説明

インクジェット記録装置及びインクジェット記録方法

【課題】後に着弾したインク滴が先に着弾したインク滴に引き寄せられる現象に起因するインク分布の偏りを解消することができるインクジェット記録装置及びインクジェット記録方法を提供する。
【解決手段】透明基板14上に隔壁40で囲まれた打滴領域42が着弾した複数のインク滴で満たされるように、打滴領域42に複数のインク滴を1滴ずつ順次に走査方向に連ねて着弾させた際に、当該複数のインク滴からなるインク滴群の重心の位置が、インク滴が混合することにより後に着弾したインク滴が先に着弾したインク滴に引き寄せられる距離αだけ打滴領域42の中心から走査方向に離れた位置になるように透明基板14に対してヘッドを相対移動させながらヘッドからインク滴を吐出させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置及びインクジェット記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カラー液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどで用いられるカラーフィルタを製造する技術として、隔壁によりマトリクス状に配列された複数の枠に区分された透明基板とノズル孔を備えたインクジェットヘッドとを相対的に走査させて、顔料や染料などの色素を含むインクを枠より内側に複数のインク滴としてノズル孔から打滴する技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2001−154008号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1の技術では、図8に示すように、透明基板上に隔壁で形成された略矩形状の枠より内側がインクで満たされるように当該枠より内側に複数のインク滴を1滴ずつ順次に一方向に連ねて着弾させた際の当該複数のインク滴からなるインク滴群の重心の位置が枠の長手方向の中心に位置するように複数のインク滴を枠より内側に打滴した場合(図8(a))、先行着弾したインクが乾燥する前にその拡がった領域内に後続のインク滴が着弾すると、インク滴が透明基板上で混合し表面張力により表面積を最小化する力が働き、後に着弾したインク滴が先に着弾したインク滴に引き寄せられる現象が発生するため、領域内のインク分布は各打滴の平均位置より先行着弾側に変化し(図8(b))、インク分布が偏ってしまう、という問題点があった。また、当該インクの分布の偏りはインクが固化した後も残る、という問題点もあった。
【0004】
本発明は上記問題点を解決するために成されたものであり、後に着弾したインク滴が先に着弾したインク滴に引き寄せられる現象に起因するインク分布の偏りを解消することができるインクジェット記録装置及びインクジェット記録方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1に記載のインクジェット記録装置は、インク滴を吐出する吐出手段と、記録媒体上の隔壁で囲まれた領域が着弾した複数のインク滴で満たされるように、前記吐出手段から当該領域に前記複数のインク滴を1滴ずつ順次に一方向に連ねて着弾させた際に、当該複数のインク滴からなるインク滴群の重心の位置が、インク滴が混合することにより後に着弾したインク滴が先に着弾したインク滴に引き寄せられる距離だけ前記領域の中心から前記一方向に離れた位置になるように前記記録媒体及び前記吐出手段の少なくとも一方を相対移動させながら前記吐出手段からインク滴を吐出させる制御を行う制御手段と、を含んで構成されている。
【0006】
請求項1に記載のインクジェット記録装置によれば、吐出手段により、インク滴が吐出され、制御手段により、記録媒体上の隔壁で囲まれた領域が着弾した複数のインク滴で満たされるように、前記吐出手段から当該領域に前記複数のインク滴を1滴ずつ順次に一方向に連ねて着弾させた際に、当該複数のインク滴からなるインク滴群の重心の位置が、インク滴が混合することにより後に着弾したインク滴が先に着弾したインク滴に引き寄せられる距離だけ前記領域の中心から前記一方向に離れた位置になるように前記記録媒体及び前記吐出手段の少なくとも一方を相対移動させながら前記吐出手段からインク滴を吐出させる制御が行われる。
【0007】
このように、本発明によれば、記録媒体上の隔壁で囲まれた領域が着弾した複数のインク滴で満たされるように当該領域に当該複数のインク滴を1滴ずつ順次に一方向に連ねて着弾させた際の当該複数のインク滴からなるインク滴群の重心の位置を、インク滴が混合することにより後に着弾したインク滴が先に着弾したインク滴に引き寄せられる距離だけ領域の中心から一方向に離れた位置にしているので、後に着弾したインク滴が先に着弾したインク滴に引き寄せられる現象に起因するインク分布の偏りを解消することができる。
【0008】
なお、請求項1に記載のインクジェット記録装置は、請求項2に記載の発明のように、前記記録媒体が透明基板であり、前記領域を略矩形状として、前記透明基板上にマトリクス状に配置したものとしてもよい。これにより、インク分布が均一化されたカラーフィルタを製造することができる。
【0009】
また、請求項1または請求項2に記載のインクジェット記録装置は、請求項3に記載の発明のように、前記隔壁を、インクを弾く撥液材で構成したものとしてもよい。これにより、隔壁より内側の領域にインクを留めておくことができる。
【0010】
また、請求項1または請求項2に記載のインクジェット記録装置は、請求項4に記載の発明のように、前記隔壁の側面が親液性であり、前記隔壁の上面が当該側面よりも撥液傾向にあるものとしてもよい。これにより、側壁より内側の領域にインクを留めておくことができる。
【0011】
一方、上記目的を達成するために、請求項5に記載のインクジェット記録方法は、記録媒体上の隔壁で囲まれた領域が着弾した複数のインク滴で満たされるように、吐出手段から当該領域に当該複数のインク滴を1滴ずつ順次に一方向に連ねて着弾させた際に、当該複数のインク滴からなるインク滴群の重心の位置が、インク滴が混合することにより後に着弾したインク滴が先に着弾したインク滴に引き寄せられる現象を打ち消すものとして予め定められた距離だけ前記一方向に移動した位置となるように前記記録媒体及び前記吐出手段の少なくとも一方を相対移動させながら前記吐出手段からインク滴を吐出させるものである。
【0012】
従って、本発明のインクジェット記録方法によれば、請求項1に記載の発明と同様に作用するので、請求項1に記載の発明と同様に、後に着弾したインク滴が先に着弾したインク滴に引き寄せられる現象に起因するインク分布の偏りを解消することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、後に着弾したインク滴が先に着弾したインク滴に引き寄せられる現象に起因するインク分布の偏りを解消することができる、という効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。なお、本実施形態では、本発明に係るインクジェット記録装置を用いてカラーフィルタを製造する場合を例に挙げて説明する。
【0015】
図1は、本実施形態に係るインクジェット記録装置10の要部構成を示す構成図である
【0016】
同図に示されるようにインクジェット記録装置10は、レッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)の各インクに対応して設けられ、対応する色のインク滴を吐出する複数のインクジェット記録ヘッド(以下、ヘッドという。)12と、記録媒体たる透明基板14が載置される載置台16と、ヘッド12に接続され、ヘッド12を同図の矢印方向(以下、「走査方向」ともいう。)に沿って移動させるための動力を発生するモータ18と、を含んで構成されている。
【0017】
ヘッド12は、インクを吐出する吐出口であるノズル12Aと、ノズル12Aに対応する圧力室等からなるインク室ユニット(液滴吐出素子)20と、を備えている。また、載置台16は、カラーフィルタの基礎となる透明基板14を基準位置に固定する機構(図示省略)を備えている。なお、同図では、錯綜を回避するためにヘッド12を1つだけ図示している。
【0018】
図2は、1つの液滴吐出素子(1つのノズル12Aに対応したインク室ユニット)20の立体的構成を示す断面図である。
【0019】
同図に示されているように、ノズル12Aに対応して設けられている圧力室22は、その平面形状が概略正方形となっており、対角線上の両隅部の一方にノズル12Aへの流出口が設けられ、他方に供給インクの流入口(供給口)24が設けられている。なお、圧力室22の形状は、本例に限定されず、平面形状が四角形(菱形、長方形など)、五角形、六角形その他の多角形、円形、楕円形など、多様な形態があり得る。
【0020】
圧力室22は供給口24を介して流路26と連通されている。流路26はインク供給源たるインクタンク(図示省略)と連通しており、インクタンクから供給されるインクは流路26を介して圧力室22に供給される。
【0021】
圧力室22の一部の面(図2において天面)を構成している加圧板(共通電極と兼用される振動板)28には個別電極30を備えたアクチュエータ32が接合されている。個別電極30と共通電極間に駆動電圧を印加することによってアクチュエータ32が変形して圧力室22の容積が変化し、これに伴う圧力変化によりノズル12Aからインクが吐出される。なお、アクチュエータ32には、チタン酸ジルコン酸鉛やチタン酸バリウムなどの圧電体を用いた圧電素子が好適に用いられる。インク吐出後、アクチュエータ32の変位が元に戻る際に、流路26から供給口24を通って新しいインクが圧力室22に再充填される。
【0022】
従って、本実施形態に係るインクジェット記録装置10では、画像情報から生成されるドット配置データに応じてノズル12Aに対応したアクチュエータ32の駆動を制御することにより、ノズル12Aからインク滴(液滴)を吐出させることができる。
【0023】
図3は、透明基板14上のインク滴が打滴される側の構成を示す図である。
【0024】
同図に示されるように、透明基板14上は、隔壁40で囲まれた複数の略矩形状の打滴領域42に区分されており、当該複数の打滴領域42はマトリクス状に配置されている。打滴領域42は、走査方向が長手方向とされ、走査方向と直交する方向が短手方向とされている。なお、本実施形態では、透明基板14として、透明ガラス基板を適用しているが、これに限らず、アクリルガラス、プラスチック基板、プラスチックフィルムも適用可能である。また、本実施形態では、隔壁40の厚みを2μm、打滴領域42の長手方向の長さを300μm、打滴領域42の短手方向の長さを100μmとしているが、これらの値は適宜変更可能である。また、本実施形態では、隔壁40を透光性を有しない樹脂(一例として黒色の樹脂)で構成している。このように、隔壁40は、インクを弾く撥液材で構成された透光性を有しないものであることが好ましい。
【0025】
図4は、本実施形態に係るインクジェット記録装置10の電気系の要部構成を示すブロック図である。
【0026】
同図に示されるように、インクジェット記録装置10は、ヘッド12、モータ18、通信インタフェース50、システムコントローラ52、画像メモリ54、ROM(Read Only Memory)56、モータドライバ58及びプリント制御部60を含んで構成されている。
【0027】
システムコントローラ52には、通信インタフェース50、画像メモリ54、ROM56、モータドライバ58及びプリント制御部60が接続されている。
【0028】
通信インタフェース50は、ユーザがインクジェット記録装置10に対して描画の指示等を行うため等に用いられるホスト装置62とのインタフェース部である。通信インタフェース50にはUSB(Universal Serial Bus)、IEEE1394、イーサネット(登録商標)、無線ネットワークなどのシリアルインタフェースやセントロニクスなどのパラレルインタフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(図示省略)を搭載しても良い。
【0029】
ホスト装置62から送出された、透明基板14に形成すべき画像を示す画像情報は通信インタフェース50を介してインクジェット記録装置10に取り込まれ、一旦画像メモリ54に記憶される。画像メモリ54は、通信インタフェース50を介して入力された画像情報を記憶する記憶手段であり、システムコントローラ52を通じてデータの読み書きが行われる。画像メモリ54は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
【0030】
システムコントローラ52は、CPU(中央演算処理装置)及びその周辺回路等から構成され、所定のプログラムに従ってインクジェット記録装置10の全体を制御する制御装置として機能するとともに、各種演算を行う演算装置として機能する。すなわち、システムコントローラ52は、通信インタフェース50、画像メモリ54、ROM56、モータドライバ58、プリント制御部60等の各部を制御し、ホスト装置62との間の通信制御、画像メモリ54及びROM56の読み書き制御等を行うと共に、モータ18の駆動を制御する制御信号を生成する。なお、プリント制御部60に対しては、制御信号の他に、画像メモリ54に記憶された画像情報を送信する。
【0031】
また、ROM56には、システムコントローラ52が実行するプログラム及び制御に必要な各種データなどが格納されている。ROM52は、書換不能な記憶手段であってもよいが、各種のデータを必要に応じて更新する場合は、EEPROMのような書換可能な記憶手段を用いることが好ましい。
【0032】
画像メモリ54は、画像情報の一時記憶領域として利用されるとともに、プログラムの展開領域及びシステムコントローラ52の演算作業領域としても利用される。
【0033】
モータドライバ58は、システムコントローラ52からの指示に従ってモータ18を駆動するドライバ(駆動回路)である。プリント制御部60は、システムコントローラ52の制御に従い、システムコントローラ52から送信された画像情報から吐出制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理手段として機能するとともに、生成したインク吐出データに基づいてヘッド12の吐出駆動を制御する。
【0034】
ところで、本実施形態に係るインクジェット記録装置10では、カラーフィルタの製造開始の指示が入力されると、カラーフィルタの画素を形成するために、透明基板14上の各打滴領域42に対して、各打滴領域42がインクで満たされるように複数のインク滴を1滴ずつ順次に走査方向に連ねて着弾させるように制御を行う打滴制御処理が実行される。
【0035】
以下、図5を参照して上記打滴制御処理が実行される際のインクジェット記録装置10の作用を説明する。なお、図5は、その際にシステムコントローラ52によって実行される打滴制御処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートであり、当該プログラムはROM56の所定領域に予め記憶されている。
【0036】
同図のステップ100では、モータ18を駆動させることによりヘッド12を走査方向に移動させ、次のステップ102では、図6に示すように、透明基板14上の打滴領域42がインクで満たされるように打滴領域42に複数のインク滴を1滴ずつ順次に走査方向に連ねて着弾させた際に当該複数のインク滴からなるインク滴群の重心の位置が、インク滴が混合することにより後に着弾したインク滴が先に着弾したインク滴に引き寄せられる距離αだけ打滴領域42の中心から走査方向に離れた位置となるための打滴開始位置にノズル12Aが到達するまで待機する。
【0037】
なお、本実施形態では、上記距離αとして、透明基板14上の打滴領域42が着弾した複数のインク滴で満たされるように打滴領域42に当該複数のインク滴を1滴ずつ順次に走査方向に連ねて着弾させた際に、当該複数のインク滴からなるインク滴群の重心の位置が、インク滴が混合することにより後に着弾したインク滴が先に着弾したインク滴に引き寄せられる距離として、インクジェット記録装置10の実機による実験によって予め得られた値を適用しているが、これに限らず、インクジェット記録装置10の設計仕様に基づくコンピュータ・シミュレーション等によって予め得られた値等を適用してもよい。
【0038】
次のステップ104では、インク滴の吐出を開始させるようにヘッド12を制御し、次のステップ106では、カラーフィルタの良好な画素を形成するものとして予め定められた数のインク滴の吐出が終了するまで待機する。
【0039】
次のステップ108では、インク滴の吐出を停止するようにヘッド12を制御し、本打敵制御処理プログラムを終了する。
【0040】
なお、打滴制御処理による透明基板14の全ての打滴領域42に対しての打滴が終了した後、加熱によりインクの溶媒を蒸発させ、モノマー成分をポリマー化することにより、各打滴領域42におけるインク分布が均一化されたカラーフィルタを得ることができる。
【0041】
以上詳細に説明したように、本実施形態に係るインクジェット記録装置10によれば、インク滴を吐出するヘッド12と、透明基板14上に隔壁40で囲まれた打滴領域42が着弾した複数のインク滴で満たされるように、ヘッド12から打滴領域42に当該複数のインク滴を1滴ずつ順次に走査方向に連ねて着弾させた際に、当該複数のインク滴からなるインク滴群の重心の位置が、インク滴が混合することにより後に着弾したインク滴が先に着弾したインク滴に引き寄せられる距離αだけ打滴領域42の中心から走査方向に離れた位置になるように透明基板14に対してヘッド12を相対移動させながらヘッド12からインク滴を吐出させる制御を行うシステムコントローラ52と、を備えているので、後に着弾したインク滴が先に着弾したインク滴に引き寄せられる現象に起因するインク分布の偏りを解消することができる。
【0042】
また、本実施形態に係るインクジェット記録装置10によれば、打滴領域42を略矩形状として、透明基板14上にマトリクス状に配置しているので、インク分布が均一化されたカラーフィルタを製造することができる。
【0043】
また、本実施形態に係るインクジェット記録装置10によれば、隔壁40を、インクを弾く撥液材(ここでは、樹脂)で構成したので、打滴領域42にインクを留めておくことができる。
【0044】
以上、本発明を上記実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。発明の主旨を逸脱しない範囲で上記実施形態に多様な変更または改良を加えることができ、当該変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0045】
また、上記実施形態は、特許請求の範囲に記載された発明を限定するものではなく、また、上記実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。上記実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における状況に応じた組み合わせにより種々の発明を抽出できる。上記実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、効果が得られる限りにおいて、この幾つかの構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【0046】
例えば、上記実施形態では、1つのノズル12Aで打滴領域42に複数滴のインクを吐出する場合の形態例を挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、一例として図7に示すように、透明基板14上の打滴領域42が着弾した複数のインク滴で満たされるように打滴領域42に当該複数のインク滴を1滴ずつ順次に走査方向に連ねて着弾させた際に、当該複数のインク滴からなるインク滴群の重心の位置が、インク滴が混合することにより後に着弾したインク滴が先に着弾したインク滴に引き寄せられる距離αだけ打滴領域42の中心から走査方向に離れた位置となるように、複数のノズル70Aを有するラインヘッド70を走査方向に対して直交しない一定の角度θだけ傾けて打滴領域42に対してワンパスで走査する形態としてもよい。
【0047】
また、上記実施形態では、透明基板14に対してヘッド12を相対移動させながらヘッド12からインク滴を吐出させる場合の形態例を挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、ヘッド12に対して透明基板14を相対移動させながらヘッド12からインク滴を吐出させてもよいし、ヘッド12及び透明基板14を共に移動させながらヘッド12からインク滴を吐出させてもよい。このように、ヘッド12及び透明基板14の少なくとも一方を相対移動させながらヘッド12からインク滴を吐出させればよい。
【0048】
また、上記実施形態では、隔壁40を、インクを弾く撥液材で構成したが、隔壁40の側面を親液材で構成し、隔壁40の上面を当該側面よりも撥液傾向にある撥液材で構成してもよい。これにより、打滴領域42にインクを留めておくことができる。この場合、隔壁40の側面を構成する親液材としては、インク滴が側壁40の側面に接触したときの接触角が約5度となるものを採用し、隔壁40の上面を構成する撥液材としては、インク滴が隔壁40の上面に接触したときの接触角が40度以上となるものを採用することが好ましい。
【0049】
また、上記実施形態で説明したインクジェット記録装置10の構成(図1,2,4を参照。)は一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において状況に応じて変更可能であることは言うまでもない。
【0050】
また、上記実施形態で説明したプログラムの処理の流れ(図5を参照。)も一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ替えたりすることができることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】実施形態に係るインクジェット記録装置の要部構成を示す構成図である。
【図2】実施形態に係るインクジェット記録装置における1つの液滴吐出素子の立体的構成を示す断面図である。
【図3】実施形態に係る透明基板上のインク滴が打滴される側の構成を示す図である。
【図4】実施形態に係るインクジェット記録装置の電気系の要部構成を示すブロック図である。
【図5】実施形態に係る打滴制御処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】実施形態に係る打滴領域に着弾したインク滴群の状態の一例を示す図であり、(a)は平面図であり、(b)は側面視断面図である。
【図7】インクの打滴形態の他の例を示す図であり、(a)は本発明を適用していない場合の形態例を示す図であり、(b)は本発明を適用した場合の形態例を示す図である。
【図8】従来技術の問題点を説明するための図であり、(a)は平面図であり、(b)は側面視断面図である。
【符号の説明】
【0052】
10 インクジェット記録装置
12 ヘッド(吐出手段)
14 透明基板(記録媒体)
40 隔壁
42 打滴領域(領域)
52 システムコントローラ(制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク滴を吐出する吐出手段と、
記録媒体上の隔壁で囲まれた領域が着弾した複数のインク滴で満たされるように、前記吐出手段から当該領域に前記複数のインク滴を1滴ずつ順次に一方向に連ねて着弾させた際に、当該複数のインク滴からなるインク滴群の重心の位置が、インク滴が混合することにより後に着弾したインク滴が先に着弾したインク滴に引き寄せられる距離だけ前記領域の中心から前記一方向に離れた位置になるように前記記録媒体及び前記吐出手段の少なくとも一方を相対移動させながら前記吐出手段からインク滴を吐出させる制御を行う制御手段と、
を含むインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記記録媒体は透明基板であり、
前記領域を略矩形状として、前記透明基板上にマトリクス状に配置した請求項1記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記隔壁を、インクを弾く撥液材で構成した請求項1または請求項2記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記隔壁の側面は親液性であり、前記隔壁の上面は当該側面よりも撥液傾向にある請求項1または請求項2記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
記録媒体上の隔壁で囲まれた領域が着弾した複数のインク滴で満たされるように、吐出手段から当該領域に当該複数のインク滴を1滴ずつ順次に一方向に連ねて着弾させた際に、当該複数のインク滴からなるインク滴群の重心の位置が、インク滴が混合することにより後に着弾したインク滴が先に着弾したインク滴に引き寄せられる現象を打ち消すものとして予め定められた距離だけ前記一方向に移動した位置となるように前記記録媒体及び前記吐出手段の少なくとも一方を相対移動させながら前記吐出手段からインク滴を吐出させるインクジェット記録方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−75812(P2010−75812A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−245477(P2008−245477)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】