説明

インクジェット記録装置

【課題】目詰り予防吐出にかかる時間を短縮するとともに、多数の記録媒体に連続的に記録を行っても、目詰り予防吐出のタイミングを遅延させることなく、記録にかかる時間を短縮する。
【解決手段】搬送ベルトV上に載置されて搬送される記録媒体Pの記録面PPに対向して配設され、インク滴を吐出するノズルの複数を記録媒体Pの搬送方向とは交差する方向に配列して構成される記録領域を有する固定ヘッドHD1〜HD5を備えたインクジェット記録装置であって、
搬送ベルトVは、搬送ベルトVが一周する間に所定のタイミングで固定ヘッドHD1〜HD5に対向する目詰り予防吐出用開口WD1〜WD5が形成され、
記録媒体Pは、搬送ベルトV上で目詰り予防吐出用開口WD1〜WD5にかからないように載置されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定記録ヘッドを備えたインクジェット記録装置に関し、特に、インクが吐出されるノズルの目詰りの予防に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ノズルからインク滴を吐出して記録媒体に記録を行うインクジェット記録装置における記録速度の高速化の要望から、多数のノズルが記録媒体の幅以上の長さに亘って配列されたライン型の記録ヘッド(以下、ラインヘッドという)を備えたインクジェット記録装置(以下、ラインヘッド型インクジェット記録装置という)が実用化されている。
このラインヘッド型インクジェット記録装置では、記録媒体は、記録される面がラインヘッドのノズルが形成された面に対向して連続的又は間欠的に搬送される。また、ラインヘッドは、搬送されてくる記録媒体の記録される面に向けて、配列された多数のノズルの中から記録すべき情報に基づいて選択的にインク滴を吐出する。つまり、ラインヘッド型インクジェット記録装置は、記録ヘッドの移動をともなわず、記録媒体を一方向に移動させるだけでその記録媒体に対する記録を完了するものである。以降、本明細書においては、記録ヘッドの移動をともなわず、記録媒体の移動のみで記録を完了するインクジェット記録装置をラインヘッド型インクジェット記録装置と総称する。
【0003】
ラインヘッド型に限らず、インクジェット記録装置の記録ヘッドにおいては、インク滴が吐出されるノズルからインクの溶媒が蒸発してノズル内のインクの粘度が上昇してしまい、最悪の場合には固化してしまったり、ノズル内に異物が侵入してしまったりしてノズルの目詰りが発生し、ノズルからインク滴を吐出する性能が低下してしまうことがある。そこで、インクジェット記録装置は、ノズル内のインク粘度の上昇や目詰りによって吐出性能が低下してしまう前に、記録とは関係なくインク滴を吐出して目詰りを予防する目詰り予防吐出を行い、良好な記録品質が維持されるように構成されている。
【0004】
上記ラインヘッド型インクジェット記録装置においては、従来、一対の搬送ローラ間にかけ渡されて記録媒体を搬送する搬送ベルトに複数の穴を形成し、これら複数の穴を通してインク滴を吐出することにより、多数の記録媒体に連続的に記録を行っても、目詰り予防吐出が記録完了までの時間を長期化してしまうことを回避する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−113690号公報(第6頁、図2及び図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の従来技術では、インク滴が通過する複数の穴が数箇所に設けられている。つまり、記録の際に、記録媒体がいずれかの穴にかかって載置されることになり、記録媒体の穴にかかっている部位では、記録媒体が撓んでしまう。従って、記録媒体の搬送ベルト上に載置されている部位と穴にかかっている部位とでは、記録ヘッドからの距離が不均一になり、吐出されたインク滴の着弾位置がずれてしまい、良好な記録品質を得ることが困難であるという未解決の課題がある。
【0006】
また、上記特許文献1の従来技術では、インク滴が通過する複数の穴は、用紙の搬送方向に所定の間隔を有して搬送ベルトに設けられている。つまり、搬送ベルトの複数の穴は、搬送ベルトの回転にともなって、一つの記録ヘッドのノズルに順次対向するようになっている。従って、一つの記録ヘッドのすべてのノズルから一時にインク滴を吐出させることができず、一つの記録ヘッドの目詰り予防吐出にかかる時間を短縮することが困難であるという未解決の課題がある。
【0007】
また、上記特許文献1の従来技術では、多数の記録媒体に対して連続して記録を行っている状態で目詰り予防吐出が必要になると、搬送ベルトの複数の穴の上に用紙が存在しないことを確認して目詰り予防吐出を行わなければならない。従って、搬送ベルトの複数の穴の上に用紙が存在していると、目詰り予防吐出のタイミングが遅延してしまうという未解決の課題がある。この課題に対しては、目詰り予防吐出が必要になった時点で、搬送ベルトへの記録媒体の供給を中断させるようにすればよいが、多数の記録媒体にかかる記録時間が遅延してしまうことになる。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、良好な記録品質が得られ、目詰り予防吐出にかかる時間を短縮することができるとともに、多数の記録媒体に連続的に記録を行っても、目詰り予防吐出のタイミングを遅延させることなく、記録にかかる時間を短縮することが可能なインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係る第1の発明は、搬送ベルト上に載置されて搬送される記録媒体の搬送面とは反対側の面である記録面に対向して配設され、インク滴を吐出するノズルの複数を前記記録媒体の搬送方向とは交差する方向に配列して構成される記録領域を有する固定ヘッドを備えたインクジェット記録装置であって、前記搬送ベルトは、該搬送ベルトが一周する間に所定のタイミングで前記固定ヘッドに対向する目詰り予防吐出用開口が形成され、前記記録媒体は、前記搬送ベルト上で前記目詰り予防吐出用開口にかからないように載置されることを特徴とするインクジェット記録装置を提供する。
【0010】
上記により、記録媒体が搬送ベルト上で目詰り予防吐出用開口にかからないように載置されるため、記録ヘッドから記録媒体までの距離を均一にすることができる。また、複数の記録媒体に連続して記録を行っても、一つの記録媒体への記録が終了するごとに、目詰り予防吐出用開口を固定ヘッドに対向させることが可能となる。
また、第2の発明は、第1の発明において、前記目詰り予防吐出用開口の前記搬送方向に対する位置を検出する開口位置検出手段と、該開口位置検出手段によって検出される前記位置が前記記録媒体の供給位置より下流側となるタイミングで、前記記録媒体を前記搬送ベルト上に供給する記録媒体供給手段とを備えていることを特徴とするインクジェット記録装置を提供する。
【0011】
上記により、目詰り予防吐出用開口の搬送方向における位置を検出することができるとともに、この位置が記録媒体の供給位置を越えて記録媒体が目詰り予防吐出用開口にかからない状態で、記録媒体を搬送ベルト上に供給することができる。
また、第3の発明は、第2の発明において、前記開口位置検出手段は、前記搬送ベルトの一側縁に形成したインデックス部と、該インデックス部を検出するインデックスセンサーとで構成されていることを特徴とするインクジェット記録装置を提供する。
【0012】
上記により、インデックスセンサーが検出するインデックス部を搬送ベルトの一側縁に形成するため、記録媒体の搬送を妨げることなく開口位置検出手段を構成することが可能となる。
また、第4の発明は、第3の発明において、前記インデックスセンサーは、発光素子と受光素子とを備えた光学式センサーで構成されることを特徴とするインクジェット記録装置を提供する。
【0013】
上記により、前記搬送ベルトに形成したインデックス部を非接触で検出することが可能となる。
また、第5の発明は、第1乃至第4のいずれか一の発明において、前記固定ヘッドは、複数の前記ノズルを所定の長さに亘って配列形成した複数の記録ヘッドを、前記記録媒体の搬送方向とは交差する方向に並べて配設した構成を有し、前記目詰り予防吐出用開口は、前記複数の記録ヘッドの少なくとも一つに対向する開口部を、前記記録領域を構成する前記複数の記録ヘッドに前記所定のタイミングで同時に対向するように、前記搬送方向とは交差する方向に複数配列形成して構成されることを特徴とするインクジェット記録装置を提供する。
【0014】
上記の構成によれば、搬送ベルトに形成された複数の開口部を、記録領域を構成する複数の記録ヘッドに同じタイミングで対向させることが可能となる。
上記により、記録領域を構成する複数の記録ヘッドが複数の開口部に対向している状態で、これら複数の記録ヘッドのすべてのノズルから同じタイミングで吐出されたインク滴が、搬送ベルトの記録媒体を載置する面に付着することなく、複数の開口部を通過することが可能となる。
【0015】
また、第6の発明は、第5の発明において、前記開口部は、前記記録領域を構成する前記複数の記録ヘッドごとに設けられることを特徴とするインクジェット記録装置を提供する。
上記により、複数の記録ヘッドによって構成される記録領域の記録ヘッドごとに開口を対向させることができるため、記録とは無関係にインク滴を吐出する目詰り予防吐出を記録ヘッドごとに制御して実施させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
本発明の実施形態におけるインクジェット記録装置1は、平面図である図1(a)に示すように、ゲートローラGRと、静電気付与部ECと、用紙搬送部CVと、記録ヘッドHD1〜HD5と、排紙部EJと、を備えている。また、このインクジェット記録装置1は、正面図である図1(b)に示すように、後述する搬送ベルトVの内側にインク吸収部PDを備えている。
【0017】
ここで、上記の各構成の詳細を説明する。
用紙搬送部CVは、図1(a)に示すように、搬送部駆動モーターM0から動力が伝達される駆動軸DSと、この駆動軸DSに平行且つ駆動軸DSの上流側に配設される従動軸FSと、駆動軸DS及び従動軸FSにかけ渡される搬送ベルトVと、駆動軸DS及び従動軸FSのそれぞれを回転可能に図示しない筐体に保持する軸受BRと、を備えている。
【0018】
ここで、従動軸FSは、図示しないが、駆動軸DSとの間にかけ渡される搬送ベルトVに緩みが発生しないように張力を付与するため、上流方向に力が付与されている。
そして、搬送ベルトVは、搬送部駆動モーターM0の動力によって、図1(b)で見て反時計方向に回転され、搬送ベルトV上に載置された記録用紙Pを搬送方向であるX方向に搬送する。
【0019】
この搬送ベルトVには、図1(a)に示すように、各記録ヘッドHD1〜HD5に対応した開口部WD1〜WD5が設けられている。これらの開口部WD1〜WD5は、開口の形状及び面積が同等に設定され、記録ヘッドHD1及びHD2のそれぞれに対応する開口部WD1及びWD2が間隔Wを有して、X方向に直交する方向であるY方向に隣り合って設けられている。そして、開口部WD1及びWD2のX方向の下流側に、記録ヘッドHD3、HD4及びHD5のそれぞれに対応する開口部WD3、WD4及びWD5が、Y方向にこれら開口部同士の間に間隔Wを有して隣り合い、且つ開口部WD1及びWD2とはY方向に交互に設けられている。
【0020】
各開口部WD1〜WD5は、搬送ベルトVが搬送部駆動モーターM0の動力によって1回転する間に、各記録ヘッドHD1〜HD5に所定のタイミングで同時に対向するように設けられている。
また、用紙搬送部CVは、搬送ベルトVの回転を制御するための基準となるインデックス信号を出力するインデックスセンサーISを備えている。
【0021】
このインデックスセンサーISは、例えば、フォトインタラプタ等の発光素子及び受光素子を備えた光学式センサーで構成され、搬送ベルトVに設けられているインデックス部IDを検出し、記録用紙Pを搬送ベルトV上に供給するタイミングや、後述する目詰り予防吐出のタイミングなどを計るきっかけとなるインデックス信号を出力する。
そして、記録用紙Pを搬送ベルトV上に供給する際には、記録用紙Pが開口部WD1〜WD5にかからないように、インデックスセンサーISからインデックス信号が出力されてから所定時間を経過した後に供給する。
【0022】
記録ヘッドHD1〜HD5は、図1(a)に示すように、Y方向に間隔Hを有して隣り合う記録ヘッドHD1及びHD2のX方向の下流側に、記録ヘッドHD3〜HD5が、Y方向にこれら記録ヘッド同士の間に間隔Hを有して且つ記録ヘッドHD1及びHD2とはY方向に交互に、整列して配設されている。
また、これら記録ヘッドHD1〜HD5は、図1(b)に示すように、それぞれ用紙搬送部CV上で、インク滴が吐出されるノズルを記録用紙Pの記録面PPに向けて配設されている。
【0023】
ここで、記録ヘッドHD1〜HD5に設けられているノズルの配列について説明する。なお、記録ヘッドHD1〜HD5は、説明の便宜上、異なる符号を付してあるが、同一のものであり、ここでは、記録ヘッドHD1を例に説明する。
図2は、記録ヘッドHD1の外観を示す図であり、図2(a)は、図1(a)中のA視方向正面図であり、図2(b)は、底面図である。なお、この図2において、ノズルをわかりやすく示すため、ノズルの大きさを誇張して且つ個数を減じて図示している。
【0024】
記録ヘッドHD1は、図2(b)に示すように、イエロー色のインクが吐出されるイエローノズルNZY、マゼンタ色のインクが吐出されるマゼンタノズルNZM、シアン色のインクが吐出されるシアンノズルNZC及びブラック色のインクが吐出されるブラックノズルNZKを備えている。
各色のノズルNZY、NZM、NZC、NZKは、X方向に配列形成されるとともに、Y方向に配列距離LNに亘って配列形成されてイエローノズル列NZYL、マゼンタノズル列NZML、シアンノズル列NZCL及びブラックノズル列NZKLを構成する。これら各色ノズル列NZYL、NZML、NZCL、NZKLの配列距離LNが記録ヘッドHD1の記録幅となる。
【0025】
そして、図1(a)に示す記録ヘッドHD1及びHD2をX方向に平行移動させ、記録ヘッドHD1、HD2、HD3、HD4及びHD5をY方向に整列させると、図3に示すように、記録ヘッドHD1〜HD5の各色ノズル列NZYL、NZML、NZCL、NZKLがY方向に整列し、各色1本のノズル列を構成する。この図3において、記録ヘッドHD1及びHD2を二点鎖線で示している。
【0026】
ここで、上述した記録ヘッド同士の間隔Hは、ノズルの配列距離LNとの関係がH<LNであり、且つ記録ヘッドHD1及びHD2と記録ヘッドHD3〜HD5とのY方向の端部のノズルの位置がX方向から見て重なるように設定されている。つまり、これら各色1本のノズル列は、ノズルの配列距離LNが記録ヘッドHD1〜HD5の個数分(ここでは、5個分)Y方向に整列した距離に亘る記録領域を構成する。
【0027】
なお、記録ヘッドHD1〜HD5としては、圧電素子、加熱素子等によりインクに圧力を付与してインク滴を吐出する記録ヘッドを採用することができる。
インク吸収部PDは、図1(b)中のB−B断面を模式的に示す図である図4に示すように、搬送ベルトVの内側で、後述する目詰り予防吐出によるインクを吸収するインク吸収体CTが記録用紙Pの搬送経路PCを挟んで記録ヘッドHD1〜HD5に対向して配設されている。
【0028】
このインク吸収体CTは、フェルト、スポンジ等の液体を吸収する能力が高い材料から構成され、図示しない筐体に支持されている支持板SJ上に配設されるケースCS内に備えられている。なお、この図4では、構成をわかりやすくするため、駆動軸DSからX方向の下流側を省略し、記録ヘッドHD2及びHD1の断面詳細を省略して図示している。
ここで、前述したインクジェット記録装置1の各主要部の制御のつながりについて説明する。
【0029】
インクジェット記録装置1は、前述した主要構成の他に、ブロック図である図5に示すように、記録用紙PをゲートローラGRに給紙する給紙部KSをさらに備えている。
また、インクジェット記録装置1は、給紙部KSを制御する給紙制御部KSDと、ゲートローラGRを制御するゲートローラ制御部GRDと、静電気付与部ECを制御する静電気付与制御部ECDと、インデックスセンサーISを制御するセンサー制御部SDと、搬送部駆動モーターM0を制御するモーター制御部MDと、各記録ヘッドHD1〜HD5を制御する記録ヘッド制御部HDDと、排紙部EJを制御する排紙制御部EJDと、外部機器からの記録情報を格納する記録情報格納部BFと、記録情報に基づいて上記の各制御部KSD、GRD、ECD、SD、MD、HDD、EJDに動作の指令を出すCPUと、を備えている。
【0030】
次に、インクジェット記録装置1における記録の動作について、以下に説明する。
図1に示すインクジェット記録装置1は、外部機器から記録情報及び記録指令を受けると、記録の動作を開始する。
記録の動作が開始されると、CPUがモーター制御部MDへ搬送部駆動指令を送り、搬送部駆動モーターM0は、モーター制御部MDによって、搬送ベルトVを図1(b)で見て反時計方向に回転させるように、駆動が制御される。
【0031】
そして、インデックス部IDが、図6(a)に示すように、インデックスセンサーISの発光素子及び受光素子間の光軸を遮ると、インデックスセンサーISからCPUにインデックス信号が出力される。
CPUは、インデックス信号が入力されると、給紙部KSからゲートローラGRへの記録用紙Pの供給を指示する用紙供給指令を給紙制御部KSDに送るとともに、ゲートローラGRから搬送ベルトV上に記録用紙Pを供給する時間及び各記録ヘッドHD1〜HD5が記録用紙Pに記録を行う時間の計測を開始する。
【0032】
CPUから用紙供給指令を受けた給紙制御部KSDは、給紙部KSを制御し、複数の記録用紙Pが格納されている図示しない用紙カセットから記録用紙Pを1枚ずつゲートローラGRに供給させる。
ゲートローラGRは、記録用紙Pが供給されると、この記録用紙PをX方向に対する傾き及びY方向の位置ずれを矯正する。
【0033】
そして、計測している時間でゲートローラGRから搬送ベルトV上への記録用紙Pの供給を開始する給紙タイミングになったときに、CPUは、ゲートローラ制御部GRDに給紙指令を送る。ここで、給紙タイミングは、インデックスセンサーISがインデックス信号を出力してから(図6(a))、搬送ベルトVの回転とともに開口部WD1〜WD5がX方向に移動して、記録用紙Pが搬送ベルトV上で開口部WD1〜WD5を避けて載置されるように設定される(図6(b))。つまり、記録用紙Pは、開口部WD1〜WD5の位置が図6(b)に示す記録用紙Pの先端部PSが搬送ベルトV上にかかる位置である供給位置を越えたタイミングで、搬送ベルトV上に載置される。
【0034】
記録用紙Pが搬送ベルトV上に載置される間に、CPUからの指令に基づいて静電気付与制御部ECDが静電気付与部ECを制御し、記録用紙Pを帯電させる。
帯電して搬送ベルトVへの吸着力を有した記録用紙Pは、搬送部駆動モーターM0の駆動によって、図1(b)で見て反時計方向に回転されている搬送ベルトVの外周面に吸着し、記録ヘッドHD1及びHD2下へ導かれる。
【0035】
そして、CPUは、計測している時間で記録ヘッドHD1及びHD2による記録を開始するタイミングになったときに、記録ヘッド制御部HDDに第一の記録指令を送る。
記録ヘッド制御部HDDは、第一の記録指令に基づいて、記録ヘッドHD1及びHD2を制御し、搬送ベルトVによってノズル面NZP下を連続的に移動されてくる記録用紙Pの記録面PPに、記録情報に基づいて各色のノズルNZY、NZM、NZC、NZKから選択的にインク滴を吐出させて第一の記録を行う。
【0036】
第一の記録が行われた記録用紙Pは、搬送ベルトVによってさらに搬送され、記録ヘッドHD3〜HD5下へ導かれる。
そして、CPUは、計測している時間が記録ヘッドHD3〜HD5による記録を開始するタイミングになったときに、記録ヘッド制御部HDDに第二の記録指令を送る。
記録ヘッド制御部HDDは、第二の記録指令に基づいて、上記第一の記録の際と同様に記録ヘッドHD3〜HD5を制御して第二の記録を実施させる。
【0037】
この第二の記録が終了すると、一枚の記録用紙Pに対する記録が終了し、その記録用紙Pは、排紙制御部EJDが制御する排紙部EJによってインクジェット記録装置1外へ排出される。
ここで、記録情報のすべてに対する記録が終了していると、記録動作が終了し、未記録の記録情報が残っていると、上記給紙タイミングで新たな記録用紙PをゲートローラGRに供給して記録情報のすべてに対する記録が完了するまで記録動作を継続する。
【0038】
次に、インクジェット記録装置1における目詰り予防吐出の動作について、以下に説明する。ここで、目詰り予防吐出は、ノズル内のインク粘度の上昇や目詰りによって吐出性能が低下してしまう前に、記録とは関係なくノズルからインク滴を吐出して目詰りを予防するために行われる。
この目詰り予防吐出の動作は、インクジェット記録装置1の電源がオフからオンになったとき、インクジェット記録装置1の電源がオンになっていて記録が行われずに所定時間が経過したとき、ユーザーが任意に指示したときなどに開始される。
【0039】
目詰り予防吐出の動作が開始されると、CPUがモーター制御部MDへ搬送部駆動指令を送り、搬送部駆動モーターM0は、モーター制御部MDによって、搬送ベルトVを図1(b)で見て反時計方向に回転させるように、駆動が制御される。
そして、インデックス部IDが、図6(a)に示すように、インデックスセンサーISの発光素子及び受光素子間の光軸を遮ると、インデックスセンサーISからCPUにインデックス信号が出力される。
【0040】
CPUは、インデックス信号が入力されると、各開口部WD1〜WD5が各記録ヘッドHD1〜HD5に対向するまでに要する時間の計測を開始する。
そして、計測している時間で開口部WD1〜WD5が図7(a)に示すように、記録ヘッドHD1〜HD5に対向するタイミングになったときに、CPUは、記録ヘッド制御部HDDに目詰まり予防吐出指令を送る。
【0041】
記録ヘッド制御部HDDは、目詰り予防吐出指令に基づいて、記録ヘッドHD1〜HD5を制御し、図7(a)のD−D断面図である図7(b)に示すように、各開口部WD1〜WD5を経てインク吸収部PDのインク吸収体CTに向けて、各色のノズルNZY、NZM、NZC、NZKからインク滴を吐出させる。
ここで、各開口部WD1〜WD5の開口形状は、記録ヘッドHD1〜HD5のノズル面NZPの形状より大きく設定されている。つまり、各記録ヘッドHD1〜HD5が各開口部WD1〜WD5に対向した状態で、各色のノズルNZY、NZM、NZC、NZKから吐出されたインク滴を、搬送ベルトVに付着させることなく各開口部WD1〜WD5を通過させることができる。
【0042】
なお、インク滴をインク吸収体CTに向けて吐出する際に、搬送部駆動モーターM0の駆動を停止して搬送ベルトVの回転を停止させたり、搬送ベルトVの回転を停止させずに回転速度を低下させたり、目詰り予防吐出動作の期間中搬送ベルトVの回転速度を一定に維持させたり、いずれの態様であってもかまわない。また、この図7(b)では、構成をわかりやすくするため、記録ヘッドHD3〜HD5及び開口部WD3〜WD5を図示し、且つ駆動軸DSからX方向の下流側を省略して図示している。
【0043】
インクジェット記録装置1において、異なる記録用紙Pに連続で記録を行う際に、これらの異なる記録用紙P間で記録ヘッドHD1〜HD5から記録とは無関係にインク滴を吐出して目詰りを予防する紙間目詰り予防吐出処理について説明する。
インクジェット記録装置1は、外部機器から記録指令及び記録情報を受けると、CPUが図8に示す紙間目詰り予防吐出処理を開始する。
【0044】
この紙間目詰り予防吐出処理では、まず、ステップS1において、モーター制御部MDに搬送部駆動指令を出力し、搬送ベルトVが図1(b)で見て反時計方向に回転するように搬送部駆動モーターM0を駆動させてステップS2に移行する。
このステップS2において、変数Nに0を代入してステップS3に移行する。
このステップS3において、インデックス信号が入力されたか否かを判定し、入力された(YES)と判定されると、ステップS4に移行し、入力されていない(NO)と判定されると、インデックス信号が入力されるまで待機する。
【0045】
ステップS4において、給紙制御部KSDに用紙供給指令を出力してステップS5に移行する。
このステップS5において、タイマーTm1を起動して時間Taの計測を開始し、ステップS6に移行する。
このステップS6において、タイマーTm1によって計測される時間Taが所定時間T1以上になったか否かを判定し、なった(YES)と判定されると、ステップS7に移行し、なっていない(NO)と判定されると、所定時間T1以上になるまで待機する。
【0046】
ステップS7において、ゲートローラ制御部GRDに給紙指令を出力してステップS8に移行する。
このステップS8において、計測時間Taが所定時間T2以上になったか否かを判定し、なった(YES)と判定されると、ステップS9に移行し、なっていない(NO)と判定されると、所定時間T2以上になるまで待機する。
【0047】
ステップS9において、変数Nに代入されている値が1以上であるか否かを判定し、1以上である(YES)と判定されると、ステップS20に移行し、1未満である(NO)と判定されると、ステップS10に移行する。
このステップS10において、タイマーTm2を起動して時間Tbの計測を開始し、ステップS11に移行する。
【0048】
このステップS11において、記録ヘッド制御部HDDに目詰り予防吐出指令を出力してステップS12に移行する。
このステップS12において、計測時間Taが所定時間T3以上になったか否かを判定し、なった(YES)と判定されると、ステップS13に移行し、なっていない(NO)と判定されると、所定時間T3以上になるまで待機する。
【0049】
ステップS13において、記録ヘッド制御部HDDに第一の記録指令を出力し、記録ヘッドHD1及びHD2による記録を開始させてステップS14に移行する。
このステップS14において、計測時間Taが所定時間T4以上になったか否かを判定し、なった(YES)と判定されると、ステップS15に移行し、なっていない(NO)と判定されると、所定時間T4以上になるまで待機する。
【0050】
ステップS15において、記録ヘッド制御部HDDに第二の記録指令を出力し、記録ヘッドHD3、HD4及びHD5による記録を開始させてステップS16に移行する。
このステップS16において、タイマーTm1をリセットしてステップS17に移行する。
このステップS17において、記録情報のすべてに対する記録が終了したか否かを判定し、終了した(YES)と判定されると、ステップS18に移行し、このステップS18でタイマーTm2をリセットしてから処理を終了し、終了していない(NO)と判定されると、ステップS19に移行する。
【0051】
このステップS19において、変数Nに1を加算して新たな変数Nとし、ステップS3に移行する。
ステップS9でYESと判定されて移行してきたステップS20において、タイマーTm2によって計測される時間Tbが、変数Nに代入されている値に所定時間T5を乗じた時間以上になったか否かを判定し、なった(YES)と判定されると、ステップS11に移行し、なっていない(NO)と判定されると、ステップS12に移行する。
【0052】
ここで、ステップS20で、時間Tbが変数Nに代入されている値に所定時間T5を乗じた時間以上になったか否かを判定するのは、直近で実施した目詰り予防吐出から所定の期間を経ているか否かを判定するためである。記録ヘッドHD1〜HD5には、記録において使用されないノズルが存在する場合があり、使用されない状態が継続すると、そのノズル内でインクの粘度が上昇し、その後記録を行うときにインク滴が良好に吐出されない事態が発生してしまうことがある。
【0053】
従って、一つの記録用紙Pに対する記録が終了した後、開口部WD1〜WD5が記録ヘッドHD1〜HD5に対向するタイミングが訪れたときに、直近で実施した目詰り予防吐出から所定の期間が経過している場合には、目詰り予防吐出を実施してから次の記録を行う。また、例えば、一つの記録用紙Pに対する記録が短時間で終了した場合などに、直近で実施した目詰り予防吐出から所定の期間が経過していなければ、インクが無駄に消費されるのを避けるため、目詰り予防吐出を実施せずに次の記録を行う。
【0054】
なお、本実施形態において、記録ヘッドHD1〜HD5が固定ヘッドに対応し、開口部WD1〜WD5が目詰り予防吐出用開口に対応し、ゲートローラGRが記録媒体供給手段に対応している。
上記の構成によれば、搬送ベルトVに設けられる各開口部WD1〜WD5を、各記録ヘッドHD1〜HD5に同じタイミングで対向させることが可能となる。従って、開口部WD1〜WD5を介してインク吸収体CTに、記録ヘッドHD1〜HD5のすべてのノズルから同じタイミングでインク滴を吐出させることが可能となる。
【0055】
上記により、目詰り予防吐出を極めて短時間で終了させることが可能となり、複数の記録用紙Pに連続して記録を行っても、目詰り予防吐出による記録時間の遅延を極めて低く抑えることができるとともに、連続した記録の終了まで良好な記録品質を維持させることができる。
また、記録用紙Pが搬送ベルトV上で開口部WD1〜WD5にかからないように載置されるため、記録用紙Pが開口部WD1〜WD5にかかって載置された場合に発生する記録用紙Pの撓みを抑制することができる。また、複数の記録用紙Pに連続して記録を行っても、一つの記録用紙Pへの記録が終了するごとに目詰り予防吐出のタイミングを設けることが可能となる。従って、各記録ヘッドHD1〜HD5から記録用紙Pまでの距離が均一に維持され、記録品質の低下が抑制されるとともに、目詰り予防吐出のタイミングを逃すことがなく、連続した記録が終了するまで、ノズルのインク滴を吐出する性能を良好な状態に維持させることが可能となる。
【0056】
なお、本実施形態では、固定ヘッドを、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラック色のインク滴を吐出するイエローノズルNZY、マゼンタノズルNZM、シアンノズルNZC及びブラックノズルNZKのそれぞれを備えた記録ヘッドHD1〜HD5で構成するようにしたが、これに限定されない。すなわち、図9に示すように、各色に対応したイエロー記録ヘッドHDY、マゼンタ記録ヘッドHDM、シアン記録ヘッドHDC及びブラック記録ヘッドHDKで構成してもよい。
【0057】
この構成によれば、各ヘッドY1〜Y5、M1〜M5、C1〜C5、K1〜K5のノズル面の面積を低減することができるため、それに対応して各開口部HD1〜HD5の開口面積も低減することが可能となる。従って、張力による搬送ベルトVの変形を軽減することが可能となり、一層記録品質の向上に寄与することができる。
また、本実施形態では、紙間目詰り予防吐出を、一つの記録用紙Pに対する記録が終了した後、開口部WD1〜WD5が記録ヘッドHD1〜HD5に対向するタイミングが訪れたときに、直近で実施した目詰り予防吐出から所定の期間が経過している場合に行うようにしたが、これに限定されず、一つの記録用紙Pに対する記録が終了するごとに行うようにしてもよい。
【0058】
この場合、図8に示す紙間目詰り予防吐出処理において、ステップS2、S9、S10、S18、S19及びS20を省略することができ、処理にかかる時間を短縮することが可能となる。
また、本実施形態では、インデックス部IDを平面視で凸形状に形成した例を示したが、これに限定されず、凹形状に形成してもよい。この構成によれば、搬送ベルトVの側縁から凸状に伸びる出っ張りをなくすことができ、用紙搬送部CVを小型化することが可能となる。
【0059】
また、本実施形態では、インデックスセンサーISを発光素子及び受光素子を備える光学式センサーで構成するようにしたが、これに限定されず、磁気センサーや静電容量センサー等を採用することができる。
また、インデックス部IDと開口部WD1〜WD5との相対位置及びインデックスセンサーISの位置は、本実施形態に示した位置に限定されず、開口部WD1〜WD5が記録ヘッドHD1〜HD5に対向したときにインデックス信号が出力されるように、それぞれの位置を設定してもよい。
【0060】
このように設定すれば、インデックス信号が出力されてから所定時間待機することなく、目詰り予防吐出を実施させることが可能となる。
また、本実施形態では、インデックス部ID及びインデックスセンサーISを、図1(a)で見て搬送ベルトVの下側に一組備える構成としたが、これに限定されず、搬送ベルトVの下側及び上側に一組ずつ備え、一方を目詰り予防吐出のタイミング計測に用い、他方を給紙タイミングの計測に用いる構成としてもよい。
【0061】
この構成によれば、紙間目詰り予防吐出処理を記録にかかる処理と目詰り予防吐出にかかる処理とに分離することができ、紙間目詰り予防吐出処理にかかるCPUの負担を軽減することが可能となる。
また、上述した平面視で凸形状及び凹形状の2種類のインデックス部IDを、搬送ベルトVの下側及び上側のいずれか片側にX方向に並べて形成し、凸形状及び凹形状のインデックス部IDの一方を目詰り予防吐出のタイミング計測に用い、他方を給紙タイミングの計測に用いる構成としても、上記の効果と同様の効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の実施形態におけるインクジェット記録装置の主要構成を示す外観図。
【図2】記録ヘッドの外観を示す図。
【図3】本発明の実施形態におけるインクジェット記録装置の記録領域を説明する図。
【図4】インク吸収部の構成を示す断面図。
【図5】本発明の実施形態におけるインクジェット記録装置の主要部の制御のつながりを示すブロック図。
【図6】本発明の実施形態におけるインクジェット記録装置の記録の動作を説明する図。
【図7】本発明の実施形態におけるインクジェット記録装置の目詰り予防吐出を説明する図。
【図8】本発明の実施形態におけるインクジェット記録装置の紙間目詰り予防吐出処理の流れを説明する図。
【図9】記録ヘッドの他の構成を示す図。
【符号の説明】
【0063】
1…インクジェット記録装置、V…搬送ベルト、WD1〜WD5…開口部、HD1〜HD5…記録ヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送ベルト上に載置されて搬送される記録媒体の搬送面とは反対側の面である記録面に対向して配設され、インク滴を吐出するノズルの複数を前記記録媒体の搬送方向とは交差する方向に配列して構成される記録領域を有する固定ヘッドを備えたインクジェット記録装置であって、
前記搬送ベルトは、該搬送ベルトが一周する間に所定のタイミングで前記固定ヘッドに対向する目詰り予防吐出用開口が形成され、
前記記録媒体は、前記搬送ベルト上で前記目詰り予防吐出用開口にかからないように載置されることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記目詰り予防吐出用開口の前記搬送方向に対する位置を検出する開口位置検出手段と、該開口位置検出手段によって検出される前記位置が前記記録媒体の供給位置より下流側となるタイミングで、前記記録媒体を前記搬送ベルト上に供給する記録媒体供給手段とを備えていることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記開口位置検出手段は、前記搬送ベルトの一側縁に形成したインデックス部と、該インデックス部を検出するインデックスセンサーとで構成されていることを特徴とする請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記インデックスセンサーは、発光素子と受光素子とを備えた光学式センサーで構成されることを特徴とする請求項3に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記固定ヘッドは、複数の前記ノズルを所定の長さに亘って配列形成した複数の記録ヘッドを、前記記録媒体の搬送方向とは交差する方向に並べて配設した構成を有し、
前記目詰り予防吐出用開口は、前記複数の記録ヘッドの少なくとも一つに対向する開口部を、前記記録領域を構成する前記複数の記録ヘッドに前記所定のタイミングで同時に対向するように、前記搬送方向とは交差する方向に複数配列形成して構成されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記開口部は、前記記録領域を構成する前記複数の記録ヘッドごとに設けられることを特徴とする請求項5に記載のインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−21399(P2006−21399A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−200567(P2004−200567)
【出願日】平成16年7月7日(2004.7.7)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】