説明

イオン伝導体

【課題】優れたプロトン伝導性を発現し得るイオン伝導体、このイオン伝導体を適用した電気化学セル及び燃料電池、並びにこの電気化学セルや燃料電池を適用した車両を提供すること。
【解決手段】イオン伝導体は、無機固体酸塩と、分子性アニオン及び分子性カチオンから成る塩とを含有し、該分子性アニオン及び/又は該分子性カチオンがプロティックなイオンである。
電気化学セルは、上記イオン伝導体を適用して成る。
燃料電池は、上記イオン伝導体を適用して成る。
車両は、上記電気化学セル又は上記燃料電池を少なくとも備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン伝導体に係り、更に詳細には、無機固体酸塩と、分子性アニオン及び分子性カチオンから成る塩とを含有し、かかる分子性アニオン及び分子性カチオンの少なくとも一方がプロティックなイオンであるイオン伝導体に関する。
かかるイオン伝導体は、電気化学セルや燃料電池に好適に用いることができる。また、これら電気化学セルや燃料電池は車両への搭載が可能である。
【背景技術】
【0002】
近年、エネルギーを多大に消費している国々においては、環境問題、エネルギー問題の解決が大きな課題となっている。
燃料電池は、発電効率が高く環境負荷抑制に優れており、これらの問題の解決に貢献が期待されている次世代型エネルギー供給デバイスである。
また、燃料電池は、電解質の種類により分類されるが、中でも固体高分子形燃料電池は、小型で且つ高出力を得ることができる。
このような固体高分子形燃料電池において、イオン伝導を担う固体高分子電解質としては、一般に、パーフルオロカーボン系主鎖とスルホン酸基を有する側鎖とを備えるパーフルオロスルホン酸系の高分子電解質が使用されている。
【0003】
パーフルオロスルホン酸系の高分子電解質膜は、優れた化学的安定性とイオン伝導性とを兼ね備えるものであるが、例えば移動体用の動力源と期待される固体高分子形燃料電池への適用には、室温から80℃程度の比較的低い温度領域で運転する必要があるなど種々の制約がある。
また、燃料電池の運転温度が低いと、燃料電池の発電効率が低くなると共に、触媒においてCO被毒が顕著に起こることがある。
【0004】
一方で、燃料電池の運転温度が100℃以上になると、燃料電池の発電効率は向上する。更に、排熱利用が可能となるため、より効率的にエネルギーを活用できる。
燃料電池を自動車などの車両へ適用するに当たり、運転温度を120℃まで上昇させることができると、例えば、発電効率の向上だけでなく、排熱に必要なラジエータ負荷を低減することができる。また、例えば、現行の移動体に使用されているラジエータと同等仕様のものを適用することができるため、システムをコンパクト化できる。
【0005】
また、運転温度の向上は、使用可能な燃料の多様性を向上させる。具体的には、水素ガスを高圧タンク等に貯蔵する方法に比べて、正味のエネルギー密度が高い液体燃料、例えばメタノールやエタノールなどのアルコール類の使用が可能となる。
室温から80℃程度が運転温度領域である現状の固体高分子形燃料電池の燃料としてアルコール類を用いた場合は、燃料極でのアルコール類の酸化反応は、水素の酸化反応に比べ複雑な反応であるため、反応速度は非常に遅い。結果として、水素を燃料として用いた燃料電池に比べ出力密度が低いことがあった。
【0006】
更に、運転温度の向上は、アルコール類の酸化反応を促進することを可能とする。具体的には、室温〜80℃程度では高い出力が得られなかったアルコール類を燃料として使用することが可能となる。
更にまた、これらアルコール類の中でも、エタノールはバイオマスエタノールの利用が可能となる。バイオマスエタノールは、再生可能な自然エネルギーである点、及び、その消費によって大気中の二酸化炭素量を増やさない点から、エネルギー源としての将来性が期待されている。
【0007】
そこで、こうした問題の解決策の一つとして、プロトン伝導体として硫酸水素セシウムを代表とする無機固体酸塩を使用することが知られている。
また、無機固体酸塩の一種であるリン酸二水素セシウムは、230℃付近以上で構造相転移を起こし、超プロトン伝導相と呼ばれる高いプロトン伝導性を有する固相状態に変化することが知られている。この超プロトン伝導相の状態のリン酸二水素セシウムを電解質材料として利用することにより、燃料電池の運転が可能となる。
更に、リン酸二水素セシウムの他にも、硫酸水素セシウム、二硫酸水素三アンモニウム、リン酸二水素硫酸水素二セシウムなどの種々の無機固体酸塩が同様の超プロトン伝導相を発現することが知られている。
【0008】
しかしながら、上記の無機固体酸塩の超プロトン伝導相と呼ばれる固相状態においても、そのプロトン伝導性は十分とは言えず、更なるプロトン伝導性の向上が必要であった。
【0009】
そこで、こうした問題の解決策として、無機固体酸塩のイオン伝導性の向上に関しては、無機固体酸塩とイオン液体とを混合する方法が開示されている(非特許文献1参照。)。
【0010】
【非特許文献1】第32回固体イオニクス討論会要旨集(1B17)、2006年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記非特許文献1において用いられているイオン液体自体は、プロトン伝導性を示さないことから、混合した状態における全イオン伝導度は向上しても、全イオン伝導度に占めるプロトン伝導度の割合は低下する。
そのため、プロトン伝導体としての適用を考えると十分な効果を得ることができないという問題点があった。
【0012】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、優れたプロトン伝導性を発現し得るイオン伝導体、このイオン伝導体を適用した電気化学セル及び燃料電池、並びにこの電気化学セルや燃料電池を適用した車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた。
その結果、無機固体酸塩と、分子性アニオン及び分子性カチオンから成る塩とを含有し、該分子性アニオン及び/又は該分子性カチオンがプロティックなイオンであるイオン伝導体とすることなどにより、上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
即ち、本発明のイオン伝導体は、無機固体酸塩と、分子性アニオン及び分子性カチオンから成る塩とを含有し、該分子性アニオン及び/又は該分子性カチオンがプロティックなイオンであることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の電気化学セルは、上記本発明のイオン伝導体を適用して成ることを特徴とする。
【0016】
更に、本発明の燃料電池は、上記本発明のイオン伝導体を適用して成ることを特徴とする。
【0017】
更にまた、本発明の車両は、上記本発明の電気化学セル又は上記本発明の燃料電池を少なくとも備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、無機固体酸塩と、分子性アニオン及び分子性カチオンから成る塩と、を含有し、該分子性アニオン及び/又は該分子性カチオンがプロティックなイオンであるイオン伝導体とすることなどとしたため、優れたプロトン伝導性を発現し得るイオン伝導体、このイオン伝導体を適用した電気化学セル及び燃料電池、並びにこの電気化学セルや燃料電池を適用した車両を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明のイオン伝導体について詳細に説明する。
本発明のイオン伝導体は、無機固体酸塩と、分子性アニオン及び分子性カチオンから成る塩と、を含有するものである。
そして、かかる分子性アニオン及び分子性カチオンのうちいずれか一方又は双方がプロティックなイオンである。
このような構成とすることにより、優れたプロトン伝導性を発揮することができる。
ここで、「プロティックなイオン」とは、プロトンの受け渡しが可能なイオンをいう。つまり、プロトン受容性又はプロトン供与性を有するイオンである。
また、「分子性アニオン」及び「分子性カチオン」とは、それぞれ多原子アニオン及び多原子カチオンを意味する。
【0020】
上記効果が得られる理由は、次のようなメカニズムによるものと推測している。
まず、分子性アニオン及び分子性カチオンから成る塩は、無機固体酸塩が規則正しく配向する(結晶構造を形成する)ことを阻害し、無機固体酸塩にアモルファス状態を形成させる。これにより、無機固体酸塩中のプロトンの動き易さが向上し、プロトン伝導性が向上する。
また、分子性アニオン及び分子性カチオンのうちいずれか一方又は双方がプロティックなイオンであることにより、分子性アニオン自体や分子性カチオン自体がプロトン伝導体として機能する。
更に、分子性アニオン及び分子性カチオンのうちいずれか一方又は双方がプロティックなイオンであることにより、無機固体酸塩と分子性アニオン自体や分子性カチオン自体とがプロトンの受け渡しを行い、それぞれの分子間をプロトンがホッピングして移動するGrotthussメカニズムによりプロトン伝導することが可能となり、よりプロトン伝導性が向上する。
但し、上記のメカニズムはあくまでも推測に基づくものである。従って、上記のメカニズム以外のメカニズムにより上述のような効果が得られていたとしても、本発明の範囲に含まれることは言うまでもない。
【0021】
なお、上述したような構成とすることにより、優れた耐熱性が得られるという副次的効果も得られる。
【0022】
上記分子性アニオンとしては、特に限定されるものではないが、例えばオキソ酸型アニオン、イミド酸型アニオン、チオ酸型アニオン、ハロゲン化水素酸型アニオンなどを挙げることができる。
これらは一種が単独で含まれていてもよく、複数種が組み合わされて含まれていてもよい。
このような構成とすることにより、より優れたプロトン伝導性と耐熱性を発揮することができる。
【0023】
上記オキソ酸型アニオンとしては、特に限定されるものではないが、例えば硫酸イオン(SO2−)、硫酸一水素イオン(HSO)、リン酸イオン(PO3−)、リン酸一水素イオン(HPO2−)、リン酸二水素イオン(HPO)、セレン酸イオン(SeO2−)、セレン酸一水素イオン(HSeO)、過塩素酸イオン(ClO)、ピロリン酸イオン(P4−)、ピロリン酸一水素イオン(HP3−)、ピロリン酸二水素イオン(H2−)、ピロリン酸三水素イオン(H)、ホスホン酸イオン(HPO2−)、ホスホン酸一水素イオン(HPO)、硝酸イオン(NO)などを挙げることができる。
これらは一種が単独で含まれていてもよく、複数種が組み合わされて含まれていてもよい。
【0024】
なお、上記オキソ酸型アニオンのうちでプロティックなイオンは、硫酸一水素イオン(HSO)、リン酸一水素イオン(HPO2−)、リン酸二水素イオン(HPO)、セレン酸一水素イオン(HSeO)、ピロリン酸一水素イオン(HP3−)、ピロリン酸二水素イオン(H2−)、ピロリン酸三水素イオン(H)、ホスホン酸一水素イオン(HPO)である。
【0025】
上記イミド酸型アニオンとしては、特に限定されるものではないが、例えばビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオン((CFSO)、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドイオン((CSO)、ビス(フルオロスルホニル)イミドイオン((FOS))などを挙げることができる。
これらは一種が単独で含まれていてもよく、複数種が組み合わされて含まれていてもよい。
【0026】
上記チオ酸型アニオンとしては、特に限定されるものではないが、例えばチオメトキシドイオン(CH)、チオエトキシドイオン(C)、チオプロポキシドイオン(C)、チオブトキシドイオン(C)、チオペントキシドイオン(C11)などを挙げることができる。
これらは一種が単独で含まれていてもよく、複数種が組み合わされて含まれていてもよい。
【0027】
上記ハロゲン化水素酸型アニオンとしては、特に限定されるものではないが、例えばフッ素イオン(F)、塩素イオン(Cl)、臭素イオン(Br)、ヨウ素イオン(I)などを挙げることができる。
これらは一種が単独で含まれていてもよく、複数種が組み合わされて含まれていてもよい。
【0028】
これらの中でも、オキソ酸型アニオンを含むことが望ましい。
このような構成とすることにより、より優れたプロトン伝導性と耐熱性を発揮することができる。
なお、上記効果が得られる理由は、次のようなメカニズムによるものと推測している。
分子性アニオンとしてオキソ酸アニオンを含有することにより、無機固体酸塩とのプロトンの受け渡しをより効果的に起こすことができるため、より優れたプロトン伝導性を得ることができる。
但し、上記のメカニズムはあくまでも推測に基づくものである。従って、上記のメカニズム以外のメカニズムにより上述のような効果が得られていたとしても、本発明の範囲に含まれることは言うまでもない。
【0029】
上記分子性カチオンとしては、特に限定されるものではないが、例えば少なくとも1種のヘテロ原子を有するものを挙げることができる。
このような構成とすることにより、より優れたプロトン伝導性と耐熱性を発揮することができる。
ここで、「ヘテロ原子」とは、炭素原子(C)及び水素原子(H)以外の原子であり、代表的には酸素原子(O)、窒素原子(N)、硫黄原子(S)、リン原子(P)、フッ素原子(F)、塩素原子(Cl)、臭素原子(Br)、ヨウ素原子(I)、ホウ素原子(B)、コバルト原子(Co)、アンチモン原子(Sb)などを挙げることができる。
なお、上記効果が得られる理由は、次のようなメカニズムによるものと推測している。
分子性カチオンが、少なくとも1種のヘテロ原子を含むことにより、分子性アニオン及び分子性カチオンから成る塩の融点が低下する。このような塩が液体状態で無機固体酸塩と混合されることにより、無機固体酸塩が規則正しく配向する(結晶構造を形成する)ことをより効果的に阻害し、無機固体酸塩にアモルファス状態を形成させる。これにより無機固体酸塩中のプロトンの動き易さがより向上し、プロトン伝導性がより向上する。
但し、上記のメカニズムはあくまでも推測に基づくものである。従って、上記のメカニズム以外のメカニズムにより上述のような効果が得られていたとしても、本発明の範囲に含まれることは言うまでもない。
【0030】
上記少なくとも1種のヘテロ原子を有する分子性カチオンとしては、特に限定されるものではないが、例えばイミダゾリウム誘導体カチオン、ピリジニウム誘導体カチオン、ピロリジニウム誘導体カチオン、ピペラジニウム誘導体カチオン、アンモニウム誘導体カチオン、ホスホニウム誘導体カチオン、スルホニウム誘導体カチオンなどを挙げることができる。
これらは一種が単独で含まれていてもよく、複数種が組み合わされて含まれていてもよい。
このような構成とすることにより、より優れたプロトン伝導性と耐熱性を発揮することができる。
なお、上記効果が得られる理由は、次のようなメカニズムによるものと推測している。
上記分子性カチオンを含むことにより、分子性アニオン及び分子性カチオンから成る塩の融点がより低下する。このような塩が液体状態で無機固体酸塩と混合されることにより、無機固体酸塩が規則正しく配向する(結晶構造を形成する)ことをより効果的に阻害し、無機固体酸塩にアモルファス状態を形成させる。これにより無機固体酸塩中のプロトンの動き易さがより向上し、プロトン伝導性がより向上する。
また、上記分子性カチオンを含むことにより、これを含む分子性アニオン及び分子性カチオンから成る塩の耐熱性が向上し、より高温での使用が可能となるためとも考えられる。
但し、上記のメカニズムはあくまでも推測に基づくものである。従って、上記のメカニズム以外のメカニズムにより上述のような効果が得られていたとしても、本発明の範囲に含まれることは言うまでもない。
【0031】
上記イミダゾリウム誘導体カチオンとしては、特に限定されるものではないが、例えば下記の一般式(1)で表される一置換イミダゾリウム誘導体カチオン(式中、R11は、炭素数1〜10のアルキル基又はアリールアルキル基を示す。)、下記の一般式(2)で表される一置換イミダゾリウム誘導体カチオン(式中、R21は、炭素数1〜10のアルキル基又はアリールアルキル基を示す。)、下記の一般式(3)で表される二置換イミダゾリウム誘導体カチオン(式中、R31、R32は、同一でも異なっていてもよく、炭素数1〜10のアルキル基又はアリールアルキル基を示す。)などを挙げることができる。
これらは一種が単独で含まれていてもよく、複数種が組み合わされて含まれていてもよい。
【0032】
【化1】

【0033】
なお、上記イミダゾリウム誘導体カチオンのうちでプロティックなイオンは、一置換イミダゾリウム誘導体カチオンである。
【0034】
上記ピリジニウム誘導体カチオンとしては、特に限定されるものではないが、例えば下記の一般式(4)で表されるピリジニウム誘導体カチオン(式中、R41、R42、R43、R44は、同一でも異なっていてもよく、水素又は炭素数1〜10のアルキル基又はアリールアルキル基を示す。)を挙げることができる。
【0035】
【化2】

【0036】
なお、上記ピリジニウム誘導体カチオンのうちでプロティックなイオンは、下記の一般式(5)で表されるピリジニウム誘導体カチオン(式中、R51、R52、R53は、同一でも異なっていてもよく、水素又は炭素数1〜10のアルキル基又はアリールアルキル基を示す。)である。
【0037】
【化3】

【0038】
上記ピロリジニウム誘導体カチオンとしては、特に限定されるものではないが、例えば下記の一般式(6)で表されるピロリジニウム誘導体カチオン(式中、R61、R62は、同一でも異なっていてもよく、水素又は炭素数1〜10のアルキル基又はアリールアルキル基を示す。)を挙げることができる。
【0039】
【化4】

【0040】
なお、上記ピロリジニウム誘導体カチオンのうちでプロティックなイオンは、下記の一般式(7)で表されるピロリジニウム誘導体カチオン(式中、R71、R72の少なくとも1つが水素であり、残りが炭素数1〜10のアルキル基又はアリールアルキル基を示す。)である。
【0041】
【化5】

【0042】
上記ピペラジニウム誘導体カチオンとしては、特に限定されるものではないが、例えば下記の一般式(8)で表されるピペラジニウム誘導体カチオン(式中、R81、R82、R83は、同一でも異なっていてもよく、水素又は炭素数1〜10のアルキル基又はアリールアルキル基を示す。)を挙げることができる。
【0043】
【化6】

【0044】
なお、上記ピペラジニウム誘導体カチオンのうちでプロティックなイオンは、下記の一般式(9)で表されるピペラジニウム誘導体カチオン(式中、R91、R92の少なくとも1つが水素であり、残りが炭素数1〜10のアルキル基又はアリールアルキル基を示す。)である。
【0045】
【化7】

【0046】
上記アンモニウム誘導体カチオンとしては、特に限定されるものではないが、例えば下記の一般式(10)で表されるアンモニウム誘導体カチオン(式中、R101、R102、R103、R104は、同一でも異なっていてもよく、水素又は炭素数1〜10のアルキル基又はアリールアルキル基を示す。)を挙げることができる。
【0047】
【化8】

【0048】
なお、上記アンモニウム誘導体カチオンのうちでプロティックなイオンは、下記の一般式(11)で表されるアンモニウム誘導体カチオン(式中、R111、R112、R113、R114の少なくとも1つが水素であり、残りが炭素数1〜10のアルキル基又はアリールアルキル基を示す。)である。
【0049】
【化9】

【0050】
上記ホスホニウム誘導体カチオンとしては、特に限定されるものではないが、例えば下記の一般式(12)で表されるホスホニウム誘導体カチオン(式中、R121、R122、R123、R124は、同一でも異なっていてもよく、水素又は炭素数1〜10のアルキル基又はアリールアルキル基を示す。)を挙げることができる。
【0051】
【化10】

【0052】
なお、上記ホスホニウム誘導体カチオンのうちでプロティックなイオンは、下記の一般式(13)で表されるホスホニウム誘導体カチオン(式中、R131、R132、R133、R134の少なくとも1つが水素であり、残りが炭素数1〜10のアルキル基又はアリールアルキル基を示す。)である。
【0053】
【化11】

【0054】
上記スルホニウム誘導体カチオンとしては、特に限定されるものではないが、例えば下記の一般式(14)で表されるスルホニウム誘導体カチオン(式中、R141、R142、R143は、同一でも異なっていてもよく、水素又は炭素数1〜10のアルキル基又はアリールアルキル基を示す。)を挙げることができる。
【0055】
【化12】

【0056】
なお、上記スルホニウム誘導体カチオンのうちでプロティックなイオンは、下記の一般式(15)で表されるスルホニウム誘導体カチオン(式中、R151、R152、R153の少なくとも1つが水素であり、残りが炭素数1〜10のアルキル基又はアリールアルキル基を示す。)である。
【0057】
【化13】

【0058】
これらの中でも、ピペラジニウム誘導体カチオンを含むことが望ましい。
このような構成とすることにより、より優れたプロトン伝導性と耐熱性を発揮することができる。
なお、上記効果が得られる理由は、次のようなメカニズムによるものと推測している。
分子性カチオンが、ピペラジニウム誘導体カチオンを含むことにより、分子性アニオン及び分子性カチオンから成る塩の融点がより低下する。このような塩が液体状態で無機固体酸塩と混合されることにより、無機固体酸塩が規則正しく配向する(結晶構造を形成する)ことをより効果的に阻害し、無機固体酸塩にアモルファス状態をより形成させる。これにより無機固体酸塩中のプロトンの動き易さがより向上し、プロトン伝導性がより向上する。
但し、上記のメカニズムはあくまでも推測に基づくものである。従って、上記のメカニズム以外のメカニズムにより上述のような効果が得られていたとしても、本発明の技術的範囲に含まれることは言うまでもない。
【0059】
また、イオン伝導体は、ブレンステッド酸又はブレンステッド塩基を更に含んでいてもよい。
このような構成とすることにより、より優れたプロトン伝導性と耐熱性を発揮することができる。
なお、上記効果が得られる理由は、次のようなメカニズムによるものと推測している。
ブレンステッド酸又はブレンステッド塩基を含むことにより、イオン伝導体中のプロトンの供給サイトや需要サイトが増加し、効率的なプロトン伝導が可能となる。
但し、上記のメカニズムはあくまでも推測に基づくものである。従って、上記のメカニズム以外のメカニズムにより上述のような効果が得られていたとしても、本発明の範囲に含まれることは言うまでもない。
【0060】
上記ブレンステッド酸としては、特に限定されるものではないが、例えば硫酸(HSO)、リン酸(HPO)、セレン酸(HSeO)、ピロリン酸(H)、ホスホン酸(HPO)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸((CFSONH)、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド酸((CSONH)、ビス(フルオロスルホニル)イミド酸((FOS)NH)、メタンチオール(CHSH)、エタンチオール(CSH)、プロパンチオール(CSH)、ブタンチオール(CSH)、ペンタンチオール(C11SH)、フッ化水素酸(HF)、塩化水素酸(HCl)、臭化水素酸(HBr)、ヨウ化水素酸(HI)などを挙げることができる。
【0061】
上記ブレンステッド酸としては、例えば上述したプロティックなイオンの共役酸を含むことが望ましい。
このような構成とすることにより、より優れたプロトン伝導性と耐熱性を発揮することができる。
なお、上記効果が得られる理由は、次のようなメカニズムによるものと推測している。
添加するブレンステッド酸が、プロティックなイオンの共役酸であることにより、プロティックなイオンとのプロトンの受け渡しがより容易に起こり、分子性アニオン及び分子性カチオンのうちいずれか一方自体又は双方自体のプロトン伝導もGrotthussメカニズムによりプロトン伝導となり、更にプロトン伝導性が向上する。
但し、上記のメカニズムはあくまでも推測に基づくものである。従って、上記のメカニズム以外のメカニズムにより上述のような効果が得られていたとしても、本発明の範囲に含まれることは言うまでもない。
【0062】
上記ブレンステッド塩基としては、特に限定されるものではないが、例えばイミダゾール誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、ピロリジン誘導体、ピペラジン誘導体、アミン誘導体、ホスフィン誘導体、スルファン誘導体などを挙げることができる。
【0063】
上記ブレンステッド塩基としては、例えば上述したプロティックなイオンの共役塩基を含むことが望ましい。
このような構成とすることにより、より優れたプロトン伝導性と耐熱性を発揮することができる。
なお、上記効果が得られる理由は、次のようなメカニズムによるものと推測している。
添加するブレンステッド塩基が、プロティックなイオンの共役塩基であることにより、プロティックなイオンとのプロトンの受け渡しがより容易に起こり、分子性アニオン及び分子性カチオンのうちいずれか一方自体又は双方自体のプロトン伝導もGrotthussメカニズムによりプロトン伝導となり、更にプロトン伝導性が向上する。
但し、上記のメカニズムはあくまでも推測に基づくものである。従って、上記のメカニズム以外のメカニズムにより上述のような効果が得られていたとしても、本発明の範囲に含まれることは言うまでもない。
【0064】
上記無機固体酸塩としては、特に限定されるものではないが、長周期型周期律表における第1A族元素のイオン、長周期型周期律表における第4A族元素のイオン、長周期型周期律表における第4B族元素のイオン、アンモニウムイオン若しくは水素イオン、又はこれらの任意の組み合わせに係るイオンを含むカチオンと、オキソ酸型アニオンとを構成要素として含むものを挙げることができる。
また、カチオンの好適例としては、長周期型周期律表における第1A族元素(アルカリ金属)のイオン、アンモニウムイオン、水素イオンを挙げることができる。
このような構成とすることにより、より優れたプロトン伝導性と耐熱性を発揮することができる。
なお、上記効果が得られる理由は、次のようなメカニズムによるものと推測している。
無機固体酸塩自体がプロトン伝導性を有し、プロティックな分子性カチオンや分子性アニオンから成る塩と混合することにより、より効果的にプロトン伝導性を向上させることができる。
但し、上記のメカニズムはあくまでも推測に基づくものである。従って、上記のメカニズム以外のメカニズムにより上述のような効果が得られていたとしても、本発明の技術的範囲に含まれることは言うまでもない。
【0065】
なお、上記第1A族元素とは、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)及びフランシウム(Fr)である。また、上記第4A族元素とは、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)及びハフニウム(Hf)である。更に、上記第4B族元素とは、炭素(C)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)及び鉛(Pb)である。そして、これらの元素は1種が単独で含まれていてもよく、複数種が組み合わされて含まれていてもよい。
【0066】
上記オキソ酸型アニオンとしては、特に限定されるものではないが、例えば硫酸イオン(SO2−)、リン酸イオン(PO3−)、セレン酸イオン(SeO2−)、過塩素酸イオン(ClO)、ピロリン酸イオン(P4−)や、バナジウムイオン(V5+)、ニオブイオン(Nb5+)、モリブデンイオン(Mo6+)、タングステンイオン(W6+)及びタンタルイオン(Ta5+)から成る群より選ばれた少なくとも1種の遷移金属イオンに酸化物イオン(O2−)が4〜6配位して成るポリ酸(イソポリ酸、ヘテロポリ酸など)などを挙げることができる。
【0067】
無機固体酸塩の具体例としては、特に限定されるものではないが、例えばCsHSO、RbHSO、CsHSeO、RbHSeO、CsHPO、CsH(SO、CsH(SeO、RbH(SO、RbH(SeO、ホスホタングステン酸(H(PW1240)・nHO)、SnPなどを挙げることができる。
【0068】
次に、本発明の電気化学セルについて詳細に説明する。
本発明の電気化学セルは、上記本発明のイオン伝導体を用いたものであって、例えば燃料電池、リチウムイオン電池、電気二重層キャパシタ、色素増感型太陽電池、水電解、ハロゲン化水素酸電解、食塩電解、酸素濃縮器、湿度センサー、ガスセンサーなどを挙げることができる。
このような電気化学セルは、イオン伝導体におけるプロトン伝導性が向上し、セルの内部抵抗を低減することが可能となる。
これらの典型例としては燃料電池を挙げることができる。
【0069】
次に、本発明の燃料電池について詳細に説明する。
本発明の燃料電池は、上記本発明のイオン伝導体を用いたものであって、例えば中温の範囲(200〜400℃)に動作温度がある燃料電池を挙げることができる。
このような燃料電池は、イオン伝導体におけるプロトン伝導性が向上し、電池の内部抵抗を低減することができるため、燃料電池の出力を向上させることができる。
【0070】
次に、本発明の車両について詳細に説明する。
本発明の車両は、上記本発明の電気化学セル及び燃料電池のいずれか一方又は双方を備えたものである。
このような車両は、例えば中温の範囲(200〜400℃)に動作温度がある燃料電池を適用したとき、ラジエータの負荷を低減することやラジエータを小型化することができ、環境負荷を低減することができる。
【実施例】
【0071】
以下、本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0072】
(実施例1)
無機固体酸として、リン酸二水素セシウム(株式会社高純度化学研究所製)(以下「CsHPO」と記載することがある。)を用意した。
また、分子性アニオン及び分子性カチオンから成り、分子性アニオンがプロティックなイオンである塩としての1−ブチル−1−メチル−4−メチルピペラジニウム−リン酸(以下「PpzHPO」と記載することがある。)と、PpzHPOに含まれるプロティックなアニオンであるリン酸二水素アニオン(HPO)の共役酸であるリン酸(HPO)とをPpzHPO:HPO=1:2(モル比)の割合で含有する塩(東洋合成工業株式会社製)(以下「PpzHPO−HPO(1:2)」と記載することがある。)を用意した。
CsHPOの粉末とPpzHPO−HPO(1:2)の粉末とをCsHPO:PpzHPO−HPO(1:2)=99:1(モル比)の割合となるように、それぞれ窒素雰囲気のグローブボックス中で秤量した後、乳鉢で混合した。
得られた混合物をペレット成型金型に入れ、98MPaの圧力で圧縮して、本例のペレット状のイオン伝導体を得た。以下、「イオン伝導体A」ということがある。
【0073】
(比較例1)
無機固体酸として、CsHPOを用意した。
CsHPOの粉末を乳鉢ですり、これをペレット成型金型に入れ、98MPaの圧力で圧縮して、本例のペレット状のイオン伝導体を得た。以下、「イオン伝導体B」ということがある。
【0074】
(比較例2)
無機固体酸として、CsHSOを用意した。
また、分子性アニオン及び分子性カチオンから成り、プロティックなイオンを有していない塩として、1−ブチル−3−メチル−イミダゾリウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(関東化学株式会社製)(以下「BMITFSI」と記載することがある。)を用意した。
CsHSOの粉末とBMITFSI(液体)とをCsHSO:BMITFSI=94:6(モル比)の割合となるように、それぞれ窒素雰囲気のグローブボックス中で秤量した後、乳鉢で混合した。
得られた混合物をペレット成型金型に入れ、98MPaの圧力で圧縮して、本例のペレット状のイオン伝導体を得た。以下、「イオン伝導体C」ということがある。
【0075】
[性能評価]
<イオン伝導度の評価>
実施例1及び比較例1で作製したイオン伝導体A及びイオン伝導体Bをそれぞれ銀電極で挟み、乾燥窒素ガス気流下、各例のイオン伝導体のイオン伝導抵抗を交流インピーダンス法により測定した。イオン伝導抵抗の測定結果とペレットの厚み、大きさからイオン伝導度を算出した。得られたイオン伝導度の結果を図1に示す。なお、図1において、例えば「1.0E−01」は、「1.0×10−1」を意味する。
【0076】
図1より、本発明の範囲に含まれる実施例1と、本発明外の比較例1との比較から、実施例1は、比較例1に比べて高いイオン伝導度を示すことが分かる。
なお、実施例1においては、PpzHPO自体がプロトン伝導性を有することから、実施例1は比較例1に比べ高いプロトン伝導性を示すことが分かる。
特に、実施例1の相転移後(約230℃以上)のイオン伝導は、それぞれの塩(CsHPOとPpzHPO−HPO(1:2))単独のイオン伝導度と混合比率から計算されるイオン伝導度よりも高いイオン伝導度を示すことから、実施例1のイオン伝導体は、プロトン伝導性を更に向上させることができるという顕著な効果が得られることが分かる。
以上より、本発明のイオン伝導体は、高いプロトン伝導性を発揮することが分かる。
【0077】
<耐熱性の評価>
実施例1及び比較例1で作製したイオン伝導体A及びイオン伝導体Bをそれぞれ銀電極で挟み、乾燥窒素ガス気流下、250℃で各例のイオン伝導体のイオン伝導抵抗を交流インピーダンス法により測定した。更に、乾燥窒素ガス気流下、250℃の環境に15時間静置した後、各例のイオン伝導体のイオン伝導抵抗を交流インピーダンス法により測定した。イオン伝導抵抗の測定結果とペレットの厚み、大きさからイオン伝導度を算出した。得られた結果を図2に示す。なお、図2において、例えば「1.0E−01」は、「1.0×10−1」を意味する。
【0078】
図2より、本発明の範囲に含まれる実施例1と、本発明外の比較例1との比較から、実施例1は、比較例1に比べて高い耐熱性を有することが分かる。
以上より、本発明のイオン伝導体は、高いプロトン伝導性に加え、高い耐熱性を発揮することができることが分かる。
【0079】
<イオン伝導度の向上性の評価>
まず、実施例1で用いたCsHPOの粉末を乳鉢ですり、これをペレット成型金型に入れ、98MPaの圧力で圧縮して、イオン伝導体を得た。以下、「イオン伝導体A’」ということがある。
また、比較例2で用いたCsHSOの粉末を乳鉢ですり、これをペレット成型金型に入れ、98MPaの圧力で圧縮して、イオン伝導体を得た。以下、「イオン伝導体C’」ということがある。
そして、上記作製したイオン伝導体A、イオン伝導体C、イオン伝導体A’及びイオン伝導体C’をそれぞれ銀電極で挟み、乾燥窒素ガス気流下、180℃及び250℃でイオン伝導体のイオン伝導抵抗を交流インピーダンス法により測定した。イオン伝導抵抗の測定結果とペレットの厚み、大きさからイオン伝導度を算出した。更に、算出されたイオン伝導度からイオン伝導度の向上率を算出した。なお、イオン伝導体Aの向上率は、イオン伝導体A’のイオン伝導度に対するイオン伝導体Aのイオン伝導度の比、また、イオン伝導体Cの向上率は、イオン伝導体C’のイオン伝導度に対するイオン伝導体Cのイオン伝導度の比とした。得られた結果を図3(a)及び(b)に示す。
【0080】
図3(a)より、本発明の範囲に含まれる実施例1と本発明外の比較例2の180℃における比較から、実施例1のイオン伝導体のイオン伝導度の向上率は、比較例2のイオン伝導体のイオン伝導度の向上率に比べて、7倍以上であることが分かる。
また、図3(b)より、本発明の範囲に含まれる実施例1と本発明外の比較例2の250℃における比較から、比較例2のイオン伝導体が分解によりそのイオン伝導度を計測することができなかった一方で、実施例1のイオン伝導体は、イオン伝導度が4倍以上向上していることが分かる。
【0081】
図4は、実施例1と比較例2のイオン伝導体の各無機固体酸塩の相転移後の温度におけるイオン伝導度の向上率の算出結果を示すグラフである。
本発明の範囲に含まれる実施例1のイオン伝導体のイオン伝導度の向上率は、本発明外の比較例2のイオン伝導体のイオン伝導度の向上率に比べて、2倍以上であることが分かる。
かかる結果から、本発明のイオン伝導体においては、分子性アニオン及び分子性カチオンから成る塩が、無機固体酸塩が規則正しく配向する(結晶構造を形成する)ことを阻害し、無機固体酸塩にアモルファス状態を形成させることにより、無機固体酸塩中のプロトンの動き易さを向上させていることに加えて、分子性アニオン及び分子性のカチオンのうちいずれか一方又は双方がプロティックなイオンであることにより、分子性アニオン自体や分子性カチオン自体がプロトン伝導体として機能し、更に、無機固体酸塩と分子性カチオン自体や分子性アニオン自体とがプロトンの受け渡しを行い、それぞれの分子間をプロトンがホッピングして移動するGrotthussメカニズムによりプロトン伝導することが可能となることにより、プロトン伝導性が向上していると推察される。
また、本発明のイオン伝導体は、中温の範囲(200〜400℃)で優れたプロトン伝導性を発揮できることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】実施例1と比較例1のイオン伝導度の結果を示すグラフである。
【図2】実施例1と比較例1のイオン伝導度の結果を示すグラフである。
【図3】実施例1と比較例2のイオン伝導度の向上率の算出結果を示すグラフ(a)及び(b)である。
【図4】実施例1と比較例2のイオン伝導体の各無機固体酸塩の相転移後の温度におけるイオン伝導度の向上率の算出結果を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機固体酸塩と、分子性アニオン及び分子性カチオンから成る塩と、を含有するイオン伝導体であって、
上記分子性アニオン及び/又は上記分子性カチオンがプロティックなイオンである、ことを特徴とするイオン伝導体。
【請求項2】
上記分子性アニオンが、オキソ酸型アニオン、イミド酸型アニオン、チオ酸型アニオン及びハロゲン化水素酸型アニオンから成る群より選ばれる少なくとも1種を含む、ことを特徴とする請求項1に記載のイオン伝導体。
【請求項3】
上記分子性アニオンが、オキソ酸型アニオンを含む、ことを特徴とする請求項1又は2に記載のイオン伝導体。
【請求項4】
上記分子性カチオンが、少なくとも1種のヘテロ原子を有する、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つの項に記載のイオン伝導体。
【請求項5】
上記分子性カチオンが、イミダゾリウム誘導体カチオン、ピリジニウム誘導体カチオン、ピロリジニウム誘導体カチオン、ピペラジニウム誘導体カチオン、アンモニウム誘導体カチオン、ホスホニウム誘導体カチオン、及びスルホニウム誘導体カチオンから成る群より選ばれる少なくとも1種を含む、ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つの項に記載のイオン伝導体。
【請求項6】
上記分子性カチオンが、ピペラジニウム誘導体カチオンを含む、ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つの項に記載のイオン伝導体。
【請求項7】
ブレンステッド酸又はブレンステッド塩基を更に含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つの項に記載のイオン伝導体。
【請求項8】
上記ブレンステッド酸が、上記プロティックなイオンの共役酸である、ことを特徴とする請求項7に記載のイオン伝導体。
【請求項9】
上記ブレンステッド塩基が、上記プロティックなイオンの共役塩基である、ことを特徴とする請求項7に記載のイオン伝導体。
【請求項10】
上記無機固体酸塩が、長周期型周期律表における第1A族、第4A族及び第4B族の元素から成る群より選ばれる少なくとも1種の元素のイオン、アンモニウムイオン並びに水素イオンから成る群より選ばれる少なくとも1種のカチオンと、オキソ酸型アニオンと、を構成要素として含む、ことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1つの項に記載のイオン伝導体。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1つの項に記載のイオン伝導体を適用して成ることを特徴とする電気化学セル。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれか1つの項に記載のイオン伝導体を適用して成ることを特徴とする燃料電池。
【請求項13】
請求項11に記載の電気化学セル又は請求項12に記載の燃料電池を少なくとも備えたことを特徴とする車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−84159(P2010−84159A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−251142(P2008−251142)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】