インサート成形方法及びインサート成形品
【課題】モールド成形時におけるバスバーの変形を抑制することができるインサート成形方法を提供する。
【解決手段】複数のインサート部材の長さ方向の両端にそれぞれ臨んだ内壁面に、複数のインサート部材の離間間隔を設定間隔以上に維持する隙間維持用の突起7をそれぞれ形成すると共に、複数のインサート部材の幅方向の側部に臨んだ内壁面に、樹脂を充填するためのゲート8を形成し、成形金型5内に複数のインサート部材を、突起7を挟んで離間間隔が自在に変化するように且つ離間間隔が設定間隔より広くなるように中空保持し、中空保持した複数のインサート部材間の隙間にゲート8から樹脂を充填し、成形金型5の内周縁部に樹脂を回り込ませ、回り込ませた樹脂の樹脂圧力で複数のインサート部材の両端を突起7に押し付けてインサート成形品1を成形する方法である。
【解決手段】複数のインサート部材の長さ方向の両端にそれぞれ臨んだ内壁面に、複数のインサート部材の離間間隔を設定間隔以上に維持する隙間維持用の突起7をそれぞれ形成すると共に、複数のインサート部材の幅方向の側部に臨んだ内壁面に、樹脂を充填するためのゲート8を形成し、成形金型5内に複数のインサート部材を、突起7を挟んで離間間隔が自在に変化するように且つ離間間隔が設定間隔より広くなるように中空保持し、中空保持した複数のインサート部材間の隙間にゲート8から樹脂を充填し、成形金型5の内周縁部に樹脂を回り込ませ、回り込ませた樹脂の樹脂圧力で複数のインサート部材の両端を突起7に押し付けてインサート成形品1を成形する方法である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インサート成形技術を用いて、複数のインサート部材間及びその周囲を樹脂により一括モールド成形するインサート成形方法及びインサート成形品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数のインサート部材間及びその周囲を樹脂により一括モールド成形したインサート成形品としては、例えば、複数のバスバーの電気的絶縁などを目的として、各バスバーを狭ギャップで積層し、その各バスバー間と周囲を絶縁性樹脂により一括モールド成形されてなる成形品がある。
【0003】
このインサート成形品は、成形金型内に複数のバスバーを離間させて保持した後、その成形金型内に絶縁性樹脂を充填して、複数のバスバー間及びその周囲を一括モールド成形し、これを成形金型から離型することにより成形される。
【0004】
このようにして得られたインサート成形品は、例えば、車両用のインバータ回路などの高電界(例えば、4kV/mm程度)環境で使用され、高電界環境に耐える電気絶縁性が要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−215340号公報
【特許文献2】特開2007−38490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のインサート成形方法では、モールド成形時に、積層(離間して保持)されたバスバーが成形金型内に充填される樹脂によって押され、変形してしまうことがあった。
【0007】
これでは、バスバーの積層間隔が狭くなったり、広くなったりと、想定した電気絶縁性が得られず信頼性を確保できないという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、上述した事情に鑑みなされたもので、モールド成形時におけるバスバーの変形を抑制することができる技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために創案されたものであり、成形金型内に複数のインサート部材を離間させて保持した後、前記成形金型内に樹脂を充填して、前記複数のインサート部材間及びその周囲を一括モールド成形し、前記複数のインサート部材を設定間隔で離間させた状態でインサート成形品を成形するインサート成形方法において、前記複数のインサート部材の長さ方向の両端にそれぞれ臨んだ内壁面に、前記複数のインサート部材の離間間隔を前記設定間隔以上に維持する隙間維持用の突起をそれぞれ形成すると共に、前記複数のインサート部材の幅方向の側部に臨んだ内壁面に、樹脂を充填するためのゲートを形成し、前記成形金型内に前記複数のインサート部材を、前記突起を挟んで離間間隔が自在に変化するように且つ離間間隔が前記設定間隔より広くなるように中空保持し、中空保持した前記複数のインサート部材間の隙間に前記ゲートから樹脂を充填し、前記成形金型の内周縁部に樹脂を回り込ませ、回り込ませた樹脂の樹脂圧力で前記複数のインサート部材の両端を前記突起に押し付けてインサート成形品を成形することを特徴とするインサート成形方法である。
【0010】
また、前記複数のインサート部材の長さ方向の両端にそれぞれ臨んだ内壁面に、前記複数のインサート部材を保持するための幅広の保持溝をそれぞれ形成し、その上で前記保持溝の底部中央から延出するように前記突起をそれぞれ形成するようにしてもよい。
【0011】
また、前記成形金型内に、前記複数のインサート部材の長さ方向に沿って当接する支持部材を挿入しておき、前記成形金型の前記内周縁部に樹脂を回り込ませる際に、樹脂の回り込みを阻害しないように前記支持部材を前記複数のインサート部材から離間するようにしてもよい。
【0012】
また、前記成形金型内に、前記各インサート部材の間隔が長さ方向の全長に亘って設定間隔未満となるのを防止する接近防止手段を設けておくようにしてもよい。
【0013】
また、前記成形金型に、前記複数のインサート部材に当接する押し込み棒を挿入しておき、前記成形金型の前記内周縁部に樹脂を回り込ませる際に、前記複数のインサート部材の間隔を狭める樹脂圧力を補うように前記押し込み棒を押し込むようにしてもよい。
【0014】
また、本発明は、上記目的を達成するために創案されたものであり、請求項1〜5のいずれかに記載のインサート成形方法で成形されたインサート成形品であって、前記複数のインサート部材間にウエルドラインがなく、前記複数のインサート部材の周囲にウエルドラインが形成されたことを特徴とするインサート成形品である。
【0015】
また、前記複数のインサート部材の周囲に形成される外層の樹脂層よりも前記各インサート部材間に形成される内層の樹脂層の方が厚く形成されるとよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、モールド成形時におけるバスバーの変形を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るインサート成形品を示す図であり、(a)は側面図、(b)は平面図、(c)はA−A線断面図(横断面図)、(d)はB−B線断面図(縦断面図)である。
【図2】(a),(b)は図1のインサート成形品に用いるバスバーを示す図である。
【図3】図1のインサート成形品に用いる成形金型の一例を示す図であり、(a)は横断面図、(b)は縦断面図である。
【図4】図2のバスバーを保持したときの図3の成形金型を示す図であり、(a)は横断面図、(b)は縦断面図である。
【図5】(a)〜(d)は図3の成形金型を用いたときのモールド成形時の樹脂の充填状況を示す図である。
【図6】図3の成形金型を用いたときの、モールド成形時の各部厚さの時間変化を示すグラフである。
【図7】図3の成形金型及び長尺のバスバーを用いたときの、モールド成形時の各部厚さの時間変化を示すグラフである。
【図8】本発明の第2の実施の形態に係る成形金型を示す図であり、(a)は横断面図、(b)は縦断面図である。
【図9】(a)〜(d)は図8の成形金型を用いたときのモールド成形時の樹脂の充填状況と支持部材の動作を示す図である。
【図10】図8の成形金型を用いたときの、モールド成形時の各部厚さの時間変化を示すグラフである。
【図11】本発明の第3の実施の形態に係る成形金型を示す図であり、(a)は横断面図、(b)は縦断面図である。
【図12】(a)〜(d)は図11の成形金型を用いたときのモールド成形時の樹脂の充填状況と支持部材の動作を示す図である。
【図13】図11の成形金型を用いたときの、モールド成形時の各部厚さの時間変化を示すグラフである。
【図14】本発明の第4の実施の形態に係る成形金型を示す図であり、(a)は横断面図、(b)は縦断面図である。
【図15】(a)〜(d)は図14の成形金型を用いたときのモールド成形時の樹脂の充填状況と支持部材の動作を示す図である。
【図16】図14の成形金型を用いたときの、モールド成形時の各部厚さの時間変化を示すグラフである。
【図17】本発明の第5の実施の形態に係る成形金型を示す図であり、(a)は横断面図、(b)は縦断面図である。
【図18】(a)〜(d)は図17の成形金型を用いたときのモールド成形時の樹脂の充填状況と押し込み棒の動作を示す図である。
【図19】図17の成形金型を用いたときの、モールド成形時の各部厚さの時間変化を示すグラフである。
【図20】本発明の第6の実施の形態に係るインサート成形品を示す図であり、(a)は側面図、(b)は平面図、(c)はCn−Cn線断面図(横断面図)、(d)はD−D線断面図(縦断面図)である。
【図21】図20のインサート成形品に用いる成形金型を示す図であり、(a)は横断面図、(b)は縦断面図である。
【図22】(a)〜(d)は図21の成形金型を用いたときのモールド成形時の樹脂の充填状況を示す図である。
【図23】図21の成形金型を用いたときの、モールド成形時の各部厚さの時間変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0019】
<第1の実施の形態:支持部材なし>
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るインサート成形品を示す図であり、(a)は側面図、(b)は平面図、(c)はA−A線断面図(横断面図)、(d)はB−B線断面図(縦断面図)である。
【0020】
図1に示すように、第1の実施の形態に係るインサート成形品1は、設定間隔で離間されて配置された複数(図では2枚)のインサート部材としてのバスバー(導体)2a,2bと、これらのバスバー2a,2b間及びその周囲を被覆する樹脂モールド体3とからなる。ここで、設定間隔とはバスバー2a,2b間の電気絶縁性を良好に保てる間隔であり、インサート成形品1の成形に当たり当然考慮されるべき設計事項である。
【0021】
図1において、T1,T2は各バスバー2a,2bの厚さ、T3,T5はバスバー2a,2bの周囲の樹脂層の厚さ(バスバー2a,2bと後述する成形金型5の内壁面との間隔)、T4はバスバー2a,2bの間の樹脂層の厚さ(バスバー2a,2bの離間間隔)、W1は樹脂モールド体3の幅、W2はバスバー2a,2bの幅、Lは樹脂モールド体3の長さをそれぞれ示す。例えば、T1,T2は1.5mm、T3,T5は1mm、T4は0.5mmである。
【0022】
また、dはインサート成形品1の長さ方向の端部におけるバスバー2a,2bの導体間隔(より詳細には、絶縁性樹脂の表面を沿う距離(沿面距離))を示す。この導体間隔dは、電気絶縁性や信頼性の確保のために、材料や使用環境で決まる沿面絶縁距離以上となるように設計してある。
【0023】
バスバー2a,2bは、樹脂モールド体3の長さ方向の両端から露出され、この露出された部分がそれぞれ接続端子となる。図2(a),(b)に示すように、バスバー2a,2bは、積層して配置したときに接続端子となる長さ方向の端部において、それぞれ互い違いに配置されるような形状(バスバー2aは平面視で長さ方向の両端部が凹字形状、バスバー2bは平面視で長さ方向の両端部が凸字形状)となっている。この形状は特に限定するものではなく、使用環境によって適宜設計変更するとよい。
【0024】
樹脂モールド体3は、バスバー2a,2bを離間させた状態で絶縁性樹脂により一括モールド成形して形成される。この樹脂モールド体3は、バスバー2a,2bの周囲の電気絶縁性を確保すると共に、バスバー2a,2bの離間間隔T4を保持してバスバー2a,2b間の電気絶縁性を確保するためのものである。樹脂モールド体3の材料となる絶縁性樹脂としては、例えば、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂、PA(ポリアミド)樹脂、LCP(液晶ポリマー)樹脂、エポキシ樹脂などを用いることができる。これら材料は、樹脂モールド体3の成形方法によって適宜選択することができる。例えば、射出成形であればPPS樹脂、PA樹脂、LCP樹脂など、トランスファー成形であれば各種のエポキシ樹脂などを用いることができる。
【0025】
なお、詳細は後述するが、これら成形方法にて樹脂モールド体3を成形する際には、2方向から充填した樹脂がぶつかる部分、即ちウエルドラインが形成されてしまうことがある。第1の実施の形態に係るインサート成形品1においては、図1(c)に示すようにウエルドライン4がバスバー2a,2bの周囲に形成されるようにし、バスバー2a,2b間にはウエルドライン4がない状態とした。
【0026】
この第1の実施の形態に係るインサート成形品1のインサート成形方法を説明する。
【0027】
先ず、インサート成形方法に用いる成形金型を説明する。
【0028】
図3に示すように、成形金型5は、その内部に樹脂モールド体3を成形するためのキャビティCを有する。このキャビティCを形成する成形金型5のバスバー2a,2bの長さ方向の両端にそれぞれ臨んだ内壁面には、バスバー2a,2bの両端部を保持するための保持溝6がそれぞれ形成される。各保持溝6の底面からは、バスバー2a,2bの離間間隔T4を設定間隔以上に維持する隙間維持用の突起7が延出するように形成され、各保持溝6はバスバー2aを保持するための第1の保持溝6aとバスバー2bを保持するための第2の保持溝6bとに仕切られている。第1の保持溝6aの幅T6はバスバー2aの厚さT1よりも大きく形成され、第2の保持溝6bの幅T7はバスバー2bの厚さT2よりも大きく形成される。これにより、バスバー2a,2bは積層方向(図示上下方向)にある程度の遊びを持って中空保持され、離間間隔T4が自在に変化するようにされる。なお、バスバー2a,2bと成形金型5の内壁面との間隔T3,T5が一定(T8,T9)以下とならないように第1の保持溝6aと第2の保持溝6bの幅T6,T7の上限値が決定される。
【0029】
また、成形金型5のバスバー2a,2bの幅方向の側部に臨んだ内壁面には、樹脂モールド体3の材料である絶縁性樹脂を充填するためのゲート8が形成される。このゲート8は、その開口部がバスバー2a,2bの長さ方向に沿って各突起7を結ぶように細長いフィルム形状に形成される。つまり、ゲート8から絶縁性樹脂を充填することで、バスバー2a,2b間の隙間に絶縁性樹脂を充填することができるように構成される。
【0030】
なお、ゲート8の開口部の形状はフィルム形状に限定されず、例えば、円形形状でもよい。また、ゲート8の数は、単数でも複数でもよい。
【0031】
図3では概略的に描いているが、成形金型5は、例えば図示上下方向に分割・組み立て自在に形成されており、成形金型5内にバスバー2a,2bを収容することができるようになっている。
【0032】
次いで、成形金型5を用いたインサート成形方法を説明する。
【0033】
初めに成形金型5内にバスバー2a,2bを中空保持する。このとき、図4に示すように、バスバー2a,2bの離間間隔T4が設定間隔より広くなるように突起7を挟むように各バスバー2a,2bを中空保持する。これは、ゲート8から絶縁性樹脂を充填する際に、離間間隔T4を最終的な離間間隔T4である設定間隔より広くしておくと、バスバー2a,2b間の隙間への絶縁性樹脂の充填が容易になるためである。なお、図4においてT3(t0)は時間t0におけるT3、T4(t0)は時間t0におけるT4、T5(t0)は時間t0におけるT5を意味する(t0からt1,t2,t3,t4と順に時間が変化する)。
【0034】
その後、図5(a)に示すように、中空保持したバスバー2a,2b間の隙間(内層)にゲート8から絶縁性樹脂9を充填する。図5(b)示すように内層への絶縁性樹脂9の充填が完了した後、図5(c)に示すようにそのまま絶縁性樹脂9を成形金型5の内周縁部(外層)へ回り込ませる。具体的には、バスバー2a,2b間の隙間に絶縁性樹脂9を充填してから外層に絶縁性樹脂9が回るようにゲート8の厚さや絶縁性樹脂9の充填速度を制御することで、初めにバスバー2a,2b間の隙間に絶縁性樹脂9を充填し、その後外層に絶縁性樹脂9を充填することができる。例えば、初期のバスバー2a,2bの離間間隔(T4(t0))及びバスバー2a,2bと成形金型5の内壁面との間隔(T3(t0),T5(t0))が同じ場合を考えると、内層の充填が完了してから外層に絶縁性樹脂9を充填開始する場合が最終的なバスバー2a,2bの離間間隔T4が最も広くなり、内層の充填開始後で内層の充填完了前に外層にも充填されるようにすると最終的な離間間隔T4が最も狭くなる。また、ゲート8の厚さが薄い方が内層の充填度合いと外層の充填度合いの差が大きくなる。また、ゲート8からの絶縁性樹脂9の充填速度が速い方が内層の充填度合いと外層の充填度合いの差が大きくなる。また、内層の充填度合いと外層の充填度合いの調整を行うために、充填の進行に合わせてゲート8とバスバー2a,2bの距離を変えるようにゲート位置を油圧制御などで変えることも有効である。ゲート位置が導体に近いと内層に充填される割合が高くなり、遠くすると外層に充填される割合が徐々に高くなる。ゲート8をバスバー2a,2bの幅方向の端部より内側にすると、内層に充填される割合がさらに高くなる。
【0035】
なお、絶縁性樹脂9の充填には、射出成形、ホットメルト成形、トランスファー成形などを用いることができる。
【0036】
このように絶縁性樹脂9が外層へ回り込むと、図5(d)に示すように、回り込んだ絶縁性樹脂9によりバスバー2a,2bが外層側から内層側へ押さえる方向の圧力(樹脂圧力)がかかるので、各バスバー2a,2bの長さ方向の両端が突起7に押し付けられる。これにより、バスバー2a,2bの離間間隔T4が狭くなり、最終的な離間間隔T4を初めの離間間隔T4より狭くすることができる。例えば、図6に示すように、絶縁性樹脂9の充填開始時(初期)のバスバー2a,2bの離間間隔T4を1.5mm、外層の厚さT3,T5を0.5mmずつとし、最終的な離間間隔T4を0.5mm、外層の厚さT3,T5を1mmずつとすることができる。
【0037】
最後に、成形品を成形金型5から離型すると、インサート成形品1が得られる。
【0038】
上述したように、2方向から充填した絶縁性樹脂9がぶつかる部分をウエルドライン4というが、この部分では絶縁性樹脂9の熱収縮などにより合わさった絶縁性樹脂9の間に隙間ができたり電気絶縁的に弱点となる界面が生じる場合がある。本発明のように、内層を先に充填してから外層を充填する場合、ウエルドライン4はバスバー2a,2b間には生じず、バスバー2a,2bの周囲(外側)に形成することができる。バスバー2a,2b間に電圧をかけて使用する場合、バスバー2a,2b間に電気絶縁的に弱点となる隙間や界面がないことが望ましく、この点で本発明は優れている。
【0039】
以上要するに、第1の実施の形態に係るインサート成形方法では、バスバー2a,2bの長さ方向の両端にそれぞれ臨んだ内壁面に、バスバー2a,2bの離間間隔T4を設定間隔以上に維持する隙間維持用の突起7をそれぞれ形成すると共に、バスバー2a,2bの幅方向の側部に臨んだ内壁面に、絶縁性樹脂9を充填するためのゲート8を形成し、成形金型5内にバスバー2a,2bを、突起7を挟んで離間間隔T4が自在に変化するように且つ離間間隔T4が設定間隔より広くなるように中空保持し、中空保持したバスバー2a,2b間の隙間にゲート8から絶縁性樹脂9を充填し、成形金型5の内周縁部に樹脂を回り込ませ、回り込ませた絶縁性樹脂9の樹脂圧力でバスバー2a,2bの両端を突起7に押し付けてインサート成形品1を成形する。
【0040】
そのため、絶縁性樹脂9を充填する際にその樹脂圧力でバスバー2a,2bが全長に亘って自在に動くため、モールド成形時においてバスバー2a,2bの変形を生じさせる圧力差が生じず、バスバー2a,2bの変形を抑制し、バスバー2a,2bが全長に亘って設定間隔で離間された状態でモールド成形をすることができ、電気絶縁性や信頼性に優れたインサート成形品1を得ることができる。
【0041】
第1の実施の形態においては、最終的な離間間隔T4を0.5mm、外層の厚さT3,T5を1mmずつとし、バスバー2a,2bの周囲に形成される外層の樹脂層よりもバスバー2a,2b間に形成される内層の樹脂層の方が薄くなるように設計したが、絶縁距離を長く取ることができる外層の樹脂層を内層の樹脂層よりも薄く形成するようにしてもよい。このように構成することで、さらなる薄肉成形が可能となる。
なお、本実施形態において、成形金型5内にバスバー2a、2bを一時的に中空保持する方法としては、以下の方法が適用可能である。
例えば、バスバー2a,2bの両端を保持するための保持溝6に両面テープ等の接着物を貼付し、該接着物にバスバー2a,2bを接触させて、バスバー2a,2bを中空保持する方法が適用可能である。この場合、該接着物のバスバー2a,2bに対する接着力は、絶縁性樹脂9を成形金型5の内周縁(外層)へ回り込ませたときにバスバー2a,2bに働く外層側から内層側へ押さえる方向の圧力(樹脂圧力)よりも小さいことが好ましい。
また、バスバー2a,2bの間に介在物を設けておくことでバスバー2a,2bを中空保持する方法が適用可能である。この場合、該介在物は、成形金型5に充填する際の絶縁性樹脂9の温度により絶縁性樹脂9内に溶融するものであることが好ましい。
更に、バスバー2a,2bの幅方向(例えば、図3における左右方向)に存する成形金型5の側部をバスバー2a,2bの幅方向に貫通する貫通孔(図示せず)を設けておき、そこからバスバー保持用ピン(図示せず)を挿入してバスバー2a,2bに接触させて、バスバー2a,2bを中空保持する方法も適用可能である。
更にまた、例えば、ゲート8が設けられた側部の反対側の側部を下にして成形金型5を配置することにより、バスバー2a,2bを中空保持する方法も適用可能である。
なお、「設定間隔以上に維持する隙間維持用の突起」とは、そもそも、本発明は、複数のインサート部材の離間間隔が変化する技術思想であり、インサート成形する際においては、隙間維持用の突起により、結果的に、複数のインサート部材が設定間隔以上に維持される状態でインサート成形が行われる。
つまり、「設定間隔以上に維持する隙間維持用の突起」とは、複数のインサート部材の離間間隔を設定間隔以下にならないように規制する隙間規制用の突起という意味も併せ持つ。
【0042】
<第2の実施の形態:中央付近に支持部材使用>
第2の実施の形態に係るインサート成形方法は、第1の実施の形態に係るインサート成形方法に比べて、成形金型5内に、バスバー2a,2bの長さ方向に沿って当接する支持部材10を挿入しておき、成形金型5の内周縁部に絶縁性樹脂9を回り込ませる際に、絶縁性樹脂9の回り込みを阻害しないように支持部材10をバスバー2a,2bから離間する点が異なる。
【0043】
成形金型5に支持部材10を挿入する理由を以下に説明する。
【0044】
バスバー2a,2bの離間間隔T4が一定(T6+T4+T7−(T1+T2))以上に広がらず、またバスバー2a,2bと成形金型5の内壁面との間隔T3,T5が一定(T8,T9)以下にならないように、バスバー2a,2bのy軸方向(長さ方向)の両端部を保持溝6で拘束しているが、バスバー2a,2bの厚さT1,T2に比べて樹脂モールド体3の長さL(キャビティC内に配置される部分のバスバー2a,2bの長さ)が長いとバスバー2a,2bが撓んでバスバー2a,2bの離間間隔T4が広がり、バスバー2a,2bと成形金型5の内壁面との間隔T3,T5が狭くなる場合がある。バスバー2a,2bと成形金型5の内壁面との間隔T3,T5が狭い場合、図7に示すように、最終的なバスバー2a,2bの離間間隔T4が広く、またバスバー2a,2bの周囲の樹脂層が薄くなってしまうおそれがある。これは、バスバー2a,2b間の樹脂圧力でバスバー2a,2bの離間間隔T4を広くする方向の力が加わるためであり、図8に示すように、x軸方向(幅方向)の中央付近でバスバー2a,2bを外側から支持部材10で押さえることで、バスバー2a,2b間の隙間のみに絶縁性樹脂9が存在するというような現象を抑制することができる。支持部材10のy軸方向の長さはバスバー2a,2bの長さより短くても、バスバー2a,2bの離間間隔T4が広くならないようにする効果は期待できる。以上の理由から第2の実施の形態では、成形金型5内に支持部材10を挿入した。
【0045】
具体的な動作としては、図9,10に示すように、絶縁性樹脂9がゲート8の反対側を回って外層の支持部材10付近まで到達した時点P1で、油圧制御などにより支持部材10を成形金型5内に引っ込めると(バスバー2a,2bから離間させると)、支持部材10が挿入されていた箇所も絶縁性樹脂9でバスバー2a,2bを被覆することができる。
【0046】
以上、第2の実施の形態に係るインサート成形方法によれば、例え、厚さに対して長さが長く撓みやすいバスバー2a,2bを用いたとしても、モールド成形時におけるバスバー2a,2bの変形を抑制し、バスバー2a,2bが設定間隔で離間された状態でモールド成形をすることができ、電気絶縁性や信頼性に優れたインサート成形品1を得ることができる。
【0047】
<第3の実施の形態:ゲート側に支持部材使用>
第3の実施の形態に係るインサート成形方法は、第2の実施の形態に係るインサート成形方法と比べて、支持部材10を挿入する位置が異なる。つまり、第3の実施の形態においては、支持部材10をゲート側に挿入する。この理由を以下に説明する。
【0048】
内層に絶縁性樹脂9が流れる量が少ない状態で、ゲート8側の外層に絶縁性樹脂9が流れ込むと、外層の絶縁性樹脂9の圧力でバスバー2a,2bの離間間隔T4が狭くなる方向の力が働き、バスバー2a,2b間の隙間に絶縁性樹脂9を流しにくくなる。このような現象は、図11に示すような成形金型5を用いて、ゲート8に近い側でバスバー2a,2bを外側から支持部材10で押さえることで回避することができる。この支持部材10は、バスバー2a,2bのy軸方向全長に亘る長さを持たせると絶縁性樹脂9が外層に回り込むのを抑制する効果が大きくなる。以上の理由から第2の実施の形態では、支持部材10をゲート側に挿入した。
【0049】
具体的な動作としては、図12,13に示すように、絶縁性樹脂9がある程度進行した時点P2で油圧制御などにより支持部材10を成形金型5内に引っ込めると(バスバー2a,2bから離間させると)、支持部材10が挿入されていた箇所も絶縁性樹脂9でバスバー2a,2bを被覆することができる。
【0050】
以上、第3の実施の形態に係るインサート成形方法によれば、例え、バスバー2a,2b間の隙間が狭い場合であっても、充填開始時に絶縁性樹脂9が外層に流れ込むのを防ぐことができ、バスバー2a,2b間の隙間に絶縁性樹脂9を充填し易くすることができる。また、第1の実施の形態に係るインサート成形方法と同様に、モールド成形時におけるバスバー2a,2bの変形を抑制し、バスバー2a,2bが設定間隔で離間された状態でモールド成形をすることができ、電気絶縁性や信頼性に優れたインサート成形品1を得ることができる。
【0051】
<第4の実施の形態:中央付近とゲート側に支持部材使用>
第4の実施の形態に係るインサート成形方法は、図14に示すように、第2,3の実施の形態に係るインサート成形方法を組み合わせた方法である。
【0052】
具体的な動作としては、図15,16に示すように、絶縁性樹脂9がある程度進行した時点P3で油圧制御などによりゲート側の支持部材10を成形金型5内に引っ込めると(バスバー2a,2bから離間させると)、支持部材10が挿入されていた箇所も絶縁性樹脂9でバスバー2a,2bを被覆することができる。さらに、絶縁性樹脂9がゲート8の反対側を回って外層の支持部材10付近まで到達した時点P4で、油圧制御などにより中央付近の支持部材10を成形金型5内に引っ込めると(バスバー2a,2bから離間させると)、支持部材10が挿入されていた箇所も絶縁性樹脂9でバスバー2a,2bを被覆することができる。
【0053】
以上、第4の実施の形態に係るインサート成形方法によれば、例え、厚さに対して長さが長く撓みやすいバスバー2a,2bを用いたとしても、モールド成形時におけるバスバー2a,2bの変形を抑制し、バスバー2a,2bが設定間隔で離間された状態でモールド成形をすることができ、電気絶縁性や信頼性に優れたインサート成形品1を得ることができる。
【0054】
さらに、例え、バスバー2a,2b間の隙間が狭い場合であっても、充填開始時に絶縁性樹脂9が外層に流れ込むのを防ぐことができ、バスバー2a,2b間の隙間に絶縁性樹脂9を充填し易くすることができる。
【0055】
<第5の実施の形態:外側からの押し込み棒使用>
第5の実施の形態に係るインサート成形方法は、第1の実施の形態に係るインサート成形方法と比べて、成形金型5に、バスバー2a,2bに当接する押し込み棒11を挿入しておき、成形金型5の内周縁部に絶縁性樹脂9を回り込ませる際に、バスバー2a,2bの離間間隔T4を狭める樹脂圧力を補うように押し込み棒11を押し込む点が異なる。
【0056】
成形金型5に押し込み棒11を挿入する理由をその動作と共に以下に説明する。
【0057】
外側からの樹脂圧力が不足するとバスバー2a,2bの離間間隔T4を設定間隔に狭めることができないことも考えられる。このよう場合、図17〜19に示すように、成形金型5にバスバー2a,2bを外側から押し込む押し込み棒11を挿入し、絶縁性樹脂9が外層に回った時点P5で油圧制御などにより押し込み棒11を押し込むことで、バスバー2a,2bの離間間隔T4を設定間隔まで狭くすることができる。なお、押し込み棒11のx軸方向の挿入個数は図17,18に示す2個に限られず、適宜選択可能である。
【0058】
以上、第5の実施の形態に係るインサート成形方法によれば、例え、外側からの樹脂圧力が不足したとしても、バスバー2a,2bの離間間隔T4を設定間隔まで狭くすることができる。また、第1の実施の形態に係るインサート成形方法と同様に、モールド成形時におけるバスバー2a,2bの変形を抑制し、バスバー2a,2bが設定間隔で離間された状態でモールド成形をすることができ、電気絶縁性や信頼性に優れたインサート成形品1を得ることができる。
【0059】
<第6の実施の形態:バスバーの離間間隔を内側から支持する手段追加>
第6の実施の形態に係るインサート成形方法は、第1の実施の形態に係るインサート成形方法と比べて、成形金型5内に、バスバー2a,2bの離間間隔T4が長さ方向の全長に亘って設定間隔未満となるのを防止する接近防止手段を設けておく点が異なる。この場合のインサート成形品12は、図20に示すように、上下面にそれぞれ複数の穴13が形成されている。この穴13の詳細については後述する。
【0060】
接近防止手段は、バスバー2a,2bの外側の樹脂圧力でバスバー2a,2bの離間間隔T4を狭くする際に、最終的な離間間隔T4がバスバー2a,2bの長さ方向の全長に亘って設定間隔未満とならないようにするためのものである。
【0061】
接近防止手段は、図21に示すように、バスバー2a(又は2b)の他のバスバー2b(又は2a)に対向する対向面に対向する成形金型5の内壁面と一体に形成され、中空保持されたバスバー2a(又は2b)の対向面に当接する複数の接近防止ピン14からなる。
【0062】
また、各バスバー2a,2bに関して、接近防止ピン14の先端面が当接する部分は、絶縁性樹脂9がモールドされないので、成形後に露出することになる。この露出する部分の間隔、即ち、バスバー2aに係る露出部分とバスバー2bに係る露出部分との各間隔は、絶縁性を確保する観点から、当該間隔における絶縁性樹脂9の表面を沿う距離が材料や使用環境で決まる沿面絶縁距離以上となるように、設計するとよい。
【0063】
なお、接近防止ピン14は、成形金型5内に固定されるか、或いは成形金型5内に移動可能に挿入される。接近防止ピン14をその軸方向に移動可能にすることで様々な厚さのバスバーを設定間隔で離間させて保持することができるため、成形金型5の汎用性が向上する。第6の実施の形態においては接近防止ピン14を成形金型5に一体的に固定して形成した。
【0064】
また、バスバー2a(又は2b)には、他のバスバー2b(又は2a)に当接する接近防止ピン14を挿通してかわすためのピン穴15が形成される。ピン穴15の内径は、接近防止ピン14の外径よりも大きく形成しているが、例えば、接近防止ピン14の外経とピン穴15の内径の差をバスバー2aとバスバー2bの離間間隔T4の2倍以上とすると、ピン穴15の内面をバスバー2aとバスバー2bの離間間隔T4以上の厚さの絶縁性樹脂9で覆うことができる。このように構成することにより、電気絶縁性をバスバー2aとバスバー2bの間の電気絶縁性より良くすることができる。また、ピン穴15の内側の絶縁性樹脂9の厚さをバスバー2aとバスバー2bの離間間隔T4と同じにすることで、過不足のない電気絶縁性とすることができると共に、絶縁性樹脂9の使用量を最適化することができ、接近防止ピン14の外経に対して必要最小限の穴径とすることができる。
【0065】
このように成形金型5内に接近防止手段を設けておくことで、図22,23に示すように、接近防止ピン14によって、各バスバー2a,2bの長さ方向の全長に亘って変形を規制してバスバー2a,2bの離間間隔T4が設定間隔に維持される。また、接近防止ピン14とピン穴15の隙間に絶縁性樹脂9が回り込み、各バスバー2a,2bのピン穴15間においても十分な電気絶縁性を確保することができる。なお、図21(b)の接近防止ピン14及びピン穴15に関し、図では、左側に2箇所、右側に1箇所、描かれているが、もちろん、左側から2番目の接近防止ピン14及びピン穴15と右側の接近防止ピン14及びピン穴15との間にも、接近防止ピン14及びピン穴15があり、図では省略されている。
【0066】
なお、第6の実施の形態においては、ピン穴15からバスバー2a,2bの周囲に絶縁性樹脂9が漏れて流れるため、第1の実施の形態と異なり、T3,T5が広くなる時間とT4が狭くなる時間が多少早くなることが考えられる。しかし、ピン穴15の面積がバスバー2a,2bの表面積に比べて十分小さいため、バスバー2a,2bの周囲に回り込む樹脂量は少なく、薄肉成形性への影響は小さい。
【0067】
このように、樹脂モールド体3に形成された穴13は、樹脂モールド体3を成形する際に各バスバー2a,2bの離間間隔T4を維持するための接近防止ピン14により形成されたものである。接近防止ピン14を成形金型5内に移動可能に挿入し、樹脂モールド体3の成形時に絶縁性樹脂9の硬化と共に接近防止ピン14を徐々に引き抜いて(コアバックして)いくことで完成品に穴13を残さないようにすることも可能である。このように構成することで、つまり、穴13からバスバー2a,2bが露出させないようにすることで、電気絶縁特性をさらに向上させることができる。
【0068】
このように、穴13からバスバー2a,2bが露出させないようにした場合でも、接近防止ピン14が挿入されていた部分に充填される絶縁性樹脂9とその周囲の絶縁性樹脂9は、温度、圧力等の成形条件が異なってしまうおそれがある。この場合、接近防止ピン14が挿入されていた部分の絶縁性樹脂9とその周囲の絶縁性樹脂9の界面の電気絶縁強度が絶縁性樹脂9の電気絶縁強度より低くなるおそれがある。しかし、前記したように、接近防止ピン14がバスバー2a,2bに当接する部分同士の間隔を絶縁性樹脂9の沿面絶縁距離以上となるように設計しておけば、前記絶縁性樹脂9の界面の電気絶縁強度が低いことによる影響を受けないようにすることができる。
【0069】
以上、第6の実施の形態に係るインサート成形方法によれば、例え、厚さに対して長さが長く撓みやすいバスバー2a,2bを用いたとしても、モールド成形時におけるバスバー2a,2bの変形を抑制し、バスバー2a,2bが設定間隔で離間された状態でモールド成形をすることができ、電気絶縁性や信頼性に優れたインサート成形品1を得ることができる。
【0070】
<第7の実施の形態:接近防止手段と押し込み棒の両方を設ける>
第7の実施の形態に係るインサート成形方法は、第5,6の実施の形態に係るインサート成形方法を組み合わせた方法である。この方法によっても、例え、外側からの樹脂圧力が不足したとしても、バスバー2a,2bの離間間隔T4を設定間隔まで狭くすることができる。また、例え、厚さに対して長さが長く撓みやすいバスバー2a,2bを用いたとしても、モールド成形時におけるバスバー2a,2bの変形を抑制し、バスバー2a,2bが設定間隔で離間された状態でモールド成形をすることができ、電気絶縁性や信頼性に優れたインサート成形品1を得ることができる。
【0071】
本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことが可能である。
【0072】
例えば、上述の実施の形態においては、インサートするバスバーを2枚用いる場合を説明したが、3枚以上のバスバーを使用する場合にも本発明は適用可能である。
【0073】
また、上述の実施の形態においては、インサート部材としてバスバーを用いたが、複数のインサート部材の離間間隔を狭く作製するものであれば、本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0074】
1 インサート成形品
2a,2b バスバー
3 樹脂モールド体
5 成形金型
6a,6b 保持溝
7 隙間維持用の突起
8 ゲート
【技術分野】
【0001】
本発明は、インサート成形技術を用いて、複数のインサート部材間及びその周囲を樹脂により一括モールド成形するインサート成形方法及びインサート成形品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数のインサート部材間及びその周囲を樹脂により一括モールド成形したインサート成形品としては、例えば、複数のバスバーの電気的絶縁などを目的として、各バスバーを狭ギャップで積層し、その各バスバー間と周囲を絶縁性樹脂により一括モールド成形されてなる成形品がある。
【0003】
このインサート成形品は、成形金型内に複数のバスバーを離間させて保持した後、その成形金型内に絶縁性樹脂を充填して、複数のバスバー間及びその周囲を一括モールド成形し、これを成形金型から離型することにより成形される。
【0004】
このようにして得られたインサート成形品は、例えば、車両用のインバータ回路などの高電界(例えば、4kV/mm程度)環境で使用され、高電界環境に耐える電気絶縁性が要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−215340号公報
【特許文献2】特開2007−38490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のインサート成形方法では、モールド成形時に、積層(離間して保持)されたバスバーが成形金型内に充填される樹脂によって押され、変形してしまうことがあった。
【0007】
これでは、バスバーの積層間隔が狭くなったり、広くなったりと、想定した電気絶縁性が得られず信頼性を確保できないという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、上述した事情に鑑みなされたもので、モールド成形時におけるバスバーの変形を抑制することができる技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために創案されたものであり、成形金型内に複数のインサート部材を離間させて保持した後、前記成形金型内に樹脂を充填して、前記複数のインサート部材間及びその周囲を一括モールド成形し、前記複数のインサート部材を設定間隔で離間させた状態でインサート成形品を成形するインサート成形方法において、前記複数のインサート部材の長さ方向の両端にそれぞれ臨んだ内壁面に、前記複数のインサート部材の離間間隔を前記設定間隔以上に維持する隙間維持用の突起をそれぞれ形成すると共に、前記複数のインサート部材の幅方向の側部に臨んだ内壁面に、樹脂を充填するためのゲートを形成し、前記成形金型内に前記複数のインサート部材を、前記突起を挟んで離間間隔が自在に変化するように且つ離間間隔が前記設定間隔より広くなるように中空保持し、中空保持した前記複数のインサート部材間の隙間に前記ゲートから樹脂を充填し、前記成形金型の内周縁部に樹脂を回り込ませ、回り込ませた樹脂の樹脂圧力で前記複数のインサート部材の両端を前記突起に押し付けてインサート成形品を成形することを特徴とするインサート成形方法である。
【0010】
また、前記複数のインサート部材の長さ方向の両端にそれぞれ臨んだ内壁面に、前記複数のインサート部材を保持するための幅広の保持溝をそれぞれ形成し、その上で前記保持溝の底部中央から延出するように前記突起をそれぞれ形成するようにしてもよい。
【0011】
また、前記成形金型内に、前記複数のインサート部材の長さ方向に沿って当接する支持部材を挿入しておき、前記成形金型の前記内周縁部に樹脂を回り込ませる際に、樹脂の回り込みを阻害しないように前記支持部材を前記複数のインサート部材から離間するようにしてもよい。
【0012】
また、前記成形金型内に、前記各インサート部材の間隔が長さ方向の全長に亘って設定間隔未満となるのを防止する接近防止手段を設けておくようにしてもよい。
【0013】
また、前記成形金型に、前記複数のインサート部材に当接する押し込み棒を挿入しておき、前記成形金型の前記内周縁部に樹脂を回り込ませる際に、前記複数のインサート部材の間隔を狭める樹脂圧力を補うように前記押し込み棒を押し込むようにしてもよい。
【0014】
また、本発明は、上記目的を達成するために創案されたものであり、請求項1〜5のいずれかに記載のインサート成形方法で成形されたインサート成形品であって、前記複数のインサート部材間にウエルドラインがなく、前記複数のインサート部材の周囲にウエルドラインが形成されたことを特徴とするインサート成形品である。
【0015】
また、前記複数のインサート部材の周囲に形成される外層の樹脂層よりも前記各インサート部材間に形成される内層の樹脂層の方が厚く形成されるとよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、モールド成形時におけるバスバーの変形を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るインサート成形品を示す図であり、(a)は側面図、(b)は平面図、(c)はA−A線断面図(横断面図)、(d)はB−B線断面図(縦断面図)である。
【図2】(a),(b)は図1のインサート成形品に用いるバスバーを示す図である。
【図3】図1のインサート成形品に用いる成形金型の一例を示す図であり、(a)は横断面図、(b)は縦断面図である。
【図4】図2のバスバーを保持したときの図3の成形金型を示す図であり、(a)は横断面図、(b)は縦断面図である。
【図5】(a)〜(d)は図3の成形金型を用いたときのモールド成形時の樹脂の充填状況を示す図である。
【図6】図3の成形金型を用いたときの、モールド成形時の各部厚さの時間変化を示すグラフである。
【図7】図3の成形金型及び長尺のバスバーを用いたときの、モールド成形時の各部厚さの時間変化を示すグラフである。
【図8】本発明の第2の実施の形態に係る成形金型を示す図であり、(a)は横断面図、(b)は縦断面図である。
【図9】(a)〜(d)は図8の成形金型を用いたときのモールド成形時の樹脂の充填状況と支持部材の動作を示す図である。
【図10】図8の成形金型を用いたときの、モールド成形時の各部厚さの時間変化を示すグラフである。
【図11】本発明の第3の実施の形態に係る成形金型を示す図であり、(a)は横断面図、(b)は縦断面図である。
【図12】(a)〜(d)は図11の成形金型を用いたときのモールド成形時の樹脂の充填状況と支持部材の動作を示す図である。
【図13】図11の成形金型を用いたときの、モールド成形時の各部厚さの時間変化を示すグラフである。
【図14】本発明の第4の実施の形態に係る成形金型を示す図であり、(a)は横断面図、(b)は縦断面図である。
【図15】(a)〜(d)は図14の成形金型を用いたときのモールド成形時の樹脂の充填状況と支持部材の動作を示す図である。
【図16】図14の成形金型を用いたときの、モールド成形時の各部厚さの時間変化を示すグラフである。
【図17】本発明の第5の実施の形態に係る成形金型を示す図であり、(a)は横断面図、(b)は縦断面図である。
【図18】(a)〜(d)は図17の成形金型を用いたときのモールド成形時の樹脂の充填状況と押し込み棒の動作を示す図である。
【図19】図17の成形金型を用いたときの、モールド成形時の各部厚さの時間変化を示すグラフである。
【図20】本発明の第6の実施の形態に係るインサート成形品を示す図であり、(a)は側面図、(b)は平面図、(c)はCn−Cn線断面図(横断面図)、(d)はD−D線断面図(縦断面図)である。
【図21】図20のインサート成形品に用いる成形金型を示す図であり、(a)は横断面図、(b)は縦断面図である。
【図22】(a)〜(d)は図21の成形金型を用いたときのモールド成形時の樹脂の充填状況を示す図である。
【図23】図21の成形金型を用いたときの、モールド成形時の各部厚さの時間変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0019】
<第1の実施の形態:支持部材なし>
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るインサート成形品を示す図であり、(a)は側面図、(b)は平面図、(c)はA−A線断面図(横断面図)、(d)はB−B線断面図(縦断面図)である。
【0020】
図1に示すように、第1の実施の形態に係るインサート成形品1は、設定間隔で離間されて配置された複数(図では2枚)のインサート部材としてのバスバー(導体)2a,2bと、これらのバスバー2a,2b間及びその周囲を被覆する樹脂モールド体3とからなる。ここで、設定間隔とはバスバー2a,2b間の電気絶縁性を良好に保てる間隔であり、インサート成形品1の成形に当たり当然考慮されるべき設計事項である。
【0021】
図1において、T1,T2は各バスバー2a,2bの厚さ、T3,T5はバスバー2a,2bの周囲の樹脂層の厚さ(バスバー2a,2bと後述する成形金型5の内壁面との間隔)、T4はバスバー2a,2bの間の樹脂層の厚さ(バスバー2a,2bの離間間隔)、W1は樹脂モールド体3の幅、W2はバスバー2a,2bの幅、Lは樹脂モールド体3の長さをそれぞれ示す。例えば、T1,T2は1.5mm、T3,T5は1mm、T4は0.5mmである。
【0022】
また、dはインサート成形品1の長さ方向の端部におけるバスバー2a,2bの導体間隔(より詳細には、絶縁性樹脂の表面を沿う距離(沿面距離))を示す。この導体間隔dは、電気絶縁性や信頼性の確保のために、材料や使用環境で決まる沿面絶縁距離以上となるように設計してある。
【0023】
バスバー2a,2bは、樹脂モールド体3の長さ方向の両端から露出され、この露出された部分がそれぞれ接続端子となる。図2(a),(b)に示すように、バスバー2a,2bは、積層して配置したときに接続端子となる長さ方向の端部において、それぞれ互い違いに配置されるような形状(バスバー2aは平面視で長さ方向の両端部が凹字形状、バスバー2bは平面視で長さ方向の両端部が凸字形状)となっている。この形状は特に限定するものではなく、使用環境によって適宜設計変更するとよい。
【0024】
樹脂モールド体3は、バスバー2a,2bを離間させた状態で絶縁性樹脂により一括モールド成形して形成される。この樹脂モールド体3は、バスバー2a,2bの周囲の電気絶縁性を確保すると共に、バスバー2a,2bの離間間隔T4を保持してバスバー2a,2b間の電気絶縁性を確保するためのものである。樹脂モールド体3の材料となる絶縁性樹脂としては、例えば、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂、PA(ポリアミド)樹脂、LCP(液晶ポリマー)樹脂、エポキシ樹脂などを用いることができる。これら材料は、樹脂モールド体3の成形方法によって適宜選択することができる。例えば、射出成形であればPPS樹脂、PA樹脂、LCP樹脂など、トランスファー成形であれば各種のエポキシ樹脂などを用いることができる。
【0025】
なお、詳細は後述するが、これら成形方法にて樹脂モールド体3を成形する際には、2方向から充填した樹脂がぶつかる部分、即ちウエルドラインが形成されてしまうことがある。第1の実施の形態に係るインサート成形品1においては、図1(c)に示すようにウエルドライン4がバスバー2a,2bの周囲に形成されるようにし、バスバー2a,2b間にはウエルドライン4がない状態とした。
【0026】
この第1の実施の形態に係るインサート成形品1のインサート成形方法を説明する。
【0027】
先ず、インサート成形方法に用いる成形金型を説明する。
【0028】
図3に示すように、成形金型5は、その内部に樹脂モールド体3を成形するためのキャビティCを有する。このキャビティCを形成する成形金型5のバスバー2a,2bの長さ方向の両端にそれぞれ臨んだ内壁面には、バスバー2a,2bの両端部を保持するための保持溝6がそれぞれ形成される。各保持溝6の底面からは、バスバー2a,2bの離間間隔T4を設定間隔以上に維持する隙間維持用の突起7が延出するように形成され、各保持溝6はバスバー2aを保持するための第1の保持溝6aとバスバー2bを保持するための第2の保持溝6bとに仕切られている。第1の保持溝6aの幅T6はバスバー2aの厚さT1よりも大きく形成され、第2の保持溝6bの幅T7はバスバー2bの厚さT2よりも大きく形成される。これにより、バスバー2a,2bは積層方向(図示上下方向)にある程度の遊びを持って中空保持され、離間間隔T4が自在に変化するようにされる。なお、バスバー2a,2bと成形金型5の内壁面との間隔T3,T5が一定(T8,T9)以下とならないように第1の保持溝6aと第2の保持溝6bの幅T6,T7の上限値が決定される。
【0029】
また、成形金型5のバスバー2a,2bの幅方向の側部に臨んだ内壁面には、樹脂モールド体3の材料である絶縁性樹脂を充填するためのゲート8が形成される。このゲート8は、その開口部がバスバー2a,2bの長さ方向に沿って各突起7を結ぶように細長いフィルム形状に形成される。つまり、ゲート8から絶縁性樹脂を充填することで、バスバー2a,2b間の隙間に絶縁性樹脂を充填することができるように構成される。
【0030】
なお、ゲート8の開口部の形状はフィルム形状に限定されず、例えば、円形形状でもよい。また、ゲート8の数は、単数でも複数でもよい。
【0031】
図3では概略的に描いているが、成形金型5は、例えば図示上下方向に分割・組み立て自在に形成されており、成形金型5内にバスバー2a,2bを収容することができるようになっている。
【0032】
次いで、成形金型5を用いたインサート成形方法を説明する。
【0033】
初めに成形金型5内にバスバー2a,2bを中空保持する。このとき、図4に示すように、バスバー2a,2bの離間間隔T4が設定間隔より広くなるように突起7を挟むように各バスバー2a,2bを中空保持する。これは、ゲート8から絶縁性樹脂を充填する際に、離間間隔T4を最終的な離間間隔T4である設定間隔より広くしておくと、バスバー2a,2b間の隙間への絶縁性樹脂の充填が容易になるためである。なお、図4においてT3(t0)は時間t0におけるT3、T4(t0)は時間t0におけるT4、T5(t0)は時間t0におけるT5を意味する(t0からt1,t2,t3,t4と順に時間が変化する)。
【0034】
その後、図5(a)に示すように、中空保持したバスバー2a,2b間の隙間(内層)にゲート8から絶縁性樹脂9を充填する。図5(b)示すように内層への絶縁性樹脂9の充填が完了した後、図5(c)に示すようにそのまま絶縁性樹脂9を成形金型5の内周縁部(外層)へ回り込ませる。具体的には、バスバー2a,2b間の隙間に絶縁性樹脂9を充填してから外層に絶縁性樹脂9が回るようにゲート8の厚さや絶縁性樹脂9の充填速度を制御することで、初めにバスバー2a,2b間の隙間に絶縁性樹脂9を充填し、その後外層に絶縁性樹脂9を充填することができる。例えば、初期のバスバー2a,2bの離間間隔(T4(t0))及びバスバー2a,2bと成形金型5の内壁面との間隔(T3(t0),T5(t0))が同じ場合を考えると、内層の充填が完了してから外層に絶縁性樹脂9を充填開始する場合が最終的なバスバー2a,2bの離間間隔T4が最も広くなり、内層の充填開始後で内層の充填完了前に外層にも充填されるようにすると最終的な離間間隔T4が最も狭くなる。また、ゲート8の厚さが薄い方が内層の充填度合いと外層の充填度合いの差が大きくなる。また、ゲート8からの絶縁性樹脂9の充填速度が速い方が内層の充填度合いと外層の充填度合いの差が大きくなる。また、内層の充填度合いと外層の充填度合いの調整を行うために、充填の進行に合わせてゲート8とバスバー2a,2bの距離を変えるようにゲート位置を油圧制御などで変えることも有効である。ゲート位置が導体に近いと内層に充填される割合が高くなり、遠くすると外層に充填される割合が徐々に高くなる。ゲート8をバスバー2a,2bの幅方向の端部より内側にすると、内層に充填される割合がさらに高くなる。
【0035】
なお、絶縁性樹脂9の充填には、射出成形、ホットメルト成形、トランスファー成形などを用いることができる。
【0036】
このように絶縁性樹脂9が外層へ回り込むと、図5(d)に示すように、回り込んだ絶縁性樹脂9によりバスバー2a,2bが外層側から内層側へ押さえる方向の圧力(樹脂圧力)がかかるので、各バスバー2a,2bの長さ方向の両端が突起7に押し付けられる。これにより、バスバー2a,2bの離間間隔T4が狭くなり、最終的な離間間隔T4を初めの離間間隔T4より狭くすることができる。例えば、図6に示すように、絶縁性樹脂9の充填開始時(初期)のバスバー2a,2bの離間間隔T4を1.5mm、外層の厚さT3,T5を0.5mmずつとし、最終的な離間間隔T4を0.5mm、外層の厚さT3,T5を1mmずつとすることができる。
【0037】
最後に、成形品を成形金型5から離型すると、インサート成形品1が得られる。
【0038】
上述したように、2方向から充填した絶縁性樹脂9がぶつかる部分をウエルドライン4というが、この部分では絶縁性樹脂9の熱収縮などにより合わさった絶縁性樹脂9の間に隙間ができたり電気絶縁的に弱点となる界面が生じる場合がある。本発明のように、内層を先に充填してから外層を充填する場合、ウエルドライン4はバスバー2a,2b間には生じず、バスバー2a,2bの周囲(外側)に形成することができる。バスバー2a,2b間に電圧をかけて使用する場合、バスバー2a,2b間に電気絶縁的に弱点となる隙間や界面がないことが望ましく、この点で本発明は優れている。
【0039】
以上要するに、第1の実施の形態に係るインサート成形方法では、バスバー2a,2bの長さ方向の両端にそれぞれ臨んだ内壁面に、バスバー2a,2bの離間間隔T4を設定間隔以上に維持する隙間維持用の突起7をそれぞれ形成すると共に、バスバー2a,2bの幅方向の側部に臨んだ内壁面に、絶縁性樹脂9を充填するためのゲート8を形成し、成形金型5内にバスバー2a,2bを、突起7を挟んで離間間隔T4が自在に変化するように且つ離間間隔T4が設定間隔より広くなるように中空保持し、中空保持したバスバー2a,2b間の隙間にゲート8から絶縁性樹脂9を充填し、成形金型5の内周縁部に樹脂を回り込ませ、回り込ませた絶縁性樹脂9の樹脂圧力でバスバー2a,2bの両端を突起7に押し付けてインサート成形品1を成形する。
【0040】
そのため、絶縁性樹脂9を充填する際にその樹脂圧力でバスバー2a,2bが全長に亘って自在に動くため、モールド成形時においてバスバー2a,2bの変形を生じさせる圧力差が生じず、バスバー2a,2bの変形を抑制し、バスバー2a,2bが全長に亘って設定間隔で離間された状態でモールド成形をすることができ、電気絶縁性や信頼性に優れたインサート成形品1を得ることができる。
【0041】
第1の実施の形態においては、最終的な離間間隔T4を0.5mm、外層の厚さT3,T5を1mmずつとし、バスバー2a,2bの周囲に形成される外層の樹脂層よりもバスバー2a,2b間に形成される内層の樹脂層の方が薄くなるように設計したが、絶縁距離を長く取ることができる外層の樹脂層を内層の樹脂層よりも薄く形成するようにしてもよい。このように構成することで、さらなる薄肉成形が可能となる。
なお、本実施形態において、成形金型5内にバスバー2a、2bを一時的に中空保持する方法としては、以下の方法が適用可能である。
例えば、バスバー2a,2bの両端を保持するための保持溝6に両面テープ等の接着物を貼付し、該接着物にバスバー2a,2bを接触させて、バスバー2a,2bを中空保持する方法が適用可能である。この場合、該接着物のバスバー2a,2bに対する接着力は、絶縁性樹脂9を成形金型5の内周縁(外層)へ回り込ませたときにバスバー2a,2bに働く外層側から内層側へ押さえる方向の圧力(樹脂圧力)よりも小さいことが好ましい。
また、バスバー2a,2bの間に介在物を設けておくことでバスバー2a,2bを中空保持する方法が適用可能である。この場合、該介在物は、成形金型5に充填する際の絶縁性樹脂9の温度により絶縁性樹脂9内に溶融するものであることが好ましい。
更に、バスバー2a,2bの幅方向(例えば、図3における左右方向)に存する成形金型5の側部をバスバー2a,2bの幅方向に貫通する貫通孔(図示せず)を設けておき、そこからバスバー保持用ピン(図示せず)を挿入してバスバー2a,2bに接触させて、バスバー2a,2bを中空保持する方法も適用可能である。
更にまた、例えば、ゲート8が設けられた側部の反対側の側部を下にして成形金型5を配置することにより、バスバー2a,2bを中空保持する方法も適用可能である。
なお、「設定間隔以上に維持する隙間維持用の突起」とは、そもそも、本発明は、複数のインサート部材の離間間隔が変化する技術思想であり、インサート成形する際においては、隙間維持用の突起により、結果的に、複数のインサート部材が設定間隔以上に維持される状態でインサート成形が行われる。
つまり、「設定間隔以上に維持する隙間維持用の突起」とは、複数のインサート部材の離間間隔を設定間隔以下にならないように規制する隙間規制用の突起という意味も併せ持つ。
【0042】
<第2の実施の形態:中央付近に支持部材使用>
第2の実施の形態に係るインサート成形方法は、第1の実施の形態に係るインサート成形方法に比べて、成形金型5内に、バスバー2a,2bの長さ方向に沿って当接する支持部材10を挿入しておき、成形金型5の内周縁部に絶縁性樹脂9を回り込ませる際に、絶縁性樹脂9の回り込みを阻害しないように支持部材10をバスバー2a,2bから離間する点が異なる。
【0043】
成形金型5に支持部材10を挿入する理由を以下に説明する。
【0044】
バスバー2a,2bの離間間隔T4が一定(T6+T4+T7−(T1+T2))以上に広がらず、またバスバー2a,2bと成形金型5の内壁面との間隔T3,T5が一定(T8,T9)以下にならないように、バスバー2a,2bのy軸方向(長さ方向)の両端部を保持溝6で拘束しているが、バスバー2a,2bの厚さT1,T2に比べて樹脂モールド体3の長さL(キャビティC内に配置される部分のバスバー2a,2bの長さ)が長いとバスバー2a,2bが撓んでバスバー2a,2bの離間間隔T4が広がり、バスバー2a,2bと成形金型5の内壁面との間隔T3,T5が狭くなる場合がある。バスバー2a,2bと成形金型5の内壁面との間隔T3,T5が狭い場合、図7に示すように、最終的なバスバー2a,2bの離間間隔T4が広く、またバスバー2a,2bの周囲の樹脂層が薄くなってしまうおそれがある。これは、バスバー2a,2b間の樹脂圧力でバスバー2a,2bの離間間隔T4を広くする方向の力が加わるためであり、図8に示すように、x軸方向(幅方向)の中央付近でバスバー2a,2bを外側から支持部材10で押さえることで、バスバー2a,2b間の隙間のみに絶縁性樹脂9が存在するというような現象を抑制することができる。支持部材10のy軸方向の長さはバスバー2a,2bの長さより短くても、バスバー2a,2bの離間間隔T4が広くならないようにする効果は期待できる。以上の理由から第2の実施の形態では、成形金型5内に支持部材10を挿入した。
【0045】
具体的な動作としては、図9,10に示すように、絶縁性樹脂9がゲート8の反対側を回って外層の支持部材10付近まで到達した時点P1で、油圧制御などにより支持部材10を成形金型5内に引っ込めると(バスバー2a,2bから離間させると)、支持部材10が挿入されていた箇所も絶縁性樹脂9でバスバー2a,2bを被覆することができる。
【0046】
以上、第2の実施の形態に係るインサート成形方法によれば、例え、厚さに対して長さが長く撓みやすいバスバー2a,2bを用いたとしても、モールド成形時におけるバスバー2a,2bの変形を抑制し、バスバー2a,2bが設定間隔で離間された状態でモールド成形をすることができ、電気絶縁性や信頼性に優れたインサート成形品1を得ることができる。
【0047】
<第3の実施の形態:ゲート側に支持部材使用>
第3の実施の形態に係るインサート成形方法は、第2の実施の形態に係るインサート成形方法と比べて、支持部材10を挿入する位置が異なる。つまり、第3の実施の形態においては、支持部材10をゲート側に挿入する。この理由を以下に説明する。
【0048】
内層に絶縁性樹脂9が流れる量が少ない状態で、ゲート8側の外層に絶縁性樹脂9が流れ込むと、外層の絶縁性樹脂9の圧力でバスバー2a,2bの離間間隔T4が狭くなる方向の力が働き、バスバー2a,2b間の隙間に絶縁性樹脂9を流しにくくなる。このような現象は、図11に示すような成形金型5を用いて、ゲート8に近い側でバスバー2a,2bを外側から支持部材10で押さえることで回避することができる。この支持部材10は、バスバー2a,2bのy軸方向全長に亘る長さを持たせると絶縁性樹脂9が外層に回り込むのを抑制する効果が大きくなる。以上の理由から第2の実施の形態では、支持部材10をゲート側に挿入した。
【0049】
具体的な動作としては、図12,13に示すように、絶縁性樹脂9がある程度進行した時点P2で油圧制御などにより支持部材10を成形金型5内に引っ込めると(バスバー2a,2bから離間させると)、支持部材10が挿入されていた箇所も絶縁性樹脂9でバスバー2a,2bを被覆することができる。
【0050】
以上、第3の実施の形態に係るインサート成形方法によれば、例え、バスバー2a,2b間の隙間が狭い場合であっても、充填開始時に絶縁性樹脂9が外層に流れ込むのを防ぐことができ、バスバー2a,2b間の隙間に絶縁性樹脂9を充填し易くすることができる。また、第1の実施の形態に係るインサート成形方法と同様に、モールド成形時におけるバスバー2a,2bの変形を抑制し、バスバー2a,2bが設定間隔で離間された状態でモールド成形をすることができ、電気絶縁性や信頼性に優れたインサート成形品1を得ることができる。
【0051】
<第4の実施の形態:中央付近とゲート側に支持部材使用>
第4の実施の形態に係るインサート成形方法は、図14に示すように、第2,3の実施の形態に係るインサート成形方法を組み合わせた方法である。
【0052】
具体的な動作としては、図15,16に示すように、絶縁性樹脂9がある程度進行した時点P3で油圧制御などによりゲート側の支持部材10を成形金型5内に引っ込めると(バスバー2a,2bから離間させると)、支持部材10が挿入されていた箇所も絶縁性樹脂9でバスバー2a,2bを被覆することができる。さらに、絶縁性樹脂9がゲート8の反対側を回って外層の支持部材10付近まで到達した時点P4で、油圧制御などにより中央付近の支持部材10を成形金型5内に引っ込めると(バスバー2a,2bから離間させると)、支持部材10が挿入されていた箇所も絶縁性樹脂9でバスバー2a,2bを被覆することができる。
【0053】
以上、第4の実施の形態に係るインサート成形方法によれば、例え、厚さに対して長さが長く撓みやすいバスバー2a,2bを用いたとしても、モールド成形時におけるバスバー2a,2bの変形を抑制し、バスバー2a,2bが設定間隔で離間された状態でモールド成形をすることができ、電気絶縁性や信頼性に優れたインサート成形品1を得ることができる。
【0054】
さらに、例え、バスバー2a,2b間の隙間が狭い場合であっても、充填開始時に絶縁性樹脂9が外層に流れ込むのを防ぐことができ、バスバー2a,2b間の隙間に絶縁性樹脂9を充填し易くすることができる。
【0055】
<第5の実施の形態:外側からの押し込み棒使用>
第5の実施の形態に係るインサート成形方法は、第1の実施の形態に係るインサート成形方法と比べて、成形金型5に、バスバー2a,2bに当接する押し込み棒11を挿入しておき、成形金型5の内周縁部に絶縁性樹脂9を回り込ませる際に、バスバー2a,2bの離間間隔T4を狭める樹脂圧力を補うように押し込み棒11を押し込む点が異なる。
【0056】
成形金型5に押し込み棒11を挿入する理由をその動作と共に以下に説明する。
【0057】
外側からの樹脂圧力が不足するとバスバー2a,2bの離間間隔T4を設定間隔に狭めることができないことも考えられる。このよう場合、図17〜19に示すように、成形金型5にバスバー2a,2bを外側から押し込む押し込み棒11を挿入し、絶縁性樹脂9が外層に回った時点P5で油圧制御などにより押し込み棒11を押し込むことで、バスバー2a,2bの離間間隔T4を設定間隔まで狭くすることができる。なお、押し込み棒11のx軸方向の挿入個数は図17,18に示す2個に限られず、適宜選択可能である。
【0058】
以上、第5の実施の形態に係るインサート成形方法によれば、例え、外側からの樹脂圧力が不足したとしても、バスバー2a,2bの離間間隔T4を設定間隔まで狭くすることができる。また、第1の実施の形態に係るインサート成形方法と同様に、モールド成形時におけるバスバー2a,2bの変形を抑制し、バスバー2a,2bが設定間隔で離間された状態でモールド成形をすることができ、電気絶縁性や信頼性に優れたインサート成形品1を得ることができる。
【0059】
<第6の実施の形態:バスバーの離間間隔を内側から支持する手段追加>
第6の実施の形態に係るインサート成形方法は、第1の実施の形態に係るインサート成形方法と比べて、成形金型5内に、バスバー2a,2bの離間間隔T4が長さ方向の全長に亘って設定間隔未満となるのを防止する接近防止手段を設けておく点が異なる。この場合のインサート成形品12は、図20に示すように、上下面にそれぞれ複数の穴13が形成されている。この穴13の詳細については後述する。
【0060】
接近防止手段は、バスバー2a,2bの外側の樹脂圧力でバスバー2a,2bの離間間隔T4を狭くする際に、最終的な離間間隔T4がバスバー2a,2bの長さ方向の全長に亘って設定間隔未満とならないようにするためのものである。
【0061】
接近防止手段は、図21に示すように、バスバー2a(又は2b)の他のバスバー2b(又は2a)に対向する対向面に対向する成形金型5の内壁面と一体に形成され、中空保持されたバスバー2a(又は2b)の対向面に当接する複数の接近防止ピン14からなる。
【0062】
また、各バスバー2a,2bに関して、接近防止ピン14の先端面が当接する部分は、絶縁性樹脂9がモールドされないので、成形後に露出することになる。この露出する部分の間隔、即ち、バスバー2aに係る露出部分とバスバー2bに係る露出部分との各間隔は、絶縁性を確保する観点から、当該間隔における絶縁性樹脂9の表面を沿う距離が材料や使用環境で決まる沿面絶縁距離以上となるように、設計するとよい。
【0063】
なお、接近防止ピン14は、成形金型5内に固定されるか、或いは成形金型5内に移動可能に挿入される。接近防止ピン14をその軸方向に移動可能にすることで様々な厚さのバスバーを設定間隔で離間させて保持することができるため、成形金型5の汎用性が向上する。第6の実施の形態においては接近防止ピン14を成形金型5に一体的に固定して形成した。
【0064】
また、バスバー2a(又は2b)には、他のバスバー2b(又は2a)に当接する接近防止ピン14を挿通してかわすためのピン穴15が形成される。ピン穴15の内径は、接近防止ピン14の外径よりも大きく形成しているが、例えば、接近防止ピン14の外経とピン穴15の内径の差をバスバー2aとバスバー2bの離間間隔T4の2倍以上とすると、ピン穴15の内面をバスバー2aとバスバー2bの離間間隔T4以上の厚さの絶縁性樹脂9で覆うことができる。このように構成することにより、電気絶縁性をバスバー2aとバスバー2bの間の電気絶縁性より良くすることができる。また、ピン穴15の内側の絶縁性樹脂9の厚さをバスバー2aとバスバー2bの離間間隔T4と同じにすることで、過不足のない電気絶縁性とすることができると共に、絶縁性樹脂9の使用量を最適化することができ、接近防止ピン14の外経に対して必要最小限の穴径とすることができる。
【0065】
このように成形金型5内に接近防止手段を設けておくことで、図22,23に示すように、接近防止ピン14によって、各バスバー2a,2bの長さ方向の全長に亘って変形を規制してバスバー2a,2bの離間間隔T4が設定間隔に維持される。また、接近防止ピン14とピン穴15の隙間に絶縁性樹脂9が回り込み、各バスバー2a,2bのピン穴15間においても十分な電気絶縁性を確保することができる。なお、図21(b)の接近防止ピン14及びピン穴15に関し、図では、左側に2箇所、右側に1箇所、描かれているが、もちろん、左側から2番目の接近防止ピン14及びピン穴15と右側の接近防止ピン14及びピン穴15との間にも、接近防止ピン14及びピン穴15があり、図では省略されている。
【0066】
なお、第6の実施の形態においては、ピン穴15からバスバー2a,2bの周囲に絶縁性樹脂9が漏れて流れるため、第1の実施の形態と異なり、T3,T5が広くなる時間とT4が狭くなる時間が多少早くなることが考えられる。しかし、ピン穴15の面積がバスバー2a,2bの表面積に比べて十分小さいため、バスバー2a,2bの周囲に回り込む樹脂量は少なく、薄肉成形性への影響は小さい。
【0067】
このように、樹脂モールド体3に形成された穴13は、樹脂モールド体3を成形する際に各バスバー2a,2bの離間間隔T4を維持するための接近防止ピン14により形成されたものである。接近防止ピン14を成形金型5内に移動可能に挿入し、樹脂モールド体3の成形時に絶縁性樹脂9の硬化と共に接近防止ピン14を徐々に引き抜いて(コアバックして)いくことで完成品に穴13を残さないようにすることも可能である。このように構成することで、つまり、穴13からバスバー2a,2bが露出させないようにすることで、電気絶縁特性をさらに向上させることができる。
【0068】
このように、穴13からバスバー2a,2bが露出させないようにした場合でも、接近防止ピン14が挿入されていた部分に充填される絶縁性樹脂9とその周囲の絶縁性樹脂9は、温度、圧力等の成形条件が異なってしまうおそれがある。この場合、接近防止ピン14が挿入されていた部分の絶縁性樹脂9とその周囲の絶縁性樹脂9の界面の電気絶縁強度が絶縁性樹脂9の電気絶縁強度より低くなるおそれがある。しかし、前記したように、接近防止ピン14がバスバー2a,2bに当接する部分同士の間隔を絶縁性樹脂9の沿面絶縁距離以上となるように設計しておけば、前記絶縁性樹脂9の界面の電気絶縁強度が低いことによる影響を受けないようにすることができる。
【0069】
以上、第6の実施の形態に係るインサート成形方法によれば、例え、厚さに対して長さが長く撓みやすいバスバー2a,2bを用いたとしても、モールド成形時におけるバスバー2a,2bの変形を抑制し、バスバー2a,2bが設定間隔で離間された状態でモールド成形をすることができ、電気絶縁性や信頼性に優れたインサート成形品1を得ることができる。
【0070】
<第7の実施の形態:接近防止手段と押し込み棒の両方を設ける>
第7の実施の形態に係るインサート成形方法は、第5,6の実施の形態に係るインサート成形方法を組み合わせた方法である。この方法によっても、例え、外側からの樹脂圧力が不足したとしても、バスバー2a,2bの離間間隔T4を設定間隔まで狭くすることができる。また、例え、厚さに対して長さが長く撓みやすいバスバー2a,2bを用いたとしても、モールド成形時におけるバスバー2a,2bの変形を抑制し、バスバー2a,2bが設定間隔で離間された状態でモールド成形をすることができ、電気絶縁性や信頼性に優れたインサート成形品1を得ることができる。
【0071】
本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことが可能である。
【0072】
例えば、上述の実施の形態においては、インサートするバスバーを2枚用いる場合を説明したが、3枚以上のバスバーを使用する場合にも本発明は適用可能である。
【0073】
また、上述の実施の形態においては、インサート部材としてバスバーを用いたが、複数のインサート部材の離間間隔を狭く作製するものであれば、本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0074】
1 インサート成形品
2a,2b バスバー
3 樹脂モールド体
5 成形金型
6a,6b 保持溝
7 隙間維持用の突起
8 ゲート
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形金型内に複数のインサート部材を離間させて保持した後、前記成形金型内に樹脂を充填して、前記複数のインサート部材間及びその周囲を一括モールド成形し、前記複数のインサート部材を設定間隔で離間させた状態でインサート成形品を成形するインサート成形方法において、
前記複数のインサート部材の長さ方向の両端にそれぞれ臨んだ内壁面に、前記複数のインサート部材の離間間隔を前記設定間隔以上に維持する隙間維持用の突起をそれぞれ形成すると共に、前記複数のインサート部材の幅方向の側部に臨んだ内壁面に、樹脂を充填するためのゲートを形成し、前記成形金型内に前記複数のインサート部材を、前記突起を挟んで離間間隔が自在に変化するように且つ離間間隔が前記設定間隔より広くなるように中空保持し、中空保持した前記複数のインサート部材間の隙間に前記ゲートから樹脂を充填し、前記成形金型の内周縁部に樹脂を回り込ませ、回り込ませた樹脂の樹脂圧力で前記複数のインサート部材の両端を前記突起に押し付けてインサート成形品を成形することを特徴とするインサート成形方法。
【請求項2】
前記複数のインサート部材の長さ方向の両端にそれぞれ臨んだ内壁面に、前記複数のインサート部材を保持するための幅広の保持溝をそれぞれ形成し、その上で前記突起を前記保持溝の底部中央から延出するようにそれぞれ形成する請求項1に記載のインサート成形方法。
【請求項3】
前記成形金型内に、前記複数のインサート部材の長さ方向に沿って当接する支持部材を挿入しておき、前記成形金型の前記内周縁部に樹脂を回り込ませる際に、樹脂の回り込みを阻害しないように前記支持部材を前記複数のインサート部材から離間する請求項1又は2に記載のインサート成形方法。
【請求項4】
前記成形金型内に、前記各インサート部材の間隔が長さ方向の全長に亘って設定間隔未満となるのを防止する接近防止手段を設けておく請求項1又は2に記載のインサート成形方法。
【請求項5】
前記成形金型に、前記複数のインサート部材に当接する押し込み棒を挿入しておき、前記成形金型の前記内周縁部に樹脂を回り込ませる際に、前記複数のインサート部材の間隔を狭める樹脂圧力を補うように前記押し込み棒を押し込む請求項1又は2に記載のインサート成形方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のインサート成形方法で成形されたインサート成形品であって、前記複数のインサート部材間にウエルドラインがなく、前記複数のインサート部材の周囲にウエルドラインが形成されたことを特徴とするインサート成形品。
【請求項7】
前記複数のインサート部材の周囲に形成される外層の樹脂層よりも前記各インサート部材間に形成される内層の樹脂層の方が厚く形成される請求項6に記載のインサート成形品。
【請求項1】
成形金型内に複数のインサート部材を離間させて保持した後、前記成形金型内に樹脂を充填して、前記複数のインサート部材間及びその周囲を一括モールド成形し、前記複数のインサート部材を設定間隔で離間させた状態でインサート成形品を成形するインサート成形方法において、
前記複数のインサート部材の長さ方向の両端にそれぞれ臨んだ内壁面に、前記複数のインサート部材の離間間隔を前記設定間隔以上に維持する隙間維持用の突起をそれぞれ形成すると共に、前記複数のインサート部材の幅方向の側部に臨んだ内壁面に、樹脂を充填するためのゲートを形成し、前記成形金型内に前記複数のインサート部材を、前記突起を挟んで離間間隔が自在に変化するように且つ離間間隔が前記設定間隔より広くなるように中空保持し、中空保持した前記複数のインサート部材間の隙間に前記ゲートから樹脂を充填し、前記成形金型の内周縁部に樹脂を回り込ませ、回り込ませた樹脂の樹脂圧力で前記複数のインサート部材の両端を前記突起に押し付けてインサート成形品を成形することを特徴とするインサート成形方法。
【請求項2】
前記複数のインサート部材の長さ方向の両端にそれぞれ臨んだ内壁面に、前記複数のインサート部材を保持するための幅広の保持溝をそれぞれ形成し、その上で前記突起を前記保持溝の底部中央から延出するようにそれぞれ形成する請求項1に記載のインサート成形方法。
【請求項3】
前記成形金型内に、前記複数のインサート部材の長さ方向に沿って当接する支持部材を挿入しておき、前記成形金型の前記内周縁部に樹脂を回り込ませる際に、樹脂の回り込みを阻害しないように前記支持部材を前記複数のインサート部材から離間する請求項1又は2に記載のインサート成形方法。
【請求項4】
前記成形金型内に、前記各インサート部材の間隔が長さ方向の全長に亘って設定間隔未満となるのを防止する接近防止手段を設けておく請求項1又は2に記載のインサート成形方法。
【請求項5】
前記成形金型に、前記複数のインサート部材に当接する押し込み棒を挿入しておき、前記成形金型の前記内周縁部に樹脂を回り込ませる際に、前記複数のインサート部材の間隔を狭める樹脂圧力を補うように前記押し込み棒を押し込む請求項1又は2に記載のインサート成形方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のインサート成形方法で成形されたインサート成形品であって、前記複数のインサート部材間にウエルドラインがなく、前記複数のインサート部材の周囲にウエルドラインが形成されたことを特徴とするインサート成形品。
【請求項7】
前記複数のインサート部材の周囲に形成される外層の樹脂層よりも前記各インサート部材間に形成される内層の樹脂層の方が厚く形成される請求項6に記載のインサート成形品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
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【図14】
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【図20】
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【図22】
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【公開番号】特開2011−143711(P2011−143711A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−260778(P2010−260778)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】
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