説明

インクジェット記録装置のインク供給システム

【課題】
インクタンクのインク残量を極力少なくし、有効にインクを消費できること、泡の吸引を抑制し、安定したインクを供給できるインク供給システムを提供する
【解決手段】
使用インクタンクからその他複数のインクタンクに残ったインクを移動することで使用するインクタンクのインク残量を極力少なくでき、さらに限界までインクを吸引することによって、インク流路中に存在するインクと泡で混入された流路をインクタンクに再び戻すことにより、サブタンクやインクを吐出するプリントヘッドに泡の混入を防止することができる

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印字手段から記録媒体へインクを吐出して画像を形成するインクジェット記録装置に関するものであり、詳細する技術分野は、インクタンク及びインクタンクから印字手段へインクを供給する流路構成に関するもので、安定したインクをプリントヘッドに供給するインクジェット記録装置のインク供給システムに属するものである。
【背景技術】
【0002】
画像を形成する記録装置として、インクジェット記録装置が知られている。インクジェット記録装置は、印字手段(プリントヘッド)から記録媒体へインクを吐出して記録を行うものであり、印字記録方式として、プリントヘッドが固定して移動しないタイプと所定の主走査方向に走査するキャリッジに搭載されて移動するタイプの方式が知られており、高速・高画質といった記録が可能で、カラー化が進む現代において、容易に画像を記録できる。
【0003】
近年では、更なる高速・高画質化が進み、高精細な画像を記録できるインクジェット記録装置が要求され、更に高耐候性、耐水性等が課題となっており、あらゆるメディアに対応したインクの開発が今現在行われている。
【0004】
インクジェット記録装置には、インクを吐出するプリントヘッドにインクタンク内のインクを供給する為のインク供給装置が構成されている。
【0005】
印字途中にインクがなくなると、印字が中断され、記録紙を無駄にしてしまうことや新たなインクを補給することでインクの濃度差等による画像の色味差が発生する。
【0006】
また、インクが無い状態でインクを供給すると、インク供給装置内やプリントヘッドにインクと空気が同時に供給されることで不吐等の印字不良を起こす原因となる。
【0007】
従来から印字途中のインク切れを防止する為にインクタンクにはインク残量検知は不可欠なものとなっている。
【0008】
そこで、従来のインクタンクでは、以下のようにしてインクタンク内のインク残量検知を行っていた。
【0009】
インクタンク内のインクの電気的な導通を利用した導通式検知インクやインク吸収体等に複数の電極を設置し、その電極間の抵抗値等を見てある一定の抵抗値になったらインク無しを検知しているインクタンク内のインク残量に光センサ等を利用した光学式検知インクやインク吸収体等にインクタンクケースを介して透過や反射させた光を検知して、光センサの有無でインク無しを検知している。
【0010】
または、プリントヘッドから吐出されるインク滴(ドット)等の量から算出し、インク量を常に管理することでインク切れを検知するドットカウント方式等より、インクタンク内のインク残量を検知する。
【0011】
以上のようなインク量を常に管理することで空気の吸引を抑制し、インク残量を少なくすることができた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、近年では、多量印刷や連続的な印字を可能にすることでインク交換等の手間を省くためにインクタンク自体が大型化される傾向で、さらに2つのインクタンクを有することによって、連続的な稼動印刷においても、それぞれ独立したインク残量を検知することで交互にインクタンクを使用し、途中で印刷を中断することなく、印字を行うことができる。
【0013】
しかし、インクタンクの大型化に伴い、多量なインクを適度に供給する為、特にインク残量が正確に検知されず、インク残量が非常に多くなってしまうことが問題点として挙げられている。
【0014】
大容量インクタンクでは、容器自体の断面積が大きい為、導通式検知や光学式検知では、いくら残量液面が低くても、インク量は非常に多く、検知レベルやタンク自体の検知誤差が生じる可能性が大きい為、インク残量には大きなバラツキを生じてしまうことがある。
【0015】
また、ドットカウント方式でも同様にインク量が非常に多い為にカウント誤差が非常に多く、これも同様にインク残量にバラツキを生じてしまう。
【0016】
またその他の問題点として、インク残量検知が誤検知等を起こし、インクを吸引し過ぎてしまった場合、空気と共にインクを吸引し、それにより泡が発生する。
【0017】
それにより、サブタンク内でのインク残量検知が誤検知して、水頭液面が安定しない場合、多量の泡がサブタンク外に放出して、インク漏れを引き起こすことになる。
【0018】
それにより、プリントヘッドに安定してインクを供給できずに吐出不良を起こす原因にもなる。
【0019】
逆に泡の吸引を抑える為に早めにインク残量検知を検知させれば、インク残量が多くなってしまう。
【0020】
そこで、インク残量を極力少なくし、有効にインクを消費できること、泡の吸引を抑制し、安定したインクを供給できること、以上2つの問題に対応するインク供給システムを提供することを本発明の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
請求項1の発明は、記録媒体にインクを吐出して画像を形成する記録ヘッドと、前記記録ヘッドにインクを供給するサブタンクと、前記サブタンクにインクを供給するためのインクを収納する複数のインクタンクと吸引ポンプを有し、その各インクタンクにはインクの残量を検知するインク残量検知手段を備えているインクジェット記録装置において、第1のインクタンクのインク残量検知手段でインク無しと検知された時の残インクを第2のインクタンクに移動する移動手段を有することを特徴とするインク供給システム。
【0022】
請求項2の発明は、請求項1のインク供給システムにおいて、前記移動手段は、前記第1のインクタンクのインク残量検知手段がインク無しを検知したら、所定時間後に、第2のインクタンクに残インクが移動されることを特徴とする。
【0023】
請求項3の発明は、請求項1、2のインク供給システムにおいて、前記第1のインクタンクからのインクが移動完了後、第2のインクタンクのインクをサブタンクへのインク流路を含む第2のインクタンク循環経路で循環することを特徴とする。
【0024】
請求項4の発明は、請求項1、2,3のインク供給システムにおいて、インクタンク切替手段により、インク供給が第2のインクタンクに切り替えが完了したら、第1のインクタンクの交換が可能であることがインクジェット記録装置の表示部に表示されることを特徴とする。
【0025】
請求項5の発明は、請求項1、2,3,4のインク供給システムにおいて、前記第1のインクタンクから第2へのインクタンク切替は、その他のどのインクタンクから選択しても可能であることを特徴とする。
【0026】
請求項6の発明は、請求項1〜5のインク供給システムを具備したインクジェット記録装置。
【発明の効果】
【0027】
インクを吐出するプリントヘッド(印字手段)と前記印字手段にインクを供給する為のサブタンクと前記サブタンクにインクを供給する為のインクを収納する複数のインクタンクを持ち、そのインクタンクにインクの残量を検知するインク残量検知センサを備えたインクタンクを有し、プリントヘッドから記録媒体にインクを吐出して画像を形成するインクジェット記録装置において、使用インクタンクからその他複数のインクタンクに残ったインクを移動することで使用するインクタンクのインク残量を極力少なくできる。
【0028】
さらに限界までインクを吸引することによって、インク流路中に存在するインクと泡で混入された流路をインクタンクに再び戻すことにより、サブタンクやインクを吐出するプリントヘッドに泡の混入を防止することができる。
【0029】
以上により、使用するインクタンクのインクを使い切ることができ、かつインク流路をインクで満たすことで安定してインク供給を行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態について、図を参照しながら詳細に説明する。
【実施例1】
【0031】
図1は、プリントヘッド101と交互に選択可能なインクを収納するインクタンク102-a、102-bとプリントヘッド101にインクを供給するサブタンク103、プリントヘッド101の回復を行う回復ユニット104を有したインクジェット記録装置の構成を表すインク流路全体を表す全体概略図であり、本概略図の詳細説明として、1色のインクタンク102-a、102-bから対応する1つのプリントヘッド101(印字手段)に対してインクを供給する1つのインク供給装置の構成を示すこととする。
【0032】
また、カラー記録装置のように複数のインク種類に対応した複数のインクタンク102-a、102-b及び複数の印字手段を有する場合には、図1に示すインク供給装置と同様な複数のインク供給装置が並列的に配置される。
【0033】
図1において、印字に必要なインクは、脱着可能なインクタンク102-a、102-bからサブタンク103に供給され、一度サブタンク103に貯蔵される。
【0034】
サブタンク103内には電極で構成されたインク液面センサ(図示せず)が設置されており、このインク液面センサは、インクFULL状態及びインクEMPTY状態でのインク液面の位置を検知することでサブタンク103内に貯蔵されるインクの有無を検出する。
【0035】
インクの供給流路は、インクタンク102-a、102-bからサブタンク103、そしてプリントヘッド101にインクを供給し、インク吐出口のノズルにより、インクを吐出し画像を形成する。
【0036】
実際の印字方法は、プリントヘッド101よりインクを吐出する際、シート状の記録媒体とロール状に巻かれた記録媒体が搬送方向に搬送され、画像情報に基づいてインクを吐出することにより、画像を搬送方向へと徐々に形成することとなる。
【0037】
プリントヘッド101のタイプとしては、固定して動かないタイプと所定の主走査方向に走査するキャリッジに塔載されて移動するタイプの2種類が知られている。
【0038】
各部へのインクの移送は、加圧ポンプ105及び吸引ポンプ106の2つのポンプによって構成されており、供給・循環・回復・回収に設けられた開閉弁が一方向弁であることで双方のポンプは、任意の方向のみ回転可能である。
印字手段としてのプリントヘッド101の吐出口から排出されたインクは、回復ユニット104によってインクを回収する。
【0039】
この回復ユニット104と前記吸引ポンプ106との間のインク回収路107には、回収弁108が配置されており、ここでインク供給路109-aに合流する。
インクタンク102-a、102-bには、2つのインクタンクを選択して使用できるようにそれぞれ独立する供給弁110-a、110-bが備えられている。また、インクタンク102-a、102-bとインク供給路109-a合流地点の間のインク供給路109-bには、インクに含まれる塵埃を除去するためのフィルタ111-aが配置されている。
【0040】
これにより、サブタンク103内にろ過されたインクを送り込むことができる。
【0041】
また、インク供給路109-aとインク回収路107の合流地点を通して吸引ポンプ106より、インク供給路109-aを流れ、ここでサブタンク103にインク供給を行うインク供給路109-cとインクタンク102-a、102-bに繋がるインク循環路112の2つの流路に分岐する。
【0042】
この分岐地点とサブタンク103との間のインク供給路109-cには、供給弁110-cが設けられている。
【0043】
インク循環路112は、それぞれ2つのインクタンク102-a、102-bへ繋がっており、独立して循環弁113-a、113-bが設けられている。
【0044】
インク供給路109-cとインク循環路112のそれぞれ一方が開放状態の時は他方が密閉状態になるように駆動制御することによって吸引ポンプ106が駆動した時に、適時にインク供給路109-c→サブタンク103にインクを供給するインク供給モードとインク循環路112→インクタンク102-a、102-bにインクを戻すインク循環モードのいずれかを選択的に切り替えるように構成されている。
【0045】
回収弁108及び供給弁110-a、110-bも同様に一方が開放状態の時に他方が密閉状態になるように駆動制御する。
【0046】
これを適時切り替えることにより、吸引ポンプ106を駆動した時に、回復ユニット104からのインク回収及びインクタンク102-a、102-bからのインク供給のいずれかを選択的に行うように構成されている。
【0047】
また、2つのインクタンク102-a、102-bは、インク供給とインク循環共にそれぞれ独立して開閉する供給弁110-a、110-b・循環弁113-a、113-bが設けられており、2つのインクタンク102-a、102-bのどちらかを選択して開閉するように制御を行う。(インクタンクA使用なら、供給弁110-a・循環弁113-aを選択)
【0048】
次に図1のインク供給経路における各動作モードでの作動方法及びインク流路について説明する。
【0049】
まず、印字手段としてのプリントヘッド101から記録媒体にインクを吐出して記録を行う記録モードについて説明する。
【0050】
記録モードにおけるインク吐出により、プリントヘッド101内のインクは逐次消費されるが、この際のインク補充は、プリントヘッド101の吐出口部で発生する毛細管現象による吸引力により自動的に行われる。
【0051】
このインク補充は、サブタンク103→インク回復路114→プリントヘッド101を通るインク流路と、サブタンク103→インク供給路115→プリントヘッド101を通るインク流路との2つのインク流路により自動的に行われる。
【0052】
また、サブタンク103からプリントヘッド101へインクを補充する際、インクに含まれる塵埃を除去するために2つの流路にはフィルタ111-b、111-cが配置されている。
【0053】
プリントヘッド101とサブタンク103にはノズル面でインクをメニスカスで保てるほどの水頭差で成立しており、充填時、印字時などすべての状態が水頭差による負圧で成り立っている。
【0054】
次に、加圧ポンプ105又は吸引ポンプ106を作動させてプリントヘッド101のクリーニング(回復)を行う為にインクを循環させる回復・回収モードについて説明する。(インクタンク102-aを使用していることとする)
【0055】
回復・回収モードにおける1つの動作順序として、回収弁108を開放状態、循環弁113-aを開放状態、その他を密閉状態とする。
【0056】
この状態で加圧ポンプ105及び吸引ポンプ106を駆動させると、サブタンク103内のインクが加圧ポンプ105を通して、インク回復路114を通過し、プリントヘッド101へ供給される。
【0057】
プリントヘッド101に供給されたインクは、回復弁116に開閉状態により一方ではプリントヘッド101の吐出口より排出され、一方ではインク供給路115・回復弁116を通して、再びサブタンク103に戻される。
【0058】
また、上記のプリントヘッド101の吐出口から排出されたインクは、回復ユニット104で回収され、そのインクは、吸引ポンプ106によりインク回収路107を通って、インク供給路109-a、インク循環路112を通過し、インクタンク102-aにインクを回収(リサイクル)する。
【0059】
回収されたインクは、リサイクルインクとして再びインク供給として使用される。
【0060】
この時、回収により、インク中に塵埃が含まれることがあるので、再びインクタンク102-aに戻すことによって、インク供給でフィルタ111-aを通過するので、リサイクルインクとしてのフィルタを構成する必要がない。
【0061】
次に、2つのインクタンク102-a、102-bからサブタンク103へインクを供給するインク供給モードについて図2を参照しながら詳細に説明する。(インクタンク102-aを使用していることとする)
【0062】
サブタンク103のインク有無は、インク液面センサにより、液面レベルを検知し、サブタンク103内の液面レベルがEMPTY状態になった場合、供給弁110-aを開放状態、供給弁110-cを開放状態、その他を密閉状態にする。
【0063】
この状態で吸引ポンプ106を駆動させると、インクタンク102-a内のインクがインク供給路109-b、インク供給路109-a、インク供給路109-cを通してサブタンク103へ供給される。
【0064】
サブタンク103へ供給されるインクは、常にインクタンク102-a、102-b直後のフィルタ111-aにより安定したインクを供給されるようになる。
【0065】
その後、サブタンク103にインクが供給されることでインク液面レベルがFULL状態に達したことをインク液面センサ(図示せず)により検知した段階で、吸引ポンプ106を停止させ、インク供給モードの動作を終了させる。
【0066】
次に、一方のインクタンクのインク残量が少なくなっていき、もう一方のインクタンクに選択を切り替えるインクタンク切替モードについて図3のフローチャートに基づき、流路図を参照しながら詳細に説明する。
【0067】
インクタンク102-aからインクタンク102-bに切り替えるものとして説明する。
【0068】
インクタンク切替モードは、大きく分けてインク移動モード・インク充填モード・インク切替供給モードの3つのモードを行う。
【0069】
インクタンク切替モードの全体フローは、図3に示す。
インクタンク切替モードは、はじめに通常のインク供給モードより、発生するのでインクタンク指定により、選択されたインクタンク(A)102-aより、インク供給モードでインク供給を行う。
【0070】
インクタンク102-aが、インク残量検知センサにより、インク無しを検知し、インクがある場合は、通常のインク供給モードとなる。
【0071】
インク残量検知センサは、多少多めにインク残量を残しながら、検知させる。インク無しを検知した場合は、その他複数あるインクタンクを選択する。
ここでその他インクが無い場合は、終了とする。
【0072】
本実施例の場合では、インクタンク102-bが選択される。
選択可能である場合、インク移動モードにより、インクタンク102-aの残っているインクをインクタンク102-bに移動する。
【0073】
所定時間後、インク充填モードにより、インクタンク102-bからインクを供給し、再びインクタンク102-bにインクを戻す。
【0074】
これにより、インク流路内を充填させる。所定時間後で、完全に充填できた場合、インク切替供給モードでインクタンクを切替(インクタンク102-aからインクタンク102-b)し、通常のインク供給モードでインク供給を引き続き継続させる。以上が、インクタンク切替モードである。次にインクタンク切替モードについて、詳細に説明する。
【0075】
上記フローチャートのように、はじめにインク供給モードでインク供給を行う。インク供給モードにおける1つの動作順序は、図2を参照に供給弁110-aを開放状態、供給弁110-cを開放状態、その他を密閉状態にする。
【0076】
この状態で吸引ポンプ106を駆動させると、インクタンク102-a内のインクがサブタンク103に供給される。そこでインク供給を行っていき、インクタンク102-a内のインク残量検知がインク無しを検知する。
【0077】
この時、早い段階でインク無しを検知させるので、インクタンク102-aにはまだインクがかなり残っている状態である。実際はまだインクが供給できる範囲内である。
【0078】
インク無しを検知したら、ここでインク移動モードとなる。
インク移動モードは、選択されているインクタンクのインクを吸引できる範囲内(空になり、空気も吸引する状態)で吸引し、インク残量として残っているインクをもう一方のインクタンクに移動するモードである。
【0079】
次に、インク移動モードについて図4を参照しながら詳細に説明する。
インク移動モードにおける1つの動作順序として、供給弁110-aを開放状態、循環弁113-bを開放状態、その他を密閉状態にする。
【0080】
この状態で吸引ポンプ106を駆動させると、選択されているインクタンク102-a内のインクがインク供給路109-b、インク供給路109-a、インク循環路112を通って、もう一方のインクタンク102-b内にインクを移動する。
【0081】
この吸引時間は、残っているインクタンクの量を供給できる時間分だけ行う。上記、所定の時間以上吸引すればよい。この時、インク供給路内は、空気と共にインクを吸引しているので、インクで完全に満たされておらず、泡状態になっている。この状態において、インク充填モードに移行する。
【0082】
次に、インク充填モードについて図5を参照しながら詳細に説明する。
インク充填モードは、インク移動モード時にインク供給路内が、インクで満たされていない為、泡状態でサブタンク103にインク供給を行わないようインク供給路内を完全にインクで満たすようにインクを一時的にインクタンク内に戻してインクを充填させるモードである。
【0083】
インク充填モードにおける1つの動作順序として、供給弁110-bを開放状態、循環弁113-bを開放状態、その他を密閉状態にする。この状態で吸引ポンプ106を駆動させると、インクタンク102-bからインクが吸引され、インク供給路109-b、109-a、インク循環路112を通って、再びインクタンク102-bに戻る。
【0084】
これにより、インク供給時に通るインク供給路内は、すべてインクで満たされるので、サブタンク103に泡が混入しないようになる。
【0085】
このモード時間もインクがインクタンクから出て、インク供給路すべてが満たされるまでの時間以上、行えばよい。この状態において、所定時間後、インク切替供給モードに移行する。
【0086】
次に、インク充填モードについて図6を参照しながら詳細に説明する。
インク切替供給モードは、インク充填モードにより、インク供給路内がインクで満たされた後、選択するインクタンクを切り替えて、通常通りインク供給を行うモードである。
【0087】
インク切替供給モードにおける1つの動作順序として、供給弁110-bを開放状態、供給弁110-cを開放状態、その他を密閉状態にする。
【0088】
この状態で吸引ポンプ106を駆動させると、インク充填モード時でインク供給路内にインクを満たされた後、開閉弁がインク循環からインク供給に切り替えられることによって、インクタンクの切替が行われ、通常通りインク供給が行われる。
【0089】
また、これらのケースは、インクタンク102-bからインクタンク102-aへ移行する逆のケースでも成立し、片方どちらのインクタンクがインク無しを検知した場合、必ずインクタンクの切替を行うので、インクタンク切替モードが発生する。
【0090】
このようにして、サブタンクにインク供給を行う時は、インク供給路中は、インクで完全に満たされている状態になる。
【0091】
以上のように、2つのインクタンクの切替を行うことによって、インク残量を確実に少なくでき、インク供給路中に完全にインクを満たすことができる。また、印刷を途中で中断させることなく、連続的な印字が可能であり、インク残量を無駄なく消費することができる。
【実施例2】
【0092】
実施例1で説明したインク流路構成に、脱気装置を追加した場合、より安定したインクをサブタンクに供給できる。
【0093】
脱気装置は、インク(液体)に含まれる溶存酸素を取り除くための装置であり、インクジェット記録装置では、プリントヘッドにインクを供給する際に気泡(空気)など存在すると、吐出状態が、不安定になる。これにより、不吐を引き起こすことで、画像を形成する部分が悪化することがある。
【0094】
このようなことを防止する為、できるだけインクの溶存酸素量を減らしていくことでより安定した吐出状態を作らせておくことが重要である。
【0095】
その為にインク供給流路中に脱気装置を設置し、より安定したインクを供給させることを目的とする。
【0096】
しかし、脱気装置は、取り除くことのできる溶存酸素量がある割合で決まっていることが多い為、インク流路が泡状態となっているときは、ある割合でしか溶存酸素を取り除くことができず、あまり効果を発揮しない。その為、必ずインク流路中をインクで満たされている状態が望ましい。
【0097】
これにより、本実施例1での流路構成では、脱気装置を設置することでより大きな効果を発揮することができる。
【0098】
ここで脱気装置を追加した場合のインク流路全体概略図を図7に詳細に説明する。
【0099】
脱気装置117は、サブタンク103の直前のインク供給路109-cに設置している。これにより、インク循環路112とインク供給路109-cの分岐でインク供給弁110-cが密閉状態の時には、泡が混入されている状態でもインク供給路109-cに泡が混入することは無い。
【0100】
それにより、インクタンク切替モードにおけるインクの流れで脱気装置117に泡が入ることが無いので、インク供給時は、完全に脱気された状態でサブタンク103にインクが供給される。
【0101】
これにより、脱気装置117を追加した場合には、安定したインクが供給され、最適なインク流路構成となる。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本発明のインク流路全体を表す概略図
【図2】本発明のインク供給モードを表すインク流路全体を表す概略図
【図3】本発明のインクタンク切替モードのフローチャート
【図4】本発明のインク移動モードを表すインク流路全体を表す概略図
【図5】本発明のインク充填モードを表すインク流路全体を表す概略図
【図6】本発明のインク切替供給モードを表すインク流路全体を表す概略図
【図7】本発明の脱気装置を追加した場合のインク流路全体を表す概略図
【符号の説明】
【0103】
101 プリントヘッド
102 インクタンク(102-a、102-b)
103 サブタンク
104 回復ユニット
105 加圧ポンプ
106 吸引ポンプ
107 インク回収路
108 回収弁
109 インク供給路(109-a、109-b、109-c)
110 供給弁(110-a、110-b、110-c)
111 フィルタ
112 インク循環路
113 循環弁(113-a、113-b)
114 インク回復路
115 インク供給路
116 回復弁
117 脱気装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体にインクを吐出して画像を形成する記録ヘッドと、前記記録ヘッドにインクを供給するサブタンクと、前記サブタンクにインクを供給するためのインクを収納する複数のインクタンクと吸引ポンプを有し、その各インクタンクにはインクの残量を検知するインク残量検知手段を備えているインクジェット記録装置において、第1のインクタンクのインク残量検知手段でインク無しと検知された時の残インクを第2のインクタンクに移動する移動手段を有することを特徴とするインク供給システム。
【請求項2】
前記移動手段は、前記第1のインクタンクのインク残量検知手段がインク無しを検知したら、所定時間後に、第2のインクタンクに残インクが移動されることを特徴とする請求項1に記載のインク供給システム。
【請求項3】
前記第1のインクタンクからのインクが移動完了後、第2のインクタンクのインクをサブタンクへのインク流路を含む第2のインクタンク循環経路で循環することを特徴とする請求項1、2に記載のインク供給システム。
【請求項4】
インクタンク切替手段により、インク供給が第2のインクタンクに切り替えが完了したら、第1のインクタンクの交換が可能であることがインクジェット記録装置の表示部に表示されることを特徴とする請求項1,2,3に記載のインク供給システム。
【請求項5】
前記第1のインクタンクから第2へのインクタンク切替は、その他のどのインクタンクから選択しても可能であることを特徴とする請求項1〜4に記載のインク供給システム。
【請求項6】
請求項6の発明は、請求項1〜5のインク供給システム具備したインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−261237(P2007−261237A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−93353(P2006−93353)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(000208743)キヤノンファインテック株式会社 (1,218)
【Fターム(参考)】