説明

インストルメントパネル構造

【課題】車両の衝突時に乗員がディスプレイから受ける衝撃を緩和することができるインストルメントパネル構造を得る。
【解決手段】ディスプレイ12が取り付けられたディスプレイクラスタ50は、クラスタアッパー52及びクラスタロア54を含んで構成されており、エネルギー吸収手段として、クラスタアッパー52には爪部74Aが設けられ、インストルメントパネル本体15の開口部13に形成された凹部13Aに係合されている。また、クラスタアッパー52には枠体72が設けられており、クラスタロア54には係合片74が設けられ、当該係合片74の装着部64Cが枠体72に係合される。このため、爪部74A、装着部64C及び枠体72の係合状態が解除される過程で、爪部74A、装着部64C及び枠体72が変形することによって、衝撃エネルギーが吸収される。したがって、車両の衝突時に乗員がディスプレイ12から受ける衝撃を緩和することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インストルメントパネル構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ディスプレイの視認性を高めるため、インストルメンタルパネルの上部にディスプレイが立設されたインストルメントパネル構造が開示されている。なお、この他にも特許文献2〜8にインストルメントパネル構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−091405号公報
【特許文献2】特開2006−088976号公報
【特許文献3】特開2003−212001号公報
【特許文献4】特開2003−034162号公報
【特許文献5】特開2001−146120号公報
【特許文献6】特開2010−095198号公報
【特許文献7】特開2008−290508号公報
【特許文献8】特開2005−132290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の発明では、インストルメントパネルの一般面よりもディスプレイが突出するため、車両の衝突時に乗員が当該ディスプレイに二次衝突する可能性もある。このため、この先行技術は、車両の衝突時に乗員がディスプレイから受ける衝撃を緩和する観点から改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、車両の衝突時に乗員がディスプレイから受ける衝撃を緩和することができるインストルメントパネル構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明に係るインストルメントパネル構造は、車室前部に設けられたインストルメントパネル本体と、前記インストルメントパネル本体に設けられると共に、ディスプレイが立設され、前記ディスプレイに入力された衝撃荷重によって変形して衝撃エネルギーを吸収するエネルギー吸収手段を備えた台座と、を有している。
【0007】
請求項1記載の発明に係るインストルメントパネル構造では、車室前部に設けられたインストルメントパネル本体に、ディスプレイが立設された台座が設けられている。ここで、当該台座にはエネルギー吸収手段を備えており、ディスプレイに入力された衝撃荷重によって台座が撓み(変形し)、ディスプレイが下方へ移動する。このため、車両の衝突時に乗員がディスプレイに二次衝突したとしても、台座に設けられたエネルギー吸収手段が変形することによって衝撃エネルギーが吸収される。なお、ここでの「変形」では弾性変形及び塑性変形が含まれる。つまり、エネルギー吸収手段が破断するまでの間、衝撃エネルギーを吸収することができる。
【0008】
請求項2記載の発明に係るインストルメントパネル構造は、請求項1に記載のインストルメントパネル構造において、前記インストルメントパネル本体に対して前記台座が離脱可能に設けられている。
【0009】
請求項2記載の発明に係るインストルメントパネル構造では、ディスプレイに衝撃荷重が入力され、インストルメントパネル本体から台座が離脱することによって、衝撃エネルギーが吸収される。ここで、インストルメントパネル本体から台座が離脱する過程において、少なくとも台座が弾性変形及び塑性変形することで衝撃エネルギーが吸収される。
【0010】
請求項3記載の発明に係るインストルメントパネル構造は、請求項2に記載のインストルメントパネル構造において、前記エネルギー吸収手段が、前記台座に設けられて前記インストルメントパネル本体に設けられた第1被係合部と係合すると共に、前記衝撃荷重によって変形して当該第1被係合部との係合状態が解除される第1係合部である。
【0011】
請求項3記載の発明に係るインストルメントパネル構造では、エネルギー吸収手段が、台座に設けられた第1係合部であり、当該第1係合部がインストルメントパネル本体に設けられた第1被係合部と係合されて台座が構成される。また、第1係合部は、ディスプレイに入力された衝撃荷重によって変形して第1被係合部との係合状態が解除される。つまり、ディスプレイを介して台座に衝撃荷重が入力されると、当該台座はインストルメントパネル本体から外れるように設定されている。このように、第1被係合部と第1係合部との係合状態が解除される過程で、第1係合部が変形することによって衝撃エネルギーが吸収される。
【0012】
請求項4記載の発明に係るインストルメントパネル構造は、請求項1〜3の何れか1項に記載のインストルメントパネル構造において、前記台座の下方にダクトが配設されている。
【0013】
請求項4記載の発明に係るインストルメントパネル構造では、台座の下方に空調用のダクトが配設されているため、ディスプレイを介して台座に衝撃荷重が入力され当該台座が撓み変形したりインストルメントパネル本体から外れると、台座がダクトに当たる。一般的に、ダクトは剛体で形成されていないため、台座が当たるとダクトは変形(弾性変形及び塑性変形)する。このダクトの変形によっても衝撃エネルギーを吸収することができる。
【0014】
請求項5記載の発明に係るインストルメントパネル構造は、請求項1〜4の何れか1項に記載のインストルメントパネル構造において、前記台座が、前記ディスプレイが取り付けられるロア部と、前記ロア部が取り付けられると共に前記インストルメントパネル本体に取り付けられたアッパー部と、を含んで構成されている。
【0015】
請求項5記載の発明に係るインストルメントパネル構造では、台座がロア部とアッパー部を含んで構成されている。ロア部にはディスプレイが取り付けられており、アッパー部はインストルメントパネル本体に取り付けられると共に、当該アッパー部にはロア部が取り付けられている。
【0016】
請求項6記載の発明に係るインストルメントパネル構造は、請求項5に記載のインストルメントパネル構造において、エネルギー吸収手段が、前記アッパー部に設けられた第2被係合部と、前記ロア部に設けられ、前記第2被係合部と係合すると共に、前記衝撃荷重によって変形して当該第2被係合部との係合状態が解除される第2係合部と、を含んで構成されている。
【0017】
請求項6記載の発明に係るインストルメントパネル構造では、アッパー部に第2被係合部が設けられている。一方、ロア部には、第2被係合部と係合する第2係合部が設けられており、ディスプレイを介してロア部に衝撃荷重が入力されると、少なくとも第2係合部が変形し第2被係合部との係合状態が解除される。つまり、ロア部に衝撃荷重が入力されると、当該ロア部はアッパー部から外れるように設定されている。ここで、第2被係合部と第2係合部との係合状態が解除される過程で、少なくとも第2係合部が変形することで、衝撃エネルギーが吸収される。
【0018】
請求項7記載の発明に係るインストルメントパネル構造は、請求項2〜6の何れか1項に記載のインストルメントパネル構造において、離脱する前記台座の移動軌跡上にリブが設けられている。
【0019】
請求項7記載の発明に係るインストルメントパネル構造では、離脱する台座の移動軌跡上にリブが設けられることで、当該リブが変形して破断するまでの間、衝撃エネルギーを吸収することができる。
【0020】
ここで、「脱落する台座の移動軌跡上」とは、第1係合部と第1被係合部との係合状態が解除されたとき、或いは第2係合部と第2被係合部との係合状態が解除されたとき、台座が脱落するが、この台座の移動する軌跡上にリブが設けられているということである。このため、例えば、台座の下方に位置するダクトにリブが設けられても良いし、当該ダクトに接続されるレジスタにリブが設けられても良い。さらには、台座自体にリブが形成されても良く、この場合、台座の裏面側にリブが設けられる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、請求項1記載の発明に係るインストルメントパネル構造によれば、車両の衝突時に乗員がディスプレイから受ける衝撃を緩和することができる、という優れた効果を有する。
【0022】
請求項2記載の発明に係るインストルメントパネル構造によれば、インストルメントパネルとは異なる部材として台座を形成することができるため、複雑な形状の台座でも形成できる、という優れた効果を有する。
【0023】
請求項3記載の発明に係るインストルメントパネル構造によれば、エネルギー吸収手段として別途装置を設ける場合と比較して、インストルメントパネルの軽量化を図ると共にコストを低減することができる、という優れた効果を有する。
【0024】
請求項4記載の発明に係るインストルメントパネル構造によれば、車両の衝突時に乗員がディスプレイから受ける衝撃をさらに緩和することができる、という優れた効果を有する。
【0025】
請求項5記載の発明に係るインストルメントパネル構造によれば、台座を複数部材で構成することによって、複雑な形状の台座でも形成することができる、という優れた効果を有する。
【0026】
請求項6記載の発明に係るインストルメントパネル構造によれば、第1被係合部と第1係合部、第2被係合部と第2係合部とで係合強度を変えることで、アッパー部とロア部とでどちらを外し易くするか調整することができる、という優れた効果を有する。
【0027】
請求項7記載の発明に係るインストルメントパネル構造によれば、車両の衝突時に乗員がディスプレイから受ける衝撃をさらに緩和することができる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本実施の形態に係るインストルメントパネル構造が適用されたインストルメントパネルの外観斜視図である。
【図2】図1に示されるインストルメントパネルに設けられたディスプレイ及びディスプレイクラスタを示す分解斜視図である。
【図3】図1の3−3線断面図である。
【図4】その他の実施形態(1)に係るインストルメントパネル構造を示す図3に対応する断面図である。
【図5】その他の実施形態(2)に係るインストルメントパネル構造を示す図3に対応する断面図である。
【図6】その他の実施形態(3)に係るインストルメントパネル構造を示す図3に対応する断面図である。
【図7】その他の実施形態(4)に係るインストルメントパネル構造を示す図3に対応する断面図である。
【図8】実施形態の補足(1)に係るインストルメントパネル構造が適用されたインストルメントパネルの外観斜視図である。
【図9】図8の図3に対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態について説明する。なお、図中に適宜記す矢印FRは車両前後方向の前方向を、矢印UPは車両上下方向の上方向を、矢印Wは車両幅方向をそれぞれ示す。
【0030】
(インストルメントパネルの構造)
図1には本実施の形態に係るインストルメントパネル構造が適用されたインストルメントパネル10の外観斜視図が示されている。また、図2には当該インストルメントパネル構造の要部であるディスプレイ12及び当該ディスプレイ12が取り付けられる台座としてのディスプレイクラスタ50の分解斜視図が示されており、図3には、図1の3−3線断面図が示されている。
【0031】
図1に示されるように、インストルメントパネル10は車室前部に設けられたインストルメントパネル本体15を備えている。インストルメントパネル本体15は、図示しない左右のフロントピラー間に架け渡されたインストルメントパネルリインフォースメントに取り付けられており、空調装置等を車両上側から覆っている。なお、ここでは、インストルメントパネル本体15の車幅方向左側にコンビネーションメータ16が設けられており、この車両11は左ハンドル仕様となっているが、右ハンドル仕様でも良い。
【0032】
このインストルメントパネル本体15の車両幅方向両側には、サイドレジスタ18、20がそれぞれ設けられており、インストルメントパネル本体15の車両幅方向中央部には、一対のセンターレジスタ22、24が設けられている。図示はしないが、空調装置には当該空調装置によって温度調整された空気を送出するセンターレジスタ用送出口とサイドレジスタ用送出口とが設けられている。サイドレジスタ用送出口には、樹脂製の一対の空調用のダクトが接続されており、当該一対のダクトがそれぞれサイドレジスタ18、20と接続される。一方、センターレジスタ用送出口には、樹脂製の空調用のダクト34が接続されており、当該ダクト34がセンターレジスタ22、24と接続される。
【0033】
また、インストルメントパネル10の表側10A(車室内側)の車両幅方向中央部には、インストルメントパネル本体15の上面から突出するようにしてディスプレイ12が配置されている(後述する)。このディスプレイ12には、例えばナビゲーション情報や車両情報などが表示されるようになっている。
【0034】
また、ディスプレイ12の下方には、インストルメントパネル10の裏面側に、ダクト34が配設されており、インストルメントパネル10の表側10Aに上述のセンターレジスタ22、24が設けられている。そして、インストルメントパネル10の表側10Aには、センターレジスタ22、24の下方に位置して空調操作部43が設けられている。この空調操作部43には操作スイッチ42が設けられており、この操作スイッチ42を操作することで、空気が送出されるレジスタが選択され、空調装置の温度や風量が設定される。このように、ディスプレイ12と空調操作部43の間にはセンターレジスタ22、24が設けられている。さらに、空調操作部43の下方には、車両幅方向の中央部に設けられたセンタークラスタ44にオーディオ装置46が設けられているが、空調操作部43の位置にオーディオ装置46が設けられても良い。
【0035】
ここで、インストルメントパネル本体15の上部には、車両幅方向の中央部に開口部13が形成されており、当該開口部13にはディスプレイ12が取り付けられる台座としてのディスプレイクラスタ50が嵌め込み可能とされている(後述する)。ディスプレイクラスタ50は樹脂で形成されており、図2に示されるように、ディスプレイ12の背面側(車両前方側)に位置するアッパー部としてのクラスタアッパー52とディスプレイ12の下側に位置するロア部としてのクラスタロア54とで構成されている。
【0036】
クラスタロア54は車幅方向に沿った略長板状を成しており、ディスプレイ12が載置可能な大きさとなるように設定されている。クラスタロア54の長手方向の両端側には孔部54Aが形成されており、当該孔部54A内をビス56が挿通可能とされている。このビス56を介して、ディスプレイ12がクラスタロア54に取り付けられる。また、クラスタロア54の長手方向の両端部には、車両前方側へ向かうにつれて車幅方向中央部へ向かって傾斜する傾斜部58、60が設けられている。
【0037】
クラスタロア54の前端部62及び傾斜部58、60には、クラスタロア54の裏面側から延出された第2係合部としての係合体64がそれぞれ設けられている。係合体64はクラスタロア54の裏面から垂下すると共に、当該裏面との間に僅かに隙間を設けた状態で、クラスタロア54の前端部62又は傾斜部58、60に対してそれぞれ略直交する方向へ向かって延出する略L字状を成す角柱状の延出片64Aを備えている。
【0038】
この延出片64Aの先端部からはクラスタロア54の前端部62又は傾斜部58、60との間に僅かに隙間を設けた状態で上方へ向かって立設する角柱状の立設部64Bが設けられている。立設部64Bの先端部は当該立設部64Bの外形から張り出す菱形状の装着部64Cが設けられている。この装着部64Cの中央部には装着部64Cの外形に合わせて菱形状を成す中空部64Dが設けられており、当該中空部64Dによって装着部64Cはその幅を狭くすることが可能となる(狭幅可能となる)。
【0039】
一方、クラスタアッパー52はクラスタロア54の前端部62及び傾斜部58、60の形状に沿って立壁となるように形成されており、クラスタアッパー52の前端部には、クラスタロア54の前端部62に対応して正面視で略矩形状となる前壁66が立設されている。この前壁66の先端部には、車両前方側へ向かって斜め上方へ延出するフランジ部66Aが形成されている(図3参照)。また、前壁66の両端側には、クラスタロア54の傾斜部58、60に合わせて、車両後方側へ向かうにつれて車幅方向外側向かって傾斜する傾斜壁68、70がそれぞれ立設されている。
【0040】
この傾斜壁68、70の先端部は、車両後方側へ向かうにつれて車両下方へ向かう傾斜面68A、70Aとなるように形成されている。クラスタアッパー52の裏面側には、前壁66及び傾斜壁68、70の下部において、クラスタロア54の係合体64と対応する位置に第2被係合部としての枠体72が設けられている。この枠体72は、前壁66又は傾斜壁68、70に対してそれぞれ略直交する方向へ向かって張り出しており、枠体72内には、クラスタロア54に設けられた係合体64の装着部64Cが狭幅された状態で挿通可能とされている。
【0041】
装着部64Cが枠体72内へ挿通され、当該装着部64Cが復元すると当該装着部64Cは抜け止めされる(装着部64Cが枠体72に係合される)。ディスプレイ12を介して装着部64Cに衝撃荷重が入力されると、例えば、装着部64Cを介して枠体72が下方へ引っ張られ弾性変形(一部塑性変形も含まれる)すると共に、装着部64Cが狭幅して枠体72内を抜ける。これにより、装着部64Cと枠体72との係合状態が解除される。なお、装着部64C又は枠体72の破断により装着部64Cと枠体72との係合状態が解除されるようにしても良い。つまり、装着部64C及び枠体72の弾性変形及び塑性変形を含み、装着部64C又は枠体72が破断するまでの間、衝撃エネルギーを吸収することができる。
【0042】
また、クラスタアッパー52の裏面側には、前壁66の両端側上部及び傾斜壁68、70の枠体72の近傍に第1係合部としての係合片74が、当該前壁66又は傾斜壁68、70に対して略直交する方向へ向かってそれぞれ延出している。係合片74の先端部には、断面形状が略三角形状を成す爪部74Aが突設されている。この爪部74Aが、インストルメントパネル10の開口部13(図1参照)に形成された第1被係合部としての凹部13Aと係合可能とされる。
【0043】
また、係合片74の基部側ではフランジ部66Aが対向しており、係合片74の爪部74Aが開口部13に形成された凹部13Aに係合された状態で、開口部13の周縁部が係合片74の基部側とフランジ部66Aとの間で挟持される。そして、この状態でディスプレイ12を介して爪部74Aに衝撃荷重が入力されると、当該爪部74Aと凹部13Aとの係合状態が解除される。なお、ここでは、爪部74Aと凹部13Aとの係合強度は、装着部64Cと枠体72との係合強度よりも大きくなるように設定されている。
【0044】
(インストルメントパネル構造の作用・効果)
図1及び図2に示されるように、本実施形態では、インストルメントパネル本体15の上面から突出するようにしてディスプレイ12がディスプレイクラスタ50に取り付けられている。ディスプレイクラスタ50はクラスタアッパー52及びクラスタロア54を含んで構成されており、エネルギー吸収手段として、クラスタアッパー52には爪部74Aが設けられ、インストルメントパネル10の開口部13に形成された凹部13Aに係合されている。また、これ以外にもエネルギー吸収手段として、クラスタアッパー52には枠体72が設けられており、クラスタロア54には係合体64が設けられ、当該係合体64の装着部64Cが枠体72に係合されている。そして、爪部74Aと凹部13Aとの係合強度は、装着部64Cと枠体72との係合強度よりも大きくなるように設定されている。
【0045】
つまり、装着部64Cと枠体72との係合は、爪部74Aと凹部13Aとの係合よりも低い荷重で係合解除されることとなる。ここで、クラスタアッパー52及びクラスタロア54は樹脂で形成されているため、弾性変形が可能となっている。このため、ディスプレイクラスタ50における爪部74A、装着部64C及び枠体72の係合状態が解除される過程で、爪部74A、装着部64C及び枠体72が引っ張られ弾性変形(塑性変形も含まれる)することによって、衝撃エネルギーが吸収される。
【0046】
また、ディスプレイ12に衝撃荷重が入力されると、当該ディスプレイ12を介してディスプレイクラスタ50へ荷重が伝達される。これにより、装着部64Cと枠体72との係合状態が解除されるとクラスタロア54が脱落する。ディスプレイ12の下方にはダクト34が配設されているため、図3の2点鎖線で示されるように、クラスタロア54が脱落すると、当該クラスタロア54がダクト34に当たり、ダクト34が撓み(弾性変形し)、潰れる(塑性変形する)。これによっても衝撃エネルギーが吸収される。
【0047】
つまり、上記構成により、車両11の衝突時に乗員がディスプレイ12に二次衝突したとしても、ディスプレイクラスタ50に設けられた爪部74A、装着部64C及び枠体72による弾性変形及びダクト34の塑性変形等によって衝撃エネルギーが吸収される。したがって、車両11の衝突時に乗員がディスプレイ12から受ける衝撃を緩和することができる。
【0048】
また、爪部74A、装着部64C及び枠体72等が変形(弾性変形及び塑性変形)することによって、衝撃エネルギーを吸収するようにすることで、エネルギー吸収手段として別途装置を設ける場合と比較して、インストルメントパネル10の軽量化を図ると共にコストを低減することができる。さらに、ディスプレイクラスタ50をクラスタアッパー52及びクラスタロア54を含んで構成することによって、複雑な形状のディスプレイクラスタ50でも形成することができる。
【0049】
さらに、図1に示されるように、ディスプレイ12がインストルメントパネル本体15の上面から突出するようにして、インストルメントパネル本体15の車両幅方向の中央部に配置されている。これにより、図示はしないが例えば、当該ディスプレイ12がセンタークラスタ44に配置された場合に比べ、ディスプレイ12の視認性を向上させることができる。
【0050】
(その他の実施形態)
上記の実施形態では、エネルギー吸収手段として、ディスプレイクラスタ50において、爪部74A、装着部64C及び枠体72を設け、クラスタロア54がクラスタアッパー52との係合状態を解除される過程において、それぞれ弾性変形させることによって衝撃エネルギーが吸収されるようにしている。しかし、これ以外にも、クラスタロア54がクラスタアッパー52との係合状態を解除された後、クラスタロア54と当該クラスタロア54の下方に位置する車載部品との干渉によって干渉部材を塑性変形させることで衝撃エネルギーを吸収しても良い。
【0051】
(1)例えば、図4に示されるように、クラスタロア54の裏面に、エネルギー吸収手段として複数のリブ76を車幅方向に沿って配列させる。つまり、クラスタロア54が脱落する移動軌跡上にリブ76を形成する。ここで、「クラスタロア54が脱落する移動軌跡上」とは、図3の2点鎖線で示されるように、クラスタロア54に設けられた装着部64Cとアッパー部に設けられた枠体72との係合状態が解除されたとき、クラスタロア54が移動する軌跡上にリブ76が設けられているということである。
【0052】
なお、ここでのリブ76は補強用のリブではなくエネルギー吸収用とするため、補強用のリブよりもその板厚は薄くなるように形成されている。また、隣接するリブ76同士を架け渡すようにして車幅方向へ延出する薄板の横リブ77を形成しても良い。これにより、リブ76の板厚が薄いにも関わらずエネルギー吸収力を高めることができる。
【0053】
このように、クラスタロア54が脱落する移動軌跡上にエネルギー吸収手段としてのリブ76を設けることで、クラスタロア54がクラスタアッパー52との係合状態を解除された後、当該リブ76がダクト34に当たって撓み(弾性変形し)、潰れる(塑性変形する)ことによって衝撃エネルギーが吸収される。さらに、このリブ76を介してダクト34が撓み、潰れることによっても衝撃エネルギーは吸収される。
【0054】
(2)また、クラスタロア54が脱落する移動軌跡上にエネルギー吸収用のリブが設けられる構成として、ディスプレイクラスタ50自体に設けられる以外にも、図5に示されるように、クラスタロア54の下方に位置するダクト34にエネルギー吸収用のリブ78が設けられても良い。
【0055】
(3)さらに、図6に示されるように、当該ダクト34に接続されるセンターレジスタ22、24(なお、センターレジスタ22は図1参照)にエネルギー吸収用のリブ80が設けられても良い。ここで、センターレジスタ22、24にエネルギー吸収用のリブ80が設けられる場合、クラスタロア54が脱落する移動軌跡上に当該リブ80が配置されるようにするため、図4及び図5の場合と比較して、ディスプレイ12は車両後方側に配置される。
【0056】
(4)一方、図4に示されるように、クラスタロア54の裏面に複数のリブ76を設けた場合、当該リブ76の変形によって衝撃エネルギーが吸収されるため、例えば、図7に示されるように、クラスタロア54の下方にオーディオ装置46のように剛性が高い車載部品を配設しても良い。つまり、オーディオ装置46との干渉によってリブ76が撓み、潰れて衝撃エネルギーが吸収される。このように、クラスタロア54の下方にオーディオ装置46を配置可能とすることで、車載部品の配置における設計の自由度を向上させることができる。なお、以上の実施形態については、互いに組み合わせても良い。
【0057】
(実施形態の補足)
(1)図2に示されるように、本実施形態では、ディスプレイクラスタ50をクラスタアッパー52及びクラスタロア54の複数の部材で構成したが、図8に示されるように、1つの部材で形成されたディスプレイクラスタ82を用いても良いのは勿論のことである。この場合、ディスプレイ12を介してディスプレイクラスタ82に衝撃荷重が入力されると、図9に示されるように、ディスプレイクラスタ82自体が脱落することとなる。
【0058】
このように、1つの部材でディスプレイクラスタ82を形成することで、エネルギー吸収手段としての係合強度は、ディスプレイクラスタ82に設けられた係合片74とインストルメントパネル本体15の開口部13に形成された凹部13Aとの間で調整することができる。また、1つの部材(ディスプレイクラスタ82)を凹部13Aに係合させれば良いため、組み立て作業性も良い。
【0059】
(2)また、図2に示されるように、本実施形態では、第2係合部としてクラスタロア54に係合体64を設け、第2被係合部としてクラスタアッパー52に枠体72を設けて互いに係合可能としたが、クラスタロア54とクラスタアッパー52とが互いに係合可能であれば良い。このため、第2係合部及び第2被係合部の形状は上記に限るものではない。
【0060】
例えば、クラスタロア54に枠体72を設け、クラスタアッパー52に係合体64を設けても良い。また、これ以外にも、クラスタロア54及びクラスタアッパー52に爪部を形成し当該爪部が互いに係合可能とされても良い。また、第1係合部についても同様に、本実施形態では、係合片74を設けたが、インストルメントパネル本体15の開口部13に形成された凹部13Aに係合可能であれば良いため、この形状に限るものではない。
【0061】
(3)さらに、本実施形態では、爪部74Aと凹部13Aとの係合強度は、係合体64の装着部64Cと枠体72との係合強度よりも大きくなるように設定したが、爪部74Aと凹部13Aとの係合強度と装着部64Cと枠体72との係合強度が略同じであっても良く、また、爪部74Aと凹部13Aとの係合強度が、装着部64Cと枠体72との係合強度よりも小さくなるように設定しても良い。この場合、クラスタロア54のみが脱落するのではなく、クラスタアッパー52も含めたディスプレイクラスタ50が脱落する。
【0062】
(4)さらに、本実施形態では、ディスプレイクラスタ50が3部材以上で構成されても良い。例えば、装着部64C及び枠体72をクラスタロア54又はクラスタアッパー52とは異なる部材で形成しても良い。これにより、第2被係合部及び第2係合部が複雑な形状でも形成可能となる。
【0063】
(5)また、以上の実施形態では、台座50の一部を構成するクラスタロア54又は台座82が脱落することで衝撃エネルギーが吸収される構成としたが、必ずしも台座は脱落しなくても良い。ここでは、台座(図示省略)の撓み変形によって衝撃エネルギーが吸収されるが、この場合、台座の底面と当該台座の下方に位置する車載部品との間に隙間が設けられ、当該隙間内で撓みが発生する。勿論、この隙間がない場合でも、台座の底面を介して例えばダクトを押圧することで、当該台座の撓み変形は可能となる場合もある。
【0064】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0065】
10 インストルメントパネル(インストルメントパネル構造)
11 車両
12 ディスプレイ
13A 凹部(第1被係合部)
15 インストルメントパネル本体
34 ダクト
50 ディスプレイクラスタ(台座)
52 クラスタアッパー(台座)
54 クラスタロア(台座)
64 係合体(第2係合部、エネルギー吸収手段)
72 枠体(第2被係合部、エネルギー吸収手段)
74 係合片(第1係合部、エネルギー吸収手段)
76 リブ(エネルギー吸収手段)
78 リブ(エネルギー吸収手段)
80 リブ(エネルギー吸収手段)
82 ディスプレイクラスタ(台座)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室前部に設けられたインストルメントパネル本体と、
前記インストルメントパネル本体に設けられると共に、ディスプレイが立設され、前記ディスプレイに入力された衝撃荷重によって変形して衝撃エネルギーを吸収するエネルギー吸収手段を備えた台座と、
を有するインストルメントパネル構造。
【請求項2】
前記インストルメントパネル本体に対して前記台座が離脱可能に設けられた請求項1に記載のインストルメントパネル構造。
【請求項3】
前記エネルギー吸収手段が、前記台座に設けられて前記インストルメントパネル本体に設けられた第1被係合部と係合すると共に、前記衝撃荷重によって変形して当該第1被係合部との係合状態が解除される第1係合部である請求項2に記載のインストルメントパネル構造。
【請求項4】
前記台座の下方に空調用のダクトが配設された請求項1〜3の何れか1項に記載のインストルメントパネル構造。
【請求項5】
前記台座が、前記ディスプレイが取り付けられるロア部と、前記ロア部が取り付けられると共に前記インストルメントパネル本体に取り付けられたアッパー部と、を含んで構成された請求項1〜4の何れか1項に記載のインストルメントパネル構造。
【請求項6】
前記エネルギー吸収手段が、
前記アッパー部に設けられた第2被係合部と、
前記ロア部に設けられ、前記第2被係合部と係合すると共に、前記衝撃荷重によって変形して当該第2被係合部との係合状態が解除される第2係合部と、
を含んで構成された請求項5に記載のインストルメントパネル構造。
【請求項7】
離脱する前記台座の移動軌跡上にリブが設けられた請求項2〜6の何れか1項に記載のインストルメントパネル構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−35424(P2013−35424A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−173430(P2011−173430)
【出願日】平成23年8月8日(2011.8.8)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】