説明

インターホンシステム

【課題】モノラルの入力信号に対し、あらかじめ測定した伝達特性を作用させることでステレオの出力信号を作成し、モノラルの出力信号にない音響効果を実現する。
【解決手段】玄関子機には、来訪者の映像を撮像するためのカメラを備え、居室親機には、カメラにて撮像される映像の来訪者の位置に対応する少なくとも2以上の撮像エリア毎に存在する音声の伝達特性を保存するためのROMと、ROMから読み出される伝達特性をもとにデジタル音声信号に畳み込み演算処理を行い、演算処理を行った信号を居室親機のステレオコーデックへ出力するための音声処理部と、親機Lチャンネル用スピーカ及び親機Rチャンネル用スピーカのうち選択された何れか1つのスピーカに対応させて音声処理部を制御し、モノラル音声信号を出力する何れか1つのスピーカを選択するためのCPUを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インターホンシステムに係わり、特にモノラル入力した通話音声や呼出音をステレオスピーカに出力するモノラル入力/ステレオ出力変換機能付きインターホンシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のインターホンシステムでは、一般的に玄関子機からの音声等の入力及び居室親機での出力はモノラル入力/モノラル出力で行われていた。しかし、モノラル入力/モノラル出力では音像定位(音の発生位置を再現する音響効果)や音の臨場感が欠落しているという問題があった。
【0003】
そこで、このような問題に対して、玄関子機の音声等の入力側にマイクを2つ設置してステレオ入力し、ステレオ出力する方法も考えられている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に記載の発明は、来訪者が発した音声を玄関子機に設置した2つのマイクにより集音し、この音声信号を居室親機にて各マイクに対応して設置された2つのスピーカにより出力し、各スピーカから出力される音声の大きさにより来訪者の位置する方向を検出して玄関子機の撮像手段の視野を速く来訪者の方向に移動させるものである。
【0005】
【特許文献1】特開平5−236476号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記したように、従来のような玄関子機へステレオ入力し、居室親機にてステレオ出力する方法では、玄関子機内に2つ若しくはそれ以上のマイクを設置しなければならず、玄関子機の実装面積が大きくなってしまうという問題があった。この結果、インターホンシステムのコストが高くなるという問題もあり、さらには、ステレオ入力/ステレオ出力を行うことによって伝送帯域をより多く確保しなければならないなどの問題も存在した。
【0007】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、玄関子機における1つのマイクによるモノラルの入力信号に対し、あらかじめ測定した伝達特性を作用させることで居室親機にてステレオの出力信号を作成することにより、モノラルの出力信号にない音像定位、臨場感、音質向上等の音響効果を実現可能とするインターホンシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明によるインターホンシステムの第1の態様は、来訪者により居室呼び出しを行うための呼出部及び音声を送受信して通話を成立させるための子機マイク及び子機スピーカを有する玄関子機と、玄関子機からの居室呼び出しに応答し、音声を送受信して来訪者との間で通話を成立させるための親機マイク、親機Lチャンネル用スピーカ及び親機Rチャンネル用スピーカを有する居室親機とを接続し、玄関子機のモノラルコーデック及び居室親機のステレオコーデックによりアナログ音声信号をデジタルデータに変換したデジタル音声信号として伝送を行うにあたり、玄関子機には、来訪者の映像を撮像するためのカメラを備え、居室親機には、カメラにて撮像される映像の来訪者の位置に対応する少なくとも2以上の撮像エリア毎に存在する音声の伝達特性を保存するためのROMと、ROMから読み出される伝達特性をもとにデジタル音声信号に畳み込み演算処理を行い、演算処理を行った信号を居室親機のステレオコーデックへ出力するための音声処理部と、親機Lチャンネル用スピーカ及び親機Rチャンネル用スピーカのうち選択された何れか1つのスピーカに対応させて音声処理部を制御し、モノラル音声信号を出力する何れか1つのスピーカを選択するためのCPUを備えたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明によるインターホンシステムの第2の態様は、第1の態様において、居室親機には、玄関子機のカメラにて撮像される少なくとも2以上の撮像エリアのうち、来訪者が存在する撮像エリアを検出するとともに、撮像エリアを来訪者が存在する音像位置として音声処理部に通知するための画像処理部を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によるインターホンシステムによれば、画像処理部で検出した音像位置に適応した伝達特性を音声処理部に入力されたモノラル信号に畳み込み演算することで、モノラル信号からステレオ信号を作成し出力信号に音像定位、臨場感、音質向上等の音響効果を付加することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の好ましい実施の形態について図面を参照して詳述する。
【0012】
図1は本発明のインターホンシステムのブロック図の一例である。
【0013】
図1において、本発明のインターホンシステムは戸外に設置される玄関子機1と室内に設置される居室親機2とから構成されており、玄関子機1は居室親機2との間でデジタル信号の送受信をおこなう子機通信処理部106を備えている。
【0014】
この子機通信処理部106には来客を居室親機2に知らせる呼出ボタン103、子機スピーカ101にアナログ信号を送信し、子機マイク102からのアナログ信号をデジタル信号に変換するモノラルコーデック(CODEC)105が接続されている。
【0015】
また、玄関子機1には来訪者を撮像するカメラ107が備えられており、カメラ107は来訪者を撮像した映像信号を処理するカメラモジュール104を介して子機通信処理部106に接続されている。
【0016】
一方、居室親機2は、玄関子機1とデジタル信号の送受信を行なう親機通信処理部208を備えており、この親機通信処理部208には音響系のハウリングを制御するボイススイッチ207が接続され、ステレオコーデック204を介して親機L(左)チャンネル用スピーカ201、親機R(右)チャンネル用スピーカ202、親機マイク203が接続されている。
【0017】
親機通信処理部208にはこの他、音像位置を検出するための画像処理部209とモノラル信号からステレオ信号を作り出す音声処理部206が接続される。
【0018】
親機通信処理部208、音声処理部206、画像処理部209、ボイススイッチ207には、さらにバスを介して玄関子機1や居室親機2との間のデータの入出力や親機内の各構成機器の動作を制御するためのCPU213、デジタル音声信号を記録する音声処理用RAM215、居室呼び出しの報知のために必要な呼出音、音声メッセージ等の音声データ、あらかじめ測定した伝達特性データ等を保存するROM216が接続されている。また、CPU213には操作ボタンやLED等のI/O装置214が接続されている。
【0019】
また、画像処理部209には液晶ディスプレイのコントローラ(LCDC)210を介して液晶ディスプレイ(LCD)212及び画像信号を記憶させる画像処理用RAM211が接続されている。
【0020】
さらに、音声処理部206、ボイススイッチ207は音量を制御するボリューム制御部205に接続され、このボリューム制御部205はステレオコーデック204と接続されている。
【0021】
次に、このような構成のインターホンシステムにおける伝達特性データの測定について図2を用いて説明する。
【0022】
伝達特性データの測定にはまず図2(a)に示すように撮像エリアをN分割する。図2(a)においては例として3分割した撮像エリア(N=3:Z1、Z2、Z3)の場合を示している。
【0023】
分割した各撮像エリアに音像(音源)があることを想定し、図2(b)に示すように左チャンネル(Lch)/右チャンネル(Rch)入力測定用の2つのマイクで伝達特性、即ちインパルス応答のhL1、hR1、hL2、hR2、hL3、hR3のパターンをあらかじめ測定し、これらの測定データをROM216に保存する。
【0024】
このようにあらかじめ伝達特性データを測定、保存しておいて、モノラル入力からステレオ出力を行うようにする。
【0025】
次に本発明のインターホンシステムのモノラル入力からステレオ出力に関する動作について図3を用いて説明する。
【0026】
図3に示すように、玄関子機1のカメラ107で撮像された画像データはカメラモジュール104にて処理され、子機通信処理部106に送られ、伝送路により親機通信処理部208を経由して居室親機2の画像処理部209に送られる。
【0027】
画像処理部209では何らかの動きのあるエリアを検出し、この動きのあるエリアには来訪者が存在するものと認識し、そのエリア番号を音像(音源)位置として音声処理部206に通知する。
【0028】
エリア番号を得た音声処理部206は、玄関子機1の1つの子機マイク102からのモノラル信号に対して、あらかじめ保存されているエリア番号に対応した伝達特性(インパルス応答:hLn、hRn)をROM216から読み出し、各々畳み込み演算を実施してLch/Rchに出力するステレオ信号を作成する。
【0029】
作成されたステレオ信号は、ボリューム制御部205で適切な音量に制御され、ステレオコーデック204のL/R出力チャネルにそれぞれ設定されて親機Lチャンネル用スピーカ(L)201、親機Rチャンネル用スピーカ(R)202に出力される。
【0030】
以上の説明から明らかなように、本発明によるインターホンシステムによれば、画像処理部で検出した音像位置に適応した伝達特性を音声処理部に入力されたモノラル信号に畳み込み演算することで、玄関子機において複数のマイクを使用しなくてもモノラル信号からステレオ信号を作成し出力信号に音像定位、臨場感、音質向上等の音響効果を付加することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明のインターホンシステムのブロック図の一例である。
【図2】本発明のインターホンシステムの伝達特性データの測定を説明する図である。
【図3】本発明のインターホンシステムの動作を説明する図である。
【符号の説明】
【0032】
1 玄関子機
2 居室親機
101 子機スピーカ
102 子機マイク
103 呼出ボタン
107 カメラ
105 モノラルコーデック
201 親機Lチャンネル用スピーカ
202 親機Rチャンネル用スピーカ
203 親機マイク
204 ステレオコーデック
206 音声処理部
209 画像処理部
213 CPU
216 ROM

【特許請求の範囲】
【請求項1】
来訪者により居室呼び出しを行うための呼出部(103)及び音声を送受信して通話を成立させるための子機マイク(102)及び子機スピーカ(101)を有する玄関子機(1)と、前記玄関子機からの居室呼び出しに応答し、前記音声を送受信して前記来訪者との間で通話を成立させるための親機マイク(203)、親機Lチャンネル用スピーカ(201)及び親機Rチャンネル用スピーカ(202)を有する居室親機(2)とを接続し、前記玄関子機のモノラルコーデック(105)及び前記居室親機のステレオコーデック(204)によりアナログ音声信号をデジタルデータに変換したデジタル音声信号として伝送を行うにあたり、
前記玄関子機には、前記来訪者の映像を撮像するためのカメラ(107)を備え、
前記居室親機には、前記カメラにて撮像される映像の前記来訪者の位置に対応する少なくとも2以上の撮像エリア(Z1、Z2、Z3、・・・)毎に存在する前記音声の伝達特性を保存するためのROM(216)と、
前記ROMから読み出される前記伝達特性をもとに前記デジタル音声信号に畳み込み演算処理を行い、前記演算処理を行った信号を前記居室親機のステレオコーデックへ出力するための音声処理部(206)と、
前記親機Lチャンネル用スピーカ及び前記親機Rチャンネル用スピーカのうち選択された何れか1つのスピーカに対応させて前記音声処理部を制御し、前記モノラル音声信号を出力する前記何れか1つのスピーカを選択するためのCPU(213)を備えたことを特徴とするインターホンシステム。
【請求項2】
前記居室親機には、前記玄関子機の前記カメラにて撮像される前記少なくとも2以上の撮像エリアのうち、前記来訪者が存在する撮像エリアを検出するとともに、当該撮像エリアを来訪者が存在する音像位置として前記音声処理部に通知するための画像処理部(209)を備えたことを特徴とする請求項1記載のインターホンシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−60321(P2009−60321A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−225146(P2007−225146)
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【出願人】(000100908)アイホン株式会社 (777)
【Fターム(参考)】