説明

インターホンシステム

【課題】住戸内での非常事態を、音ではなくて、光信号としてドアホンから外部に報知して、外部から容易に視認できるインターホンシステムを提供する。
【解決手段】
インターホンシステムは、複数の住戸にそれぞれ備えられた複数のインターホン親器10と、各住戸の戸外に設置されるドアホン30とを備え、ドアホン30にランプ37が備えられ、インターホン親器10における非常報知手段17から出力される非常信号を受けて、このランプが点灯または点滅するように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の住戸内にそれぞれ設置されるインターホン親器側で発生する非常信号に連動させて対応するドアホン及び集中監視装置を動作させる集合住宅用のインターホンシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示される従来のインターホンシステムは、インターホン親器側で非常状態を示す非常信号が発生した時に、ドアホンから非常状態を訴える音声メッセージが発せられるように構成されている。これにより、非常事態に直面する住戸のドアホンから発せられる音声メッセージが周囲の人に伝達されて、迅速な対応を求めることができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−213182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1で開示されるインターホンシステムを集合住宅用に適用する場合、隣り合う住戸が接近している場合が多いことから、間違って非常信号を発生させたりすると、近隣への騒音となる問題が生じる。
本発明は、上記の問題を解消するためになされたものであり、住戸内での非常事態をドアホンから住戸外部へ光による情報として出力し、騒音の原因となる音に頼ることなく、非常状態を外部へ確実に知らせることができる集合住宅用のインターホンシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る集合住宅用のインターホンシステムは、複数の住戸にそれぞれ備えられる複数のインターホン親器と、上記の各インターホン親器と接続されてこれと音声通信するために各住戸の戸外に設置されるドアホンと、各住戸の上記インターホン親器と通信するための集中管理装置とを備える。上記の各インターホン親器は自己を特定する識別コードを有する。各インターホン親器は非常報知手段を有し、この非常報知手段は、住戸内での非常状態を示す非常信号を発生させ、この非常信号に上記識別コードを付加して上記集中管理装置に送信するように構成される。
上記の集中管理装置は警報手段を有し、この警報手段は、上記の非常信号を受けた時に、この非常信号に付加された上記の識別コードに基づいて、上記非常信号を送信するインターホン親器を特定した警報を出力するように構成される。
本発明のインターホンシステムにおける各ドアホンは、可視光を発生するランプを備え、各ドアホンは、対応する上記インターホン親器からの上記の非常信号を受信した時に、上記ランプを点灯または点滅させる制御信号を発生するように構成された制御部を備える。
このため、いずれかの住戸において非常事態を示す非常信号がインターホン親器から送信されると、集中管理装置では、非常信号を送信するインターホン親器が備わった住戸を特定した警報を出力することで、管理人は即座に、この住戸を認識して、特定された住戸に向かうことができる。更に、非常信号を発信する住戸のドアの近傍に配置されるドアホン側でのランプが点灯または点滅することにより、この住戸に向かう管理人は、この住戸を容易に視認することができ、適切な救援活動を行うことができる。このように、非常事態に直面する住戸では、ドアホンから音声ではなく、光による救援を求めることができ、救援に向かう人間は光によって間違いなく住戸を確認でき、近隣の住人に騒音を与えることなく、適切な対応が可能である。
【0006】
上記の非常報知手段の一例としては、使用者によって操作される押し釦が使用され、この押し釦は押された時に上記の非常信号を発生するように構成される。
【0007】
更に、本発明のインターホンシステムでは、上記の各インターホン親器にセンサを備えることが好ましい。このセンサは、対応する住戸内の異常状態を感知して異常信号を発生し、上記の識別コードを付加してこの異常信号を上記集中管理装置及び対応する上記ドアホンに送信するように構成される。
【0008】
これに対応して、上記の集中管理装置は異常警告手段を有し、この異常警告手段は、上記の異常信号を受けた時に、異常信号を発信するインターホン親器を特定する情報を含む異常警告を出力するように構成される。更に、上記ドアホンの上記制御部は、上記の異常信号を受けた時に、上記ランプを点灯または点滅させる上記の制御信号を発生するように構成される。
【0009】
この構成により、いずれかの住戸において火災等の異常状態が発生した時に、この異常状態を検知するインターホン親器、すなわち、これを配備した住戸を特定する情報と共に、異常状態の発生が集中管理装置側に伝達される。同時に、この住戸のドアホン側で光による報知がなされるため、この住戸に駆けつける管理人が確実に異常状態にある住戸を確認できて、適切な対応を行うことができる。
【発明の効果】
【0010】
集合住宅におけるいずれかの住戸のインターホン親器から非常状態を示す非常信号が集中管理装置に送信されると、集中管理装置からは非常状態にある住戸を特定する警報が出力される一方、この住戸のドアホンからは光による報知がなされ、騒音の原因となる音声に頼ることなく、この住戸に向かう管理人によって確実に住戸が特定できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係るインターホンシステムを示す概略図。
【図2】同上のインターホンシステムに使用されるインターホン親器、ドアホンを示すブロック図。
【図3】同上のインターホンシステムに使用される集中管理装置を示すブロック図。
【図4】同上のインターホンシステムの動作を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る集合住宅用のインターホンシステムの実施形態を、図1〜3に基づいて説明する。図1に示すように、このインターホンシステムは、複数の住戸の室内にそれぞれ配備される複数のインターホン親器10と、それぞれの住戸の戸外に設置される複数のドアホン30と、複数のインターホン親器10へ接続された一つの集中管理装置50とを備える。インターホン親器10とドアホン30は配線4で通話可能に接続されている。集中管理装置50は集合住宅内の管理室に設置され、各住戸のインターホン親器10へ分岐器5を介して配線6によって接続されて、各インターホン親器10及び各ドアホン30との間で音声情報を含む情報の通信が行われる。
【0013】
このインターホンシステムは、集合住宅の共同玄関に設置されるロビーホン60を備える。ロビーホン60は、来客と各住戸の住人との間の通話に使用されるものであり、集中管理装置50を介して各インターホン親器10へ通話可能に接続される。各インターホン親器10は、ロビーホン60から呼び出しに応じて、共同玄関のドア70のロックを解除するための信号を、このドアの開閉制御部72へ送信するように構成されている。
【0014】
各インターホン親器10には、住居人によって操作される非常釦17が非常報知手段として備えられ、非常釦17は押された時に、非常信号を発生させて、これを集中管理装置50及び対応するドアホン30へ送信する。更に、各インターホン親器10には、室内に設置される少なくとも一つのセンサ24が接続される。このセンサ24は、火災やガス漏れ等の異常状態を検知するもので、例えば、煙濃度や有害ガスの濃度に基づいて火災やガス漏れ等の異常状況を判定する煙濃度センサが使用される。異常状態が検知されれば、センサは異常信号を発生させてこれを集中管理装置50及び対応するドアホン30に送信する。センサ24としては、異常信号に加えて、検知する対象を示す種別(火災・ガス漏れ)、その危険度を示す数値データを情報として送信できるインテリジェントセンサが使用され、その情報はインターホン親器10及び集中管理装置50に送信される。
【0015】
各ドアホン30は、各住戸の戸外の映像を得るカメラ33及び戸外に可視光を投射するランプ37を備える。ランプとしては例えば白色光を発するランプが使用される。
【0016】
以下、インターホン親器10、ドアホン30及び集中管理装置50の構成について、その動作と関連させて詳細に説明する。図2に示すように、インターホン親器10は、マイク11、スピーカ12、モニター13、通話処理部14、映像処理部15、使用者による情報の入力を行う操作パネル16、非常信号を発生させる非常釦17、ドアホン30との信号の送受信を行うための通信インターフェース18、メモリ19及びこれらの要素の動作を制御する制御部20を備える。制御部20は、非常釦17からの非常信号及び、通信インターフェース18を介して制御部20に接続されたセンサ24からの異常信号を処理する。
【0017】
ドアホン30は、マイク31、スピーカ32、カメラ33、通話処理部34、映像処理部35、使用者による情報の入力を行う操作パネル36、ランプ37、インターホン親器10との信号の送受信を行うための通信インターフェース38、メモリ39及びこれらの要素の動作を制御する制御部40を備える。
【0018】
ドアホン30のマイク31から得られた音声情報やカメラ33で得られる映像情報は、それぞれ、通話処理部34と映像処理部35において、制御部40からの指令に基づいて、信号処理されてインターホン親器10へ送信される。インターホン親器10では、これらの情報を制御部20の指令に基づいて、通話処理部14と映像処理部15で処理されて、スピーカ12から音声を出力し、モニター13から映像を出力する。インターホン親器10のマイク11で入力された音声情報は、同様にドアホン30の通話処理部34で処理されてスピーカ32から出力されて、住居者と来訪者との会話が成立する。
【0019】
インターホン親器10のメモリ19は、自身の識別コード、住戸番号乃至住居人の氏名が記録される。更には、対応するドアホン30の識別コード、接続されるセンサ24の識別コード乃至その種別がメモリに保持されている。一方、ドアホン30のメモリ39は、対応するインターホン親器10の識別コードが保持され、これによって、各住戸でのインターホン親器10とドアホン30との関連づけがなされる。
【0020】
集中管理装置50は、図3に示すように、マイク51、スピーカ52、ディスプレイ53、通話処理部54、警報ランプ55、管理人による情報の入力を行う操作パネル56、インターホン親器10と信号の送受信を行う通信インターフェース58と、メモリ59、及びこれらの要素の動作を制御する制御部60を備える。通話処理部54は、マイク51やスピーカ52を使用して、各インターホン親器10との間の音声通信を行うための信号処理を行うために用意される。ディスプレイ53や警報ランプ55は、いずれかのインターホン親器10から非常信号や異常信号が送信された時に、警報や異常警告を出力するために用意され、これらの信号の発信元のインターホン親器10が配備されて住戸を特定する情報、例えば、部屋番号乃至氏名をディスプレイ53に表示する。メモリ59は、集中管理装置50が管理する複数のインターホン親器10の識別コード乃至住戸番号や氏名、更には各インターホン親器10に対応するドアホン30の識別コードが保持される。操作パネル56は、メモリ59の内容を参照して、各インターホン親器10との通話を行うための入力手段として使用されることに加え、メモリ59の内容を変更するために使用される。
【0021】
図4に示すように、いずれかの住戸のインターホン親器10に備えられた非常釦17が押されて非常信号が発生すると、制御部20は、このインターホン親器10を特定する識別コードを、この非常信号に付加して、集中管理装置50に送信し、同時に、この非常信号を対応するドアホン30に送信する。この非常信号を受けると、集中管理装置50の制御部60は、警報ランプ55を点灯させると共に、非常信号に付加される識別コードから住戸乃至名前を判別して、非常信号を送信するインターホン親器10が属する住戸番号乃至氏名をディスプレイ53に表示し、特定の住戸で非常状態が発生している状況を報知して、管理人に対して適切な救援処理を促す。一方、ドアホン30は、この非常信号を受信すると、制御部40がランプ37を点灯または点滅させて、戸外に対して非常状態が発生していることを報知する。ランプ37の点灯や点滅は、インターホン親器10或いは集中管理装置での解除処理が行われる迄、継続する。
【0022】
また、同図に示すように、いずれかの住戸におけるセンサ24が火災等の異常状態を判別して異常信号へ異常状態の種別、危険度を示す異常情報を付加して、対応するインターホン親器10に送信すると、このインターホン親器10の制御部20は、異常状態の発生、その種別、危険度を知らせるメッセージを作成してスピーカ12より出力する。同時に、制御部20は、インターホン親器自身を特定する識別コードを、この異常信号と異常情報に付加して、集中管理装置50に送信し、同時に、この異常信号を対応するドアホン30に送信する。この異常信号を受けると、集中管理装置50の制御部60は、警報ランプ55を点灯させると共に、異常信号に付加される識別コードから住戸乃至名前を判別して、異常信号を送信するインターホン親器10が属する住戸番号乃至氏名をディスプレイ53に表示する。同時に伝達される異常情報から異常の種類、危険度を読み出してディスプレイに表示すると共に、スピーカ52から音声によるメッセージを出力する。これによって、特定の住戸で異常状態の発生し、その種類、危険度が集中管理装置へ報知され、管理人に対して適切な処理を促す。一方、ドアホン30は、この異常信号を受信すると、制御部40がランプ37を点灯または点滅させて、戸外に対して異常状態が発生していることを報知する。ランプ37の点灯や点滅は、インターホン親器10或いは集中管理装置での解除処理が行われる迄、継続する。
【0023】
尚、上述の実施形態においては、非常報知手段として非常釦17を使用しているが、本発明はこれのみに限定されるものではなく、非常状態を表す非常信号を発生させるその他の代替要素、例えば、マイクに入力される救援を求める音声メッセージを判別するモジュールを使用してもよい。
【0024】
更に、ランプの発光動作が、非常信号と異常信号とで、異なるよう変更することも可能である。例えば、非常信号の発生時はランプの点灯が維持され、異常信号の発生時はランプが点滅する態様、或いは、ランプの点滅動作の周波数を替える、ランプの発光色を変化させる態様が可能である。
【0025】
また、上述の実施形態においては、非常釦の押し下げによる非常状況に対応する処理に加えて、センサによる異常状態の検出に対応する処理の両方の機能を備えるインターホンシステムを開示しているが、本発明はこの実施形態に限定されるものではなく、いずれか一方の処理のみに対応する態様をも含むものである。例えば、上の実施形態から非常釦を排除して、センサを非常報知手段として代用するものも、本発明の範疇である。
【符号の説明】
【0026】
10 インターホン親器
17 非常釦
24 センサ
30 ドアホン
37 ランプ
50 集中管理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の住戸にそれぞれ備えられる複数のインターホン親器と、
上記の各インターホン親器と接続されてこれと音声通信するために各住戸の戸外に設置されるドアホンと、
各住戸の上記インターホン親器と通信する集中管理装置とを備え、
上記の各インターホン親器は、自己を特定する識別コードを有し、
上記の各インターホン親器は、住戸内での非常状態を示す非常信号を発生させ、この非常信号に上記識別コードを付加して上記集中管理装置に送信するように構成された非常報知手段を有し、
上記の集中管理装置は、上記の非常信号を受けた時に、この非常信号に付加された上記の識別コードに基づいて、上記非常信号を送信するインターホン親器を特定した警報を出力するように構成された警報手段を有し、
上記の各ドアホンは、可視光を発生するランプを備え、
上記の各ドアホンは、対応する上記インターホン親器からの上記の非常信号を受信した時に、上記ランプを点灯または点滅させる制御信号を発生するように構成された制御部を備えたことを特徴とするインターホンシステム。
【請求項2】
上記非常報知手段は、使用者によって操作された押し釦で構成され、この押し釦が押された時に上記の非常信号を発生することを特徴とする請求項1に記載のインターホンシステム。
【請求項3】
上記の各インターホン親器は、対応する住戸内の異常状態を感知して異常信号を発生し、上記の識別コードを付加した異常信号を上記集中管理装置及び対応する上記ドアホンに送信するように構成されたセンサに備え、
上記集中管理装置は、上記の異常信号を受けた時に、異常信号を発生するインターホン親器を特定する情報を含む異常警告を出力するように構成された異常警告手段を有し、
上記ドアホンの上記制御部は、上記の異常信号を受けた時に、上記ランプを点灯または点滅させる上記の制御信号を発生するように構成されたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のインターホンシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−26958(P2013−26958A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−161989(P2011−161989)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】