説明

インサート成形装置及びインサート成形方法、ロータ、モータ、並びに時計

【課題】小型化かつ構成の簡素化を図るとともに、インサート部品の損傷や位置決めコアの磨耗を防止した上で、位置決め精度を向上させることができるインサート成形装置及びインサート成形方法を提供する。
また、軸心精度が高く、長期間に亘って安定した性能を発揮させることができる前記成形方法により製造されたロータ、ロータを備えたモータ、並びにモータを備えた時計を提供する。
【解決手段】スライドコア50は、磁石22の位置決め時において径方向中心に向けて押圧されるベースコア61と、ベースコア61よりも径方向内側に配置され、磁石22の外周面に当接可能な押さえコア63と、ベースコア61と押さえコア63とを連結し、ベースコア61と押さえコア63とを離間させる方向に向けて付勢する第1弾性部材62とを備えていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インサート成形装置及びインサート成形方法、前記成形方法により製造されたロータ、前記ロータを備えたモータ、並びに前記モータを備えた時計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、時計に搭載されるモータのロータとしては、円板状磁石と、この磁石が埋設された樹脂材料からなるロータかな本体とを備えている(例えば、特許文献1参照。)。ロータかな本体は、磁石の周囲を被覆するように形成された枠体部と、枠体部の軸方向両端面にそれぞれ形成され、磁石の中心軸上に延在する一対のほぞ部と、ほぞ部に形成されたかな部(ギヤ部)とを備えている。
【0003】
上述したロータは、インサート成形装置(以下、成形装置という)を用い、成形装置の金型のキャビティ内に磁石を位置決めし、この磁石を樹脂材料によりインサート成形することで製造される。キャビティ内での磁石の位置決め方法としては、第一に、キャビティの内周面と磁石の外周面との間に枠体部が形成されるクリアランスを設定し、このクリアランスに基づいて磁石を位置決めする方法がある。
また第二に、図10に示すように、キャビティ100の径方向に沿って往復移動可能なスライドコア101をキャビティ100の周方向に沿って複数備え、これらスライドコア101によってキャビティ100内に収容(インサート)された磁石102を位置決めする方法がある。具体的には、キャビティ100内に磁石102を収容した後、各スライドコア101をそれぞれエアシリンダ等の駆動手段によりキャビティ100の径方向中心に向けて駆動させる。そして、磁石102の外周面に各スライドコア101の先端面が当接することで、各スライドコア101の先端面によって磁石102が保持され、キャビティ100内に磁石102が位置決めされるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭62−277057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述したロータを製造するにあたって、磁石の中心軸とほぞ部の中心軸との軸心精度(通り精度)の更なる向上が求められている。磁石とほぞ部との軸心精度が悪いと、磁石の中心軸に対してほぞ部の中心軸が偏心し、回転時のバランスが崩れる。その結果、モータの性能が低下する虞がある。
【0006】
上述したインサート成形方法のうち、第一の方法では、キャビティと磁石との間のクリアランスの大小により、磁石の位置決め精度が決定される。そこで、クリアランスを可能な限り小さく設定すると、磁石の収容時においてキャビティ内への磁石の供給が困難になる。そして、磁石をキャビティ内に供給する際に、キャビティの開口縁と磁石の角部とが接触し、キャビティが磨耗したり、磁石の角部が損傷したりする虞がある。
一方、磁石の供給時に磁石とキャビティとが確実に接触しない程度にクリアランスを大きく設定すると、位置決め精度が低下し、磁石とほぞ部との軸心のバラツキが大きくなるという問題がある。
【0007】
また、第二の方法では、図10に示すように、スライドコア101を移動させるためにエアシリンダやその連結機構等の多数の部品が必要になり、その結果、成形装置の大型化に繋がるという問題がある。特に、時計用モータ等の微小部品を製造するにあたっては、成形される成形品に対して成形装置の構造が過大に複雑になるという問題がある。
また、スライドコア101の移動量(変位)の調整が難しく、これに伴いスライドコア101から磁石102に作用する押圧力の調整が難しい。磁石102に作用する押圧力が強すぎると磁石102が破損したり、スライドコア101の磨耗が激しくなったりするという問題もある。
【0008】
そこで本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであって、小型化かつ構成の簡素化を図るとともに、インサート部品の損傷や位置決めコアの磨耗を防止した上で、位置決め精度を向上させることができるインサート成形装置及びインサート成形方法を提供することを目的とする。
また、軸心精度が高く、長期間に亘って安定した性能を発揮させることができる前記成形方法により製造されたロータ、ロータを備えたモータ、並びにモータを備えた時計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明に係るインサート成形装置は、成形型のキャビティ内にインサート部品が収容された状態で、前記キャビティ内に樹脂材料が注入されることにより、前記インサート部品の周囲に樹脂成形部を前記インサート部品と一体的に成形するインサート成形装置において、前記キャビティの径方向に移動可能とされ、前記インサート部品を前記キャビティ内で保持する位置決めコアを備え、前記位置決めコアは、前記インサート部品の位置決め時において径方向中心に向けて押圧される第1のコアと、前記第1のコアよりも径方向内側に配置され、前記インサート部品の外周面に当接可能な第2のコアと、前記第1のコアと前記第2のコアとを連結し、前記第1のコアと前記第2のコアとを離間させる方向に向けて付勢する第1弾性部材とを備えていることを特徴としている。
【0010】
この構成によれば、インサート部品の位置決め時において、第1のコアが径方向中心に向けて押圧されることで、第1弾性部材を介して第2のコアも径方向中心に向かって移動する。そして、第2のコアの先端面がインサート部品の外周面に接触することで、インサート部品が径方向中心に向けて押圧され、インサート部品の中心軸とキャビティの中心軸とを一致させた状態で、インサート部品の位置決めを行うことができる。
特に、第2のコアの先端面がインサート部品の外周面に接触した後に、第1のコアが押圧されると、第1弾性部材が収縮することで、第2のコアの変位は第1のコアの変位に比べて小さくなる。よって、第2のコアの変位を、第1のコアの変位に比べて微細に調整することができる。また、第2のコアによりインサート部品を保持した状態で第1のコアが押圧されても、第1弾性部材が収縮するので、第2のコアからインサート部品に向けて過大な押圧力が作用することなく、インサート部品を押圧することができる。これにより、インサート部品の中心軸とキャビティの中心軸との軸心が一致するように、キャビティ内でインサート部品を位置決めするとともに、インサート部品を位置決めした状態で、インサート部品を所望の押圧力で保持することができる。その結果、インサート部品と樹脂成形部との軸心精度の高い成形品を提供することができる。
また、上述した従来の第1の方法に比べて、キャビティとインサート部品とのクリアランスの管理が容易になるとともに、第2の方法に比べて位置決めコアの変位、すなわち第2のコアからインサート部品に作用する押圧力の調整が容易になる。その結果、インサート部品の損傷や位置決めコアの磨耗を抑制することができるので、製造コストの低減及び製造効率の向上を図ることができる。
【0011】
また、前記成形型は、第1の型と、前記第1の型に対して軸方向に沿って相対移動可能とされた第2の型とで分割構成され、前記第1の型には、前記位置決めコアが設けられ、前記第2の型には、前記第1の型に向けて軸方向に突出する突出部を備え、前記第2の型と前記第1の型とを軸方向に沿って相対移動させた時に、前記突出部が前記第1のコアに当接して、前記第1のコアを径方向内側に移動させるようになっていることを特徴としている。
この構成によれば、第1の型と第2の型との型締め時において、第1の型と第2の型との相対移動に同期して位置決めコアが径方向中心に向かって移動することになるので、従来の第2の方法ように位置決めコアを別体のエアシリンダ等により駆動させる構成に比べて、装置の小型化及び構成の簡素化を図ることができる。
【0012】
また、前記位置決めコアは、前記キャビティの周方向に沿って複数配置されていることを特徴としている。
この構成によれば、各位置決めコアにおける第2のコアの先端面によって、インサート部品の外周面が複数の方向から押圧されることになるので、キャビティ内に磁石を安定して保持することができる。
特に、上述したようにこれら位置決めコアが第1の型と第2の型との相対移動に同期して移動する場合には、各位置決めコアの移動タイミングや移動量が各位置決めコア間で均等になる。すなわち、各位置決めコアがインサート部品を径方向中心に向かって押圧することで、位置決めコアの作用線(移動方向)の交点(キャビティの中心軸)にインサート部品の中心軸が配置されるように、インサート部品がスムーズに移動する。その結果、インサート部品の中心軸とキャビティの中心軸とが一致した状態で、インサート部品がキャビティ内に位置決めされることになる。これにより、インサート部品の中心軸と樹脂成形部の中心軸との軸心精度を向上させることができる。
【0013】
また、前記位置決めコアは、前記第2のコアを径方向外側に向けて付勢する第2弾性部材を備えていることを特徴としている。
この構成によれば、第2のコアは第2弾性部材によって径方向外側に向けて付勢されているため、第2のコアの移動開始に伴って第2弾性部材が収縮することで、これに起因して第2弾性部材から第2のコアに向けて弾性力が発生することになる。すなわち、第2のコアがインサート部品に接触する前段で、第2のコアには位置決めコアの移動方向に抗する方向に弾性力が発生する。これにより、第2弾性部材を採用しない場合に比べて、インサート部品に第2コアが当接する際の衝撃を緩和することができる。その結果、インサート部品を所望の押圧力で保持し、インサート部品の破損や位置決めコアの磨耗をより抑制することができる。
また、第2弾性部材が径方向外側に向けて付勢されているので、第1のコアに作用する押圧力を解除することで、第2のコアが径方向外側に移動して、インサート部品から離間することになる。そのため、別工程としての位置決めコアの解除動作が不要になるとともに、成形品の取り出しが容易になる。また、その後、次のインサート部品の成形工程時においてキャビティ内へのインサート部品の供給が容易になる。これにより、製造効率の向上を図ることができる。
【0014】
また、前記位置決めコアは、前記第1のコアを径方向外側に向けて付勢する第3弾性部材を備えていることを特徴としている。
この構成によれば、第1のコアに作用する径方向中心に向かう押圧力が第1弾性部材と第3弾性部材とに分散されるため、第3弾性部材を採用しない場合に比べて、第1弾性部材に発生する弾性力を減少させることができる。そのため、インサート部品に第2コアが当接する際の衝撃を緩和することができ、インサート部品の外周面に対して過大な押圧力が作用することがない。
また、第3弾性部材が径方向外側に向けて付勢されているので、第1のコアに作用する押圧力を解除することで、これに伴って第1のコアが径方向外側に移動して、インサート部品から離間することになる。そのため、別工程としての位置決めコアの解除動作が不要になるとともに、成形品の取り出しが容易になる。また、その後、次のインサート部品の成形工程時においてキャビティ内へのインサート部品の供給が容易になる。これにより、製造効率の向上を図ることができる。
【0015】
また、本発明に係るインサート成形方法は、成形型におけるキャビティの径方向に移動可能とされ、インサート部品を前記キャビティ内で保持する位置決めコアを備え、前記位置決めコアは、前記インサート部品の位置決め時において径方向中心に向けて押圧される第1のコアと、前記第1のコアよりも径方向内側に配置され、前記インサート部品の外周面に当接可能な第2のコアと、前記第1のコアと前記第2のコアとを連結し、前記第1のコアと前記第2のコアとを離間させる方向に向けて付勢する第1弾性部材とを備えたインサート成形装置を用い、前記キャビティ内に前記インサート部品を収容した状態で、前記キャビティ内に樹脂材料を注入することにより、前記インサート部品の周囲に樹脂成形部を前記インサート部品と一体的に成形するインサート成形方法であって、前記インサート部品を前記キャビティ内に収容する収容工程と、前記位置決めコアにより前記インサート部品を前記キャビティ内に位置決めする位置決め工程とを有し、前記位置決め工程では、前記第1のコアを径方向中心に向けて押圧することで、前記第1弾性部材を介して前記第2のコアを径方向内側に移動させ、前記第2のコアの先端面を前記インサート部品の外周面に当接させて、前記インサート部品を前記キャビティ内で保持することを特徴としている。
この構成によれば、位置決め工程において、第1のコアが径方向中心に向けて押圧されることで、第1弾性部材を介して第2のコアも径方向中心に向かって移動する。そして、第2のコアの先端面がインサート部品の外周面に接触することで、インサート部品が径方向中心に向けて押圧され、インサート部品の中心軸とキャビティの中心軸とを一致させた状態で、インサート部品の位置決めを行うことができる。
特に、第2のコアの先端面がインサート部品の外周面に接触した後に、第1のコアが押圧されると、第1弾性部材が収縮することで、第2のコアの変位は第1のコアの変位に比べて小さくなる。よって、第2のコアの変位を、第1のコアの変位に比べて微細に調整することができる。また、第2のコアによりインサート部品を保持した状態で第1のコアが押圧されても、第1弾性部材が収縮するので、第2のコアからインサート部品に向けて過大な押圧力が作用することなく、インサート部品を押圧することができる。これにより、インサート部品の中心軸とキャビティの中心軸との軸心が一致するように、キャビティ内でインサート部品を位置決めするとともに、インサート部品を位置決めした状態で、インサート部品を所望の押圧力で保持することができる。その結果、インサート部品と樹脂成形部との軸心精度の高い成形品を提供することができる。
また、上述した従来の第1の方法に比べて、キャビティとインサート部品とのクリアランスの管理が容易になるとともに、第2の方法に比べて位置決めコアの変位、すなわち第2のコアからインサート部品に作用する押圧力の調整が容易になる。その結果、インサート部品の損傷や位置決めコアの磨耗を抑制することができるので、製造コストの低減及び製造効率の向上を図ることができる。
【0016】
また、本発明に係るロータは、上記本発明のインサート成形方法を用いて製造されたロータであって、前記インサート部品は磁石であり、前記樹脂成形部は、前記磁石の周囲を取り囲むように形成された枠体部と、前記枠体部の軸方向両端面にそれぞれ形成され、前記磁石の中心軸上に延在する一対の軸部と、前記軸部に形成されたギヤ部とを備えていることを特徴としている。
この構成によれば、上記本発明のインサート成形方法により製造されているので、磁石と軸部との軸心精度に優れたロータを製造することができる。
【0017】
また、本発明に係るモータは、上記本発明のロータを有することを特徴としている。
この構成によれば、上記本発明のロータを有しているので、ロータの回転時におけるバランスが安定し、軸部に作用する負荷を低減することができる。これにより、軸部の磨耗や損傷を抑制することができる。したがって、長期間に亘って安定したモータ性能を発揮させることができる、高性能なモータを提供することができる。
【0018】
また、本発明に係る時計は、上記本発明のモータを有することを特徴としている。
この構成によれば、上記本発明のモータを有しているので、エネルギのロス及び機械的損傷を抑制した上で、長期間安定にかつ低電力で動作される、高性能な時計を提供することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るインサート成形装置及びその成形方法によれば、インサート部品の位置決め時において、第1のコアが径方向中心に向けて押圧されることで、第1弾性部材を介して第2のコアも径方向中心に向かって移動する。そして、第2のコアの先端面がインサート部品の外周面に接触することで、インサート部品が径方向中心に向けて押圧され、インサート部品の中心軸とキャビティの中心軸とを一致させた状態で、インサート部品の位置決めを行うことができる。
特に、第2のコアの先端面がインサート部品の外周面に接触した後に、第1のコアが押圧されると、第1弾性部材が収縮することで、第2のコアの変位は第1のコアの変位に比べて小さくなる。よって、第2のコアの変位を、第1のコアの変位に比べて微細に調整することができる。また、第2のコアによりインサート部品を保持した状態で第1のコアが押圧されても、第1弾性部材が収縮するので、第2のコアからインサート部品に向けて過大な押圧力が作用することなく、インサート部品を押圧することができる。これにより、インサート部品の中心軸とキャビティの中心軸との軸心が一致するように、キャビティ内でインサート部品を位置決めするとともに、インサート部品を位置決めした状態で、インサート部品を所望の押圧力で保持することができる。その結果、インサート部品と樹脂成形部との軸心精度の高い成形品を提供することができる。
また、上述した従来の第1の方法に比べて、キャビティとインサート部品とのクリアランスの管理が容易になるとともに、第2の方法に比べて位置決めコアの変位、すなわち第2のコアからインサート部品に作用する押圧力の調整が容易になる。その結果、インサート部品の損傷や位置決めコアの磨耗を抑制することができるので、製造コストの低減及び製造効率の向上を図ることができる。
本発明に係るロータによれば、上記本発明のインサート成形方法により製造されているので、磁石と軸部との軸心精度に優れたロータを提供することができる。
本発明に係るモータによれば、長期間に亘って安定したモータ性能を発揮させることができる高性能なモータを提供することができる。
本発明に係る時計によれば、エネルギのロス及び機械的損傷を抑制した上で、長期間安定にかつ低電力で動作される、高性能な時計を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】時計の概略構成図(平面図)である。
【図2】ロータの斜視図である。
【図3】上型と下型との型締め前の状態を示す成形装置の斜視図である。
【図4】上型と下型との型締め後の状態を示す成形装置の斜視図である。
【図5】図3のA−A線に沿う断面図である。
【図6】下型の平面図である。
【図7】図5に相当する成形装置の断面図であり、上型と下型との型締め時を示している。
【図8】図5に相当する成形装置の断面図であり、上型と下型との型締め完了時を示している。
【図9】型締め完了時における下型の平面図である。
【図10】従来の成形装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(時計)
図1は、時計の概略構成図(平面図)である。
図1に示すように、時計1は、平面視円形状の支持体である地板体10に、モータ11や、輪列12、外部操作部材13、図示しない水晶振動子、回路ブロック等の多数の構成部品が組み付けられて構成されている。
【0022】
(ロータ)
図2は、ロータの斜視図である。
図1,2に示すように、モータ11は、地板体10に設けられた図示しない円筒状のステータと、ステータの内側に配置され、ステータに対して回転可能に支持されたロータ21を備えている。図2に示すように、ロータ21は磁石22と、ロータ本体としてのロータかな本体(樹脂成形部)23とを有している。磁石22は、円板形状のものであり、その径方向に沿って磁化されている。
【0023】
ロータかな本体23は、磁石22を樹脂材料によりインサート成形することで一体形成されたものであり、枠体部31と、一対のほぞ部(軸部)33,34と、かな部(ギヤ部)32とを有している。
枠体部31は、磁石22の周囲を取り囲むように形成された円柱状の部材であり、その周方向に沿って等間隔に複数の切欠き部35が形成されている。これら切欠き部35は、枠体部31の外周縁から径方向中央部に向かって円弧状に形成されたものであって、切欠き部35からは磁石22の外周縁が露出している。
【0024】
ほぞ部33,34は、枠体部31の表裏面から磁石22の中心軸C1上にそれぞれ延出している。各ほぞ部33,34のうち、一方のほぞ部33の端部は地板体10に回転可能に支持され、他方のほぞ部34の端部は、輪列受に回転可能に支持されることで、ロータ21が回転可能に支持されている。
かな部32は、他方のほぞ部34の基端側に一体形成され、ほぞ部34の全周に亘って径方向外側に張り出すように形成されている。なお、かな部32の外周面には、ギヤ歯が形成されている。
【0025】
かな部32は輪列受に回転可能に支持された輪列12(図1参照)に噛合され、ロータ21の回転力を輪列12に伝達し得るように構成されている。そして、ロータ21の回転力により輪列12が回転することで、時計1の時刻表示針(不図示)が運針するようになっている。
【0026】
(インサート成形装置)
ここで、上述したロータ21を製造するためのインサート成形装置(以下、成形装置という)について説明する。図3は、上型と下型との型締め前の状態を示す成形装置の斜視図であり、図4は型締め後の状態を示す成形装置の斜視図である。また、図5は図3のA−A線に沿う断面図である。
図3〜5に示すように、成形装置41は、円板状の下型(第1の型)42と、下型42の中心軸C2と同軸上に配置され、軸方向に沿って往復移動可能とされた上型(第2の型)43と、下型42に設けられ、インサート部材である磁石22を保持する位置決め機構(位置決めコア)44とを備えている。
【0027】
下型42は、円板状のものであり、下部に形成された基部45と、上部に形成され、外周縁が切り欠かれることで基部45に比べて外径が縮小した縮径部46(図3参照)とを有している。すなわち、縮径部46の径方向外側には、段差部47(図3参照)が形成されている。
下型42は、その径方向中央部に磁石22が収容される下型キャビティ48を備えている。下型キャビティ48は、下型42が軸方向下方に向けて刳り貫かれて形成された平面視円形状のものである。下型キャビティ48は、成形時において磁石22の周囲に樹脂材料が射出されることで、磁石22の周囲にロータかな本体23の軸方向下半部(例えば、ほぞ部34側)を成形しうるようになっている。なお、図3〜5では、説明を分かり易くするため、下型キャビティ48及び後述する上型キャビティ84の型形状を簡素化して図示する。
【0028】
位置決め機構44は、下型キャビティ48の周方向に沿って等間隔に形成された複数(例えば、3つ)のガイド溝49と、これらガイド溝49内にそれぞれ収容され、ガイド溝49内を径方向に沿ってスライド可能に構成された複数のスライドコア50(図3参照)と、後述する弾性部材62,66,74とを有している。すなわち、各スライドコア50の作用線(スライド方向)の交点は、下型42の中心軸C2上に配置される。そして、スライドコア50によって、下型キャビティ48内に収容された磁石22の外周面を周方向3ヶ所から押さえて、各スライドコア50間に磁石22を保持するように構成されている。なお、各ガイド溝49及びスライドコア50は、それぞれ同様の構成のため、以下の説明では、1つのガイド溝49及びスライドコア50について説明する。
【0029】
図6は、下型の平面図である。
図3〜6に示すように、ガイド溝49は、下型42の外周縁から下型キャビティ48に連通するように形成されており、外周側から内周側に向かうにつれ段々と下型42の軸方向の長さ(高さ)が拡大するように形成されている。すなわち、ガイド溝49の下面には、外周側から内周側に向かうにつれ下段部52、中段部53、及び上段部54が順に形成されている。
また、下段部52の内周側、中段部53及び上段部54は、縮径部46の上面から軸方向に沿って切り込まれて形成されたものであり、下段部52の外周側は、基部45の上面から軸方向に切り込まれたものである。すなわち、下段部52の外周側において、下段部52を取り囲む側壁の軸方向の長さは、下段部52の内周側、中段部53及び上段部54の側壁の軸方向の長さに比べて低く形成されている。また、下段部52の外周側の端部は、基部45の外周面に開放しておらず、基部45と同等の高さで残存している。この残存した部分は、スライドコア50の径方向外側への移動を規制するストッパ60として構成されている。
【0030】
図3,4に示すように、スライドコア50は、径方向に沿って分割構成されており、下型42の外周側に配置されたベースコア(第1のコア)61と、下型42の内周側に配置され、ベースコア61の先端に第1弾性部材62を介して連結された押さえコア(第2のコア)63とで構成されている。
ベースコア61は、L字状に屈曲形成されたものであり、軸方向に沿って延在する足部64と、足部64の先端から径方向内側に向かって延在する腕部65とが一体的に形成されている。足部64は、角柱形状に形成され、その基端側が下段部52の外周側のガイド溝49内に収容され、ガイド溝49内において下段部52上を径方向にスライド可能に保持されている。また、足部64の径方向内側の端面と、中段部53の径方向外側の端面との間には、第3弾性部材66が連結されており、ベースコア61を径方向外側に向けて付勢している。なお、第2弾性部材74については、後述する。
【0031】
腕部65は、足部64の先端から足部64に対して略90度に屈曲形成された角柱形状のものであり、下段部52の内周側のガイド溝49内に収容されている。また、ベースコア61の径方向外側の端面において、足部64と腕部65との間に形成される角部は、軸方向に交差する方向に沿って切除されてなる傾斜面67が形成されている。
【0032】
押さえコア63は、ベースコア61と同様にL字状の部材であり、軸方向に沿って延在する足部72と、足部72の先端から径方向内側に向かって延在する腕部73とが一体的に形成されている。足部72は、角柱形状に形成され、その基端側が中段部53のガイド溝49内に収容され、ガイド溝49内において中段部53上を径方向にスライド可能に保持されている。また、足部72の径方向内側の端面と、下段部52の径方向外側の端面との間には、第2弾性部材74が連結されており、押さえコア63を径方向外側に向けて付勢している。
【0033】
腕部73は、足部72の先端から足部72に対して略90度に屈曲形成された角柱形状のものであり、中段部53及び上段部54のガイド溝49内に収容されている。また、腕部73は、その先端側が下型キャビティ48内を望むような位置まで延出しており、先端面には平面視で弧状に切り欠かれた凹部75が形成されている。この凹部75は、下型キャビティ48内に収容される磁石22の外周面に接触可能に構成されており、曲率半径が磁石22の外周面の曲率半径と同等または大きく形成されている。なお、スライドコア50の初期位置(上型43と下型42との型締め前)において、スライドコア50は各弾性部材62,66、74によって径方向外側に付勢されている。この場合、ベースコア61の足部64がストッパ60に当接することで、スライドコア50の径方向外側への移動が規制される一方、押さえコア63の凹部75と下型キャビティ48内に収容される磁石22の外周面との間には、所定のクリアランスが設定されるようになっている。
【0034】
ここで、ベースコア61と押さえコア63とは、上述した第1弾性部材62によって連結されている。第1弾性部材62は、ベースコア61の腕部65の先端面と、押さえコア63の足部72における径方向外側の端面との間に介在しており、ベースコア61及び押さえコア63とが互い離間する方向に向けて付勢している。なお、第1弾性部材62、第2弾性部材74及び第3弾性部材66のバネ定数を、それぞれk1,k2,k3とすると、これらバネ定数k1〜k3はそれぞれ任意に設定することが可能であるが、第2弾性部材74のバネ定数を第1弾性部材62のバネ定数よりも大きく設定する方が好ましい(k2>k1)。
【0035】
上型43は、外径が下型42と同径に形成された円板状の部材であり、エアシリンダ等の図示しない駆動手段によって軸方向に沿って往復移動可能に構成されている。上型43は、その中心軸C2が下型42の中心軸C2と同軸上に配置され、下面側には、周壁(突出部)82に囲まれた凹部83が形成されている。凹部83は、軸方向の長さ(深さ)が上述した下型42の縮径部46の軸方向の長さと同等に形成されるとともに、内径が縮径部46よりも僅かながら大きく形成されている。すなわち、下型42と上型43との型締め時において、上型43の凹部83と下型42の縮径部46とはインロー嵌合するように構成されている。
また、凹部83の径方向中央部には、凹部83の底部が軸方向上方に向けて刳り貫かれた上型キャビティ84が形成されている。上型キャビティ84は、上述したロータかな本体23における軸方向上半部と同等の形状をなしており、成形時において磁石22の周囲に樹脂材料が射出されることで、磁石22の周囲にロータかな本体23の軸方向上半部を成形しうるようになっている。すなわち、上型43と下型42とが型締めされることで、上型キャビティ84と下型キャビティ48とで形成される空間内に磁石22がインサートされるとともに、磁石22の周囲にロータかな本体23が成形されるようになっている。
【0036】
周壁82は、軸方向下方に向けて突出しており、その内周縁には、軸方向に交差する方向に周壁82が切除された傾斜面85が形成されている。この傾斜面85は、周壁82の内周縁の全周に亘って形成されるとともに、軸方向上方に向かうにつれ周壁82の厚さが漸次厚くなるように形成されている。すなわち、周壁82で囲まれた凹部83の内径は、開口側から底部に向かうにつれ漸次縮小するように形成されている。なお、傾斜面85は、軸方向に対する角度が、ベースコア61に形成された傾斜面67の軸方向に対する角度と同等に形成されており、上型43と下型42とを型締めする際にこれら傾斜面67,85同士が摺動するように構成されている。
【0037】
(インサート成形方法)
次に、上述した成形装置を用いてロータを製造する際のインサート成形方法について説明する。
図3,5,6に示すように、まず、下型42の中心軸C2と、磁石22の中心軸C1とが、少なくとも平行になるように下型キャビティ48内に磁石22を収容する(収容工程)。なお、この状態でスライドコア50は各弾性部材62,66,74により径方向外側に向けて付勢されており、初期位置の状態に保持されている。
【0038】
図7は、図5に相当する成形装置の断面図であり、上型と下型との型締め時を示している。
次に、下型42と上型43とを所定の型締め力によって型締めするとともに、磁石22を下型キャビティ48内に位置決めする(位置決め工程)。具体的には、図7に示すように、駆動手段を作動させ、下型42の軸方向に沿って上型43を下降させると、まず上型43の周壁82に形成された傾斜面85と、各ベースコア61に形成された傾斜面67とが接触する。傾斜面67,85同士が接触すると、上型43の傾斜面85が各ベースコア61の傾斜面67上に摺接しながら上型43が下降する。
【0039】
この時、ベースコア61には、上型43から軸方向に沿って型締め力が作用する。すると、この型締め力の分力が、各ベースコア61の傾斜面67を介して径方向中心に向けて作用する押圧力Fとして各スライドコア50に伝達される。この押圧力Fにより、各ベースコア61は径方向中心に向けて押圧され、各ベースコア61は、各ガイド溝49内を径方向中心に向けて一斉にスライドし始める。これにより、押さえコア63の凹部75と磁石22の外周面との間のクリアランスが除々に縮小されていく。
ベースコア61が径方向中心に向かってスライドすると、これに追従して第2,3弾性部材66、74が収縮し、第2,3弾性部材66、74には弾性力F2,F3が発生する。また、第2弾性部材74から押さえコア63に向けて弾性力F2が作用することで、第1弾性部材62が収縮する。これにより、第1弾性部材62にも弾性力F1が発生することになる。
【0040】
そして、上型43がさらに下降していくことで、上型43の傾斜面85がベースコア61の傾斜面67上を摺動し、これに追従して各スライドコア50がさらに径方向中心に向けてスライドしていく。その結果、各押さえコア63の凹部75が磁石22の外周面に同時に接触し、磁石22を径方向中心に向けて押圧する。
【0041】
図8は、図5に相当する成形装置の断面図であり、上型と下型との型締め完了時を示している。また、図9は、型締め完了時における下型の平面図である。
ここで、図7〜9に示すように、ベースコア61の凹部75が磁石22の外周面に接触した後に、ベースコア61が上型43に押圧されると、第1,3弾性部材62,66がさらに収縮する。この時、押さえコア63の変位L2は、ベースコア61の変位L1に比べて小さくなる。具体的には、ベースコア61の変位をL1、押さえコア63の変位をL2とすると、第1弾性部材62に発生する弾性力F1は、F1=k1(L1−L2)…(式1)となる。また、第2弾性部材74に発生する弾性力F2は、F2=k2L2…(式2)となる。ベースコア61の凹部75が磁石22の外周面に接触している時、F1=F2となるので、k2L2=k1(L1−L2)…(式3)となり、(式3)より第2弾性部材74の変位L2は、L2=(k1L1)/(k1+k2)…(式4)となる。
この場合、k1>0及びk2>0であるため、第2弾性部材74の変位L2は第1弾性部材62の変位L1より必ず小さくなる(L1>L2)。
【0042】
これにより、磁石22は押さえコア63に押圧された状態で、その中心軸C1が下型42の中心軸C2に一致する位置まで下型キャビティ48内を除々に移動する。その結果、磁石22が下型キャビティ48内の中心で位置決めされる。なお、磁石22が位置決めされた後に上型43がさらに下降することで、ベースコア61は径方向中心に向けて移動するが、第1,3弾性部材62,66が収縮するので、磁石22には過大な押圧力が作用しない。
【0043】
その後、図8,9に示すように、上型43の傾斜面85の軸方向上側の境界部分90が、ベースコア61の傾斜面67の下側の境界部分91を乗り越えることで、上型43の凹部83内に下型42の縮径部46が収容され、上型43から下型42に作用する径方向中心に向かう押圧力Fが一定になる。この時、下型42の縮径部46と上型43の凹部83とがインロー嵌合しているため、ベースコア61の径方向外側の端面が上型43の周壁82の内周面に接触することになる。そのため、ベースコア61の径方向外側への移動は規制される。そして、下型42の段差部47上に上型43の周壁82の端面が突き当たることで、上型43の移動が停止する。このように、本実施形態では、下型42と上型43とが突き当たった時点で押さえコア63から磁石22に所望の押圧力が付与され、位置決めが完了するように設定されている。そのため、毎回の位置決め時に各磁石22を同位置で、かつ同等の押圧力によって位置決めすることができる。
以上により、上型43と下型42との型締めが完了する。
【0044】
型締めをした後、溶融した樹脂材料をキャビティ48,84内に充填し、成形装置41を冷却することで、樹脂材料を射出成形する。なお、この射出成形は、公知の方法により行うことが可能である。
【0045】
続いて、樹脂材料が硬化した後、上型43と下型42とを型開きする。具体的には、駆動手段を駆動させ、軸方向に沿って上型43を上昇させる。そして、上型43における傾斜面85の境界部分90がベースコア61の傾斜面67の境界部分91を乗り越えると、各弾性部材62,66,74の復元力によりスライドコア50がガイド溝49内を径方向外側に向かって除々にスライドする。この場合、上型43を一定速度で上昇させることで、傾斜面67,85同士が一定速度で摺動することになる。そのため、各スライドコア50が、何れも同等の速度で成形品(ロータ21)から離間していく。これにより、型開き時において、スライドコア50と成形品との接触により、スライドコア50の磨耗や成形品の損傷に繋がることを防止することができる。
以上により、成形装置40によりロータ21が完成する。
【0046】
このように、本実施形態では、ベースコア61と押さえコア63とが第1弾性部材62を介して連結されている構成とした。
この構成によれば、磁石22の位置決め時において、ベースコア61が径方向中心に向けて押圧されることで、スライドコア50が径方向中心に向かって移動する。そして、押さえコア63の凹部75が磁石22の外周面に接触することで、磁石22が径方向中心に向けて押圧され、磁石22の中心軸C1と下型キャビティ48の中心軸C2とを一致させた状態で、磁石22の位置決めを行うことができる。
特に、上述したようにベースコア61と押さえコア63とが第1弾性部材62を介して連結されているため、押さえコア63の変位L2が、ベースコア61の変位L1に比べて小さくなる。そのため、押さえコア63の変位L2を、ベースコア61の変位L1に比べて微細に調整することができる。また、押さえコア63により磁石22を保持した状態でベースコア61が押圧されても、第1弾性部材62が収縮するので、押さえコア63から磁石22に向けて過大な押圧力が作用することなく、磁石22を押圧することができる。これにより、磁石22の中心軸C1と下型キャビティ48の中心軸C2との軸心が一致するように、下型キャビティ48内で磁石22を位置決めした状態で、キャビティ48,84内で磁石22を所望の押圧力で保持することができる。その結果、成形品であるロータ21において、磁石22の中心軸C1とロータかな本体23のほぞ部33,34との軸心精度を向上させることができる。
また、上述した従来の第1の方法に比べて、下型キャビティ48と磁石22とのクリアランスの管理が容易になるとともに、第2の方法に比べてスライドコア50の変位、すなわち押さえコア63による押圧力の調整が容易になる。よって、磁石22の損傷やスライドコア50の磨耗を抑制することができるので、製造コストの低減及び製造効率の向上を図ることができる。
【0047】
また、押さえコア63と上段部54との間に第2弾性部材74が介在しているため、押さえコア63の移動開始に伴って第2弾性部材74が収縮することで、これに起因してベースコア61から作用する押圧力Fに抗する方向に弾性力F2を押さえコア63に作用させることができる。すなわち、押さえコア63が磁石22に接触する前段で、押さえコア63には押圧力Fに抗する方向に弾性力F2が作用する。
しかも、ベースコア61と中段部53との間には、第3弾性部材66が介在しているため、ベースコア61に作用する押圧力Fが第1弾性部材62と第3弾性部材66とに分散され、第1弾性部材62に発生する第1弾性力F1を減少させることができる。
そのため、第2,3弾性部材74,66を採用しない場合に比べて、スライドコア50による磁石22の押圧力を低減することができ、磁石22に押さえコア63が当接する際の衝撃を緩和することができる。その結果、磁石22の破損やスライドコア50の磨耗をより抑制した上で、磁石22を所望の押圧力で保持することができる。
【0048】
また、本実施形態では、上型43と下型42との型締め時において、上型43から軸方向に沿って作用する型締め力を、ベースコア61の傾斜面67を介して径方向中心に向けて作用させることができる。すなわち、上型43の移動に同期してスライドコア50がガイド溝49内をスライドするので、従来のようにスライドコア101を下型42の径方向に設けた別体のエアシリンダ等により駆動させる構成に比べて、装置の小型化及び構成の簡素化を図ることができる。
【0049】
しかも、本実施形態の位置決め機構44は、下型キャビティ48の周方向に沿って等間隔に複数のスライドコア50が設けられているため、これらの各押さえコア63の凹部75によって磁石22の外周面が複数の方向から押圧されることになる。これにより、下型キャビティ48内に磁石22を安定して保持することができる。特に、これらスライドコア50が上型43の移動に同期してガイド溝49内をスライドするので、各スライドコア50の移動タイミングや移動量が各スライドコア50間で均等になる。すなわち、各スライドコア50が磁石22の外周面に同時に接触した後、各スライドコア50の移動によって磁石22の中心軸C1が、下型42の中心軸C2に一致するように磁石22がスムーズに移動する。これにより、磁石22の中心軸C1と下型42の中心軸C2との軸心精度をより向上させた上で、下型キャビティ48内に磁石22を所望の位置で位置決めすることができる。
【0050】
さらに、第2,3弾性部材66,74が径方向外側に向けて付勢されているので、型開きに伴って各スライドコア50が同時に径方向外側にスライドして、磁石22から離間することになる。そのため、別工程としてのスライドコア50の解除動作が不要になるとともに、成形品の取り出しが容易になる。また、その後、次の成形工程時において下型キャビティ48内への磁石22の供給が容易になる。
その結果、製造効率の向上を図ることができる。
【0051】
このように、本実施形態では、上述したように成形装置41(各キャビティ48,84)に対する磁石22の位置決め精度を向上させることができるので、磁石22とほぞ部33,34との軸心精度が高いロータ21を製造することができる。
そして、本実施形態のモータ11は、軸心精度の高いロータ21を備えているので、ロータ21の回転時におけるバランスが安定し、ほぞ部33,34に作用する負荷を低減することができる。これにより、ほぞ部33,34の磨耗や損傷を抑制することができる。したがって、長期間に亘って安定したモータ性能を発揮させることができる高性能なモータ11を提供することができる。
また、このモータ11が搭載された時計1にあっても、エネルギのロス及び機械的損傷を抑制した上で、時計1が長期間安定にかつ低電力で動作される、高性能な時計1を提供することができる。
【0052】
なお、本発明の技術範囲は上述した実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、実施形態で挙げた具体的な構造や形状などはほんの一例に過ぎず、適宜変更が可能である。
上述した実施形態では、各スライドコア50が全てガイド溝49内をスライド可能に構成された場合について説明したが、これに限らず、少なくとも1つを本実施形態のような可動式の位置決めコアとして構成し、他の位置決めコアを固定式にしても構わない。
スライドコア50の個数やレイアウト等は、適宜設計変更可能である。
さらに、上述した実施形態では、ベースコア61及び周壁82の双方に傾斜面67,85を形成する構成について説明したが、どちらか一方のみに傾斜面を形成し、他方は角部に形成しても構わない。すなわち、上型43の移動に同期してベースコア61を径方向中心に向けて押圧する構成であれば、適宜設計変更が可能である。
また、型締め時において、上型43を固定し、下型42を上型43に対して移動させたり、下型42及び上型43をともに移動させたりする構成にしても構わない。
【0053】
また、弾性部材62,66,74としてはコイルバネに限らず、板バネやゴム等を用いても構わない。
さらに、弾性部材62,66,74をスライドコア50と一体化しても構わない。
上型43の傾斜面85と、ベースコア61の傾斜面67とをそれぞれテーパ形状に構成しても構わない。すなわち、上型43の傾斜面85を周壁82の内周縁から底部に至るまで直線状に傾斜させるとともに、ベースコア61の傾斜面67を足部64の上面から下面に至るまで直線状に傾斜させても構わない。
【0054】
上述した実施形態では、本発明をロータ21の製造に適用した場合について説明したが、これに限らず、種々の成形品を製造する場合に適用することができる。すなわち、時計用のロータ21等、微小部品の製造に限られず、比較的大型の部品等の製造においても本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0055】
1…時計 21…ロータ 22…磁石(インサート部品) 23…ロータかな本体(樹脂成形部) 41…成形装置(インサート成形装置) 42…下型(第1の型) 43…上型(第1の型) 44…位置決め機構 50…スライドコア(位置決めコア) 48…下型キャビティ 61…ベースコア(第1のコア) 62…第1弾性部材 63…押さえコア(第1のコア) 66…第3弾性部材 67,85…傾斜面 74…第2弾性部材 82…周壁(突出部) 84…上型キャビティ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形型のキャビティ内にインサート部品が収容された状態で、前記キャビティ内に樹脂材料が注入されることにより、前記インサート部品の周囲に樹脂成形部を前記インサート部品と一体的に成形するインサート成形装置において、
前記キャビティの径方向に移動可能とされ、前記インサート部品を前記キャビティ内で保持する位置決めコアを備え、
前記位置決めコアは、前記インサート部品の位置決め時において径方向中心に向けて押圧される第1のコアと、
前記第1のコアよりも径方向内側に配置され、前記インサート部品の外周面に当接可能な第2のコアと、
前記第1のコアと前記第2のコアとを連結し、前記第1のコアと前記第2のコアとを離間させる方向に向けて付勢する第1弾性部材とを備えていることを特徴とするインサート成形装置。
【請求項2】
前記成形型は、第1の型と、前記第1の型に対して軸方向に沿って相対移動可能とされた第2の型とで分割構成され、
前記第1の型には、前記位置決めコアが設けられ、
前記第2の型には、前記第1の型に向けて軸方向に突出する突出部を備え、
前記第2の型と前記第1の型とを軸方向に沿って相対移動させた時に、前記突出部が前記第1のコアに当接して、前記第1のコアを径方向内側に移動させるようになっていることを特徴とする請求項1記載のインサート成形装置。
【請求項3】
前記位置決めコアは、前記キャビティの周方向に沿って複数配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載のインサート成形装置。
【請求項4】
前記位置決めコアは、前記第2のコアを径方向外側に向けて付勢する第2弾性部材を備えていることを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載のインサート成形装置。
【請求項5】
前記位置決めコアは、前記第1のコアを径方向外側に向けて付勢する第3弾性部材を備えていることを特徴とする請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載のインサート成形装置。
【請求項6】
成形型におけるキャビティの径方向に移動可能とされ、インサート部品を前記キャビティ内で保持する位置決めコアを備え、
前記位置決めコアは、前記インサート部品の位置決め時において径方向中心に向けて押圧される第1のコアと、
前記第1のコアよりも径方向内側に配置され、前記インサート部品の外周面に当接可能な第2のコアと、
前記第1のコアと前記第2のコアとを連結し、前記第1のコアと前記第2のコアとを離間させる方向に向けて付勢する第1弾性部材とを備えたインサート成形装置を用い、
前記キャビティ内に前記インサート部品を収容した状態で、前記キャビティ内に樹脂材料を注入することにより、前記インサート部品の周囲に樹脂成形部を前記インサート部品と一体的に成形するインサート成形方法であって、
前記インサート部品を前記キャビティ内に収容する収容工程と、
前記位置決めコアにより前記インサート部品を前記キャビティ内に位置決めする位置決め工程とを有し、
前記位置決め工程では、前記第1のコアを径方向中心に向けて押圧することで、前記第1弾性部材を介して前記第2のコアを径方向内側に移動させ、前記第2のコアの先端面を前記インサート部品の外周面に当接させて、前記インサート部品を前記キャビティ内で保持することを特徴とするインサート成形方法。
【請求項7】
請求項6記載のインサート成形方法を用いて製造されたロータであって、
前記インサート部品は磁石であり、
前記樹脂成形部は、前記磁石の周囲を取り囲むように形成された枠体部と、
前記枠体部の軸方向両端面にそれぞれ形成され、前記磁石の中心軸上に延在する一対の軸部と、
前記軸部に形成されたギヤ部とを備えていることを特徴とするロータ。
【請求項8】
請求項7記載のロータを有することを特徴とするモータ。
【請求項9】
請求項8記載のモータを有することを特徴とする時計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−5738(P2011−5738A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−151450(P2009−151450)
【出願日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(305018823)盛岡セイコー工業株式会社 (51)
【Fターム(参考)】