イオン注入装置
【課題】 低コストのイオンビーム分布測定装置を備えると共に、イオン注入のスループットを向上したイオン注入装置を提供する。
【解決手段】 イオンを生成するイオン源から所望のイオン種を引き出し、所望のエネルギーに加速又は減速し、イオンを走査器により基板の注入面にイオンを走査して注入するイオン注入装置において、基板の下流側に配置され、イオンビームの電流値を計測するファラデーカップ20と、基板とファラデーカップ20との間に配置され、イオンビームBの走査方向と同一方向に移動可能で、かつ、単一のスリット32を有する遮蔽板30とを具備したイオンビーム分布測定装置10を備えた構成とした。
【解決手段】 イオンを生成するイオン源から所望のイオン種を引き出し、所望のエネルギーに加速又は減速し、イオンを走査器により基板の注入面にイオンを走査して注入するイオン注入装置において、基板の下流側に配置され、イオンビームの電流値を計測するファラデーカップ20と、基板とファラデーカップ20との間に配置され、イオンビームBの走査方向と同一方向に移動可能で、かつ、単一のスリット32を有する遮蔽板30とを具備したイオンビーム分布測定装置10を備えた構成とした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン注入装置に係り、特に、低コストのイオンビーム分布測定装置を備えると共に、イオン注入のスループットを向上したイオン注入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
イオン源からのイオンを所望のエネルギーに加速し、半導体等の固体表面に注入する種々のタイプのイオン注入装置が実用に供されている(特許文献1参照)。
以下、従来のイオン注入装置の一例について、図9及び図10を用いて説明する。
図9は、従来のイオン注入装置の概略構成を示す平面図である。
図10は、従来のイオン注入装置が用いているビーム分布モニターの外観構成を示す斜視図である。
【0003】
イオン注入装置100の主要構成は、図9に示すように、イオン源110、質量分離器120、質量分離スリット130、加速管140、四重極レンズ150、走査器160、平行化装置180、ファラデーカップ等のイオンビームの電流モニター190、ビーム分布モニター200である。
なお、同図中170は、図示しないエンドステーションに配置されたイオンを注入するターゲットとなる基板である。
また、Bはイオンであるが、以下、「イオンビーム」又は「ビーム」という場合がある。
【0004】
イオン源110は、原子や分子から電子を剥ぎ取ってイオンを生成する装置である。
質量分離器120は、イオンや電子等の荷電粒子が磁場又は電場中で偏向される性質を利用して、磁場、或いは、電場、又は、その双方を発生して、基板170に注入したいイオン種を特定するための装置である。
【0005】
加速管140は、質量分離スリット130を通過した所望のイオン種を加速又は減速する装置であるが、図9に示すように、通常は軸対象で、複数の電極を等間隔に並べ、それらの電極に等しい高電圧を印加して、静電界の作用により、イオンビームBを所望の注入エネルギーに加速又は減速する。
【0006】
走査器160は、イオンビームBの進行方向と直交する方向に一様な外部電界を発生させ、この電界の極性や強度を変化させることにより、イオンの偏向角度を制御し、図9に示すように、基板170の注入面の所望の位置にイオンBを走査し、均一に注入する。
【0007】
以下、所望のイオン種を注入したい基板170の注入面を含む平面を「走査面」といい、また、イオンビームBの「走査方向」とは、走査器160によりイオンビームが偏向される方向をいうものとする。
なお、図9では、水平方向にイオンビームBを偏向する走査器160を示したが、垂直方向に偏向する走査器も用いられる場合がある。
【0008】
また、図9に示すように、基板170の下流側にはイオンビームBの電流モニターとして一般的なファラデーカップ190が、更に、このファラデーカップ190の下流には、ビーム分布モニター200が配置されている。
なお、図9において、192及び202は電流計である。
【0009】
従来のビーム分布モニター200は非特許文献1に記載されているが、図10に示すように、複数の小さなファラデーカップ204が所定幅の間隙を隔てて、ビームの走査方向に多数並んだ構造となっている。
【0010】
以上の構成において、次に、従来のイオン注入装置100の基本動作を図9を用いて説明する。
従来のイオン注入装置100では、基板170のイオンBの注入面全面に渡って一様な密度で所定のイオン種を所定のエネルギーでイオン注入を行うために、イオン源110から例えば30keV程度のエネルギーで引き出されたイオンビームBは、質量分離器120で偏向され、質量分離スリット130で所定のイオン種のみが選別される。
【0011】
選別されたイオンビームBは加速管140で、10〜500keV程度のエネルギーに加速又は減速され、例えば1kHz程度の周期の外部電界を走査器160に印加し、基板170の走査面に走査される。
なお、上記では、外部電界によりイオンビームBをスキャンする静電タイプの走査器160を取り上げたが、走査器160には静電タイプの代わりに磁気タイプのものが用いられる場合がある。
【0012】
また、図9に示すように、イオンビームBの基板170上でのビームスポット形状を調整するために、加速管140と走査器160との間に四重極レンズ150等の調整装置を設置する場合が多い。
走査器160の下流側には、ビームBを平行にするための平行化装置180を設置する場合もある。
従って、図9には、四重極レンズ150、及び、平行化装置180を図示しているが、必ずしも、イオン注入装置100の必須の構成要素ではない。
【0013】
イオンBが固体中に入り込む深さは、イオンBのエネルギーで正確に制御できるので、例えば、イオン注入装置100の立ち上げ時等で、イオンビームのドーズ量分布をモニタリングすると、基板170の注入面にイオンビームBを走査することにより所望のイオン種の均一なイオン注入処理が容易に行える。
【0014】
【特許文献1】特開平8−213339号
【非特許文献1】T.Hisamune et al. Proceedings of Int. Conf. on Ion Implantation Technology, IEEE98EX144(1999)411-
【非特許文献2】T.Kunibe et al. Proceedings of Int. Conf. on Ion Implantation Technology, IEEE98EX144(1999)424-
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ところで、半導体デバイスの微細化に伴い、イオン注入装置に関して、基板に注入されるドーズ量とその面均一性に対する要求は、ますます厳しくなっている。 具体的には、基板の注入面内でのドーズ量の分布は、3σの範囲内で1%以下の均一精度が要求されている。
また、イオン注入装置の稼働効率の関係から、装置の立ち上げ時間の短縮、及び、イオンの注入効率の関係からスループットの向上も当然求められる。
【0016】
そこで、以下、従来のイオン注入装置における高い精度でのドーズ量の面均一性を得るためのイオン注入方法について、図9を用いて説明する。
イオンビームBを走査器160で走査した場合、走査角度によって走査器160から基板170まで、例えば、平行化装置180などでのイオンビームBの経路が相違し、ビーム光学上の性質が若干異なるため、基板170上でのイオンビームBのスポット形状は若干異なるのが一般的である。
【0017】
このため、走査器160に印加する外部電界の波形を単純な三角波とし、この三角波でイオンビームBを走査すると、基板170の上でのドーズ量の面内均一性を得られなくなってしまう恐れがある。
これを補正するために、基板170に注入する以前に、基板170をビームライン上から取り外して、ビーム分布モニター200に照射し、ビーム分布モニター200で基板170の走査面内でのビームのドーズ量の分布を計測し、この分布が一様になるように、走査器160に印加する外部電界の走査波形を調整することを行う。
【0018】
例えば、イオンビームのドーズ量の分布がある領域で、平均より5%多いとすると、その領域に対応する走査角度での走査速度が5%速くなるように、走査器160に印加する外部電界の走査波形を調整する。
なお、ビームを走査しないで、ビーム分布モニター200に照射しながら四重極レンズ150などを操作して、ビームの形状を調整する場合もある。
【0019】
次に、従来のイオン注入装置100に用いるビーム分布モニター200の問題点について、図10を用いて説明する。
上述したように、ビームの分布をモニターする機構は、基板170の注入面における高い精度でのドーズ量の面均一性を得るためには必須である。
【0020】
しかし、従来のイオン注入装置100のビーム分布モニター200では、多数のファラデーカップ204を用い、且つ、そのファラデーカップ204の一部を機械的に可動とする必要があった。
一般に、多数のファラデーカップ204を用いた場合、それらの個体差を補正するために、各多数のファラデーカップ204の各測定値の校正が必要であり、また、その校正を行ったとしても、若干の誤差は残ってしまうという問題を備えている。
【0021】
また、ファラデーカップ204の一部を機械的に可動とすると、電気的な雑音を防ぐ機構も必要である。
このように、従来のイオン注入装置100では、多数のファラデーカップ204を用いることによる誤差が伴うという問題や、その校正のためにイオン注入装置100の立ち上げ時間が長いという問題と、また、機械的な可動機構に電気的な雑音対策をとる必要があり、高価になってしまうという問題があった。
【0022】
また、イオンビームの密度分布は周辺部にテールを持つ場合が多いが、テール部分が大きく広がっていると、走査しなければならない走査角度の範囲が大きくなり、この結果として、スループットが低下し、イオン注入の注入効率が悪くなるという問題がある。
【0023】
この問題について、図11及び図12を用いて説明する。
図11は、従来のイオン注入装置100において、イオンビームBの基板170の走査面における密度分布のテール部分が狭い場合を示す図である。
図12は、従来のイオン注入装置100において、イオンビームBの基板170の走査面における密度分布のテール部分が広い場合を示す図である。
【0024】
ところで、一般に、イオンビームの光軸に直交する面内でのイオンの密度分布は、非特許文献2に記載されているように、中心部分が高く、周辺にテールを持っている形状である。
そこで、密度分布のテール部分が基板170の周辺に当たってしまい、周辺部のドーズが設定値よりも大きくなってしまうのを避けるために、図11及び図12に示すように、イオンビームBをそのテールの部分も含めて、ほぼ完全に基板170の外に出るまで走査器160で偏向する必要がある。
【0025】
従って、図11に示すように、イオンビームの密度分布のテール幅が小さい場合は、イオンビームBを走査する走査範囲が小さくて済むが、一方、図11に示すように、イオンビームBの密度分布のテール幅が大きい場合は、イオンビームBを走査する走査範囲が大きくなる。
イオンビームBの走査器160による走査範囲が大きくなると、基板170の注入面に注入されないイオンビームの量が増大するために、イオン注入のスループットが低下し、注入効率が悪化する。
従って、イオンビームの密度分布のテール部分による悪影響を除去する必要がある。
【0026】
本発明は、上記従来の課題を解決し、低コストのイオンビーム分布測定装置を備えると共に、イオン注入のスループットを向上したイオン注入装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明のイオン注入装置は、請求項1に記載のものでは、イオンを生成するイオン源から所望のイオン種を引き出し、所望のエネルギーに加速又は減速し、前記イオンを走査器により半導体ウェーハ等の基板の注入面にイオンを走査して注入するイオン注入装置において、前記基板の下流側に配置され、イオンビームの電流値を計測するファラデーカップ等の電流モニターと、前記基板と前記電流モニターとの間に配置され、前記イオンビームの走査方向と同一方向に移動可能で、かつ、単一のスリットを有する遮蔽板とを具備したイオンビーム分布測定装置を備えた構成とした。
【0028】
請求項2に記載のイオン注入装置は、イオンを生成するイオン源から所望のイオン種を引き出し、所望のエネルギーに加速又は減速し、前記イオンを走査器により半導体ウェーハ等の基板の注入面にイオンを走査して注入するイオン注入装置において、前記基板の下流側に配置され、イオンビームの電流値を計測するファラデーカップ等の電流モニターと、前記基板と前記電流モニターとの間に配置され、前記イオンビームの走査方向と同一方向に移動可能で、かつ、所定幅の短冊状の遮蔽板とを具備したイオンビーム分布測定装置を備えた構成とした。
【0029】
請求項3に記載のイオン注入装置は、前記イオンビーム分布測定装置において、前記基板と前記電流モニターとの間に配置された前記遮蔽板は、前記イオンビームの電流モニターの前面から取り外し可能である構成とした。
【0030】
請求項4に記載のイオン注入装置は、前記イオンビーム分布測定装置において、前記遮蔽板に形成された単一のスリットの下流側に、二次電子が前記イオンビームの電流モニターに入射するのを防止する永久磁石を取り付けるように構成した。
【0031】
請求項5に記載のイオン注入装置は、前記イオンビーム分布測定装置において、前記単一のスリットを有する遮蔽板を前記イオンビームの電流モニターの前面から取り外した状態でのビーム電流量と、前記単一のスリットを有する遮蔽板が前記イオンビームの電流モニターの前面にある状態で、この遮蔽板をイオンビームの走査方向に移動させながら、前記遮蔽板のスリットの位置、及び、前記遮蔽板のスリットを透過したイオンビームの電流量とを記憶する電子回路又はコンピュータを具備した構成とした。
【0032】
請求項6に記載のイオン注入装置は、前記イオンビーム分布測定装置において、前記短冊状の遮蔽板を前記イオンビームの電流モニターの前面から取り外した状態でのビーム電流量と、前記短冊状の遮蔽板が前記イオンビームの電流モニターの前面にある状態で、この遮蔽板をイオンビームの走査方向に移動させながら、前記遮蔽板の位置、及び、前記遮蔽板が遮蔽したイオンビームの電流量とを記憶する電子回路又はコンピュータを具備した構成とした。
【0033】
請求項7に記載のイオン注入装置は、イオンを生成するイオン源から所望のイオン種を引き出し、所望のエネルギーに加速又は減速し、前記イオンを走査器により半導体ウェーハ等の基板の注入面にイオンを走査して注入するイオン注入装置において、前記走査器の上流側に、前記イオンビームの前記基板の走査面における密度分布のテール部分を除去する、スリット幅が可変なビーム成形スリットを配置するように構成した。
【0034】
請求項8に記載のイオン注入装置は、請求項1乃至6のいずれかに記載のイオン注入装置において、前記走査器の上流側に、前記イオンビームの前記基板の走査面における密度分布のテール部分を除去する、スリット幅が可変なビーム成形スリットを配置するように構成した。
【0035】
請求項9に記載のイオン注入装置は、イオンビームを走査した状態で、前記イオンビーム分布測定装置において計測されたイオンビームの前記基板の走査面におけるドーズ量分布から、イオンビームの均一な照射効率が最適値を含む所定値以上となるような前記ビーム成形スリットの幅を調整する制御機構を備えた構成とした。
【0036】
請求項10に記載のイオン注入装置は、イオンビームを走査しない状態で、前記イオンビーム分布測定装置において計測されたイオンビームの前記基板の走査面における密度分布から、イオンビームの均一な照射効率が最適値を含む所定値以上となるような前記ビーム成形スリットの幅を調整する制御機構を備えた構成とした。
【発明の効果】
【0037】
本発明のイオン注入装置は、上述のように構成したために、以下のような優れた効果を有する。
(1)請求項1に記載したように構成すると、電流モニターを単一のものにすることが可能となり、従来の場合に比べて個体差による測定誤差がなくなり、測定値の校正が不要になり、イオン注入装置の立ち上げ時間を大幅に短縮することができる。
(2)また、可動部分が電流計測には直接関係しない遮蔽板のために、電気的なノイズが発生する恐れがなく、多数の電流モニターを用いないので、コストが大幅に削減でき、電流モニターに取り付ける配線も大幅に減らすことができる。
【0038】
(3)請求項2に記載したように構成すると、請求項1同様に、電流モニターを単一のものにすることが可能となり、従来の場合に比べて個体差による測定誤差がなくなり、測定値の校正が不要になり、イオン注入装置の立ち上げ時間を大幅に短縮することができる。
(4)また、可動部分が電流計測には直接関係しない遮蔽板のために、電気的なノイズが発生する恐れがなく、多数の電流モニターを用いないので、コストが大幅に削減でき、電流モニターに取り付ける配線も大幅に減らすことができる。
【0039】
(5)請求項3に記載したように構成すると、遮蔽板を電流モニター前面から取り外すことにより、イオンビーム電流の総量が測定できる。
【0040】
(6)請求項4に記載したように構成すると、イオンビームが照射されて、遮蔽板のスリットの側壁等から出る二次電子が、電流モニターに入射するのを防ぐことができる。
【0041】
(7)請求項5に記載したように構成すると、基板の走査面上におけるイオンビームの分布を正確に測定し、記憶することができるようになる。
【0042】
(8)請求項6に記載したように構成すると、請求項5同様に、基板の走査面上におけるイオンビームの分布を正確に測定し、記憶することができるようになる。
【0043】
(9)請求項7に記載したように構成すると、基板の走査面上におけるイオンビームの密度分布のテール部分を除去でき、イオンビームの走査範囲を狭めることができるので、スループットの低下を防止でき、イオンの注入効率を向上することができる。
【0044】
(10)請求項8に記載したように構成すると、基板の走査面上におけるイオンビームの分布を測定し、この測定値に基づいて、除去すべき密度分布のテール部分を算出し、イオンビームの走査範囲を定めることができるので、イオンの注入効率を一層向上させることができる。
【0045】
(11)請求項9に記載したように構成すると、基板の走査面上におけるイオンビームのドーズ量分布に対応して、ビーム成形スリットのスリット幅を制御することで、迅速に、イオンの注入効率を向上することができる。
【0046】
(12)請求項10のように、イオンビームを走査しない状態で測定した前記基板の走査面における密度分布に対応して、ビーム成形スリットのスリット幅を制御することで、迅速に、イオンの注入効率を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
本発明のイオン注入装置の第1乃至第4の実施の形態について、図1乃至図8を用いて、順次、説明する。
【0048】
第1の実施の形態
先ず、本発明のイオン注入装置の第1の実施の形態について、図1及び図2を用い、図9及び図10を参照して説明する。
図1は、本発明のイオン注入装置の第1の実施の形態に用いるイオンビーム分布測定装置10の構成を示す外観斜視図である。
また、図2は、本発明のイオン注入装置の第1の実施の形態に用いるイオンビーム分布測定装置10の基本動作を説明する外観斜視図である。
【0049】
本実施の形態のイオン注入装置の特徴は、図9に示す従来のイオン注入装置100において、基板170の下流側にイオンビーム分布測定装置10を取り付けた点である。
従って、基板170の上流側では、従来のイオン注入装置100と同一の構成であり、その説明については割愛し、以下、本実施の形態のイオン注入装置に用いるイオンビーム分布測定装置10を中心に説明する。
【0050】
先ず、本実施の形態のイオン注入装置に用いるイオンビーム分布測定装置10の基本構成について説明する。
このイオンビーム分布測定装置10は、イオン注入装置において、基板170の下流側に配置され(図9参照)、イオンビームBの電流値を計測する電流モニターとして一般的なファラデーカップ20と、基板170とこのファラデーカップ20との間に配置され、単一のスリット32が形成された遮蔽板30と、この遮蔽板30に形成されたスリット32の下流側に配置された1対の永久磁石40A、40Bから構成される。
なお、図1及び図2において、22は、ファラデーカップ20の電流計である。
【0051】
ファラデーカップ20は、イオンビームを走査器160(図9参照)により、基板170の走査面に走査した場合、イオンビームの電流量が測定できる十分な幅を有している。
遮蔽板30は、図1に示すように、イオンビームBの走査方向と同一方向に、遮蔽板ホルダー36を介して機械的に移動可能である。
また、この遮蔽板ホルダー36は軸回転自在であり、遮蔽板30は、例えば、図2に示すように水平に倒すことにより、ファラデーカップ20の前面から取り外し可能である。
【0052】
また、図示は省略するが、本実施の形態のイオン注入装置に用いるイオンビーム分布測定装置10では、遮蔽板30をファラデーカップ20の前面から取り外した状態でのビーム電流量と、遮蔽板30がファラデーカップ20の前面にある状態で、遮蔽板30のスリット32の位置、及び、遮蔽板30のスリット32を透過したイオンビームの電流量を記憶するコンピュータを備えている。
【0053】
本実施の形態のイオン注入装置に用いるイオンビーム分布測定装置10を以上のように構成すると、図1に示すように、遮蔽板30がファラデーカップ20の前面にある状態で、遮蔽板30のスリット32の位置、及び、その位置おける遮蔽板30のスリットを透過したイオンビームの電流量が測定できる上に、コンピュータに記憶することが可能になる。
また、図2に示すように、遮蔽板30を水平に傾け、ファラデーカップ20の前面から遮蔽板30を取り外した状態でのビーム電流量を測定することにより、イオンビーム全体の総電流量を測定することができる。
【0054】
従って、本実施の形態のイオン注入装置では、従来のものとは相違して、位置分解能を得るための多数のファラデーカップ204を用いないで済むので、電流モニターを単一のファラデーカップ20にすることが可能となり、従来の場合に比べて個体差による測定誤差がなくなり、測定値の校正が不要になり、立ち上げ時間を大幅に短縮することができる。
また、可動部分が電流計測には直接関係しない遮蔽板30のために、電気的なノイズが発生する虞がなく、多数のファラデーカップ204を用いないので、コストが大幅に削減でき、ファラデーカップ20に取り付ける配線も大幅に減らすことができる(図9参照)。
更に、遮蔽板30に形成するスリット32の幅を調整することにより、測定されるイオンビームの分布の精度を所望のクラスまで上げることができる。
【0055】
また、遮蔽板30に形成されたスリット32の下流側に、1対の永久磁石40A、40Bを配置することにより、イオンビームBが照射されて、遮蔽板30のスリット32の側壁等から二次電子が放出された場合でも、この電子は永久磁石40A、40Bにトラップされるか、又は、大きく進路が曲げられるので、ファラデーカップ20に入射するのを防ぐことができ、測定データの信頼度が向上する。
【0056】
第2の実施の形態:
次に、本発明のイオン注入装置の第2の実施の形態について、図3乃至図5を用い、図9を参照して説明する。
図3は、本発明のイオン注入装置の第2の実施の形態に用いるイオンビーム分布測定装置10Bの構成を示す外観斜視図である。
図4及び図5は、本発明のイオン注入装置の第2の実施の形態に用いるイオンビーム分布測定装置10Bの測定電流量と遮蔽板の位置との関係を示す特性曲線である。
【0057】
本実施の形態のイオン注入装置の特徴は、上記第1の実施の形態と同様に、図9に示す従来のイオン注入装置100において、図3に示す基板170の下流側にイオンビーム分布測定装置10Bを取り付けた点である。
ところで、上記第1の実施の形態では、イオンビーム分布測定装置10に単一のスリット32を有する遮蔽板30を用いた例で説明した。
一方、本実施の形態のイオンビーム分布測定装置10Bでは、基板170とファラデーカップ20との間に配置され、図3に示すような、イオンビームBの走査方向と同一方向に移動可能で、かつ、所定幅の短冊状の遮蔽板50を用いている。
【0058】
この場合、短冊状の遮蔽板50をファラデーカップ20の前面から取り外した状態でビーム電流量を測定することにより、ビーム全体の総電流量が測定できるが、このビームの総電流量を図4において、破線Tで示す。
一方、図3に示すように、遮蔽板50がファラデーカップ20の前面にある状態で、遮蔽板50を走査方向に移動させた場合の遮蔽板50の位置と、ファラデーカップ20に入射したイオンビームBの電流量を計測できるが、これを図4において、曲線Sで示す。
【0059】
遮蔽板50がファラデーカップ20の前面にある状態で、遮蔽板50を走査方向に移動させた場合の電流量Sは、遮蔽板50に遮蔽されなかった残りのイオンビームBの電流量を測定することになる。
従って、図5に示すように、総電流量Tから電流量Sを差し引くことにより、遮蔽板50の位置と、遮蔽板50に遮蔽されたイオンビームBの電流量、即ち、遮蔽板50の位置にあるイオンビームの分布が算出され、これにより、基板170の走査面内におけるイオンビームの分布が測定できる。
従って、第2の実施の形態のイオンビーム分布測定装置10Bでも、第1の実施の形態のものと同様の効果が得られることになる。
【0060】
第3の実施の形態
次に、本発明のイオン注入装置の第3の実施の形態について、図6乃至図8を用いて説明する。
図6は、本発明のイオン注入装置の第3の実施の形態を説明するための要部平面図である。
図7は、本発明のイオン注入装置の基本動作を説明するために、イオンビームの基板の走査面における密度分布のテール部分の影響を示す模式図である。
図8は、本発明のイオン注入装置において、イオンビームの基板の走査面における密度分布のテール部分を除去した状態を示す模式図である。
【0061】
本実施の形態のイオン注入装置は、図6に示すように、従来のイオン注入装置100において(図9参照)、走査器160の上流側に、イオンビームBの基板170の走査面における密度分布のテール部分を除去できるスリット幅が可変なビーム成形スリット60を配置するようにしたことを特徴としている。
なお、本実施の形態では、このビーム成形スリット60は、加速管140と四重極レンズ150の間に配置した構成のもので示しているが、この箇所に限定されるものではない。
【0062】
このように構成すると、例えば、図7に示すように、イオンビームの基板170の走査面の密度分布におけるテール部分の広がりが大きい場合、スループットが低下する問題があることは上述したが、ビーム成形スリット60により、図6の矢印で示すように、成形スリット60のスリット幅を調整することにより、このテール部分をカットすれば、図8に示すように、走査器160によりビームを走査する走査範囲が小さくできる。
即ち、本実施の形態のイオン注入装置では、ビーム成形スリット60を用いることにより、イオンビームBの密度分布のテール部分の悪影響を除去することにより、無駄に走査されるイオンビームBの量を少なくするのが可能になり、スループットが増大し、イオンの注入効率が向上する。
【0063】
第4の実施の形態
次に、本発明の第4の実施の形態について図1、図2及び図6を参照して説明する。
上記第3の実施の形態では、ビーム成形スリット60により、イオンビームの密度分布のテール部分を除去し、スループットが増大することを説明したが、ビーム成形スリット60のスリット幅を絞りすぎて、このテール部分をカットしすぎると、走査器160による走査範囲は狭まるものの、成形スリット60を通過するイオンビームの総量が低下し、逆に、イオン注入効率が低下してしまう恐れがある。
【0064】
そこで、本実施の形態のイオン注入装置では、第1の実施の形態で示したイオンビーム分布測定装置10と、ビーム成形スリット60と、このスリット幅を制御する制御機構を具備している構成とした。
イオンビーム分布測定装置10と、ビーム成形スリット60の特徴については、上述している関係上、改めて説明はしない。
【0065】
一方、このスリット幅を制御する制御機構は、イオンビームを走査した状態で、イオンビーム分布測定装置10により基板170の走査面におけるドーズ量分布を測定し、この分布に基づいて、テール部分が除去されることによるイオン注入量減少と、テール部分が除去されることにより、走査器160により走査される走査範囲が狭まることにより注入量が増加することの利得計算を行い、イオンビームの均一な照射効率が、最適値を含む所定値以上となるようなビーム成形スリット60の幅を調整する機能を有している。
また、イオンビームを走査しない状態で、イオンビーム分布測定装置10により基板170の走査面における密度分布を測定し、この分布に基づいて、テール部分が除去されることによるイオン注入量減少と、テール部分が除去されることにより、走査器160により走査される走査範囲が狭まることにより注入量が増加することの利得計算を行っても良い。
【0066】
このような構成としておくと、注入するイオン種、注入エネルギー、ビームクオリティー、運転条件等の各パラメーターが様々に変化した場合でも、迅速に、最適若しくは好適なビーム成形を行い、イオンの注入効率を向上させることができる。
【0067】
本発明のイオン注入装置の走査器は、上記各実施の形態には限定されず、種々の変更が可能である。
先ず、上記実施の形態としては、イオンの電流モニターとして一般的なファラデーカップを用いたもので説明したが、他の電流モニターを用いても良い。
また、図9に示した構成のイオン注入装置の例で説明したが、走査器を用いてイオンビームを走査して基板にイオンを注入する装置全般に本発明が適用できる。
更に、上記実施の形態では、遮蔽板が水平方向に移動する例で説明したが、垂直方向にイオンビームを走査する場合は、遮蔽板も垂直方向に移動するものとする。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明のイオン注入装置の第1の実施の形態に用いるイオンビーム分布測定装置の構成を示す外観斜視図である。
【図2】本発明のイオン注入装置の第1の実施の形態に用いるイオンビーム分布測定装置の基本動作を説明する外観斜視図である。
【図3】本発明のイオン注入装置の第2の実施の形態に用いるイオンビーム分布測定装置の構成を示す外観斜視図である。
【図4】本発明のイオン注入装置の第2の実施の形態に用いるイオンビーム分布測定装置の測定電流量と遮蔽板の位置との関係を示す特性曲線である。
【図5】本発明のイオン注入装置の第2の実施の形態に用いるイオンビーム分布測定装置の測定電流量と遮蔽板の位置との関係を示す特性曲線である。
【図6】本発明のイオン注入装置の第3の実施の形態を説明する要部平面図である。
【図7】本発明のイオン注入装置の基本動作を説明するために、イオンビームの基板の走査面における密度分布のテール部分の影響を示す模式図である。
【図8】本発明のイオン注入装置において、イオンビームの基板の走査面における密度分布のテール部分を除去した状態を示す模式図である。
【図9】従来のイオン注入装置の概略構成を示す平面図である。
【図10】従来のイオン注入装置が用いているビーム分布モニターの外観構成を示す斜視図である。
【図11】従来のイオン注入装置において、イオンビームの基板の走査面における密度分布のテール部分が狭い場合を示す模式図である。
【図12】従来のイオン注入装置において、イオンビームの基板の走査面における密度分布のテール部分が広い場合を示す模式図である。
【符号の説明】
【0069】
10:イオンビーム分布測定装置
20:ファラデーカップ(ビーム電流モニター)
30:遮蔽板
32:スリット
40A、40B:永久磁石
60:ビーム成形スリット
160:走査器
B:イオンビーム
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン注入装置に係り、特に、低コストのイオンビーム分布測定装置を備えると共に、イオン注入のスループットを向上したイオン注入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
イオン源からのイオンを所望のエネルギーに加速し、半導体等の固体表面に注入する種々のタイプのイオン注入装置が実用に供されている(特許文献1参照)。
以下、従来のイオン注入装置の一例について、図9及び図10を用いて説明する。
図9は、従来のイオン注入装置の概略構成を示す平面図である。
図10は、従来のイオン注入装置が用いているビーム分布モニターの外観構成を示す斜視図である。
【0003】
イオン注入装置100の主要構成は、図9に示すように、イオン源110、質量分離器120、質量分離スリット130、加速管140、四重極レンズ150、走査器160、平行化装置180、ファラデーカップ等のイオンビームの電流モニター190、ビーム分布モニター200である。
なお、同図中170は、図示しないエンドステーションに配置されたイオンを注入するターゲットとなる基板である。
また、Bはイオンであるが、以下、「イオンビーム」又は「ビーム」という場合がある。
【0004】
イオン源110は、原子や分子から電子を剥ぎ取ってイオンを生成する装置である。
質量分離器120は、イオンや電子等の荷電粒子が磁場又は電場中で偏向される性質を利用して、磁場、或いは、電場、又は、その双方を発生して、基板170に注入したいイオン種を特定するための装置である。
【0005】
加速管140は、質量分離スリット130を通過した所望のイオン種を加速又は減速する装置であるが、図9に示すように、通常は軸対象で、複数の電極を等間隔に並べ、それらの電極に等しい高電圧を印加して、静電界の作用により、イオンビームBを所望の注入エネルギーに加速又は減速する。
【0006】
走査器160は、イオンビームBの進行方向と直交する方向に一様な外部電界を発生させ、この電界の極性や強度を変化させることにより、イオンの偏向角度を制御し、図9に示すように、基板170の注入面の所望の位置にイオンBを走査し、均一に注入する。
【0007】
以下、所望のイオン種を注入したい基板170の注入面を含む平面を「走査面」といい、また、イオンビームBの「走査方向」とは、走査器160によりイオンビームが偏向される方向をいうものとする。
なお、図9では、水平方向にイオンビームBを偏向する走査器160を示したが、垂直方向に偏向する走査器も用いられる場合がある。
【0008】
また、図9に示すように、基板170の下流側にはイオンビームBの電流モニターとして一般的なファラデーカップ190が、更に、このファラデーカップ190の下流には、ビーム分布モニター200が配置されている。
なお、図9において、192及び202は電流計である。
【0009】
従来のビーム分布モニター200は非特許文献1に記載されているが、図10に示すように、複数の小さなファラデーカップ204が所定幅の間隙を隔てて、ビームの走査方向に多数並んだ構造となっている。
【0010】
以上の構成において、次に、従来のイオン注入装置100の基本動作を図9を用いて説明する。
従来のイオン注入装置100では、基板170のイオンBの注入面全面に渡って一様な密度で所定のイオン種を所定のエネルギーでイオン注入を行うために、イオン源110から例えば30keV程度のエネルギーで引き出されたイオンビームBは、質量分離器120で偏向され、質量分離スリット130で所定のイオン種のみが選別される。
【0011】
選別されたイオンビームBは加速管140で、10〜500keV程度のエネルギーに加速又は減速され、例えば1kHz程度の周期の外部電界を走査器160に印加し、基板170の走査面に走査される。
なお、上記では、外部電界によりイオンビームBをスキャンする静電タイプの走査器160を取り上げたが、走査器160には静電タイプの代わりに磁気タイプのものが用いられる場合がある。
【0012】
また、図9に示すように、イオンビームBの基板170上でのビームスポット形状を調整するために、加速管140と走査器160との間に四重極レンズ150等の調整装置を設置する場合が多い。
走査器160の下流側には、ビームBを平行にするための平行化装置180を設置する場合もある。
従って、図9には、四重極レンズ150、及び、平行化装置180を図示しているが、必ずしも、イオン注入装置100の必須の構成要素ではない。
【0013】
イオンBが固体中に入り込む深さは、イオンBのエネルギーで正確に制御できるので、例えば、イオン注入装置100の立ち上げ時等で、イオンビームのドーズ量分布をモニタリングすると、基板170の注入面にイオンビームBを走査することにより所望のイオン種の均一なイオン注入処理が容易に行える。
【0014】
【特許文献1】特開平8−213339号
【非特許文献1】T.Hisamune et al. Proceedings of Int. Conf. on Ion Implantation Technology, IEEE98EX144(1999)411-
【非特許文献2】T.Kunibe et al. Proceedings of Int. Conf. on Ion Implantation Technology, IEEE98EX144(1999)424-
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ところで、半導体デバイスの微細化に伴い、イオン注入装置に関して、基板に注入されるドーズ量とその面均一性に対する要求は、ますます厳しくなっている。 具体的には、基板の注入面内でのドーズ量の分布は、3σの範囲内で1%以下の均一精度が要求されている。
また、イオン注入装置の稼働効率の関係から、装置の立ち上げ時間の短縮、及び、イオンの注入効率の関係からスループットの向上も当然求められる。
【0016】
そこで、以下、従来のイオン注入装置における高い精度でのドーズ量の面均一性を得るためのイオン注入方法について、図9を用いて説明する。
イオンビームBを走査器160で走査した場合、走査角度によって走査器160から基板170まで、例えば、平行化装置180などでのイオンビームBの経路が相違し、ビーム光学上の性質が若干異なるため、基板170上でのイオンビームBのスポット形状は若干異なるのが一般的である。
【0017】
このため、走査器160に印加する外部電界の波形を単純な三角波とし、この三角波でイオンビームBを走査すると、基板170の上でのドーズ量の面内均一性を得られなくなってしまう恐れがある。
これを補正するために、基板170に注入する以前に、基板170をビームライン上から取り外して、ビーム分布モニター200に照射し、ビーム分布モニター200で基板170の走査面内でのビームのドーズ量の分布を計測し、この分布が一様になるように、走査器160に印加する外部電界の走査波形を調整することを行う。
【0018】
例えば、イオンビームのドーズ量の分布がある領域で、平均より5%多いとすると、その領域に対応する走査角度での走査速度が5%速くなるように、走査器160に印加する外部電界の走査波形を調整する。
なお、ビームを走査しないで、ビーム分布モニター200に照射しながら四重極レンズ150などを操作して、ビームの形状を調整する場合もある。
【0019】
次に、従来のイオン注入装置100に用いるビーム分布モニター200の問題点について、図10を用いて説明する。
上述したように、ビームの分布をモニターする機構は、基板170の注入面における高い精度でのドーズ量の面均一性を得るためには必須である。
【0020】
しかし、従来のイオン注入装置100のビーム分布モニター200では、多数のファラデーカップ204を用い、且つ、そのファラデーカップ204の一部を機械的に可動とする必要があった。
一般に、多数のファラデーカップ204を用いた場合、それらの個体差を補正するために、各多数のファラデーカップ204の各測定値の校正が必要であり、また、その校正を行ったとしても、若干の誤差は残ってしまうという問題を備えている。
【0021】
また、ファラデーカップ204の一部を機械的に可動とすると、電気的な雑音を防ぐ機構も必要である。
このように、従来のイオン注入装置100では、多数のファラデーカップ204を用いることによる誤差が伴うという問題や、その校正のためにイオン注入装置100の立ち上げ時間が長いという問題と、また、機械的な可動機構に電気的な雑音対策をとる必要があり、高価になってしまうという問題があった。
【0022】
また、イオンビームの密度分布は周辺部にテールを持つ場合が多いが、テール部分が大きく広がっていると、走査しなければならない走査角度の範囲が大きくなり、この結果として、スループットが低下し、イオン注入の注入効率が悪くなるという問題がある。
【0023】
この問題について、図11及び図12を用いて説明する。
図11は、従来のイオン注入装置100において、イオンビームBの基板170の走査面における密度分布のテール部分が狭い場合を示す図である。
図12は、従来のイオン注入装置100において、イオンビームBの基板170の走査面における密度分布のテール部分が広い場合を示す図である。
【0024】
ところで、一般に、イオンビームの光軸に直交する面内でのイオンの密度分布は、非特許文献2に記載されているように、中心部分が高く、周辺にテールを持っている形状である。
そこで、密度分布のテール部分が基板170の周辺に当たってしまい、周辺部のドーズが設定値よりも大きくなってしまうのを避けるために、図11及び図12に示すように、イオンビームBをそのテールの部分も含めて、ほぼ完全に基板170の外に出るまで走査器160で偏向する必要がある。
【0025】
従って、図11に示すように、イオンビームの密度分布のテール幅が小さい場合は、イオンビームBを走査する走査範囲が小さくて済むが、一方、図11に示すように、イオンビームBの密度分布のテール幅が大きい場合は、イオンビームBを走査する走査範囲が大きくなる。
イオンビームBの走査器160による走査範囲が大きくなると、基板170の注入面に注入されないイオンビームの量が増大するために、イオン注入のスループットが低下し、注入効率が悪化する。
従って、イオンビームの密度分布のテール部分による悪影響を除去する必要がある。
【0026】
本発明は、上記従来の課題を解決し、低コストのイオンビーム分布測定装置を備えると共に、イオン注入のスループットを向上したイオン注入装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明のイオン注入装置は、請求項1に記載のものでは、イオンを生成するイオン源から所望のイオン種を引き出し、所望のエネルギーに加速又は減速し、前記イオンを走査器により半導体ウェーハ等の基板の注入面にイオンを走査して注入するイオン注入装置において、前記基板の下流側に配置され、イオンビームの電流値を計測するファラデーカップ等の電流モニターと、前記基板と前記電流モニターとの間に配置され、前記イオンビームの走査方向と同一方向に移動可能で、かつ、単一のスリットを有する遮蔽板とを具備したイオンビーム分布測定装置を備えた構成とした。
【0028】
請求項2に記載のイオン注入装置は、イオンを生成するイオン源から所望のイオン種を引き出し、所望のエネルギーに加速又は減速し、前記イオンを走査器により半導体ウェーハ等の基板の注入面にイオンを走査して注入するイオン注入装置において、前記基板の下流側に配置され、イオンビームの電流値を計測するファラデーカップ等の電流モニターと、前記基板と前記電流モニターとの間に配置され、前記イオンビームの走査方向と同一方向に移動可能で、かつ、所定幅の短冊状の遮蔽板とを具備したイオンビーム分布測定装置を備えた構成とした。
【0029】
請求項3に記載のイオン注入装置は、前記イオンビーム分布測定装置において、前記基板と前記電流モニターとの間に配置された前記遮蔽板は、前記イオンビームの電流モニターの前面から取り外し可能である構成とした。
【0030】
請求項4に記載のイオン注入装置は、前記イオンビーム分布測定装置において、前記遮蔽板に形成された単一のスリットの下流側に、二次電子が前記イオンビームの電流モニターに入射するのを防止する永久磁石を取り付けるように構成した。
【0031】
請求項5に記載のイオン注入装置は、前記イオンビーム分布測定装置において、前記単一のスリットを有する遮蔽板を前記イオンビームの電流モニターの前面から取り外した状態でのビーム電流量と、前記単一のスリットを有する遮蔽板が前記イオンビームの電流モニターの前面にある状態で、この遮蔽板をイオンビームの走査方向に移動させながら、前記遮蔽板のスリットの位置、及び、前記遮蔽板のスリットを透過したイオンビームの電流量とを記憶する電子回路又はコンピュータを具備した構成とした。
【0032】
請求項6に記載のイオン注入装置は、前記イオンビーム分布測定装置において、前記短冊状の遮蔽板を前記イオンビームの電流モニターの前面から取り外した状態でのビーム電流量と、前記短冊状の遮蔽板が前記イオンビームの電流モニターの前面にある状態で、この遮蔽板をイオンビームの走査方向に移動させながら、前記遮蔽板の位置、及び、前記遮蔽板が遮蔽したイオンビームの電流量とを記憶する電子回路又はコンピュータを具備した構成とした。
【0033】
請求項7に記載のイオン注入装置は、イオンを生成するイオン源から所望のイオン種を引き出し、所望のエネルギーに加速又は減速し、前記イオンを走査器により半導体ウェーハ等の基板の注入面にイオンを走査して注入するイオン注入装置において、前記走査器の上流側に、前記イオンビームの前記基板の走査面における密度分布のテール部分を除去する、スリット幅が可変なビーム成形スリットを配置するように構成した。
【0034】
請求項8に記載のイオン注入装置は、請求項1乃至6のいずれかに記載のイオン注入装置において、前記走査器の上流側に、前記イオンビームの前記基板の走査面における密度分布のテール部分を除去する、スリット幅が可変なビーム成形スリットを配置するように構成した。
【0035】
請求項9に記載のイオン注入装置は、イオンビームを走査した状態で、前記イオンビーム分布測定装置において計測されたイオンビームの前記基板の走査面におけるドーズ量分布から、イオンビームの均一な照射効率が最適値を含む所定値以上となるような前記ビーム成形スリットの幅を調整する制御機構を備えた構成とした。
【0036】
請求項10に記載のイオン注入装置は、イオンビームを走査しない状態で、前記イオンビーム分布測定装置において計測されたイオンビームの前記基板の走査面における密度分布から、イオンビームの均一な照射効率が最適値を含む所定値以上となるような前記ビーム成形スリットの幅を調整する制御機構を備えた構成とした。
【発明の効果】
【0037】
本発明のイオン注入装置は、上述のように構成したために、以下のような優れた効果を有する。
(1)請求項1に記載したように構成すると、電流モニターを単一のものにすることが可能となり、従来の場合に比べて個体差による測定誤差がなくなり、測定値の校正が不要になり、イオン注入装置の立ち上げ時間を大幅に短縮することができる。
(2)また、可動部分が電流計測には直接関係しない遮蔽板のために、電気的なノイズが発生する恐れがなく、多数の電流モニターを用いないので、コストが大幅に削減でき、電流モニターに取り付ける配線も大幅に減らすことができる。
【0038】
(3)請求項2に記載したように構成すると、請求項1同様に、電流モニターを単一のものにすることが可能となり、従来の場合に比べて個体差による測定誤差がなくなり、測定値の校正が不要になり、イオン注入装置の立ち上げ時間を大幅に短縮することができる。
(4)また、可動部分が電流計測には直接関係しない遮蔽板のために、電気的なノイズが発生する恐れがなく、多数の電流モニターを用いないので、コストが大幅に削減でき、電流モニターに取り付ける配線も大幅に減らすことができる。
【0039】
(5)請求項3に記載したように構成すると、遮蔽板を電流モニター前面から取り外すことにより、イオンビーム電流の総量が測定できる。
【0040】
(6)請求項4に記載したように構成すると、イオンビームが照射されて、遮蔽板のスリットの側壁等から出る二次電子が、電流モニターに入射するのを防ぐことができる。
【0041】
(7)請求項5に記載したように構成すると、基板の走査面上におけるイオンビームの分布を正確に測定し、記憶することができるようになる。
【0042】
(8)請求項6に記載したように構成すると、請求項5同様に、基板の走査面上におけるイオンビームの分布を正確に測定し、記憶することができるようになる。
【0043】
(9)請求項7に記載したように構成すると、基板の走査面上におけるイオンビームの密度分布のテール部分を除去でき、イオンビームの走査範囲を狭めることができるので、スループットの低下を防止でき、イオンの注入効率を向上することができる。
【0044】
(10)請求項8に記載したように構成すると、基板の走査面上におけるイオンビームの分布を測定し、この測定値に基づいて、除去すべき密度分布のテール部分を算出し、イオンビームの走査範囲を定めることができるので、イオンの注入効率を一層向上させることができる。
【0045】
(11)請求項9に記載したように構成すると、基板の走査面上におけるイオンビームのドーズ量分布に対応して、ビーム成形スリットのスリット幅を制御することで、迅速に、イオンの注入効率を向上することができる。
【0046】
(12)請求項10のように、イオンビームを走査しない状態で測定した前記基板の走査面における密度分布に対応して、ビーム成形スリットのスリット幅を制御することで、迅速に、イオンの注入効率を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
本発明のイオン注入装置の第1乃至第4の実施の形態について、図1乃至図8を用いて、順次、説明する。
【0048】
第1の実施の形態
先ず、本発明のイオン注入装置の第1の実施の形態について、図1及び図2を用い、図9及び図10を参照して説明する。
図1は、本発明のイオン注入装置の第1の実施の形態に用いるイオンビーム分布測定装置10の構成を示す外観斜視図である。
また、図2は、本発明のイオン注入装置の第1の実施の形態に用いるイオンビーム分布測定装置10の基本動作を説明する外観斜視図である。
【0049】
本実施の形態のイオン注入装置の特徴は、図9に示す従来のイオン注入装置100において、基板170の下流側にイオンビーム分布測定装置10を取り付けた点である。
従って、基板170の上流側では、従来のイオン注入装置100と同一の構成であり、その説明については割愛し、以下、本実施の形態のイオン注入装置に用いるイオンビーム分布測定装置10を中心に説明する。
【0050】
先ず、本実施の形態のイオン注入装置に用いるイオンビーム分布測定装置10の基本構成について説明する。
このイオンビーム分布測定装置10は、イオン注入装置において、基板170の下流側に配置され(図9参照)、イオンビームBの電流値を計測する電流モニターとして一般的なファラデーカップ20と、基板170とこのファラデーカップ20との間に配置され、単一のスリット32が形成された遮蔽板30と、この遮蔽板30に形成されたスリット32の下流側に配置された1対の永久磁石40A、40Bから構成される。
なお、図1及び図2において、22は、ファラデーカップ20の電流計である。
【0051】
ファラデーカップ20は、イオンビームを走査器160(図9参照)により、基板170の走査面に走査した場合、イオンビームの電流量が測定できる十分な幅を有している。
遮蔽板30は、図1に示すように、イオンビームBの走査方向と同一方向に、遮蔽板ホルダー36を介して機械的に移動可能である。
また、この遮蔽板ホルダー36は軸回転自在であり、遮蔽板30は、例えば、図2に示すように水平に倒すことにより、ファラデーカップ20の前面から取り外し可能である。
【0052】
また、図示は省略するが、本実施の形態のイオン注入装置に用いるイオンビーム分布測定装置10では、遮蔽板30をファラデーカップ20の前面から取り外した状態でのビーム電流量と、遮蔽板30がファラデーカップ20の前面にある状態で、遮蔽板30のスリット32の位置、及び、遮蔽板30のスリット32を透過したイオンビームの電流量を記憶するコンピュータを備えている。
【0053】
本実施の形態のイオン注入装置に用いるイオンビーム分布測定装置10を以上のように構成すると、図1に示すように、遮蔽板30がファラデーカップ20の前面にある状態で、遮蔽板30のスリット32の位置、及び、その位置おける遮蔽板30のスリットを透過したイオンビームの電流量が測定できる上に、コンピュータに記憶することが可能になる。
また、図2に示すように、遮蔽板30を水平に傾け、ファラデーカップ20の前面から遮蔽板30を取り外した状態でのビーム電流量を測定することにより、イオンビーム全体の総電流量を測定することができる。
【0054】
従って、本実施の形態のイオン注入装置では、従来のものとは相違して、位置分解能を得るための多数のファラデーカップ204を用いないで済むので、電流モニターを単一のファラデーカップ20にすることが可能となり、従来の場合に比べて個体差による測定誤差がなくなり、測定値の校正が不要になり、立ち上げ時間を大幅に短縮することができる。
また、可動部分が電流計測には直接関係しない遮蔽板30のために、電気的なノイズが発生する虞がなく、多数のファラデーカップ204を用いないので、コストが大幅に削減でき、ファラデーカップ20に取り付ける配線も大幅に減らすことができる(図9参照)。
更に、遮蔽板30に形成するスリット32の幅を調整することにより、測定されるイオンビームの分布の精度を所望のクラスまで上げることができる。
【0055】
また、遮蔽板30に形成されたスリット32の下流側に、1対の永久磁石40A、40Bを配置することにより、イオンビームBが照射されて、遮蔽板30のスリット32の側壁等から二次電子が放出された場合でも、この電子は永久磁石40A、40Bにトラップされるか、又は、大きく進路が曲げられるので、ファラデーカップ20に入射するのを防ぐことができ、測定データの信頼度が向上する。
【0056】
第2の実施の形態:
次に、本発明のイオン注入装置の第2の実施の形態について、図3乃至図5を用い、図9を参照して説明する。
図3は、本発明のイオン注入装置の第2の実施の形態に用いるイオンビーム分布測定装置10Bの構成を示す外観斜視図である。
図4及び図5は、本発明のイオン注入装置の第2の実施の形態に用いるイオンビーム分布測定装置10Bの測定電流量と遮蔽板の位置との関係を示す特性曲線である。
【0057】
本実施の形態のイオン注入装置の特徴は、上記第1の実施の形態と同様に、図9に示す従来のイオン注入装置100において、図3に示す基板170の下流側にイオンビーム分布測定装置10Bを取り付けた点である。
ところで、上記第1の実施の形態では、イオンビーム分布測定装置10に単一のスリット32を有する遮蔽板30を用いた例で説明した。
一方、本実施の形態のイオンビーム分布測定装置10Bでは、基板170とファラデーカップ20との間に配置され、図3に示すような、イオンビームBの走査方向と同一方向に移動可能で、かつ、所定幅の短冊状の遮蔽板50を用いている。
【0058】
この場合、短冊状の遮蔽板50をファラデーカップ20の前面から取り外した状態でビーム電流量を測定することにより、ビーム全体の総電流量が測定できるが、このビームの総電流量を図4において、破線Tで示す。
一方、図3に示すように、遮蔽板50がファラデーカップ20の前面にある状態で、遮蔽板50を走査方向に移動させた場合の遮蔽板50の位置と、ファラデーカップ20に入射したイオンビームBの電流量を計測できるが、これを図4において、曲線Sで示す。
【0059】
遮蔽板50がファラデーカップ20の前面にある状態で、遮蔽板50を走査方向に移動させた場合の電流量Sは、遮蔽板50に遮蔽されなかった残りのイオンビームBの電流量を測定することになる。
従って、図5に示すように、総電流量Tから電流量Sを差し引くことにより、遮蔽板50の位置と、遮蔽板50に遮蔽されたイオンビームBの電流量、即ち、遮蔽板50の位置にあるイオンビームの分布が算出され、これにより、基板170の走査面内におけるイオンビームの分布が測定できる。
従って、第2の実施の形態のイオンビーム分布測定装置10Bでも、第1の実施の形態のものと同様の効果が得られることになる。
【0060】
第3の実施の形態
次に、本発明のイオン注入装置の第3の実施の形態について、図6乃至図8を用いて説明する。
図6は、本発明のイオン注入装置の第3の実施の形態を説明するための要部平面図である。
図7は、本発明のイオン注入装置の基本動作を説明するために、イオンビームの基板の走査面における密度分布のテール部分の影響を示す模式図である。
図8は、本発明のイオン注入装置において、イオンビームの基板の走査面における密度分布のテール部分を除去した状態を示す模式図である。
【0061】
本実施の形態のイオン注入装置は、図6に示すように、従来のイオン注入装置100において(図9参照)、走査器160の上流側に、イオンビームBの基板170の走査面における密度分布のテール部分を除去できるスリット幅が可変なビーム成形スリット60を配置するようにしたことを特徴としている。
なお、本実施の形態では、このビーム成形スリット60は、加速管140と四重極レンズ150の間に配置した構成のもので示しているが、この箇所に限定されるものではない。
【0062】
このように構成すると、例えば、図7に示すように、イオンビームの基板170の走査面の密度分布におけるテール部分の広がりが大きい場合、スループットが低下する問題があることは上述したが、ビーム成形スリット60により、図6の矢印で示すように、成形スリット60のスリット幅を調整することにより、このテール部分をカットすれば、図8に示すように、走査器160によりビームを走査する走査範囲が小さくできる。
即ち、本実施の形態のイオン注入装置では、ビーム成形スリット60を用いることにより、イオンビームBの密度分布のテール部分の悪影響を除去することにより、無駄に走査されるイオンビームBの量を少なくするのが可能になり、スループットが増大し、イオンの注入効率が向上する。
【0063】
第4の実施の形態
次に、本発明の第4の実施の形態について図1、図2及び図6を参照して説明する。
上記第3の実施の形態では、ビーム成形スリット60により、イオンビームの密度分布のテール部分を除去し、スループットが増大することを説明したが、ビーム成形スリット60のスリット幅を絞りすぎて、このテール部分をカットしすぎると、走査器160による走査範囲は狭まるものの、成形スリット60を通過するイオンビームの総量が低下し、逆に、イオン注入効率が低下してしまう恐れがある。
【0064】
そこで、本実施の形態のイオン注入装置では、第1の実施の形態で示したイオンビーム分布測定装置10と、ビーム成形スリット60と、このスリット幅を制御する制御機構を具備している構成とした。
イオンビーム分布測定装置10と、ビーム成形スリット60の特徴については、上述している関係上、改めて説明はしない。
【0065】
一方、このスリット幅を制御する制御機構は、イオンビームを走査した状態で、イオンビーム分布測定装置10により基板170の走査面におけるドーズ量分布を測定し、この分布に基づいて、テール部分が除去されることによるイオン注入量減少と、テール部分が除去されることにより、走査器160により走査される走査範囲が狭まることにより注入量が増加することの利得計算を行い、イオンビームの均一な照射効率が、最適値を含む所定値以上となるようなビーム成形スリット60の幅を調整する機能を有している。
また、イオンビームを走査しない状態で、イオンビーム分布測定装置10により基板170の走査面における密度分布を測定し、この分布に基づいて、テール部分が除去されることによるイオン注入量減少と、テール部分が除去されることにより、走査器160により走査される走査範囲が狭まることにより注入量が増加することの利得計算を行っても良い。
【0066】
このような構成としておくと、注入するイオン種、注入エネルギー、ビームクオリティー、運転条件等の各パラメーターが様々に変化した場合でも、迅速に、最適若しくは好適なビーム成形を行い、イオンの注入効率を向上させることができる。
【0067】
本発明のイオン注入装置の走査器は、上記各実施の形態には限定されず、種々の変更が可能である。
先ず、上記実施の形態としては、イオンの電流モニターとして一般的なファラデーカップを用いたもので説明したが、他の電流モニターを用いても良い。
また、図9に示した構成のイオン注入装置の例で説明したが、走査器を用いてイオンビームを走査して基板にイオンを注入する装置全般に本発明が適用できる。
更に、上記実施の形態では、遮蔽板が水平方向に移動する例で説明したが、垂直方向にイオンビームを走査する場合は、遮蔽板も垂直方向に移動するものとする。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明のイオン注入装置の第1の実施の形態に用いるイオンビーム分布測定装置の構成を示す外観斜視図である。
【図2】本発明のイオン注入装置の第1の実施の形態に用いるイオンビーム分布測定装置の基本動作を説明する外観斜視図である。
【図3】本発明のイオン注入装置の第2の実施の形態に用いるイオンビーム分布測定装置の構成を示す外観斜視図である。
【図4】本発明のイオン注入装置の第2の実施の形態に用いるイオンビーム分布測定装置の測定電流量と遮蔽板の位置との関係を示す特性曲線である。
【図5】本発明のイオン注入装置の第2の実施の形態に用いるイオンビーム分布測定装置の測定電流量と遮蔽板の位置との関係を示す特性曲線である。
【図6】本発明のイオン注入装置の第3の実施の形態を説明する要部平面図である。
【図7】本発明のイオン注入装置の基本動作を説明するために、イオンビームの基板の走査面における密度分布のテール部分の影響を示す模式図である。
【図8】本発明のイオン注入装置において、イオンビームの基板の走査面における密度分布のテール部分を除去した状態を示す模式図である。
【図9】従来のイオン注入装置の概略構成を示す平面図である。
【図10】従来のイオン注入装置が用いているビーム分布モニターの外観構成を示す斜視図である。
【図11】従来のイオン注入装置において、イオンビームの基板の走査面における密度分布のテール部分が狭い場合を示す模式図である。
【図12】従来のイオン注入装置において、イオンビームの基板の走査面における密度分布のテール部分が広い場合を示す模式図である。
【符号の説明】
【0069】
10:イオンビーム分布測定装置
20:ファラデーカップ(ビーム電流モニター)
30:遮蔽板
32:スリット
40A、40B:永久磁石
60:ビーム成形スリット
160:走査器
B:イオンビーム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオンを生成するイオン源から所望のイオン種を引き出し、所望のエネルギーに加速又は減速し、前記イオンを走査器により半導体ウェーハ等の基板の注入面にイオンを走査して注入するイオン注入装置において、
前記基板の下流側に配置され、イオンビームの電流値を計測するファラデーカップ等の電流モニターと、前記基板と前記電流モニターとの間に配置され、前記イオンビームの走査方向と同一方向に移動可能で、かつ、単一のスリットを有する遮蔽板とを具備したイオンビーム分布測定装置を備えたことを特徴とするイオン注入装置。
【請求項2】
イオンを生成するイオン源から所望のイオン種を引き出し、所望のエネルギーに加速又は減速し、前記イオンを走査器により半導体ウェーハ等の基板の注入面にイオンを走査して注入するイオン注入装置において、
前記基板の下流側に配置され、イオンビームの電流値を計測するファラデーカップ等の電流モニターと、前記基板と前記電流モニターとの間に配置され、前記イオンビームの走査方向と同一方向に移動可能で、かつ、所定幅の短冊状の遮蔽板とを具備したイオンビーム分布測定装置を備えたことを特徴とするイオン注入装置。
【請求項3】
前記イオンビーム分布測定装置において、
前記基板と前記電流モニターとの間に配置された前記遮蔽板は、前記イオンビームの電流モニターの前面から取り外し可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載のイオン注入装置。
【請求項4】
前記イオンビーム分布測定装置において、
前記遮蔽板に形成された単一のスリットの下流側に、二次電子が前記イオンビームの電流モニターに入射するのを防止する永久磁石を取り付けるようにしたことを特徴とする請求項1又は3に記載のイオン注入装置。
【請求項5】
前記イオンビーム分布測定装置において、
前記単一のスリットを有する遮蔽板を前記イオンビームの電流モニターの前面から取り外した状態でのビーム電流量と、
前記単一のスリットを有する遮蔽板が前記イオンビームの電流モニターの前面にある状態で、この遮蔽板をイオンビームの走査方向に移動させながら、前記遮蔽板のスリットの位置、及び、前記遮蔽板のスリットを透過したイオンビームの電流量とを記憶する電子回路又はコンピュータを具備したことを特徴とする請求項3又は4に記載のイオン注入装置。
【請求項6】
前記イオンビーム分布測定装置において、
前記短冊状の遮蔽板を前記イオンビームの電流モニターの前面から取り外した状態でのビーム電流量と、
前記短冊状の遮蔽板が前記イオンビームの電流モニターの前面にある状態で、この遮蔽板をイオンビームの走査方向に移動させながら、前記遮蔽板の位置、及び、前記遮蔽板が遮蔽したイオンビームの電流量とを記憶する電子回路又はコンピュータを具備したことを特徴とする請求項3に記載のイオン注入装置。
【請求項7】
イオンを生成するイオン源から所望のイオン種を引き出し、所望のエネルギーに加速又は減速し、前記イオンを走査器により半導体ウェーハ等の基板の注入面にイオンを走査して注入するイオン注入装置において、
前記走査器の上流側に、前記イオンビームの前記基板の走査面における密度分布のテール部分を除去する、スリット幅が可変なビーム成形スリットを配置するようにしたことを特徴とするイオン注入装置。
【請求項8】
前記走査器の上流側に、前記イオンビームの前記基板の走査面における密度分布のテール部分を除去する、スリット幅が可変なビーム成形スリットを配置するようにしたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のイオン注入装置。
【請求項9】
イオンビームを走査した状態で、前記イオンビーム分布測定装置において計測されたイオンビームの前記基板の走査面におけるドーズ量分布から、イオンビームの均一な照射効率が最適値を含む所定値以上となるような前記ビーム成形スリットの幅を調整する制御機構を備えたことを特徴とする請求項8に記載のイオン注入装置。
【請求項10】
イオンビームを走査しない状態で、前記イオンビーム分布測定装置において計測されたイオンビームの前記基板の走査面における密度分布から、イオンビームの均一な照射効率が最適値を含む所定値以上となるような前記ビーム成形スリットの幅を調整する制御機構を備えたことを特徴とする請求項8に記載のイオン注入装置。
【請求項1】
イオンを生成するイオン源から所望のイオン種を引き出し、所望のエネルギーに加速又は減速し、前記イオンを走査器により半導体ウェーハ等の基板の注入面にイオンを走査して注入するイオン注入装置において、
前記基板の下流側に配置され、イオンビームの電流値を計測するファラデーカップ等の電流モニターと、前記基板と前記電流モニターとの間に配置され、前記イオンビームの走査方向と同一方向に移動可能で、かつ、単一のスリットを有する遮蔽板とを具備したイオンビーム分布測定装置を備えたことを特徴とするイオン注入装置。
【請求項2】
イオンを生成するイオン源から所望のイオン種を引き出し、所望のエネルギーに加速又は減速し、前記イオンを走査器により半導体ウェーハ等の基板の注入面にイオンを走査して注入するイオン注入装置において、
前記基板の下流側に配置され、イオンビームの電流値を計測するファラデーカップ等の電流モニターと、前記基板と前記電流モニターとの間に配置され、前記イオンビームの走査方向と同一方向に移動可能で、かつ、所定幅の短冊状の遮蔽板とを具備したイオンビーム分布測定装置を備えたことを特徴とするイオン注入装置。
【請求項3】
前記イオンビーム分布測定装置において、
前記基板と前記電流モニターとの間に配置された前記遮蔽板は、前記イオンビームの電流モニターの前面から取り外し可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載のイオン注入装置。
【請求項4】
前記イオンビーム分布測定装置において、
前記遮蔽板に形成された単一のスリットの下流側に、二次電子が前記イオンビームの電流モニターに入射するのを防止する永久磁石を取り付けるようにしたことを特徴とする請求項1又は3に記載のイオン注入装置。
【請求項5】
前記イオンビーム分布測定装置において、
前記単一のスリットを有する遮蔽板を前記イオンビームの電流モニターの前面から取り外した状態でのビーム電流量と、
前記単一のスリットを有する遮蔽板が前記イオンビームの電流モニターの前面にある状態で、この遮蔽板をイオンビームの走査方向に移動させながら、前記遮蔽板のスリットの位置、及び、前記遮蔽板のスリットを透過したイオンビームの電流量とを記憶する電子回路又はコンピュータを具備したことを特徴とする請求項3又は4に記載のイオン注入装置。
【請求項6】
前記イオンビーム分布測定装置において、
前記短冊状の遮蔽板を前記イオンビームの電流モニターの前面から取り外した状態でのビーム電流量と、
前記短冊状の遮蔽板が前記イオンビームの電流モニターの前面にある状態で、この遮蔽板をイオンビームの走査方向に移動させながら、前記遮蔽板の位置、及び、前記遮蔽板が遮蔽したイオンビームの電流量とを記憶する電子回路又はコンピュータを具備したことを特徴とする請求項3に記載のイオン注入装置。
【請求項7】
イオンを生成するイオン源から所望のイオン種を引き出し、所望のエネルギーに加速又は減速し、前記イオンを走査器により半導体ウェーハ等の基板の注入面にイオンを走査して注入するイオン注入装置において、
前記走査器の上流側に、前記イオンビームの前記基板の走査面における密度分布のテール部分を除去する、スリット幅が可変なビーム成形スリットを配置するようにしたことを特徴とするイオン注入装置。
【請求項8】
前記走査器の上流側に、前記イオンビームの前記基板の走査面における密度分布のテール部分を除去する、スリット幅が可変なビーム成形スリットを配置するようにしたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のイオン注入装置。
【請求項9】
イオンビームを走査した状態で、前記イオンビーム分布測定装置において計測されたイオンビームの前記基板の走査面におけるドーズ量分布から、イオンビームの均一な照射効率が最適値を含む所定値以上となるような前記ビーム成形スリットの幅を調整する制御機構を備えたことを特徴とする請求項8に記載のイオン注入装置。
【請求項10】
イオンビームを走査しない状態で、前記イオンビーム分布測定装置において計測されたイオンビームの前記基板の走査面における密度分布から、イオンビームの均一な照射効率が最適値を含む所定値以上となるような前記ビーム成形スリットの幅を調整する制御機構を備えたことを特徴とする請求項8に記載のイオン注入装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−114289(P2006−114289A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−299115(P2004−299115)
【出願日】平成16年10月13日(2004.10.13)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年10月13日(2004.10.13)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】
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