説明

インクジェット記録装置

【課題】記録ヘッドのメンテナンス動作を行う場合に、インク吐出面を損傷することなく、簡易な手法で効果的にメンテナンス動作を行うことのできるインクジェット記録装置を提供する。
【解決手段】インク吐出面10を有する記録ヘッド7と、記録ヘッド7をメンテナンスするメンテナンス装置20と、を備え、メンテナンス装置20は、ノズル8内にインクを充填させる吸引動作を行う吸引キャップユニット21と、吸引動作後の記録ヘッド7の移動方向における吸引キャップユニット21の下流側に設けられ、インク吐出面10と非接触状態でインク吐出面10に付着したインクと接触しこれを吸収するインク吸収体27を備えるインク吸収ユニット22と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置に係り、特に、記録ヘッドのメンテナンス動作を行うメンテナンス装置を備えるインクジェット記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、簡易かつ安価に画像を記録できる画像記録手段として、インクジェット方式を用いた画像記録装置が数多く用いられている。インクジェット方式を用いた画像記録装置(以下、「インクジェット記録装置」と称する。)は、例えばピエゾ素子等の圧電素子やヒータ等を用いて、記録ヘッドのノズルのインク吐出口からインクを微小な液滴として紙等の記録媒体に向けて吐出し、記録媒体にインクを浸透若しくは定着させながら画像記録を行うものである。
【0003】
しかし、このようなインクジェット記録装置においては、連続して記録作業を行った場合に、記録ヘッドのノズルから吐出され霧状になったインクがノズルのインク吐出口付近やインク吐出面に付着、堆積したり、ノズル内で目詰まりを起こしたりすることがある。特に、活性エネルギー線を照射することで硬化する活性エネルギー線硬化性のインクを用いる場合には、反射光等によりインク吐出面等に付着したインクが硬化することがあり、このような状態で記録動作を行った場合には、ピエゾ素子等のアクチュエータを駆動させて吐出動作を行っても、インク滴が吐出されない所謂ノズル欠や、正しい方向にインク滴が吐出されない所謂吐出曲がり等の吐出不良が生じ、画像記録に不具合が生じるおそれがある。
【0004】
また、ノズルのインク吐出口から正常にインクの吐出を行うためには、ノズル先端部に正常な形状のメニスカスが形成されている必要があるが、例えば連続して記録動作を行うことによりノズルのインク吐出口付近にインクが付着し、これが光の照射によって硬化した場合等には、メニスカスの形状が崩れて正常なインク吐出ができず、高精彩な画像記録を行うことができない。
【0005】
そのため、正常な画像記録を行うためには、適宜記録ヘッドのメンテナンス動作を行うことが必要となる。
そして、前述のように、ノズルが目詰まりして、所謂ノズル欠を生じているような場合には、インク吐出面のインクを拭き取っただけでは吐出性能を回復させることができないため、従来、メンテナンス動作の際には、インク吐出面を吸引キャップで覆った上で吸引ポンプによって負圧をかける等の手法により、一旦全てのノズルからインクを吐出させる動作が行われる。
【0006】
しかし、このようにノズルからインクを吐出させる動作を行うと、インク吐出面にインクが付着してしまい、このインクが装置各部に滴下、付着することにより、装置各部を汚したり、特にオキセタン化合物を含有するカチオン硬化性インク等の活性エネルギー線硬化性のインクの場合には、インクが付着することにより各種部品が溶解・腐食する等の不都合を生じる。
【0007】
そこで、インクを吐出させる動作の後に、例えば、ブラシ状のインク除去手段によってインク吐出面に付着したインクを除去するメンテナンス動作を行う技術(例えば、特許文献1参照)や、インク吸引動作の後に吸引キャップ内部に設けられた大気連通弁を開放することにより大気を連通させ、吸引キャップ内部のインクを除去してから吸引キャップを解除することにより、記録ヘッドに付着するインクを減少させる技術(例えば、特許文献2参照)が提案されている。なお、このように吸引キャップ内部のインクを除去しても、インク吐出面に付着するインクを完全に除去することはできないため、特許文献2に記載されている技術では、吸引動作の後ワイプ手段によるワイプ動作を行うようになっている。
【0008】
インクを吐出させる動作の後にはかなりの量のインクがインク吐出面に付着することから、インクを確実に除去するためには拭き取り動作を何度も繰り返す必要がある。しかし、ブラシ状のインク除去手段やワイプ手段をインク吐出面に繰り返し摺動させてインクを拭い取る手法では、インク吐出面に損傷を与えるおそれがあり、特にインク吐出面にインクの付着を防止する撥水層を形成する等、撥水処理が施されている場合には、この撥水層が摩耗してしまうという問題がある。
そこで、インク吐出面を清掃する清掃ローラを設け、位置決め部材によりインク吐出面と清掃ローラとの間に微小間隙を確保した上でインク吐出面に付着したインクを除去する技術も提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2003−311985号公報
【特許文献2】特許第3216706号公報
【特許文献3】特開2007−175906号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、清掃ローラによる清掃だけではインク吐出面に付着したインクを十分に除去することは難しく、特に活性エネルギー線硬化性インクのように高粘度のインクの場合にはインクの除去が困難であるとの問題がある。
【0010】
そこで、本発明は以上のような問題の解決を課題としてなされたものであり、記録ヘッドのメンテナンス動作を行う場合に、インク吐出面を損傷することなく、簡易な手法で効果的にメンテナンス動作を行うことのできるインクジェット記録装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような課題を解決するため、請求項1に記載されている発明は、
インクを吐出するノズルと当該ノズルのインク吐出口が設けられたインク吐出面とを有する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドをメンテナンスするメンテナンス装置と、を備え、
前記メンテナンス装置は、前記ノズル内にインクを充填させる第1のメンテナンス動作を行う第1のメンテナンスユニットと、前記第1のメンテナンス動作後の前記記録ヘッドの移動方向における前記第1のメンテナンスユニットの下流側に設けられ、前記インク吐出面と非接触状態で該インク吐出面に付着したインクと接触しこれを吸収するインク吸収体を備えるインク吸収ユニットと、を備えていることを特徴とするインクジェット記録装置である。
【0012】
請求項2に記載されている発明は、請求項1に記載のインクジェット記録装置において、前記インク吸収ユニットは、前記記録ヘッドに対する前記第1のメンテナンス動作後、前記記録ヘッドに対して、前記記録ヘッドの移動を停止させずにインク吸収動作を行うものであることを特徴としている。
【0013】
請求項3に記載されている発明は、請求項1又は請求項2に記載のインクジェット記録装置において、前記第1のメンテナンスユニットは、インク吸引動作、パージ動作、フラッシング動作のいずれか1つ、若しくはこれらを2つ以上組み合せたメンテナンス動作を行うものであることを特徴としている。
【0014】
請求項4に記載されている発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置において、前記インク吸収ユニットは、吸収したインクを受ける廃液貯留手段と接続されていることを特徴としている。
【0015】
請求項5に記載されている発明は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置において、前記インクを吸収する吸収体が、フェルト、又は、オレフィン系ないしポリオレフィン系の樹脂を材料とする不織布、高密度繊維のうちのいずれかの材料で形成されていることを特徴としている。
【0016】
請求項6に記載されている発明は、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置において、前記インクは、25℃の粘度が、10〜50[mPa・s]で、表面張力が20〜40[mN/m]であることを特徴としている。
【0017】
請求項7に記載されている発明は、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置において、前記インクは、活性化エネルギー線硬化性化合物を含んでおり、活性化エネルギーが紫外線であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、メンテナンス動作として、まずノズル内にインクを充填させる第1のメンテナンス動作を行う。このため、例えば所謂ノズル欠となっているノズル、すなわち、ノズル内に敷設されているピエゾ素子等のアクチュエータまでインクが流入していないためにインクを吐出することができないノズルがあった場合でも、メンテナンス動作後は全てのノズルにインクを充填させることができ、吐出性能を回復させることができるとの効果を奏する。
【0019】
そして、このようなメンテナンス動作を行った後、記録ヘッドが次の動作に移行する前に、インク吸収体によるインク吸収動作を行うので、インク吐出面に多量のインクが付着している場合でもインク液滴が滴下して装置各部に付着することを防止して、装置内部の汚れ、インク液滴の付着による各種部品の溶解、腐食等を生じるのを回避することができる。
【0020】
また、インク吸収ユニットによるインク吸収動作は、インク吐出面に接触せずに行われるため、インク吸収動作の際にインク吐出面を損傷することがない。
【0021】
また、ワイプ動作等、次の動作に移行する前に、インク吸収動作を行い、インク吐出面に付着したインク液滴の吸収を行うので、ワイプ動作等を行う場合でも少ない回数で十分にインク吐出面に付着したインクの除去を完了させることができ、インク吐出面に与える影響を最小限度に止め、効率よく、効果的なメンテナンス動作を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図1から図7を参照しつつ、本発明に係るインクジェット記録装置の第1の実施形態について説明する。
【0023】
まず、図1に示すように、本実施形態において、インクジェット記録装置100は、シリアルヘッド方式のインクジェット記録装置であり、装置本体部1と、装置本体部1を下方から支持する支持台2とを備えている。装置本体部1には、記録媒体Sを非記録面側から支持するプラテン3が装置本体部1の長手方向に延在するように配設されている。プラテン3の設けられている領域は、画像記録を行う記録領域とされ、記録媒体Sは図示しない搬送機構によりプラテン3の上を所定の搬送方向である副走査方向Yに搬送されるようになっている。
【0024】
プラテン3の上方であって記録媒体Sの副走査方向Yの上流には装置本体部1の長手方向に延在する棒状のガイドレール5が設けられている。このガイドレール5には、キャリッジ6が支持されており、キャリッジ6は図示しない移動機構により副走査方向Yと直交する主走査方向Xをガイドレール5に沿って往復移動するようになっている。
【0025】
キャリッジ6には、本実施形態におけるインクジェット記録装置100で使用される各色(例えば、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K))のインクを記録媒体Sに対して吐出する4つの記録ヘッド7が搭載されている。
【0026】
記録ヘッド7の内部には、インクを吐出する複数のノズル8(図3参照)が副走査方向Yに沿って列状に設けられており、記録ヘッド7の記録媒体Sと対向する面は、これらノズル8のインク吐出口9が形成されたインク吐出面10(図3等参照)となっている。インク吐出面10は、インクが付着し難いように、FEP(フツ化エチレンプロピレン樹詣)等のフッ素加工処理を施す等、撥水処理が施されていることが好ましい。
なお、本実施形態では、ノズル8の列が1列設けられている場合を例としているが、ノズル8の配置等はこれに限定されず、ノズル8が副走査方向Yに沿って複数列並列して設けられていてもよい。
【0027】
各記録ヘッド7のノズル8には、例えば、アクチュエータとして電圧を印加することにより変形する圧電素子としてのピエゾ素子(図示せず)が敷設されている。このピエゾ素子に駆動電圧を印加することによってピエゾ素子を変形させ、図示しないインク流路を圧縮してノズル8のインク吐出口9からインクを吐出させるようになっている。なお、ノズル8の先端部ではインクがノズル8の内側に引き込まれて曲面形状(メニスカス)を形成するようになっている。このメニスカスの形状が正常に整えられていると正常なインク吐出を行うことができる。
【0028】
ここで、本実施形態に用いられるインクについて説明する。
インクを硬化させる際には、インクに含まれる重合性化合物を重合反応させる。本実施形態において画像記録に用いられるインクは、重合性化合物として活性化エネルギー線硬化性化合物を含んでおり、重合反応を開始させる活性化エネルギーが紫外線である紫外線硬化性インクである。
【0029】
紫外線硬化性インクは、重合性化合物として、ラジカル重合性化合物を含むラジカル硬化性インクとカチオン重合性化合物を含むカチオン硬化性インクとに大別される。どちらのインクも本実施形態に用いられるインクとして適用可能であり、ラジカル硬化性インクとカチオン硬化性インクとを複合させたハイブリッド型インクを本実施形態に用いられるインクとして適用してもよい。
【0030】
しかしながら、酸素による重合反応の阻害が少ない又は無いカチオン硬化性インクのほうが機能性・汎用性に優れるため、本実施形態では、特に、カチオン硬化性インクを用いている。本実施形態に用いられるカチオン硬化性インクは、具体的に、少なくともオキセタン化合物,エポキシ化合物,ビニルエーテル化合物などのカチオン重合性化合物と、光カチオン開始剤と、色材とを含む混合物であり、上記の紫外線の被照射により硬化する性質を具備するものである。
【0031】
また、本実施形態におけるインクは、25℃での粘度が、10〜50[mPa・s]で、表面張力が20〜40[mN/m]の液体であり、いわゆる粘性が高く、濡れ性が良好でないインクとされている。
【0032】
なお、高精細な画像記録を可能とするためには、インクの粘度を下げて1ドットが2〜20plの微小な液滴として吐出されるようにすることが望ましく、例えば、インク流路にヒータ(図示せず)を配設して、インクが吐出される前にインクを加熱し粘度を下げるようにすることが好ましい。
【0033】
キャリッジ6の記録ヘッド7の主走査方向Xにおける両側部には、ノズル8のインク吐出口9から記録媒体S上に吐出されたインクに対して紫外線を照射してインクを硬化させる図示しない光源を備える紫外線照射装置11が設けられている。
【0034】
なお、光源としては、例えば、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、熱陰極管、冷陰極管、発光ダイオード、半導体レーザ等が適用可能であるが、光源として適用可能なものは、ここに例示したものに限定されない。
【0035】
キャリッジ6の移動可能範囲であって記録領域の外側一端には、記録ヘッド7のノズル8及びインク吐出面10のメンテナンス動作を行うメンテナンス装置20が設けられている。
図2及び図3に示すように、本実施形態において、メンテナンス装置20は、吸引キャップユニット21、インク吸収ユニット22、ワイプユニット23を備えている。
【0036】
吸引キャップユニット21は、記録ヘッド7のノズル8からインクを吸引することにより、ノズル8の内部にインクを充填させる第1のメンテナンス動作を行う第1のメンテナンスユニットである。
【0037】
吸引キャップユニット21は、ユニット支持台24を備えている。このユニット支持台24には、記録ヘッド7のインク吐出面10を覆う吸引キャップ25が記録ヘッド7に対応して4つ設けられている。そして、この4つの吸引キャップ25は、キャリッジ6がメンテナンス装置20に移動した際に記録ヘッド7と対向するように構成されている。
吸引キャップ25は、図示しない駆動機構により、記録ヘッド7がメンテナンス装置20に移動した際に記録ヘッド7のインク吐出面10を覆うことのできる位置から、記録ヘッド7のインク吐出面10から離間する位置まで図3における上下方向に移動可能となっている。吸引キャップ25は、非メンテナンス動作時には、インク吐出面10から離間する所定の待機位置(例えば図3におけるαの高さとなる位置)まで降下する。
【0038】
また、吸引キャップユニット21は、連通管26を介して吸引したインクを受ける廃液タンク33と接続されている。連通管26の途中には、図示しない吸引ポンプが設けられており、吸引キャップ25がインク吐出面10を覆った際に記録ヘッド7のノズル8内のインクを吸引して廃液タンクに送液可能に構成されている。なお、吸引ポンプとしては、例えば、チューブポンプ等を用いることができるが、ノズル8内のインク等を吸引するのに十分な吸引力を確保できるものであれば足り、他の機構を適用することも可能である。
【0039】
インク吸収ユニット22は、吸引キャップユニット21によるメンテナンス動作後、次の動作(本実施形態では、後述するワイプ動作)に移行する記録ヘッド7の移動方向A(図3参照、本実施形態においては、図1における主走査方向Xに沿って右から左に移動する方向)における吸引キャップユニット21の下流側に設けられている。
吸引キャップユニット21によってインクの吸引が行われると、ノズル8の内部にインクが充填されるとともにインク吐出口9からインクが吸い出され、その一部がインク吐出面10に付着する。インク吸収ユニット22は、このインク吐出面10に付着したインクをインク吐出面10に接触せずに吸収するものである。
【0040】
図4は、インク吸収ユニット22の要部構成を示す斜視図である。
図3及び図4に示すように、インク吸収ユニット22は、インク吸収体27と、これを保持し収納する吸収体保持部28とを備えている。
【0041】
図3に示すように、インク吸収ユニット22は、インク吸収体27の上端部が、吸引キャップユニット21及びワイプユニット23の最も上部に位置する部分(インク吐出面10に近い部分)が非メンテナンス動作時に位置する高さよりも高い位置(インク吐出面10に近い位置)にくるように配置されている。
すなわち、本実施形態では、吸引キャップユニット21及びワイプユニット23の最も上部に位置する部分が非メンテナンス動作時に位置する高さがαであり、インク吸収体27の上端部の位置がβであるとき、インク吸収体27の上端部の位置βは、αよりも高い位置にある。
【0042】
また、図3に示すように、インク吸収ユニット22は、インク吸収動作の際に、インク吸収体27の上端部とインク吐出面10との間に微小な間隙(図3において、間隙γ)が形成される位置に配置されている。間隙γの大きさは特に限定されないが、記録動作を行う際の記録媒体Sとインク吐出面10との間の距離と同程度であることが好ましく、例えば1.5mm〜2mm程度であることが好ましい。
インク吸収ユニット22をこのような位置に配置することにより、インク吸収体27は、インク吸収動作の際にインク吐出面10に接触せず、かつ、インク吐出面10に付着し下方に膨出するインク液滴と接触して、これを吸収可能となっている(図7参照)。
【0043】
ここで、インク吸収ユニット22の具体的な構成について、図2及び図4を参照しつつ説明する。
【0044】
インク吸収体27は、ほぼ直方体形状に形成されており、長手方向の長さ寸法は、記録ヘッド7のインク吐出面10の長手方向の長さ寸法と同じか、それよりも長くなっている。また、その幅寸法は特に限定されないが、例えば5mm程度である。
インク吸収体27を形成する材料は、インク吸収性に優れた材料であり、本実施形態で使用される紫外線硬化性インク等が付着しても溶解等することのない材料であることが好ましい。具体的には、例えば、フェルトや、オレフィン系ないしポリオレフィン系の樹脂(例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等)を材料とする不織布、高密度繊維のうちのいずれかの材料で形成されていることが好ましい。インク吸収体27をこのような材料で形成することにより、紫外線硬化性インク、その他、油系やソルベント系等、通常使用されるインクよりも高粘度で濡れ性の良好でないインクであっても、インク吐出面10に接触することなく、インク液滴に接触するだけで確実に吸収することができる。
なお、インク吸収体27は、インク吸収性に優れた材料で形成されていればよく、その材料はここに例示したものに限定されない。
【0045】
吸収体保持部28は、インクに接触しても溶解等を生じない材料(例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等の樹脂等)で形成されており、図4に示すように、インク吸収体27を収納する収納部29を有している。収納部29の底部30は、長手方向における一端側から他端側に向かって傾斜しており、底部30の最も低くなっている側(傾斜の下流側)の一端には、吸収体保持部28の外部に貫通する貫通孔31が形成されている。
貫通孔31にはインク排出管32の一端が接続されており、インク排出管32の他端は、廃液貯留手段である廃液タンク33に接続されている。なお、本実施形態では、インク排出管32の接続される廃液貯留手段と、吸引キャップユニット21に接続される廃液タンク33とが同じである(兼用される)場合を例としたが、廃液貯留手段は吸引キャップユニット21と接続される廃液タンク33とは別個に設けられていてもよい。また、吸収体保持部28と接続される廃液貯留手段はタンク状のものでなくてもよく、例えば排出されたインクを受ける受け皿状のものでもよい。
【0046】
収納部29の底部30の長手方向の両端部には、インク吸収体27を支持する支持部35a,35bが形成されている。支持部35a,35bのうち、底部30の傾斜の下流側(底部30の最も低くなっている側)に位置する支持部35bは、底部30の傾斜の上流側(底部30の最も高くなっている側)に位置する支持部35aよりも上方向に大きく形成されており、支持部35aの上端部の高さと支持部35bの上端部の高さとはほぼ等しくなっている。これにより、支持部35a,35bによって、インク吸収体27をほぼ水平に支持することができるようになっている。
【0047】
ワイプユニット23は、インク吸収ユニット22によるインク液滴の吸収が行われた後に、インク吐出面10の拭き取りを行うものである。
図2及び図5を参照しつつ、本実施形態におけるワイプユニット23について、具体的に説明する。図5は、ワイプユニット23の一部を示す側面図である。
【0048】
図2に示すように、本実施形態においてワイプユニット23は、箱型の筐体37を有しており、筐体37の上面には、開口部38が形成されている。
【0049】
筐体37の内部であって副走査方向Yの両端には、インク吸収部材39を送り出す送り出し軸(図示せず)及びインク吸収部材39を巻き取る巻き取り軸(図示せず)がそれぞれ配設されている。ワイプユニット23には、筐体37に近接して駆動機構収納部40が設けられており、駆動機構収納部40には、巻き取り軸に接続され巻き取り軸を回転駆動させるモータ等の図示しない駆動機構が収納されている。
【0050】
送り出し軸には、長尺なシート状のインク吸収部材39がロール状に巻回されている。インク吸収部材39は、複数のガイドローラ41(図5参照)により一定の張力を保った状態で送り出し軸と巻き取り軸との間に張設されるとともに一部が開口部38から露出するようになっている。図5に示すように、開口部38から露出したインク吸収部材39は、メンテナンス動作時に記録ヘッド7のインク吐出面10と対向するようになっている。インク吸収部材39は、巻き取り軸が回転駆動するに伴って送り出し軸から送り出され、複数のガイドローラ41に案内されて巻き取り軸に巻き取られるようになっている。
【0051】
インク吸収部材39は、例えば0.1〜0.5デニール程度の繊度を有する極細繊維である高密度繊維から形成されており、高密度繊維は、ポリエステル、アクリル、ナイロン等のうちいずれか一つあるいはこれらを組み合わせた材料により構成されている。このように、インク吸収部材39は高密度繊維からなるため、その表面に接触するものを吸着しやすく、インクの粘度や濡れ性に関わらず記録ヘッド7のインク吐出面10に付着したインクを吸収除去するとともに、記録ヘッド7のノズル8の先端部からインクを速やかに吸収することができる。すなわち、本実施形態におけるインク吸収部材39は、例えば、紫外線硬化性インク、その他、油系やソルベント系等、通常使用されるインクよりも高粘度で濡れ性の良好でないインクであっても、確実に吸収することができる。
なお、インク吸収部材39は、インク吸収性に優れた高密度繊維であればよく、その材料はここに例示したものに限定されない。
【0052】
インク吸収部材39の大きさは特に限定されないが、インク吐出面10の拭き取り等のメンテナンス動作をむらなく行うために、少なくともメンテナンス動作の対象となるインク吐出面10の全体を覆うことが可能な大きさであることが好ましい。本実施形態においては、1度に2つの記録ヘッド7のメンテナンス動作を行うことができるように、2つの記録ヘッド7のインク吐出面10を覆うのに足りる幅寸法に形成されている。
なお、ワイプユニット23による記録ヘッド7のメンテナンス動作は各記録ヘッド7について1つずつ行うようにしてもよい。その場合には、インク吸収部材39の大きさは、1つのインク吐出面10の幅寸法よりも大きければよい。
【0053】
筐体37の内部には、メンテナンス動作時にインク吸収部材39を記録ヘッド7に対して押圧する押圧部材43と、この押圧部材43を案内するガイド部材44(図5参照)とが設けられている。
【0054】
図5に示すように、ガイド部材44には、記録ヘッド7に対応する中央部分が記録ヘッド7のインク吐出面10とほぼ平行となるように水平方向に延在されるとともに、両端部が下方に折曲された形状を有するガイド孔45が形成されている。ガイド孔45の両端部は、待機領域Dとされている。
【0055】
また、押圧部材43は、インク吸収部材39を記録ヘッド7に押圧させるローラ部材46と、ローラ部材46を支持するとともに、ガイド部材44のガイド孔45に係止される係止部47を有するローラ支持部材48とを備えている。
係止部47はガイド孔45に対して摺動可能に係止されており、これによりローラ支持部材48がガイド孔45に沿って案内される。
【0056】
ローラ部材46を形成する材料は特に限定されないが、樹脂等、弾性を有するものが好ましく、特に本実施形態のようにインクとして例えば紫外線硬化性インク等のような有機系溶剤を含むインクを用いる場合には、例えばパーフロロエラストマー等、インクが付着しても膨潤・溶解することのない材料であることが好ましい。EPDM(Ethylene Propylene Diene Methylene Linkage、エチレンプロピレンジエン三元共重合体)等を用いることも可能である。
【0057】
押圧部材43は、ローラ支持部材48がガイド孔45に沿って案内されることにより、ガイド孔45の形状に応じて適宜上下動し、ローラ部材46がインク吸収部材39をインク吐出面10に押し当て可能な位置から記録ヘッド7の先端に当接しない待機位置(図3における高さαの位置)まで移動可能となっている。そして、ワイプユニット23を動作させていない場合や、ワイプユニット23を動作させているときであってキャリッジ6を移動させている場合等には、押圧部材43をガイド孔45の待機領域Dまで移動させることにより、キャリッジ6が移動してきた際に記録ヘッド7のインク吐出面10がローラ部材46に接触しないようになっている。
【0058】
その他、図1に示すように、キャリッジ6の移動可能範囲であって記録領域の外側他端には、図示しないインク供給路を介して、記録ヘッド7に各色のインクを供給するインクタンク49が設けられている。また、インク供給路の途中には、インクタンク49から記録ヘッド7に対してインクを送液する送液ポンプ(図示せず)が設けられている。これにより、本実施形態に用いられるような高粘度の濡れ性の良好でないインクであっても確実にインクタンク49から記録ヘッド7に送液することができる。
【0059】
また、インクジェット記録装置100は、装置各部を制御する制御部(図示せず)及び制御部と接続され装置各部に給電を行う電源部(図示せず)を備えている。
【0060】
なお、本実施形態に用いられる記録媒体Sとしては、通常のインクジェット記録装置に適用される普通紙,再生紙,光沢紙などの各種紙,各種布地,各種不織布,樹脂,金属,ガラスなどの材質からなるものが適用可能である。また、記録媒体Sの形態としては、ロール状、カットシート状、板状などが適用可能である。
更に、本実施形態に用いられる記録媒体Sとして、樹脂により表面を被覆した各種紙,顔料を含むフィルム,発泡フィルム等の公知の記録媒体も適用可能である。
【0061】
次に、図6及び図7を参照しつつ、本実施形態の作用について説明する。
【0062】
インクジェット記録装置100の電源がONとなると、電源からインクジェット記録装置100の各部に対して給電が行われる。それから、インクジェット記録装置100に所定の画像情報が送られ、記録媒体Sが記録領域における所定の位置まで搬送されると、キャリッジ6がガイドレール5に沿って記録媒体Sの直上を往復移動する。
【0063】
そして、キャリッジ6の移動中に、図示しない外部装置や入力部等から送られた画像情報に基づいて記録ヘッド7の各ノズル8のインク吐出口9から記録媒体Sに向けてインクが吐出されるとともに、紫外線照射装置11から記録媒体S上に着弾したインクに対して紫外線が照射される。このとき、キャリッジ6の移動方向において記録ヘッド7よりも下流側に位置する紫外線照射装置11から照射される紫外線により、各記録ヘッド7から吐出されたインクが速やかに硬化し、記録媒体S上に定着する。
【0064】
その後、インクジェット記録装置100が前記各動作を繰り返すことにより、記録媒体S上に画像が記録される。
【0065】
そして、所定回数の画像記録が行われたとき、ユーザの設定した任意の時期等に、メンテナンス装置20による記録ヘッド7のメンテナンス動作が行われる。なお、メンテナンス動作に移行するタイミングは特に限定されず、例えば、画像記録開始時から所定の時間が経過したときや所定枚数の画像記録を行うごとにメンテナンス動作を行うようにしてもよい。また、長期間記録動作を行わなかったときには、記録動作の開始前にメンテナンス動作を行うようにしてもよい。
【0066】
図6に示すように、メンテナンス動作時には、まず、キャリッジ6がメンテナンス装置20の吸引キャップユニット21の上方に移動する。キャリッジ6が吸引キャップユニット21の上方に移動すると、吸引キャップユニット21の吸引キャップ25が上方向(図6において矢印B方向)に上昇し、各吸引キャップ25が各記録ヘッド7のインク吐出面10に密着する。そして、吸引ポンプによりインク吐出面10と吸引キャップ25との間の空間を減圧することによりノズル8内に残っているインク等の異物を吸引除去するとともに、ノズル8の内部に新たにインクを充填させる。なお、この吸引動作は1回だけ行ってもよいし、複数回繰り返してもよい。
【0067】
吸引動作が完了すると、吸引キャップユニット21の吸引キャップ25が下方向(図7(a)において矢印C方向)に下降し、各吸引キャップ25が各記録ヘッド7のインク吐出面10から離間する。このとき、インク吐出面10には、図7(a)及び図7(b)に示すように、吸引動作により吸い出されたインク液滴が付着している。
【0068】
その後、キャリッジ6は、次の動作であるワイプユニット23によるワイプ動作に移行するため、図6及び図7における移動方向Aに移動する。この際、キャリッジ6上の記録ヘッド7は、記録ヘッド7の移動方向Aにおける吸引キャップユニット21の下流側に設けられているインク吸収ユニット22の上を通過し、その際に、インク吐出面10に付着しているインク液滴がインク吸収体27の上端部と接触して、インク液滴がインク吸収体27に吸収される(図7(b)参照)。吸収されたインクは、収納部29の底部30の傾斜に沿って流れ、貫通孔31からインク排出管32を介して廃液タンク33に流入し貯留される。
【0069】
なお、図7(b)に示すように、ある記録ヘッド7についてインク吸収ユニット22によるインク吸収動作を行っている際、他の記録ヘッド7は、吸引キャップユニット21の吸引キャップ25の上部に位置するようになっており、これにより、ある記録ヘッド7のインク吸収動作中に他の記録ヘッド7からインクが滴下することがあっても、これを吸引キャップ25によって受けることができ、装置各部にインク液滴が付着するのを防止することができる。
【0070】
さらに、キャリッジ6上の記録ヘッド7は、順次インク吸収ユニット22の上を通過しながら、ワイプユニット23の上方に移動する。この際、押圧部材43は待機領域Dに位置した状態となっており、ローラ部材46が移動中のキャリッジ6等と接触しないようになっている。キャリッジ6上の記録ヘッド7のうち移動方向Aの下流側に位置する2つの記録ヘッド7が所定のメンテナンス位置まで移動すると、ローラ支持部材48がガイド孔45に案内されて副走査方向Yに移動する。これにより、ローラ支持部材48に固定されたローラ部材46が待機領域Dからガイド孔45に沿って移動する。
【0071】
記録ヘッド7のインク吐出面10と押圧部材43のローラ部材46とが対向する位置では、ローラ部材46が、インク吐出面10に接する側とは反対の側からインク吸収部材39に当接し、インク吸収部材39がローラ部材46によって押圧されてインク吐出面10に接触する。これによってインク吸収部材39がインク吐出面10の一端部分に密着した状態となる。そして、押圧部材43がガイド孔45に案内されて副走査方向Yに沿って往復移動することにより、記録ヘッド7のインク吐出面10の全面についてインクの拭き取りが行われるとともに、順次各ノズル8の先端部からインクがインク吸収部材39に吸収される。
【0072】
2つの記録ヘッド7についてメンテナンス動作が終了すると、押圧部材43が待機領域Dに待機し、この状態でキャリッジ6がさらに移動方向Aに移動する。この間にインク吸収部材39が巻き取り軸に巻き取られ、これにより、インク吸収部材39のインク未吸収部分が開口部38から露出する。
【0073】
続いて、キャリッジ6をインク吸収部材39の位置に合わせて2つ分の記録ヘッド7の幅だけ移動させて、移動方向Aの上流側に位置する2つの記録ヘッド7に対して同様にワイプユニット23によるメンテナンス動作を行う。このようにして、2つの記録ヘッド7ごとに押圧部材43の移動とインク吸収部材39の移動とキャリッジ6の移動とを順次行う動作を繰り返すことにより、全ての記録ヘッド7についてワイプユニット23によるメンテナンス動作が完了する。
【0074】
全ての記録ヘッド7についてメンテナンス動作が終了すると、押圧部材43が待機領域Dに待機するとともに、巻き取り軸によりインク吸収部材39を巻き取り、これにより、インク吸収部材39のインク未吸収部分が開口部38から露出する。
【0075】
このようにメンテナンス装置20による一連のメンテナンス動作を完了すると、再びキャリッジ6は記録領域に戻り、記録動作が再開される。
【0076】
以上のように、本実施形態におけるインクジェット記録装置100では、メンテナンス動作として、まず吸引キャップユニット21による吸引動作を行い、ノズル8の内部にインクを充填させる。このため、このため、例えば所謂ノズル欠となっているノズル8、すなわち、ノズル8内に敷設されているピエゾ素子等のアクチュエータまでインクが流入していないためにインクを吐出することができないノズル8があった場合でも、メンテナンス動作後は全てのノズル8にインクを充填させることができ、吐出性能を回復させることができる。
【0077】
そして、このような吸引動作を行った後、ワイプユニット23によるワイプ動作を行う前に、インク吸収体27によるインク吸収動作を行うので、吸引動作によってインク吐出面10に付着したインクが滴下して装置各部に付着することを防止して、装置内部やプラテン3、記録媒体S等を汚したり、インク液滴の付着による各種部品の溶解、腐食等を生じるのを回避することができる。
【0078】
また、ワイプユニット23によるワイプ動作を行う前に、インク吸収動作を行い、インク吐出面10に付着したインク液滴の吸収を行うので、少ない回数のワイプ動作でも十分にインク吐出面10に付着したインクの除去を完了させることができ、効率よく、効果的なメンテナンス動作を行うことができる。
【0079】
また、本実施形態では、ワイプユニット23は、押圧部材43によってインク吸収部材39をインク吐出面10に押圧することによりインク吐出面10に付着したインクを除去するものであるため、ブレード等でインク吐出面10を拭き取る場合と異なり、インク吐出面10を損傷することなくインクの除去を行うことができる。
【0080】
さらに、インク吸収体27は、フェルト、又は、オレフィン系ないしポリオレフィン系の樹脂を材料とする不織布、高密度繊維のうちのいずれかの材料で形成されているため、インクが紫外線硬化性インクのように高粘度のインクの場合でも、インク液滴を適切に吸収することができるとともに、インクの付着による溶解等を生じにくく、長期間の使用に耐える。
【0081】
また、インク吸収ユニット22によるインク吸収動作の際に、インク吸収体27の上端部とインク吐出面10との間には微小な間隙が形成されるようになっており、インク吸収体27がインク吐出面10に直接接触することがないため、インク吐出面10が損傷したり、インク吐出面10に施された撥水処理に影響を与えたりすることもない。
【0082】
また、本実施形態のインクジェット記録装置100は、紫外線硬化性インクのように、25℃の粘度が、10〜50[mPa・s]で、表面張力が20〜40[mN/m]であるような粘性の高いインクを用いて画像記録を行うので、記録媒体Sの種類を問わず、例えば樹脂フィルム等のインク吸収性の乏しい記録媒体Sにおいても高精細な画像を得ることができる。そしてこのようなインクを用いた場合でも、吸引動作後にインク吸収体27によるインク吸収動作を行い、その後にワイプ動作を行うことにより、インク吐出面10に付着したインクを効果的に除去するとともに、ノズル8の先端部に形成されるメニスカスを正常に整えることができる。その結果、記録ヘッド7の各ノズル8から正常にインクを吐出させることができる状態にメンテナンスすることができ、高精細な記録動作を行うことができる。
【0083】
なお、本実施形態では、インク吸収体27を収納する収納部29の底部30が傾斜している構成としたが、インク吸収ユニット22の構成はここに例示したものに限定されない。例えば、インク吸収体27自体の形状を、長手方向の一端側から他端側にかけて傾斜したテーパ形状としてもよい。この場合には、例えばインク吸収体27を収納する収納部29の底部30も同様に傾斜する構成とすることにより、インク吸収体27の上端面がインク吐出面10に対して水平となるようにする。
【0084】
また、本実施形態では、インク吸収体27によって吸収されたインクが収納部29の底部30の傾斜に沿って自然に一端側に流れるように構成したが、例えば、インク排出管32の途中に吸引ポンプ等を設けて、インク吸収体27によって吸収されたインクを強制的に廃液タンク33に送液するように構成してもよい。
【0085】
また、本実施形態においては、第1のメンテナンスユニットが吸引キャップユニット21であり、ノズル8の内部にインクを充填させる第1のメンテナンス動作として、吸引キャップユニット21による吸引動作を行う場合を例としたが、第1のメンテナンス動作は吸引動作に限定されない。例えば、流液ポンプ等によりノズル8からインクを強制流出させるパージ動作や、ピエゾ素子等のアクチュエータを駆動させてノズル8からインクを予備吐出(空吐出)させるフラッシング動作等であってもよい。
また、吸引動作、パージ動作、フラッシング動作のうち、2つ以上を組み合せたメンテナンス動作を第1のメンテナンス動作として行ってもよい。これらの動作によっても、ノズル8の内部にインクを充填させることができ、ノズル欠等を解消することができる。
なお、第1のメンテナンス動作として上記のように複数の動作を組み合せる場合には、第1のメンテナンスユニットを各動作に応じて複数設けてもよいし、1つのユニットによって全ての動作を行うことができるように構成してもよい。例えば、吸引動作とパージ動作やフラッシング動作を行う場合には、パージ動作等により吐出されるインクを受けるインク受け部を吸引キャップとは別に設けてもよいし、吸引キャップの上でパージ動作等を行わせることにより、吸引キャップがインク受け部を兼ねるようにしてもよい。
【0086】
また、本実施形態では、ワイプユニット23が吸引キャップユニット21、インク吸収ユニット22に近接した位置に配置されている場合を例として説明したが、ワイプユニット23の位置はこれに限定されない。
吸引キャップユニット21による吸引動作の後、インク吸収ユニット22によるインク吸収動作を行えば、インク吐出面10に付着したインクの大部分を取り除くことができるため、キャリッジ6を大きく移動させても移動の途中でインクが滴下し、装置各部に付着するおそれがない。このため、吸引キャップユニット21による吸引動作後、次の動作であるワイプ動作を行うワイプユニット23までの間の距離が離れていても特に不都合はなく、例えば、ワイプユニット23を装置本体部1の主走査方向Xにおける他端側(プラテン3を隔てた反対側)に設ける構成としてもよい。
このようにワイプユニット23を吸引キャップユニット21及びインク吸収ユニット22から離れた位置に設けた場合には、吸引動作後、キャリッジ6に搭載された記録ヘッドをワイプユニット23に移動させながら、すなわち、キャリッジ6の移動を停止させずにインク吸収ユニット22によるインク吸収動作を行うことができる。これにより、インク吸収動作を迅速かつ効率的に行うことができる。
【0087】
また、インク吸収ユニット22を設ける位置、数、形状等は、本実施形態に示したものに限定されず、例えば、各吸引キャップ25に隣接してインク吸収ユニット22をそれぞれ設けてもよい。
【0088】
また、本実施形態では、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各インクに対応して4つの記録ヘッド7が設けられている場合を例としたが、インクジェット記録装置で使用されるインクの種類、記録ヘッド7の数はこれに限定されない。
例えば、ライトイエロー(LY)、ライトマゼンタ(LM)、ライトシアン(LC)、その他白インクや透明インク等の各色のインクを使用することもできる。この場合には、各色に対応した記録ヘッド7がキャリッジ6に搭載される。また、各記録ヘッド7の数や配置等はここに例示したものに限定されず、さらに多くの数の記録ヘッド7をキャリッジ6に搭載してもよい。また、例えばイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のインクに対応した4つの記録ヘッド7により1つのヘッドユニットを構成し、このようなヘッドユニットを複数、副走査方向Yに位置をずらして配置してもよい。
そして、記録ヘッド7が4つ以上ある場合等、本実施形態と異なる構成である場合には、吸引キャップユニット21の吸引キャップ25は記録ヘッド7の数に応じて設けられる。また、インク吸収ユニット22、ワイプユニット23の大きさ、幅等の構成も記録ヘッドの構成に応じて適宜変更が可能である。
【0089】
また、本実施形態では、ワイプユニット23として、インク吸収部材39と押圧部材43とを備える構成のものを例として説明したが、ワイプユニットはインク吐出面10に付着したインクを除去することのできるものであればよく、ここに例示したものに限定されない。
また、ワイプユニットに代えて、吸引キャップユニット21及びインク吸収ユニット22によるメンテナンス動作後にインクを吸収する等、ワイプ以外の手法によりインクを除去するメンテナンス手段を設けてもよい。
さらに、メンテナンス装置20を吸引キャップユニット21とインク吸収ユニット22のみで構成し、ワイプユニットを設けない構成としてもよい。この場合には、第1のメンテナンスユニットである吸引キャップユニット21によるメンテナンス動作後に行われる次の動作は、例えば記録動作となる。
【0090】
また、本実施形態においては、シリアル方式の記録ヘッド7を用いたシリアル方式のインクジェット記録装置100を例として説明したが、本発明は、ライン方式の記録ヘッドを備える方式のインクジェット記録装置においても適用可能である。その場合、インク吸収ユニット22及びワイプユニット23を装置本体部1に配設する際の配置向きは、インク吸収ユニット22及びワイプユニット23の長手方向が、記録ヘッドのノズル列が形成されている方向(記録ヘッドの延在方向)と平行になるようにする。
【0091】
また、本発明に係るインクジェット記録装置としては、オンデマンド方式でもコンティニュアス方式のいずれの記録ヘッド7を用いるものでも構わない。また、吐出方式としては、例えば、電気−機械変換方式(例えば、シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型、シェアードウォール型等)、電気−熱変換方式(例えば、サーマルインクジェット型、バブルジェット(登録商標)型等)、静電吸引方式(例えば、電界制御型、スリットジェット型等)及び放電方式(例えば、スパークジェット型等)等のうち、いずれの吐出方式の記録ヘッド7を用いるものでも構わない。
【0092】
また、本実施形態では、紫外線を照射することにより硬化するインクを用いて画像記録を行うものとしたが、インクは必ずしもこれには限定されず、例えば、紫外線、電子線、X線、可視光線、赤外線等の電磁波といった紫外線以外の光を照射することにより硬化するインクであってもよい。この場合、インクには、紫外線以外の光で重合して硬化する重合性化合物と、紫外線以外の光で重合性化合物同士の重合反応を開始させる光開始剤とが適用される。また、紫外線以外の光で硬化する光硬化型のインクを用いる場合は、紫外線光源に代えて、その光を照射する光源を適用する。さらに、光を照射することなく硬化するインクを用いて画像記録を行うものであってもよい。この場合には、光を照射する装置を設ける必要がなく、装置構成の簡易化を図ることができる。
【0093】
その他、本発明が上記実施の形態に限らず適宜変更可能であるのは勿論である。
【0094】
次に、図8及び図9を参照しつつ、本発明に係るインクジェット記録装置の第2の実施形態について説明する。なお、第2の実施形態は、吸引キャップユニットの構成のみが第1の実施形態と異なるものであるため、以下においては、特に第1の実施形態と異なる点について説明する。
【0095】
本実施形態において、インクジェット記録装置は、第1の実施形態と同様に、アクチュエータとして図示しないピエゾ素子等の圧電素子を有する記録ヘッド7(図9参照)を備えている。記録ヘッド7には、インクを吐出するノズル8のインク吐出口9が形成されたインク吐出面10が設けられている。
【0096】
また、インクジェット記録装置は、第1の実施形態と同様に、この記録ヘッド7のノズル8及びインク吐出面10のメンテナンス動作を行うメンテナンス装置50を備えている。
図8は、本実施形態におけるメンテナンス装置50を示す斜視図であり、図9は、このメンテナンス装置50の位置関係を模式的に示す正面図である。
図8及び図9に示すように、メンテナンス装置50は、ノズル8からインクを吸引して各ノズル8の内部にインクを充填させる第1のメンテナンスユニットである吸引キャップユニット51と、第1の実施形態と同様のインク吸収ユニット22と、ワイプユニット23とを備えている。
【0097】
本実施形態において、吸引キャップユニット51は、第1の実施形態と同様、記録ヘッド7の数に対応する4つの吸引キャップ55と、これを支持するユニット支持台54を備えている。また、ユニット支持台54及び吸引キャップ55を覆うように設けられたシャッタ本体部56を備えている。
【0098】
シャッタ本体部56の図9における上面(メンテナンス動作時に記録ヘッド7のインク吐出面10に対向する面)には、吸引キャップ55に対応して4つの開口部57が設けられている。開口部57は、吸引キャップ55よりも大きい寸法に形成されており、吸引動作時には、吸引キャップ55が上昇して開口部57からシャッタ本体部56の外部に露出し、記録ヘッド7のインク吐出面10に接触可能となっている。
【0099】
また、各開口部57には、図示しない駆動源により移動可能に設けられ、開口部57を閉塞するシャッタ板58が設けられている。
シャッタ板58は、吸引動作時には開口部57を塞がない位置まで退避するとともに、吸引動作時以外には、開口部57を閉塞して、吸引キャップ55に紫外線等の活性エネルギー線が照射されないように遮蔽するようになっている。
【0100】
図9に示すように、インク吸収ユニット22は、インク吸収体27の上端部が、吸引キャップユニット51及びワイプユニット23の最も上部に位置する部分(インク吐出面10に近い部分)が非メンテナンス時に位置する高さよりも高い位置(インク吐出面10に近い位置)にくるように配置されている。
本実施形態では、吸引キャップユニット21において最も上部に位置する部分はシャッタ本体部56の上面であり、ワイプユニット23の最も上部に位置する部分はローラ部材46の上端部である。このシャッタ本体部56の上面及びローラ部材46の上端部が非メンテナンス時に位置する高さがαであり、インク吸収ユニット22の上端部の位置がβであるとき、インク吸収ユニット22の上端部の位置βは、αよりも高い位置にある。
【0101】
また、図9に示すように、インク吸収ユニット22は、インク吸収動作の際に、インク吸収体27の上端部とインク吐出面10との間に微小な間隙(図9において、間隙γ)が形成される位置に配置されている。間隙γの大きさは特に限定されないが、記録動作を行う際の記録媒体Sとインク吐出面10との間の距離と同程度であることが好ましく、例えば1.5mm〜2mm程度であることが好ましい。
【0102】
なお、その他の構成は、第1の実施形態のものと同様であるので、同一部材には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0103】
次に、本実施形態における作用について説明する。
【0104】
メンテナンス動作を行う際には、キャリッジ6がメンテナンス装置50の上方に移動する。そして、吸引キャップユニット51のシャッタ板58が開口部57を塞がない退避位置まで退避し、吸引キャップ55が上昇して開口部57からシャッタ本体部56の外部に露出する。吸引キャップ55が記録ヘッド7のインク吐出面10に接触すると、吸引キャップユニット51によるインクの吸引動作が行われる。
【0105】
その後、キャリッジ6が移動方向Aに移動し、インク吸収ユニット22の上方を通過する際に記録ヘッド7のインク吐出面10に付着したインク液滴がインク吸収体27によって吸収される。さらに、記録ヘッド7がワイプユニット23の上方まで移動すると、押圧部材43が往復移動することによりインク吐出面10にインク吸収部材39が押圧され、ワイプによるメンテナンス動作が行われる。
これにより、インク吐出面に付着したインクがインク吸収部材39に吸収除去されるとともに、ノズル8の先端に形成されるメニスカスを整えることができるようになっている。
【0106】
なお、その他の作用は、第1の実施形態のものと同様であるので、その説明を省略する。
【0107】
以上のように、本実施形態によれば、吸引キャップユニット51にシャッタ板58が設けられており、吸引動作時以外には紫外線等が照射されないようになっているので、メンテナンス動作を行う度に紫外線照射装置11を消灯しなくても、吸引キャップに付着したインクが紫外線照射により硬化するのを防止することができる。
そして、このような構成とした場合でも、インク吸収体7の上端部はシャッタ本体部56よりも高い位置にあるので、キャリッジ6等がインク吸収体7の上部を通る際にシャッタ本体部56等に接触することがなく、適切にメンテナンス動作を行うことができる。
【0108】
なお、本実施形態では、吸引キャップユニット51にシャッタ板58を設ける構成としたが、吸引動作時以外に吸引キャップ55に紫外線が照射されることを防止できる機構を備えていれば足り、その構成はここに例示したものに限定されない。
【0109】
なお、その他、本発明が本実施形態に限られないことは、第1の実施形態と同様である。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】第1実施形態に係るインクジェット記録装置の斜視図である。
【図2】図1に示すインクジェット記録装置に設けられるメンテナンス装置の要部構成を示す斜視図である。
【図3】図2に示すメンテナンス装置の要部構成を示す正面図である。
【図4】図3に示すメンテナンス装置に設けられるインク吸収ユニットの要部構成を示す斜視図である。
【図5】図3に示すメンテナンス装置に設けられるワイプユニットの一部を示す側面図である。
【図6】吸引キャップユニットによる吸引動作を示すメンテナンス装置の正面図である。
【図7】図7(a)は、吸引動作後、キャリッジが次の動作に移動する様子を示す図であり、図7(b)は、インク吸収ユニットによるインク吸収動作を示す図である。
【図8】第2の実施形態におけるメンテナンス装置の要部構成を示す斜視図である。
【図9】図8に示すメンテナンス装置の要部構成を示す正面図である。
【符号の説明】
【0111】
7 記録ヘッド
8 ノズル
9 インク吐出口
10 インク吐出面
20 メンテナンス装置
21 吸引キャップユニット
22 インク吸収ユニット
23 ワイプユニット
27 インク吸収体
28 吸収体保持部
29 収納部
32 インク排出管
33 廃液タンク
39 インク吸収部材
43 押圧部材
56 シャッタ本体部
58 シャッタ板
100 インクジェット記録装置
A 移動方向
S 記録媒体
X 主走査方向
Y 副走査方向
γ 間隙


【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出するノズルと当該ノズルのインク吐出口が設けられたインク吐出面とを有する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドをメンテナンスするメンテナンス装置と、を備え、
前記メンテナンス装置は、前記ノズル内にインクを充填させる第1のメンテナンス動作を行う第1のメンテナンスユニットと、前記第1のメンテナンス動作後の前記記録ヘッドの移動方向における前記第1のメンテナンスユニットの下流側に設けられ、前記インク吐出面と非接触状態で該インク吐出面に付着したインクと接触しこれを吸収するインク吸収体を備えるインク吸収ユニットと、を備えていることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記インク吸収ユニットは、前記記録ヘッドに対する前記第1のメンテナンス動作後、前記記録ヘッドに対して、前記記録ヘッドの移動を停止させずにインク吸収動作を行うものであることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記第1のメンテナンスユニットは、インク吸引動作、パージ動作、フラッシング動作のいずれか1つ、若しくはこれらを2つ以上組み合せたメンテナンス動作を行うものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記インク吸収ユニットは、吸収したインクを受ける廃液貯留手段と接続されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記インクを吸収する吸収体が、フェルト、又は、オレフィン系ないしポリオレフィン系の樹脂を材料とする不織布、高密度繊維のうちのいずれかの材料で形成されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記インクは、25℃の粘度が、10〜50[mPa・s]で、表面張力が20〜40[mN/m]であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記インクは、活性化エネルギー線硬化性化合物を含んでおり、活性化エネルギーが紫外線であることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−137210(P2009−137210A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−317437(P2007−317437)
【出願日】平成19年12月7日(2007.12.7)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】