説明

インクジェットプリンタ及びインクジェットプリンタの制御方法

【課題】インク収容室を複数集合させて一体とした一体型インクカートリッジが搭載されたインクジェットプリンタにおいて、新規カートリッジに交換する際に、旧カートリッジに残存するインクを有効に活用する。
【解決手段】インクエンド検出部によってインクカートリッジのカラーカートリッジのうち、インクが残存しているものが1つでもある場合は、その残存している色のインクについてのみノズルクリーニングを行う。(ステップS13)そして、残存インクによるノズルクリーニング情報を記憶しておき(ステップS14)、インクカートリッジが新規装着された際に、ノズルクリーニング情報に基づき、旧カートリッジでノズルクリーニングを実行したノズル以外のノズルに対してクリーニングを実行する。(ステップS16)そして、新規カートリッジの新規装着時のノズルクリーニング後はノズルクリーニング情報を初期化する。(ステップS17)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク収容室を複数集合させて一体とした一体型インクカートリッジが搭載されるインクジェットプリンタおよびインクジェットプリンタの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタは、インク収容室であるインクタンクから印刷ヘッドにインクを供給し、印刷ヘッドにある複数のインク吐出用のノズルからインクを印刷用紙に吐出することにより印刷を行う。液体のインクを扱う関係上、インクタンクからノズルに至るまでの経路に気泡などが溜まってインクを均一に吐出できなくなることがあるため、殆どのインクジェットプリンタにはクリーニング機能が設けられている。クリーニング機能は、ノズルのインク吐出面にキャップをし、吸引ポンプで負圧をかけて密閉した後、インクを吸引することにより、目詰まりを解消するものである。しかし、このクリーニング処理にはかなりの量のインクを必要とすることから、できる限りその量を減らしたいという要望がある。
【0003】
特許文献1には、クリーニング時のインク消費を抑える技術が開示されている。すなわち、特許文献1には、印刷ヘッドのノズルを複数のグループに区分し、グループ毎に吸引ポンプによる吸引を行うか否かを設定し、またグループ毎に吸引強度を設定する構成が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2003−103804号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した一体型インクカートリッジが搭載されたインクジェットプリンタにおいては、1色でもインクが無くなると新規のカートリッジに交換する必要があるため、残存している色のインクをそのまま廃棄することになり、インクを無駄にしていた。インク収容室を複数集合させて一体とした一体型インクカートリッジは決して安価なものではなく、残存インクを有効に活用することは重要である。
【0006】
したがって本発明は、上記課題に鑑み、インク収容室を複数集合させて一体とした一体型インクカートリッジが搭載されるインクジェットプリンタにおいて、新規カートリッジに交換する際に、旧カートリッジに残存するインクを有効に活用できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、インク収容室を複数集合させて一体とした一体型インクカートリッジが搭載されるインクジェットプリンタであって、前記インク収容室に収容されているインクのインクエンドを検出するインクエンド検出部と、前記インク収容室から供給されるインクを吐出させるノズルを備えた印刷ヘッドと、前記印刷ヘッドのノズル面を覆った状態で前記ノズルからインクを吸引してノズルクリーニングを行うクリーニング機構と、前記インクエンド検出部が複数のインク収容室のうち何れか1つのインク収容室についてインクエンドを検出すると、インクエンドが検出されたインク収容室以外のインク収容室に収容されているインクを吐出させるノズルからインクを吸引するよう前記クリーニング機構を制御するクリーニング機構制御部と、を有することを特徴とする。
また、本発明は、インク収容室を複数集合させて一体とした一体型インクカートリッジが搭載され、前記インク収容室から供給されるインクを印刷ヘッドのノズルから吐出させて印刷を実行するインクジェットプリンタの制御方法であって、前記インク収容室に収容されているインクのインクエンドを検出するステップと、複数のインク収容室のうち何れか1つのインク収容室について前記インクエンドが検出されると、インクエンドが検出された前記インク収容室以外のインク収容室に収容されているインクを吐出させるノズルからインクを吸引してノズルクリーニングを実行するステップと、を有することを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、現在使用中の一体型インクカートリッジの何れか1つのインク収容室についてインクエンドを検出すると、インクエンドが検出されたインク収容室以外のインク収容室に収容されているインクを吐出させるノズルからインクを吸引する。すなわち、少なくとも1色のインクが無くなっても、一体型インクカートリッジを交換する前に、残存する全ての色のインクを利用して、それぞれのインクを吐出させるノズルをクリーニングするので、残存インクの有効活用が可能となる。また、インクを残存したまま廃棄することがなくなるので、環境負荷を減らすことが可能となる。
【0009】
また、本発明は、前記インクエンドを検出した後に実行されたノズルクリーニング情報を記憶するクリーニング情報記憶部と、前記一体型インクカートリッジが新規装着されたことを検出するカートリッジ交換検出部と、を有し、前記クリーニング機構制御部は、前記カートリッジ交換検出部が一体型インクカートリッジの新規装着を検出すると、前記ノズルクリーニング情報に基づき、前記ノズルクリーニングが実行されたノズル以外のノズルからインクを吸引するよう前記クリーニング機構を制御することを特徴とする。
また、本発明は、前記インクエンドを検出した後に実行されたノズルクリーニング情報をクリーニング情報記憶部へ記憶するステップと、前記一体型インクカートリッジが新規装着を検出するステップと、前記一体型インクカートリッジが新規装着されたことを検出すると、前記ノズルクリーニング情報に基づき、前記ノズルクリーニングが実行されたノズル以外のノズルからインクを吸引して新規装着後ノズルクリーニングを実行するステップと、を有することを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、残存インクによるノズルクリーニング情報を記憶しておいて、一体型インクカートリッジが新規装着された際に、ノズルクリーニング情報に基づき、旧カートリッジにおいてインクエンドを検出した後に実行されたノズルクリーニングを実行したノズル以外のノズルに対してクリーニングを実行するので、その分、新規カートリッジが装着された際に実行するノズルクリーニングを省くことができ、新規カートリッジのインク消費を抑えることが可能となる。
【0011】
また、本発明において、前記クリーニング情報記憶部は、前記一体型インクカートリッジが新規装着された後にノズルクリーニングが実行されると、前記ノズルクリーニング情報を初期化することを特徴とする。
また、本発明は、前記新規装着後ノズルクリーニングが実行されると、前記ノズルクリーニング情報を初期化するステップを有することを特徴とする。
【0012】
上記構成によれば、一体型インクカートリッジの新規装着時のノズルクリーニング後は、ノズルクリーニング情報を初期化するので、次回、インクカートリッジ交換時に実行されたクリーニング情報を正しく記憶することができる。すなわち、新規装着後もクリーニング情報が残っていると、次回の交換時にクリーニングを実行していないにも関わらず、あたかもインクエンドを検出した後のクリーニングを実行したかのように誤った認識をしてしまう。したがって、クリーニング情報を初期化することで、正常なクリーニング制御を繰り返し実行させることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための好適な実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明の一実施の形態に係るインクジェットプリンタの外観を示す斜視図である。同図において、本実施の形態に係るインクジェットプリンタ100は、ブラック及びカラーインクカートリッジ1、2がケース3の内部に着脱可能に装着される。ケース3の露出面には操作パネル4が設けられ、ここに電源スイッチ5、インクカートリッジ交換指令スイッチ6、ブラックヘッドクリーニング指令スイッチ7、カラーヘッドクリーニング指令スイッチ8や、ブラック及びカラーインクカートリッジ1、2のインクエンド等の警報事項を報知するための表示器9、10が配置されている。なお、本実施の形態に係るインクジェットプリンタ100で使用されるインクカートリッジ1、2は、インクを貯留するインク収容空間が周囲の空気と連通している開放系のインクカートリッジである。インクカートリッジ2においては、複数色のインクをそれぞれ貯留する複数のインク収容部2A、2B、2C、2Dが一体的に形成されている。
【0015】
図2は、ケース3の内部に収納された印刷機構の概要を示す斜視図である。同図において、キャリッジ11は、タイミングベルト12によりキャリッジ駆動モータ13に接続されていて、プラテン14に平行に往復移動するように構成されている。キャリッジ11には、その記録用紙15と対向する面に、ブラックインクを吐出する印刷ヘッド16及びカラーインクを吐出する印刷ヘッド17が固定されている。非印刷領域に配置されたキャッピングユニット18は、ブラックインク吐出用の印刷ヘッド16を封止するキャップ部材19と、カラーインク吐出用の印刷ヘッド17を封止するキャップ部材20とを同一のスライダに搭載し、モータ21により駆動される2連構成のポンプユニット22にチューブを介して接続され、それぞれ独立して負圧の供給を受けるように構成されている。
【0016】
各キャップ部材19、20は、印刷ヘッド16、17の各ノズル形成面を1つの空間で封止できるサイズを備え、ゴムなどの弾性材料をカップ状に成形して構成されている。これらのキャップ部材19、20は、非印刷時には印刷ヘッド16、17のノズル形成面を封止し、また吐出能力回復操作時や、インクカートリッジ1、2が交換された際には、キャップ部材19、20内の密閉空間からポンプユニット22により流体(空気・インク)を排出し、これにより形成される負圧を利用して印刷ヘッド16、17からインクを強制的に吸引排出させることができるように構成されている。キャッピングユニット18の近傍には、図示しない駆動源からの動力により印刷ヘッド16、17のノズル形成面にワイピングブレードを当接させるワイピングユニット23が配置されている。キャリッジ11に搭載された各印刷ヘッド16、17は、フレキシブルケーブル24を介して制御装置25に接続されている。
【0017】
図3(a)、(b)は、それぞれブラックインクカートリッジ1及びカラーインクカートリッジ2の一例を示す斜視図である。同図において、ブラックインクカートリッジ1及びカラーインクカートリッジ2がキャリッジ11に装着された際、キャリッジ11の内面に対向する面、この例ではインク供給口31、41側の側面に書き換え可能な半導体記憶素子32、42が設けられている。半導体記憶素子32、42は、半導体記憶素子32、42が実装されている回路基板33、43に形成された外部接続可能な接点34、44を介して、キャリッジ11の接点(図示略)に接続され、さらにはフレキシブルケーブル24を介して制御装置25に接続され、これらに格納されているデータの読出しや、インクジェットプリンタ100本体のデータが書き込まれる。
【0018】
半導体記憶素子32、42には書換え不能な固定データとして、当該インクカートリッジ1、2を特定するためのIDデータ、製造年月日、使用可能期限、適合するインクジェットプリンタを特定するデータ、インク容量が工場出荷時に記録される。さらに、半導体記憶素子32、42は、インクカートリッジ1、2のインクジェットプリンタへの装着時期、インク残量、インクジェットプリンタにより実行されたメンテナンス処理の回数や程度に関するデータを記録するための領域を確保して構成されている。
【0019】
図4は、インクカートリッジ2のクリーニング機構28を示す図である。同図において、印刷ヘッド17が、複数色のカラーインクをそれぞれ貯留する複数(本例では4体)のカラーインク収容部2A、2B、2C、2Dからインクの供給を受けるように構成されている。また、各カラーインク収容部に対応して複数のキャップ部材20A、20B、20C、20Dが設けられている。さらに、ポンプユニット22の吸引ポンプ22aを複数のキャップ部材20A、20B、20C、20Dに接続するための選択開閉弁27が、吸引ポンプ22aと複数のキャップ部材20A、20B、20C、20Dとの間に設けられている。そして、選択開閉弁27に対する制御が行われることで、各カラーインク収容部A、2B、2C、2Dからインクを吸引できるように構成されている。
【0020】
(インクジェットプリンタ100のクリーニング制御についいて)
図5は、本実施形態のインクジェットプリンタ100におけるクリーニング制御に関する機能部のみを示した機能ブロック図である。
図5に示すように、制御装置25は、クリーニング機構制御部256と、インクエンド検出部253と、カートリッジ交換検出部51と、クリーニング情報記憶部254と、印刷制御部53と、主制御部255とを備える。
【0021】
クリーニング機構制御部256は、クリーニング機構28の駆動制御を行う。具体的には、印刷ヘッド16、17をキャッピングユニット18のキャップ部材19、20により封止し、ポンプユニット22の吸引ポンプ22aの吸引力や吸引時間を制御して、インク吐出能力回復のために印刷ヘッド16、17からインクを強制的に排出させる。さらに、インクカートリッジ1、2が交換された際に、印刷が可能となるようにインクカートリッジ1、2から印刷ヘッド16、17までの流路内にインクを充填する。
【0022】
また、本実施形態ではインクカートリッジ2の複数のカラーインク収容部2A、2B、2C、2Dのうちの何れか1つでもインクエンドになった場合にも、クリーニング機構28を駆動制御する。具体的には、印刷ヘッド17のノズル面をカラーインク収容部2A、2B、2C、2Dに対応するキャップ部材20A、20B、20C、20Dでキャップして密閉状態を作り、選択開閉弁27を制御するとともに吸引ポンプ22aを駆動させる。このとき、選択開閉弁27の制御によってはカラーインク収容部2A、2B、2C、2Dのうち、インクが残存するカラーインク収容部に収容されているインクのみを吸引してノズルをクリーニングすることができるようになっている。
【0023】
例えば、カラーインク収容部2Aがインクエンドとなった場合、カラーインク収容部2B、2C、2Dに収容されたインクを吐出するノズルからインクを吸引する。すわわち、キャップ部材20A、20B、20C、20Dによって印刷ヘッド17のノズル面全体がキャップされるものの、選択開閉弁27によってカラーインク収容部2Aに対応するノズルのみ開閉弁が閉ざされる。これによって、吸引ポンプ22aを駆動させてもカラーインク収容部2B、2C、2Dに対応するノズルのみインクが吸引され、カラーインク収容部2Aに対応するノズルからはインクが吸引されないようになっている。なお、ブラックインク吐出用のカートリッジ1については残存インクを使用したノズルクリーニングは実行されない。
【0024】
インクエンド検出部253は、印刷により形成するドット数や、フラッシング動作により吐出するインク滴の数や、充填動作、クリーニング動作により消費されるインク量を積算して、インクカートリッジ1、2のインク残量を算出し、インク残量が所定のインクエンド値に達したか否かを判定することで、インクエンドを検出する。特に、インクカートリッジ2については、カラーインク収容部2A、2B、2C、2Dの各々についてインクエンドを検出することができるようになっている。なお、インクエンドの検出方法は上記検出方法に限定されることはなく、この他にも公知となっている方法を採用するようにしてもよい。ここでは、公知となっているインクエンド検出方法については説明を省略する。
【0025】
カートリッジ交換検出部252は、キャリッジ11のカートリッジ受け面に設けられた、インクカートリッジ1、2により押圧操作されるスイッチ(図示略)からの信号を受けて、インクカートリッジ1、2の装着及び取り外しを検出する。
【0026】
クリーニング情報記憶部254は、インクエンドが検出された後に実行されたノズルクリーニングに関する情報即ちノズルクリーニング情報を記憶する。例えば、カラーインク収容部2Aがインクエンドとなって、カラーインク収容部2B、2C、2Dに残存しているインクでノズルクリーニングを行った場合、その旨を示す情報を記憶する。具体的には、ノズルクリーニングを実行したカラーインク収容部に対応する情報としてフラグを立てるよう設定されていた場合には、カラーインク収容部2A以外の他のカラーインク収容部2B、2C、2に関するノズルクリーニング情報にフラグを立てるようにすればよい。なお、クリーニング情報記憶部254には、フラッシュROMやEEPROM(Electronically Erasable and Programmable Read Only Memory)等の揮発性メモリが用いられる。
【0027】
印刷制御部251は、主制御部255から入力された印刷データに基づいて各印刷ヘッド16、17にインク滴吐出のための駆動信号を出力して印刷を実行させる。ホストコンピュータから送信された印刷データに応じて、主制御部255を介して印刷制御部53に印刷指示が伝達される。さらにキャリッジ11を印刷のために往復移動させる他、吐出回復操作時には印刷ヘッド16、17をキャッピング可能な位置に移動させる。
【0028】
主制御部255は、パネル4のインクカートリッジ交換指令スイッチ6、クリーニング指令スイッチ7、8、インクエンド検出部253、カートリッジ交換検出部252及びホストコンピュータからの信号を受け、クリーニング処理、インク残量チェック処理、印刷処理、インクカートリッジ交換処理等の動作を統括する。
【0029】
(インクジェットプリンタ100のインクエンド時におけるノズルクリーニング処理についいて)
次に、インクカートリッジ2のインクエンド時における、残存インクを用いたノズルクリーニング処理について、図6に示すフローチャートを参照して説明する。
図6に示すように、まず、インクエンド検出部253によってインクカートリッジ2のインクエンドが検出されたかどうか判定し、インクエンドが検出されていなければこのステップS11を繰り返し、インクエンドが検出されれば(ステップS11:Yes)、残存しているインクが有るかどうか判定する(ステップS12)。すなわち、インクカートリッジ2を構成するカラーインク収容部2A、2B、2C、2Dのうち、インクが残存しているものがあるかどうか判定する。カラーインク収容部2A、2B、2C、2Dのうち、インクが残存しているものが無ければ、残存インクによるノズルクリーニングの実行ができないことからそのままインクカートリッジ2の交換を促す通知を行い(ステップS18)、新規カートリッジが装着されるまで待機する。
【0030】
カラーインク収容部2A、2B、2C、2Dのうち、インクが残存しているものが1つでもある場合は、その残存している色のインクについてのみノズルクリーニングを行う(ステップS13)。ここでカラーインク収容部Aにインクが残存しているとすると、印刷ヘッド17のノズル形成面をキャップ部材20で封止した後、選択開閉弁27を介して吸引ポンプ22aをキャップ部材20Aに接続し、その後、吸引ポンプ22aを駆動してカラーインク収容部2Aから供給されるインクを吐出するノズルからインクを吸引する。これにより、インクエンド時にカラーインク収容部2Aの内部に残存していたインクによってカラーインク収容部2Aから供給されるインクを吐出するノズルがクリーニングされる。カラーインク収容部2Aに対応するノズルから吸引されたインクは、インクジェットプリンタ100本体内に配置された廃液ボックス26に送られてそこに貯留される。
【0031】
なお、2つ以上のカラーインク収容部でインクが残存している場合は、残存しているインク収容部に対応するノズルからのみ残存インクを吸引すればよい。例えば、カラーカートリッジ2A、2Cそれぞれにインクが残存している場合、印刷ヘッド17のノズル形成面をキャップ部材20で封止した後、選択開閉弁27によってカラーインク収容部2B、2Dに対応するノズルのみ開閉弁によって閉ざし、吸引ポンプ22aを駆動する。これにより、カラーインク収容部2B、2Dには負圧が伝達ないため、カラーインク収容部2Aから供給されるインクを吐出するノズルから残存インクを吸引するとともに、カラーカートリッジ2Cから供給される残存インクを吐出するノズルからインクを吸引する。
【0032】
したがって、インクエンド時にカラーカートリッジ2A、2Cそれぞれの内部に残存していたインクによってカラーカートリッジ2A、2Cから供給されるインクを吐出するノズルがクリーニングされる。なお、インクが残存するカラーインク収容部2A、2B、2C、2Dに対して順番にノズルクリーニングを実行するようにしてもよい。
【0033】
残存している色のインクについてのみノズルクリーニングを行った後、クリーニング情報記憶部254に記憶されているノズルクリーニング情報を更新する。すなわち、ノズルクリーニングを実行したインク色のノズルクリーニング情報を更新する(ステップS14)。例えば、カラーインク収容部2A、2Cから供給される色のインクを吐出するノズルをクリーニングした場合、該ノズルに関するノズルクリーニング情報のフラグを立てる。
【0034】
このようにしてノズルクリーニング情報を更新した後、新規カートリッジが装着されたかどうか判定し(ステップS15)、新規カートリッジが装着されていなければ、新規カートリッジが装着されるまでこのステップS15を繰り返し、新規カートリッジが装着されると(ステップS15:Yes)、ステップS14で更新されたノズルクリーニング情報を参照し、ノズルクリーニング未実施のインク色のノズルに対してのみクリーニングを実行する(ステップS16)。ここでは、ステップS13において交換前のインクカートリッジ2のうちカラーインク収容部2A、2Cから供給される色のインクを吐出するノズルのみをクリーニングしたので、新規装着されたインクカートリッジにおけるカラーインク収容部(新規装着されたインクカートリッジのうち交換前のインクカートリッジ2のカラーインク収容部2B、2Dに相当するカラーインク収容部)から供給される色のインクを吐出するノズルに対してクリーニングを実行する。
【0035】
未実施のインク色のみノズルクリーニングを実行した後、ステップS14で更新したクリーニング情報記憶部254のノズルクリーニング情報を初期化する(ステップS17)。この初期化処理を行った後、ステップS11に戻り、上述した処理を行う。新規カートリッジを装着した直後のノズルクリーニング実行後にノズルクリーニング情報を初期化することで、次回、インクカートリッジ交換時に実行されたノズルクリーニング情報を正しく記憶することができる。すなわち、新規装着後もノズルクリーニング情報が残っていると、次回の交換時にクリーニングを実行していないにも関わらず、あたかもインクエンドを検出した後のノズルクリーニングを実行したかのように誤った認識をしてしまう。したがって、ノズルクリーニング情報を初期化することで、正常なクリーニング制御を繰り返し実行させることが可能となる。
【0036】
以上述べたように本実施の形態に係るインクジェットプリンタ100によれば、インクエンド検出部253によってインクカートリッジ2のカラーインク収容部2A、2B、2C、2Dのうち、インクが残存しているものが1つでもある場合は、その残存している色のインクについてのみノズルクリーニングを行うので、残存インクの有効活用が可能となる。また、インクを残存したまま廃棄することがなくなるので、環境負荷を減らすことが可能となる。
【0037】
また、残存インクによるノズルクリーニング情報を記憶しておき、新たなインクカートリッジが新規装着された際に、ノズルクリーニング情報に基づき、旧カートリッジでノズルクリーニングを実行したノズル以外のノズルに対してクリーニングを実行し、その後にノズルクリーニング情報を初期化するので、残存インクの有効活用が可能となり、新規カートリッジのインク消費を抑えることが可能となる。
【0038】
なお、上述の実施の形態で説明した各処理については、これら各処理を実行するためのプログラムをCD−ROM(Compact Disc-Read Only Memory)、ROM、メモリカード等の記録媒体に記録して、記録媒体の形で頒布することが可能である。この場合、このプログラムが記録された記録媒体をホストコンピュータ等を介してインクジェットプリンタ100に読み込ませ、実行させることにより、上述した実施の形態を実現することができる。
【0039】
さらに、このようなプログラムは、記録媒体の形ではなく、ネットワークを通じてダウンロードして頒布することも可能である。ネットワーク上からダウンロードされたプログラムは、ホストコンピュータ等を介してインクジェットプリンタ100に取り込まれて、このプログラムを実行することにより上述した実施の形態を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一実施の形態に係るインクジェットプリンタの外観を示す斜視図である。
【図2】図1に示すインクジェットプリンタの内部の印刷機構を示した斜視図である。
【図3】図1に示すインクジェットプリンタで使用されるインクカートリッジを示した斜視図であり、(a)はブラックインク用のインクカートリッジを示し、(b)はカラーインク用のインクカートリッジを示している。
【図4】図1に示すインクジェットプリンタのクリーニング機構を示す図である。
【図5】図1に示すインクジェットプリンタの要部の概略構成を示すブロック図である。
【図6】図1に示すインクジェットプリンタにおけるインクカートリッジの残存インクを用いたノズルクリーニング処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0041】
1:ブラックインクカートリッジ、2:カラーインクカートリッジ、2A、2B、2C、2D:カラーインク収容部、3:ケース、4:操作パネル、11:キャリッジ、16、17:印刷ヘッド、18:キャッピングユニット、20A、20B、20C、20D:キャップ部材、22:ポンプユニット、22a:吸引ポンプ、25:制御装置、26:廃液ボックス、27:選択開閉弁、28:クリーニング機構、251:印刷制御部、252:カートリッジ交換検出部、253:インクエンド検出部、254:クリーニング情報記憶部、255主制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク収容室を複数集合させて一体とした一体型インクカートリッジが搭載されるインクジェットプリンタであって、
前記インク収容室に収容されているインクのインクエンドを検出するインクエンド検出部と、
前記インク収容室から供給されるインクを吐出させるノズルを備えた印刷ヘッドと、
前記印刷ヘッドのノズル面を覆った状態で前記ノズルからインクを吸引してノズルクリーニングを行うクリーニング機構と、
前記インクエンド検出部が複数のインク収容室のうち何れか1つのインク収容室についてインクエンドを検出すると、インクエンドが検出されたインク収容室以外のインク収容室に収容されているインクを吐出させるノズルからインクを吸引するよう前記クリーニング機構を制御するクリーニング機構制御部と、を有することを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項2】
前記インクエンドを検出した後に実行されたノズルクリーニング情報を記憶するクリーニング情報記憶部と、
前記一体型インクカートリッジが新規装着されたことを検出するカートリッジ交換検出部と、を有し、
前記クリーニング機構制御部は、前記カートリッジ交換検出部が一体型インクカートリッジの新規装着を検出すると、前記ノズルクリーニング情報に基づき、前記ノズルクリーニングが実行されたノズル以外のノズルからインクを吸引するよう前記クリーニング機構を制御することを特徴とする請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項3】
前記クリーニング情報記憶部は、前記一体型インクカートリッジが新規装着された後にノズルクリーニングが実行されると、前記ノズルクリーニング情報を初期化することを特徴とする請求項2に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項4】
インク収容室を複数集合させて一体とした一体型インクカートリッジが搭載され、前記インク収容室から供給されるインクを印刷ヘッドのノズルから吐出させて印刷を実行するインクジェットプリンタの制御方法であって、
前記インク収容室に収容されているインクのインクエンドを検出するステップと、
複数のインク収容室のうち何れか1つのインク収容室について前記インクエンドが検出されると、インクエンドが検出された前記インク収容室以外のインク収容室に収容されているインクを吐出させるノズルからインクを吸引してノズルクリーニングを実行するステップと、を有することを特徴とするインクジェットプリンタの制御方法。
【請求項5】
前記インクエンドを検出した後に実行されたノズルクリーニング情報をクリーニング情報記憶部へ記憶するステップと、
前記一体型インクカートリッジが新規装着を検出するステップと、
前記一体型インクカートリッジが新規装着されたことを検出すると、前記ノズルクリーニング情報に基づき、前記ノズルクリーニングが実行されたノズル以外のノズルからインクを吸引して新規装着後ノズルクリーニングを実行するステップと、を有することを特徴とする請求項4に記載のインクジェットプリンタの制御方法。
【請求項6】
前記新規装着後ノズルクリーニングが実行されると、前記ノズルクリーニング情報を初期化するステップを有することを特徴とする請求項5に記載のインクジェットプリンタの制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2008−149587(P2008−149587A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−340503(P2006−340503)
【出願日】平成18年12月18日(2006.12.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】