説明

インストルメントパネルの開口部構造

【課題】開口部の下縁のスペースを無駄にすることなく、高い剛性が得られるインストルメントパネルの開口部構造を提供すること。
【解決手段】車両のフロントシートの前方に配設されたインストルメントパネル1に、グラブボックス3用の開口部2を形成したインストルメントパネル1の開口部構造であって、前記開口部2の下縁4に、前記開口部のカバー31を開閉自在に枢支すべく当該開口部2の下縁4の両端付近に夫々設けられたヒンジ部41と、当該夫々のヒンジ部41の間に前記開口部2の下縁4の長手方向に沿って設けられ車室方向に開口して発煙筒5を受け入れる溝状の凹部42とを備えているインストルメントパネルの開口部構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のフロントシートの前方に配設されるインストルメントパネルに形成された開口部の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のフロントシートの前方に配設されるインストルメントパネルにはグラブボックス、計器ユニット、オーディオユニット、空調ユニット等の多数の内装部品が配設されている。これらの内装部品をインストルメントパネルに配設する際には、インストルメントパネルに開口部を形成し、当該開口部に各内装部品を取り付けるのが一般的である。
【0003】
上記の開口部のうち、特にグラブボックス用の開口部は、グラブボックスの容量を大きくする必要があり、大きな開口部を形成する必要がある。インストルメントパネルにこのような大きな開口部を形成すると、当該開口部の剛性が低下することにより、インストルメントパネルやグラブボックスの取り付け精度が低下する恐れがある。したがって、当該開口部の剛性を維持するための補強構造が必要になる。
【0004】
従来、この種の補強構造として、例えば、以下に示すものが知られている。
即ち、フロントシートの前方に配設されたインストルメントパネルにグラブボックス等の内装部品を取り付けるための開口部を形成し、当該開口部の下縁を、車両前方に開口する断面略コの字状の桟部と当該桟部の開口縁にインテグラルヒンジを介して形成した蓋部とから構成し、当該蓋部を前記桟部に固定し、桟部と蓋部とで閉断面を形成し得る構成にしてある。(例えば、特許文献1)
本構成によって、開口部の下縁が閉断面構造を有する桟部により構成されるので、当該下縁の剛性を高めることができた。
【0005】
【特許文献1】特開2001−130287号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の補強構造では、開口部の補強のためには、前記桟部を設けるためのスペースが必要となる。前記スペースを補強以外の目的にも使用しようとしても、グラブボックスの下端が位置するため使用性が悪く有効に利用できないという問題があった。
【0007】
本発明は、かかる問題点に着目してなされたものであり、その目的は、開口部下縁のスペースを無駄にすることなく、高い剛性が得られるインストルメントパネルの開口部構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の特徴構成は、車両のフロントシートの前方に配設されたインストルメントパネルに、グラブボックス用の開口部を形成したインストルメントパネルの開口部構造であって、前記開口部の下縁に、前記開口部のカバーを開閉自在に枢支すべく当該開口部の下縁の両端付近に夫々設けられたヒンジ部と、当該夫々のヒンジ部の間に前記開口部の下縁の長手方向に沿って設けられ車室方向に開口して発煙筒を受け入れる溝状の凹部とを備えている点にある。
【0009】
従来、前記ヒンジ部の間のスペースはグラブボックスの下端が位置するため使用性が悪く、有効に利用することができなかった。しかし、本特徴構成のごとく、係る位置に使用頻度の低い発煙筒を受け入れる溝状の凹部を備えることによって、従来使用できなかったスペースを有効に活用することができる。
【0010】
また、本特徴構成のごとく、夫々のヒンジの間に凹部を有することで、当該凹部がヒンジ間の補強構造となるので、ヒンジ間の剛性を高めることができ、ひいては、開口部全体の剛性を高めることができる。その結果、インストルメントパネルの剛性を十分に維持しつつ大きな開口部を設けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(インストルメントパネルの概要)
図1に自動車の前方に配置されるインストルメントパネル1の一部を示す。このインストルメントパネル1は、例えば樹脂等を用いて、射出成形等によって形成される。インストルメントパネル1の運転席側には計器取り付け開口(不図示)が形成されている。また、インストルメントパネル1中央付近にはオーディオユニット取り付け開口(不図示)が形成されている。
【0012】
図1に示すように、インストルメントパネル1の助手席側には略長方形のグラブボックス用の開口部2が設けられている。当該開口部2にはグラブボックス3が車両の前後方向に揺動自在に枢支される。また、前記開口部2の下縁4には、当該下縁4の長手方向に沿って凹部42が設けられ、当該凹部42には、発煙筒5が受け入れられる。
(グラブボックス用の開口構造)
【0013】
図1及び図2に示すように、グラブボックス3用の開口部2は、その上縁中央付近に後述のロック機構7と係脱自在なストライカ6を設けてある。
開口部2の下縁4は、例えば車両前方に開口する、断面略U字若しくはコの字形状等の桟部で構成され、当該桟部は車幅方向の両端と一体的に接続形成される。
【0014】
図1及び図3に示すように、前記桟部4の両端付近には夫々ヒンジ部41が、例えば一体成形によって設けてある。ヒンジ部41は前記桟部4の上面4aと側面4bとに連続して設けられた略四角形状の孔部41aと当該穴部に設けられ、車両前方方向に開口を有する略U字型断面形状である軸部41bとを備える。
【0015】
図1及び図2に示すように、夫々のヒンジ部41の間には前記桟部4の長手方向に沿って、当該桟部4の上面4aと側面4bとに連続し、車室方向に開口する凹部42を設けてある。当該凹部は、例えば断面略半円形状とすることができ、また、当該凹部42付近の上面4a側及び側面4b側には夫々、前記凹部42に受け入れられた発煙筒5を保持する保持部材43を設けてある。
発煙筒5は、前記凹部42に脱着自在に受け入れられ、更に保持部材43によって凹部42内に確実に保持される。
【0016】
前記凹部42は、発煙筒5との間で周方向に隙間が生じることがない形状にすることも可能である。また、前記保持部材43は、前記凹部42に受け入れた発煙筒5を内側に付勢する構造にすることが可能である。
このような構成にすることによって、発煙筒5が凹部42の内周面に確実に当接し、芯材の役割を果たすので、桟部の変形を確実に防止することができ、ひいては、開口部全体の剛性を一層高めることができる。
【0017】
また、凹部42を桟部の上面4aだけではなく側面4bにも連続して設けることによって、当該グラブボックス3が閉状態の場合でも、運転席から発煙筒5が視認可能にしてある。
発煙筒5は、法規により運転席の運転手から視認可能である必要があるが、本構成によって、凹部42を発煙筒5収納用のスペースとして用いることができる。
【0018】
(グラブボックス)
グラブボックス3は前記開口部2を閉塞可能なカバー部31とカバー部31に一体的に形成された本体部32とを有する。
カバー部31の上方略中央部には車室側に開口を有する凹部33が設けられ、当該凹部33内にロック機構7が配設されている。このロック機構7は前記ストライカ6と係脱自在に係合する。上記ロック機構7にはノブが軸支され、当該ノブを車室側に引くと前記係合が外れてカバー部31の開動作が可能となり、ドア部を閉めると前記ロック機構7がストライカ6に係合する。
【0019】
グラブボックスの下部には、前記ヒンジ部41に係合する軸保持部34を設けてある。当該軸保持部34は、軸41bに嵌合する略円形断面形状の隙間部を備えてある。軸保持部34に隣接する位置には、前記隙間部と連続して、前記孔部41aの縁と当接することによってグラブボックス3の開限界位置を決定するストッパー部35が設けてある。
【0020】
上述の構成によってグラブボックス3は開口部2に枢支され、車両の前後方向に揺動自在である。図3に示すように、閉位置においては前記ストライカ6とロック機構7とが係合することによって、前記グラブボックスを閉位置に固定する。一方、開限界に置いては前記ストッパー部35が前記ヒンジ部41に当接して更なる揺動を防止する。
【0021】
[別実施形態1]
上述の実施形態において、桟部の内部は中空構造に限らず、例えばその内部に補強部材等を備えた中実構造であってもよい。
本構成によって、開口部2の下縁4の剛性を一層高めることができる。
また、上述の実施形態において、開口部2の下縁4は上述の桟部以外によって構成されていてもよい。
【0022】
[別実施形態2]
また、ヒンジ部41は一体成形品に限らず別途設けるものであってもよい。
なお、軸保持部34はヒンジ部41に、軸41bはグラブボックス3に夫々設ける構造であってもよい。
【0023】
[別実施形態3]
上述の実施形態において、グラブボックス3は、本体部32を有さない構造、即ち、図4に示すように、開口部2にカバー部31が直接開閉自在に枢支してある構造であってもよい。
本実施形態において、前記桟部の両端付近には夫々ヒンジ部41が設けてあり、当該ヒンジ部は断面略半円形状の軸保持部41dを有する。グラブボックス下部の前記ヒンジ部41と対応する位置に夫々ヒンジ部41の軸保持部41dに係入される軸部36を備えている。当該軸部36は前記軸保持部41dに保持され、グラブボックス3は前記開口部2に開閉自在に枢支される。
本構成によってグラブボックス3が本体部32を有さないので、軽量化を図ることができる。
なお、軸部36は前記ヒンジ部41に、軸保持部41dは前記グラブボックス3に夫々設けられていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】インストルメントパネルのグラブボックス開口部付近の斜視図
【図2】本願発明に係る開口部構造を示す断面図
【図3】グラブボックスの開閉動作を示す断面図
【図4】本願発明の別実施形態を示す断面図
【符号の説明】
【0025】
1 インストルメントパネル
2 開口部
3 グラブボックス
31 カバー部
32 本体部
4 下縁
41 ヒンジ部
42 凹部
5 発煙筒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフロントシートの前方に配設されたインストルメントパネルに、グラブボックス用の開口部を形成したインストルメントパネルの開口部構造であって、
前記開口部の下縁に、前記開口部のカバーを開閉自在に枢支すべく当該開口部の下縁の両端付近に夫々設けられたヒンジ部と、当該夫々のヒンジ部の間に前記開口部の下縁の長手方向に沿って設けられ車室方向に開口して発煙筒を受け入れる溝状の凹部とを備えているインストルメントパネルの開口部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−281854(P2006−281854A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−101372(P2005−101372)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】