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インクジェットヘッド
説明

インクジェットヘッド

【課題】部材としてポリイミドを使用するインクジェットヘッドにより強アルカリ性のインクを出射しても、電気的な故障によるインクの不吐出を起こさないインクジェットヘッドを提供する。
【解決手段】電気的な接続手段として、ポリイミドを有する配線基板又はフレキシブルケーブル10を備え、アルカリ溶液を吐出するインクジェットヘッドにおいて、酸性物質を含む保護材料21を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインクジェット記録方式に用いられるインクジェットヘッド及びインクジェットヘッドの保護材料に関し、特にインクとして強アルカリ性のインクを用いるインクジェットヘッド及び該インクジェットヘッドの保護材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液体を微小な液滴の状態で吐出可能な液体噴射ヘッドは、例えば、記録紙上にインク滴を吐出して画像等を記録するインクジェットプリンタに用いられるインクジェットヘッド等として広く普及してきている。
【0003】
それに伴い最近は、インクジェットの産業用への応用が進み、様々なインクによるインクジェット記録が研究されおり、電子部品の製造にインクジェットを適用することも研究されている。
【0004】
例えば、シリコンウエハのエッチングにはアルカリ溶液が用いられるが、インクジェットによりアルカリをシリコンウエハ上に所望のパターン状に付着させることにより、フォトレジストの工程を経ずにパターン状にエッチングを施すことができる。
【0005】
これらの分野では、例えば、1N(規定)以上の濃度のKOH溶液のように非常に高pHのアルカリ性インクを吐出することが要望されている。
【0006】
インクジェットヘッドは、インク流路部及び電気回路を含むヘッド駆動部と、それを覆う筐体から構成されている。
【0007】
電気回路部分の支持体や被服材料には、耐熱性、柔軟性、コスト等の点からポリイミドが広く用いられている。しかし、1N以上の濃度のKOH溶液のように非常に強いアルカリ性のインクを出射し続けると、ノズルからインクが出射しないチャネルが発生することが問題となっていた。
【0008】
不吐出チャネルに繋がる配線部分を調べると、ACF接続部分や配線を覆っているポリイミドに、アルカリにより溶解したと思われる小さな穴と、穴の部分には、複数の配線を跨いだ異物又は断線が観察された。
【0009】
インクジェットヘッドのノズルからは、記録媒体に打ち込まれるメイン液滴だけではなく、それより小さなサテライト液滴が射出されやすい。サテライト液滴は記録媒体に届かずに、ミストになってヘッド周辺に浮遊するものが多い。
【0010】
上記ミストはヘッドを覆う筐体の隙間から進入して、ヘッドの内部に付着すると考えられる。これらの浮遊しているアルカリ性のミストが、配線を覆っているポリイミドに付着すると、ポリイミドはアルカリにより加水分解されるため、ミストが付着した部分のポリイミドが溶解すると考えられる。
【0011】
ヘッドの内部には、インクが吐出する複数のノズルが設けられたヘッドチップとチップにインクを導入するマニホールド等のインク流路が備えられている。また、ヘッドチップは各ノズルに連通する複数の圧力室を備えており、各圧力室はインクに圧力を掛けるための圧力発生手段を備えている。該圧力発生手段としては、圧電素子により圧力室の壁面を動かすもの、静電力により圧力室の壁面を動かすもの及び発熱素子による熱でインクを沸騰させるものが、一般的に使用されている。
【0012】
該圧力発生手段は何れも電気的エネルギーにより作動し、各圧力発生手段と接続されている電極はチップの外に引き出され、チップ外の電気回路と接続されている。この接続には、ポリイミドフィルムに導電パターンが形成された配線基板やフレキシブルケーブルが用いられ、配線基板やフレキシブルケーブルはACP(導電性微粒子を含有した熱硬化性の接着剤の存在下で、前記電極を向かい合わせて、加熱圧着される方法により接続するための異方性導電ペースト)を介してチップの接続電極と接続される。さらに該電気回路は、インクジェットヘッドのコネクターを介してプリンターに設けられている回路と接続されている。
【0013】
電気回路部分は、例えば、外部より駆動信号を送る信号ケーブルと接続するためのコネクターを有する配線基板のみの場合と、外部より送られてくる画像信号により駆動信号を発生する機能を有する場合がある。外部の駆動信号又は画像信号を受けるコネクターは筐体の内部にあり覆われている場合と、筐体から一部露出している場合がある。また、インク流路部に連通し、インク供給チューブと接続するためのインク供給口も、筐体の内部にある場合と、筐体から一部露出している場合がある。
【0014】
コネクター又はインク供給口が筐体の内部にある場合、筐体を外してメンテナンスの作業を容易に行える利点がある。しかし、ケーブルやインク供給チューブを通すために、筐体に切り欠きを設ける必要があり、ケーブルやインク供給チューブと筐体の切欠きの間隙が生じる。
【0015】
一方、コネクターやインク供給口が筐体から露出している場合は、上記より間隙は生じにくいが、コネクターの封止が困難であり、若干の間隙が生じる。
【0016】
前記ミスとは、これらの間隙を通って筐体内部に侵入し、配線基板やフレキシブルケーブルに付着すると考えられる。
【0017】
ポリイミドはサーマルタイプのインクジェットヘッドにおいて、圧力室の壁面に設けられた配線の保護膜として使用した場合、pH10のアルカリ性インクによって、加水分解を受けて剥離してしまうことが、特許文献1に記載されているように、アルカリに対する耐久性は低い。
【0018】
本発明のインクジェットヘッドにて出射される電子工業用のアルカリ性インクは、pH13以上の非常に強いアルカリ性である場合が多く、ポリイミドフィルムを用いたフレキシブルケーブル等に付着しただけで、ポリイミドフィルムは加水分解を受けて溶解し、ポリイミドの層により覆われていた配線の断線やショートを引き起こす可能性が考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開平9−24614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明は、部材としてポリイミドを使用するインクジェットヘッドにより強アルカリ性のインクを出射しても、電気的な故障によるインクの不吐出を起こさないインクジェットヘッドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
1.電気的な接続手段として、ポリイミドを有する配線基板又はポリイミドを有するフレキシブルケーブルを備え、かつ該配線基板及び該フレキシブルケーブルを覆う筐体を備えて、アルカリ溶液を吐出するインクジェットヘッドにおいて、酸性物質を含む保護材料を有することを特徴とするインクジェットヘッド。
【0022】
2.前記保護材料を筐体の内部に有することを特徴とする前記1に記載のインクジェットヘッド。
【0023】
3.前記酸性物質がクエン酸、ホウ酸、燐酸、サリチル酸から選ばれた少なくとも1つを含むことを特徴とする前記1又は2に記載のインクジェットヘッド。
【0024】
4.前記保護材料が繊維状材料を含むことを特徴とする前記1〜3の何れか1項に記載のインクジェットヘッド。
【0025】
5.前記保護材料が酸性紙であることを特徴とする前記1〜3の何れか1項に記載のインクジェットヘッド。
【0026】
6.前記酸性紙が硫酸アルミニウムを含むことを特徴とする前記5に記載のインクジェットヘッド。
【0027】
7.前記保護材料が、塗布後、ゲル化して形成されたことを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載のインクジェットヘッド。
【0028】
8.前記繊維状材料が布であることを特徴とする前記4に記載のインクジェットヘッド。
【0029】
9.保護材料がpH指示薬を含有することを特徴とする前記1〜8のいずれか1項に記載のインクジェットヘッド。
【0030】
10.保護材料が乾燥剤を酸性物質で覆う構成からなることを特徴とする前記1〜9のいずれか1項に記載のインクジェットヘッド。
【0031】
11.インクジェットヘッドの筐体が取り外し可能であることを特徴とする前記1〜10のいずれか1項に記載のインクジェットヘッド。
【発明の効果】
【0032】
非常に強いアルカリ性のインクを出射し続けると、強アルカリ性のミストが配線を覆っているポリイミドに付着して加水分解を起こし付着した部分のポリイミドが溶解する。酸性物質を含む保護材料を備えることで強アルカリのミストが付着した配線基板の界面でpHを下げる、もしくはアルカリと保護材料が接触し、中和することで残存するミストが減少すると考えられ、経時的に与える配線基板の溶解や、ポリイミドの損傷に因る電流のリークを防ぐことができた。
【0033】
乾燥剤を酸性物質で覆い筐体内に配置することで、配線基板の溶解やポリイミドの損傷による電流のリークや断線を防止できた。乾燥剤は筐体内の強アルカリのミストの水分を吸収することができ、酸性物質と併用することにより、ポリイミドに対する腐食を相乗的に抑制できると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】(a)インクジェットヘッドAの駆動部(インク流路部と配線基板)、(b)配線基板の側面図。
【図2】インクジェットヘッドAの斜視図。
【図3】(a)インクジェットヘッドAの(b)におけるA−A断面図。(b)(c)該インクジェットヘッドの側面図。
【図4】(a)筐体の内側にシート状の保護材料を接着したインクジェットヘッドAの(b)におけるB−B断面図。(b)(c)該インクジェットヘッドの側面図。
【図5】ヘッド駆動部が保護材料により覆われたインクジェットヘッドAの斜視図。
【図6】(a)ヘッド駆動部が保護材料により覆われたインクジェットヘッドAの(b)(c)におけるC−C断面図。(b)(c)該インクジェットヘッドの側面図。
【図7】(a)筐体の内側に乾燥剤と酸性物質からなる保護材料が設けられたインクジェットヘッドAの(b)におけるD−D断面図。(b)(c)該インクジェットヘッドの側面図。
【図8】インクジェットヘッドBの斜視図。
【図9】(a)インクジェットヘッドBの(b)におけるE−E断面図。(b)該インクジェットヘッドの側面図。
【図10】(a)筐体の内側に乾燥剤と酸性物質を含む保護材料が設けられたインクジェットヘッドBの(b)におけるF−F断面図。(b)(c)該インクジェットヘッドの側面図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下に本発明について、図を参照しながら詳細に記載するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
【0036】
(配線基板)
前記配線基板は補強板(金属などの強度の大きな材料)などにより、固定された形状を保つものであり、接続電極部分を除き配線はポリイミドのフィルムにより被覆されている。また、配線基板には配線以外のコネクター等の部品を備えることが可能である。
【0037】
補強板には耐蝕性、強度の点からステンレスが好ましく用いられる。
【0038】
配線は、電気伝導度、コストの点から、銅が一般的に用いられる。
【0039】
(フレキシブルケーブル)
前記フレキシブルケーブルは端部の接続電極を除き、ポリイミドのフィルムにより並列する複数の配線を両面から被覆した屈曲可能な配線材料である。配線は、上記と同様に、銅が一般的に用いられる。
【0040】
(アルカリ溶液)
前記インクジェットヘッドにより吐出されるアルカリ溶液はpH13以上の溶液であり、アルカリ成分としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウムなどが挙げられる。
【0041】
アルカリ溶液の溶媒としては、水が用いられるが、ノズル詰まりを防止するために、水と共に水溶性の有機溶媒を有することが好ましい。
【0042】
図1はインクジェットヘッドの1例であるインクジェットヘッドAのヘッド駆動部を示す図である。(a)は正面図であり、(b)は駆動部に設けられている配線基板の側面図である。(b)では、分かりやすいように、カバーレイ1(厚さ12.5μm)、カバーレイ5(厚さ12.5μm)、配線6(厚さ18μm)、ベース材3(25μm)及び補強板4(300μm)をそれぞれ厚み方向に拡大して描いている。
【0043】
配線基板は配線6、コネクター2及びビアホール(配線6とコネクター2を電気的に接続する)からなる。
【0044】
配線6はベース材3上に形成され、主要部分がカバーレイ5で覆われている。配線6の一部はカバーレイ5により被覆されておらず、接続用の電極として露出している。ベース材3の配線が設けられていない面にはコネクター2が設けられており、コネクターの周辺部分はカバーレイ1で覆われている。
【0045】
インク流路部7は図示されていないノズルプレート(天板27と同一平面内の天板27の中央部に位置する)に形成された複数のインク吐出ノズル(図示せず)に、それぞれ連通するインクチャネル(図示せず)、複数のインクチャネルと連通する共通インク室(図示せず)、各インクチャネルのインクに圧力を付与するための圧力付与手段(図示せず)、圧力付与手段を動作させるための電極(図示せず)、該電極外部まで引き出し露出させた接続用の電極(図示せず)からなる。前記共通インク室はインクチューブコネクター30と連通しており、インクチューブコネクターはプリンターのインク供給装置(図示せず)とインク供給チューブ(図示せず)により繋がっている。
【0046】
インク流路部7の接続用電極と前記6の電極とがACPにより接続されている。
【0047】
カバーレイ5の表面には補強板4が接着されている。ここで、ベース材3及びカバーレイ5はポリイミドフィルムより形成されたものである。補強板4は例えばステンレス製であれば腐食に対して耐久性があり好ましい。
【0048】
図2はインクジェットヘッドAのヘッド駆動部を覆っている筐体82を引き上げたときの斜視図を示している。破線は図3の切断箇所を示す。
【0049】
底面側の筐体81の開口部にノズルプレート部分がはめ込まれており、固定用支持部材31によりヘッド駆動部が底面側の筐体81上に固定されている。アルカリ溶液は下方Gの方向に吐出される。
【0050】
図3はヘッド駆動部を筐体が覆っているインクジェットヘッドAである。(b)はインクジェットヘッドAを横から見た図であり、(a)はインクジェットヘッドAを(b)のA−Aで切断したときに正面から見た図である。(c)はインクジェットヘッドAを(b)とは反対側から見た図である。
【0051】
電子工業用のインクジェットヘッドは、泡抜き、異物除去などのメンテナンスを手作業で行うことがあり、インクジェットヘッドAの筐体82はメンテナンスのためにヘッド駆動部と着脱可能になっている。
【0052】
底面側の筐体81の開口部には、ノズルプレートを同一平面内の中央部に有する天板13がはめ込まれており、上側の筐体82はヘッド駆動部を覆う形で、底面側の筐体81の上に接着されずに置かれている。インク供給チューブ9及び信号ケーブル10を通すために上側の筐体82の裾部分には切欠き28、29が設けられている。そのため、インク供給チューブと筐体の間、プリンターからの信号ケーブルと筐体との間などに空隙が生じやすい。
【0053】
図4は筐体の内側にシート状の酸性物質を含む保護材料21を接着しているインクジェットヘッドAを示している。
【0054】
(b)はインクジェットヘッドAを横から見た図であり、(a)はインクジェットヘッドAを(b)のB−Bで切断し切断面の正面から見た図である。(c)はインクジェットヘッドAを(b)とは反対側から見た図である。
【0055】
(酸性物質)
酸性物質とは水に溶解又は分散することにより、該水のpHが6以下となる化合物である。酸性物質の例としては、硫酸アルミニウム、酸性白土、活性白土、ゼオライト、酸型イオン交換樹脂(ポリスチレンスルホン酸系樹脂(例えばオルガノ社製アンバーリスト(Amberlyst)15)、H形アクリル系樹脂(例えばオルガノ社製アンバーライト(Amberlite)IRC−76)等)、クエン酸、ホウ酸、燐酸、サリチル酸、安息香酸、シュウ酸などが挙げられる。
【0056】
(保護材料)
これらの酸性物質は水溶性樹脂の水溶液に溶解又は分散して、塗布することにより、保護材料の層中に含有させても良い。ゲル形成のための分散質を添加すると、塗布後にゲル化させることにより、厚く塗布することが出来て、一層効果的である。
【0057】
ゲルは分散媒として水を用いるヒドロゲルが酸性物質を添加しやすい点から好ましい。ゲルを形成するための分散質としては、加温した状態では流動性を有し、冷却することによりゲル化する水溶性樹脂が好ましい。該水溶性樹脂の好ましい例としては、ゼラチン、寒天、架橋されたポリビニルアルコール等が挙げられ、無機の分散質の好ましい例としてはチキソトロピー性の気相法シリカ微粒子が挙げられる。
【0058】
ゲル状態を保ったまま乾燥すれば、厚く均一な保護材料の膜を形成することができることから、多量の酸性物質を保持させることが出来、大きな効果を発揮する。
【0059】
保護材料は酸性物質を繊維状材料に含ませたものも、上記と同様に多くの酸性物質を保持させることから好ましい。該繊維状材料の例としては、綿、紙、ガーゼ、織物、不織布、などが挙げられる。前記繊維状材料を構成する物質としては、セルロース、羊毛、絹、合成繊維(ポリエステル、ナイロン、アクリル、ポリプロピレン等)が挙げられる。
【0060】
前記繊維状材料として紙を用いた酸性紙は廉価であり、加工が容易な点から好ましい。酸性紙はセルロースと硫酸アルミニウムを有する紙であり、例えば、Canon Dry(キャノン販売株式会社製、酸性紙)、EPP(エプソン販売株式会社製、酸性紙)、Xerox 4024 3R721(Xerox社、酸性紙)、やまゆり(王子製紙株式会社製、酸性紙)、Ricopy 6200(株式会社リコー製、酸性紙)、Xerox R (富士ゼロックス株式会社製、酸性紙)として市販され、また、Neenah bond社からも市販されている。
【0061】
保護材料には酸性物質の他に、pH指示薬を有することが好ましい。インクミストの付着により、酸性物質の中和が進行する状態が観察できることから、保護材料の交換時期の目安にすることができる。pH指示薬は水に溶解し、保護材料の一部に滴下して、乾燥させることによりスポット状に配置すればよい。該スポットの色を観察することにより、保護材料が酸性に保たれているかどうか判定できる。
【0062】
本発明で用いられるpH指示薬としては、ブロモチモールブルー、ブロムクレゾールパープル、フェノールフタレイン、メチルオレンジ、メチルレッド、チモールブルー等が挙げられる。
【0063】
図5はヘッド駆動部が前記保護材料22により覆われたインクジェットヘッドAのヘッド駆動部を覆っている筐体82を引き上げたときの斜視図を示している。破線は図6の切断箇所を示す。保護材料が切断面32により切断されたときの、ヘッド駆動が現れた様子を示している。インク供給チューブ9と信号ケーブル10は保護材料を貫通し、外部に導きさされている。
【0064】
図6(b)は図5で示したヘッド駆動部が前記保護材料により覆われたインクジェットヘッドAを横から見た図である。(a)は保護材料22により覆われたインクジェットヘッドAを(b)のC−Cで切断したときに正面から見た図である。(c)はインクジェットヘッドAを(b)とは反対側から見た図である。
【0065】
例えば、インクジェットヘッドAのヘッド駆動部を酸性紙で覆った後に筐体を取り付けることにより、ヘッド駆動部を保護することができる。保護材料は接着剤によりヘッド駆動部に接着固定してもよいし、保護材料を袋状に形成しヘッド駆動部に被せるだけでもよい。これにより保護材料の交換が容易になる。
【0066】
図7はインクジェットヘッドAの筐体の内面に乾燥剤と酸性物質を含む保護材を設けた構成を示している。例えば、筐体の内面に乾燥剤23を接着し、その上から酸性物質を含む保護材料24を被せて固定することができる。筐体内部を乾燥剤により乾燥することにより、アルカリによるポリイミドの侵食や水蒸気による回路の腐食を低減することができる。
【0067】
(乾燥剤)
乾燥剤としては、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム、塩化カルシウム、酸化カルシウム、酸化スロトンチウム、五酸価リンなどの潮解性無機塩、ゼオライト、シリカゲル、酸化アルミニウム、モレキュラーシーブなどの多孔質の乾燥剤、親水性樹脂等があるが、多孔質の乾燥剤や親水性樹脂が、吸湿しても流れることが無いため、好ましく用いられる。
【0068】
具体的には、帝人ファイバー製のベルサニー、ダイニック製のゲッターシートなどが市販されている。乾燥剤は透湿性のフィルムにより形成された袋に収められて密封された状態で用いることができる。
【0069】
図8はインクジェットヘッドのもう一つの例であるインクジェットヘッドBの斜視図、を示している。
【0070】
図9(a)はインクジェットヘッドBを(b)に示したE−Eで切断したときの断面図である。(b)はインクジェットヘッドBの側面図である。共通インク室と共通インク室からインク供給口までのインク流路は図示されていないが、流路部材19と第1の筐体部材14とにより形成されている。
【0071】
ノズルプレートは天板27と同一平面内で天板の中央部に配置されており、ノズルプレートに形成されたノズルよりアルカリ溶液が下方に吐出される。
【0072】
インク供給口はインク供給用のチューブと接続される。第1の筐体部材と流路部材の間は接着剤により封止されているために、筐体を着脱することはできない。コネクター11は第1の筐体部材14により位置が規制されているが、筐体との間で接着されていない。筐体は第1の筐体部材14及び第2の筐体部材15から構成され15は14と接着されている。
【0073】
コネクター11はフレキシブルケーブル16により回路基板17と接続されている。回路基板と流路部19の電極20とはフレキシブルケーブル18で接続されている。フレキシブルケーブル16と18は並列する複数の配線が2枚のポリイミドフィルムに挟まれた構成から成り、柔軟性を有する。
【0074】
インクジェットヘッドBはインク供給路が筐体を貫通する部分に間隙を有さないが、コネクターと筐体の間は封止されていないため、外部のミストが筐体内部に進入しうる間隙を有する。封止を行わないのは、プリンター側のコネクターとの接続、切断の際に、コネクターに力が加わるため、筐体とコネクターとの間の接着を保つことが困難なためである。
【0075】
図10(a)、(b)はインクジェットヘッドBの筐体の内面に、乾燥剤25と酸性物質26を設けた状態を示している。(a)は該インクジェットヘッドBを(b)に示したE−Eで切断したときの断面図であり、(b)は側面図である。
【実施例】
【0076】
(試料の作成)
試料1(比較例)
図1で示すインクジェットヘッドAのヘッド駆動部(シェアモード、256ノズル)を用意した。ここで、電極・配線6は厚さ19μm、幅18μmの複数の銅からなる配線パターンの列であり、配線6は両側をポリイミド製のベース材3(厚さ25μm)とポリイミド製のカバーレイ5(厚さ12.5μm)により覆われている。カバーレイ5により覆われていない電極部分は流路部7の引き出し電極と接続するための引き出し電極となる。該引き出し電極と流路部7の引き出し電極は、互いにACP接続されて、接続部分は熱硬化性樹脂により、接着補強され、かつ覆われている。
【0077】
コネクター2と配線6はベース材3に設けられたビアホールを通して電気的に接続されている。
【0078】
コネクターの周辺のベース材をカバーレイ1(厚さ12.5μm)により覆い接着した。
【0079】
カバーレイ5にはステンレス製の補強板4(厚さ300μm)を接着した。
【0080】
図2及び図3で示すように、前記ヘッド駆動部のコネクター2に信号ケーブル10を接続し、インクチューブコネクター30にインク供給チューブ9を接続した。
【0081】
次に、ヘッド駆動部の天板27を筐体81に形成された開口部に嵌め込んだ。筐体81の周縁部と筐体82の下部が接するように、ヘッド駆動部を筐体82で覆った。ここで、インク供給チューブは筐体82の切欠き28を通し、信号ケーブルは切欠き29を通し、それぞれ、プリンターのインク供給装置、駆動信号発生装置と接続した。筐体81と筐体82とは接着しなかった。
【0082】
試料2(本発明)
Canon−Dry(キャノン販売株式会社製、酸性紙)を図4に示した保護材料21の様に、インクジェットヘッドAの筐体82の内面に貼り付けた。その他は試料1と同様に試料2を作製した。
【0083】
試料3(本発明)
保護材料として、フェノールフタレイン溶液(pH指示薬)を一部分に滴下し乾燥させた「やまゆり」(王子製紙株式会社製、酸性紙)を用いて、図5、6に示した保護材料22の様に、両面テープで2枚の保護材料を貼り合わせて作製した袋でインクジェットヘッドAのヘッド駆動部を覆うように包んだ。インク供給チューブ9と信号ケーブル10は該袋に空けた穴を通して外側に導出された。それ以外は試料1と同様にして、試料3を作製した。
【0084】
試料4(本発明)
下記酸性液1を染み込ませ、乾燥した不織布(ナイロン製)で試料3と同様にインクジェットヘッドAのヘッド駆動部を覆った。その他は試料3と同様に試料4を作製した。
【0085】
試料5(本発明)
下記酸性液2を染み込ませ、乾燥した不織布を、両面テープでインクジェットヘッドAの天板27の挿入口付近の筐体81の内面に接着した。更にインク供給チューブ9を通すための筐体82の切欠き28の周辺の筐体内面、及び信号ケーブル10を通すための筐体82の切欠き29の周辺の筐体内面に、前記酸性液2を染み込ませ、乾燥した不織布を両面テープで接着した。その他は試料1と同様に試料4を作製した。
【0086】
試料6(本発明)
図7に示したように、インクジェットヘッドAの筐体82の内面に、乾燥剤23(ベルサニー;帝人ファイバー製)を両面テープで接着し、それを覆うようにXerox4024 3R721(Xerox社製、酸性紙)を接着した。その他は試料1と同様に試料6を作製した。
【0087】
試料7(比較例)
インクジェットヘッドBにおいて、図9に示したとおり、フレキシブルケーブル18の一方の端部と回路基板17とをACFで接続し、該フレキシブルケーブル18のもう一方の端部と流路部19の引き出し電極とをACPで接続することにより、ヘッド駆動部(シェアモード、512ノズル)を作製した。回路基板17には駆動信号発生回路が搭載されており、プリンターより送られてくる画像信号に基づいて、圧力発生手段に印加する駆動信号を発生させる。該ヘッド駆動部の流路部を第1の筐体部材14に接着し、インク流路を完成させた。
【0088】
コネクター11に接続されているフレキシブルケーブル16の端部の接続電極を回路基板17のコネクター(図示せず)に差し込んで接続する。コネクター11を第1の筐体部材14の開口部に嵌め込んだ。前記フレキシブルケーブルは、複数の銅製の配線が接続電極を除いてポリイミドフィルムにより覆われている。
【0089】
最後に、第2の筐体部材15を第1の筐体部材14に接着し封止した。
【0090】
試料8(本発明)
インクジェットヘッドBの第1の筐体部材14のコネクター挿入用開口部の周辺の内面に、40℃の下記酸性液3を塗布し、冷却してゲル化させた後、乾燥した。このように酸性液で処理した筐体部材14を用いたほかは、試料7と同様にして試料8を作製した。
【0091】
(酸性液1)
硫酸アルミニウム 8質量部
水 92質量部。
【0092】
(酸性液2)
クエン酸 10質量部
水 90質量部。
【0093】
(酸性液3)
酸処理ゼラチン 10質量部
水 90質量部
40℃の上記溶液にクエン酸水溶液(50質量%)を添加してpH4.0に調整。
【0094】
試料9(本発明)
インクジェットヘッドBの第2の筐体部材15の接着代(第1の筐体部材14との接合部)を除く全面に、両面テープでやまゆり(王子製紙株式会社製、酸性紙)を接着した。該第2の筐体部材15の酸性紙が接着された面を内側にして、第1の筐体部材に接着し封止した。その他は試料7と同様にして試料9を作製した。
【0095】
試料10(本発明)
図10に示すように、インクジェットヘッドBの第2の筐体部材15に両面テープで乾燥剤25(ベルサニー;帝人ファイバー製)を接着し、乾燥剤を覆うように接着しろを除く全面に、両面テープでやまゆり(王子製紙株式会社製、酸性紙)を接着した。
【0096】
前記第2の筐体部材15の乾燥剤と酸性紙が接着された面を内側にして、第1の筐体部材に接着し封止した。その他は試料7と同様にして試料10を作製した。
【0097】
(耐久試験方法)
常温の環境下で、下記のインクを不吐出のノズルが発生するまで、24℃環境下、駆動周波数:10kHz、パルス幅:6.2μs、駆動電圧:14.1Vで連続して出射し、連続出射した回数を表1に示した。試験は吐出回数の上限を1ノズル当たり40億回とし、40億回に達した時点で終了した。
【0098】
不吐出のノズルが発生したヘッドの不吐出のチャネルに繋がる配線部分を観察したところ、インクジェットヘッドAは、いずれのヘッドも、カバーレイ部分に穴が空き、穴の部分の複数の配線の間に跨って、黒色の異物が観察された。
【0099】
インクジェットヘッドBで、不吐出が発生したヘッドの筐体部材15を剥がし、不吐出のチャネルに繋がるフレキシブルケーブルの部分を観察したところ、いずれのヘッドも、ポリイミドフィルムに穴が空き、穴の部分では複数の配線の間に跨って、黒色の異物が観察された。
【0100】
(インク組成)
KOH 3質量部
グリセリン 10質量部
水 7質量部。
【0101】
【表1】

【0102】
表1より、本発明のインクジェットヘッドは、アルカリインクを連続して出射したときの耐久性が、改善されていることが分かる。
【符号の説明】
【0103】
1 カバーレイ
2 コネクター
3 ベース材
4 補強板
5 カバーレイ
6 電極・配線
7 流路部
9 インク供給チューブ
10 信号ケーブル
11 コネクター
12 インク供給口
13 天板
14 第1の筐体部材
15 第2の筐体部材
16 フレキシブルケーブル
17 回路基板
18 フレキシブルケーブル
19 流路部材
20 接続電極
21 保護材料
22 保護材料
23 乾燥剤
24 酸性物質を含む保護材料
25 乾燥剤
26 酸性物質を含む保護材料
27 天板
28 切欠き
29 切欠き
30 インクチューブコネクター
31 固定用支持部材
32 保護部材の切断面
81 筐体
82 筐体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気的な接続手段として、ポリイミドを有する配線基板又はポリイミドを有するフレキシブルケーブルを備え、かつ該配線基板及び該フレキシブルケーブルを覆う筐体を備えて、アルカリ溶液を吐出するインクジェットヘッドにおいて、酸性物質を含む保護材料を有することを特徴とするインクジェットヘッド。
【請求項2】
前記保護材料を筐体の内部に有することを特徴とする請求項1に記載のインクジェットヘッド。
【請求項3】
前記酸性物質がクエン酸、ホウ酸、燐酸、サリチル酸から選ばれた少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェットヘッド。
【請求項4】
前記保護材料が繊維状材料を含むことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のインクジェットヘッド。
【請求項5】
前記保護材料が酸性紙であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のインクジェットヘッド。
【請求項6】
前記酸性紙が硫酸アルミニウムを含むことを特徴とする請求項5に記載のインクジェットヘッド。
【請求項7】
前記保護材料が、塗布後、ゲル化して形成されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のインクジェットヘッド。
【請求項8】
前記繊維状材料が布であることを特徴とする請求項4に記載のインクジェットヘッド。
【請求項9】
保護材料がpH指示薬を含有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のインクジェットヘッド。
【請求項10】
保護材料が乾燥剤を酸性物質で覆う構成からなることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のインクジェットヘッド。
【請求項11】
インクジェットヘッドの筐体が取り外し可能であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のインクジェットヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−50861(P2011−50861A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−202396(P2009−202396)
【出願日】平成21年9月2日(2009.9.2)
【出願人】(305002394)コニカミノルタIJ株式会社 (317)
【Fターム(参考)】