説明

イミダゾール誘導体

本発明は、一般式(I)[式中、R、R、R、R、X及びYは、本明細書内で定義されているとおりである]で表されるイミダゾール誘導体、その調製方法、代謝調節型グルタミン酸受容体が介在する障害を治療又は予防するためのその使用、そのような障害を治療するための医薬を調製するためのその使用、及びそれを含む医薬組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般式(I):
【0002】
【化4】

【0003】
[式中、
は、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシ、CF又はシアノを表し;
は、低級アルキル、ハロゲン、低級アルコキシ、CF及びシアノからなる群から選択される1以上の置換基で場合により置換されている、アリール又はヘテロアリールを表し;
は、水素、C(O)H又はCHを表し、ここで、Rは、水素、OH、C〜C−アルキル又はC〜C12−シクロアルキルであり;
は、低級アルキル又はC〜C12−シクロアルキルを表し;
Xは、N又はCHを表し;
Yは、−(CHR)、−(CHR)又は−(CHR)を表し;
Rは、水素又は低級アルキルを表す]
で表されるイミダゾール誘導体及びその製薬上許容されうる塩に関する。
【0004】
驚くべきことに、一般式(I)で表される化合物が代謝調節型グルタミン酸受容体アンタゴニストであることが見いだされた。式(I)の化合物は、有益な治療特性を有することを特徴とする。それらの化合物は、mGluR5受容体が介在する障害の治療又は予防において使用することができる。
【0005】
中枢神経系(CNS)において、刺激の伝達は、ニューロンが送出する神経伝達物質と神経性受容体の相互作用によって起こる。
【0006】
グルタミン酸は、脳内における主要な興奮性神経伝達物質であり、中枢神経系(CNS)のさまざまな機能において独自の役割を担っている。グルタミン酸依存性刺激受容体は、主要な2つのグループに分けられる。主要な第1のグループ(即ち、イオンチャンネル型受容体)は、リガンド制御型イオンチャネルを形成する。代謝調節型グルタミン酸受容体(mGluR)は、主要な第2のグループに属し、さらに、G−タンパク質共役受容体のファミリーに属する。
【0007】
現在、これらのmGluRの8種類の異なるメンバーが知られており、それらの内のいくつかは、サブタイプも有している。これらの8種類の受容体は、それらの配列相同性、シグナル伝達機構及びアゴニスト選択性により、3種類のサブグループに細分することが可能である:
【0008】
mGluR1及びmGluR5はグループIに属し、mGluR2及びmGluR3はグループIIに属し、mGluR4、mGluR6、mGluR7及びmGluR8はグループIIIに属している。
【0009】
第1のグループに属する代謝調節型グルタミン酸受容体のリガンドは、急性及び/又は慢性の神経障害、例えば、精神病、癲癇、統合失調症、アルツハイマー病、認知障害及び記憶障害、並びに慢性及び急性の痛みを治療又は予防するのに使用することができる。
【0010】
これに関して、治療可能な他の適応症は、バイパス手術又は移植に起因する制限された脳機能、脳への血液供給不足、脊髄損傷、頭部損傷、妊娠に起因する低酸素症、心拍停止及び低血糖症である。さらに別の治療可能な適応症は、虚血、ハンチントン舞踏病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、AIDSに起因する痴呆、眼損傷、網膜症、特発性パーキンソン症候群又は薬物に起因するパーキンソン症候群、並びにグルタミン酸欠乏機能へと至る症状、例えば、筋痙攣、痙攣、偏頭痛、尿失禁、ニコチン中毒、アヘン中毒、不安、嘔吐、運動障害及び鬱病などである。
【0011】
mGluR5が完全に又は部分的に介在する障害は、例えば、神経系の急性、外傷性又は慢性の変性過程、例えば、アルツハイマー病、老人性痴呆症、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病、筋萎縮性側索硬化症及び多発性硬化症、精神病、例えば、統合失調症及び不安、鬱病、痛み、薬物依存症、喫煙停止及びエタノール依存症などである(Expert Opin. Ther. Patents(2002), 12, (12))。
【0012】
選択的なmGluR5アンタゴニストは、不安及び痛みを治療するのに特に有用である。
【0013】
本発明は、式(I)で表される化合物及びそれらの製薬上許容されうる塩に関連し、医薬として活性な物質としての上記化合物及びそれらの製造に関連する。
【0014】
本発明は、式(I)の化合物に関して上記で概説した一般的な手順に従う、一般式(I)で表される化合物の調製方法にも関連する。
【0015】
さらに、本発明は、急性及び/又は慢性の神経障害(特に、不安)並びに慢性又は急性の痛みなどのmGluR5受容体が介在する障害を治療及び予防するための、本発明の1種類以上の化合物と製薬上許容されうる賦形剤とを含む医薬にも関連する。
【0016】
本発明は、上記で概説したmGluR5受容体が介在する障害を治療及び予防するための医薬を製造するための、本発明化合物及びその製薬上許容されうる塩の使用にも関連する。
【0017】
本明細書で使用されている一般的な用語についての以下の定義は、該用語が単独で記載されているか又は組み合わされて記載されているかに関わりなく適用される。本明細書で使用されている用語「低級アルキル」は、1〜6個の炭素原子、好ましくは、1〜4個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖の飽和炭化水素残基、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル及びt−ブチルなどを表す。
【0018】
用語「低級アルコキシ」は、−O−C〜Cアルキル基(ここで、アルキルは、上記で定義したとおりである)、例えば、メトキシ、エトキシ、n−プロピルオキシ、i−プロピルオキシ、n−ブチルオキシ、i−ブチルオキシ、t−ブチルオキシ、ペンチルオキシ及びヘキシルオキシなどを表し、それらの異性体も包含する。
【0019】
用語「シクロアルキル」は、3〜12個の炭素原子、好ましくは、3〜6個の炭素原子を含む、飽和炭素環式基を表す。
【0020】
用語「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素を表す。
【0021】
用語「アリール」は、1以上の縮合環(ここで、該縮合環の内の少なくとも1つは事実上の芳香族であり、また、該縮合環は、環員として5〜12個の炭素原子を含み得る)からなる1価の環状芳香族炭化水素基、例えば、フェニル、ベンジル、ナフチル、ビフェニル又はインダニルなどを意味する。
【0022】
用語「ヘテロアリール」は、少なくとも1個のヘテロ原子を含む1価の芳香族炭素環式基を意味し、該芳香族炭素環式基は、環員として3〜11個の炭素原子及び1個、2個又は3個のヘテロ原子を含んでいてもよく、例えば、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル又はトリアジニルなどを意味する。
【0023】
用語「製薬上許容されうる塩」は、無機又は有機の酸又は塩基から誘導される任意の塩を意味する。
【0024】
好ましい化合物は、Rが低級アルキル(好ましくは、メチル)である化合物である。
【0025】
これらの化合物の中で、特に好ましい化合物は、
が、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシ、CF又はシアノを表し;
が、低級アルキル、ハロゲン、低級アルコキシ、CF及びシアノからなる群から選択される1以上の置換基で場合により置換されている、アリール又はヘテロアリールを表し;
が、Hを表し;
が、メチルを表し;
Xが、N又はCHを表し;
Yが、−(CHR)、−(CHR)又は−(CHR)を表し;
Rが、水素又は低級アルキルを表す;
化合物及びその製薬上許容されうる塩である。
【0026】
特に好ましい化合物は、R、R、R、Y及びRが上記で定義したとおりであり、XがCHであり、Rが低級アルキル又はハロゲンで場合により置換されているピリジルである化合物、例えば、以下の化合物などである:
2−[4−(3−クロロ−フェニルエチニル)−2−メチル−イミダゾール−1−イルメチル]−ピリジン;
2−[4−(3−クロロ−フェニルエチニル)−2−メチル−イミダゾール−1−イルメチル]−6−メチル−ピリジン;
5−[4−(3−クロロ−フェニルエチニル)−2−メチル−イミダゾール−1−イルメチル]−2−メチル−ピリジン;及び、
3−[1−(5−クロロ−ピリジン−3−イルメチル)−2−メチル−1H−イミダゾール−4−イルエチニル]−ベンゾニトリル。
【0027】
特に好ましい化合物は、さらに、R、R、R、Y及びRが上記で定義したとおりであり、XがNであり、Rが低級アルキル又はハロゲンで場合により置換されているピリジルである化合物、例えば、以下の化合物などである:
4−[1−(6−メチル−ピリジン−2−イルメチル)−2−メチル−1H−イミダゾール−4−イルエチニル]−2−メチル−ピリジン;
4−[1−(6−メチル−ピリジン−2−イルメチル)−2−メチル−1H−イミダゾール−4−イルエチニル]−2−クロロ−ピリジン;
4−[1−(2−メチル−ピリジン−5−イルメチル)−2−メチル−1H−イミダゾール−4−イルエチニル]−2−クロロ−ピリジン;
4−[1−(5−クロロ−ピリジン−3−イルメチル)−2−メチル−1H−イミダゾール−4−イルエチニル]−2−メチル−ピリジン;
4−[1−(2−クロロ−ピリジン−5−イルメチル)−2−メチル−1H−イミダゾール−4−イルエチニル]−2−クロロ−ピリジン;及び、
4−[1−(2−クロロ−ピリジン−5−イルメチル)−2−メチル−1H−イミダゾール−4−イルエチニル]−2−メチル−ピリジン。
【0028】
さらに好ましい化合物は、R、R、R、Y及びRが上記で定義したとおりであり、XがNであり、Rがハロゲンで場合により置換されているフェニルである化合物、例えば、以下の化合物などである:
4−(1−ベンジル−2−メチル−1H−イミダゾール−4−イルエチニル)−2−メチル−ピリジン;
4−(1−ベンジル−2−メチル−1H−イミダゾール−4−イルエチニル)−2−クロロ−ピリジン;
rac−2−メチル−4−[2−メチル−3−(1−フェニル−エチル)−3H−イミダゾール−4−イルエチニル]−ピリジン;
(+)−2−メチル−4−[2−メチル−3−(1−フェニル−エチル)−3H−イミダゾール−4−イルエチニル]−ピリジン;
(−)−2−メチル−4−[2−メチル−3−(1−フェニル−エチル)−3H−イミダゾール−4−イルエチニル]−ピリジン;
rac−2−クロロ−4−[2−メチル−1−(1−フェニル−エチル)−1H−イミダゾール−4−イルエチニル]−ピリジン;
4−[3−(4−フルオロ−ベンジル)−2−メチル−3H−イミダゾール−4−イルエチニル]−2−メチル−ピリジン;
4−[3−(3,4−ジフルオロ−ベンジル)−2−メチル−3H−イミダゾール−4−イルエチニル]−2−メチル−ピリジン;及び、
2−メチル−4−(2−メチル−1−フェネチル−1H−イミダゾール−4−イルエチニル)−ピリジン。
【0029】
さらに好ましい化合物は、R、R、R及びXが上記で定義したとおりであり、Yが−(CHR)、−(CHR)又は−(CHR)[ここで、Rは低級アルキルである]を表す化合物である。この場合、Yは、1、2又は3のキラル中心を形成する。そのようなキラル中心により、本発明化合物の光学異性体、例えば、エナンチオマー又はラセミ化合物などが存在し得る。そのような光学異性体又はラセミ化合物も同様に本発明に包含されるということは、理解される。上記で挙げた化合物の中で、エナンチオマー又はラセミ化合物の例は、以下の化合物である:
rac−2−メチル−4−[2−メチル−3−(1−フェニル−エチル)−3H−イミダゾール−4−イルエチニル]−ピリジン;
(+)−2−メチル−4−[2−メチル−3−(1−フェニル−エチル)−3H−イミダゾール−4−イルエチニル]−ピリジン;
(−)−2−メチル−4−[2−メチル−3−(1−フェニル−エチル)−3H−イミダゾール−4−イルエチニル]−ピリジン;及び、
rac−2−クロロ−4−[2−メチル−1−(1−フェニル−エチル)−1H−イミダゾール−4−イルエチニル]−ピリジン。
【0030】
一般式(I)で表される化合物及びそれらの製薬上許容されうる塩は、以下に示してある一般的な手順により製造することができる:
(a)式(II):
【0031】
【化5】

【0032】
で表される化合物を、式:
Yhal
で表される化合物と反応させて、式(I):
【0033】
【化6】

【0034】
[式中、R、R、R、R、X及びYは、上記で定義したとおりであり、halは、ハロゲン、好ましくは、クロロ、ブロモ又はヨードである]
で表される化合物とし;及び、
得られた化合物を、必要に応じて、製薬上許容されうる酸付加塩に変換する。
【0035】
出発物質は、公知化合物であるか、又は、当技術分野で公知の方法により調製することができる。
【0036】
上記化合物は、以下のスキームに示されている手順により合成することができる。
【0037】
【化7】

【0038】
上記式中、R、R、R、R、X及びYの定義は、上記で記載したとおりである。
【0039】
工程1
式(IV)で表される化合物(例えば、2−クロロ−4−ヨード−ピリジン)を、乾燥THF及びトリエチルアミンに溶解させる。その混合物からの排気とアルゴンの充填を数回行って、溶液から酸素を除去する。トリフェニルホスフィン及びビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)クロリドを添加し、その反応混合物を室温で約1時間撹拌する。ヨウ化銅(I)及びトリメチルシリルアセチレンを添加する。その反応混合物を室温で一晩撹拌する。溶媒を蒸発させ、式(III)で表される生成物を乾燥させ、クロマトグラフィーで精製する。
【0040】
工程2
溶液1: 式(III)で表される化合物(例えば、2−クロロ−4−トリメチルシラニルエチニル−ピリジンの溶液及び2−置換−5−ヨード−1H−イミダゾール化合物(例えば、5−ヨード−2−メチル−1H−イミダゾール(合成:M.D.Cliff, S.G.Pyne, Synthesis 1994, 681-682))を乾燥THF及び乾燥DMFに溶解させる。その混合物からの排気とアルゴンの充填を数回行って、溶液から酸素を除去する。
溶液2: トリフェニルホスフィン、ビス(トリフェニルホスフィン)−パラジウム(II)クロリド、ヨウ化銅(I)及びトリエチルアミンを乾燥THFに溶解させる。その混合物からの排気とアルゴンの充填を数回行って、この溶液からも同様に酸素を除去する。
溶液2を40℃に加熱し、溶液1を滴下して加える。反応混合物を約60℃に加熱し、フッ化テトラブチルアンモニウム溶液を45分間かけて滴下して加える。次いで、その反応物を室温で一晩撹拌する。溶媒を蒸発させ、乾燥させ、クロマトグラフィーで精製する。式(II)で表される化合物が得られる。
【0041】
工程3
水素化ナトリウムをTHFに懸濁させる。式(II)の化合物(例えば、2−メチル−4−(2−メチル−1H−イミダゾール−4−イルエチニル)−ピリジン)の乾燥THF溶液を添加し、その反応混合物を室温で約30分間撹拌する。式RYhalで表される対応する化合物(例えば、2−(ブロモメチル)ピリジン臭化水素酸塩、2−クロロメチル−6−メチル−ピリジン塩酸塩又は(2−ブロモエチル)ベンゼン)を添加し、撹拌を一晩継続する。その反応混合物を水の中に注ぎ入れ、抽出し、乾燥させ、フラッシュクロマトグラフィーで精製して、式(I)で表される化合物の2種類の位置異性体の混合物を得る。この混合物は、結晶化により分離することができる。
【0042】
式(I)で表される化合物の製薬上許容されうる塩は、塩に変換しようとする化合物の性質を考慮して、自体公知の方法により容易に製造することができる。式(I)で表される塩基性化合物の製薬上許容されうる塩を形成させるためには、無機酸又は有機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、クエン酸、ギ酸、フマル酸、マレイン酸、酢酸、コハク酸、酒石酸、メタンスルホン酸及びp−トルエンスルホン酸などが適している。酸性化合物の製薬上許容されうる塩を形成させるためには、アルカリ金属又はアルカリ土類金属(例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム又はマグネシウムなど)を含んでいる化合物、塩基性アミン類又は塩基性アミノ酸が適している。
【0043】
既に上記で述べたように、式(I)で表される化合物及びそれらの製薬上許容されうる塩は代謝調節型グルタミン酸受容体アンタゴニストであり、mGluR5受容体が介在する障害、例えば、急性及び/又は慢性の神経障害、認知障害及び記憶障害、並びに、急性及び慢性の痛みなどを治療又は予防するのに使用することができる。治療可能な神経障害は、例えば、癲癇、統合失調症、不安、神経系の急性、外傷性又は慢性の変性過程、例えば、アルツハイマー病、老人性痴呆症、ハンチントン舞踏病、ALS、多発性硬化症、AIDSに起因する痴呆、目の損傷、網膜症、特発性パーキンソン症候群又は薬物に起因するパーキンソン症候群、並びにグルタミン酸欠乏機能へと至る症状、例えば、筋痙攣、痙攣、偏頭痛、尿失禁、エタノール中毒、ニコチン中毒、精神病、アヘン中毒、不安、嘔吐、運動障害及び鬱病などである。治療可能な他の適応症は、バイパス手術又は移植に起因する制限された脳機能、脳への血液供給不足、脊髄損傷、頭部損傷、妊娠に起因する低酸素症、心拍停止及び低血糖症である。
【0044】
式(I)で表される化合物及びそれらの製薬上許容されうる塩は、特に、鎮痛薬として有用である。治療可能な痛みの種類は、炎症性の痛み、例えば、関節炎及びリウマチ様疾患、脈管炎、神経障害性の痛み、例えば、三叉神経痛又はヘルペス性神経痛、糖尿病性神経障害性の痛み、灼熱痛、痛覚過敏、激しい慢性の痛み、術後疼痛、並びに、癌、アンギナ、腎疝痛又は胆疝痛(billiay colic)、月経、偏頭痛及び痛風などのようなさまざまな状態に関連する痛みである。
【0045】
以下の方法を用いて、本発明化合物の薬理活性について試験した。
結合実験のために、Schlaeger及びChristensen[Cytotechnology 15:1-13(1998)]により記述された手順を用いて、ヒトmGlu5a受容体をコードするcDNAをEBNA細胞内に一過的にトランスフェクションした。アッセイ当日まで細胞膜ホモジェネートを−80℃で保存した。アッセイ当日、その細胞膜ホモジェネートを解凍し、pH7.4の結合バッファー(15mM Tris−HCl,120mM NaCl,100mM KC1,25mM CaCl,25mM MgCl)に再懸濁させ、ポリトロンでホモジェナイズして、20μgタンパク質/ウェルの最終的なアッセイ濃度とした。
【0046】
これらの膜(総容積200μL)に、4℃で、12種類の濃度(0.04〜100nM)の[H]MPEPを1時間添加することにより、飽和等温線を求めた。固定した濃度の[H]MPEP(2nM)を用いて競合実験を実施し、11種類の濃度(0.3〜10000nM)を用いて、被験化合物のIC50を評価した。インキュベーションは、4℃で1時間行った。
【0047】
インキュベーションの終わりに、Filtermate96ハーベスター(Packard BioScience)を備えたUnifilter(GF/Cフィルターを結合させた96−ウェル白色マイクロプレートを洗浄バッファー中の0.1%PEIの中で1時間プレインキュベーションしたもの; Packard BioScience, Meriden, CT)で膜を濾過し、冷バッファー(50mM Tris−HCl,pH7.4)で3回洗浄した。10μM MPEPの存在下で、非特異的結合を測定した。該フィルター上の放射能を、Packard Top-countマイクロプレートシンチレーションカウンターでカウントし(3分間)、45μLのMicroscint-40(Canberra Packard S.A., チューリッヒ、スイス)を添加して20分間振盪した後、クエンチング補正を行った。
【0048】
機能的アッセイのために、Porterら[Br.J.Pharmacol. 128:13-20(1999)]により以前に記述されたように、HEK−293細胞中の組換えヒトmGlu5a受容体で、[Ca2+]iを測定した。Fluo 4−AM(FLUKAから入手可能、最終濃度0.2μM)を用いて染色した。[Ca2+]iの測定は、蛍光イメージングプレートリーダー(FLIPR, Molecular Devices Corporation, La Jolla, CA, USA)を用いて行った。アンタゴニストとしての評価は、被験化合物と一緒に5分間プレインキュベーションした後、準最大量のアゴニストを添加することにより実施した。
【0049】
反復非線形曲線フィッティングソフトウェア(Xcel fit)を用いて、阻害(アンタゴニスト)曲線を4パラメータロジスティック式に当てはめて、IC50及びヒル係数を得た。
【0050】
結合実験のために、被験化合物のK値を求めた。K値は、以下の式により定義される。
【0051】
【化8】

【0052】
上記式中、IC50は、競合する放射性リガンド([H]MPEP)を50%阻害する被験化合物の濃度である。Lは、該結合実験で使用した放射性リガンドの濃度であり、該放射性リガンドのK値は、調製した膜の各バッチについて実験的に求める。
【0053】
本発明の化合物は、mGluR5a受容体アンタゴニストである。上記アッセイで測定した場合、式(I)で表される化合物の活性は、K<100nMの範囲にある。
【0054】
【表1】

【0055】
式(I)で表される化合物及びその製薬上許容されうる塩は、例えば医薬調製物の形態で、医薬として使用することができる。そのような医薬調製物は、経口的に、例えば、錠剤、コーティング錠、糖衣錠、硬質ゼラチンカプセル剤及び軟質ゼラチンカプセル剤、溶液剤、エマルション剤又は懸濁液剤などの形態で、投与することができる。しかしながら、例えば坐剤の形態で、直腸内に投与することも可能であり、又は、例えば注射液の形態で、非経口的に投与することもできる。
【0056】
式(I)で表される化合物及びその製薬上許容されうる塩は、医薬調製物を製造するための、薬学的に不活性な、無機又は有機の担体を用いて加工することができる。ラクトース、コーンスターチ又はその誘導体、タルク、ステアリン酸又はその塩などは、例えば、錠剤、コーティング錠、糖衣錠及び硬質ゼラチンカプセル剤用の上記担体として、使用することができる。軟質ゼラチンカプセル剤に適する担体は、例えば、植物油、蝋、脂肪、半固体ポリオール及び液体ポリオールなどである。しかしながら、軟質ゼラチンカプセル剤の場合、活性物質の性質に応じて、通常、担体は必要ではない。溶液剤及びシロップ剤を製造するのに適する担体は、例えば、水、ポリオール、スクロース、転化糖及びグルコースなどである。式(I)で表される化合物の水溶性塩の注射用水溶液については、アルコール、ポリオール、グリセロール及び植物油などのアジュバントを使用することも可能であるが、そのようなアジュバントは、一般に必要ではない。坐剤に適する担体は、例えば、天然油若しくは硬化油、蝋、脂肪、半固体ポリオール又は液体ポリオールなどである。
【0057】
さらに、本発明の医薬調製物には、保存剤、可溶化剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、甘味剤、着色剤、矯味矯臭剤、浸透圧を変えるための塩類、緩衝剤、マスキング剤又は酸化防止剤を含ませることもできる。本発明の医薬調製物には、治療上有用なさらに別の物質も含ませることができる。
【0058】
上記で先に述べたように、式(I)で表される化合物又はその製薬上許容されうる塩及び治療上不活性な賦形剤を含む医薬も本発明の目的である。また、同様に、そのような医薬を製造する方法も本発明の目的であり、ここで、該方法は、治療上不活性な1種類以上の担体と一緒に、式(I)で表される1種類以上の化合物又はそれらの製薬上許容されうる塩と、必要に応じて、治療上有用な1種類以上の他の物質を合して、ガレヌス製剤(galenical dosage form)とすることを含む。
【0059】
投与量は、広い範囲で変えることが可能であるが、当然のことながら、それは、それぞれの特定の場合に、個々の要件に適合させる。一般に、上記で記載した全ての適応症に対して、経口投与又は非経口投与での有効な投与量は、1日当たり、0.01〜20mg/kgであり、好ましくは、1日当たり、0.1〜10mg/kgである。従って、体重70kgの成人に対する1日投与量は、1日当たり、0.7〜1400mg、好ましくは、1日当たり、7〜700mgである。
【0060】
以下の実施例は、本発明をさらに説明するためのものである。
実施例1
4−[1−(ピリジン−2−イルメチル)−2−メチル−1H−イミダゾール−4−イルエチニル]−2−メチル−ピリジン
水素化ナトリウム(69mg,55%,1.59mmol)を乾燥THF(2mL)に懸濁させた。2−メチル−4−(2−メチル−1H−イミダゾール−4−イルエチニル)−ピリジン(95mg,0.48mmol)の乾燥THF(8mL)溶液を添加し、反応混合物を室温で30分間撹拌した。2−(ブロモメチル)ピリジン臭化水素酸塩(162mg,0.63mmol)を添加し、一晩撹拌を継続した。その反応混合物を水(70mL)に注ぎ入れ、酢酸エチル(各70mL)で3回抽出した。合わせた有機抽出物を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、蒸発させた。粗生成物をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(ジクロロメタン/メタノール 100:0 → 90:10 勾配)で精製して、2種類の位置異性体の混合物を得た。この混合物を、ジエチルエーテルから結晶化させることにより分離させることができた。所望の化合物(35mg,25%)を白色の固体として得た。
MS:m/e=289.1(M+H)。
【0061】
実施例2
4−[1−(ピリジン−2−イルメチル)−2−メチル−1H−イミダゾール−4−イルエチニル]−2−クロロ−ピリジン
実施例1の一般的な方法に従い、2−クロロ−4−(2−メチル−1H−イミダゾール−4−イルエチニル)−ピリジン及び2−(ブロモメチル)ピリジン臭化水素酸塩から、標題化合物を調製した。
MS:m/e=309.2(M+H)。
【0062】
実施例3
2−[4−(3−クロロ−フェニルエチニル)−2−メチル−イミダゾール−1−イルメチル]−ピリジン
実施例1の一般的な方法に従い、4−(3−クロロ−フェニルエチニル)−2−メチル−1H−イミダゾール及び2−(ブロモメチル)ピリジン臭化水素酸塩から、標題化合物を調製した。
MS:m/e=308.1(M+H)。
【0063】
実施例4
4−[1−(6−メチル−ピリジン−2−イルメチル)−2−メチル−1H−イミダゾール−4−イルエチニル]−2−メチル−ピリジン
実施例1の一般的な方法に従い、2−メチル−4−(2−メチル−1H−イミダゾール−4−イルエチニル)−ピリジン及び2−クロロメチル−6−メチル−ピリジン塩酸塩から、標題化合物を調製した。
MS:m/e=303.1(M+H)。
【0064】
実施例5
4−[1−(6−メチル−ピリジン−2−イルメチル)−2−メチル−1H−イミダゾール−4−イルエチニル]−2−クロロ−ピリジン
実施例1の一般的な方法に従い、2−クロロ−4−(2−メチル−1H−イミダゾール−4−イルエチニル)−ピリジン及び2−クロロメチル−6−メチル−ピリジン塩酸塩から、標題化合物を調製した。
MS:m/e=323.2(M+H)。
【0065】
実施例6
2−[4−(3−クロロ−フェニルエチニル)−2−メチル−イミダゾール−1−イルメチル]−6−メチル−ピリジン
実施例1の一般的な方法に従い、4−(3−クロロ−フェニルエチニル)−2−メチル−1H−イミダゾール及び2−クロロメチル−6−メチル−ピリジン塩酸塩から、標題化合物を調製した。
MS:m/e=322.4(M+H)。
【0066】
実施例7
3−[2−メチル−1−(6−メチル−ピリジン−2−イルメチル)−1H−イミダゾール−4−イルエチニル]−ベンゾニトリル
実施例1の一般的な方法に従い、3−(2−メチル−1H−イミダゾール−4−イルエチニル)−ベンゾニトリル及び2−クロロメチル−6−メチル−ピリジン塩酸塩から、標題化合物を調製した。
MS:m/e=313.2(M+H)。
【0067】
実施例8
4−[1−(2−メチル−ピリジン−5−イルメチル)−2−メチル−1H−イミダゾール−4−イルエチニル]−2−クロロ−ピリジン
実施例1の一般的な方法に従い、2−クロロ−4−(2−メチル−1H−イミダゾール−4−イルエチニル)−ピリジン及び5−クロロメチル−2−メチル−ピリジン塩酸塩から、標題化合物を調製した。
MS:m/e=323.4(M+H)。
【0068】
実施例9
4−[1−(3−メチル−ピリジン−2−イルメチル)−2−メチル−1H−イミダゾール−4−イルエチニル]−2−メチル−ピリジン
実施例1の一般的な方法に従い、2−メチル−4−(2−メチル−1H−イミダゾール−4−イルエチニル)−ピリジン及び2−クロロメチル−3−メチル−ピリジン塩酸塩から、標題化合物を調製した。
MS:m/e=303.2(M+H)。
【0069】
実施例10
3−[2−メチル−1−(3−メチル−ピリジン−2−イルメチル)−1H−イミダゾール−4−イルエチニル]−ベンゾニトリル
実施例1の一般的な方法に従い、3−(2−メチル−1H−イミダゾール−4−イルエチニル)−ベンゾニトリル及び2−クロロメチル−3−メチル−ピリジン塩酸塩から、標題化合物を調製した。
MS:m/e=313.2(M+H)。
【0070】
実施例11
4−[1−(ピリジン−3−イルメチル)−2−メチル−1H−イミダゾール−4−イルエチニル]−2−メチル−ピリジン
実施例1の一般的な方法に従い、2−メチル−4−(2−メチル−1H−イミダゾール−4−イルエチニル)−ピリジン及び3−(ブロモメチル)ピリジン臭化水素酸塩から、標題化合物を調製した。
MS:m/e=288.9(M+H)。
【0071】
実施例12
4−[1−(ピリジン−3−イルメチル)−2−メチル−1H−イミダゾール−4−イルエチニル]−2−クロロ−ピリジン
実施例1の一般的な方法に従い、2−クロロ−4−(2−メチル−1H−イミダゾール−4−イルエチニル)−ピリジン及び3−(ブロモメチル)ピリジン臭化水素酸塩から、標題化合物を調製した。
MS:m/e=309.3(M+H)。
【0072】
実施例13
3−(2−メチル−1−ピリジン−3−イルメチル−1H−イミダゾール−4−イルエチニル)−ベンゾニトリル
実施例1の一般的な方法に従い、3−(2−メチル−1H−イミダゾール−4−イルエチニル)−ベンゾニトリル及び3−(ブロモメチル)ピリジン臭化水素酸塩から、標題化合物を調製した。
MS:m/e=299.2(M+H)。
【0073】
実施例14
4−[1−(2−メチル−ピリジン−5−イルメチル)−2−メチル−1H−イミダゾール−4−イルエチニル]−2−メチル−ピリジン
実施例1の一般的な方法に従い、2−メチル−4−(2−メチル−1H−イミダゾール−4−イルエチニル)−ピリジン及び5−クロロメチル−2−メチル−ピリジン塩酸塩から、標題化合物を調製した。
MS:m/e=303.2(M+H)。
【0074】
実施例15
5−[4−(3−クロロ−フェニルエチニル)−2−メチル−イミダゾール−1−イルメチル]−2−メチル−ピリジン
実施例1の一般的な方法に従い、4−(3−クロロ−フェニルエチニル)−2−メチル−1H−イミダゾール及び5−クロロメチル−2−メチル−ピリジン塩酸塩から、標題化合物を調製した。
MS:m/e=322.5(M+H)。
【0075】
実施例16
4−[1−(5−クロロ−ピリジン−3−イルメチル)−2−メチル−1H−イミダゾール−4−イルエチニル]−2−メチル−ピリジン
実施例1の一般的な方法に従い、2−メチル−4−(2−メチル−1H−イミダゾール−4−イルエチニル)−ピリジン及び2−クロロ−5−クロロメチル−ピリジンから、標題化合物を調製した。
MS:m/e=323.1(M+H)。
【0076】
実施例17
4−[1−(2−クロロ−ピリジン−5−イルメチル)−2−メチル−1H−イミダゾール−4−イルエチニル]−2−メチル−ピリジン
実施例1の一般的な方法に従い、2−メチル−4−(2−メチル−1H−イミダゾール−4−イルエチニル)−ピリジン及び3−クロロ−5−クロロメチル−ピリジン塩酸塩から、標題化合物を調製した。
MS:m/e=323.2(M+H)。
【0077】
実施例18
3−[1−(5−クロロ−ピリジン−3−イルメチル)−2−メチル−1H−イミダゾール−4−イルエチニル]−ベンゾニトリル
実施例1の一般的な方法に従い、3−(2−メチル−1H−イミダゾール−4−イルエチニル)−ベンゾニトリル及び3−クロロ−5−クロロメチル−ピリジン塩酸塩から、標題化合物を調製した。
MS:m/e=333.1(M+H)。
【0078】
実施例19
4−[1−(ピリジン−4−イルメチル)−2−メチル−1H−イミダゾール−4−イルエチニル]−2−メチル−ピリジン
実施例1の一般的な方法に従い、2−メチル−4−(2−メチル−1H−イミダゾール−4−イルエチニル)−ピリジン及び4−(クロロメチル)ピリジン塩酸塩から、標題化合物を調製した。
MS:m/e=333.1(M+H)。
【0079】
実施例20
4−[1−(2−メチル−ピリジン−4−イルメチル)−2−メチル−1H−イミダゾール−4−イルエチニル]−2−クロロ−ピリジン
実施例1の一般的な方法に従い、2−クロロ−4−(2−メチル−1H−イミダゾール−4−イルエチニル)−ピリジン及び4−クロロメチル−2−メチル−ピリジン塩酸塩から、標題化合物を調製した。
MS:m/e=323.3(M+H)。
【0080】
実施例21
4−(1−ベンジル−2−メチル−1H−イミダゾール−4−イルエチニル)−2−メチル−ピリジン
実施例1の一般的な方法に従い、2−メチル−4−(2−メチル−1H−イミダゾール−4−イルエチニル)−ピリジン及び臭化ベンジルから、標題化合物を調製した。
MS:m/e=288.1(M+H)。
【0081】
実施例22
4−(1−ベンジル−2−メチル−1H−イミダゾール−4−イルエチニル)−2−クロロ−ピリジン
実施例1の一般的な方法に従い、2−クロロ−4−(2−メチル−1H−イミダゾール−4−イルエチニル)−ピリジン及び臭化ベンジルから、標題化合物を調製した。
MS:m/e=308.2(M+H)。
【0082】
実施例23
rac−2−メチル−4−[2−メチル−1−(1−フェニル−エチル)−1H−イミダゾール−4−イルエチニル]−ピリジン
実施例1の一般的な方法に従い、2−メチル−4−(2−メチル−1H−イミダゾール−4−イルエチニル)−ピリジン及び(1−ブロモエチル)ベンゼンから、標題化合物を調製した。
MS:m/e=302.2(M+H)。
【0083】
実施例24
(+)−2−メチル−4−[2−メチル−1−(1−フェニル−エチル)−1H−イミダゾール−4−イルエチニル]−ピリジン
キラルHPLC(Chiralpac AD、ヘプタン中10%イソプロパノール)を用いて、Rac−2−メチル−4−[2−メチル−3−(1−フェニル−エチル)−3H−イミダゾール−4−イルエチニル]−ピリジンをそのエナンチオマーに分離させた。保持時間が短い方のエナンチオマーが、(+)−エナンチオマーであった。
【0084】
実施例25
(−)−2−メチル−4−[2−メチル−1−(1−フェニル−エチル)−1H−イミダゾール−4−イルエチニル]−ピリジン
キラルHPLC(Chiralpac AD、ヘプタン中10%イソプロパノール)を用いて、rac−2−メチル−4−[2−メチル−3−(1−フェニル−エチル)−3H−イミダゾール−4−イルエチニル]−ピリジンをそのエナンチオマーに分離させた。保持時間の長い方のエナンチオマーが、(−)−エナンチオマーであった。
【0085】
実施例26
rac−2−クロロ−4−[2−メチル−1−(1−フェニル−エチル)−1H−イミダゾール−4−イルエチニル]−ピリジン
実施例1の一般的な方法に従い、2−クロロ−4−(2−メチル−1H−イミダゾール−4−イルエチニル)−ピリジン及び(1−ブロモエチル)ベンゼンから、標題化合物を調製した。
MS:m/e=322.1(M+H)。
【0086】
実施例27
4−[1−(4−フルオロ−ベンジル)−2−メチル−1H−イミダゾール−4−イルエチニル]−2−メチル−ピリジン
実施例1の一般的な方法に従い、2−メチル−4−(2−メチル−1H−イミダゾール−4−イルエチニル)−ピリジン及び4−フルオロ−ベンジルブロミドから、標題化合物を調製した。
MS:m/e=306.2(M+H)。
【0087】
実施例28
4−[1−(3,4−ジフルオロ−ベンジル)−2−メチル−1H−イミダゾール−4−イルエチニル]−2−メチル−ピリジン
実施例1の一般的な方法に従い、2−メチル−4−(2−メチル−1H−イミダゾール−4−イルエチニル)−ピリジン及び3,4−ジフルオロ−ベンジルブロミドから、標題化合物を調製した。
MS:m/e=324.2(M+H)。
【0088】
実施例29
2−メチル−4−(2−メチル−1−フェネチル−1H−イミダゾール−4−イルエチニル)−ピリジン
実施例1の一般的な方法に従い、2−メチル−4−(2−メチル−1H−イミダゾール−4−イルエチニル)−ピリジン及び(2−ブロモエチル)ベンゼンから、標題化合物を調製した。
MS:m/e=302.2(M+H)。
【0089】
実施例30
4−[1−(2−クロロ−ピリジン−5−イルメチル)−2−メチル−1H−イミダゾール−4−イルエチニル]−2−クロロ−ピリジン
実施例1の一般的な方法に従い、2−クロロ−4−(2−メチル−1H−イミダゾール−4−イルエチニル)−ピリジン及び2−クロロ−5−クロロメチル−ピリジンから、標題化合物を調製した。
MS:m/e=343.1(M+H)。
【0090】
中間体の合成
実施例A
2−クロロ−4−(2−メチル−1H−イミダゾール−4−イルエチニル)−ピリジン
【0091】
【化9】

【0092】
工程1
2−クロロ−4−トリメチルシラニルエチニル−ピリジン
2−クロロ−4−ヨード−ピリジン(10.0g,41.8mmol)を、乾燥THF(200mL)及びトリエチルアミン(17.5mL)に溶解させた。その混合物からの排気とアルゴンの充填を数回行って、溶液から酸素を除去した。トリフェニルホスフィン(329mg,1.25mmol)及びビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)クロリド(1.47g,2.09mmol)を添加し、反応混合物を室温で1時間撹拌した。ヨウ化銅(I)(239mg,1.25mmol)及びトリメチルシリルアセチレン(6.28g,6.39mmol)を添加した。反応混合物を室温で一晩撹拌した。溶媒を蒸発させた。残渣を水(500mL)の中に入れ、酢酸エチル(各500mL)で3回抽出した。合わせた有機抽出物を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、蒸発させた。粗生成物を、シリカゲルクロマトグラフィー(シクロヘキサン/酢酸エチル 80:20)で精製した。目的とする生成物を淡褐色の半固体として得た(10g,>100%)。この物質は、それ以上精製することなく、次の工程に使用した。
【0093】
工程2
2−クロロ−4−(2−メチル−1H−イミダゾール−4−イルエチニル)−ピリジン
溶液1: 2−クロロ−4−トリメチルシラニルエチニル−ピリジン(8.9g,純度は工程1で示した様に、<100%)及び5−ヨード−2−メチル−1H−イミダゾール(13.24g,64mmol,合成:M.D.Cliff, S.G.Pyne, Synthesis 1994, 681-682)を乾燥THF(75mL)及び乾燥DMF(20mL)に溶解させた。その混合物からの排気とアルゴンの充填を数回行って、溶液から酸素を除去した。
溶液2: トリフェニルホスフィン(223mg,0.85mmol)、ビス(トリフェニルホスフィン)−パラジウム(II)クロリド(1.79g,2.55mmol)、ヨウ化銅(I)(81mg,0.43mmol)及びトリエチルアミン(8.87mL,64mmol)を、乾燥THF(75mL)に溶解させた。その混合物からの排気とアルゴンの充填を数回行って、この溶液からも同様に酸素を除去した。
溶液2を40℃に加熱し、溶液1を滴下して加えた。反応混合物を60℃に加熱し、フッ化テトラブチルアンモニウム溶液(THF中1M,55mL,55mmol)を45分間かけて滴下して加えた。次いで、反応物を室温で一晩撹拌した。溶媒を蒸発させた。残渣を水(200mL)の中に入れ、酢酸エチル(各200mL)で3回抽出した。合わせた有機抽出物を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、蒸発させた。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(塩化メチレン/メタノール 95:5)で精製し、塩化メチレンと酢酸エチルの混合物から再結晶させた。目的とする生成物を淡褐色の固体として得た(2.89g,31%)。
【0094】
実施例B
2−メチル−4−(2−メチル−1H−イミダゾール−4−イルエチニル)−ピリジン
【0095】
【化10】

【0096】
実施例A(工程1及び工程2)の一般的な方法に従い、4−ヨード−2−メチル−ピリジン及び5−ヨード−2−メチル−1H−イミダゾールから、標題化合物を調製した。
【0097】
実施例C
4−(3−クロロ−フェニルエチニル)−2−メチル−1H−イミダゾール
【0098】
【化11】

【0099】
実施例A(工程1及び工程2)の一般的な方法に従い、3−クロロ−ヨードベンゼン及び5−ヨード−2−メチル−1H−イミダゾールから、標題化合物を調製した。
【0100】
実施例D
3−(2−メチル−1H−イミダゾール−4−イルエチニル)−ベンゾニトリル
【0101】
【化12】

【0102】
実施例A(工程1及び工程2)の一般的な方法に従い、3−ブロモ−ベンゾニトリル及び5−ヨード−2−メチル−1H−イミダゾールから、標題化合物を調製した。
【0103】
実施例E
2−クロロメチル−6−メチル−ピリジン塩酸塩
【0104】
【化13】

【0105】
塩化チオニル(35mL,477mmol)に、0℃で、2−(ヒドロキシメチル)−6−メチルピリジン(3.7g,29.4mmol)を少量ずつ添加した。次いで、反応混合物を室温で18時間撹拌した。減圧下で余分な塩化チオニルを除去した。未精製の2−クロロメチル−6−メチル−ピリジン塩酸塩(5.1g,淡褐色固体)を、それ以上精製することなく使用した。
【0106】
実施例F
2−クロロメチル−3−メチル−ピリジン塩酸塩
【0107】
【化14】

【0108】
実施例Eの一般的な方法に従い、2−(ヒドロキシメチル)−3−メチルピリジン及び塩化チオニルから、標題化合物を調製した。
【0109】
実施例G
5−クロロメチル−2−メチル−ピリジン塩酸塩
【0110】
【化15】

【0111】
実施例Eの一般的な方法に従い、5−(ヒドロキシメチル)−2−メチルピリジン及び塩化チオニルから、標題化合物を調製した。
【0112】
実施例H
3−クロロ−5−(クロロメチル)ピリジン塩酸塩
【0113】
【化16】

【0114】
実施例Eの一般的な方法に従い、5−(ヒドロキシメチル)−3−クロロピリジン及び塩化チオニルから、標題化合物を調製した。
【0115】
実施例I
4−クロロメチル−2−メチル−ピリジン塩酸塩
【0116】
【化17】

【0117】
実施例Eの一般的な方法に従い、4−(ヒドロキシメチル)−2−メチルピリジン及び塩化チオニルから、標題化合物を調製した。
【0118】
医薬組成物の調製:
実施例I
以下の組成からなる錠剤を、慣習的な方法で調製した。
mg/錠剤
活性成分 100
粉末化ラクトース 95
白色コーンスターチ 35
ポリビニルピロリドン 8
ナトリウムカルボキシメチルスターチ 10
ステアリン酸マグネシウム 2
錠剤重量 250
【0119】
実施例II
以下の組成からなる錠剤を、慣習的な方法で調製した。
mg/錠剤
活性成分 200
粉末化ラクトース 100
白色コーンスターチ 64
ポリビニルピロリドン 12
ナトリウムカルボキシメチルスターチ 20
ステアリン酸マグネシウム 4
錠剤重量 400
【0120】
実施例III
以下の組成からなるカプセル剤を調製した。
mg/カプセル
活性成分 50
結晶性ラクトース 60
微晶質性セルロース 34
タルク 5
ステアリン酸マグネシウム 1
カプセル充填量 150
【0121】
適切な粒径を有する活性成分、結晶性ラクトース及び微結晶性セルロースを、互いに均質に混合し、篩にかけ、その後、タルク及びステアリン酸マグネシウムを混合した。最終混合物を、適切な大きさの硬質ゼラチンカプセルに充填した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I):
【化1】


[式中、
は、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシ、CF又はシアノを表し;
は、低級アルキル、ハロゲン、低級アルコキシ、CF及びシアノからなる群から選択される1以上の置換基で場合により置換されている、アリール又はヘテロアリールを表し;
は、水素、C(O)H又はCHを表し、ここで、Rは、水素、OH、C〜C−アルキル又はC〜C12−シクロアルキルであり;
は、低級アルキル又はC〜C12−シクロアルキルを表し;
Xは、N又はCHを表し;
Yは、−(CHR)、−(CHR)又は−(CHR)を表し;
Rは、水素又は低級アルキルを表す]
で表される化合物及びその製薬上許容されうる塩。
【請求項2】
、R、R、X、Y及びRが請求項1で定義されているとおりであり;Rが低級アルキルである;請求項1に記載の式(I)で表される化合物。
【請求項3】
が、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシ、CF又はシアノを表し;
が、低級アルキル、ハロゲン、低級アルコキシ、CF及びシアノからなる群から選択される1以上の置換基で場合により置換されている、アリール又はヘテロアリールを表し;
が、Hを表し;
が、メチルを表し;
Xが、N又はCHを表し;
Yが、−(CHR)、−(CHR)又は−(CHR)を表し;
Rが、水素又は低級アルキルを表す;
請求項1に記載の式(I)で表される化合物及びその製薬上許容されうる塩。
【請求項4】
、R、R、Y及びRが請求項1で定義されているとおりであり;XがCHであり;Rが低級アルキル又はハロゲンで場合により置換されているピリジルである;請求項1に記載の式(I)で表される化合物。
【請求項5】
2−[4−(3−クロロ−フェニルエチニル)−2−メチル−イミダゾール−1−イルメチル]−ピリジン;
2−[4−(3−クロロ−フェニルエチニル)−2−メチル−イミダゾール−1−イルメチル]−6−メチル−ピリジン;
5−[4−(3−クロロ−フェニルエチニル)−2−メチル−イミダゾール−1−イルメチル]−2−メチル−ピリジン;及び、
3−[1−(5−クロロ−ピリジン−3−イルメチル)−2−メチル−1H−イミダゾール−4−イルエチニル]−ベンゾニトリル
である、請求項4に記載の式(I)で表される化合物。
【請求項6】
、R、R、Y及びRが請求項1で定義されているとおりであり;XがNであり;Rが低級アルキル又はハロゲンで場合により置換されているピリジルである;請求項1に記載の式(I)で表される化合物。
【請求項7】
4−[1−(6−メチル−ピリジン−2−イルメチル)−2−メチル−1H−イミダゾール−4−イルエチニル]−2−メチル−ピリジン;
4−[1−(6−メチル−ピリジン−2−イルメチル)−2−メチル−1H−イミダゾール−4−イルエチニル]−2−クロロ−ピリジン;
4−[1−(2−メチル−ピリジン−5−イルメチル)−2−メチル−1H−イミダゾール−4−イルエチニル]−2−クロロ−ピリジン;
4−[1−(5−クロロ−ピリジン−3−イルメチル)−2−メチル−1H−イミダゾール−4−イルエチニル]−2−メチル−ピリジン;
4−[1−(2−クロロ−ピリジン−5−イルメチル)−2−メチル−1H−イミダゾール−4−イルエチニル]−2−クロロ−ピリジン;及び、
4−[1−(2−クロロ−ピリジン−5−イルメチル)−2−メチル−1H−イミダゾール−4−イルエチニル]−2−メチル−ピリジン
である、請求項6に記載の式(I)で表される化合物。
【請求項8】
、R、R、Y及びRが請求項1で定義されているとおりであり;XがNであり;Rがハロゲンで場合により置換されているフェニルである、請求項1に記載の式(I)で表される化合物。
【請求項9】
4−(1−ベンジル−2−メチル−1H−イミダゾール−4−イルエチニル)−2−メチル−ピリジン;
4−(1−ベンジル−2−メチル−1H−イミダゾール−4−イルエチニル)−2−クロロ−ピリジン;
rac−2−メチル−4−[2−メチル−3−(1−フェニル−エチル)−3H−イミダゾール−4−イルエチニル]−ピリジン;
(+)−2−メチル−4−[2−メチル−3−(1−フェニル−エチル)−3H−イミダゾール−4−イルエチニル]−ピリジン;
(−)−2−メチル−4−[2−メチル−3−(1−フェニル−エチル)−3H−イミダゾール−4−イルエチニル]−ピリジン;
rac−2−クロロ−4−[2−メチル−1−(1−フェニル−エチル)−1H−イミダゾール−4−イルエチニル]−ピリジン;
4−[3−(4−フルオロ−ベンジル)−2−メチル−3H−イミダゾール−4−イルエチニル]−2−メチル−ピリジン;
4−[3−(3,4−ジフルオロ−ベンジル)−2−メチル−3H−イミダゾール−4−イルエチニル]−2−メチル−ピリジン;及び、
2−メチル−4−(2−メチル−1−フェネチル−1H−イミダゾール−4−イルエチニル)−ピリジン;
である、請求項8に記載の式(I)で表される化合物。
【請求項10】
請求項1〜9で定義されている式(I)の化合物を調製する方法であって、
(a)式(II):
【化2】


で表される化合物を、式:
Yhal
で表される化合物と反応させて、式(I):
【化3】


[式中、R、R、R、R、X及びYは、上記で定義されているとおりであり、halは、ハロゲン、好ましくは、クロロ、ブロモ又はヨードである]
で表される化合物とすること;及び、
得られた化合物を、必要に応じて、製薬上許容されうる酸付加塩に変換すること;
を含む、前記方法。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか1項に記載された1以上の化合物及び製薬上許容されうる賦形剤を含む、mGluR5受容体が介在する障害を治療及び予防するための医薬。
【請求項12】
急性及び/若しくは慢性の神経障害、特に、不安を治療及び予防するための、又は、慢性及び急性の痛みを治療するための、請求項11に記載の医薬。
【請求項13】
疾患の治療又は予防において使用するための、請求項1〜9のいずれか1項に記載された化合物及びその製薬上許容されうる塩。
【請求項14】
mGluR5受容体が介在する障害を治療及び予防するための医薬を製造するための、請求項1〜9のいずれか1項に記載された化合物及びその製薬上許容されうる塩の使用。
【請求項15】
急性及び/若しくは慢性の神経障害、特に、不安を治療及び予防するための医薬、又は、慢性及び急性の痛みを治療するための医薬を製造するための、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
本明細書に記載されている発明。

【公表番号】特表2007−504188(P2007−504188A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−525079(P2006−525079)
【出願日】平成16年8月27日(2004.8.27)
【国際出願番号】PCT/EP2004/009558
【国際公開番号】WO2005/023795
【国際公開日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】