インゴット搬送投入装置
【課題】水平方向における設置スペースが少なくて済み、安全にインゴットを収容できるインゴット搬送投入装置の提供。
【解決手段】インゴット収容部10は予熱部30の鉛直下方に配置されている。収容ケース11内は水平方向へ2つの部屋11a、11bに区切られ、各部屋11a、11bにはそれぞれ複数のインゴット2が鉛直方向に積層されている。予熱室30a内の上段面32と下段面33とにはそれぞれインゴット2を載置可能である。上段面32の上方と下段面33の下方とにはヒータ35が設けられている。鉛直方向搬送手段50は、鉛直方向へ延出する支柱51と、支柱51の長手方向たる鉛直方向へ支柱51に対して摺動可能なリフト部52とを有し、リフト部52にはインゴット2を搬送可能なラック54が設けられている。
【解決手段】インゴット収容部10は予熱部30の鉛直下方に配置されている。収容ケース11内は水平方向へ2つの部屋11a、11bに区切られ、各部屋11a、11bにはそれぞれ複数のインゴット2が鉛直方向に積層されている。予熱室30a内の上段面32と下段面33とにはそれぞれインゴット2を載置可能である。上段面32の上方と下段面33の下方とにはヒータ35が設けられている。鉛直方向搬送手段50は、鉛直方向へ延出する支柱51と、支柱51の長手方向たる鉛直方向へ支柱51に対して摺動可能なリフト部52とを有し、リフト部52にはインゴット2を搬送可能なラック54が設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶解炉へインゴットを搬送し投入するインゴット搬送投入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インゴット搬送投入装置としては、インゴットを複数収容するインゴット収容部と、インゴットをインゴット収容部から溶解炉へと搬送し、当該溶解炉へ投入するための搬送投入手段とを有する構成のものが従来より知られている。
【0003】
実公平8−7973号公報には、このような構成のインゴット搬送投入装置が記載されている。インゴット搬送投入装置は、インゴットを収容するインゴット収容部と、インゴット収容部のインゴットを溶解炉まで搬送すると共に予熱する予熱部と、予熱部において予熱されたインゴットを溶解炉へ投入する投入部とを有している。
【0004】
インゴット収容部は、水平方向において予熱部に隣接配置されており、インゴット収容部には、複数のインゴットが水平方向に並列帯状に配列させて収容されている。水平方向に並列帯状に配列された複数のインゴットは、1本ずつ予熱部に搬入され、1本ずつ溶解炉及び投入部の方向へ搬送されながら予熱される。そして、インゴットが投入部に至り溶解炉に投入される。
【特許文献1】実公平8−7973号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記公報記載の従来のインゴット搬送投入装置では、上述のようにインゴット収容部は水平方向において予熱部に隣接配置されており、水平方向におけるインゴット搬送投入装置の設置スペースを広く確保する必要があった。
【0006】
また、インゴット収容部には、前述のように複数のインゴットが水平方向に並列帯状に配列させて収容されており、配列されている位置は、溶解炉内の金属溶湯の液面よりも上方である。インゴット群がこのような上方の高い位置に水平方向に並列帯状に配列させられているため、万が一落下した場合には大変危険である。
【0007】
そこで、本発明は、水平方向における設置スペースが少なくて済み、安全にインゴットを収容できるインゴット搬送投入装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、複数のインゴット2を収容可能なインゴット収容部10と、該インゴット2を該インゴット収容部10から溶解炉80へ搬送し投入するための搬送投入手段とを有するインゴット搬送投入装置1において、該搬送投入手段は、該インゴット収容部10の鉛直方向の位置に配置され該インゴット2を搬送しながら予熱する予熱部30と、水平方向において該インゴット収容部10及び該予熱部30に隣接配置され該インゴット収容部10内の該インゴット2を該インゴット収容部10から該予熱部30へと搬送する鉛直方向搬送手段50とを備えるインゴット搬送投入装置1を提供している。
【0009】
ここで、インゴット収容部10は、鉛直方向に積層した複数のインゴット2を収納可能な収容ケース11を備えることが好ましい。
【0010】
また、予熱部30は、水平方向に並べられた複数のインゴット2を並列させて平行に搬送可能な搬送手段32、33、40と、該搬送手段32、33、40の鉛直方向の上方と鉛直方向の下方とにそれぞれ設けられたヒータ35とを備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の請求項1記載のインゴット搬送投入装置によれば、予熱部は、インゴット収容部の鉛直方向の位置に配置されているため、水平方向において予熱部とインゴット収容部とを配置させずに済み、水平方向におけるインゴット搬送投入装置の設置スペースを少なく済ませることができる。
【0012】
また、水平方向においてインゴット収容部及び予熱部に隣接配置されインゴット収容部内のインゴットをインゴット収容部から予熱部へと搬送する鉛直方向搬送手段を有しているため、予熱部に搬入するために複数のインゴットを予め高い位置に収容配置させずに済み、予熱前に複数のインゴットを安全に収容することができる。
【0013】
本発明の請求項2記載のインゴット搬送投入装置によれば、インゴット収容部は、鉛直方向に積層した複数のインゴットを収納可能な収容ケースを備えるため、水平方向におけるインゴット収容部の設置スペースを少なく済ませることができる。
【0014】
本発明の請求項3記載のインゴット搬送投入装置によれば、予熱部は、水平方向に並べられた複数のインゴットを並列させて平行に搬送可能な搬送手段と、搬送手段の鉛直方向の上方と鉛直方向の下方とにそれぞれ設けられたヒータとを備えるため、ヒータからの輻射により、水平方向に並べられた複数のインゴットを効果的に予熱することができる。また、対流を利用して、水平方向に並べられた複数のインゴットを更に効果的に予熱することができる。即ち、ヒータを有効に活用することができ、予熱する時間を短縮することができ、省エネに貢献することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の実施の形態によるインゴット搬送投入装置について図1乃至図3に基づき説明する。図1、図2に示されるように、インゴット搬送投入装置1は、インゴット収容部10と搬送投入手段とを有しており、搬送投入手段は、予熱部30と、鉛直方向搬送手段50と、投入部70とを備えている。なお、図1において図の上下方向は鉛直上下方向に一致し、図2、図3の紙面の裏面から表面へ向かう方向は鉛直上方に一致する。
【0016】
インゴット収容部10は、図1に示されるように後述の予熱部30の鉛直下方に配置されている。従って、図2に示される平面視では、予熱部30の存在によりインゴット収容部10は図中に表れていない。インゴット収容部10は収容ケース11を有しており、収容ケース11内は水平方向へ2つの部屋11a、11bに区切られている。従って、各部屋11a、11bは鉛直方向へ長く延出している。
【0017】
各部屋11a、11bには、それぞれ図1に示されるように複数のインゴット2が鉛直方向に積層されており、収容ケース11内において複数のインゴット2を2列並列させた状態で収納可能である。収容ケース11内に収容されている略直方体形状をしたインゴット2の長手方向は図1の紙面の表面と裏面とを結ぶ方向へ指向しており、収容ケース11内に2列並列されたインゴット2同士は、互いに長手方向が平行をなす位置関係で収容されている。インゴット2は、上面が底面よりも小さい略直方体形状をなしており、例えば、マグネシウム合金等からなり、1つあたり略5kgの重量を有する。
【0018】
収容ケース11内の2つの部屋11a、11bを画成する収容ケース11の底面11a−1、11b−1は、図1、図3に示されるようにその中央位置に設けられた支持棒11a−2、11b−2により支持されており、支持棒11a−2、11b−2の下端は底面11a−1、11b−1の下方に配置された図示せぬシリンダに接続されている。図示せぬシリンダを駆動させることにより底面11a−1、11b−1は、図1に示されるように、それぞれ鉛直方向における後述のプッシャー20の押圧部22の高さ分だけ鉛直上方へ移動することができるように構成されている。なお図1では、図の左側の部屋11bの底面11b−1のみが鉛直上方へ上がった状態となっているが、収容ケース11の上方に設けられる図示せぬインゴット投入扉を開けた際には図の右側の部屋11aの底面11a−1(図3)も左側の部屋11bと共に鉛直上方へ移動するようになっている。
【0019】
収容ケース11内の2つの部屋11a、11bを画成する収容ケース11の側面のうちの図1の右端面をなす側面の一部であって、収容ケース11の底面11a−1が上がっていない状態のときに底面11a−1上に直接載置されている最下段のインゴット2に対向する部分には開口11cが形成されている。また、収容ケース11内を2つの部屋11a、11bに仕切っている中央壁の一部であって、収容ケース11の底面11a−1が上がっていない状態のときに底面11a−1上に直接載置されている最下段のインゴット2に対向する部分にも開口11dが形成されている。
【0020】
これらの開口11c、11dは、図1の右から左へ向かう方向で見たインゴット2の輪郭形状よりも大きく形成されている。後述のプッシャー20の押圧部22によって図1の左から右へ向かう方向へ、右側の部屋11a内の最下段のインゴット2を押圧することにより、当該インゴット2を収容ケース11内から収容ケース11外であって収容ケース11の図の右側へ押出すことができる。また、後述のプッシャー20の押圧部22によって図1の左から右へ向かう方向へ、左側の部屋11bの最下段のインゴット2を押圧することにより、当該インゴット2を右側の部屋11aを通過させて収容ケース11内から収容ケース11外であって収容ケース11の図の右側へ押出すことができるように構成されている。
【0021】
また、収容ケース11内の2つの部屋11a、11bを画成する収容ケース11の側面のうちの図1の左端面をなす側面の一部であって、収容ケース11の底面11b−1が上がっていない状態のときに底面11b−1上に直接載置されている最下段のインゴット2に対向する部分には、後述のプッシャー20の押圧部22の一対の平行先端部22A、22Aを挿入可能な一対の開口11eが形成されている。
【0022】
また収容ケース11には、収容ケース11の2つの部屋11a、11b内のそれぞれに収容しているインゴット2の数が0個になったことを検出するエリアセンサが設けられている。エリアセンサは図示せぬブザーに接続されており、エリアセンサが当該部屋11a、11b内のインゴット2の数が0個になったことを検出すると、ブザーが鳴るように構成されている。
【0023】
また、インゴット収容部10にはプッシャー20が設けられている。プッシャー20は、水平方向において収容ケース11に隣接して配置されており、図1に示されるようにシリンダ21と、シリンダ21の出力軸に接続された押圧部22とを備えている。押圧部22の先端部は、図3に示されるように二又に分岐して一対の平行先端部22A、22Aをなす。このように二又に分岐して一対の平行先端部22A、22Aをなしているため、後述のようにインゴット2を平行先端部22A、22Aで押圧するときに、収容ケース11の底面11a−1、11b−1を支持する支持棒11a−2、11b−2に押圧部22が当接することを防止することができるように構成されている。
【0024】
シリンダ21を駆動させることにより押圧部22の平行先端部22A、22Aは図1の左右方向へ移動可能である。押圧部22が図1の右方向へ移動して、収容ケース11の開口11eから収容ケース11内へ挿入され、収容ケース11内の最下段のインゴット2を右方向へ押圧し、収容ケース11から当該インゴット2を押出し、後述のラック54に載置することができるように構成されている。
【0025】
鉛直方向搬送手段50は、鉛直方向へ延出する支柱51と、支柱51の長手方向たる鉛直方向へ支柱51に対して摺動可能なリフト部52とを有している。リフト部52の下端部は支柱51に対して摺動可能に支柱51を環装しており、当該下端部から上方へ延出する延出部53が設けられている。延出部53の上端近傍の部分であって図1の左端面の部分は鉛直方向へ指向する平坦面53Aをなす。延出部53の上端には、インゴット2を収納可能な略直方体形状の箱型のラック54が設けられている。ラック54の鉛直方向の高さの値は、後述の予熱部30のインゴット挿入口31aの鉛直方向の高さの値よりも若干大きく構成されている。
【0026】
リフト部52は、支柱51の上方と下方とにそれぞれ設けられたプーリ55、56に掛渡されたチェーン57に接続されている。支柱51の上方のプーリ56は、プーリ56に同軸的に設けられたプーリ58と一体回転可能であり、プーリ58と図1のプーリ58の右方に設けられたモータ59の出力軸59Aとにはベルト60が掛渡されている。従って、モータ59が駆動することによりチェーン57が駆動されてリフト部52が支柱51に対して鉛直方向へ摺動するように構成されている。ラック54は、リフト部52が支柱51に対して摺動して支柱51の下部に移動したときに、収容ケース11の開口11cに対向可能であり、支柱51に対して摺動して支柱51の上部に移動したときに、後述の予熱部30のインゴット挿入口31aに対向可能である。
【0027】
ラック54を画成する側面のうちの図1の左端面をなす側面の一部であって、ラック54が収容ケース11の開口11cに対向する部分には開口54aが形成されている。インゴット収容部10の収容ケース11から押出されてきたインゴット2の1つを、開口54aを通してラック54内に導入することができるように構成されている。
【0028】
また、ラック54を画成する側面のうちの図1の右端面をなす側面の一部であって、ラック54の底面が後述の予熱部30の下段面33と面一になっている状態のときに、後述のプッシャー40の平行先端部42Aに対向する部分には、後述のプッシャー40の押圧部42の平行先端部42Aを挿入可能な開口54b、54cが形成されている。また、延出部53の側面のうちの図1、図3の右端面をなす側面の一部であって、ラック54の底面が後述の予熱部30の上段面32と面一になっている状態のときに、後述のプッシャー40の平行先端部42Aに対向する部分には、後述のプッシャー40の押圧部42の平行先端部42Aを挿入可能な図示せぬ逃し部が形成されている。
【0029】
インゴット収容部10からインゴット2がラック54内に導入され、ラック54の底面が後述の予熱部30の下段面33と面一になっている状態のときに、後述のプッシャー40の平行先端部42Aが開口54b、54cから挿入されてインゴット2を図1の左方向へ押圧することで、ラック54内のインゴット2を予熱部30の下段面33上へ搬入することができる。また、インゴット収容部10からインゴット2がラック54内に導入され、ラック54の底面がラック54の底面が後述の予熱部30の上段面32と面一になっている状態のときに、プッシャー40の平行先端部42Aが図示せぬ逃し部、開口54bに挿入されてインゴット2を図1の左方向へ押圧することで、ラック54内のインゴット2を予熱部30の上段面32上へ搬入することができる。
【0030】
なお、ラック、リフト部、延出部は、図1には2つずつ図示されていたが、これは説明の便宜のためであり、実際にはラック、リフト部、延出部は、1つずつ設けられている。
【0031】
予熱部30は略立方体形状をした壁部31を有しており、壁部31によって覆われた予熱室30aが画成されている。予熱部30の平面視での寸法は縦略1m、横略1m程度である。壁部31の図1に示される右端部には開口たるインゴット挿入口31aが形成されており、インゴット挿入口31aに対向する壁部31の図1に示される左端部には、開口たるインゴット排出口31bが形成されている。
【0032】
予熱室30a内には水平載置棚が設けられている。水平載置棚は上段面32と下段面33とからなり、上段面32と下段面33とのそれぞれに、図1に示されるようにインゴット2を載置可能である。載置されたインゴット2は、後述のプッシャー40によってラック54から押出されインゴット挿入口31aから搬入されてきたインゴット2によって図の左方向へ押圧されて移動させられる。そして、図1において最も左側に位置するインゴット2はインゴット排出口31bから後述のシュータ36を介して投入部70のローラコンベア71上に落とされるように構成されている。
【0033】
上段面32の上方と下段面33の下方とにはヒータ35が複数設けられている。ヒータ35からの輻射により、上段面32上のインゴット2と下段面33上のインゴット2とをそれぞれ予熱することができるように構成されている。また、このようにヒータ35が配置されていることにより、対流を利用して上段面32上のインゴット2と下段面33上のインゴット2とを更に効果的に予熱することができる。予熱室30a内でインゴット2はそれぞれ略300℃程度に予熱される。このことにより、後述のように溶解炉80へインゴット2が投入されるときに、水蒸気爆発が起こることを防止することができる。
【0034】
インゴット挿入口31aに対向する位置にはプッシャー40が設けられている。プッシャー40は、水平方向において予熱部30に隣接して配置されており、図1に示されるようにシリンダ41と、シリンダ41の出力軸に接続された押圧部42とを備えている。押圧部42の先端部は図1に示されるように、鉛直方向において二又に分岐して平行先端部42Aをなす。また、水平方向にもそれぞれ二又に分岐して平行先端部をなし、平行先端部42Aは計4本設けられている。シリンダ41を駆動させることにより押圧部42の平行先端部42Aは図1の左右方向へ移動可能である。押圧部42が図1の左方向へ移動して、ラック54の開口54aからラック54内へ挿入され、ラック54内のインゴット2を左方向へ押圧し、ラック54から当該インゴット2を押出し、上段面32上又は下段面33上に載置することができるように構成されている。水平載置棚とプッシャー40とは搬送手段に相当する。
【0035】
予熱部30のインゴット排出口31bにはシュータ36が設けられている。シュータ36は略板状をなしており、インゴット排出口31bが形成された予熱部30の壁部31に設けられたシリンダ37の出力軸37Aに支持されている。シリンダ37が駆動することにより、インゴット排出口31b下端を回動軸として略板状をしたシュータ36の回動角度(傾斜角度)を調整することができ、略板状のシュータ36をインゴット排出口31bからローラコンベア71へのスロープとすることができる。また、シリンダ37を駆動させてシュータ36の下端を後述のローラコンベア71に対して高い位置とすることにより、後述の溶解炉80の移動に伴う後述のローラコンベア71の移動時に、シュータ36の下端がローラコンベア71に当接することを防止することができる。
【0036】
また、インゴット排出口31bには、インゴット排出口31bを覆うようにして耐熱性カーテン38が設けられている。後述のようにインゴット2がインゴット排出口31bから排出されてくるときには、耐熱性カーテン38はインゴット2の排出を阻害せず、インゴット2が排出されていないときには、インゴット排出口31bを塞いで予熱室30a内のエアが予熱室30a外部へ極力漏れないように構成されている。
【0037】
投入部70はローラコンベア71を備えている。ローラコンベア71は、図2に示されるように複数のローラ72がその軸方向が平行になるように配置されて構成されており、図示せぬ駆動手段に各ローラ72は接続されている。図示せぬ駆動手段により各ローラ72が回転させられることにより、図2に示されるようにローラ72上に載置されたインゴット2は溶解炉80の方向たる図の下方へ搬送されるように構成されている。溶解炉80の鉛直上方に位置するローラコンベア71の一端、即ち、図2に示されるローラコンベア71の最下端にインゴット2が達すると、インゴット2は自重によって溶解炉80中に落下し投入される。
【0038】
溶解炉80は、図2に示されるように長円形をしたバスタブ形状をなしており、溶解炉80には溶解したインゴット2、即ちマグネシウム合金からなる金属溶湯3が貯留されている。金属溶湯3は630〜680℃程度に保たれている。
【0039】
上述のインゴット搬送投入装置1では、先ず、図1に示されるように、インゴット収容部10の収容ケース11の2つの部屋11a、11bの内の、左側の部屋11bの底面11b−1を上昇させた状態とし、右側の部屋11aの底面11a−1を上昇させていない状態とし、2つの部屋11a、11bに複数のインゴット2をそれぞれ鉛直方向へ積層して収容する。また、リフト部52を支柱51の下端近傍位置として、ラック54を2つの部屋11a、11bのうちの右側の部屋11aの最下段のインゴット2に対向する位置に配置させる。
【0040】
次に、プッシャー20のシリンダ21を駆動させてプッシャー20の押圧部22の平行先端部22Aを図1の右方向へ移動させてゆき、開口11eから平行先端部22Aを挿入し、収容ケース11の2つの部屋11a、11bのうちの右側の部屋11aの最下段のインゴット2を開口11cを通して図1の右方向へ押出し、ラック54に載置する。そしてプッシャー20の押圧部22を図1に示される状態まで後退させる。すると、収容ケース11の2つの部屋11a、11bのうちの右側の部屋11aに収容されていたインゴット2のうちの2段目以上が、インゴット1個分だけ下に落ちる。
【0041】
ここで、収容ケース11の2つの部屋11a、11bのうちの右側の部屋11aの最下段のインゴット2を押出したが、このように1つずつラック54へ押出してゆき、収容ケース11の2つの部屋11a、11bのうちの右側の部屋11a内のインゴット2が0個になったことがエリアセンサにより検出されると、ブザーが鳴る。そして、エリアセンサの検出により、収容ケース11の2つの部屋11a、11bのうちの左側の部屋11b内の底面11b−1が図示せぬシリンダの駆動により下がり、収容ケース11の2つの部屋11a、11bのうちの左側の部屋11b内の最下段のインゴット2がプッシャー20の押圧部22に対向する位置となる。そして、収容ケース11の2つの部屋11a、11bのうちの左側の部屋11b内のインゴット2が1つずつラック54に載せられる。
【0042】
次に、図示せぬ制御手段がモータ59を駆動させてリフト部52を支柱51に沿って鉛直上方へ摺動させ、ラック54の底面が予熱部30の下段面33又は上段面32と面一となるような位置関係とする。次に、プッシャー40のシリンダ41を駆動させてプッシャー40の押圧部42の平行先端部42Aを図1の左方向へ移動させてゆき、開口54bから平行先端部42Aを挿入し、ラック54の開口54aを通してラック54に収容しているインゴット2を図1の左方向へ押出し、下段面33上又は上段面32上に載置する。
【0043】
ここで、今回上段面32上にインゴット2を載置したとすると、次にインゴット収容部10からラック54に載置されて搬送されてきたインゴット2は、下段面33上に載置される。このように、リフト部52の上昇は図示せぬ制御手段により制御されており、上段面32上と下段面33上とに交互にインゴット2は載置される。
【0044】
またラック54は、インゴット2を下段面33上又は上段面32上に載置した後、次のインゴット2がプッシャー20によりインゴット収容部10から搬送され載置される直前までこの位置に留まり、インゴット挿入口31aをラック54によって塞ぎ、又はラック54及び延出部53の平坦面53Aによって塞ぎ、予熱室30a内のエアが予熱室30a外部へ漏れることを防止する。
【0045】
下段面33上又は上段面32上にインゴット2が載置されると、図1に示されるようにすでに下段面33上又は上段面32上に載置されていたインゴット2に、ラック54に収容されていたインゴット2が当接し、ラック54に収容されていたインゴット2に対するプッシャー40による押圧により、下段面33上又は上段面32上に既に載置されていたインゴット2は図1の左方向へ搬送される。そして、下段面33上又は上段面32上に既に載置されていたインゴット2のうちの最も左側にあるインゴット2が、インゴット排出口31bから予熱室30a外部へと搬出される。インゴット2はシュータ36上を通りローラコンベア71上へ落下する。
【0046】
次に、ローラコンベア71のローラ72が図示せぬ駆動手段により駆動されることにより回転し、インゴット2を図2の下方へ搬送させる。そして、インゴット2が溶解炉80の鉛直上方に位置するローラコンベア71の一端、即ち、図2に示されるローラコンベア71の最下端にインゴット2が達すると、インゴット2は自重によって溶解炉80中に落下し投入される。以上の工程が各インゴット毎に行われ、繰返しインゴット2がインゴット収容部10から搬送されてインゴット2が溶解炉80へ投入される。
【0047】
予熱部30はインゴット収容部10の鉛直方向の位置に配置されているため、水平方向において予熱部30とインゴット収容部10とを配置させずに済み、水平方向におけるインゴット搬送投入装置1の設置スペースを少なく済ませることができる。
【0048】
また、水平方向においてインゴット収容部10及び予熱部30に隣接配置されインゴット収容部10内のインゴット2をインゴット収容部10から予熱部30へと搬送する鉛直方向搬送手段50を有しているため、予熱部30に搬入するために複数のインゴット2を予め高い位置に収容配置させずに済み、予熱前に複数のインゴット2を安全に収容することができる。
【0049】
また、インゴット収容部10は、鉛直方向に積層した複数のインゴット2を2列並列させて収納可能な収容ケース11を備えるため、鉛直方向へ積層されるインゴット2の数が多数になることを防止することができ、インゴット収容部10の鉛直方向への高さが高くなることを防止することができる。
【0050】
また、予熱部30は、水平方向に並べられた複数のインゴット2を鉛直方向上列と鉛直方向下列との2列に並列させて平行に搬送可能な搬送手段と、鉛直方向上列の上方と鉛直方向下列の下方とにそれぞれ設けられたヒータ35とを備えるため、ヒータ35からの輻射により、鉛直方向上列に並べられたインゴット2と鉛直方向下列に並べられたインゴット2とをそれぞれ効果的に予熱することができる。また、対流を利用して、鉛直方向上列に並べられたインゴット2と鉛直方向下列に並べられたインゴット2とを更に効果的に予熱することができる。即ち、ヒータ35を有効に活用することができ、予熱する時間を短縮することができ、省エネに貢献することができる。
【0051】
また、水平載置棚の上段面32上と下段面33上とに、インゴット2を図1に示されるように、並べて載置するようにしたため、予熱の際に予熱室30a内のエアに触れるインゴット2の表面積を広くすることができ、より短い時間で予熱を行うことができる。
【0052】
本発明によるインゴット搬送投入装置は、上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形や改良が可能である。例えば、水平載置棚は上段面32と下段面33とを有しており、上段面32と下段面33とのそれぞれにインゴット2を載置可能であったが、棚の数は上段面32と下段面33との2段構成に限定されない。例えば水平載置棚は1段の棚で構成され、当該1段の棚の上面上にインゴット2が載置されるように構成されてもよい。
【0053】
また、収容ケース11には2つの部屋11a、11bが形成され、これら2つの部屋11a、11bのそれぞれにおいてインゴット2が鉛直方向へ積層されて収容されていたが、部屋の数は2つに限定されない。例えば部屋の数を1つとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明のインゴット搬送投入装置は、ダイカスト等を行うために溶解炉にインゴットを投入する分野において極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施の形態によるインゴット搬送投入装置を示す概略側面図。
【図2】本発明の実施の形態によるインゴット搬送投入装置を示す概略平面図。
【図3】本発明の実施の形態によるインゴット搬送投入装置のインゴット収容部とラックとプッシャーとを示す概略平面図。
【符号の説明】
【0056】
1 インゴット搬送投入装置
2 インゴット
10 インゴット収容部
11 収容ケース
30 予熱部
32 上段面
33 下段面
35 ヒータ
50 鉛直方向搬送手段
54 ラック
70 投入部
71 ローラコンベア
72 ローラ
80 溶解炉
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶解炉へインゴットを搬送し投入するインゴット搬送投入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インゴット搬送投入装置としては、インゴットを複数収容するインゴット収容部と、インゴットをインゴット収容部から溶解炉へと搬送し、当該溶解炉へ投入するための搬送投入手段とを有する構成のものが従来より知られている。
【0003】
実公平8−7973号公報には、このような構成のインゴット搬送投入装置が記載されている。インゴット搬送投入装置は、インゴットを収容するインゴット収容部と、インゴット収容部のインゴットを溶解炉まで搬送すると共に予熱する予熱部と、予熱部において予熱されたインゴットを溶解炉へ投入する投入部とを有している。
【0004】
インゴット収容部は、水平方向において予熱部に隣接配置されており、インゴット収容部には、複数のインゴットが水平方向に並列帯状に配列させて収容されている。水平方向に並列帯状に配列された複数のインゴットは、1本ずつ予熱部に搬入され、1本ずつ溶解炉及び投入部の方向へ搬送されながら予熱される。そして、インゴットが投入部に至り溶解炉に投入される。
【特許文献1】実公平8−7973号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記公報記載の従来のインゴット搬送投入装置では、上述のようにインゴット収容部は水平方向において予熱部に隣接配置されており、水平方向におけるインゴット搬送投入装置の設置スペースを広く確保する必要があった。
【0006】
また、インゴット収容部には、前述のように複数のインゴットが水平方向に並列帯状に配列させて収容されており、配列されている位置は、溶解炉内の金属溶湯の液面よりも上方である。インゴット群がこのような上方の高い位置に水平方向に並列帯状に配列させられているため、万が一落下した場合には大変危険である。
【0007】
そこで、本発明は、水平方向における設置スペースが少なくて済み、安全にインゴットを収容できるインゴット搬送投入装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、複数のインゴット2を収容可能なインゴット収容部10と、該インゴット2を該インゴット収容部10から溶解炉80へ搬送し投入するための搬送投入手段とを有するインゴット搬送投入装置1において、該搬送投入手段は、該インゴット収容部10の鉛直方向の位置に配置され該インゴット2を搬送しながら予熱する予熱部30と、水平方向において該インゴット収容部10及び該予熱部30に隣接配置され該インゴット収容部10内の該インゴット2を該インゴット収容部10から該予熱部30へと搬送する鉛直方向搬送手段50とを備えるインゴット搬送投入装置1を提供している。
【0009】
ここで、インゴット収容部10は、鉛直方向に積層した複数のインゴット2を収納可能な収容ケース11を備えることが好ましい。
【0010】
また、予熱部30は、水平方向に並べられた複数のインゴット2を並列させて平行に搬送可能な搬送手段32、33、40と、該搬送手段32、33、40の鉛直方向の上方と鉛直方向の下方とにそれぞれ設けられたヒータ35とを備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の請求項1記載のインゴット搬送投入装置によれば、予熱部は、インゴット収容部の鉛直方向の位置に配置されているため、水平方向において予熱部とインゴット収容部とを配置させずに済み、水平方向におけるインゴット搬送投入装置の設置スペースを少なく済ませることができる。
【0012】
また、水平方向においてインゴット収容部及び予熱部に隣接配置されインゴット収容部内のインゴットをインゴット収容部から予熱部へと搬送する鉛直方向搬送手段を有しているため、予熱部に搬入するために複数のインゴットを予め高い位置に収容配置させずに済み、予熱前に複数のインゴットを安全に収容することができる。
【0013】
本発明の請求項2記載のインゴット搬送投入装置によれば、インゴット収容部は、鉛直方向に積層した複数のインゴットを収納可能な収容ケースを備えるため、水平方向におけるインゴット収容部の設置スペースを少なく済ませることができる。
【0014】
本発明の請求項3記載のインゴット搬送投入装置によれば、予熱部は、水平方向に並べられた複数のインゴットを並列させて平行に搬送可能な搬送手段と、搬送手段の鉛直方向の上方と鉛直方向の下方とにそれぞれ設けられたヒータとを備えるため、ヒータからの輻射により、水平方向に並べられた複数のインゴットを効果的に予熱することができる。また、対流を利用して、水平方向に並べられた複数のインゴットを更に効果的に予熱することができる。即ち、ヒータを有効に活用することができ、予熱する時間を短縮することができ、省エネに貢献することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の実施の形態によるインゴット搬送投入装置について図1乃至図3に基づき説明する。図1、図2に示されるように、インゴット搬送投入装置1は、インゴット収容部10と搬送投入手段とを有しており、搬送投入手段は、予熱部30と、鉛直方向搬送手段50と、投入部70とを備えている。なお、図1において図の上下方向は鉛直上下方向に一致し、図2、図3の紙面の裏面から表面へ向かう方向は鉛直上方に一致する。
【0016】
インゴット収容部10は、図1に示されるように後述の予熱部30の鉛直下方に配置されている。従って、図2に示される平面視では、予熱部30の存在によりインゴット収容部10は図中に表れていない。インゴット収容部10は収容ケース11を有しており、収容ケース11内は水平方向へ2つの部屋11a、11bに区切られている。従って、各部屋11a、11bは鉛直方向へ長く延出している。
【0017】
各部屋11a、11bには、それぞれ図1に示されるように複数のインゴット2が鉛直方向に積層されており、収容ケース11内において複数のインゴット2を2列並列させた状態で収納可能である。収容ケース11内に収容されている略直方体形状をしたインゴット2の長手方向は図1の紙面の表面と裏面とを結ぶ方向へ指向しており、収容ケース11内に2列並列されたインゴット2同士は、互いに長手方向が平行をなす位置関係で収容されている。インゴット2は、上面が底面よりも小さい略直方体形状をなしており、例えば、マグネシウム合金等からなり、1つあたり略5kgの重量を有する。
【0018】
収容ケース11内の2つの部屋11a、11bを画成する収容ケース11の底面11a−1、11b−1は、図1、図3に示されるようにその中央位置に設けられた支持棒11a−2、11b−2により支持されており、支持棒11a−2、11b−2の下端は底面11a−1、11b−1の下方に配置された図示せぬシリンダに接続されている。図示せぬシリンダを駆動させることにより底面11a−1、11b−1は、図1に示されるように、それぞれ鉛直方向における後述のプッシャー20の押圧部22の高さ分だけ鉛直上方へ移動することができるように構成されている。なお図1では、図の左側の部屋11bの底面11b−1のみが鉛直上方へ上がった状態となっているが、収容ケース11の上方に設けられる図示せぬインゴット投入扉を開けた際には図の右側の部屋11aの底面11a−1(図3)も左側の部屋11bと共に鉛直上方へ移動するようになっている。
【0019】
収容ケース11内の2つの部屋11a、11bを画成する収容ケース11の側面のうちの図1の右端面をなす側面の一部であって、収容ケース11の底面11a−1が上がっていない状態のときに底面11a−1上に直接載置されている最下段のインゴット2に対向する部分には開口11cが形成されている。また、収容ケース11内を2つの部屋11a、11bに仕切っている中央壁の一部であって、収容ケース11の底面11a−1が上がっていない状態のときに底面11a−1上に直接載置されている最下段のインゴット2に対向する部分にも開口11dが形成されている。
【0020】
これらの開口11c、11dは、図1の右から左へ向かう方向で見たインゴット2の輪郭形状よりも大きく形成されている。後述のプッシャー20の押圧部22によって図1の左から右へ向かう方向へ、右側の部屋11a内の最下段のインゴット2を押圧することにより、当該インゴット2を収容ケース11内から収容ケース11外であって収容ケース11の図の右側へ押出すことができる。また、後述のプッシャー20の押圧部22によって図1の左から右へ向かう方向へ、左側の部屋11bの最下段のインゴット2を押圧することにより、当該インゴット2を右側の部屋11aを通過させて収容ケース11内から収容ケース11外であって収容ケース11の図の右側へ押出すことができるように構成されている。
【0021】
また、収容ケース11内の2つの部屋11a、11bを画成する収容ケース11の側面のうちの図1の左端面をなす側面の一部であって、収容ケース11の底面11b−1が上がっていない状態のときに底面11b−1上に直接載置されている最下段のインゴット2に対向する部分には、後述のプッシャー20の押圧部22の一対の平行先端部22A、22Aを挿入可能な一対の開口11eが形成されている。
【0022】
また収容ケース11には、収容ケース11の2つの部屋11a、11b内のそれぞれに収容しているインゴット2の数が0個になったことを検出するエリアセンサが設けられている。エリアセンサは図示せぬブザーに接続されており、エリアセンサが当該部屋11a、11b内のインゴット2の数が0個になったことを検出すると、ブザーが鳴るように構成されている。
【0023】
また、インゴット収容部10にはプッシャー20が設けられている。プッシャー20は、水平方向において収容ケース11に隣接して配置されており、図1に示されるようにシリンダ21と、シリンダ21の出力軸に接続された押圧部22とを備えている。押圧部22の先端部は、図3に示されるように二又に分岐して一対の平行先端部22A、22Aをなす。このように二又に分岐して一対の平行先端部22A、22Aをなしているため、後述のようにインゴット2を平行先端部22A、22Aで押圧するときに、収容ケース11の底面11a−1、11b−1を支持する支持棒11a−2、11b−2に押圧部22が当接することを防止することができるように構成されている。
【0024】
シリンダ21を駆動させることにより押圧部22の平行先端部22A、22Aは図1の左右方向へ移動可能である。押圧部22が図1の右方向へ移動して、収容ケース11の開口11eから収容ケース11内へ挿入され、収容ケース11内の最下段のインゴット2を右方向へ押圧し、収容ケース11から当該インゴット2を押出し、後述のラック54に載置することができるように構成されている。
【0025】
鉛直方向搬送手段50は、鉛直方向へ延出する支柱51と、支柱51の長手方向たる鉛直方向へ支柱51に対して摺動可能なリフト部52とを有している。リフト部52の下端部は支柱51に対して摺動可能に支柱51を環装しており、当該下端部から上方へ延出する延出部53が設けられている。延出部53の上端近傍の部分であって図1の左端面の部分は鉛直方向へ指向する平坦面53Aをなす。延出部53の上端には、インゴット2を収納可能な略直方体形状の箱型のラック54が設けられている。ラック54の鉛直方向の高さの値は、後述の予熱部30のインゴット挿入口31aの鉛直方向の高さの値よりも若干大きく構成されている。
【0026】
リフト部52は、支柱51の上方と下方とにそれぞれ設けられたプーリ55、56に掛渡されたチェーン57に接続されている。支柱51の上方のプーリ56は、プーリ56に同軸的に設けられたプーリ58と一体回転可能であり、プーリ58と図1のプーリ58の右方に設けられたモータ59の出力軸59Aとにはベルト60が掛渡されている。従って、モータ59が駆動することによりチェーン57が駆動されてリフト部52が支柱51に対して鉛直方向へ摺動するように構成されている。ラック54は、リフト部52が支柱51に対して摺動して支柱51の下部に移動したときに、収容ケース11の開口11cに対向可能であり、支柱51に対して摺動して支柱51の上部に移動したときに、後述の予熱部30のインゴット挿入口31aに対向可能である。
【0027】
ラック54を画成する側面のうちの図1の左端面をなす側面の一部であって、ラック54が収容ケース11の開口11cに対向する部分には開口54aが形成されている。インゴット収容部10の収容ケース11から押出されてきたインゴット2の1つを、開口54aを通してラック54内に導入することができるように構成されている。
【0028】
また、ラック54を画成する側面のうちの図1の右端面をなす側面の一部であって、ラック54の底面が後述の予熱部30の下段面33と面一になっている状態のときに、後述のプッシャー40の平行先端部42Aに対向する部分には、後述のプッシャー40の押圧部42の平行先端部42Aを挿入可能な開口54b、54cが形成されている。また、延出部53の側面のうちの図1、図3の右端面をなす側面の一部であって、ラック54の底面が後述の予熱部30の上段面32と面一になっている状態のときに、後述のプッシャー40の平行先端部42Aに対向する部分には、後述のプッシャー40の押圧部42の平行先端部42Aを挿入可能な図示せぬ逃し部が形成されている。
【0029】
インゴット収容部10からインゴット2がラック54内に導入され、ラック54の底面が後述の予熱部30の下段面33と面一になっている状態のときに、後述のプッシャー40の平行先端部42Aが開口54b、54cから挿入されてインゴット2を図1の左方向へ押圧することで、ラック54内のインゴット2を予熱部30の下段面33上へ搬入することができる。また、インゴット収容部10からインゴット2がラック54内に導入され、ラック54の底面がラック54の底面が後述の予熱部30の上段面32と面一になっている状態のときに、プッシャー40の平行先端部42Aが図示せぬ逃し部、開口54bに挿入されてインゴット2を図1の左方向へ押圧することで、ラック54内のインゴット2を予熱部30の上段面32上へ搬入することができる。
【0030】
なお、ラック、リフト部、延出部は、図1には2つずつ図示されていたが、これは説明の便宜のためであり、実際にはラック、リフト部、延出部は、1つずつ設けられている。
【0031】
予熱部30は略立方体形状をした壁部31を有しており、壁部31によって覆われた予熱室30aが画成されている。予熱部30の平面視での寸法は縦略1m、横略1m程度である。壁部31の図1に示される右端部には開口たるインゴット挿入口31aが形成されており、インゴット挿入口31aに対向する壁部31の図1に示される左端部には、開口たるインゴット排出口31bが形成されている。
【0032】
予熱室30a内には水平載置棚が設けられている。水平載置棚は上段面32と下段面33とからなり、上段面32と下段面33とのそれぞれに、図1に示されるようにインゴット2を載置可能である。載置されたインゴット2は、後述のプッシャー40によってラック54から押出されインゴット挿入口31aから搬入されてきたインゴット2によって図の左方向へ押圧されて移動させられる。そして、図1において最も左側に位置するインゴット2はインゴット排出口31bから後述のシュータ36を介して投入部70のローラコンベア71上に落とされるように構成されている。
【0033】
上段面32の上方と下段面33の下方とにはヒータ35が複数設けられている。ヒータ35からの輻射により、上段面32上のインゴット2と下段面33上のインゴット2とをそれぞれ予熱することができるように構成されている。また、このようにヒータ35が配置されていることにより、対流を利用して上段面32上のインゴット2と下段面33上のインゴット2とを更に効果的に予熱することができる。予熱室30a内でインゴット2はそれぞれ略300℃程度に予熱される。このことにより、後述のように溶解炉80へインゴット2が投入されるときに、水蒸気爆発が起こることを防止することができる。
【0034】
インゴット挿入口31aに対向する位置にはプッシャー40が設けられている。プッシャー40は、水平方向において予熱部30に隣接して配置されており、図1に示されるようにシリンダ41と、シリンダ41の出力軸に接続された押圧部42とを備えている。押圧部42の先端部は図1に示されるように、鉛直方向において二又に分岐して平行先端部42Aをなす。また、水平方向にもそれぞれ二又に分岐して平行先端部をなし、平行先端部42Aは計4本設けられている。シリンダ41を駆動させることにより押圧部42の平行先端部42Aは図1の左右方向へ移動可能である。押圧部42が図1の左方向へ移動して、ラック54の開口54aからラック54内へ挿入され、ラック54内のインゴット2を左方向へ押圧し、ラック54から当該インゴット2を押出し、上段面32上又は下段面33上に載置することができるように構成されている。水平載置棚とプッシャー40とは搬送手段に相当する。
【0035】
予熱部30のインゴット排出口31bにはシュータ36が設けられている。シュータ36は略板状をなしており、インゴット排出口31bが形成された予熱部30の壁部31に設けられたシリンダ37の出力軸37Aに支持されている。シリンダ37が駆動することにより、インゴット排出口31b下端を回動軸として略板状をしたシュータ36の回動角度(傾斜角度)を調整することができ、略板状のシュータ36をインゴット排出口31bからローラコンベア71へのスロープとすることができる。また、シリンダ37を駆動させてシュータ36の下端を後述のローラコンベア71に対して高い位置とすることにより、後述の溶解炉80の移動に伴う後述のローラコンベア71の移動時に、シュータ36の下端がローラコンベア71に当接することを防止することができる。
【0036】
また、インゴット排出口31bには、インゴット排出口31bを覆うようにして耐熱性カーテン38が設けられている。後述のようにインゴット2がインゴット排出口31bから排出されてくるときには、耐熱性カーテン38はインゴット2の排出を阻害せず、インゴット2が排出されていないときには、インゴット排出口31bを塞いで予熱室30a内のエアが予熱室30a外部へ極力漏れないように構成されている。
【0037】
投入部70はローラコンベア71を備えている。ローラコンベア71は、図2に示されるように複数のローラ72がその軸方向が平行になるように配置されて構成されており、図示せぬ駆動手段に各ローラ72は接続されている。図示せぬ駆動手段により各ローラ72が回転させられることにより、図2に示されるようにローラ72上に載置されたインゴット2は溶解炉80の方向たる図の下方へ搬送されるように構成されている。溶解炉80の鉛直上方に位置するローラコンベア71の一端、即ち、図2に示されるローラコンベア71の最下端にインゴット2が達すると、インゴット2は自重によって溶解炉80中に落下し投入される。
【0038】
溶解炉80は、図2に示されるように長円形をしたバスタブ形状をなしており、溶解炉80には溶解したインゴット2、即ちマグネシウム合金からなる金属溶湯3が貯留されている。金属溶湯3は630〜680℃程度に保たれている。
【0039】
上述のインゴット搬送投入装置1では、先ず、図1に示されるように、インゴット収容部10の収容ケース11の2つの部屋11a、11bの内の、左側の部屋11bの底面11b−1を上昇させた状態とし、右側の部屋11aの底面11a−1を上昇させていない状態とし、2つの部屋11a、11bに複数のインゴット2をそれぞれ鉛直方向へ積層して収容する。また、リフト部52を支柱51の下端近傍位置として、ラック54を2つの部屋11a、11bのうちの右側の部屋11aの最下段のインゴット2に対向する位置に配置させる。
【0040】
次に、プッシャー20のシリンダ21を駆動させてプッシャー20の押圧部22の平行先端部22Aを図1の右方向へ移動させてゆき、開口11eから平行先端部22Aを挿入し、収容ケース11の2つの部屋11a、11bのうちの右側の部屋11aの最下段のインゴット2を開口11cを通して図1の右方向へ押出し、ラック54に載置する。そしてプッシャー20の押圧部22を図1に示される状態まで後退させる。すると、収容ケース11の2つの部屋11a、11bのうちの右側の部屋11aに収容されていたインゴット2のうちの2段目以上が、インゴット1個分だけ下に落ちる。
【0041】
ここで、収容ケース11の2つの部屋11a、11bのうちの右側の部屋11aの最下段のインゴット2を押出したが、このように1つずつラック54へ押出してゆき、収容ケース11の2つの部屋11a、11bのうちの右側の部屋11a内のインゴット2が0個になったことがエリアセンサにより検出されると、ブザーが鳴る。そして、エリアセンサの検出により、収容ケース11の2つの部屋11a、11bのうちの左側の部屋11b内の底面11b−1が図示せぬシリンダの駆動により下がり、収容ケース11の2つの部屋11a、11bのうちの左側の部屋11b内の最下段のインゴット2がプッシャー20の押圧部22に対向する位置となる。そして、収容ケース11の2つの部屋11a、11bのうちの左側の部屋11b内のインゴット2が1つずつラック54に載せられる。
【0042】
次に、図示せぬ制御手段がモータ59を駆動させてリフト部52を支柱51に沿って鉛直上方へ摺動させ、ラック54の底面が予熱部30の下段面33又は上段面32と面一となるような位置関係とする。次に、プッシャー40のシリンダ41を駆動させてプッシャー40の押圧部42の平行先端部42Aを図1の左方向へ移動させてゆき、開口54bから平行先端部42Aを挿入し、ラック54の開口54aを通してラック54に収容しているインゴット2を図1の左方向へ押出し、下段面33上又は上段面32上に載置する。
【0043】
ここで、今回上段面32上にインゴット2を載置したとすると、次にインゴット収容部10からラック54に載置されて搬送されてきたインゴット2は、下段面33上に載置される。このように、リフト部52の上昇は図示せぬ制御手段により制御されており、上段面32上と下段面33上とに交互にインゴット2は載置される。
【0044】
またラック54は、インゴット2を下段面33上又は上段面32上に載置した後、次のインゴット2がプッシャー20によりインゴット収容部10から搬送され載置される直前までこの位置に留まり、インゴット挿入口31aをラック54によって塞ぎ、又はラック54及び延出部53の平坦面53Aによって塞ぎ、予熱室30a内のエアが予熱室30a外部へ漏れることを防止する。
【0045】
下段面33上又は上段面32上にインゴット2が載置されると、図1に示されるようにすでに下段面33上又は上段面32上に載置されていたインゴット2に、ラック54に収容されていたインゴット2が当接し、ラック54に収容されていたインゴット2に対するプッシャー40による押圧により、下段面33上又は上段面32上に既に載置されていたインゴット2は図1の左方向へ搬送される。そして、下段面33上又は上段面32上に既に載置されていたインゴット2のうちの最も左側にあるインゴット2が、インゴット排出口31bから予熱室30a外部へと搬出される。インゴット2はシュータ36上を通りローラコンベア71上へ落下する。
【0046】
次に、ローラコンベア71のローラ72が図示せぬ駆動手段により駆動されることにより回転し、インゴット2を図2の下方へ搬送させる。そして、インゴット2が溶解炉80の鉛直上方に位置するローラコンベア71の一端、即ち、図2に示されるローラコンベア71の最下端にインゴット2が達すると、インゴット2は自重によって溶解炉80中に落下し投入される。以上の工程が各インゴット毎に行われ、繰返しインゴット2がインゴット収容部10から搬送されてインゴット2が溶解炉80へ投入される。
【0047】
予熱部30はインゴット収容部10の鉛直方向の位置に配置されているため、水平方向において予熱部30とインゴット収容部10とを配置させずに済み、水平方向におけるインゴット搬送投入装置1の設置スペースを少なく済ませることができる。
【0048】
また、水平方向においてインゴット収容部10及び予熱部30に隣接配置されインゴット収容部10内のインゴット2をインゴット収容部10から予熱部30へと搬送する鉛直方向搬送手段50を有しているため、予熱部30に搬入するために複数のインゴット2を予め高い位置に収容配置させずに済み、予熱前に複数のインゴット2を安全に収容することができる。
【0049】
また、インゴット収容部10は、鉛直方向に積層した複数のインゴット2を2列並列させて収納可能な収容ケース11を備えるため、鉛直方向へ積層されるインゴット2の数が多数になることを防止することができ、インゴット収容部10の鉛直方向への高さが高くなることを防止することができる。
【0050】
また、予熱部30は、水平方向に並べられた複数のインゴット2を鉛直方向上列と鉛直方向下列との2列に並列させて平行に搬送可能な搬送手段と、鉛直方向上列の上方と鉛直方向下列の下方とにそれぞれ設けられたヒータ35とを備えるため、ヒータ35からの輻射により、鉛直方向上列に並べられたインゴット2と鉛直方向下列に並べられたインゴット2とをそれぞれ効果的に予熱することができる。また、対流を利用して、鉛直方向上列に並べられたインゴット2と鉛直方向下列に並べられたインゴット2とを更に効果的に予熱することができる。即ち、ヒータ35を有効に活用することができ、予熱する時間を短縮することができ、省エネに貢献することができる。
【0051】
また、水平載置棚の上段面32上と下段面33上とに、インゴット2を図1に示されるように、並べて載置するようにしたため、予熱の際に予熱室30a内のエアに触れるインゴット2の表面積を広くすることができ、より短い時間で予熱を行うことができる。
【0052】
本発明によるインゴット搬送投入装置は、上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形や改良が可能である。例えば、水平載置棚は上段面32と下段面33とを有しており、上段面32と下段面33とのそれぞれにインゴット2を載置可能であったが、棚の数は上段面32と下段面33との2段構成に限定されない。例えば水平載置棚は1段の棚で構成され、当該1段の棚の上面上にインゴット2が載置されるように構成されてもよい。
【0053】
また、収容ケース11には2つの部屋11a、11bが形成され、これら2つの部屋11a、11bのそれぞれにおいてインゴット2が鉛直方向へ積層されて収容されていたが、部屋の数は2つに限定されない。例えば部屋の数を1つとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明のインゴット搬送投入装置は、ダイカスト等を行うために溶解炉にインゴットを投入する分野において極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施の形態によるインゴット搬送投入装置を示す概略側面図。
【図2】本発明の実施の形態によるインゴット搬送投入装置を示す概略平面図。
【図3】本発明の実施の形態によるインゴット搬送投入装置のインゴット収容部とラックとプッシャーとを示す概略平面図。
【符号の説明】
【0056】
1 インゴット搬送投入装置
2 インゴット
10 インゴット収容部
11 収容ケース
30 予熱部
32 上段面
33 下段面
35 ヒータ
50 鉛直方向搬送手段
54 ラック
70 投入部
71 ローラコンベア
72 ローラ
80 溶解炉
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のインゴットを収容可能なインゴット収容部と、
該インゴットを該インゴット収容部から溶解炉へ搬送し投入するための搬送投入手段とを有するインゴット搬送投入装置において、
該搬送投入手段は、該インゴット収容部の鉛直方向の位置に配置され該インゴットを搬送しながら予熱する予熱部と、水平方向において該インゴット収容部及び該予熱部に隣接配置され該インゴット収容部内の該インゴットを該インゴット収容部から該予熱部へと搬送する鉛直方向搬送手段とを備えることを特徴とするインゴット搬送投入装置。
【請求項2】
該インゴット収容部は、鉛直方向に積層した複数のインゴットを収納可能な収容ケースを備えることを特徴とする請求項1記載のインゴット搬送投入装置。
【請求項3】
該予熱部は、水平方向に並べられた複数のインゴットを並列させて平行に搬送可能な搬送手段と、該搬送手段の鉛直方向の上方と鉛直方向の下方とにそれぞれ設けられたヒータとを備えることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のインゴット搬送投入装置。
【請求項1】
複数のインゴットを収容可能なインゴット収容部と、
該インゴットを該インゴット収容部から溶解炉へ搬送し投入するための搬送投入手段とを有するインゴット搬送投入装置において、
該搬送投入手段は、該インゴット収容部の鉛直方向の位置に配置され該インゴットを搬送しながら予熱する予熱部と、水平方向において該インゴット収容部及び該予熱部に隣接配置され該インゴット収容部内の該インゴットを該インゴット収容部から該予熱部へと搬送する鉛直方向搬送手段とを備えることを特徴とするインゴット搬送投入装置。
【請求項2】
該インゴット収容部は、鉛直方向に積層した複数のインゴットを収納可能な収容ケースを備えることを特徴とする請求項1記載のインゴット搬送投入装置。
【請求項3】
該予熱部は、水平方向に並べられた複数のインゴットを並列させて平行に搬送可能な搬送手段と、該搬送手段の鉛直方向の上方と鉛直方向の下方とにそれぞれ設けられたヒータとを備えることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のインゴット搬送投入装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図2】
【図3】
【公開番号】特開2009−208107(P2009−208107A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−53030(P2008−53030)
【出願日】平成20年3月4日(2008.3.4)
【出願人】(000006943)リョービ株式会社 (471)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月4日(2008.3.4)
【出願人】(000006943)リョービ株式会社 (471)
【Fターム(参考)】
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