、前記金属−リガンド配位化合物から2つ以上の電子が移動できる。
【0082】
前記金属−リガンド配位化合物は、下記化学式で表示される化合物を1種以上含む。
【0083】
【化3】

【化4】

【化5】

【0084】
以下、図2を参照して、本発明の一実施形態によるレドックスフロー電池を詳細に説明する。
【0085】
図2は、本発明の一実施形態によるレドックスフロー電池を概略的に示す図面である。
【0086】
図2を参照すれば、本発明の一実施形態によるレドックスフロー電池は、カソードセル1、アノードセル2、前記両セル1、2を隔離させるイオン交換膜100、及び前記セル1、2とそれぞれ連通するタンク21、22を備える。
【0087】
カソードセル1は、カソード13及びカソード電解液11を含む。
【0088】
アノードセル2は、アノード14及びアノード電解液12を含む。
【0089】
カソード13とアノード14とで起きるレドックス反応によって充電及び放電が起きる。
【0090】
カソード13とアノード14とは、それぞれカーボンフェルト、カーボンクロス、カーボンペーパー及びメタルフォームからなる群から選択された少なくとも一つを含む。
【0091】
カソード電解液11とアノード電解液12のうち少なくとも一つは、前述した有機電解液と同じものでありうる。
【0092】
イオン交換膜100は、前述した有効イオン(すなわち、支持電解質の電荷運搬体イオン)の透過のみ許容し、カソード電解液11及びアノード電解液12に含まれているその他の電解質成分(すなわち、有効イオンを除外した成分)の膜透過を防止する役割を行う。イオン交換膜100は、前述したイオン交換膜と同じものでありうる。また、かかるイオン交換膜100は陰イオン交換膜でありうる。
【0093】
カソードタンク21はカソード電解液11を保存するものであり、管41を通じてカソードセル1と連通する。これと同様に、アノードタンク22は、アノード電解液12を保存するものであり、管42を通じてアノードセル2と連通する。
【0094】
カソード電解液11とアノード電解液12とは、それぞれポンプ31、32を通じて循環する。
【0095】
前記レドックスフロー電池の作動原理は、韓国公開特許第2011−0088881号に開示されている。韓国公開特許第2011−0088881号は、全文が本明細書に統合される。
【0096】
前記レドックスフロー電池は、既存の携帯電話、携帯用コンピュータなどの用途以外に、電気車両などの高容量、高出力が要求される用途にも適しており、既存の内燃機関、燃料電池、スーパーキャパシタなどと結合してハイブリッド車両にも使われうる。また、前記レドックスフロー電池は、高出力、高電圧が要求されるその他のあらゆる用途に使われうる。
【0097】
以下、本発明を下記の実施例を挙げて説明するが、本発明が下記の実施例のみに限定されるものではない。
【実施例】
【0098】
実施例1〜4及び比較例1
(イオン交換膜充電用組成物の製造)
イオン伝導性物質、水溶性支持体、溶媒(10重量%N−メチル−2−ピロリドン(NMP)水溶液)及び熱重合開始剤(アゾビスイソブチロニトリル(AIBN))を、下記の表1のような含量比で混合してイオン交換膜充電用組成物(または、イオン交換膜形成用組成物)を製造した。
【0099】
【表1】

【0100】
(イオン交換膜の製造)
多孔性基材膜(Fumatech社製、FAP4)を脱イオン水で数回洗浄した後、2M KOH溶液に含浸してOHイオンでClイオンを十分に置換させた。次いで、前記置換された多孔性基材膜を再び脱イオン水で洗浄した。以後、前記洗浄された多孔性基材膜から水分を除去した後、乾燥オーブンで乾燥させた。次いで、ガラス板上に前記前処理及び洗浄された多孔性基材膜を位置させた後、前記で製造されたイオン交換膜充電用組成物を60μmの厚さにコーティングした。次いで、前記コーティングされた多孔性基材膜をオーブンに入れて60℃で7時間乾燥させた。以後、PC/TEABF溶液(TEABFの濃度:0.5M)を使用して、前記乾燥された多孔性基材膜に含まれているOHイオン及びClイオンをBFイオンに置換させてイオン交換膜を得た。ただし、比較例1では、ガラス板上に直接イオン交換膜形成用組成物を60μmの厚さにコーティングした後、前記のような乾燥及びイオン置換工程を行ってイオン交換膜を得た。
【0101】
(レドックスフロー電池の製造)
レドックスフロー電池を下記のような方法で製造した。
【0102】
カソード及びアノードとしては、カーボンフェルト(日本黒鉛社製、GF20−3、厚さ=3mm、サイズ=5cm×5cm)を空気雰囲気で500℃で5時間熱処理した電極をそれぞれ使用した。
【0103】
イオン交換膜としては、前記で製造されたイオン交換膜を使用した。
【0104】
カソード電解液としては、PC溶媒に溶けている0.2M Fe(2,2’−ビピリジン)(BF及び0.5M SBPBF塩を使用し、アノード電解液としては、PC溶媒に溶けている0.1M Ni(2,2’−ビピリジン)BF及び0.5M SBPBF塩を使用した。
【0105】
具体的に、ナット一体型エンドプレート上に絶縁体(テフロン(登録商標)フィルム)、集電体(ゴールドプレート)及びバイポーラプレート(グラファイト)を積層した。前記バイポーラプレートとしては、ガス漏れホールが形成されているものを使用した。次いで、5cm×5cmサイズの正方形カーボンフェルト電極を1/2に切って2個の長方形電極を得た後、1個の電極をバイポーラプレートの凹面内に挿入してカソードセルを製造した。これと同じ方法で、残りの1個の電極を使用してアノードセルを製造した。次いで、前記カソードセルに前記で製造されたカソード電解液3mlを注入して、カソードセルを完成した。また、前記アノードセルに前記で製造されたアノード電解液3mlを注入して、アノードセルを完成した。次いで、前記カソードセルとアノードセルとを互いに対向するように配置した後、前記両セルを貫通するように皿ばねが挟まれた4個のボルトを差し込んで、トルクレンチで1.5Nmになるまで対角線順序に前記ボルトを締めて組立てた。組み立て完了後に各電極の注液孔に残りの各電解液を注液した後、前記注液孔をテフロン(登録商標)ボルトで閉塞してレドックスフロー電池を完成した。
【0106】
比較例2
イオン交換膜としてFumatech社製のFAP4を何の処理もなく使用したことを除いては、前記実施例1〜4及び比較例1と同じ方法でレドックスフロー電池を製造した。
【0107】
(評価例)
評価例1:イオン交換膜のイオン伝導度測定
実施例1〜4及び比較例1〜2のイオン交換膜のイオン伝導度を測定して、その結果を下記の表2に表した。イオン伝導度測定機としては、Solartron Analytical社製のSolartron 1260 Impedance spectroscopyを使用した。また、測定周波数範囲は0.1Hz〜1MHzであった。
【0108】
【表2】

【0109】
前記表2を参照すれば、実施例1〜4で製造されたイオン交換膜は、比較例1〜2のイオン交換膜に比べて高いイオン伝導度を持つと分かった。
【0110】
評価例2:レドックスフロー電池のセル抵抗測定
実施例1〜4及び比較例1〜2で製造されたレドックスフロー電池のインピーダンスを測定し、その結果(すなわち、セル抵抗)を下記の表3に表した。また、実施例1及び比較例2で製造されたレドックスフロー電池のインピーダンス・スペクトルを図3に示した。インピーダンス測定機としては、Solartron Analytical社製のSolartron1260 Impedance spectroscopyを使用した。また、測定周波数範囲は0.1Hz〜1MHzであった。
【0111】
図3で、Zは抵抗であり、Zはインピーダンスである。
【0112】
【表3】

【0113】
前記表3及び図3を参照すれば、実施例1〜4で製造されたレドックスフロー電池は、比較例1〜2で製造されたレドックスフロー電池に比べて低いセル抵抗を持つと分かった。
【0114】
評価例3:充放電テスト
前記実施例1〜4及び比較例1〜2で製造されたレドックスフロー電池に対して常温(25℃)で充放電テストを行い、その結果を下記の表4、図4及び図5に示した。
【0115】
充放電条件は下記の通りである。すなわち、前記各レドックスフロー電池を20mAで2.5Vまで定電流で充電させた後、2.0Vまで20mAの定電流で放電させた。前記のような充放電EL10回繰り返した。
【0116】
下記の表4及び図4で充放電効率は、放電電荷量を充電電荷量で割った値の百分率を意味し、電圧効率は、平均放電電圧を平均充電電圧で割った値の百分率を意味し、エネルギー効率は、電圧効率と充放電効率との積を意味する。また、下記の表4で容量減少率は、10番目のサイクルでの放電容量(すなわち、放電電荷量)を最初のサイクルでの放電電荷量で割った値の百分率を意味する。
【0117】
【表4】

【0118】
前記表4を参照すれば、実施例1〜4で製造されたレドックスフロー電池は、比較例1〜2で製造されたレドックスフロー電池に比べて充放電効率、電圧効率及びエネルギー効率が高く、容量減少率は低いと分かった。ただし、比較例1の場合には、セル抵抗測定後にイオン交換膜の物性が劣化して充放電テストを行うことができなかった。
【0119】
評価例4:電解液成分のクロスオーバー評価
前記充放電テスト後にイオン交換膜を透過する非有効イオン(すなわち、Niイオン)の濃度をICP(inductively coupled plasma)で測定し、その結果を下記の表5に表した。具体的に、前記充放電テスト完了後、各カソード電解液に存在するNiイオンの濃度(すなわち、透過電解液の濃度)を測定して、有効イオンを除外した電解液成分のクロスオーバーを評価した。
【0120】
【表5】

【0121】
前記表5を参照すれば、実施例1〜4で製造されたレドックスフロー電池は、比較例1〜2で製造されたレドックスフロー電池に比べて、有効イオンを除外した電解液成分のクロスオーバーが低減したと分かった。
【0122】
評価例5:水溶性支持体の効能評価
水溶性支持逓加イオン交換膜の形成に及ぼす効能を評価するために、水溶性支持体/イオン伝導性物質の重量比が10/90であるイオン交換膜(実施例1)のSEM断面写真と、水溶性支持体/イオン伝導性物質の重量比が40/60であるイオン交換膜(実施例3)のSEM断面写真を、図6及び図7にそれぞれ示した。
【0123】
図6を参照すれば、イオン伝導性物質の重合体Pが多孔性基材膜10の一表面のみに形成されたと分かった。一方、図7を参照すれば、イオン伝導性物質の重合体と水溶性支持体との複合体がイオン交換膜全体に均一に形成されたと分かった。かかる結果から、前記水溶性支持体は、多孔性基材膜に対するイオン交換膜形成用組成物の含浸性を向上させて、膜物性の優秀なイオン交換膜の形成を手伝うということが分かる。
【0124】
以上、図面及び実施例を参照して本発明による望ましい実施形態が説明されたが、これは例示的なものに過ぎず、当業者ならば、これから多様な変形及び均等な他の実施形態が可能であるという点を理解できるであろう。したがって、本発明の保護範囲は特許請求の範囲によって定められねばならない。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明は、イオン交換膜充電用組成物、イオン交換膜の製造方法、イオン交換膜及びレドックスフロー電池関連の技術分野に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0126】
1 カソードセル
2 アノードセル
11 カソード電解液
12 アノード電解液
13 カソード
14 アノード
21、22 タンク
31、32 ポンプ
41、42 菅
100 イオン交換膜
110 多孔性基材膜
120 イオン伝導性物質
130 水溶性支持体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン伝導性物質と、
水溶性支持体と、を含むイオン交換膜充電用組成物。
【請求項2】
前記イオン伝導性物質は、イオン伝導性モノマー及びイオン伝導性ポリマーからなる群から選択された少なくとも1種の化合物を含む請求項1に記載のイオン交換膜充電用組成物。
【請求項3】
前記イオン伝導性モノマーは、4級アンモニウム塩を含む請求項2に記載のイオン交換膜充電用組成物。
【請求項4】
前記4級アンモニウム塩は、下記化学式1ないし4からなる群から選択された少なくとも1種の化合物を含む請求項3に記載のイオン交換膜充電用組成物:
【化1】

前記化学式1で、yに対するxの比(x/y)は、0.1〜0.5である。
【化2】

前記化学式4で、nは、100〜10,000の整数である。
【請求項5】
前記イオン伝導性ポリマーは、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)、ポリ(アクリルアミド−co−ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)及びポリ(ジメチルアミン−co−エピクロロヒドリン−co−エチレンジアミン)からなる群から選択された少なくとも1種の化合物を含む請求項2に記載のイオン交換膜充電用組成物。
【請求項6】
前記水溶性支持体は、水溶性モノマー及び水溶性ポリマーからなる群から選択された少なくとも1種の化合物を含む請求項1に記載のイオン交換膜充電用組成物。
【請求項7】
前記水溶性モノマーは、ビニルアルコール、ビニルアセテート、アクリロニトリル及びメチルメタクリレートからなる群から選択された少なくとも1種の化合物を含む請求項6に記載のイオン交換膜充電用組成物。
【請求項8】
前記水溶性ポリマーは、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリ(アクリルアミド−co−アクリル酸)、ポリビニルアルコール、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)及びポリ(ナトリウム4−スチレンスルホン酸塩)からなる群から選択された少なくとも1種の化合物を含む請求項6に記載のイオン交換膜充電用組成物。
【請求項9】
前記イオン伝導性物質対前記水溶性支持体の重量比は、70:30〜30:70である請求項1に記載のイオン交換膜充電用組成物。
【請求項10】
少なくとも1種の溶媒をさらに含む請求項1に記載のイオン交換膜充電用組成物。
【請求項11】
前記溶媒は、水、メタノール、エタノール、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド及びテトラヒドロフランからなる群から選択された少なくとも1種の化合物を含む請求項10に記載のイオン交換膜充電用組成物。
【請求項12】
前記溶媒の含有量は、前記イオン伝導性物質及び前記水溶性支持体の総重量100重量部を基準として0〜100重量部である請求項11に記載のイオン交換膜充電用組成物。
【請求項13】
熱重合開始剤または光重合開始剤をさらに含む請求項1に記載のイオン交換膜充電用組成物。
【請求項14】
イオン交換性を持つ多孔性基材膜に、請求項1ないし13のうちいずれか1項に記載のイオン交換膜充電用組成物を含浸させる段階と、
前記含浸されたイオン交換膜充電用組成物を重合させる段階と、を含むイオン交換膜の製造方法。
【請求項15】
前記多孔性基材膜は、ポリオレフィン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリイミド及びポリアミドイミドからなる群から選択された少なくとも1種の化合物を含む請求項14に記載のイオン交換膜の製造方法。
【請求項16】
請求項1ないし13のうちいずれか1項に記載のイオン交換膜充電用組成物の重合生成物を含むイオン交換膜。
【請求項17】
前記イオン交換膜は、1.0×10−4S/cm以上のイオン伝導度を持つ請求項16に記載のイオン交換膜。
【請求項18】
前記イオン交換膜は、20〜100μmの厚さを持つ請求項16に記載のイオン交換膜。
【請求項19】
カソード電解液と、
アノード電解液と、
前記カソード電解液と前記アノード電解液との間に配された請求項16に記載のイオン交換膜を含むレドックスフロー電池。
【請求項20】
前記イオン交換膜は、陰イオン交換膜であり、前記カソード電解液と前記アノード電解液のうち少なくとも一つは有機電解液である請求項19に記載のレドックスフロー電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−95918(P2013−95918A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−194795(P2012−194795)
【出願日】平成24年9月5日(2012.9.5)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】129,Samsung−ro,Yeongtong−gu,Suwon−si,Gyeonggi−do,Republic of Korea
【Fターム(参考)】