説明

インクジェットプリンタ

【課題】 プリント動作を中断することなく、操作者の指示により、各種操作を行うことが可能なインクジェットプリンタを提供することを目的とする。
【解決手段】 操作者からのプリント動作指示信号を検知するプリント動作指示信号検知手段と、プリント動作指示信号検知手段で検知された前記プリント動作指示信号に基づいて、所定のヘッドユニットにプリントユニットによる所定のプリント動作を行わせるプリント制御手段と、操作者からのメンテナンス動作指示信号を検知するメンテナンス動作指示信号検知手段と、プリント動作指示信号検知手段で検知されたプリント動作指示信号に基づいて、所定のヘッドユニットにメンテナンスユニットによる所定のメンテナンス動作を行わせるメンテナンス制御手段とを有することを特徴とするインクジェットプリンタ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェット技術はさまざまな分野に応用されていて、工業製品などの製造装置の一部に応用される場合がある。たとえば製品やその包装への符号のマーク、特殊インクの吐出による画像ディスプレイ装置や電子部品の製造などが知られている。製造装置の一部に応用されるインクジェットプリンタではインク吐出不良による不良の発生が製造工程全体の停止につながるために、高い信頼性が要求される。
【0003】
しかしインクジェットヘッドは、長時間の連続吐出の場合のノズル面の汚れによる吐出不良の発生、長時間の非吐出の場合のノズル内インクの増粘による吐出不良の発生など、インク吐出不良を起こしやすい。また、これを避けるために一定時間ごとにメンテナンス動作を行うと、メンテナンス動作の間はプリント動作ができない。
【0004】
そこで2組のヘッドユニットを設けることにより、プリント動作とメンテナンス動作を同時に行うことのできるプリンタが提案されている。(特許文献1参照)
【特許文献1】特開2002−59568号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された従来技術は、プリント動作とメンテナンス動作を一連のものとして制御するプリンタとなっており、2組のヘッドユニットのメンテナンス動作は、プリント中に、2組のヘッドユニットについて交互に、予め設定された周期に従って、所定のメンテナンス動作を所定の時間だけ、自動的に実施される。
【0006】
このため、吐出不良の状況に応じた適切なメンテナンス動作を2組のヘッドユニットについて、それぞれ独立に操作者が制御することができない。特に、2組のヘッドユニットの使用頻度状況は、それぞれ、プリントする画像データ等により異なるので、吐出不良の発生状況も当然異なってくる。また、プリント中にメンテナンス中のヘッドの回復状態を操作者が確認しながらメンテナンス動作を行うことができないため、ヘッドユニットのメンテナンス動作がきちんと行われない状況で、プリント動作に移行してしまうことがあり、この場合は、電源スイッチをOFFにして、実質的にプリント動作を中断せざる得ない。
【0007】
また、吐出不良がひどくなると、メンテナンス動作によってもヘッドが回復せずヘッドを交換せざるを得なくなるという場合がある。従来技術においては、プリント中にヘッドの交換ができないため、ヘッド交換の間は、プリントを中断しなければならない。
【0008】
また、新しいヘッドを装着する時の位置再現性が問題となる。すなわち、複数のヘッドのノズル列から吐出されたインク滴を所定の位置に着弾させて重ね合わせるには、各ノズル列からのインク滴の吐出タイミングをノズル列の間隔分だけ調整する必要があり、ヘッド交換により位置ずれが発生した場合は、再度調整する必要が生じる。従って、位置ずれを調整する間は、プリントを中断しなければならない。
【0009】
また、従来のインクジェットプリンタにおいては、プリント動作中にインク切れ、被プリント媒体切れ、プリント動作条件の不具合等が生じた場合においても、電源スイッチをOFFにして装置を停止させ、インクタンクの交換、紙等を補充、プリント動作条件の変更をしたのちプリントを再開する必要があり、この間はプリント動作が中断する。
【0010】
以上のように、少なくとも2組のヘッドユニットを有するインクジェットプリンタにおいて、プリント動作を中断することなく、最適なメンテナンス動作やプリント動作、さらには、インクタンクの交換、紙の補充、ヘッド交換等を行うためには操作者による手動操作が不可欠である。
【0011】
本発明は以上のような状況に鑑みてなされたものであり、プリント動作を中断することなく、最適なメンテナンス動作を行うことができるとともに、メンテナンスすべきヘッドユニットと最適のメンテナンス動作の選択及びメンテナンスの開始タイミングや終了タイミングを操作者が手動で指示することができ、また、プリントに使用するヘッドユニットの選択及びプリントの開始タイミングや終了タイミングを手動で指示することができ、ひいては、操作者が、被プリント媒体へのプリント状況から判断した任意のタイミングでヘッドユニットのメンテナンス動作を行うことができる。また、プリント中に、メンテナンス中のヘッドの回復状態を操作者が確認しながらメンテナンス動作を行うことができる。
【0012】
また、メンテナンス動作中に被プリント媒体の交換やプリント動作条件の変更などを行うことができる。さらに、操作者が、ヘッドのメンテナンス動作による回復が困難でヘッド交換が必要になったと判断した場合は、プリント動作中においてもプリント動作を中断することなく、ヘッド交換作業を同時に行うことが可能なインクジェットプリンタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の目的は、以下のような構成により達成される。
(請求項1)
少なくとも2組のヘッドユニットと、
ヘッドユニットに対してメンテナンス動作を行うためのメンテナンスユニットと、
ヘッドユニットと被プリント媒体を相対移動させて、ヘッドユニットから前記被プリント媒体上にインクを吐出させてプリント動作を行わせるためのプリントユニットと、
操作者からのプリント動作指示信号を検知するプリント動作指示信号検知手段と、
前記プリント動作指示信号検知手段で検知された前記プリント動作指示信号に基づいて、所定のヘッドユニットに前記プリントユニットによる所定のプリント動作を行わせるプリント制御手段と、
操作者からのメンテナンス動作指示信号を検知するメンテナンス動作指示信号検知手段と、
前記プリント動作指示信号検知手段で検知された前記プリント動作指示信号に基づいて、所定のヘッドユニットに前記メンテナンスユニットによる所定のメンテナンス動作を行わせるメンテナンス制御手段と、
を有することを特徴とするインクジェットプリンタ。
(請求項2)
前記プリント動作指示信号を入力するためのプリント動作指示信号入力手段を有することを特徴とする請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
(請求項3)
前記メンテナンス動作指示信号を入力するためのメンテナンス動作指示信号入力手段を有することを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェットプリンタ。
(請求項4)
前記メンテナンスユニットは、ヘッド位置検出手段を有することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のインクジェットプリンタ。
(請求項5)
前記少なくとも2組のヘッドユニットは、前記少なくとも2組のヘッドユニットの背圧を決定する1組のインクタンクからインク供給をうけるように構成されていることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のインクジェットプリンタ。
(請求項6)
前記少なくとも2組のヘッドユニットにおける各ヘッドは、ラインヘッドであることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載のインクジェットプリンタ。
(請求項7)
前記少なくとも2組のヘッドユニットにおける各ヘッドユニットを搭載するためのヘッドユニット組数分のヘッドユニット搭載手段を有し、
前記プリントユニットは、各ヘッドユニット搭載手段が独立に往復移動することができるように構成されていることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載のインクジェットプリンタ。
【0014】
本発明者は、以下のように考え、本発明に至った。
【0015】
少なくとも2組のヘッドユニットと、ヘッドユニットに対してメンテナンス動作を行うためのメンテナンスユニットと、ヘッドユニットと被プリント媒体を相対移動させて、ヘッドユニットから前記被プリント媒体上にインクを吐出させてプリント動作を行わせるためのプリントユニットと、操作者からのプリント動作指示信号を検知するプリント動作指示信号検知手段と、前記プリント動作指示信号検知手段で検知された前記プリント動作指示信号に基づいて、所定のヘッドユニットに前記プリントユニットによる所定のプリント動作を行わせるプリント制御手段と、操作者からのメンテナンス動作指示信号を検知するメンテナンス動作指示信号検知手段と、前記プリント動作指示信号検知手段で検知された前記プリント動作指示信号に基づいて、所定のヘッドユニットに前記メンテナンスユニットによる所定のメンテナンス動作を行わせるメンテナンス制御手段と、を有することを特徴とするインクジェットプリンタにより、1組のヘッドユニットがメンテナンス動作をしている間は、残りの組のヘッドユニットによりプリント動作を継続することが可能になるので、プリント動作を中断することなく、最適なメンテナンス動作を行うことができるとともに、メンテナンスすべきヘッドユニットと最適のメンテナンス動作の選択及びメンテナンスの開始タイミングや終了タイミングなどのメンテナンス動作条件を操作者が手動で指示することができる。
【0016】
また、プリントに使用するヘッドユニットの選択及びプリントの開始タイミングや終了タイミング、被プリント媒体の搬送条件、ヘッドの往復移動条件、ヘッドの駆動条件、インクの種類の選択、被プリント媒体の選択等のプリント動作条件を手動で指示することができる。
【0017】
上記構成により、操作者が、被プリント媒体へのプリント状況から判断した任意のタイミングでヘッドユニットのメンテナンス動作を行うことができる。また、プリント中に、メンテナンス中のヘッドの回復状態を操作者が確認しながらメンテナンス動作を行うことができる。また、メンテナンス動作中に被プリント媒体の交換やプリント動作条件の変更などを行うことができる。さらに、操作者が、ヘッドのメンテナンス動作による回復が困難でヘッド交換が必要になったと判断した場合は、プリント動作中においてもプリント動作を中断することなく、ヘッド交換作業を同時に行うことが可能になる。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に記載の発明によれば、1組のヘッドユニットがメンテナンス動作をしている間は、残りの組のヘッドユニットによりプリント動作を継続することが可能になるので、プリント動作を中断することなく、最適なメンテナンス動作を行うことができるとともに、メンテナンスすべきヘッドユニットと最適のメンテナンス動作の選択及びメンテナンスの開始タイミングや終了タイミングを操作者が手動で指示することができる。また、プリントに使用するヘッドユニットの選択及びプリントの開始タイミングや終了タイミングを手動で指示することができる。
【0019】
従って、例えば、操作者が、被プリント媒体へのプリント状況から判断した任意のタイミングでヘッドユニットのメンテナンス動作を行うことができる。また、プリント中にメンテナンス中のヘッドの回復状態を操作者が確認しながらメンテナンス動作を行うことができる。また、メンテナンス動作中に被プリント媒体の交換やプリント動作条件の変更などを行うことができる。さらに、操作者が、ヘッドのメンテナンス動作による回復が困難でヘッド交換が必要になったと判断した場合は、プリント動作中においてもプリント動作を中断することなく、ヘッド交換作業を同時に行うことができる。
【0020】
請求項2に記載の発明によれば、プリント動作指示信号入力手段を別途に設ける必要がなくなる。
【0021】
請求項3に記載の発明によれば、メンテナンス動作指示信号入力手段を別途に設ける必要がなくなる。
【0022】
請求項4に記載の発明によれば、プリントを中断することなくヘッド交換後のヘッドの位置調整を容易に行うことができる。
【0023】
請求項5に記載の発明によれば、インク供給手段を共通にすることにより、少なくとも2組のヘッドユニットに供給されるインクが同一になり、またインク背圧などの条件が等しくなるために、各ヘッドユニットによるプリント画像の差異を小さくできる。
【0024】
請求項6に記載の発明によれば、高速プリントが可能となる。
【0025】
請求項7に記載の発明によれば、高精細なプリントが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下に本発明に関する実施の形態の例を示すが、本発明の態様はこれらに限定されるものではない。
【0027】
以下、図1のシャトル型インクジェットプリンタ1の主要部の機械的構成を図面に基づいて説明するが、この発明はこの実施の形態に限定されない。同図に示すように、インクジェットプリンタ1の主要構成は、ヘッド10Y,10M,10C,10Kで構成される第1のヘッドユニット10、ヘッド20Y,20M,20C,20Kで構成される第2のヘッドユニット20、第1のヘッドユニットを搭載する手段の一例であるキャリッジ100、第2のヘッドユニットを搭載する手段の一例であるキャリッジ200、キャリッジ駆動機構90(図4)、プリント動作時やメンテナンス動作時等に、第1のヘッドユニット10を搭載したキャリッジ100や第2のヘッドユニット20を搭載したキャリッジ200が主走査方向Aに沿って往復移動する際に案内するガイド軸30、キャリッジの位置情報を取得するためのエンコーダ(不図示)、ロール状の紙の元巻きから送られるシート状の被プリント媒体Mを副走査方向Bに沿って搬送する搬送手段50、搬送時に案内するガイド部材40、メンテナンスユニット60、インク供給手段81(図3)、制御手段5(図4)、操作入力手段91(図4)等から構成される。なお、ヘッドの添え字Y,M,C,Kはそれぞれイエローインク、マゼンタインク、シアンインク、ブラックインクを吐出するヘッドであることを示すためのものである。
【0028】
なお、ノズル41(図2)はヘッドの底部に複数個設置されており、直線状の列(ノズルライン)をなして配置されている。キャリッジは、ヘッドユニットを、ノズルを下側に配置して収納する。キャリッジはガイド軸30に対し、主走査方向Aに移動自在に取り付けられ、キャリッジ駆動機構90によってキャリッジ100とキャリッジ200は、主走査方向Aに、独立に往復移動することができるように構成されている。このような構成とすることにより、高精細なプリントが可能となる。
【0029】
キャリッジ駆動機構90は、モータ202、ワイヤー201等を含んで構成されていて、キャリッジはワイヤーに固着されている。
【0030】
モータが回転すると、ワイヤーに固着されたキャリッジは主走査方向Aに沿って移動させられる。また、モーターの回転速度を変更することにより、キャリッジ移動速度を変更できるように構成されている。
【0031】
不図示のエンコーダは透明なフィルムに所定の間隔で目盛りをつけたもので、この目盛りをキャリッジに設けた光センサーにより検出して、キャリッジの位置を検知する。
【0032】
ここで、本実施の形態においては、プリント領域と重複しない、例えば、ガイド軸30の一端側をメンテナンス領域とし、メンテナンスユニット60は、このメンテナンス領域に配置される。メンテナンス動作時において、ヘッドユニットは、このメンテナンス領域上を移動するように駆動制御され、メンテナンスユニット60により対象となるヘッドユニットに対してメンテナンス動作が実施される。
【0033】
ヘッドは、図示しない吐出手段及びノズル41を備えて構成され、ヘッド毎に設けられたヘッド駆動回路42(図4)を介して制御手段5と接続される。ヘッド駆動回路42は、制御手段5から送信される制御信号に基づいて吐出手段に電圧を印加する。吐出手段は1つのノズル41に付き1個が、ノズル41と連通して設置され、せん断モード型の圧電素子で構成されている。
【0034】
吐出手段に対して、被プリント媒体Mの画像データに基づいて制御手段5から送信された制御信号により電圧が印加されることで、この吐出手段と連通したノズル41からインクがインク滴として吐出される。
【0035】
ここで、搬送手段50の一例である搬送ローラが回転することにより、被プリント媒体Mがガイド部材40上で搬送されることにより、相対的にヘッドの被プリント媒体M上でのB方向の位置が変化する。搬送ローラの回転速度を変更することにより、被プリント媒体の搬送速度を変更できるように構成されている。
【0036】
また、ヘッドを収納したキャリッジがキャリッジ駆動機構によりガイド軸30上を移動することで、ヘッドの被プリント媒体上でのA方向の位置が変化する。上述のガイド部材40及びキャリッジ駆動機構と連動してヘッドからインク滴を吐出することにより、被プリント媒体M上にインク滴の集合体からなる画像が形成される。
【0037】
メンテナンスユニット60は、図1に示すように、ガイド軸30の一端のメンテナンス領域の下側近傍に、ガイド部材40と近接して設けられており、2つの吸引キャップ31、後述の吐出検知手段6を備えた空吐出回収手段34、ブレード35等を備えて構成される。メンテナンスユニット60は、不図示の移動機構により、メンテナンス動作をするためのヘッド近接位置と離間位置に移動できるように構成されており、ヘッドユニットを適宜所定位置に移動させながら、メンテナンスユニットをヘッド近接位置に移動させ、ヘッドに対してインク吸引、ブレードによるワイピング、空吐出などによるメンテナンス動作を行なうことで、ノズル41における乾燥したインクやごみによる目詰まりや気泡を除去し、被プリント媒体Mに安定した精度で明瞭な画像をプリントできるよう、ヘッドに設計通りのインク滴吐出能力を維持させる。
【0038】
また、インク吸引は、吸引キャップの数(2個)が、ヘッドの数(4個)より少ないので、2つの工程にわけて、インク吸引を行う。例えば、吸引キャップ31は、吸引圧力や吸引時間を変更するために、チューブの押圧ローラの回転速度や回転時間が変更可能に構成されているチューブポンプからなる吸引ポンプが発生する吸引力によりノズル41からインクを吸引する。
【0039】
なお、本発明において、空吐出は、付加的なメンテナンス動作であり、空吐出を単独で行う場合、あるいは、空吐出と後述の吐出検知のみを併せて行う場合は、メンテナンス動作に含まない。
【0040】
なお、本実施形態では、メンテナンスユニット60は、不図示のメンテナンスユニット移動手段により、矢印Zの方向に往復移動されるように構成されており、第1のヘッドユニット10と第2のヘッドユニット20に対して兼用でメンテナンスする構成となっており、部品点数を減らせる点で好ましい。
【0041】
メンテナンス動作の順番の一例としては、以下のような形態が挙げられる。
【0042】
まず、吸引キャップ31をノズル41を有するヘッド下面に圧接し、チューブポンプからなる吸引ポンプが発生する吸引力によりノズル41からインクを吸引する。次に、ブレード35は吸引キャップによる吸引後にノズル41近傍に付着したインク等を拭き取る。
【0043】
上述の作業を完了後、ノズルからインク滴を空吐出してノズル41内を清浄なインクで満たすことにより、吐出状態維持作業が完了する。空吐出回収手段34は、上記空吐出の際、ノズル41から空吐出されるインクを回収する。空吐出回収手段34は、例えば上部が開口された箱状体であり、内側面部に後述する不図示の吐出検知手段6が設置されている。
【0044】
図2に吐出検知手段6の概略図を示す。なお、この図では、ヘッドユニットとして1つのヘッドのみを示しているが、実際は、4色分のヘッドが配列されており、後述の検出光Lの光軸と各ヘッドのノズル部が合致した位置で、順次に吐出検知される。
【0045】
具体的には、吐出検知手段6は、後述の光軸とノズル部が合致した位置でヘッドを静止した状態で、各ノズル41から時間差をもって順次に吐出されたインク滴Pの通過を検知することにより、各ノズル41からインク滴が吐出されているか否か検知する。
【0046】
吐出検知手段6は、発光部61a及び受光部61bを備えて構成される。発光部61a及び受光部61bは、例えば空吐出回収手段34の内側面部に互いに対向して設けられる。発光部61aは例えばLED(Light Emitting Diode)やレーザーダイオードであり、受光部61bに向けて光を発光する。受光部61bは例えばフォトダイオードであり、発光部61aから発光された光を受光し、この受光状態を受光信号として出力する。
【0047】
インク滴が吐出されている場合にはインク滴に光が散乱されて受光部61bに到達しないが、吐出されていないときには光が通過して受光部61bに到達することにより吐出を検出することができる。
【0048】
また、予め、以下の方法により、まず、発光部61aの光軸と各色ヘッドのノズル部の位置合わせを行っておく。ヘッドを、その検出ノズル列を検出光Lの光軸に合わせるべく主走査A方向に沿って移動させる。
【0049】
移動中のヘッドの位置は、図1のエンコーダ(位置検出手段)により逐次検出される。従って、ヘッドが移動することにより発生するエンコーダのパルス数をカウントすることで、ヘッドの位置情報を取得することができる。制御手段5は、このエンコーダによって取得されるヘッドの位置情報により、ヘッドが検出光Lの光軸に近づいたかどうか、を判断している(光軸の位置情報は予め求めておく)。この結果、ヘッドが検出光Lの光軸に近づいた場合、ヘッドの複数のノズル41からインク滴を所定間隔をおいて連続して吐出する。
【0050】
このとき、インク滴の吐出を行うノズルは、ヘッドの複数のノズル41の全て、又は任意の位置にある2以上の複数のノズルであることが好ましい。これは、ヘッドのノズル41の中にはノズル詰まりが生じてインク滴が吐出されない不吐出ノズルが含まれている可能性があるため、この不吐出ノズルが含まれる割合を小さくし、ヘッドから確実にインク滴が吐出されるようにするためである。
【0051】
ノズル41から吐出されたインク滴は、ヘッドが主走査方向に移動しているため、やがて吐出検知手段6の検出範囲を通過する。即ち、ヘッドの主走査移動により、インク滴は発光部61aから出射した検出光L上を通過し、この通過時に受光部61bにおいて検出光Lが一部遮られ、受光される光量信号が一時的に減少し、更にインク滴が吐出検知手段6の検出範囲から外れると、受光部61bにおいて受光される光量信号が元に戻る。
【0052】
制御手段5は、受光部61bの受光素子により受光された光量信号分布から、光軸とノズル部が合致した位置を求める。また、制御手段5は、光軸とノズル部が合致した位置に対応するエンコーダからの位置情報を記憶手段M1に記憶する。以上の動作を、各色ヘッドに対して行っておくことにより、各色ヘッドのノズル部と光軸が合致している位置を記憶手段M1から読み出して、ヘッドをその位置に移動させれば、前述の方法で、ノズルの吐出不良を検知できる。
【0053】
また、メンテナンス領域にテストパターンプリント手段を設けて、テストパターンをプリントするためのテストパターン用紙をB方向に搬送し、ヘッドのノズルから吐出されるインクによりテストパターンをプリントし、このプリント状態を目視またはセンサーにより検知し、吐出を検知するようにしてもよい。この場合、テストパターンプリント手段もメンテナンスユニットに含まれる。
【0054】
本実施の形態においては、メンテナンスユニットは、前述のようにインク吸引やブレードによるワイピング、空吐出といった複数種類のメンテナンス手段を有しており、その回数や作動時間も変更できるようになっている。
【0055】
操作者は、状況に応じて、これらの複数種類のメンテナンス手段のうち何れかまたは複数、複数の場合はその順番を選択し、さらに強さ、回数や作動時間を選択してヘッドユニットをメンテナンスする。
【0056】
ヘッドユニットに対して所定のメンテナンスを実施した後、吐出検知手段6やテストパターンプリント手段により、吐出不良があるか否かを判定する。
【0057】
吐出不良が検知されない場合には、メンテナンス動作を終了し、適宜プリント処理に移行する。
【0058】
また、吐出不良が検知された場合は、別のメンテナンス手段でメンテナンスしたり、強さ、回数や作動時間を増加させて再度メンテナンスを実施した後、吐出検知手段6やテストパターンプリント手段により、吐出不良があるか否かを判定する。
【0059】
このような工程を繰り返した後、最終的に吐出不良が回復しなかった場合、操作者は、手動操作に切り替えて、ヘッドを交換する。この場合においても、もう1組のヘッドユニットでプリントを継続することができるので、プリント動作を中断する必要はない。
【0060】
メンテナンスユニットには、さらにヘッドを交換した場合に、交換したヘッドの位置を検出するヘッド位置検出手段を設けることが好ましい。ヘッド位置として例えば、以下のものが挙げられ、これらのうちの少なくとも1つについてヘッド位置の検出を行うようにする。
【0061】
1.交換したヘッドの主走査方向の位置(後述のライン型プリンタでは、副走査方向の位置をさす)。
【0062】
2.ノズル列方向に複数のヘッドを配列させて1つのヘッドとした場合(例えば、後述する図6の(c))において、複数のヘッドのうちの1つのヘッドを交換した際の、交換したヘッドと他のヘッドとのノズル列方向の相対位置。
【0063】
3.交換したヘッドの傾き(シャトル型プリンタにおいては、主走査方向との直角度であり、後述のライン型プリンタでは、副走査方向との直角度をさす)。
【0064】
ヘッドの位置を検出する手段は、たとえば前述の光学的な吐出検知手段6やテストパターンプリント手段をテストパターンを変えて兼用することが好ましい。
【0065】
また、前述の1に示した位置の検出を行う場合において、光学的な吐出検知手段6を利用する場合は、4色のヘッドからなるヘッドユニットのうち、例えば交換したヘッドと基準となるヘッドについて、あるいは、4色のヘッドすべてについて、前述のヘッドのノズル部と光軸が合致した位置を求める操作を行うことにより、各ヘッドの位置情報、すなわち、ヘッド間の間隔の情報を取得することができる。
【0066】
また、テストパターンプリント手段を用いる場合には、ヘッドユニットをA方向に走査させながら、交換したヘッドと基準となるヘッドについて、あるいは、4色のヘッドすべてについて、各ヘッドのノズル列から静止したテストチャート用紙上にドットを形成する。基準となるヘッドのノズル列以外のヘッドのノズル列からは、インクを吐出するタイミングを数段階にずらし、その相対的な位置関係を変化させてドットを形成する。こうしてプリントされたテストパターンを目視またはセンサーにより解析し、各ヘッドから吐出されたドットが一致する最適なタイミングを求める操作を行うことにより、各ヘッドの位置情報、すなわち、ヘッド間の間隔の情報を取得することができる。
【0067】
ヘッド位置検出の情報をもとに、交換前のヘッド位置に対してずれが発生した場合は、この新たなズレ量を、記憶手段M1に記憶させると共に、上記1に関しては、交換したヘッドを所望の位置に移動させる機械的手段により交換したヘッドを所望の位置に調整するか、ヘッドの間隔に対応した時間ズレの情報からインクの吐出タイミングなどを調整する電気的手段により所望の位置にインクを着弾させればよい。また、上記2,3については、後者の機械的手段により、1画素以下の精度まで調整する必要がある。機械的手段としては、公知のものが使用できる。
【0068】
さらに、被プリント媒体の正確な位置にプリントするためには、被プリント媒体とヘッドの相対位置を調整する必要がある。例えば、産業用のディスプレイ用途などでは被プリント媒体の正確な位置にプリントことが重要となる。被プリント媒体とヘッドの相対位置の調整をプリント領域で行うとプリント動作が中断されるので、メンテナンス領域で行うことが好ましい。すなわち、メンテナンス領域にヘッド位置検出手段を設ければよい。
【0069】
メンテナンス領域で被プリント媒体とヘッドの相対位置調整を行うためには、次のようにすればよい。まず、メンテナンスユニットに基準位置を設ける。メンテナンスユニットの基準位置とは、例えば、前述の吐出検知手段6における光軸位置やテストパターンプリント手段においてテストパターンを読み取るためのセンサーの位置である。
【0070】
また、プリント領域にも基準位置を設ける。プリント領域の基準位置とは、例えば、被プリント媒体の位置を決める部材や被プリント媒体の位置を検出するセンサーからの位置である。また、これらのプリント領域の基準位置と被プリント媒体の位置の相対位置関係(主走査方向における距離に関する情報を意味する)も予め求めておく。
【0071】
予め、以下に示すイ〜ニの作業により、メンテナンスユニットの基準位置とプリント領域の基準位置の相対位置関係を測定しておく。
【0072】
イ.複数のヘッドユニットから測定に使用する1つのヘッドユニットを選択し、選択されたヘッドユニットからノズルを選択する。
【0073】
ロ.選択したヘッドユニットを、吐出検知手段を通過するようにメンテナンス領域を移動させながら、選択したノズルから所定間隔でインク滴を吐出させ、このインク滴を吐出検知手段で検知させることにより、選択したノズルの位置と光軸が合致する位置を求める。これにより、選択したノズルの位置(即ち、ヘッドの位置)とメンテナンスユニットの基準位置との相対位置関係を求めることができる。また、同様に、テストパターン手段を用いる場合は、選択したノズルから吐出されたインク滴によりプリントされたテストパターンをセンサーにより読み取ることにより、選択したノズルの位置(即ち、ヘッドの位置)とメンテナンスユニットの基準位置との相対関係が求めることができる。
【0074】
ハ.選択したヘッドユニットをプリント領域に移動させ、選択したノズルにより被プリント媒体にテストパターンをプリントし、選択したノズルの位置とプリント領域の基準位置の相対位置関係を求める。
【0075】
ニ.選択したノズルとメンテナンスユニットの基準位置の相対位置関係と、選択したノズルとプリント領域の基準位置の相対位置関係から、メンテナンスユニットの基準位置とプリント領域の基準位置との相対位置関係を求める。
【0076】
ヘッドを交換した場合は、ヘッドを交換した場合は、前述のイの方法により、交換したヘッドとメンテナンスユニットの基準位置との相対位置関係を測定し、この測定値が、予め設定された所定の関係になるようにヘッド位置を機械的に調整するか、または、同様に前述のイの作業により、交換したヘッドとメンテナンスユニットの基準位置との相対位置関係を測定し、この情報と、前述のイ〜ニの作業により、予め測定されたメンテナンスユニットの基準位置とプリント領域の基準位置の相対位置関係とから求めた交換したヘッドと被プリント媒体の相対位置関係によって、ヘッドから吐出されるインク滴の吐出タイミングを調整することで、被プリント媒体とヘッドの相対位置調整を行うことができる。
【0077】
次に、図1のインクジェットプリンタ1におけるインク供給手段81のブロック図を図3に示す。
【0078】
2組のヘッドユニット10,20は、2組のヘッドユニットの背圧を決定する1組の中間タンク301からインク供給をうけるように構成されている。
【0079】
ヘッドユニット10,20には、それぞれ、プリントに要する色の数(ここでは、Y,M,C,K)に応じたヘッドが複数搭載され、このヘッドユニット10,20には中間タンク301(Y,M,C,Kの4色分の1組のインクタンクで構成)に収容されたインクが、インク供給チューブ306、弁304,305を介して供給されるようになっている。さらに、中間タンクの上流にインクカートリッジ302が弁303、インク供給チューブ306を介して接続されている。
【0080】
このように、インクカートリッジはすべてのヘッドユニットに共通に設けることが好ましい。インクカートリッジ交換が容易になる。ヘッドユニットごとにインクカートリッジを持つと、インクのばらつきによりヘッドユニット間でプリントの発色が異なるおそれがある。
【0081】
また、ヘッドユニット10,20の背圧は中間タンク301で決定することが好ましい。インクカートリッジより下方に、弁303を介して可撓性の袋、または大気連通部を有する容器からなる中間タンクを設ける。弁を閉じれば中間タンク内のインクは大気圧となる。中間タンクをヘッドより所定の高さだけ下方に置くことで、ヘッドにおけるインクは大気圧に対して所定の水頭値だけ負圧になり、安定な吐出が実現できる。中間タンクに残量検知または空検知を設け、所定の量以下になったときに弁を開いてインクカートリッジから中間タンクにインクを補充する。弁を開いてから所定時間以上経過しても中間タンクにインクが補充でされないときはインクカートリッジが空であると検出できる。インクカートリッジの位置で直接的に背圧を決定するのと比較して、インク残量の変動による背圧変動の影響がない、インクカートリッジの空検知ができる、などのメリットがある。また、インクカートリッジを交換する際には、中間タンクに残っているインクでプリント動作を中断することなく、インクカートリッジの交換とプリント動作を並行して行うことが出来る。
【0082】
このように、中間タンクをすべてのヘッドユニットに共通に設けることが好ましい。ヘッドユニットごとに中間タンクを持つと、中間タンクの位置の差によりヘッドユニット間でヘッドの吐出特性が変化し、プリントの発色が異なるおそれがある。
【0083】
インクカートリッジ、または中間タンクを共通にした場合、それぞれのヘッドユニットへのインク流路の分岐部分とヘッドの間に弁304、305を設け、ヘッド交換時には弁を閉じる。閉じないとヘッド部分が負圧なので、空気がプリント中のヘッドユニットのインク流路、中間タンク、インクカートリッジなどに入り、プリントを継続することができなくなる恐れがある。
【0084】
次に、図4に示すインクジェットプリンタ1の回路ブロック図を用いて、インクジェットプリンタ1の機能的構成を説明する。図1で説明した構成と同一のものには同じ符号を付けて、その説明を省略する。
【0085】
同図に示すように、インクジェットプリンタ1は、インクジェットプリンタ1全体の動作等を制御する制御手段5、その入力側に、プリントする画像データを記憶する画像データ記憶手段M2、インクジェットプリンタ1に対する操作者からの操作の入力指示部(スイッチ)とエラーメッセージ、プリントやメンテナンスについての設定条件等の各種メッセージを操作者に通知するための表示部を備えた操作入力手段91を備え、その出力側に、上記した第1のヘッドユニット10、第2のヘッドユニット20、ヘッド位置検出手段も兼ねる吐出検知手段6を有するメンテナンスユニット60や、ヘッドユニット10,20を主走査方向に往復走査させるためのキャリッジ駆動機構90(各ヘッドユニットに対して個別に設けられている)やヘッドユニット10,20の吐出手段を駆動してインクを吐出させるヘッド駆動回路42(ヘッドユニットを構成する各ヘッドに対して個別に設けられている)や被プリント媒体を副走査方向に搬送する搬送手段50などを有するプリントユニット70、中間タンクやインクカートリッジ等から構成されるインク供給手段81などから構成される。
【0086】
なお、本実施形態においては、操作入力手段91は、ヘッドユニット10,20、プリントユニット70に対してプリント動作を指示するための操作者からのプリント動作指示信号入力手段92やヘッドユニット10,20、メンテナンスユニット60に対してメンテナンス動作を指示するための操作者からのメンテナンス動作指示信号入力手段93を備えている。
【0087】
また、本実施形態においては、制御手段5は、プリント動作指示信号入力手段92から入力された信号を検知するプリント動作指示信号検知手段94、及び検知された信号に基づいて所定のヘッドユニットにプリントユニット70による所定のプリント動作を行わせるプリント制御手段96、メンテナンス動作指示信号入力手段93から入力された信号を検知するメンテナンス動作指示信号検知手段95、及び検知された信号に基づいて所定のヘッドユニットにメンテナンスユニット60による所定のメンテナンス動作を行わせるメンテナンス制御手段97としても機能する。また、メンテナンス制御手段97は、メンテナンスの際、必要に応じて、メンテナンスすべきヘッドユニットがメンテナンス領域へ移動するようにそのヘットユニットに対応したキャリッジ駆動機構に対してその動作を制御するための制御信号を出力し、また、不吐出検知やヘッド位置検出を行う際は、ヘッドにインク滴の吐出を行わせるようヘッドに対応したヘッド駆動回路に対してその動作を制御するための制御信号を出力する。
【0088】
また、本実施形態では、2組のヘッドユニットに対して共通に使用する1つのメンテナンスユニットを設けているので、メンテナンス制御手段97は、メンテナンスユニット移動手段により、指示信号により指示されたメンテナンスすべきヘッドユニットの位置にメンテナンスユニットを移動させるよう制御する。
【0089】
制御手段5はCPU(中央演算回路)、記憶手段M1、図示しない演算ユニット、入出力インターフェイスなどから構成されるコンピューターシステムであり、前述の各構成の制御は、予め不揮発の記憶手段M1に記憶させてあるプログラムを実行させることによりなされる。
【0090】
さらに、本実施形態においては、記憶手段M1には、予め操作入力手段91から入力されて設定された、2組のヘッドユニットの各々のメンテナンス動作条件(メンテナンス動作の種類や順番、強さ、継続時間、回数など)や、プリント動作条件、プリント中に、2組のヘッドユニットについて交互にメンテナンスを行う周期、前述のヘッド位置検出に関する情報などが記憶されており、プリント開始時に、操作者からの指示入力がない場合(自動モード)は、制御手段5は、この情報を読み込んで、プリント動作やメンテナンス動作を制御するとともに、プリント動作、メンテナンス動作の各設定条件を操作入力手段91の各表示部に表示させる。
【0091】
また、その後、操作者により指示があった場合(手動モード)は、指示に基づいて、設定を変更して制御すると共に、表示を切り替える。また、操作入力手段91には、操作者が、制御手段5に「手動モード終了」の指示をする「手動モード終了」スイッチが設けられており、このスイッチが押されると、制御手段5は、前記予め定められた条件を読み込んで、プリント動作やメンテナンス動作を制御する(自動モード)とともに、プリント動作、メンテナンス動作の各設定条件を操作入力手段91の各表示部に表示させるように制御する。
【0092】
さらに、これらの設定条件は、メンテナンス動作指示信号入力手段93やプリント動作指示信号入力手段92から入力された操作者からの入力信号により、随時、書き換えることが可能である。
【0093】
また、本実施形態においては、メンテナンス動作指示信号入力手段93は、それぞれ、2組のヘッドユニットに対して独立にメンテナンス手段の選択(インク吸引、ブレードワイピングの少なくともいずれか1つ。複数可。さらに空吐出や吐出検知などを加えても良い)、各動作の継続時間、強弱、回数、複数選択した場合はその順番、不吐出検知の作動の有無などのメンテナンス動作条件を操作者が指示できるように構成されている。また、吐出検知手段の検知結果(不吐出ノズルの有無や数)を表示部に表示できるようになっており、操作者は、この検知結果に基づいて再度メンテナンスの指示を出すこともできる。
【0094】
また、本実施形態においては、プリント動作指示信号入力手段92は、それぞれ、2組のヘッドユニットに対して独立に、プリント動作の指示、停止や被プリント媒体の搬送条件(例えば搬送速度)、キャリッジの往復移動条件(例えば移動速度)、ヘッドの吐出手段の駆動条件(例えば駆動電圧)、インクの種類の選択(例えば色の選択)、被プリント媒体の選択(例えば紙)などのプリント動作条件を操作者が指示できるように構成されている。
【0095】
このような構成により、各ヘッドユニットがどのような状態にあるかがわかりやすく、どのヘッドユニットに対してどのような指示を与えているかが明確になる。
【0096】
本実施形態では、メンテナンス動作指示信号入力手段93とプリント動作指示信号入力手段92に対応するスイッチと表示部等を別々に設けている。このことにより、操作者にわかりやすい構成をとることができるとともに、作業を効率よく行うことができる。また、プリント制御やメンテナンス制御の各々に特有なスイッチや表示部を各々の入力手段に設けることができる。また、1つのスイッチと表示部等をメンテナンス動作指示信号入力手段93とプリント動作指示信号入力手段92とで共通にして、切り替えて使用する様にしてもよい。
【0097】
以下に、インクジェットプリンタ1の動作の一例について説明する。
【0098】
開始時には、プリンタ電源がONされ、プリンタは待機状態にある。
【0099】
待機状態において、制御手段5は、記憶手段M1より、予め設定されたプリント動作条件、メンテナンス動作条件を読み出して、表示部に表示する(ここで、前回のプリント終了時に、特にトラブル等がなく正常な状態であった場合は、その終了時と同じ条件が記憶手段M1に記憶されており、この条件を読み出して表示する。すなわち、プリントに使用するヘッドユニットは、終了時と同じヘッドユニットとなる。ここで、表示部に各ヘッドユニットについて装着からの使用時間を表示させ、操作者が、プリントに使用するヘッドユニットとして使用時間の短いヘッドユニットあるいは、使用時間の長いヘッドユニットを選択するようにしてもよい)。
【0100】
プリントすべき画像データが入力され、画像データ記憶手段M2に記憶される。
【0101】
制御手段5は、操作者からのプリント動作指示信号入力、メンテナンス動作指示信号入力があるかどうかを判断する。操作者からの指示信号入力があるなら手動モードとなり、操作者からの指示信号入力がないなら自動モードとなる。例えば、操作入力手段91の「手動モード開始」のスイッチが押されると手動モードになる。
【0102】
自動モードでは、制御手段5は、前述の予め設定されたプリント動作条件で、M2に記憶されている画像データに基づいてのプリント動作を開始させる。また、自動モードでは、プリントするヘッドユニットを切り替えて、定期的なメンテナンス動作(起動時、一定時間毎、一定プリント量毎、プリントジョブ(操作者にとってのプリント作業の単位)の切り替え毎)が行われる。完全な自動でも良く、操作者の確認を求めてからでも良い。
【0103】
メンテナンス動作後は、吐出検知を行い、吐出不良がない場合には、そのヘッドユニットは、使用可能ユニットとして待機する。メンテナンス動作後に吐出不良が検知された場合には、使用不可能ユニットとして操作者に警告する(メンテナンス動作中、あるいは、ヘッド交換中のユニットも使用不可能ユニットとして、表示する)。この際、操作者は、プリント動作指示信号入力やメンテナンス動作指示信号入力を行い、手動モードに切り替えて、もう一方のヘッドユニットがプリント中ならばプリントを継続させてもよい。また、新たにプリント作業を開始することも可能である。但し、手動モードなので、定期的なメンテナンス動作は行われない。空吐出はプリント部(プリント領域)に空吐出回収手段を設けるようにしても良い。プリント結果に吐出不良が発見された場合、プリントを停止し、操作者に警告する。操作者の判断で継続も可能である。
【0104】
また、自動モードでは、プリント中に、定期的に、吐出検知を行うことができる。吐出検知の方法は、図2に示すような吐出検知手段をプリント領域に設けても良いが、プリントを中断しなくてはならないので、プリントされた被プリント媒体をカメラで撮像し、自動認識したプリント結果をプリントデータと比較することで吐出不良を検出する方法が好ましい。
【0105】
吐出不良が検知された場合、プリントするヘッドユニットを交替させて、吐出不良が発生したヘッドユニットは、メンテナンス動作を行い、もう一方のヘッドユニットでプリント動作を行う。
【0106】
または、定期的にヘッドユニットを交替させてメンテナンス動作を行っても良い。定期的とは、プリンタの起動時、一定時間毎、一定プリント量毎、プリントジョブ(操作者にとってのプリント作業の単位)の切り替え毎などを意味する。
【0107】
メンテナンス動作後は、メンテナンスユニットで吐出検知を行うことが好ましく、吐出不良がない場合には、そのヘッドユニットは、使用可能ユニットとして待機する。一方、メンテナンス動作後に吐出不良が検知された場合、操作者に警告する。操作者は、操作入力手段から「手動モード開始」の指示を行うことにより、手動モードに切り替えて再度のメンテナンス動作を行う。手動モードでのメンテナンス動作は、操作者がヘッドの状態に応じて、複数のメンテナンス手段の中から選択することができる。もう一方のヘッドユニットは、プリント動作を継続する。
【0108】
また、自動モードでのプリント中に、操作者が目視で吐出不良を発見した場合、操作者は手動モードに切り替え、プリントするヘッドユニットを交替させて、吐出不良が発生したヘッドユニットはメンテナンス動作を行い、もう一方のヘッドユニットでプリント動作を行う。吐出不良が回復すれば、操作者は、操作入力手段から「手動モード終了」の指示を行うことにより自動モードに切り替える。
【0109】
プリント中に、吐出不良が検知または発見されたためにプリントするヘッドユニットを交替させる必要が生じたときに、メンテナンスユニット側のヘッドユニットがメンテナンス中であったり、ヘッド交換中であったり、メンテナンス後に吐出不良が検知されたヘッドユニットであった場合など正常なプリント動作をできない状態の場合には、プリント動作を停止し、操作者に警告する、操作者は、プリント動作を継続するか、あるいは、メンテナンスユニット側のヘッドユニットが正常な状態でプリント動作をできる状態になった時点で、例えば自動モードでプリントを再開させるかを選択する。
【0110】
自動モードでのプリント中に、定期的なメンテナンス動作のために、ヘッドユニットを交替させる必要があるときに、メンテナンスユニット側のヘッドユニットが正常なプリントをできない状態の場合は、操作者に警告し、操作者は手動モードでプリントを停止するか、あるいは、そのままプリントを継続し、メンテナンスユニット側のヘッドユニットが正常なプリントをできる状態になるまで正常なプリントが継続できればその時点でヘッドユニットを交替させてメンテナンス動作を行い、自動モードを継続する。
【0111】
手動モードでは、ヘッド交換を行うことができる。ヘッド交換は、定期的(例えば、一定時間毎、一定プリント量毎など)やメンテナンス動作を行っても吐出不良が回復しないときに行う。ヘッド交換作業中ももう一方のヘッドユニットでプリント動作を継続できる。ヘッド交換を行ったときは、前述のヘッドの位置調整と吐出検知を行うことが好ましい。
【0112】
また、2組のヘッドユニットのいずれもが吐出不良があり、正常なプリントをできない状態の場合、手動モードで状態の良い方のヘッドユニットでプリントを行うと同時に、状態の悪い方のヘッドユニットの吐出不良が回復してからヘッドユニットを交替させて、もう一方のヘッドユニットのメンテナンス動作を行うことができる。また、この時点で自動モードに切り替えることも可能である。
【0113】
以上の実施形態では、ヘッドユニットを主走査方向に移動させるシャトル記録方式の場合を例に挙げて説明したが、本発明は、被プリント媒体の全幅をカバーする長さのラインヘッドユニットを用いて副走査のみで記録するライン記録方式の場合にも、同様に適用することができる。
【0114】
以下に、シャトル型ヘッドユニットのプリント速度を高速にして改良したライン型ヘッドユニットの例を示す。
【0115】
図5は本発明をラインヘッドユニットを有するインクジェットプリンタに適用した例の主要部の概略を示す斜視図である。図中の参照番号は、前記シャトル型のヘッドユニットの場合の手段あるいは部材と同一のものについては同一の番号を付してある。
【0116】
複数のノズル41をA方向(主走査方向)に配列するようにして、4色のラインヘッドをB方向に沿って4個配列した1組のラインヘッドユニットは、ラインヘッドユニットを静止させた状態で、被プリント媒体MをB方向(副走査方向)に搬送させて、プリント動作を行う。また、2組のラインヘッドユニット10と20は、不図示の駆動機構により、矢印R方向に回転できるようになっており、プリント領域とメンテナンスユニット60によるメンテナンス領域を移動できる。メンテナンスユニット60は、基本的には図1と同様な構成であり、B方向に、2つの吸引キャップ31、空吐出回収手段34、ブレード35、吐出検知手段6が設置されている。なお、メンテナンスユニット60は、不図示の駆動手段により、矢印H方向に往復移動可能に構成されており、静止した状態の各ヘッドに対して、所望のメンテナンス動作を行う。
【0117】
吐出検知手段6におけるノズル部と光軸の位置決めは、発光部61a及び受光部61bをB方向に沿って移動可能に設け、停止状態にあるラインヘッドに対して発光部61a及び受光部61bを移動させ、その位置情報をエンコーダによって取得することによって合致位置検出動作を行うようにしている。
【0118】
以上の点を除けば、プリンタの機械的構成、機能的構成、制御フロー等は、シャトル型のプリンタと同様である。
【0119】
以上の実施形態では、プリント動作指示信号入力手段92及びメンテナンス動作指示信号入力手段93をプリンタ内に設けた場合を例に挙げて説明したが、本発明は、プリント動作指示信号入力手段92及びメンテナンス動作指示信号入力手段93として、プリンタとは別の例えばホストコンピューターなどの入力手段を用いる場合にも、同様に適用することができる。この場合、画像データをプリント動作指示信号と一緒にホストコンピューターから入力するようにしてもよい。
【0120】
また、以上の実施形態では、Y,M,C,Kの4色分のヘッドで構成されたヘッドユニットを用いたカラープリンタの例を示したが、図6に示す各種のヘッドユニットの形態に対しても本発明は適用できる。
【0121】
図6の(a)に示すような1個の単色のヘッド(例えばブラック)で構成されたヘッドユニットを用いた単色プリンタの他、図6の(b)に示すような異なる色(例えばY,M,C,K)を記録する複数のヘッドを単一のヘッドで構成したヘッドユニットを用いるカラープリンタ、あるいは同一色彩で異なる色材濃度でプリントする複数のヘッドで構成されたヘッドユニットを用いる階調プリンタ、R(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)などの特色インクをプリントする複数のヘッドで構成されたヘッドユニットを用いるプリンタ、図6の(c)に示すように複数のヘッドをノズル配列方向につないで1つのヘッドとして構成されたヘッドユニットを用いるプリンタ、さらには、これらのヘッドユニットを組み合わせたプリンタの場合にも、同様に適用することができる。特に図6の(c)の形態は、前述のラインヘッドの場合、特に有効である。
【0122】
以上、上記実施形態では、2組のヘッドユニットの例を示したが、少なくとも2組、すなわち、3組以上のヘッドユニットを有する場合においても本発明は適用できる。この場合は、3組以上のヘッドユニットのうち、少なくとも2組のヘッドユニットに本発明の構成を適用することにより効果が得られる。
【0123】
また、上記実施形態では、各組のヘッドユニットが同一の構成(YMCKの4色)の例を示したが、2つの組間で共通に、すくなくとも1つの同一色のインクを吐出するヘッドを有していれば良く、例えば第1組がYMCKの4色で構成され、第2組がKの1色でもよい。この場合、Kのヘッドについて、本発明の効果が得られる。
【0124】
また、上記実施形態では、吐出手段としてせん断モード型の圧電素子を用いた例を示したが、単板型の圧電素子や縦振動タイプの積層型圧電素子等の圧電素子、静電力や磁力を利用した電気機械変換素子、沸騰現象を利用して圧力を付与させるための電気熱変換素子等、他の吐出手段も同様に適用することができる。
【0125】
また、上記実施形態では、メンテナンスユニットとして、ブレード、吸引キャップ、空吐出回収手段等を組み合わせた例を示したが、ヘッドのノズル面に水等の洗浄液を噴射するための噴射ノズルを備えたヘッド洗浄部や、洗浄液を吸収したスポンジローラ等で構成し、当該スポンジローラとノズル面とを触れ合わせることによりノズル面を洗浄するヘッド洗浄部などを含めたメンテナンスユニットにも同様に適用することができる。
【0126】
また、上記実施形態では、被プリント媒体としてロール上の紙を用いた例を示したが、シート状の紙、フィルム、布など、板状のガラス、木、金属、プラスチックなど、成型された金属、プラスチックなども同様に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】シャトル型インクジェットプリンタ1の主要部を示す斜視図である。
【図2】インクジェットプリンタ1における吐出検知手段によるインク滴検出の様子を示す概略図である。
【図3】インクジェットプリンタ1におけるインク供給手段の概略を示すブロック図である。
【図4】インクジェットプリンタ1全体の回路構成を示す回路ブロック図である。
【図5】ライン型インクジェットプリンタの主要部を示す斜視図である。
【図6】各種ヘッドユニットの例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0128】
1 シャトル型インクジェットプリンタ
6 吐出検知手段
10 第1のヘッドユニット
10Y,10M,10C,10K ヘッド
20 第2のヘッドユニット
20Y,20M,20C,20K ヘッド
30 ガイド軸
31 吸引キャップ
34 空吐出回収手段
35 ブレード
41 ノズル
60 メンテナンスユニット
100,200 キャリッジ
301 中間タンク
302 インクカートリッジ
303,304,305 弁
A 主走査方向
B 副走査方向
M 被プリント媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2組のヘッドユニットと、
ヘッドユニットに対してメンテナンス動作を行うためのメンテナンスユニットと、
ヘッドユニットと被プリント媒体を相対移動させて、ヘッドユニットから前記被プリント媒体上にインクを吐出させてプリント動作を行わせるためのプリントユニットと、
操作者からのプリント動作指示信号を検知するプリント動作指示信号検知手段と、
前記プリント動作指示信号検知手段で検知された前記プリント動作指示信号に基づいて、所定のヘッドユニットに前記プリントユニットによる所定のプリント動作を行わせるプリント制御手段と、
操作者からのメンテナンス動作指示信号を検知するメンテナンス動作指示信号検知手段と、
前記プリント動作指示信号検知手段で検知された前記プリント動作指示信号に基づいて、所定のヘッドユニットに前記メンテナンスユニットによる所定のメンテナンス動作を行わせるメンテナンス制御手段と、
を有することを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項2】
前記プリント動作指示信号を入力するためのプリント動作指示信号入力手段を有することを特徴とする請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項3】
前記メンテナンス動作指示信号を入力するためのメンテナンス動作指示信号入力手段を有することを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項4】
前記メンテナンスユニットは、ヘッド位置検出手段を有することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項5】
前記少なくとも2組のヘッドユニットは、前記少なくとも2組のヘッドユニットの背圧を決定する1組のインクタンクからインク供給をうけるように構成されていることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項6】
前記少なくとも2組のヘッドユニットにおける各ヘッドは、ラインヘッドであることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項7】
前記少なくとも2組のヘッドユニットにおける各ヘッドユニットを搭載するためのヘッドユニット組数分のヘッドユニット搭載手段を有し、
前記プリントユニットは、各ヘッドユニット搭載手段が独立に往復移動することができるように構成されていることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載のインクジェットプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−341543(P2006−341543A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−170609(P2005−170609)
【出願日】平成17年6月10日(2005.6.10)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】