インクジェットヘッド駆動方法及びインクジェット記録装置
【課題】インクの不吐出を効果的に防止し、ヘッド寿命への悪影響を低減することのできるインクジェットヘッド駆動方法及びインクジェット記録装置を提供する。
【解決手段】インクを収容する圧力室と、この圧力室に連通し、この圧力室のインクを吐出するノズルと、圧力室の容積を拡張、収縮変化させるアクチュエータとを有するインクジェットヘッドと、ノズルからインク滴を吐出させる駆動信号をアクチュエータに出力する駆動信号発生部とを備えたインクジェット記録装置のインクジェットヘッド駆動方法であって、ノズルからインク吐出を行わない不吐出時に、圧力室を拡張させてから元に戻す微小圧力駆動信号をアクチュエータに出力し、この微小圧力駆動信号の駆動電圧は、インク滴を吐出させる駆動信号の駆動電圧以下としたインクジェットヘッド駆動方法である。
【解決手段】インクを収容する圧力室と、この圧力室に連通し、この圧力室のインクを吐出するノズルと、圧力室の容積を拡張、収縮変化させるアクチュエータとを有するインクジェットヘッドと、ノズルからインク滴を吐出させる駆動信号をアクチュエータに出力する駆動信号発生部とを備えたインクジェット記録装置のインクジェットヘッド駆動方法であって、ノズルからインク吐出を行わない不吐出時に、圧力室を拡張させてから元に戻す微小圧力駆動信号をアクチュエータに出力し、この微小圧力駆動信号の駆動電圧は、インク滴を吐出させる駆動信号の駆動電圧以下としたインクジェットヘッド駆動方法である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットヘッド駆動方法及びインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェット画像形成技術の急速な進歩に伴い、写真画像に匹敵する高画質の画像が出力できるようになってきた。インクジェット画像形成技術は非接触で、適正量のインクを所定の位置に正確に滴下することを特徴としており、様々なアプリケーションヘの応用が進んでいる。このインクジェット画像形成技術には、高画質の画像を長期にわたり提供できることが求められる。ところで、インクを吐出した後に、一定期間放置すると、ノズル部のインクが揮発し増粘することで目詰まりが発生し、インクが吐出しないことが確認されている。
【0003】
このインク目詰まりに対して、インクからの改良アプローチがなされており、特に、顔料分散物を用いるインクにおいては、顔料粒子の分散安定性を高める試みがなされている。一方、インク吐出性能を改良する試みが、インクジェットヘッド側からも行われている。例えば、インクジェットヘッドに設けられているノズルのオリフィス部に撥水処理を施してオリフィス内部への付着を防ぐ方法、あるいはノズル面に撥水処理を施す方法が提案されている。更には、インク滴が吐出しない程度にメニスカス(インクの液面位置)を振動させて吐出安定性を実現させる方法も提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−203020号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インクジェット画像形成技術で用いられる記録媒体、インクは、当該技術が適用される様々なアプリケーションに応じて多種多様である。インクではオイル系、UV系、水性系、ソルベント系と幅広く使用されている。例えば、サイン・ディスプレイ関連では、ソルベント系インクが用いられることが多い。ソルベント系は速乾性が良く、インクの揮発・増粘が早い時間で発生するものが多い。中には10sくらいで不吐出となるインクもある。
このような速乾性の良いインクでは、ヘッド側の撥水処理のみによって改善することが難しく、そのため特許文献1に開示されているように、微小圧力駆動信号をアクチュエータに出力することにより吐出安定性を実現させようとする動きがある。
【0005】
しかし、微小圧力信号を付加しても適切な条件で付加されない場合は、不吐出を有効に防止することは困難である。また微小圧力駆動信号をアクチュエータに出力することはヘッドの劣化・消耗を助長することになり、ヘッド寿命に悪い影響を与える。従って、効果的に不吐出を防止し、ヘッド寿命への悪影響を低減することのできる方式が求められている。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、インクの不吐出を効果的に防止し、ヘッド寿命への悪影響を低減することのできるインクジェットヘッド駆動方法及びインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明は、インクを収容する圧力室と、この圧力室に連通し、この圧力室のインクを吐出するノズルと、前記圧力室の容積を拡張、収縮変化させるアクチュエータとを有するインクジェットヘッドと、前記ノズルからインク滴を吐出させる駆動信号を前記アクチュエータに出力する駆動信号発生部とを備えたインクジェット記録装置のインクジェットヘッド駆動方法であって、前記ノズルからインク吐出を行わない不吐出時に、前記圧力室を拡張させてから元に戻す微小圧力駆動信号を前記アクチュエータに出力し、この微小圧力駆動信号の駆動電圧は、インク滴を吐出させる駆動信号の駆動電圧以下としたインクジェットヘッド駆動方法である。
【0008】
また本発明は、インクを収容する圧力室と、この圧力室に連通し、この圧力室のインクを吐出するノズルと、前記圧力室の容積を拡張、収縮変化させるアクチュエータとを有するインクジェットヘッドと、前記ノズルからインク滴を吐出させる駆動信号を前記アクチュエータに出力する駆動信号発生部とを備えたインクジェット記録装置であって、前記ノズルからインク吐出を行わない不吐出時に、前記圧力室を拡張させてから元に戻す微小圧力駆動信号を前記アクチュエータに出力する微小駆動信号発生部を有し、前記微小圧力駆動信号の駆動電圧は、インク滴を吐出させる駆動信号の駆動電圧以下としたインクジェット記録装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、インクの不吐出を効果的に防止し、ヘッド寿命への悪影響を低減することのできるインクジェットヘッド駆動方法及びインクジェット記録装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
〔第1の実施の形態〕
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。
先ず、図1及び図2を用いてインクジェットヘッド100の構成について説明する。図1は、インクジェットヘッド100の断面を示す図であり、図2は図1におけるII−II断面の一部を示す図である。
【0011】
図1及び図2に示すように、アクチュエータとして圧電部材を使用したインクジェットヘッド100には、2枚の長方形の圧電部材1、2が設けられている。この2枚の長方形の圧電部材1、2は分極方向が互いに板厚方向で外側に向いて反対になるように張合わされ、圧電部材よりも誘電率の低い基板3の上に固着されている。この圧電部材1、2を例えばダイヤモンドカッタを使用して一定の間隔で平行に同じ幅で、同じ深さ、同じ長さの複数の長溝を切削加工して圧力室4を形成している。
【0012】
圧力室4の側面と底面に無電解ニッケルメッキにより電極5が形成され、さらに圧力室4の後端から前記基板3の後部上面に同じく無電解ニッケルメッキにより電極6が形成されている。そして、基板3の後端上面には回路基板7が固着されている。
前記圧電部材1、2の圧力室4の上には、共通圧力室8を構成する枠状部材9が接着固定され、その枠状部材9の上は共通圧力室8に連通するインク供給口10を設けた天板11により閉塞されている。また、前記各圧電部材1、2の先端に複数のインク吐出口12を設けたオリイフイスプレート13が接着剤で接着固定されている。なお、オリフィスプレート13に替えてノズルを用いても良い。
【0013】
図3は、インクジェットヘッド100を駆動する駆動制御部14の概略の構成を示すブロック図である。
駆動制御部14は、プリンタコントローラ15、画像メモリ16、印刷データ転送ブロック17、駆動波形制御回路18、ヘッド駆動回路19を備えている。
【0014】
プリンタコントローラ15は、印刷データを画像メモリ16に記憶し、印刷データ転送ブロック17を制御して画像メモリ16に記憶された印刷データをヘッド駆動回路19に転送する。また、駆動波形制御回路18はヘッド駆動回路19を駆動させる駆動波形を設定するための駆動波形設定部18a、ヘッド駆動回路19を駆動させる駆動電圧を設定する駆動電圧設定部18bを有している。
そして、ヘッド駆動回路19は、プリンタコントローラ15及び駆動波形制御回路18に制御されインクジェットヘッド100を駆動させる。なお、駆動波形制御回路18及びヘッド駆動回路19は上述した回路基板7に設けられている。
【0015】
このような構成により、ヘッド駆動回路19から駆動信号を発生して圧電部材1,2に印加すると、この圧電部材1,2が動作し、圧力室4の容積を変化させる。これにより、圧力室4内に圧力波が発生し、インク吐出口12からインク滴を吐出するようになっている。
【0016】
次に、不吐出時にインクがインク吐出口12から吐出しない程度の微小振動を圧力室4に与えるプリカーサについて説明する。
図4は、インクを吐出させる駆動パルス及び微小圧力駆動信号としてのプリカーサの駆動パルスを発生させる回路を示す図である。この回路は、駆動波形制御回路18に設けられている。
PチャンネルMOSFETQ1とnチャンネルMOSFETQ2との直列接続体及びPチャンネルMOSFETQ3とnチャンネルMOSFETQ4との直列接続体が電源電圧Vccと接地間に接続されている。
【0017】
各MOSFETQ1〜Q4のゲート電位はそれぞれ独立に制御される。そして、PチャンネルMOSFETQ1とnチャンネルMOSFETQ2との接続点から出力1が取り出され、PチャンネルMOSFETQ3とnチャンネルMOSFETQ4との接続点から出力2が取り出される。出力1は圧電部材の一方の電極端子に接続され、出力2は圧電部材の他方の電極端子に接続されている。
【0018】
図5は、インクを吐出させるための駆動パルスの波形を示す図である。
まず、MOSFETQ1とMOSFETQ4をTa時間だけオン動作させ、MOSFETQ2とMOSFETQ3をTa時間だけオフ動作させる。これにより、図5に示す拡張パルスp1を発生させている。続いて、MOSFETQ1とMOSFETQ4を2Ta時間だけオフ動作させ、MOSFETQ2とMOSFETQ3を2Ta時間だけオン動作させる。これにより図5に示す収縮パルスp2を発生させることができる。インクを吐出させる駆動パルスはこのような拡張パルスp1と収縮パルスp2より構成される。
【0019】
次に、図6を参照して、図5のインクを吐出させる駆動パルスとその駆動パルスに対応して圧力室内に発生する圧力振動波形との関係について説明する。
【0020】
まず、圧電部材の電極間にTa時間だけ電圧−Vccが印加されると、圧電部材が圧力室4の容積を広げるように変形するので圧力室4には負の圧力が発生する。ここで、Taは圧力室4内に発生した圧力波が圧力室4の一端から他端までに伝達するのに要する時間(圧力伝播時間)である。Taは圧力室4のサイズによって異なるが、数μ秒のオーダである。
【0021】
発生した負の圧力は圧力伝播時間Ta経過した時点では図6に示すように正の圧力に反転している。そこで圧力伝播時間Taが経過した後に、2Ta時間だけ電圧+Vccを圧力部材の電極間に印加する。電圧部材の電極間に電圧+Vccが印加されると、圧電部材が圧力室4の容積を狭めるように変形するため、圧力室4内には正の圧力が発生する。この圧力により発生する圧力波と最初に発生した圧力波とは位相が同相となるため、圧力波が重畳して振幅が急激に増大される。この時、ノズルからインクが吐出する。
【0022】
図7は、微小振動を与えるためのプリカーサの駆動パルスの波形を示す図である。
図4に示す回路において、MOSFETQ1とMOSFETQ4を2Ta時間だけオフ動作させる。これにより、図7に示すように電圧−Vccの拡張パルスp1が発生する。この拡張パルスp1がプリカーサの駆動パルスを構成する。
【0023】
次に、図8を参照して、プリカーサの駆動パルスqと圧力室4内に発生する圧力振動波形rとの関係について説明する。
まず、圧電部材の電極間に電圧−Vccの電圧が印加されると、圧電部材が圧力室4の容積を広げるように変形する。この結果、圧力室4内には負の圧力が発生しノズル内のメニスカスは圧力室4側に後退する。この圧力室4の圧力は圧力伝播時間の約2倍の2Ta時間内において、負→正→負に変化する。
【0024】
そして、2Ta経過したとき、つまり、圧力室4の圧力が負のときに圧電部材の電極間に印加する電圧を0に戻すことにより、拡張した圧力室4の容積が元に戻るため圧力室4の圧力は正となる。従って、電圧を0に戻したときの圧力波の振幅が弱められるため残留圧力振動は小さくなる。
【0025】
続いて、プリカーサによるインクジェットヘッドの駆動方法について説明する。
印字を終了してから暫く放置すると揮発・増粘によりノズルの目詰まりが生じ、インクの不吐出が発生することが知られている。このインクの不吐出は放置時間と伴に増加する傾向にある。なお、インクタイプ、ヘッドディメンジョンによって、放置時間と不吐出本数は大きく異なる。
【0026】
図9は、あるソルベントインクを使用した場合の不吐出本数の増加を示す図である。なおこの実験で使用したノズルの径は20ミクロン程度である。
横軸は、印字終了からの放置時間、縦軸は、不吐出となったノズル本数を示している。この実験結果によれば、印字終了後25秒以上放置すると不吐出ノズルが発生している。従って不吐出ノズルの発生を防止するためには、インクジェットヘッドが印字位置からメンテナンス位置に移動してから、あるいは、移動中からプリカーサ駆動波形を印加する必要がある。従って、この種のソルベントインクでは、非印字時にはプリカーサ波形を印加し続けることになる。なお、オイル系インクでは1時間以上放置していても全く不吐出ノズルが発生しないこともある。
【0027】
図9に示すプリカーサ駆動パルスは、ノズルからのインク不吐出状態が所定時間経過したときに付加される。なお、印字を終了後インクジェットヘッドがメンテナンス位置に移動を開始してから所定時間経過後にプリカーサの駆動パルスを付加しても良い。
また、プリカーサ駆動パルスの印加電圧は回路の電源電圧Vccと同じあるいはそれよりも小さい電圧としている。
一般的には、プリカーサの駆動パルスとインクを吐出する駆動パルスとは同一の電源電圧Vccを用いることが多い。そうすると、アクチュエータとしては常に印字動作をしていることになり、ヘッド寿命に少なからず悪い影響を及ぼす。このため、プリカーサの駆動パルスの印加電圧を、インクを吐出する駆動パルスの印加電圧と同じあるいはそれよりも小さくすることにより、アクチュエータヘの繰返し負荷を低減しつつ、不吐出を防止することができる。そして、インクタイプ、ヘッドディメンジョンによって、プリカーサの駆動パルスの印加電圧を適宜することで更に効果を高めることができる。
【0028】
図10は、プリカーサの駆動パルスの波形を示す図である。
プリカーサの駆動パルスは、時間Tcを周期として出力される。ここで周期Tcは不吐出が発生しない所定時間よりも短い時間としている。従って、時間Tcは、プリカーサの駆動パルスの付加が開始される、ノズルからのインク不吐出状態継続する所定時間、及び印字を終了後インクジェットヘッドがメンテナンス位置に移動を開始してからの所定時間よりも短い時間に設定される。また、インクタイプ、ヘッドディメンジョンによって、適正な周期Tcが存在する。この周期Tcをインクタイプ、ヘッドディメンジョンに応じて、適宜変更しても良い。
【0029】
〔バリエーション〕
図11は、プリカーサ駆動パルスを付加する方法のバリエーションを示す図である。
本バリエーションの方法では、不吐出ノズルの発生を防止するため、インクジェットヘッドが印字位置からメンテナンス位置に移動してから、あるいは、移動中からプリカーサの駆動電圧を印加することは上述と同様であるが、所定時間経過後はプリカーサの駆動パルスの印加電圧を駆動パルスの印加電圧と同じ値に増加させる。これによって、時間経過と共に粘度が増加する状態に対応して不吐出を防止することができる。
【0030】
なお、プリカーサの駆動パルスへの印加電圧は、上述の形態に限られず、放置時間とともにプリカーサの駆動パルスヘの印加電圧を段階的に可変しても良い。
図12、図13は、プリカーサの駆動パルスの印加電圧の推移を示す図である。横軸は印字終了からの放置時間、縦軸はプリカーサの駆動パルスヘの印加電圧を示している。
図12では、時間経過と共に印加電圧を段階的に上昇させている。但し、印加電圧は、電源電圧Vccと同じあるいはそれよりも小さい電圧である。即ち、印加電圧は最大Vccで制限されている。
図13では、時間経過と共に印加電圧を変動させる。但し、印加電圧は、電源電圧Vccと同じあるいはそれよりも小さい電圧である。即ち、印加電圧は最大Vccで制限されている。
これはインクジェットヘッドの寿命低下という悪影響を防止するためである。
【0031】
なお、プリカーサの駆動パルスを一定回数インクジェットヘッドに印加したとしても非印字時間が長くなってくると、インクの粘度は増加する傾向がある。
このような場合には非印字領域で粘度が増加しつつあるインクを排出させるスピット動作を周期的に実行させても良い。このスピット動作における駆動パルスの駆動波形も図3の駆動波形制御回路18から発生させることができる。このスピット動作における駆動パルスの駆動波形は図6の駆動波形と同じである。
【0032】
そこで、非印字時間がある程度以上長くなった場合には、インクジェットヘッドのインク吐出側にインク受けを配置して、そのインク受けにスピット動作によってインクを定期的に排出しても良い。
【0033】
さらに、装置の電源が切られた状態で長時間放置された場合は、ノズル内のインクの粘度はかなり高くなっているかあるいは固化してしまっているため、上述のプリカーサやスピット動作における駆動パルスを使用しても効果が得られないこともある。
【0034】
このような場合、ノズルヘッドにキャップをして外部から負圧をかけてインクを吸引しても良い。さらにこの吸引と共に圧力室4内に正圧をかけてインクを押し出すようにしても良い。
【0035】
〔本実施の形態の効果〕
プリカーサの駆動パルスの印加電圧を、インクを吐出する駆動パルスの印加電圧と同等もしくはそれ以下とすることにより、アクチュエータヘの繰返し負荷を低減しつつ、不吐出の防止を行うことができる。
また、放置時間とともにプリカーサ駆動パルスヘの印加電圧を段階的に可変可能とする。この際の印加電圧値、印加周期は、インクタイプ、ヘッドディメンジョンによって、適宜変更する。例えば、印加電圧値、印加周期をテーブル化して、使用条件に応じて選択可能としても良い。
さらに、上述のプリカーサ動作に加えて、スピット動作、インク吸引、インク加圧を実現するように装置を構成しても良い。
【0036】
以上により、不吐出を防止して安定した印字品質を確保しつつ、ヘッド寿命への悪影響を低減することができる。
【0037】
なお、上述の実施の形態で説明した各機能は、ハードウエアを用いて構成しても良く、また、ソフトウエアを用いて各機能を記載したプログラムをコンピュータに読み込ませて実現しても良い。また、各機能は、適宜ソフトウエア、ハードウエアのいずれかを選択して構成するものであっても良い。
【0038】
更に、各機能は図示しない記録媒体に格納したプログラムをコンピュータに読み込ませることで実現させることもできる。ここで本実施の形態における記録媒体は、プログラムを記録でき、かつコンピュータが読み取り可能な記録媒体であれば、その記録形式は何れの形態であってもよい。
【0039】
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】インクジェットヘッドの断面を示す図。
【図2】インクジェットヘッドの断面の一部を示す図。
【図3】インクジェットヘッドを駆動する駆動制御部の概略の構成を示すブロック図。
【図4】インクを吐出させる駆動パルス及び微小圧力駆動信号としてのプリカーサの駆動パルスを発生させる回路を示す図。
【図5】インクを吐出させるための駆動パルスの波形を示す図。
【図6】インクを吐出させる駆動パルスとその駆動パルスに対応して圧力室内に発生する圧力振動波形とを示す図。
【図7】微小振動を与えるためのプリカーサの駆動パルスの波形を示す図。
【図8】プリカーサの駆動パルスとその駆動パルスに対応して圧力室内に発生する圧力振動波形とを示す図。
【図9】あるソルベントインクを使用した場合の不吐出本数の増加を示す図。
【図10】プリカーサの駆動パルスの波形を示す図。
【図11】プリカーサ駆動パルスを付加する方法のバリエーションを示す図。
【図12】プリカーサの駆動パルスの印加電圧の推移を示す図。
【図13】プリカーサの駆動パルスの印加電圧の推移を示す図。
【符号の説明】
【0041】
1,2…圧電部材、4…圧力室、14…駆動制御部、15…プリンタコントローラ、 18…駆動波形制御回路、18a…駆動波形設定部、18b…駆動電圧設定部、19…ヘッド駆動回路、100…インクジェットヘッド、Q1,Q2,Q3,Q4…MOSFET、Vcc…電源電圧。
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットヘッド駆動方法及びインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェット画像形成技術の急速な進歩に伴い、写真画像に匹敵する高画質の画像が出力できるようになってきた。インクジェット画像形成技術は非接触で、適正量のインクを所定の位置に正確に滴下することを特徴としており、様々なアプリケーションヘの応用が進んでいる。このインクジェット画像形成技術には、高画質の画像を長期にわたり提供できることが求められる。ところで、インクを吐出した後に、一定期間放置すると、ノズル部のインクが揮発し増粘することで目詰まりが発生し、インクが吐出しないことが確認されている。
【0003】
このインク目詰まりに対して、インクからの改良アプローチがなされており、特に、顔料分散物を用いるインクにおいては、顔料粒子の分散安定性を高める試みがなされている。一方、インク吐出性能を改良する試みが、インクジェットヘッド側からも行われている。例えば、インクジェットヘッドに設けられているノズルのオリフィス部に撥水処理を施してオリフィス内部への付着を防ぐ方法、あるいはノズル面に撥水処理を施す方法が提案されている。更には、インク滴が吐出しない程度にメニスカス(インクの液面位置)を振動させて吐出安定性を実現させる方法も提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−203020号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インクジェット画像形成技術で用いられる記録媒体、インクは、当該技術が適用される様々なアプリケーションに応じて多種多様である。インクではオイル系、UV系、水性系、ソルベント系と幅広く使用されている。例えば、サイン・ディスプレイ関連では、ソルベント系インクが用いられることが多い。ソルベント系は速乾性が良く、インクの揮発・増粘が早い時間で発生するものが多い。中には10sくらいで不吐出となるインクもある。
このような速乾性の良いインクでは、ヘッド側の撥水処理のみによって改善することが難しく、そのため特許文献1に開示されているように、微小圧力駆動信号をアクチュエータに出力することにより吐出安定性を実現させようとする動きがある。
【0005】
しかし、微小圧力信号を付加しても適切な条件で付加されない場合は、不吐出を有効に防止することは困難である。また微小圧力駆動信号をアクチュエータに出力することはヘッドの劣化・消耗を助長することになり、ヘッド寿命に悪い影響を与える。従って、効果的に不吐出を防止し、ヘッド寿命への悪影響を低減することのできる方式が求められている。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、インクの不吐出を効果的に防止し、ヘッド寿命への悪影響を低減することのできるインクジェットヘッド駆動方法及びインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明は、インクを収容する圧力室と、この圧力室に連通し、この圧力室のインクを吐出するノズルと、前記圧力室の容積を拡張、収縮変化させるアクチュエータとを有するインクジェットヘッドと、前記ノズルからインク滴を吐出させる駆動信号を前記アクチュエータに出力する駆動信号発生部とを備えたインクジェット記録装置のインクジェットヘッド駆動方法であって、前記ノズルからインク吐出を行わない不吐出時に、前記圧力室を拡張させてから元に戻す微小圧力駆動信号を前記アクチュエータに出力し、この微小圧力駆動信号の駆動電圧は、インク滴を吐出させる駆動信号の駆動電圧以下としたインクジェットヘッド駆動方法である。
【0008】
また本発明は、インクを収容する圧力室と、この圧力室に連通し、この圧力室のインクを吐出するノズルと、前記圧力室の容積を拡張、収縮変化させるアクチュエータとを有するインクジェットヘッドと、前記ノズルからインク滴を吐出させる駆動信号を前記アクチュエータに出力する駆動信号発生部とを備えたインクジェット記録装置であって、前記ノズルからインク吐出を行わない不吐出時に、前記圧力室を拡張させてから元に戻す微小圧力駆動信号を前記アクチュエータに出力する微小駆動信号発生部を有し、前記微小圧力駆動信号の駆動電圧は、インク滴を吐出させる駆動信号の駆動電圧以下としたインクジェット記録装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、インクの不吐出を効果的に防止し、ヘッド寿命への悪影響を低減することのできるインクジェットヘッド駆動方法及びインクジェット記録装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
〔第1の実施の形態〕
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。
先ず、図1及び図2を用いてインクジェットヘッド100の構成について説明する。図1は、インクジェットヘッド100の断面を示す図であり、図2は図1におけるII−II断面の一部を示す図である。
【0011】
図1及び図2に示すように、アクチュエータとして圧電部材を使用したインクジェットヘッド100には、2枚の長方形の圧電部材1、2が設けられている。この2枚の長方形の圧電部材1、2は分極方向が互いに板厚方向で外側に向いて反対になるように張合わされ、圧電部材よりも誘電率の低い基板3の上に固着されている。この圧電部材1、2を例えばダイヤモンドカッタを使用して一定の間隔で平行に同じ幅で、同じ深さ、同じ長さの複数の長溝を切削加工して圧力室4を形成している。
【0012】
圧力室4の側面と底面に無電解ニッケルメッキにより電極5が形成され、さらに圧力室4の後端から前記基板3の後部上面に同じく無電解ニッケルメッキにより電極6が形成されている。そして、基板3の後端上面には回路基板7が固着されている。
前記圧電部材1、2の圧力室4の上には、共通圧力室8を構成する枠状部材9が接着固定され、その枠状部材9の上は共通圧力室8に連通するインク供給口10を設けた天板11により閉塞されている。また、前記各圧電部材1、2の先端に複数のインク吐出口12を設けたオリイフイスプレート13が接着剤で接着固定されている。なお、オリフィスプレート13に替えてノズルを用いても良い。
【0013】
図3は、インクジェットヘッド100を駆動する駆動制御部14の概略の構成を示すブロック図である。
駆動制御部14は、プリンタコントローラ15、画像メモリ16、印刷データ転送ブロック17、駆動波形制御回路18、ヘッド駆動回路19を備えている。
【0014】
プリンタコントローラ15は、印刷データを画像メモリ16に記憶し、印刷データ転送ブロック17を制御して画像メモリ16に記憶された印刷データをヘッド駆動回路19に転送する。また、駆動波形制御回路18はヘッド駆動回路19を駆動させる駆動波形を設定するための駆動波形設定部18a、ヘッド駆動回路19を駆動させる駆動電圧を設定する駆動電圧設定部18bを有している。
そして、ヘッド駆動回路19は、プリンタコントローラ15及び駆動波形制御回路18に制御されインクジェットヘッド100を駆動させる。なお、駆動波形制御回路18及びヘッド駆動回路19は上述した回路基板7に設けられている。
【0015】
このような構成により、ヘッド駆動回路19から駆動信号を発生して圧電部材1,2に印加すると、この圧電部材1,2が動作し、圧力室4の容積を変化させる。これにより、圧力室4内に圧力波が発生し、インク吐出口12からインク滴を吐出するようになっている。
【0016】
次に、不吐出時にインクがインク吐出口12から吐出しない程度の微小振動を圧力室4に与えるプリカーサについて説明する。
図4は、インクを吐出させる駆動パルス及び微小圧力駆動信号としてのプリカーサの駆動パルスを発生させる回路を示す図である。この回路は、駆動波形制御回路18に設けられている。
PチャンネルMOSFETQ1とnチャンネルMOSFETQ2との直列接続体及びPチャンネルMOSFETQ3とnチャンネルMOSFETQ4との直列接続体が電源電圧Vccと接地間に接続されている。
【0017】
各MOSFETQ1〜Q4のゲート電位はそれぞれ独立に制御される。そして、PチャンネルMOSFETQ1とnチャンネルMOSFETQ2との接続点から出力1が取り出され、PチャンネルMOSFETQ3とnチャンネルMOSFETQ4との接続点から出力2が取り出される。出力1は圧電部材の一方の電極端子に接続され、出力2は圧電部材の他方の電極端子に接続されている。
【0018】
図5は、インクを吐出させるための駆動パルスの波形を示す図である。
まず、MOSFETQ1とMOSFETQ4をTa時間だけオン動作させ、MOSFETQ2とMOSFETQ3をTa時間だけオフ動作させる。これにより、図5に示す拡張パルスp1を発生させている。続いて、MOSFETQ1とMOSFETQ4を2Ta時間だけオフ動作させ、MOSFETQ2とMOSFETQ3を2Ta時間だけオン動作させる。これにより図5に示す収縮パルスp2を発生させることができる。インクを吐出させる駆動パルスはこのような拡張パルスp1と収縮パルスp2より構成される。
【0019】
次に、図6を参照して、図5のインクを吐出させる駆動パルスとその駆動パルスに対応して圧力室内に発生する圧力振動波形との関係について説明する。
【0020】
まず、圧電部材の電極間にTa時間だけ電圧−Vccが印加されると、圧電部材が圧力室4の容積を広げるように変形するので圧力室4には負の圧力が発生する。ここで、Taは圧力室4内に発生した圧力波が圧力室4の一端から他端までに伝達するのに要する時間(圧力伝播時間)である。Taは圧力室4のサイズによって異なるが、数μ秒のオーダである。
【0021】
発生した負の圧力は圧力伝播時間Ta経過した時点では図6に示すように正の圧力に反転している。そこで圧力伝播時間Taが経過した後に、2Ta時間だけ電圧+Vccを圧力部材の電極間に印加する。電圧部材の電極間に電圧+Vccが印加されると、圧電部材が圧力室4の容積を狭めるように変形するため、圧力室4内には正の圧力が発生する。この圧力により発生する圧力波と最初に発生した圧力波とは位相が同相となるため、圧力波が重畳して振幅が急激に増大される。この時、ノズルからインクが吐出する。
【0022】
図7は、微小振動を与えるためのプリカーサの駆動パルスの波形を示す図である。
図4に示す回路において、MOSFETQ1とMOSFETQ4を2Ta時間だけオフ動作させる。これにより、図7に示すように電圧−Vccの拡張パルスp1が発生する。この拡張パルスp1がプリカーサの駆動パルスを構成する。
【0023】
次に、図8を参照して、プリカーサの駆動パルスqと圧力室4内に発生する圧力振動波形rとの関係について説明する。
まず、圧電部材の電極間に電圧−Vccの電圧が印加されると、圧電部材が圧力室4の容積を広げるように変形する。この結果、圧力室4内には負の圧力が発生しノズル内のメニスカスは圧力室4側に後退する。この圧力室4の圧力は圧力伝播時間の約2倍の2Ta時間内において、負→正→負に変化する。
【0024】
そして、2Ta経過したとき、つまり、圧力室4の圧力が負のときに圧電部材の電極間に印加する電圧を0に戻すことにより、拡張した圧力室4の容積が元に戻るため圧力室4の圧力は正となる。従って、電圧を0に戻したときの圧力波の振幅が弱められるため残留圧力振動は小さくなる。
【0025】
続いて、プリカーサによるインクジェットヘッドの駆動方法について説明する。
印字を終了してから暫く放置すると揮発・増粘によりノズルの目詰まりが生じ、インクの不吐出が発生することが知られている。このインクの不吐出は放置時間と伴に増加する傾向にある。なお、インクタイプ、ヘッドディメンジョンによって、放置時間と不吐出本数は大きく異なる。
【0026】
図9は、あるソルベントインクを使用した場合の不吐出本数の増加を示す図である。なおこの実験で使用したノズルの径は20ミクロン程度である。
横軸は、印字終了からの放置時間、縦軸は、不吐出となったノズル本数を示している。この実験結果によれば、印字終了後25秒以上放置すると不吐出ノズルが発生している。従って不吐出ノズルの発生を防止するためには、インクジェットヘッドが印字位置からメンテナンス位置に移動してから、あるいは、移動中からプリカーサ駆動波形を印加する必要がある。従って、この種のソルベントインクでは、非印字時にはプリカーサ波形を印加し続けることになる。なお、オイル系インクでは1時間以上放置していても全く不吐出ノズルが発生しないこともある。
【0027】
図9に示すプリカーサ駆動パルスは、ノズルからのインク不吐出状態が所定時間経過したときに付加される。なお、印字を終了後インクジェットヘッドがメンテナンス位置に移動を開始してから所定時間経過後にプリカーサの駆動パルスを付加しても良い。
また、プリカーサ駆動パルスの印加電圧は回路の電源電圧Vccと同じあるいはそれよりも小さい電圧としている。
一般的には、プリカーサの駆動パルスとインクを吐出する駆動パルスとは同一の電源電圧Vccを用いることが多い。そうすると、アクチュエータとしては常に印字動作をしていることになり、ヘッド寿命に少なからず悪い影響を及ぼす。このため、プリカーサの駆動パルスの印加電圧を、インクを吐出する駆動パルスの印加電圧と同じあるいはそれよりも小さくすることにより、アクチュエータヘの繰返し負荷を低減しつつ、不吐出を防止することができる。そして、インクタイプ、ヘッドディメンジョンによって、プリカーサの駆動パルスの印加電圧を適宜することで更に効果を高めることができる。
【0028】
図10は、プリカーサの駆動パルスの波形を示す図である。
プリカーサの駆動パルスは、時間Tcを周期として出力される。ここで周期Tcは不吐出が発生しない所定時間よりも短い時間としている。従って、時間Tcは、プリカーサの駆動パルスの付加が開始される、ノズルからのインク不吐出状態継続する所定時間、及び印字を終了後インクジェットヘッドがメンテナンス位置に移動を開始してからの所定時間よりも短い時間に設定される。また、インクタイプ、ヘッドディメンジョンによって、適正な周期Tcが存在する。この周期Tcをインクタイプ、ヘッドディメンジョンに応じて、適宜変更しても良い。
【0029】
〔バリエーション〕
図11は、プリカーサ駆動パルスを付加する方法のバリエーションを示す図である。
本バリエーションの方法では、不吐出ノズルの発生を防止するため、インクジェットヘッドが印字位置からメンテナンス位置に移動してから、あるいは、移動中からプリカーサの駆動電圧を印加することは上述と同様であるが、所定時間経過後はプリカーサの駆動パルスの印加電圧を駆動パルスの印加電圧と同じ値に増加させる。これによって、時間経過と共に粘度が増加する状態に対応して不吐出を防止することができる。
【0030】
なお、プリカーサの駆動パルスへの印加電圧は、上述の形態に限られず、放置時間とともにプリカーサの駆動パルスヘの印加電圧を段階的に可変しても良い。
図12、図13は、プリカーサの駆動パルスの印加電圧の推移を示す図である。横軸は印字終了からの放置時間、縦軸はプリカーサの駆動パルスヘの印加電圧を示している。
図12では、時間経過と共に印加電圧を段階的に上昇させている。但し、印加電圧は、電源電圧Vccと同じあるいはそれよりも小さい電圧である。即ち、印加電圧は最大Vccで制限されている。
図13では、時間経過と共に印加電圧を変動させる。但し、印加電圧は、電源電圧Vccと同じあるいはそれよりも小さい電圧である。即ち、印加電圧は最大Vccで制限されている。
これはインクジェットヘッドの寿命低下という悪影響を防止するためである。
【0031】
なお、プリカーサの駆動パルスを一定回数インクジェットヘッドに印加したとしても非印字時間が長くなってくると、インクの粘度は増加する傾向がある。
このような場合には非印字領域で粘度が増加しつつあるインクを排出させるスピット動作を周期的に実行させても良い。このスピット動作における駆動パルスの駆動波形も図3の駆動波形制御回路18から発生させることができる。このスピット動作における駆動パルスの駆動波形は図6の駆動波形と同じである。
【0032】
そこで、非印字時間がある程度以上長くなった場合には、インクジェットヘッドのインク吐出側にインク受けを配置して、そのインク受けにスピット動作によってインクを定期的に排出しても良い。
【0033】
さらに、装置の電源が切られた状態で長時間放置された場合は、ノズル内のインクの粘度はかなり高くなっているかあるいは固化してしまっているため、上述のプリカーサやスピット動作における駆動パルスを使用しても効果が得られないこともある。
【0034】
このような場合、ノズルヘッドにキャップをして外部から負圧をかけてインクを吸引しても良い。さらにこの吸引と共に圧力室4内に正圧をかけてインクを押し出すようにしても良い。
【0035】
〔本実施の形態の効果〕
プリカーサの駆動パルスの印加電圧を、インクを吐出する駆動パルスの印加電圧と同等もしくはそれ以下とすることにより、アクチュエータヘの繰返し負荷を低減しつつ、不吐出の防止を行うことができる。
また、放置時間とともにプリカーサ駆動パルスヘの印加電圧を段階的に可変可能とする。この際の印加電圧値、印加周期は、インクタイプ、ヘッドディメンジョンによって、適宜変更する。例えば、印加電圧値、印加周期をテーブル化して、使用条件に応じて選択可能としても良い。
さらに、上述のプリカーサ動作に加えて、スピット動作、インク吸引、インク加圧を実現するように装置を構成しても良い。
【0036】
以上により、不吐出を防止して安定した印字品質を確保しつつ、ヘッド寿命への悪影響を低減することができる。
【0037】
なお、上述の実施の形態で説明した各機能は、ハードウエアを用いて構成しても良く、また、ソフトウエアを用いて各機能を記載したプログラムをコンピュータに読み込ませて実現しても良い。また、各機能は、適宜ソフトウエア、ハードウエアのいずれかを選択して構成するものであっても良い。
【0038】
更に、各機能は図示しない記録媒体に格納したプログラムをコンピュータに読み込ませることで実現させることもできる。ここで本実施の形態における記録媒体は、プログラムを記録でき、かつコンピュータが読み取り可能な記録媒体であれば、その記録形式は何れの形態であってもよい。
【0039】
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】インクジェットヘッドの断面を示す図。
【図2】インクジェットヘッドの断面の一部を示す図。
【図3】インクジェットヘッドを駆動する駆動制御部の概略の構成を示すブロック図。
【図4】インクを吐出させる駆動パルス及び微小圧力駆動信号としてのプリカーサの駆動パルスを発生させる回路を示す図。
【図5】インクを吐出させるための駆動パルスの波形を示す図。
【図6】インクを吐出させる駆動パルスとその駆動パルスに対応して圧力室内に発生する圧力振動波形とを示す図。
【図7】微小振動を与えるためのプリカーサの駆動パルスの波形を示す図。
【図8】プリカーサの駆動パルスとその駆動パルスに対応して圧力室内に発生する圧力振動波形とを示す図。
【図9】あるソルベントインクを使用した場合の不吐出本数の増加を示す図。
【図10】プリカーサの駆動パルスの波形を示す図。
【図11】プリカーサ駆動パルスを付加する方法のバリエーションを示す図。
【図12】プリカーサの駆動パルスの印加電圧の推移を示す図。
【図13】プリカーサの駆動パルスの印加電圧の推移を示す図。
【符号の説明】
【0041】
1,2…圧電部材、4…圧力室、14…駆動制御部、15…プリンタコントローラ、 18…駆動波形制御回路、18a…駆動波形設定部、18b…駆動電圧設定部、19…ヘッド駆動回路、100…インクジェットヘッド、Q1,Q2,Q3,Q4…MOSFET、Vcc…電源電圧。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを収容する圧力室と、この圧力室に連通し、この圧力室のインクを吐出するノズルと、前記圧力室の容積を拡張、収縮変化させるアクチュエータとを有するインクジェットヘッドと、前記ノズルからインク滴を吐出させる駆動信号を前記アクチュエータに出力する駆動信号発生部とを備えたインクジェット記録装置のインクジェットヘッド駆動方法であって、
前記ノズルからインク吐出を行わない不吐出時に、前記圧力室を拡張させてから元に戻す微小圧力駆動信号を前記アクチュエータに出力し、この微小圧力駆動信号の駆動電圧は、インク滴を吐出させる駆動信号の駆動電圧以下としたことを特徴とするインクジェットヘッド駆動方法。
【請求項2】
前記インクジェットヘッドのインク不吐出状態が第1の所定時間経過したとき、あるいは前記インクジェットヘッドがメンテナンス位置に移動を開始してから第2の所定時間が経過したときに、前記微小圧力駆動信号を出力することを特徴とする請求項1に記載のインクジェットヘッド駆動方法。
【請求項3】
予め定められた複数の時間データから前記第1または第2の所定時間を少なくともインクタイプに応じて選択し、
選択された前記第1または第2の所定時間に従って前記微小圧力駆動信号を出力することを特徴とする請求項2に記載のインクジェットヘッド駆動方法。
【請求項4】
前記微小圧力駆動信号の駆動電圧を印字終了後の経過時間に対応して変化させることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットヘッド駆動方法。
【請求項5】
インクを収容する圧力室と、この圧力室に連通し、この圧力室のインクを吐出するノズルと、前記圧力室の容積を拡張、収縮変化させるアクチュエータとを有するインクジェットヘッドと、前記ノズルからインク滴を吐出させる駆動信号を前記アクチュエータに出力する駆動信号発生部とを備えたインクジェット記録装置であって、
前記ノズルからインク吐出を行わない不吐出時に、前記圧力室を拡張させてから元に戻す微小圧力駆動信号を前記アクチュエータに出力する微小駆動信号発生部を有し、
前記微小圧力駆動信号の駆動電圧は、インク滴を吐出させる駆動信号の駆動電圧以下としたことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記微小駆動信号発生部は、前記インクジェットヘッドのインク不吐出状態が第1の所定時間経過したとき、あるいは前記インクジェットヘッドがメンテナンス位置に移動を開始してから第2の所定時間が経過したときに、前記微小圧力駆動信号を出力するように構成されたことを特徴とする請求項5に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
予め定められた複数の時間データから前記第1または第2の所定時間を少なくともインクタイプに応じて選択する時間選択部を有し、
前記微小駆動信号発生部は、選択された前記第1または第2の所定時間に従って前記微小圧力駆動信号を出力するように構成されたことを特徴とする請求項6に記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記微小駆動信号発生部は、前記微小圧力駆動信号を所定の周期で出力するように構成され、
前記所定の周期は、前記第1の所定時間あるいは前記第2の所定時間以下であることを特徴とする請求項6に記載のインクジェット記録装置。
【請求項9】
前記微小駆動信号発生部は、前記微小圧力駆動信号の駆動電圧を印字終了後の経過時間に対応して変化させるように構成されていることを特徴とする請求項5に記載のインクジェット記録装置。
【請求項10】
非印字時間が前記第1および第2の所定時間よりも長い第3の所定時間を経過したときに、前記ノズルからインク滴を周期的に吐出させるスピット駆動信号を出力するスピット信号発生部を更に備えたことを特徴とする請求項6に記載のインクジェット記録装置。
【請求項1】
インクを収容する圧力室と、この圧力室に連通し、この圧力室のインクを吐出するノズルと、前記圧力室の容積を拡張、収縮変化させるアクチュエータとを有するインクジェットヘッドと、前記ノズルからインク滴を吐出させる駆動信号を前記アクチュエータに出力する駆動信号発生部とを備えたインクジェット記録装置のインクジェットヘッド駆動方法であって、
前記ノズルからインク吐出を行わない不吐出時に、前記圧力室を拡張させてから元に戻す微小圧力駆動信号を前記アクチュエータに出力し、この微小圧力駆動信号の駆動電圧は、インク滴を吐出させる駆動信号の駆動電圧以下としたことを特徴とするインクジェットヘッド駆動方法。
【請求項2】
前記インクジェットヘッドのインク不吐出状態が第1の所定時間経過したとき、あるいは前記インクジェットヘッドがメンテナンス位置に移動を開始してから第2の所定時間が経過したときに、前記微小圧力駆動信号を出力することを特徴とする請求項1に記載のインクジェットヘッド駆動方法。
【請求項3】
予め定められた複数の時間データから前記第1または第2の所定時間を少なくともインクタイプに応じて選択し、
選択された前記第1または第2の所定時間に従って前記微小圧力駆動信号を出力することを特徴とする請求項2に記載のインクジェットヘッド駆動方法。
【請求項4】
前記微小圧力駆動信号の駆動電圧を印字終了後の経過時間に対応して変化させることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットヘッド駆動方法。
【請求項5】
インクを収容する圧力室と、この圧力室に連通し、この圧力室のインクを吐出するノズルと、前記圧力室の容積を拡張、収縮変化させるアクチュエータとを有するインクジェットヘッドと、前記ノズルからインク滴を吐出させる駆動信号を前記アクチュエータに出力する駆動信号発生部とを備えたインクジェット記録装置であって、
前記ノズルからインク吐出を行わない不吐出時に、前記圧力室を拡張させてから元に戻す微小圧力駆動信号を前記アクチュエータに出力する微小駆動信号発生部を有し、
前記微小圧力駆動信号の駆動電圧は、インク滴を吐出させる駆動信号の駆動電圧以下としたことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記微小駆動信号発生部は、前記インクジェットヘッドのインク不吐出状態が第1の所定時間経過したとき、あるいは前記インクジェットヘッドがメンテナンス位置に移動を開始してから第2の所定時間が経過したときに、前記微小圧力駆動信号を出力するように構成されたことを特徴とする請求項5に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
予め定められた複数の時間データから前記第1または第2の所定時間を少なくともインクタイプに応じて選択する時間選択部を有し、
前記微小駆動信号発生部は、選択された前記第1または第2の所定時間に従って前記微小圧力駆動信号を出力するように構成されたことを特徴とする請求項6に記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記微小駆動信号発生部は、前記微小圧力駆動信号を所定の周期で出力するように構成され、
前記所定の周期は、前記第1の所定時間あるいは前記第2の所定時間以下であることを特徴とする請求項6に記載のインクジェット記録装置。
【請求項9】
前記微小駆動信号発生部は、前記微小圧力駆動信号の駆動電圧を印字終了後の経過時間に対応して変化させるように構成されていることを特徴とする請求項5に記載のインクジェット記録装置。
【請求項10】
非印字時間が前記第1および第2の所定時間よりも長い第3の所定時間を経過したときに、前記ノズルからインク滴を周期的に吐出させるスピット駆動信号を出力するスピット信号発生部を更に備えたことを特徴とする請求項6に記載のインクジェット記録装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−230144(P2008−230144A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−75360(P2007−75360)
【出願日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】
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