説明

インゴットブロックのクランプ装置およびそれを用いて研削砥石軸に軸承された砥石の研削開始点位置を補正する方法

【課題】 磨耗した研削砥石でワークを研削加工しても所望寸法の加工ワークが得られるように、砥石の研削開始点位置を補正する方法の提供。
【解決手段】 ワークを主軸台7aとタッチセンサー7tを備える心押台7bとよりなるクランプ装置7で挟持し、このクランプ装置に挟持されたインゴットブロックを砥石10gにより円筒研削加工または面取り加工するにおいて、砥石の磨耗量に応じて研削砥石軸の前進移動を行って砥石を研削開始点位置まで移動させる砥石の研削開始点位置補正方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークをその回転軸廻りに回転させる機能を有する主軸台と、この主軸台と心押台とでワークをクランプすることができる芯押台よりなるクランプ装置に関する。また、このクランプ装置に挟持されたインゴットブロックをカップホイール型砥石またはリング状平砥石により円筒研削加工または、面取り加工する際、砥石の磨耗により次の新しいインゴットブロックを研削加工する際に磨耗した砥石で研削加工するとインゴットブロックの削り代量が不足することとなるので、研削砥石軸に軸承された砥石を心押台に備え付けられたタッチセンサーに接触させ、接触時の砥石の位置座標と砥石待機位置での砥石の位置座標の差から砥石磨耗量dを演算し、その演算された磨耗量dの値に応じて研削砥石軸の前進移動を行って砥石を研削開始点位置まで移動させる砥石の研削開始点位置補正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコンインゴットブロックを主軸台と心押台とからなるクランプ装置に挟持し、シリコンインゴットブロックを回転させながらカップホイール型砥石を用いて円筒研削することは知られている。また、特許弟3649393号明細書(特許文献1)は、ワークテーブル上に載置された四角型シリコンインゴットブロックの上面に砥粒と液体または気体との混合物を散布しながら平砥石または研磨ブラシの研磨工具でシリコンインゴットブロックと研磨工具とを相対運動させて研磨してシリコンインゴットブロック表面に存在する微小な凹凸を研磨加工し、得られた表面粗さRyが8μm以下のシリコンインゴットブロックをスライス加工して太陽電池用ウエハにするウエハの製造方法を提案する。
【0003】
また、本願特許出願人は、特願2010−131606号明細書(特許文献2)で、シリコンインゴットブロックを主軸台と芯押台とからなるクランプ装置に挟持し、シリコンインゴットブロックの回転軸心を挟んでカップホイール型砥石またはリング状平砥石を軸承する砥石軸の一対を回転軸心に対して垂直に、かつ、この一対の砥石軸心が一直線上となるように砥石頭を設置したシリコンインゴットの複合面取り加工装置を提案した。図5にこのシリコンインゴットの複合面取り加工装置の平面図を示す。図5において、7bは主軸台、7aは心押台、wはシリコンインゴットブロック、11g,11gはカップホイール型粗砥石、10g,10gはカップホイール型仕上げ砥石、10a,11aは砥石軸である。
【0004】
一方、主軸台と芯押台とからなるクランプ装置を用いるワークの円筒研削加工方法において、熱履歴により生じる主軸台のテーパ(傾き)を自動補正する方法は知られている。例えば、特開平06−114702号公報(特許文献3)は、NC円筒研削盤における自動テーパ補正装置であって、砥石台上前側に測定位置と待機位置とに移動可能にタッチセンサーを設け、テーブル上に固着された主軸台の砥石台側端面に前記タッチセンサーにより主軸センタの軸心位置を検知するための第一基準部を設け、テーブル上のZ軸案内上の移動位置決め可能な心押台に前記タッチセンサーにより心押センタの軸心位置を検知するための第二基準部を設け、前記心押センタの軸心をX軸方向に移動する手段を設け、前記タッチセンサーにより測定した前記第一基準部と前記心押センタの第二基準部それぞれのX軸寸法差と予め記憶する設定値によりテーパ補正量を算出する手段を設けてなることを特徴とする自動テーパ補正装置を提案する。
【0005】
また、特開平11−216668号公報(特許文献4)は、ワークを支持して回転する主軸台および心押台と、前記ワークを研削する砥石車を装着した砥石台とを備え、前記砥石台又は主軸台及び心押台をワークの回転軸線と直交する方向に進退するようにした研削盤において、研削位置から離隔した前記砥石車に接触し得る接触体と、非加工中における回転中の砥石車に対し前記接触体を接触させたときの該接触体が発生する振動数、振動波形、音質又は音量等の砥石車良否判定要素のうち少なくとも一つの判定要素に関するデータを測定するアコースティックエミッションセンサ測定手段と、砥石車の良否を判定する判定手段とを備えた研削盤を提案する。
【0006】
一方、特開2002−307302号公報(特許文献5)は、ワークを載置する水平方向に移動可能なワークテーブルと、回転しながら前記ワークを研削する円板状の砥石車と、前記砥石車近傍に設けられ、砥石車とワーク間の距離に応じた電気信号を出力するカラ−識別センサ、空気圧力センサ、および超音波センサより選ばれた非接触検出手段と、前記非接触検出手段と共にワークを研削するために往復移動する砥石移動手段と、前記砥石移動手段の動作を操作する操作手段と、前記非接触検出手段から出力された電気信号Eiが、砥石車がワーク表面より0.01〜0.03mmの距離である第1基準信号値Eoを予め記憶する記憶手段と、前記非接触検出手段からの電気信号Eiが第1基準信号値Eoに一致することを制御装置の比較部が感知し、ワーク表面への砥石ステップ送り速度を1μmに変更する指示を出す指示手段と、前記砥石車がワークに接触したことを検出する振動センサおよび砥石駆動モータのトルク変化を検知するギャップエリミネータより選ばれた接触検出手段と、および、前記接触検出手段から出力される電気信号を受け、砥石車がワークに接触した砥石車位置を砥石の切り込み開始点位置と認識する認識手段とを具備する研削装置を提案する。
【0007】
また、特開2002−370163号公報(特許文献6)は、研削装置の砥石頭近傍に設置されたノズルより研削液を、ワークテーブルの上に載置されたワークの加工点に向けてワーク表面に供給しつつ、該ワーク表面に対して回転している砥石車をワーク表面に下降させ、前記研削液を供給するノズル内に設置した水中マイクロホンが受波した研削液の音圧信号を所定の周波数帯域を通過させるバンドパスフィルタに通過させ、このバンドパスフィルタを通過した音圧信号より基本周波数を抽出し、該基本周波数における音圧信号の値(P)が、予め設定した前記基本周波数における音圧信号の値(P0)に達した(P=P0)ときをワークに対する砥石車の切り込み開始点と決定する方法を提案する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許弟3649393号明細書
【特許文献2】特願2010−131606号明細書
【特許文献3】特開平06−114702号公報
【特許文献4】特開平11−216668号公報
【特許文献5】特開2002−307302号公報
【特許文献6】特開2002−370163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
シリコンインゴットブロックは、ウィヤーカットされ、半導体基板や太陽電池用基板として利用される。前記特許文献1および特許文献2記載のシリコンインゴットブロックを主軸台と心押台とからなるクランプ装置に挟持し、カップホイール型砥石またはリング状平砥石を用いて円筒研削加工または面取り加工する際、何本ものインゴットブロックを研削加工していると砥石が磨耗して次の新しくクランプ装置に挟持されたインゴットブロックを研削加工すると所望量の研削取り代とならないことが生じる。よって、砥石の磨耗量を測定し、磨耗量が閾値を超える前に、砥石頭の砥石がインゴットブロックに接触する研削開始点位置に届くための砥石軸の前進距離を磨耗量に応じて補正する必要がある。
【0010】
本願発明者らは、前記特許文献5および特許文献6記載の平面研削装置における砥石車の切り込み開始点位置決め方法を、前記特許文献1および特許文献2記載のシリコンインゴットブロックを主軸台と心押台とからなるクランプ装置に挟持し、カップホイール型砥石またはリング状平砥石を用いて円筒研削加工または面取り加工する際の砥石の研削開始点位置を補正する方法に応用する技術に取り組み、その研削砥石軸に軸承された砥石の研削開始点位置を補正する方法、およびその方法を実施するに適したタッチセンサーを備える心押台の発明に到った。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の請求項1は、インゴットブロックをその回転軸心廻りに回転させる機能を有する主軸台と、前記インゴットブロックの回転軸心を押圧する心押台とでインゴットブロックをクランプするクランプ装置と、インゴットブロックの回転軸心に対しカップホイール型砥石またはリング状平砥石を平行に、かつ、前記カップホイール型砥石またはリング状平砥石を軸承する砥石軸が前記インゴットブロックの回転軸心に対し垂直に設けた研削装置において、前記心押台として心押台の押圧シャフトを内蔵するハウジングの前方に設けられたリング状カラー上にタッチセンサーを砥石軸に対し平行となるよう固定した心押台を用いることを特徴とするインゴットブロックのクランプ装置を提供するものである。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1に記載のクランプ装置に挟持されたインゴットブロックをカップホイール型砥石またはリング状平砥石により円筒研削加工または面取り加工する際、次の工程を経て研削砥石軸に軸承された砥石の研削開始点位置を補正する方法を提供するものである。
1)砥石の磨耗量の許される閾値(d)を数値制御装置の記憶部に入力する。
2)砥石待機位置にある砥石の位置座標(X0,Y0,Z0)を数値制御装置の記憶部に入力する。
3)砥石待機位置にある砥石をインゴットブロックの回転軸心方向に距離y前進させてインゴットブロックに接触した砥石の位置座標(X0,Y0+y0,Z0)を砥石によるワークの研削開始点として数値制御装置の記憶部に送信する。
4)砥石待機位置にある砥石を軸承する砥石軸をX軸方向に距離x移動させた後、前記砥石軸に軸承された砥石を距離y前進させて前記タッチセンサーと接触した砥石の位置座標(X0+x,Y0+y1,Z0)を読み取り、タッチセンサーの位置座標(X0+x,Y0+y1,Z0)として数値制御装置の記憶部に送信する。
5)砥石軸に軸承された砥石とクランプ装置の相対的な移動によりインゴットブロックの円筒研削または面取り加工を行った後、砥石を砥石待機位置に戻す。
6)砥石待機位置にある砥石を軸承する砥石軸をX軸方向に距離x移動させた後、前記砥石軸に軸承された砥石を距離y前進させて前記タッチセンサーと接触した砥石の位置座標(X0+x,Y0+y2,Z0)を読み取り、タッチセンサーと接触した砥石の位置座標(X0+x,Y0+y2,Z0)として数値制御装置の記録部に送信する。
7)数値制御装置の演算部で砥石の磨耗量の絶対値|y2-y1|を演算し、比較部に送信する。
8)比較部で前記砥石の磨耗量の絶対値|y2-y1|が閾値d内であるか閾値d外であるか判定する。
9)磨耗量の絶対値|y2-y1|が閾値d内であるときは砥石による研削開始点(X0,Y0+y0,Z0)を変更せずに砥石軸を前進させてクランプ装置に新しく挟持されたインゴットブロックを砥石により円筒研削加工または面取り加工を行う。
10)磨耗量の絶対値|y2-y1|が閾値d以外であるときは、砥石による研削開始点(X0,Y0+y0,Z0)を補正研削開始点(X0,Yy2−y1,Z0)と置き換えるプリセット信号を数値制御の記憶部に送信するとともに、砥石軸を補正研削開始点(X0,Yy2−y1,Z0)まで前進させてクランプ装置に挟持されたインゴットブロックを砥石により円筒研削加工または面取り加工を行う。
【発明の効果】
【0013】
砥石がワークに接触する研削開始点位置を決めるに必要なタッチセンサーを心押台の環状カラーに固定して備えるので、ワークの研削加工にタッチセンサーの存在が障害となることはない。また、X軸リニアスケール、Y軸リニアスケール、Z軸リニアスケールを備える数値制御研削装置を用いるので、砥石研削開始点位置座標の補正が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は心押台の平面図である。
【図2】図2は心押台の左側面図である。
【図3】図3はインゴットブロックの面取り加工装置の平面図である。
【図4】図4はインゴットブロックの面取り加工のフローを示す図である。
【図5】図5はインゴットブロックの複合面取り加工装置の平面図である。(未公開)
【発明を実施するための形態】
【0015】
図5に示すインゴットブロックの複合面取り加工装置1は、a)機枠2上に左右方向に設けられた案内レール上を左右方向に往復移動できるように設けられたワークテーブル4、
b)このワークテーブル4上に左右に分離して搭載された主軸台7aと心押台7bの一対よりなるクランプ装置7、
c)前記クランプ装置に支架されたワークを載せた前記ワークテーブルを左右方向に往復移動させる駆動機構、
d)前記ワークテーブル4を正面側から直角に見る方向であって、かつ、左側方向より右側方向へ向かって、
e)前後移動可能および上下昇降可能な砥石軸の一対に軸承されたカップホイール型砥石11g,11gの一対をその砥石面が相対向するようにワークテーブルを挟んでワークテーブル前後に設けられた粗研削ステージであって、前記一対のカップホイール型砥石の砥石径はワークの対角線長さより共に大きい直径を示し、かつ、一方のカップホイール型砥石の径は他方のカップホイール型砥石の径より5〜20mm短い、
f)前記粗研削ステージの右横側に平行に設けた、前後移動可能および上下昇降可能な砥石軸の一対に軸承されたカップホイール型砥石の一対10g,10gをその砥石面が相対向するようにワークテーブルを挟んでワークテーブル前後に設けられた仕上げ研削ステージ、
および
g)上記仕上げ研削ステージの右横側位置であって前記ワークテーブル上に左右に分離して搭載された前記主軸台と心押台の一対よりなるクランプ装置にワークの移出入を可能とする開口部を備えるロードポート8、
複合面取り加工装置1の左端面に前記ワークテーブルの左右移動案内レールを延長して設けるとともに、ワークテーブルを搭載するクランプ装置の主軸台と心押台のワーク支持軸を挟んで一対の回転刃91a,91bをその回転刃直径面が相対向するようにワークテーブルを挟んでワークテーブル前後に設けられた側面剥ぎ加工ステージを設けたことを特徴とするインゴットブロックの複合面取り加工装置1である。
【0016】
上記複合面取り加工装置1を用いてシリコンインゴットブロックの円筒研削加工または面取り加工を行う方法は、次の工程を経て行われる。
【0017】
1)ロードポート位置にあるクランプ装置の主軸台と心押台に角柱状インゴットブロックを支架する。
【0018】
2)前記クランプ装置を搭載するワークテーブルを左方向に移動させ、角柱状インゴットブロック(ワーク)の右端が粗研削ステージのカップホイール型粗研削砥石の左端を越えた位置で前記ワークテーブルの移動を停止させる。
【0019】
3)粗研削ステージの一対の砥石軸の一方を上昇、他方を下降させて双方の砥石軸芯間高さを50〜120mmとする。
【0020】
4)粗研削ステージの一対の砥石軸を前進移動させこれら砥石軸に軸承されたカップホイール型粗研削砥石間の距離が角柱状インゴットブロックの四隅Rコーナー部の取り代量位置に到達したら前進移動を停止し、ついでこれら砥石軸を回転させる。
【0021】
5)クランプ装置の主軸台のワークスピンドル軸を回転させることにより角柱状インゴットブロックをその軸芯方向(C軸)に回転させ、ついでワークテーブルを右方向に移動させて前記回転しているカップホイール型粗研削砥石の砥石刃に角柱状インゴットブロックのRコーナー部を当接させて研削加工を開始しワークテーブルの右方向移動を続行し、クランプ装置に支架されている角柱状インゴットブロックの左端が前記一対のカップホイール型砥石の右端位置を越えたらRコーナー部粗面取り加工終了とし、前記一対のカップホイール型粗研削砥石を軸承する砥石軸を後退させる。また、Rコーナー部粗面取り加工された角柱状インゴットブロックを支架するクランプ装置の主軸台のワークスピンドル軸の回転を停止させる。
【0022】
6)Rコーナー部粗面取り加工された角柱状インゴットブロックを支架するクランプ装置を搭載するワークテーブルを左方向に移動させ、前記角柱状インゴットブロックの右端が粗研削ステージのカップホイール型粗研削砥石の左端を越えた位置で前記ワークテーブルの移動を停止させる。
【0023】
7)粗研削ステージの一対の砥石軸の一方を下降、他方を上昇させて双方の砥石軸芯
が前記角柱状インゴットブロックの軸芯と同一線上となる位置に調整する。
【0024】
8)上記粗研削ステージの一対の砥石軸を前進移動させ、角柱状インゴットブロックの両側面の取り代量位置にこれら砥石軸に軸承されたカップホイール型粗研削砥石が到達したら砥石軸の前進移動を停止し、ついでこれら砥石軸を回転させることにより砥石軸に軸承されたカップホイール型粗研削砥石を回転させる。
【0025】
9)前記クランプ装置を搭載するワークテーブルを右方向に移動させて前記回転しているカップホイール型粗研削砥石の砥石刃に角柱状インゴットブロックの両側面を当接させて粗研削加工を開始しつつワークテーブルの右方向移動を続行し、クランプ装置に支架されている角柱状インゴットブロックの左端が前記一対のカップホイール型粗研削砥石の右端位置を越えたら両側面粗面取り加工終了とし、前記一対のカップホイール型粗研削砥石を軸承する砥石軸を後退させる。
【0026】
10)上記クランプ装置を搭載するワークテーブルを左方向に移動させて前記角柱状インゴットブロックの右端が粗研削ステージのカップホイール型粗研削砥石の左端を越えた位置で前記ワークテーブルの移動を停止させる。
【0027】
11)上記クランプ装置の主軸台のワークスピンドルを90度回転させ、シリコンブロックの未粗研削加工側面がカップホイール型粗研削砥石面に対向する位置とする。
【0028】
12)前記一対の砥石軸を前進移動させ、角柱状インゴットブロックの両側面の取り代量位置にこれら砥石軸に軸承されたカップホイール型粗研削砥石が到達したら砥石軸の前進移動を停止する。
【0029】
13)前記クランプ装置を搭載するワークテーブルを右方向に移動させて前記回転しているカップホイール型粗研削砥石の砥石刃に角柱状インゴットブロックの両側面を当接させて粗研削加工を開始しつつワークテーブルの右方向移動を続行し、クランプ装置に支架されている角柱状インゴットブロックの左端が前記一対のカップホイール型砥石の右端位置を越えたら両側面粗面取り加工終了とし、前記一対のカップホイール型粗研削砥石を軸承する砥石軸を後退させ、ついで、砥石軸の回転を停止する。
【0030】
14)仕上げ研削ステージの一対の砥石軸の一方を上昇、他方を下降させて双方の砥石軸芯間高さを50〜120mmとする。
【0031】
15)仕上げ研削ステージの一対の砥石軸を前進移動させこれら砥石軸に軸承されたカップホイール型仕上げ研削砥石間の距離が角柱状インゴットブロックの四隅Rコーナー部の取り代量位置に到達したら前進移動を停止し、ついでこれら砥石軸を回転させる。
【0032】
16)クランプ機構の主軸台のワークスピンドル軸を回転させることにより角柱状インゴットブロックをその軸芯方向に回転させ、ついで前記粗研削加工された角柱状インゴットブロックを支架するクランプ装置を搭載するワークテーブルを右方向に移動させて前記回転しているカップホイール型仕上げ研削砥石の砥石刃に角柱状インゴットブロックのRコーナー部を当接させて研削加工を開始しワークテーブルの右方向移動を続行し、クランプ機構に支架されている角柱状インゴットブロックの左端が前記一対のカップホイール型仕上げ砥石の右端位置を越えたらRコーナー部仕上げ面取り加工終了とし、前記一対のカップホイール型仕上げ研削砥石を軸承する砥石軸を後退させる。また、Rコーナー部仕上げ面取り加工された角柱状インゴットブロックを支架するクランプ装置の主軸台のワークスピンドル軸の回転を停止させる。
【0033】
17)Rコーナー部仕上げ面取り加工された角柱状インゴットブロックを支架するクランプ装置を搭載するワークテーブルを左方向に移動させ、前記角柱状インゴットブロックの右端が仕上げ研削ステージのカップホイール型仕上げ研削砥石の左端を越えた位置で前記ワークテーブルの移動を停止させる。
【0034】
18)仕上げ研削ステージの一対の砥石軸の一方を下降、他方を上昇させて双方の砥石軸芯が前記角柱状インゴットブロックの軸芯と同一線上となる位置に調整する。
【0035】
19)上記仕上げ研削ステージの一対の砥石軸を前進移動させ、角柱状インゴットブロックの両側面の取り代量位置にこれら砥石軸に軸承されたカップホイール型仕上げ研削砥石が到達したら砥石軸の前進移動を停止し、ついでこれら砥石軸を回転させることにより砥石軸に軸承されたカップホイール型仕上げ研削砥石を回転させる。
【0036】
20)前記クランプ装置を搭載するワークテーブルを右方向に移動させて前記回転しているカップホイール型砥石の砥石刃に角柱状インゴットブロックの両側面を当接させて仕上げ研削加工を開始しつつワークテーブルの右方向移動を続行し、クランプ装置に支架されている角柱状インゴットブロックの左端が前記一対のカップホイール型仕上げ研削砥石の右端位置を越えたら両側面仕上げ面取り加工終了とし、前記一対のカップホイール型仕上げ研削砥石を軸承する砥石軸を後退させる。
【0037】
21)上記クランプ装置を搭載するワークテーブルを左方向に移動させて前記角柱状インゴットブロックの右端が仕上げ研削ステージのカップホイール型仕上げ研削砥石の左端を越えた位置で前記ワークテーブルの移動を停止させる。
【0038】
22)上記クランプ装置の主軸台のワークスピンドルを90度回転させ、シリコンブロックの未仕上げ研削加工側面がカップホイール型仕上げ研削砥石面に対向する位置とする。
【0039】
23)前記一対の砥石軸を前進移動させ、角柱状インゴットブロックの両側面の取り代量位置にこれら砥石軸に軸承されたカップホイール型仕上げ研削砥石が到達したら砥石軸の前進移動を停止する。
【0040】
24)前記クランプ装置を搭載するワークテーブルを右方向に移動させて前記回転しているカップホイール型仕上げ研削砥石の砥石刃に角柱状インゴットブロックの両側面を当接させて仕上げ研削加工を開始しつつワークテーブルの右方向移動を続行し、クランプ機構に支架されている角柱状インゴットブロックの左端が前記一対のカップホイール型仕上げ研削砥石の右端位置を越えたら両側面仕上げ面取り加工終了とし、前記一対のカップホイール型仕上げ研削砥石を軸承する砥石軸を後退させ、ついで、砥石軸の回転を停止する。
【0041】
25)前記クランプ装置を搭載するワークテーブルを右方向に移動させ、ロードポート位置で移動停止させ、ついでクランプ機械の心押台を後退させて四隅コーナー部の面取り加工および四側面の面取り加工が終了した角柱状インゴットブロックの支架を解除し、この角柱状インゴットブロックを複合面取り加工装置外へ搬出する。
【0042】
上記心押台7bは、図1、図2および図3に示すように心押台7bの押圧シャフト7sを内蔵するハウジング7hの前方に設けられたリング状カラー7r上にタッチセンサー一対7t,7tを砥石軸10a,10aに対し平行となるよう固定してある。
【0043】
タッチセンサー7tは、メトロール社のタッチセンサー“P21EDHB−ULD”(商品名)の外に、株式会社オムロンからも静電容量型タッチセンサーを入手できる。
【0044】
図3および図5において、x軸リニアスケール、y軸リニアスケール、および、z軸リニアスケールは図示されておらず、数値制御複合面取り加工装置1に備えられたx軸リニアスケール、y軸リニアスケール、および、z軸リニアスケールを利用した。
【0045】
上述の面取り加工方法で何本ものインゴットブロックの面取り加工を行っていると砥医師が磨耗してしまう。それゆえ、時々砥石の磨耗量を測定し、砥石交換する時期を見出す必要がある。あるいは、砥石研削開始点の位置補正を行う必要がある。
【0046】
この砥石研削開始点の位置補正は、次の工程を経て研削砥石軸に軸承された砥石の研削開始点位置を補正する。
【0047】
(s1)砥石の磨耗量の許される閾値(d)を数値制御装置の記憶部に入力する。
【0048】
(S2)砥石待機位置にある砥石の位置座標(X0,Y0,Z0)を数値制御装置の記憶部に入力する。
【0049】
(S3)砥石待機位置にある砥石をインゴットブロックの回転軸心方向に距離y前進させてインゴットブロックに接触した砥石の位置座標(X0,Y0+y0,Z0)を砥石によるワークの研削開始点として数値制御装置の記憶部に送信する。
【0050】
(S4)砥石待機位置にある砥石を軸承する砥石軸をX軸方向に距離x移動させた後、前記砥石軸に軸承された砥石を距離y前進させて前記タッチセンサーと接触した砥石の位置座標(X0+x,Y0+y1,Z0)を読み取り、タッチセンサーの位置座標(X0+x,Y0+y1,Z0)として数値制御装置の記憶部に送信する。
【0051】
(S5)砥石軸に軸承された砥石とクランプ装置の相対的な移動によりインゴットブロックの円筒研削または面取り加工を行った後、砥石を砥石待機位置に戻す。
【0052】
(S6)砥石待機位置にある砥石を軸承する砥石軸をX軸方向に距離x移動させた後、前記砥石軸に軸承された砥石を距離y前進させて前記タッチセンサーと接触した砥石の位置座標(X0+x,Y0+y2,Z0)を読み取り、タッチセンサーと接触した砥石の位置座標(X0+x,Y0+y2,Z0)として数値制御装置の記録部に送信する。
【0053】
(S7)数値制御装置の演算部で砥石の磨耗量の絶対値|y2-y1|を演算し、比較部に送信する。
【0054】
(S8)比較部で前記砥石の磨耗量の絶対値|y2-y1|が閾値d内であるか閾値d外であるか判定する。
【0055】
(S9)磨耗量の絶対値|y2-y1|が閾値d内であるときは砥石による研削開始点(X0,Y0+y0,Z0)を変更せずに砥石軸を前進させてクランプ装置に新しく挟持されたインゴットブロックを砥石により円筒研削加工または面取り加工を行う。
【0056】
(S10)磨耗量の絶対値|y2-y1|が閾値d以外であるときは、砥石による研削開始点(X0,Y0+y0,Z0)を補正研削開始点(X0,Yy2−y1,Z0)と置き換えるプリセット信号を数値制御の記憶部に送信するとともに、砥石軸を補正研削開始点(X0,Yy2−y1,Z0)まで前進させてクランプ装置に挟持されたインゴットブロックを砥石により円筒研削加工または面取り加工を行う。
【0057】
図4において、一対の砥石10a,10aの研削開始点の補正は、同時に行うことができる。
【0058】
また、砥石10a,10aの研削開始点の補正は、新しいインゴットブロックがクランプ装置に挟持される毎に行ってもよいし、インゴットブロックが2〜10本面取り加工される毎に行ってもよい。この研削開始点の補正を実行する時期(タイミング)は、数値制御装置の記憶部にパラメータとして回数nを入力し、研削開始点の補正を実行させてもよい。n=1は、新しいインゴットブロックがクランプ装置に挟持される毎であり、n=5は、インゴットブロックが5本面取り加工される毎となる。
【0059】
インゴットブロックとしては、単結晶シリコンインゴットブロック、多結晶シリコンインゴットブロック、サファイアインゴットブロックなどが利用できる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の主軸台と心押台よりなるクランプ装置でワークを挟持し、研削砥石で研削加工を行う際の、研削砥石軸に軸承された砥石の研削開始点位置を補正する方法は、研削加工されたインゴットブロックの寸法が常に所望された加工寸法で加工できる利点を有する。
【符号の説明】
【0061】
1 複合面取り加工装置
w インゴットブロック
1 複合面取り加工装置
4 ワークテーブル
7 クランプ装置
7a 主軸台
7b 心押台
7r リング状カラー
7t タッチセンサー
10,11 砥石頭
10a,11a 砥石軸
10g 仕上げ研削砥石
11g 粗研削砥石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インゴットブロックをその回転軸心廻りに回転させる機能を有する主軸台と、前記インゴットブロックの回転軸心を押圧する心押台とでインゴットブロックをクランプするクランプ装置と、インゴットブロックの回転軸心に対しカップホイール型砥石またはリング状平砥石を平行に、かつ、前記カップホイール型砥石またはリング状平砥石を軸承する砥石軸が前記インゴットブロックの回転軸心に対し垂直に設けた研削装置において、前記心押台として心押台の押圧シャフトを内蔵するハウジングの前方に設けられたリング状カラー上にタッチセンサーを砥石軸に対し平行となるよう固定した心押台を用いることを特徴とするインゴットブロックのクランプ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のクランプ装置に挟持されたインゴットブロックを砥石により円筒研削加工または面取り加工する際、次の工程を経て研削砥石軸に軸承された砥石の研削開始点位置を補正する方法。
(1).砥石の磨耗量の許される閾値(d)を数値制御装置の記憶部に入力する。
(2).砥石待機位置にある砥石の位置座標(X0,Y0,Z0)を数値制御装置の記憶部に入力する。
(3).砥石待機位置にある砥石をインゴットブロックの回転軸心方向に距離y前進させてインゴットブロックに接触した砥石の位置座標(X0,Y0+y0,Z0)を砥石によるワークの研削開始点として数値制御装置の記憶部に送信する。
(4).砥石待機位置にある砥石を軸承する砥石軸をX軸方向に距離x移動させた後、前記砥石軸に軸承された砥石を距離y前進させて前記タッチセンサーと接触した砥石の位置座標(X0+x,Y0+y1,Z0)を読み取り、タッチセンサーの位置座標(X0+x,Y0+y1,Z0)として数値制御装置の記憶部に送信する。
(5).砥石軸に軸承された砥石とクランプ装置の相対的な移動によりインゴットブロックの円筒研削または面取り加工を行った後、砥石を砥石待機位置に戻す。
(6).砥石待機位置にある砥石を軸承する砥石軸をX軸方向に距離x移動させた後、前記砥石軸に軸承された砥石を距離y前進させて前記タッチセンサーと接触した砥石の位置座標(X0+x,Y0+y2,Z0)を読み取り、タッチセンサーと接触した砥石の位置座標(X0+x,Y0+y2,Z0)として数値制御装置の記録部に送信する。
(7).数値制御装置の演算部で砥石の磨耗量の絶対値|y2-y1|を演算し、比較部に送信する。
(8).比較部で前記砥石の磨耗量の絶対値|y2-y1|が閾値d内であるか閾値d外であるか判定する。
(9).磨耗量の絶対値|y2-y1|が閾値d内であるときは砥石による研削開始点(X0,Y0+y0,Z0)を変更せずに砥石軸を前進させてクランプ装置に新しく挟持されたインゴットブロックを砥石により円筒研削加工または面取り加工を行う。
(10).磨耗量の絶対値|y2-y1|が閾値d以外であるときは、砥石による研削開始点(X0,Y0+y0,Z0)を補正研削開始点(X0,Yy2−y1,Z0)と置き換えるプリセット信号を数値制御の記憶部に送信するとともに、砥石軸を補正研削開始点(X0,Yy2−y1,Z0)まで前進させてクランプ装置に挟持されたインゴットブロックを砥石により円筒研削加工または面取り加工を行う。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−81567(P2012−81567A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−231038(P2010−231038)
【出願日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(391011102)株式会社岡本工作機械製作所 (161)
【Fターム(参考)】