説明

イオン注入装置及び半導体装置の製造方法

【課題】イオン注入時にクロスコンタミネーションを抑制することができる技術を提供する。
【解決手段】複数種類のイオンを照射可能なイオン照射手段と、半導体ウエハが設置される複数のステージと、各ステージをイオン照射手段に対して相対移動させる移動手段と、ステージ上に半導体ウエハを設置する搬送手段と、制御手段と、イオンの種類を制御手段に入力する入力手段を備えるイオン注入装置。制御手段は、入力手段からイオンの種類の入力を受ける入力ステップと、移動手段によって、入力されたイオンの種類に対応するステージをイオン照射手段の照射位置に移動させる移動ステップと、搬送手段によって、入力されたイオンの種類に対応するステージ上に、半導体ウエハを設置する設置ステップと、設置ステップ後に、イオン照射手段によって、入力された種類のイオンを照射する照射ステップを実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハにイオンを注入する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハにイオンを注入する際には、半導体ウエハのみならず、半導体ウエハが設置されているステージにもイオンが注入される。ステージにイオンが注入されると、以前にステージに注入されてステージ中に存在していた異種イオンがステージ外に飛び出し、飛び出した異種イオンが半導体ウエハに注入される場合がある。このように、半導体ウエハにイオンを注入する際には、注入しているイオンとは別の種類のイオンが半導体ウエハに注入されるというクロスコンタミネーションが生じる場合がある。クロスコンタミネーションは、半導体ウエハの特性に悪影響を及ぼす。
【0003】
特許文献1には、ウエハが設置されるステージを、ステージを支持する支持板から突出させて設けたイオン注入装置が開示されている。ステージのサイズは、半導体ウエハのサイズと等しい。したがって、イオン注入時に、ステージにはイオンが注入されない。一方、イオン注入時に支持板にはイオンが注入される。このため、支持板からは異種イオンが飛び出す。しかしながら、ステージが支持板から突出して設けられているので、半導体ウエハは支持板から離れている。このため、支持板から飛び出した異種イオンが半導体ウエハに注入されることを防止できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−219378号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術は、ステージから支持板までの距離を長くすることで、支持板から飛び出す異種イオンが半導体ウエハに注入されることを防止する。しかしながら、支持板から飛び出す異種イオンの飛程距離が長いので、ステージから支持板までの距離を極めて大きくしない限り、クロスコンタミネーションを十分に抑制することはできない。実用的なサイズのイオン注入装置では、特許文献1の技術でクロスコンタミネーションを十分に抑制することはできない。
【0006】
したがって、本明細書では、イオン注入時にクロスコンタミネーションを抑制することができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書が開示するイオン注入装置は、半導体ウエハにイオンを注入する。このイオン注入装置は、複数種類のイオンを照射可能なイオン照射手段と、半導体ウエハが設置される複数のステージと、各ステージをイオン照射手段に対して相対移動させる移動手段と、ステージ上に半導体ウエハを設置する搬送手段と、制御手段と、イオンの種類を制御手段に入力する入力手段を備えている。制御手段は、入力ステップと、移動ステップと、設置ステップと、照射ステップを実行する。入力ステップでは、制御手段は、入力手段からイオンの種類の入力を受ける。移動ステップでは、制御手段は、移動手段によって、入力されたイオンの種類に対応するステージをイオン照射手段の照射位置に移動させる。設置ステップでは、制御手段は、搬送手段によって、入力されたイオンの種類に対応するステージ上に、半導体ウエハを設置する。照射ステップでは、設置ステップ後に、イオン照射手段によって、入力された種類のイオンを照射する。
【0008】
なお、制御手段へのイオンの種類の入力は、ユーザによって行われてもよいし、プログラミングされた計算機等によって行われてもよい。
また、移動手段は、各ステージを移動させてもよいし、イオン照射手段を移動させてもよいし、これらの両方を移動させてもよい。また、各ステージを移動させる場合には、ステージ毎に独立して移動させてもよいし、全てのステージを連動させて移動させてもよい。
また、イオン照射手段の照射位置とは、イオン照射手段の照射方向に対して向かい合う位置を意味する。
また、設置ステップ後に照射ステップが実行される限りにおいて、移動ステップと設置ステップと照射ステップは、種々の順序で行うことができる。例えば、入力ステップで入力されたイオンの種類に対応するステージ(以下、対象ステージという)を照射位置に移動させ(移動ステップ)、次に対象ステージ上に半導体ウエハを設置し(設置ステップ)、次に対象ステージ(すなわち、半導体ウエハ)に向けてイオンを照射(照射ステップ)してもよい。また、対象ステージに上に半導体ウエハを設置し(設置ステップ)、次に対応ウエハを照射位置に移動させ(移動ステップ)、次に対象ステージに向けてイオンを照射してもよい。また、対象ステージ上に半導体ウエハを設置し(設置ステップ)、次に、イオンを照射しながら(照射ステップ)、照射位置に対象ステージを移動(移動ステップ)させてもよい。
【0009】
このイオン注入装置では、制御手段に入力されたイオンの種類に対応するステージ上に半導体ウエハが設置されて、その半導体ウエハに向けてイオンが照射される。これにより、半導体ウエハにイオンが注入される。例えば、リンイオンを注入する際には、リンイオン注入用のステージに半導体ウエハが設置され、その半導体ウエハにリンイオンが注入される。ボロンイオンを注入する際には、ボロンイオン注入用のステージに半導体ウエハが設置され、その半導体ウエハにボロンイオンが注入される。このように、注入するイオンに応じてステージが変更されるので、ステージにイオンが注入されたときに、ステージから飛び出すイオンのほとんどが、イオン照射手段が照射するイオンと同種のイオンとなる。このように、イオン照射手段が照射するイオンと同種のイオンがステージから飛び出すと、飛び出したイオンが半導体ウエハに注入されてもクロスコンタミネーションは生じない。例えば、リンイオン注入用のステージ中には、以前に注入されたリンが存在している。このステージに新たにリンイオンが注入されると、ステージ中のリンイオンがステージ外に飛び出す。ステージ外に飛び出したリンイオンが半導体基板に注入されても、クロスコンタミネーションは生じない。このイオン注入装置によれば、クロスコンタミネーションを抑制することができる。
【0010】
上述したイオン注入装置は、イオン照射手段の照射範囲が、各ステージよりも小さいことが好ましい。
【0011】
このような構成によれば、イオン照射手段が照射するイオンや、対象ステージから飛び出すイオンが、対象ステージ以外の部材まで到達し難くなる。これにより、対象ステージ以外の部材に、イオンが注入されることが抑制される。これにより、クロスコンタミネーションをより抑制することができる。
【0012】
上述したイオン注入装置は、ステージ中に存在するイオンを除去するクリーニング手段をさらに備えており、照射ステップ中に、クリーニング手段によって、イオン照射手段の照射位置外に位置しているステージの少なくとも1つに存在するイオンを除去することが好ましい。
【0013】
このような構成によれば、クリーニング手段によりステージ中のイオンを除去(すなわち、クリーニング)することができるので、よりクロスコンタミネーションを抑制することができる。また、照射ステップ中にクリーニングを行うので、クリーニングにより加工が滞ることがない。
【0014】
上述したイオン注入装置は、回転軸回りに回転する回転体をさらに備えていることが好ましい。回転体は、回転軸の方向及び回転の接線方向に伸びる複数の側面を備えており、隣接する側面の間の角度が、90度以下であることが好ましい。前記複数の側面の夫々が、ステージを構成していることが好ましい。移動手段は、回転体を回転させることが好ましい。
【0015】
上述した回転体としては、例えば、正四角柱や正三角柱を用いることができる。このイオン注入装置では、回転体の側面がステージとなっている。このため、移動手段は、回転体を回転させるだけで、イオン注入に用いるステージを変更することができる。また、各側面(ステージ)の間の角度は、90度以下である。このため、対象ステージをイオン照射方向に向けて配置すると、他のステージが対象ステージの裏側に位置する。このため、照射されるイオンや、対象ステージから弾き出されたイオンが、対象ステージ以外のステージに注入されることを抑制できる。このため、このイオン注入装置によれば、クロスコンタミネーションをより抑制することができる。
【0016】
また、本明細書は、半導体の製造方法を提供する。この製造方法では、複数種類のイオンを照射可能なイオン照射手段と、半導体ウエハが設置される複数のステージと、各ステージをイオン照射手段に対して相対移動させる移動手段と、ステージ上に半導体ウエハを設置する搬送手段とを備えるイオン注入装置を用いる。この製造方法は、選択ステップと、移動ステップと、設置ステップと、照射ステップを備えている。選択ステップでは、イオンの種類を選択する。移動ステップでは、移動手段によって、選択したイオンの種類に対応するステージをイオン照射手段の照射位置に移動させる。設置ステップでは、搬送手段によって、選択したイオンの種類に対応するステージ上に、半導体ウエハを設置する。照射ステップでは、設置ステップ後に、イオン照射手段によって、選択した種類のイオンを照射する。
【0017】
この製造方法によれば、クロスコンタミネーションを抑制することができる。安定した品質で半導体装置を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】イオン注入装置10の概略構成を示す図。
【図2】制御装置26が実行する処理を示すフローチャート。
【図3】ステージ回転機構120の平面図。
【図4】実施例2の制御装置が実行する処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0019】
実施例及びその変形可能な形態について、特徴を以下に列記する。
(特徴1)イオン注入装置は、入力されるイオンの種類毎に異なるステージ上に半導体ウエハを設置して、その半導体ウエハにイオンを注入する。
(特徴2)制御手段に入力されたイオンの種類と異なるイオンの種類に対応するステージは、イオン照射時に、イオン照射手段が照射するイオンが当たらない位置に退避される。
(特徴3)イオン注入装置は、複数の回転体を備えている。回転体は、円周に沿って配列されている。移動装置は、個々の回転体をその回転軸回りに回転させるとともに、前記円周の中心軸回りに回転体を回転させることができる。制御装置は、前記円周の中心軸回りに回転体を回転させながら、イオン照射ステップを実行する。
【実施例1】
【0020】
実施例1のイオン注入装置について説明する。図1に示すように、実施例1のイオン注入装置10は、チャンバ12と、イオン照射機14と、ステージユニット16と、モータ20と、搬送機構22と、クリーニング装置24と、制御装置26と、操作パネル28を備えている。チャンバ12内は、図示しないポンプにより減圧することができる。イオン照射機14は、チャンバ12の斜め上方に固定されており、チャンバ12内にイオンを照射する。イオン照射機14は、リン、ボロン及びヒ素のイオンを照射可能であり、ユーザにより選択されたイオンを照射する。ステージユニット16は、チャンバ12内に設置されている。ステージユニット16は、正三角柱形状を備えている。ステージユニット16は、正三角柱の中心軸18を中心に回転することができる。ステージユニット16の3つの側面16a〜16cは、半導体ウエハを保持可能なステージである。図示していないが、ステージ16a〜16cは、半導体ウエハを保持する保持機構(本実施例では、静電チャック)を備えている。ステージユニット16は、イオン照射機14が照射するイオンの照射線上に設置されている。ステージユニット16を回転させることで、ステージ16a〜16cの1つを、イオン照射機14に対向するイオン照射位置(図1では、左上に位置するステージ16aの位置)に位置させることができる。イオン照射機14は、イオン照射位置にあるステージに対して、略垂直にイオンを照射する。イオン照射機14とステージユニット16の間には、スリット14aが配置されている。イオン照射機14が照射するイオンは、スリット14aを通ってステージユニット16に到達する。スリット14aによって、イオンの照射範囲が制限されている。本実施例では、イオンの照射範囲は、ステージ16a〜16cよりも狭い。モータ20は、ステージユニット16を中心軸18回りに回転させる。搬送機構22は、チャンバ12内へ半導体ウエハを搬入し、イオン照射位置にあるステージ上に半導体ウエハを設置する。例えば、図1に示すように、イオン照射位置にあるステージ16a上に半導体ウエハ30を設置する。また、搬送機構22は、イオン照射位置にあるステージ上の半導体ウエハをチャンバ12外に搬出する。クリーニング装置24は、ステージユニット16の下方に設置されている。クリーニング装置24は、下側(図1では、ステージ16cの位置)に位置しているステージに向けて、アルゴンイオンを照射する。クリーニング装置24は、ステージにアルゴンイオンを打ち込むことで、ステージ中に存在するイオンをステージ外に弾き出す。操作パネル28は、複数の操作ボタンを有している。ユーザが操作パネル28を操作することで、制御装置26に種々の信号が入力される。制御装置26は、操作パネル28から入力される信号等に応じて、イオン照射機14、モータ20、搬送機構22、クリーニング装置24を制御する。
【0021】
次に、イオン注入装置10の動作について説明する。図2は、イオン注入時に制御装置26が実行する処理を示している。なお、図2の処理の開始時において、既にチャンバ12内は減圧されている。
【0022】
ステップS2では、制御装置26は、イオンの種類を示すデータの入力を待つ(入力ステップ)。ユーザは、操作パネル28を操作することで、注入するイオンの種類を選択する。本実施例では、ステップS2で、リン、ボロン、ヒ素の何れかが選択される。ユーザが操作パネル28によりイオンの種類を選択すると、選択したイオンの種類を示すデータが、制御装置26に入力される。
【0023】
ステップS4では、制御装置26は、モータ20によってステージユニット16を回転させる。これによって、ステップS2で入力されたイオンの種類に対応するステージを、イオン照射位置に移動させる(移動ステップ)。ステップS2でリンが入力された場合には、制御装置26は、ステージ16aをイオン照射位置に移動させる。ステップS2でボロンが入力された場合には、制御装置26は、ステージ16bをイオン照射位置に移動させる。ステップS2でヒ素が入力された場合には、制御装置26は、ステージ16cをイオン照射位置に移動させる。
【0024】
ステップS6では、制御装置26は、搬送機構22によって、半導体ウエハをチャンバ12内に搬送してイオン照射位置にあるステージ上に設置する(設置ステップ)。また、制御装置26は、イオン照射位置にあるステージの静電チャックを作動させて、そのステージ上に半導体ウエハを固定する。例えば、ステップS2でリンが入力された場合には、ステップS4でステージ16aが照射位置に移動されているので、半導体ウエハはステージ16a上に固定される。
【0025】
ステップS8では、制御装置26は、イオン照射機14にステップS2で入力された種類のイオンを照射させる。これにより、イオン照射位置にあるステージ上に固定されている半導体ウエハに、イオンが注入される。
また、制御装置26は、ステップS8と平行してステップS10を実行する。ステップS10では、制御装置26は、クリーニング装置24によって、下側に位置しているステージ(図1の例では、ステージ16c)にアルゴンイオンを照射する。アルゴンイオンが下側のステージに打ち込まれると、そのステージ中に含まれているイオンがステージ外に弾き出され、ステージ中に存在するイオンが減少する。
【0026】
ステップS12では、制御装置26は、イオン照射位置にあるステージ上の半導体ウエハを、チャンバ12外に搬送する。以上のステップにより、イオン注入処理を終了する。
【0027】
以上に説明したように、このイオン注入装置10では、注入するイオンの種類に応じて、イオン注入時に半導体ウエハが固定されるステージが切り換えられる。例えば、ステップS2でリンが入力された場合には、ステージ16aがイオン照射位置に移動し、ステージ16a上に半導体ウエハが固定され、その半導体ウエハにリンイオンが注入される。すなわち、ステージ16aはリンイオンの注入時にのみ使用される。同様にして、ステージ16bはボロンイオンの注入時にのみ使用され、ステージ16cはヒ素イオンの注入時にのみ使用される。このように、注入時に使用するステージをイオンの種類毎に専用化することで、ステージにイオンが注入されたときに生じるクロスコンタミネーションを抑制することができる。例えば、リンイオンを半導体ウエハに注入する際には、半導体ウエハのみならず、ステージ16aにもリンイオンが注入される。一方、ステージ16b、16cは照射されるイオンが当たらない位置にあるので、ステージ16b、16cにはリンイオンが直接注入されない。他のイオンを注入する際にも同様に、イオン照射位置にあるステージ以外のステージにイオンが直接注入されることがない。したがって、ステージ16a中に存在しているイオンはほとんどがリンイオンであり、ステージ16b中に存在しているイオンはほとんどがボロンイオンであり、ステージ16c中に存在しているイオンはほとんどがヒ素イオンである。リンイオンがステージ16aに注入されると、ステージ16a中に存在するイオンがステージ外に弾き出されて、半導体ウエハに注入される。上述したように、ステージ16a中に存在するイオンは大部分がリンイオンであるので、ステージ16aから弾き出されるイオンの大部分がリンイオンである。ステージから弾き出されるリンイオンとイオン照射機14で照射しているリンイオンとが同種であるので、ステージから弾き出されたリンイオンが半導体ウエハに注入されても、クロスコンタミネーションは生じない。このように、ステージ16aをリンイオン注入用に専用化することで、リンイオン注入時におけるクロスコンタミネーションを抑制することができる。同様にして、ボロンイオン及びヒ素イオンを注入する場合にもクロスコンタミネーションが抑制される。イオン注入装置10によれば、クロスコンタミネーションを抑制できる。したがって、イオン注入装置10を用いてイオン注入を行うことで、安定した品質で半導体装置を製造することができる。
【0028】
また、上述したように、イオン照射機14の照射範囲は、ステージ16a〜16cの表面よりも狭い範囲に制限されている。このため、イオン注入時に、イオン照射機14から照射されるイオンが、イオン照射位置にあるステージ以外のイオン注入装置10の部材に直接照射されることが防止されている。これによって、イオン照射位置にあるステージ以外の部材がイオンにより汚染されることが抑制される。これによっても、クロスコンタミネーションが抑制される。
【0029】
また、上述したように、クリーニング装置24は、半導体ウエハにイオンが注入されている間に、下側に位置するステージにアルゴンイオンを照射することで、そのステージ中のイオンを減少させる。イオン注入と同時にクリーニングが行われるので、クリーニングを実行することで作業が遅れることはない。また、このように、使用していないステージをクリーニングすることで、後にそのステージを使用する時にクロスコンタミネーションが抑制される。
【0030】
また、ステージ16a〜16cは、互いに約60度の角度(すなわち、90度以下の角度)で交差している。したがって、イオン照射位置にあるステージに向けてイオンが照射されているときに、他の2つのステージがイオン照射位置にあるステージの裏側に位置する。このため、照射されるイオンや、イオン照射位置にあるステージから弾き出されたイオンが、他の2つのステージに注入されることが抑制される。これによって、クロスコンタミネーションをより抑制することができる。
【0031】
また、このイオン注入装置10では、ステージユニット16を回転させるだけで、イオン照射位置にあるステージを変更することができ、ステージの変更が容易である。このため、ステージの変更に要する時間を短縮化できる。
【実施例2】
【0032】
次に、実施例2のイオン注入装置について説明する。実施例2のイオン注入装置のチャンバ内には、図3に示すステージ回転機構120が設置されている。なお、図3は、ステージ回転機構120を上側から示している。ステージ回転機構120は、円周に沿って配列された複数のステージユニット116を備えている。ステージ回転機構120は、前記円周の中心軸122回りに回転する。ステージユニット116は、実施例1のステージユニット16と同じように、正三角柱形状を備えており、その各側面がステージを構成している。各ステージユニット116の正三角柱の中心軸は、前記円周の接線方向に伸びている。各ステージユニット116は、図示しないモータに駆動されることによって、前記円周の接線方向に伸びる中心軸回りに回転する。ステージユニット116を回転させることで、ステージユニット116の3つのステージの何れかを上側に向けることができる。また、実施例2のイオン注入装置は、実施例1のイオン注入装置10と同様に、イオン照射機、搬送機構、制御装置及び操作パネルを備えている。また、イオン照射機は、図3の点線124に示す照射範囲内に、上面に位置するステージに対して略垂直にイオンを照射する。
【0033】
図4は、イオン注入時に制御装置が実行する処理を示している。なお、図4の処理の開始時において、既にチャンバ内は減圧されている。ステップS22では、制御装置は、イオンの種類を示すデータの入力を待つ(入力ステップ)。ユーザが操作パネル28を操作することにより、制御装置にイオンの種類を示すデータが入力される。
【0034】
ステップS24では、制御装置は、モータにより各ステージユニット116を回転させることによって、ステップS22で入力されたイオンの種類に対応するステージを上側に移動させる(第1移動ステップ)。すなわち、全てのステージユニット116を、入力されたイオンの種類に対応するステージが上側を向く姿勢に回転させる。
【0035】
ステップS26では、制御装置は、搬送機構によって、ステップS24で上側に移動させた各ステージ上に半導体ウエハを設置する。ステップS26では、図4に示すように、上側に位置する全てのステージ上に半導体ウエハ130が設置される。
【0036】
ステップS28では、制御装置は、ステージ回転機構120を中心軸122回りに高速回転させる(第2移動ステップ)。また、制御装置は、ステップS28と平行して、ステップS30を実行する。ステップS30では、イオン照射機によってステップS22で入力された種類のイオンを照射範囲124内に照射する(照射ステップ)。ステップS26でステージ上に設置された各ウエハは、ステージ回転機構120の回転によって照射範囲124内を通過する。これによって、各半導体ウエハにイオンが注入される。すなわち、実施例2のイオン注入装置によれば、複数の半導体ウエハに対してイオンを注入することができる。
【0037】
ステップS32では、制御装置は、ステージ回転機構120の回転を停止させ、搬送装置によって各半導体ウエハをチャンバ外に搬出する。
【0038】
以上に説明したように、実施例2のイオン注入装置によれば、複数の半導体ウエハをバッジ処理することができる。また、注入するイオンの種類に応じて使用するステージが切り換えられるので、クロスコンタミネーションを抑制することができる。
【0039】
なお、上述した実施例1、2のイオン注入装置では、イオンを構成する元素の種類に応じてステージを使い分けたが、他の分類方法による種類を用いてステージを使い分けてもよい。例えば、イオンがn型かp型かによってステージを使い分けてもよい。さらに他の要因(例えば、半導体ウエハへの異物の付着の度合や、半導体ウエハの金属汚染の度合等)を考慮してステージを使い分けてもよい。
【0040】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0041】
10:イオン注入装置
12:チャンバ
14:イオン照射機
14a:スリット
16:ステージユニット
16a:ステージ
16b:ステージ
16c:ステージ
18:中心軸
20:モータ
22:搬送機構
24:クリーニング装置
26:制御装置
28:操作パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ウエハにイオンを注入するイオン注入装置であって、
複数種類のイオンを照射可能なイオン照射手段と、
半導体ウエハが設置される複数のステージと、
各ステージをイオン照射手段に対して相対移動させる移動手段と、
ステージ上に半導体ウエハを設置する搬送手段と、
制御手段と、
イオンの種類を制御手段に入力する入力手段、
を備えており、
制御手段は、
入力手段からイオンの種類の入力を受ける入力ステップと、
移動手段によって、入力されたイオンの種類に対応するステージをイオン照射手段の照射位置に移動させる移動ステップと、
搬送手段によって、入力されたイオンの種類に対応するステージ上に、半導体ウエハを設置する設置ステップと、
設置ステップ後に、イオン照射手段によって、入力された種類のイオンを照射する照射ステップ、
を実行することを特徴とするイオン注入装置。
【請求項2】
イオン照射手段の照射範囲が、各ステージよりも小さいことを特徴とする請求項1に記載のイオン注入装置。
【請求項3】
ステージ中に存在するイオンを除去するクリーニング手段をさらに備えており、
照射ステップ中に、クリーニング手段によって、イオン照射手段の照射位置外に位置しているステージの少なくとも1つに存在するイオンを除去することを特徴とする請求項1または2に記載のイオン注入装置。
【請求項4】
回転軸回りに回転する回転体をさらに備えており、
その回転体は、回転軸の方向及び回転の接線方向に伸びる複数の側面を備えており、
隣接する側面の間の角度が、90度以下であり、
前記複数の側面の夫々が、ステージを構成しており、
移動手段は、回転体を回転させる、
ことを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載のイオン注入装置。
【請求項5】
複数種類のイオンを照射可能なイオン照射手段と、半導体ウエハが設置される複数のステージと、各ステージをイオン照射手段に対して相対移動させる移動手段と、ステージ上に半導体ウエハを設置する搬送手段とを備えるイオン注入装置を用いた半導体の製造方法であって、
イオンの種類を選択する選択ステップと、
移動手段によって、選択したイオンの種類に対応するステージをイオン照射手段の照射位置に移動させる移動ステップと、
搬送手段によって、選択したイオンの種類に対応するステージ上に、半導体ウエハを設置する設置ステップと、
設置ステップ後に、イオン照射手段によって、選択した種類のイオンを照射する照射ステップ、
を有することを特徴とする半導体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−48941(P2012−48941A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−189360(P2010−189360)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】