説明

イオン注入装置とそのイオン注入制御方法

【課題】本発明は、イオンビームの状態が変化した場合でも、ウェーハ処理能力を低下させずにウェーハ面内の注入均一性を良い状態に保つことができ、かつパーティクル発生を極力低減できるイオン注入装置を提供することを目的とする。
【解決手段】イオン注入装置において、装置パラメータをリアルタイムでモニタリングし、装置の各部をコントロールするシステム12を設け、このシステム12に、イオン注入処理中の累積ドーズ量分布を計算し、累積ドーズ量が均一になるようにウェーハ保持部14のY方向メカニカルスキャンの速度を補正する機能と、質量分析部4の磁場を変化させることによりイオンビーム中心位置を制御する機能と、アパーチャー5のサプレッション電圧やビーム電流を変化させることによりイオンビーム径を制御する機能を持たせ、ウェーハ8の注入面内均一性の向上とパーティクルの低減を図る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハにイオンを打ち込むイオン注入装置とそのイオン注入制御方法、特にウェーハの注入面内均一性を改善し、ウェーハ上のパーティクル(汚染粒子)の発生を低減するイオン注入装置とそのイオン注入制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来よりイオン注入装置において、注入均一性の向上やパーティクルの低減は基本的性能であり、これまで様々改善策がなされてきた。
まず、前者の注入均一性の向上技術について述べる。
【0003】
イオン注入装置は主に、イオンを発生させるためのイオン源(イオンソース)および引出電極(加速部)と、所望のイオンを得るための質量分析部と、所望のエネルギーを得るための加減速部と、ウェーハを保持しイオンをウェーハに注入するイオン注入部とにより構成されている。イオン注入部のウェーハ保持方法には複数のウェーハをディスクに保持するバッチ式と1枚のウェーハを保持する枚葉式の2タイプがある。前者のバッチ式ではイオンビームを固定して、ディスクを高速回転しながら半径方向にメカニカルスキャンを行うことでウェーハ面内注入均一性を確保している。このタイプは大電流イオン注入装置に多い。また後者の枚葉式では、イオンビームをスキャンさせるビームスキャン部を設けてイオンビームを1方向にスキャンし、もう一方をメカニカルスキャンするハイブリッドスキャン方式が主流で、中電流イオン注入装置に多い。近年は枚葉式の大電流イオン注入装置も開発されており、中電流イオン注入装置と同様なハイブリッドスキャン方式を採用している装置や、イオンビームをスキャンせずに固定し横方向と縦方向にメカニカルスキャンする装置や、イオンビームを横方向に広げたリボンビームを発生させ、縦方向にメカニカルスキャンする装置等が考案されている。いずれにしても、これらの全ての装置は、少なくとも一方向はメカニカルスキャンを行っている。またウェーハへのイオン注入量を均一にするため、イオンビームの電流を測定し、そのビーム電流量の変動に応じてメカニカルスキャン機構部の速度を変更している。具体的には、いずれの制御システムもイオンビームがウェーハ上で1回スキャン(バッチ装置ではディスクが1回転)する際のドーズ量が一定になるようにメカニカルスキャン速度を制御している。しかしながら、装置の特性等によりウェーハへのイオン注入量がメカニカルスキャン方向に不均一になる場合がある。
【0004】
その課題の解決方法の一つとして、例えば、特許文献1に記載されているものがある。この特許文献1に記載されたイオン注入システムでは、イオン注入処理を終えた後に測定されるウェーハの特性データをフィードバックし、メカニカルスキャン速度を補正し、装置の特性によるイオン注入の不均一さを減少させることを提案している。
【0005】
次に、後者のパーティクルの低減技術について述べる。
前記イオン源や引出電極、イオン注入部のウェーハ保持部等の材質を工夫してパーティクルの発生を抑えると同時に、そのパーティクル発生源を特定してメンテナンスを実施することによりウェーハ上のパーティクル数が増えないように維持管理されている。例えば、特許文献2に記載されている方法では、イオン注入装置のイオン注入部だけでなく、イオン源部、質量分析部、加減速部等のビームライン全体に数箇所パーティクルモニターを設置し、発生箇所を迅速に特定する手段を用いている。さらに、発生箇所が前記ビームライン部にある場合イオンビーム径を引出加速電圧の上昇等により、所定のビーム径に絞り、パーティクルの発生を低減することを提案している。
【特許文献1】特開2001−167727号公報
【特許文献2】特開2004−356297号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の前記イオン注入システムでは、装置の特性データをフィードバックし補正することはできても、イオン注入装置を長期的に稼働させた場合、イオン注入処理中に装置状態の変化により、突発的にイオンビーム電流が変動する場合が少なくなく、突発的なビーム電流の変動が発生した場合は補正ができない。特性を測定するウェーハをイオン注入する際に急激にイオンビーム電流が変化した場合、その特性を元に補正するために、かえって注入量のウェーハ面内の不均一さを招きかねない。また、イオンビームが急激に変動した際の一つの対応策として、イオンビーム電流にインターロックを設け、ある値以上に変動した場合処理を中断するということが考えられるが、その設定値の幅を小さくしすぎると、ウェーハ処理能力が減少することが懸念される。反対にその設定値の幅を大きくすると、均一性が悪くなるという前記と同じ結果を生む。
【0007】
一方、特許文献2に記載のパーティクル低減方法では、イオンビーム径を絞る際に引出加速電圧を上昇させ、後段の加速電圧を減少させるとしているが、イオンビーム電流をより多く取得するために通常状態で既に引出加速電圧が最大である場合が多く、その場合は適用できない。また、大電流イオン注入装置のように後段で減速させる場合は、エネルギーコンタミネーションの増大を招く恐れがある。さらには、イオンビーム径のみではなくイオンビームの中心位置もパーティクル発生に深く関与する。装置メンテナンスでイオン源交換時の取り付けミスや引出電極部等のスリット削れ、デポ物付着等の装置の状態変化により、イオンビームの軌道が偏ってしまい、イオンビームがその軌道上に存在する部品を照射する部分が増え、パーティクルを発生させやすくし、半導体デバイス製品の歩留低下や装置の稼働時間低下を導く。
【0008】
そこで、本発明は、長期運用において刻々と装置の状態が変化し、イオンビームの状態が変化した場合でも、ウェーハ処理能力を低下させずにウェーハ面内の注入均一性を良い状態に保つことができ、かつパーティクル発生を極力低減できるイオン注入装置とそのイオン注入制御方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するために、本発明のイオン注入装置とそのイオン注入制御方法は、イオンソースと、前記イオンソースよりイオンビームを引き出す引出加速部と、前記引出加速部より引き出されたイオンビームより所望のイオンを取得する質量分析部と、イオン注入対象のウェーハを保持するウェーハ保持部と、前記質量分析部から出力されたイオンビームより余分なイオンやパーティクルを除去し、前記ウェーハ保持部に保持されたウェーハまで到達させない機能を有するアパーチャーと、前記ウェーハに注入中に前記イオンビーム電流を測定し、前記ウェーハへのイオン注入量を制御するドーズ量コントローラと、前記ウェーハ保持部を往復駆動させるメカニカルスキャン機構部と、前記メカニカルスキャン機構部により往復駆動されているウェーハ保持部のメカニカルスキャン位置とそのメカニカルスキャン速度を測定し、前記メカニカルスキャン機構部を制御するメカニカルスキャン機構コントローラを設けたイオン注入装置において、メカニカルスキャン機構部によるウェーハ保持部のメカニカルスキャン毎に、リアルタイムで測定されるビーム電流、メカニカルスキャン速度、およびメカニカルスキャン位置により、メカニカルスキャン方向の累積ドーズ量分布を演算し、その分布から累積ドーズ量分布の均一性を演算し、ある値を超えた場合にウェーハ処理を停止する装置インターロック機能を有することを特徴とする。
【0010】
また本発明のイオン注入装置とそのイオン注入制御方法は、ある時点の累積ドーズ量分布から、次以降のメカニカルスキャンにおいて、累積ドーズ量が均一になるようにメカニカルスキャン方向のメカニカルスキャン速度を補正する補正値を求め、その補正量を前記メカニカルスキャン機構コントローラへ伝達するスキャン速度補正演算機能を有することを特徴とする。
【0011】
また本発明のイオン注入装置とそのイオン注入制御方法は、イオンビームの中心位置を質量分析部の磁場の変化により制御することによりビームの軌道を補正する機能を有することを特徴とする。
【0012】
また本発明のイオン注入装置とそのイオン注入制御方法は、装置がウェーハ処理を実施していない期間あるいはメンテナンス後に、質量分析部の磁場の変化とビーム中心位置の関係を取得し、ビームの軌道の異常を判定する機能を有することを特徴とする。
【0013】
また本発明のイオン注入装置とそのイオン注入制御方法は、装置内のパーティクル数を測定するパーティクル数測定部を設け、パーティクル数測定部により測定されたパーティクル数により、前記アパーチャーにおけるサプレッション電圧あるいはビーム電流量を変化させてイオンビームの径を調整する機能を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明のイオン注入装置とそのイオン注入制御方法は、イオン注入中のイオンビーム電流の変動や各スリットの幅の変動によるイオンビームの軌道ずれ等、装置の状態が変化しても、補正機能を有することにより、ウェーハの面内注入均一性が維持でき、さらにパーティクルの発生を極力抑えることができ、その結果、製品歩留や装置稼働率を向上することができる、という効果を有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
[実施の形態1]
図1は本発明の実施の形態1におけるイオン注入装置の概略構成図である。
【0016】
図1に示すように、イオン注入装置は、イオンソース1と、このイオンソース1からイオンビーム3を引き出す引出電極(引出加速部)2と、引出電極2により引き出されたイオンビーム3の所望のイオンを取得する質量分析部4と、質量分析部4から出力されたイオンビームより余分なイオンやパーティクルを除去し(半導体)ウェーハ8まで到達させない機能を有するアパーチャー(開口部)5と、エンドステーション15内のパーティクル数を測定するパーティクルモニター(パーティクル数測定部)6aおよびアパーチャー5の上流部に配置されパーティクル数を測定するパーティクルモニター(パーティクル数測定部)6bと、エンドステーション15内に設けられてウェーハ8にイオンを注入するときのイオンビーム3を受けるドーズファラデー7と、ウェーハ8へのイオン注入中にドーズファラデー7で受けたイオンビーム3の電流値とビーム中心の位置(座標)を測定し、ウェーハ8へのイオン注入量を制御するドーズ量コントローラ9と、エンドステーション15内に設けられてウェーハ8を保持するウェーハ保持部14と、エンドステーション15内に設けられ、スキャンモータ等によってウェーハ保持部14を往復駆動させるメカニカルスキャン機構部11と、ウェーハ保持部14のメカニカルスキャン位置とメカニカルスキャン機構部11のメカニカルスキャン速度を測定しウェーハ保持部14のメカニカルスキャン速度を制御するメカニカルスキャン機構コントローラ10と、パーティクルモニター6a,6bにより測定されたパーティクル数が入力され、引出電極2の引出電圧、質量分析部4の磁場およびアパーチャー5のサプレッション電圧を制御する装置コントローラ13と、装置パラメータをリアルタイムでモニタリングし装置の各部をコントロールする、コンピュータからなるリアルタイムモニタリング及びコントロールシステム12を備えている。
【0017】
上記構成により、イオンソース1から引出電極2によって引き出されたイオンビーム3は質量分析部4、アパーチャー5等を通り、ウェーハ8へ注入される。ウェーハ8にイオンを注入するときのイオンビーム3をドーズファラデー7で受け、メカニカルスキャン機構コントローラ10において、ドーズ量コントローラ9において測定されたビーム電流およびこのメカニカルスキャン機構コントローラ10において測定されたウェーハ保持部14のメカニカルスキャン位置に基づき、メカニカルスキャン速度を演算し、メカニカルスキャン機構11を制御している。
【0018】
このメカニカルスキャン機構コントローラ10におけるメカニカルスキャン速度制御方法を説明する。
速度を調節するメカニカルスキャン機構部11がウェーハ保持部14を往復駆動する方向をY方向(図1では上下方向)とする。X方向はバッチ式装置であればウェーハ保持部14(ディスク)の回転方向(一定速度を保つ)(図1では紙面に垂直な方向)になり、ハイブリッドスキャン方式の枚葉式装置であればイオンビームをスキャンさせる方向となる。枚葉式の場合は、イオンビームの変動に応じてY方向のメカニカルスキャン速度を変化させているが、バッチ式の場合はそれに加え、ウェーハ保持部14(ディスク)の回転速度が一定速度に保持されることにより、周速度がディスクの回転中心付近で遅く、円周付近で速くなることから、それに応じてY方向のメカニカルスキャン速度を変化させて注入量が均一になるように制御する。以下、バッチ式の場合を事例に説明する。
【0019】
メカニカルスキャン機構コントローラ10は、ある設定値に対して得られたビーム電流をI(mA)とすると、各メカニカルスキャン位置Y(mm)において、(1)式に基づいて、X方向の1スキャン(1回転)あたりのドーズ量Dが一定になるようにY方向のメカニカルスキャン速度V(mm/sec)を制御する。
【0020】
=AI/(YV)=一定 [ions/cm2]・・・(1)
ここで、Aは定数で、A=1/(2πnq)、nはイオンの価数、qは電荷素量(1.602×10-19C)である。
【0021】
すなわち、メカニカルスキャン機構コントローラ10は、(1)式により求められるメカニカルスキャン速度V(mm/sec)を速度指令値として、測定されているメカニカルスキャン速度をフィードバックしながら、メカニカルスキャン速度を制御している。
【0022】
上記リアルタイムモニタリング及びコントロールシステム12には、図2に示すように、メカニカルスキャン機構コントローラ10においてリアルタイムで測定されているウェーハ保持部14のメカニカルスキャン位置Yおよびメカニカルスキャン機構部11のメカニカルスキャン速度Vと、ドーズ量コントローラ9で測定されているビーム電流Iが入力されている。
【0023】
そしてリアルタイムモニタリング及びコントロールシステム12には、
Y方向メカニカルスキャン毎に、測定されているビーム電流、メカニカルスキャン速度、およびメカニカルスキャン位置により、Y方向メカニカルスキャンの回数を求め、さらにメカニカルスキャン方向(Y方向)のドーズ量分布を演算し、このドーズ量分布を累積しメカニカルスキャン方向(Y方向)の累積ドーズ量分布を演算する累積ドーズ量分布演算部21と、
Y方向メカニカルスキャン毎に、累積ドーズ量分布演算部21において演算された累積ドーズ量分布より、累積ドーズ量分布の均一性を演算する累積ドーズ量分布均一性演算部22と、
Y方向メカニカルスキャン毎に、累積ドーズ量分布均一性演算部22において演算された累積ドーズ量分布の均一性が、予め設定した設定値(装置インターロックの値)を超えたかどうかを判断し、超えた場合に、ドーズ量コントローラ9とメカニカルスキャン機構コントローラ10と装置コントローラ13へウェーハ処理停止指令を出力して、ウェーハ処理を停止する装置インターロック判断部23
が備えられている。
【0024】
上記構成により、リアルタイムモニタリング及びコントロールシステム12に、Y方向スキャン毎に、測定されているビーム電流、メカニカルスキャン速度およびメカニカルスキャン位置により、メカニカルスキャン方向の累積ドーズ量分布を演算し、その累積ドーズ量分布から累積ドーズ量分布の均一性を演算し、予め設定した設定値(装置インターロックの値)を超えた場合に、ドーズ量コントローラ9とメカニカルスキャン機構コントローラ10と装置コントローラ13へウェーハ処理停止を出力して、ウェーハ処理を停止する装置インターロック機能が備えられている。以下、詳細に説明する。
【0025】
イオン注入処理を開始し、ビーム電流Iが図3のように変動したとする。この事例では、ビーム電流の設定値が10mA、ドーズ量の設定値が1.1×1015 ions/cm2、Y方向スキャン回数22回である。このとき、1回目のY方向スキャン時におけるY方向のドーズ量の分布は、前記(1)式に基づきY方向メカニカルスキャン速度Vを制御して一定にしようとするが、ビーム電流Iの変動が大きいと図4の(a)曲線のように実際には均一にならない。これはディスク1回転(X方向の1スキャン)毎に測定したビーム電流を元に(過去の1回以上のビーム電流測定から現時点のビーム電流Iを算出)、次の1回転するまでのメカニカルスキャン速度を算出し制御するため、その追従性に限界があるためである。
【0026】
累積ドーズ量分布演算部21は、測定されているメカニカルスキャン速度Vにより前記(1)式を用いて、Y方向メカニカルスキャン毎に、各メカニカルスキャン位置Yのドーズ量Dを演算して、図4に示すようにY方向のドーズ量分布を求め、これらドーズ量分布をメカニカルスキャン方向(Y方向)に累積して累積ドーズ量分布を演算する。累積ドーズ量分布均一性演算部22は、Y方向メカニカルスキャン毎にこの累積ドーズ量分布より累積ドーズ量分布の均一性(%)を演算する。
【0027】
図4の(a)の分布のY方向の均一性(%)を求めると、1.2%となる。2回目以降、同様にY方向の累積ドーズ量の分布を求めると、均一性は図5の(a)のようになる。この事例では、図3のように処理が進むにつれてビーム電流Iの変動が小さくなるため、均一性は改善している。これとは反対にビーム電流Iが処理の後半に変動する場合は累積ドーズ量分布の均一性は図5の(b)のようになる。
【0028】
装置インターロック判断部23は、この均一性を元に、累積ドーズ量分布の均一性(%)に上記装置インターロックの値(%)を設け、Y方向スキャン毎に計算する累積ドーズ量分布の均一性(%)が装置インターロックの値(%)を超えた場合に、上記停止指令を出力してウェーハ処理を停止する。
【0029】
なお、装置インターロックの値は一定にする必要は無く、例えば、最終的に0.5%の均一性を保とうとすると、図5の破線のように処理(Y方向スキャン回数)が進むにつれて装置インターロックの値を低くする曲線状の装置インターロックの設定も考えられる。
【0030】
以上のように、本実施の形態1によれば、メカニカルスキャン機構部10によるメカニカルスキャン毎に、リアルタイムで測定されるビーム電流、メカニカルスキャン速度、およびメカニカルスキャン位置により、メカニカルスキャン方向の累積ドーズ量分布を演算して、その分布から累積ドーズ量分布の均一性を演算し、予め設定した設定値(装置インターロックの値)を超えた場合にウェーハ処理を停止する機能を有することより、イオンビーム3の状態が変化した場合でも、常にウェーハ8面内の注入均一性を良好に保つことができ、製品歩留や装置稼働率を向上することができる。
[実施の形態2]
図1〜図4、図6〜図8を参照しながら、本発明の実施の形態2について説明する。なお、全体の装置構成は、実施の形態1と同様であり、同一の符号を付して説明を省略する。
【0031】
前記実施の形態1ではビーム電流の変動が頻繁に発生すると、上記装置インターロックによる停止による稼働率の低下が懸念される。したがって、ビーム変動が発生しても、補正機能により注入均一性を良好な状態に保つことができる装置を実現する。
【0032】
リアルタイムモニタリング及びコントロールシステム12には、図2に示すように、累積ドーズ量分布演算部21により求められたある時点(Y方向メカニカルスキャン)の累積ドーズ量分布から、次以降のメカニカルスキャンにおいて、累積ドーズ量が均一になるようにメカニカルスキャン方向の、メカニカルスキャン機構部11のメカニカルスキャン速度(指令値)を補正する補正量を求め、その補正量をメカニカルスキャン機構コントローラ10へ出力し、メカニカルスキャン速度を補正するメカニカルスキャン速度演算補正部24が設けられている。以下、詳細に説明する。
【0033】
イオン注入処理を開始し、1回目のY方向スキャンが終了した際に、メカニカルスキャン速度演算補正部24は、累積ドーズ量分布演算部21により求められたY方向の累積ドーズ量の分布D(Y)により、D(Y)の平均値D1mを算出し、累積ドーズ量の分布D(Y)から補正量ΔD(Y)を求める。
【0034】
ΔD(Y)=D1m−D(Y)・・・(2)
メカニカルスキャン速度演算補正部24は、この累積ドーズ量の分布補正量ΔD(Y)を上記補正量としてメカニカルスキャン機構コントローラ10へ出力する。メカニカルスキャン機構コントローラ10は、2回目のスキャンを行う場合にはこの累積ドーズ量の分布補正量ΔD(Y)を加味した累積ドーズ量が一定になるようにメカニカルスキャン速度VYを制御する。すなわち、(3)式によりメカニカルスキャン速度VYを制御する。
【0035】
+ΔD(Y)=AI/(YVY)+ΔD(Y)=一定 [ions/cm2
・・・(3)
同様に、Y方向メカニカルスキャン毎に、メカニカルスキャン速度演算補正部24は、累積ドーズ量分布演算部21により求められたY方向の累積ドーズ量の分布D(Y)により、D(Y)の平均値DNを算出し、累積ドーズ量の分布D(Y)から補正量ΔD(Y)を求め、メカニカルスキャン機構コントローラ10へ出力する。メカニカルスキャン機構コントローラ10は、(N+1)回目のスキャン時には累積ドーズ量分布DN(Y)から得られる補正量ΔDN(Y)を加味した累積ドーズ量が一定になるようにメカニカルスキャン速度VYを制御する。すなわち、(4)式によりメカニカルスキャン速度VYを制御する。
【0036】
+ΔDN(Y)=AI/(YVY)+ΔDN(Y)=一定 [ions/cm2
・・・(4)
これらの式を用いて、実際にビーム電流が変動した場合の注入均一性の改善効果をシミュレーションした結果について以下に示す。1回目のY方向のドーズ量分布から、補正量を前記(2)式について求めると、図4の(b)の曲線のようになる。この図4の(b)の1回目のスキャン時のドーズ補正量を元に、式(4)に基づいて求められた2回目スキャン時のY方向メカニカルスキャン速度の分布は図6の(b)のようになる。参考に補正無しの場合も同図6の(a)に示す。また補正が有る場合と補正が無い場合のY方向メカニカルスキャン速度の差を図6の(c)に示す。このY方向メカニカルスキャン速度の補正を2回目のスキャン時に加味して注入を行うと、2回目終了時の累積ドーズ量の分布は図7の(b)のようになる{補正無しの場合は同図7の(a)}。このような補正を繰り返し、最終的にイオン注入終了後の累積ドーズ量の分布は図8の(b)のようになる{補正無しの場合は同図8の(a)}。
【0037】
以上のように本実施の形態2によれば、ある時点(本実施の形態2では、1回目のY方向スキャン時点としているが、2回目以降としてもよい)の累積ドーズ量分布から、次以降のメカニカルスキャンにおいて、累積ドーズ量が均一になるようにメカニカルスキャン方向のメカニカルスキャン速度(Y方向のメスニカルスキャン速度)を補正する補正値を求め、その補正量をメカニカルスキャン機構コントローラ10へ伝達するスキャン速度補正演算機能を有することにより、イオンビームの状態が変化した場合でも、Y方向の累積ドーズ量分布の均一性を飛躍的に改善することができ、製品歩留や装置稼働率を向上することができる。上記実施例では、Y方向のメスニカルスキャン速度の補正を行うことにより、Y方向の累積ドーズ量分布の均一性は、0.45%から0.01%へ飛躍的に改善している。
【0038】
ビーム電流の変動が非常に大きい場合には、前記Y方向のメスニカルスキャン速度の補正量が大きくなり、それに相当する補正注入量を1度で補正してしまうことになる。その場合、イオンビームの密度や形状が変化するため、実際のシート抵抗やサーマウェーブ値等のウェーハ特性において不均一性を残す可能性がある。また、枚葉の大電流イオン注入装置等では、イオンビームを同じ場所に長時間照射すると、チャージアップが発生することも懸念される。したがって、できるだけ補正を残りのY方向スキャン時に分散し、メカニカルスキャン速度の急激な変動を避ける必要が生じることも想定される。すなわち、累積ドーズ量分布の変動値にある一定の閾値を設け、それ以上の変動値が発生した場合は、1回のY方向スキャンが完了する毎に算出されたドーズ量の補正をその次のY方向のスキャン時に全て補正するのではなく、設定ドーズ量と残りドーズ量から計算できる残りのスキャン回数Nで割ったもので補正することにより、補正時に発生する可能性のある不均一性を減少させることができる。式(4)と同様な記述をすると、式(5)のようになり、これに基づいてメカニカルスキャン速度VYを制御する。
【0039】
+ΔDN(Y)/N=AI/(YVY)+ΔDN(Y)/N=一定[ions/cm2
・・・(5)
メカニカルスキャン速度演算補正部24は、ΔDN(Y)/Nを演算してメカニカルスキャン機構コントローラ10へ出力する。
【0040】
なお、実施の形態2の場合、イオン注入処理の最終のY方向スキャン時にビーム電流が変動する場合はその次のスキャン処理が無いため、それによるドーズ量の不均一性を補正することができない。また、残りのスキャン回数で補正を分散させる場合は、イオン注入処理の後半にビーム電流の変動が大きくなり、さらに変動量が発散するような場合は、不均一性を十分に補正できないという面がある。不均一性やチャージアップの問題が発生してしまうようなビーム電流の大きな変動が発生した場合は前記実施の形態1のように装置インターロックを設けイオン注入処理を中断すべきである。
【0041】
また、枚葉式イオン注入装置の場合、1スキャンあたりのドーズ量は、Y方向の位置の依存性が無く、次式のようなより簡単な式となる。
+ΔDN(Y)=I/(nqWVY)+ΔDN(Y)=一定[ions/cm2]・・・(6)
あるいは、
+ΔDN(Y)/N=I/(nqWVY)+ΔDN(Y)/N=一定
[ions/cm2]・・・(7)
ここでWはX方向のスキャン幅である。このスキャン幅は、メカニカルスキャン幅あるいはビームスキャン幅の場合があり、リボンビーム等のようにイオンビームをX方向に広げたビームを発生させる装置に対してはビームの幅となる。
[実施の形態3]
図1、図2、図9〜図10を参照しながら、本発明の実施の形態3について説明する。なお、全体の装置構成は、実施の形態1と同様であり、同一の符号を付して説明を省略する。
【0042】
リアルタイムモニタリング及びコントロールシステム12には、図2に示すように、装置コントローラ13より質量分析部4において印加している質量分析部4の磁場が入力され、ドーズ量コントローラ9より測定されているY方向のイオンビーム3の中心位置(Y方向のビーム中心位置)が入力されている。
【0043】
そして、リアルタイムモニタリング及びコントロールシステム12には、図2に示すように、
入力されている質量分析部4の磁場とY方向のビーム中心位置により、ビームの軌道を補正する、質量分析部4において印加する磁場の補正値を求めるビーム軌道補正部25と、
装置のスタンバイ中(ウェーハ処理を実施していない期間)あるいは装置メンテナンス後の立ち上げ中に、測定される質量分析部4の磁場とY方向のビーム中心位置により、ビームの軌道の異常判定をするビーム軌道異常判定部26
が設けられている。
【0044】
図1に示すようにイオンソース1から出たイオンビーム3はその軌道がずれるとその経路にある引出電極2やアパーチャー5等のスリットに照射される割合が高くなり、パーティクルが発生しやすくなる。図9にイオンビーム3の中心のY方向偏差とパーティクル数(この場合はパーティクルモニター6aにより取得)の関係を示す。図9よりビーム中心がずれるとパーティクルが発生しやすくなることが分かる。図10に質量分析部4の磁場とビーム中心のY方向位置の関係(特性)を示す。
【0045】
ビーム軌道補正部25には、図10の(a)に示す正常な場合の質量分析部4の磁場とビーム中心のY方向位置の関係が予め記憶されており、Y方向偏差により、質量分析部4の磁場の設定値(図10では1.250kG)からの偏差量を求め、磁場の補正値として装置コントローラ13へ出力する。装置コントローラ13は、この磁場の補正値に基づいて質量分析部4の磁場を変化させてイオンビーム3の中心位置を制御することによりビームの軌道を補正する。
【0046】
このように、図10の(a)の関係により質量分析部4の磁場を変化させることによって、イオンビーム3の中心位置を制御することができ、ビーム3の軌道を常に制御することによりパーティクルの発生を低減することができる。
【0047】
さらに、質量分析部4の磁場とイオンビームの中心位置の関係を利用するとイオンビームの軌道ずれの判定が可能になる。図10の(b)はイオンビームの軌道が異常な場合である。図10の(b)のようにイオンソース1から引き出されたイオンビーム3の軌道がずれると、質量分析部4の磁場を変化させても、イオンビーム3の中心位置が制御できない。
【0048】
ビーム軌道異常判定部26は、装置のスタンバイ中あるいは装置メンテナンス後の立ち上げ中に、装置コントローラ13にテスト指令と出力して質量分析部4の磁場を変化させてイオンビーム3の中心位置のデータを取得し、図10の(a)のような線形の関係があれば正常と判断し、図10の(b)のような片側に偏る関係になれば異常と判断する。
【0049】
以上のように本実施の形態3によれば、イオンビーム3の中心位置を質量分析部4の磁場の変化により制御することによりイオンビーム3の軌道を常に制御(補正)する機能を有することにより、パーティクルの発生を低減することができ、また装置がウェーハ処理を実施していない期間あるいはメンテナンス後に、質量分析部4の磁場を変化とビーム中心位置の関係を取得し、ビームの軌道の異常判定をする機能を有することにより、イオンビーム3の軌道の異常を検出することができ、製品歩留や装置稼働率を向上することができる。
【0050】
なお、本実施の形態3では、ビーム軌道補正部25は、質量分析部4において印加する磁場の補正値を求めているが、図10の(a)の特性により、直接、質量分析部4において印加する磁場の指令値を求めることも可能である。
[実施の形態4]
図1、図2、図11〜図14を参照しながら、本発明の実施の形態4について説明する。なお、全体の装置構成は、実施の形態1と同様であり、同一の符号を付して説明を省略する。
【0051】
リアルタイムモニタリング及びコントロールシステム12には、図2に示すように、装置コントローラ13を介してパーティクルモニター6a,6bにより測定されたアパーチャー5の上流部と下流部のパーティクル数が入力され、ドーズ量コントローラ9より測定されているイオンビーム3のビーム電流値が入力されている。
【0052】
そして、リアルタイムモニタリング及びコントロールシステム12には、図2に示すように、
パーティクルモニター6a,6bにより測定されたパーティクル数により、アパーチャー5におけるサプレッション電圧を設定して装置コントローラ13へ出力し、イオンビーム径を調整するための第1イオンビーム径調整部27と、
予め、イオン種、加速エネルギーの異なる各条件で取得されたビーム電流量とビーム幅の関係を取得して記憶されており、パーティクルモニター6a,6bにより測定されたパーティクル数により、ビーム電流量とビーム幅の関係に基づいてビーム電流量を設定してドーズ量コントローラ9へ出力し、イオンビームの径を調整する第2イオンビーム径調整部28と
が設けられている。
【0053】
図11〜図12にアパーチャー5(図1参照)に印加されるサプレッション電圧とイオンビームの幅の関係を示す。
図11〜図12より、サプレッション電圧を増加させるとイオンビームの幅が大きくなることが分かる。サプレッション電圧を負荷する目的の一つは、アパーチャー5の上流にあるパーティクルをアパーチャー5の下流へ運ばないようにさせることにある。したがって、サプレッション電圧を増加させると、アパーチャー5の上流からのパーティクルを低減できる。しかし、ビーム幅が大きくなるため、アパーチャー5の下流にある例えば、プラズマシャワーチューブ等にビームが照射しやすくなり、パーティクルが発生しやすくなる。反対にサプレッション電圧を減少させると、アパーチャー5の下流でのパーティクル発生しにくくなる代わりに、アパーチャー5の上流からのパーティクルをウェーハ8へ到達させやすくなる。
【0054】
第1イオンビーム径調整部27は、この性質を利用し、アパーチャー5の上流部と下流部に設置されるパーティクルモニター6a,6bにより測定されるパーティクル数をモニターし、上流部のパーティクル数が多い場合は、所定のサプレッション電圧よりサプレッション電圧を増加させ、下流部のパーティクルが多い場合は、前記サプレッション電圧を減少させて、その設定値を装置コントローラ13へ出力し、アパーチャー5のサプレッション電圧を制御してビーム幅を制御する。それによりパーティクル数を減少させることができる。ただし、装置全体でパーティクルモニター6a,6bのパーティクル数が増加する場合はメンテナンスを実施することは言うまでも無い。
【0055】
また図13〜図14にビーム電流とビームの幅の関係を示す。一般にはビーム電流を減少させると空間電荷効果が小さくなり、イオンビーム径が小さくなると考えられるが、条件によっては必ずしもそうならず、図13〜図14のようにビーム電流の変化によって、ビームの形状が変わる特性がある。
【0056】
第2イオンビーム径調整部28は、予め、イオン種、加速エネルギーの異なる各条件で取得されたビーム電流量とビーム幅の関係を取得しており、前記ビーム電流の変化によってビームの形状が変わる特性を利用し、パーティクルモニター6a,6bにより測定されたパーティクル数により、ビーム電流量を設定してドーズ量コントローラ9へ出力し、イオンビーム3の径を調整する。例えば、スリットの形状がX方向に長く、Y方向に短い場合、イオンビーム3のY方向の幅が大きいほど、スリットへのビームの照射が増え、パーティクルが発生しやすい。したがって、この場合はY方向の幅を小さくする必要があり、図13〜図14の事例では、ビーム電流を増加させる方がかえってパーティクルを発生させにくくする。このように、ビームの幅を制御することにより、パーティクルの発生を低減することができる。
【0057】
以上のように、本実施の形態4によれば、装置内のパーティクル数を測定するパーティクルモニター6a,6bを設け、パーティクルモニター6a,6bにより測定されたパーティクル数により、アパーチャー5におけるサプレッション電圧またパーティクルモニター6a,6bにより測定されたパーティクル数によりビーム電流量を変更してイオンビームの径を調整する機能を有することにより、パーティクルの発生を低減することができ、製品歩留や装置稼働率を向上することができる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明にかかるイオン注入装置とそのイオン注入制御方法は、ウェーハ面内の注入均一性の改善とパーティクル発生低減の効果を有し、製品歩留や装置稼働率を向上し、半導体の製造技術として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の実施の形態におけるイオン注入装置の概略構成図である。
【図2】同イオン注入装置のリアルタイムモニタリング及びコントロールシステムの制御構成図である。
【図3】同イオン注入装置のビーム電流の特性図である。
【図4】同イオン注入装置の1回目のY方向スキャン終了時のドーズ量とその補正量の分布図である。
【図5】同イオン注入装置のスキャン回数に対するY方向の累積ドーズ量の均一性の推移図である。
【図6】同イオン注入装置の2回目のY方向スキャン時のスキャン速度分布図である。
【図7】同イオン注入装置の2回目のY方向スキャン終了時のドーズ量の分布図である。
【図8】同イオン注入装置の注入終了時のドーズ量の分布図である。
【図9】同イオン注入装置のビーム中心位置の偏差量(Y方向)とパーティクル数との関係を示す特性図である。
【図10】同イオン注入装置の質量分析部の磁場とビーム中心位置(Y方向)の関係を示す特性図である。
【図11】同イオン注入装置のアパーチャー部サプレッション電圧とビーム幅(X方向)の関係を示す特性図である。
【図12】同イオン注入装置のアパーチャー部サプレッション電圧とビーム幅(Y方向)の関係を示す特性図である。
【図13】同イオン注入装置のビーム電流とビーム幅(X方向)の関係を示す特性図である。
【図14】同イオン注入装置のビーム電流とビーム幅(Y方向)の関係を示す特性図である。
【符号の説明】
【0060】
1 イオンソース
2 引出電極
3 イオンビーム
4 質量分析部
5 アパーチャー
6a,6b パーティクルモニター
7 ドーズファラデー
8 ウェーハ
9 ドーズ量コントローラ
10 メカニカルスキャン機構コントローラ
11 スキャン機構
12 リアルタイムモニタリング及びコントロールシステム
13 装置コントローラ
14 ウェーハ保持部
15 エンドステーション
21 累積ドーズ量分布演算部
22 累積ドーズ量分布均一性演算部
23 装置インターロック判断部
24 メカニカルスキャン速度演算補正部
25 ビーム軌道補正部
26 ビーム軌道異常判定部
27 第1イオンビーム径調整部
28 第2イオンビーム径調整部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオンソースと、
前記イオンソースよりイオンビームを引き出す引出加速部と、
前記引出加速部より引き出されたイオンビームより所望のイオンを取得する質量分析部と、
イオン注入対象のウェーハを保持するウェーハ保持部と、
前記質量分析部から出力されたイオンビームより余分なイオンやパーティクルを除去し、前記ウェーハ保持部に保持されたウェーハへ到達させない機能を有するアパーチャーと、
前記ウェーハに注入中にイオンビーム電流を測定し、前記ウェーハへのイオン注入量を制御するドーズ量コントローラと、
前記ウェーハ保持部を往復駆動させるメカニカルスキャン機構部と、
前記メカニカルスキャン機構部により往復駆動されているウェーハ保持部のメカニカルスキャン位置とそのメカニカルスキャン速度を測定し、前記メカニカルスキャン機構部を制御するメカニカルスキャン機構コントローラ
を設けたイオン注入装置であって、
前記メカニカルスキャン機構部による前記ウェーハ保持部のメカニカルスキャン毎に、前記ドーズ量コントローラにより測定されているイオンビーム電流と、前記メカニカルスキャン機構コントローラにより測定されているメカニカルスキャン速度およびメカニカルスキャン位置とにより、前記ウェーハ保持部に保持されたウェーハのメカニカルスキャン方向のドーズ量分布を演算し、この演算したドーズ量分布を累積して前記ウェーハのメカニカルスキャン方向の累積ドーズ量分布を求める累積ドーズ量分布演算部と、
前記メカニカルスキャン毎に、前記累積ドーズ量分布演算部により求めた累積ドーズ量分布より累積ドーズ量分布の均一性を演算する累積ドーズ量分布均一性演算部と、
前記メカニカルスキャン毎に、前記累積ドーズ量分布均一性演算部により求めた累積ドーズ量分布の均一性が、予め設定した設定値を超えたかどうかを判断し、超えた場合にウェーハ処理停止指令を出力する装置インターロック判断部と
を備えることを特徴とするイオン注入装置。
【請求項2】
前記メカニカルスキャン毎に、前記累積ドーズ量分布演算部により求めた累積ドーズ量分布より、次以降の前記メカニカルスキャンにおいて、前記ウェーハの累積ドーズ量を均一とするドーズ量を求め、このドーズ量を前記メカニカルスキャン速度補正値として前記メカニカルスキャン機構コントローラへ出力するメカニカルスキャン速度演算補正部を備え、
前記メカニカルスキャン機構コントローラは、この前記メカニカルスキャン速度補正値に応じて、前記メカニカルスキャン速度を補正すること
を特徴とする請求項1に記載のイオン注入装置。
【請求項3】
前記ドーズ量コントローラは、前記ウェーハに注入中に前記イオンビーム中心の位置を測定し、
前記質量分析部は、質量分析部の磁場を測定し、
前記ドーズ量コントローラにより測定された前記イオンビーム中心の位置と前記質量分析部により測定された質量分析部の磁場とにより、前記質量分析部の磁場を制御する指令値または補正値を求め、この指令値または補正値により前記質量分析部の磁場を変化させることにより前記イオンビームの中心位置を制御させ、イオンビームの軌道を補正するビーム軌道補正部
を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のイオン注入装置。
【請求項4】
装置がウェーハ処理を実施していない期間あるいはメンテナンス後に、前記ドーズ量コントローラにより測定された前記イオンビーム中心の位置と前記質量分析部により測定された質量分析部の磁場とにより、前記イオンビームの軌道の異常を判定するビーム軌道異常判定部
を備えることを特徴とする請求項3に記載のイオン注入装置。
【請求項5】
装置内のパーティクル数を測定するパーティクル数測定部を設け、
前記パーティクル数測定部により測定されたパーティクル数により、前記アパーチャーにおけるサプレッション電圧を制御し、このサプレッション電圧を変化させてイオンビーム径を調整する第1イオンビーム径調整部、あるいは前記パーティクル数測定部により測定されたパーティクル数により、前記ドーズ量コントローラによりビーム電流量を変化させてイオンビームの径を調整する第2イオンビーム径調整部の少なくとも一方を備えること
を特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のイオン注入装置。
【請求項6】
前記第2イオンビーム径調整部は、イオン種、加速エネルギーの異なる各条件で予め取得されたビーム電流量とビーム幅との関係に基づいて、イオンビーム電流を変化させてイオンビーム幅を制御すること
を特徴とする請求項5に記載のイオン注入装置。
【請求項7】
イオンソースと、
前記イオンソースよりイオンビームを引き出す引出加速部と、
前記引出加速部より引き出されたイオンビームより所望のイオンを取得する質量分析部と、
イオン注入対象のウェーハを保持するウェーハ保持部と、
前記質量分析部から出力されたイオンビームより余分なイオンやパーティクルを除去し、前記ウェーハ保持部に保持されたウェーハへ到達させない機能を有するアパーチャーと、
前記ウェーハに注入中にイオンビーム電流を測定し、前記ウェーハへのイオン注入量を制御するドーズ量コントローラと、
前記ウェーハ保持部を往復駆動させるメカニカルスキャン機構部と、
前記メカニカルスキャン機構部により往復駆動されているウェーハ保持部のメカニカルスキャン位置とそのメカニカルスキャン速度を測定し、前記メカニカルスキャン機構部を制御するメカニカルスキャン機構コントローラ
を設けたイオン注入装置におけるイオン注入制御方法であって、
前記メカニカルスキャン機構部による前記ウェーハ保持部のメカニカルスキャン毎に、、
前記ドーズ量コントローラにより測定されているイオンビーム電流と、前記メカニカルスキャン機構コントローラにより測定されているメカニカルスキャン速度およびメカニカルスキャン位置とにより、前記ウェーハ保持部に保持されたウェーハのメカニカルスキャン方向のドーズ量分布を演算し、この演算したドーズ量分布を累積して前記ウェーハのメカニカルスキャン方向の累積ドーズ量分布を求め、この求めた累積ドーズ量分布より累積ドーズ量分布の均一性を演算し、この求めた累積ドーズ量分布の均一性が、予め設定した設定値を超えたかどうかを判断し、超えた場合にウェーハ処理を停止すること
を特徴とするイオン注入制御方法。
【請求項8】
前記メカニカルスキャン毎に、ある時点の累積ドーズ量分布より、次以降の前記メカニカルスキャンにおいて、前記ウェーハの累積ドーズ量を均一とするドーズ量を求め、このドーズ量を前記メカニカルスキャン速度補正値として、前記メカニカルスキャン速度を補正すること
を特徴とする請求項7に記載のイオン注入制御方法。
【請求項9】
前記ウェーハに注入中に前記イオンビーム中心の位置を測定し、前記質量分析部の磁場を測定し、
測定された前記イオンビーム中心の位置と前記質量分析部の磁場とにより、前記質量分析部の磁場を制御し、前記質量分析部の磁場を変化させることにより前記イオンビームの中心位置を制御してイオンビームの軌道を補正すること
を特徴とする請求項7または請求項8に記載のイオン注入制御方法。
【請求項10】
装置がウェーハ処理を実施していない期間あるいはメンテナンス後に、前記イオンビーム中心の位置と質量分析部の磁場とを取得することにより、前記イオンビームの軌道の異常を判定すること
を特徴とする請求項9に記載のイオン注入制御方法。
【請求項11】
装置内のパーティクル数を測定し、
測定されたパーティクル数により、前記アパーチャーにおけるサプレッション電圧を変化させてイオンビーム径を調整し、あるいは測定されたパーティクル数により、前記イオンビーム電流量を変化させてイオンビームの径を調整することの少なくとも一方を実行すること
を特徴とする請求項7〜請求項10のいずれか1項に記載のイオン注入制御方法。
【請求項12】
前記イオンビーム電流量を変化させてイオンビームの径を調整するとき、イオン種、加速エネルギーの異なる各条件で予め取得されたビーム電流量とビーム幅との関係に基づいて、イオンビーム電流を変化させてイオンビーム幅を制御すること
を特徴とする請求項11に記載のイオン注入制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−123056(P2007−123056A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−313601(P2005−313601)
【出願日】平成17年10月28日(2005.10.28)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】