説明

インターホン

【課題】音漏れをできるだけ防止して、スピーカの音響性能を向上させたインターホンを提供する。
【解決手段】インターホン1は、他の機器と通信するための通信線が接続されるベース筐体1bと、音声を鳴らすスピーカ11、操作ボタン部12、映像表示部13、及びスピーカ11と操作ボタン部12と映像表示部13とを駆動させる回路を有するプリント基板が収容されるカバー筐体1aと、を備え、ベース筐体1bの前面にカバー筐体1aを固定して成り、カバー筐体1aの上下いずれか一方がベース筐体1bの上下いずれか一方に係止され、カバー筐体1aには係止される側と反対側にネジ用の貫通孔が形成され、スピーカ11は、カバー筐体1aがベース筐体1bに係止された側と近い側に配置される。このため、スピーカ11近傍の空間の密閉性が向上して、音漏れを効果的に防止し、スピーカの音響性能を向上できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内の壁に取り付けて使用されるインターホンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、図7に示すように壁に埋め込んで使用されるインターホン7が知られている(例えば、特許文献1参照)。このインターホン7は、各種の操作ボタン部71、液晶表示部72、スピーカ73やプリント基板等が収容されたカバー筐体7aと、通信線や電源が収容され壁面に埋め込まれ固定されるベース筐体7cとから成り、カバー筐体7aの四隅に設けられたネジ用の貫通孔を介してベース筐体7cにネジ止めして固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−69681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、図7に示すような従来型のインターホン7では、スピーカ73の周辺にインターホン7を壁面に取り付けるためのネジ穴74や、ネジ隠し用カバー7bや各種の操作ボタン71を固定するためのネジ穴や切り欠き74等が多数形成されている。このため、従来のインターホン7では、スピーカ73を固定される部材とそれらカバーやボタンとの間に多くの隙間が生じることが避けられず、これらの隙間から周囲に音が漏れ拡がって、スピーカ73において良好な音響性能が得られないという問題がある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、音漏れをできるだけ防止してスピーカの音響性能を向上させたインターホンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明は、他の機器と通信するための通信線が接続されるベース筐体と、映像表示部、音声を鳴らすスピーカ、操作ボタン部、及び前記映像表示部と前記スピーカと前記操作ボタン部とを駆動させる回路を有するプリント基板が収容されるカバー筐体と、を備え、前記ベース筐体の前面に前記カバー筐体を固定して成るインターホンにおいて、前記カバー筐体の上下いずれか一方が前記ベース筐体の上下いずれか一方に係止され、前記カバー筐体には前記係止される側と反対側にネジ用の貫通孔が形成され、前記スピーカは、前記カバー筐体が前記ベース筐体に係止された側と近い側に配置されることを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係るインターホンの前記カバー筐体の背面側の周縁に形成された枠部の内側面は、前記ベース筐体の正面側の周縁に形成された枠部の外側面に密着することが好ましい。
【0008】
また、本発明に係るインターホンの前記スピーカが、前記カバー筐体の上側に配置される場合、前記スピーカの上側及び左右側に前記カバー筐体の枠部、下側に前記映像表示部の上面、後側に前記プリント基板が配置されることが好ましい。
【0009】
また、本発明に係るインターホンの前記映像表示部は、前記カバー筐体の略中央に配置されることが好ましい。
【0010】
また、本発明に係るインターホンの複数の前記操作ボタン部は、前記カバー筐体の右側又は左側に並んで配置され、前記スピーカは、前記操作ボタン部の配置と反対側の前記カバー筐体の左側又は右側に配置されることが好ましい。
【0011】
また、本発明に係るインターホンの前記プリント基板の縦横方向の幅は、前記カバー筐体の縦横方向の幅と略同じであることが好ましい。
【0012】
また、本発明に係るインターホンの前記プリント基板には、機器からの情報を表示する表示部が設けられ、前記プリント基板に設けられた前記表示部と対応する位置に、底面において前記プリント基板の表面と密着する穴部が形成されることが好ましい。
【0013】
また、本発明に係るインターホンの前記カバー筐体には、前記操作ボタン部を配置する位置にボタン穴が形成され、前記操作ボタン部が押下されていない状態において、前記ボタン穴の内側面と前記操作ボタン部の外側面とが密着することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るインターホンでは、カバー筐体の上側がベース筐体の上側に係止され、カバー筐体には係止される側と反対側にネジ用の貫通孔が形成され、スピーカは、カバー筐体がベース筐体に係止された側と近い側に配置されるので、スピーカ近傍の空間の密閉性が向上して、音漏れを効果的に防止し、スピーカの音響性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(a)本発明の実施の形態に係るインターホンの斜視図、(b)同インターホンのカバー筐体を分解した斜視図、(c)同インターホンのカバー筐体とベース筐体との分解斜視図。
【図2】実施の形態に係るインターホンを用いたインターホンシステムの構成図。
【図3】(a)実施の形態に係るインターホンのスピーカ周辺の断面図、(b)映像表示部の一部断面図、(c)同インターホンの斜視図。
【図4】実施の形態に係るインターホンのスピーカ背面の空間の説明図。
【図5】(a)実施の形態に係るインターホンの斜視図、(b)同インターホンの解錠ボタン部の断面図、(c)同インターホンの操作ボタン部の断面図、(d)同インターホンのLED部分の拡大図、(e)同インターホンのLED部分の断面図。
【図6】実施の形態に係るインターホンのスピーカにおける音響性能の説明図。
【図7】(a)従来のインターホンの斜視図、(b)同インターホンのネジ隠し用カバーを取り外した状態の斜視図、(c)同インターホンのカバー筐体とベース筐体との分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態に係るインターホンについて図面を参照して説明する。
(実施の形態)
【0017】
図1に示すように、本実施の形態に係るインターホン1は、スピーカ11、操作ボタン部12、映像表示部13、これらスピーカ11と操作ボタン部12と映像表示部13とを駆動させる駆動回路を有するプリント基板等が収容されるカバー筐体1aと、他の機器から接続された複数の通信線や電源が収容されたベース筐体1bと、を備える。
【0018】
スピーカ11は、子器を介して来訪者が発した音声を住人に伝えるものであり、電気信号に従い音声を発生させる。なお、スピーカ11は、音声のみでなく警告音等も発する場合がある。
【0019】
操作ボタン部12は、例えば「解錠」、「メニュー」、「再生」、「留守」等の複数種のボタンから構成され、住人は映像表示部13の表示に応じて操作ボタン部12を押して要求する制御を行う。例えば、非常ボタン12aは、火事や事故などの万一のトラブル発生時に押され、住戸内や管理室に警報音で異常発生を知らせる。解錠ボタンは、来客応対時に点滅し、オートロックや住戸玄関電気錠を解錠するために用いられる。また、例えば、住人が来訪者の声を聞きとりにくい場合には操作ボタン部12の音量ボタンを用いて通話中に受話音量を上げて聞きとり易くできる。
【0020】
映像表示部13は、玄関の子器に備えられたカメラに写された来訪者を映すカラー液晶モニタ等である。住人は、映像表示部13に表示されている画像に基づいて来訪者を確認する。なお、映像表示部13は、玄関にいる来訪者を映す以外に、住宅用火災警報器からの信号を受けて火災警報表示等することも可能である。
【0021】
ベース筐体1bには、側壁の開口から導入される電線に結線される端子が内装されると共に、他の子器から接続される通信線が複数接続されている。
【0022】
カバー筐体1aは、正面視で略長方形状であり、背面側の周縁に枠部が形成されている。また、ベース筐体1bは正面視で略長方形状であり、正面側の周縁に枠部が形成されている。そして、図1(c)に示すように、カバー筐体1aの上枠部には、ベース筐体1bの上枠部に設けられた2箇所の係止部1dと係合する係止部1cが2箇所形成されていることを特徴とする。
【0023】
カバー筐体1aの係止部1cの反対側である下側には、ベース筐体1bに形成されたネジ穴14bに対応する箇所に、ネジ用の貫通孔14aが形成されている。また、スピーカ11は、カバー筐体1aに形成される係止部1cに近い側に配置されている。
【0024】
そして、インターホン1を壁に施工する場合には、ベース筐体1bを壁面に埋設させて固定した後、このベース筐体1bの上枠部に形成された係止部1dに、カバー筐体1aの背面側の上枠部に形成された係止部1cを係止してベース筐体1bの表面側にカバー筐体1aを仮固着する。
【0025】
次に、カバー筐体1aの下側に形成された貫通孔14aを通してベース筐体1bの下側に形成されているネジ穴14bにネジ等の止め具を貫通させドライバー等でこれを締め付けて、ベース筐体1bにカバー筐体1aを固着する。これにより、住人の生活動線を妨げないフラットでスリムなインターホン1を壁面に設置できる。
【0026】
また、図1(b)に示すように、映像表示部13は正面視でカバー筐体1aの略中央に配置される。この構成により、映像表示部13を中心に、カバー筐体1aを上下方向に分割でき、スピーカ11をカバー筐体1aの上側に配置し易くして音響性能を向上させている。
【0027】
また、図1(a)に示すように、操作ボタン部12は、カバー筐体1aの右側に並べて配置される。この構成により、操作時にユーザの手が左右に動いて映像表示部13を遮ることを防止して操作性を向上できる。また、操作ボタン部12を右側にのみ配置することにより、カバー筐体1aの左側は操作ボタン部12の固定に必要な穴やスキマを設ける必要がなくなるので、スピーカ11の近傍の空間の密閉性を向上させて音響性能を向上できる。
【0028】
図2に示すように、インターホン1は、マンション玄関ロビーや住戸玄関に設置されるカメラ付ドアホン子器2と通信線22を用いて接続される。
【0029】
そして、来訪者はドアホン子器2のボタンを押して住人を呼び出す。このドアホン子器2には高感度CCD等の撮像素子を用いたカメラ21が備えられ、住人は、カメラ21で撮像された来訪者をインターホン1の映像表示部13で確認しながらスピーカ11を介して通話を行い、解錠ボタンを押して玄関ロビーや玄関の解錠を行う。
【0030】
そして、図3(a)に示すように、インターホン1では、カバー筐体1aの背面側の周縁に設けられる枠部1eの内側面、及びベース筐体1bの表面側の周縁に設けられる枠部1fの外側面が密着して密閉性向上を図っている。
【0031】
また、図3(b)及び(c)に示すように、映像表示部13の表示面側の周縁にパッキン13aを挟むことでカバー筐体1aと映像表示部13との密閉性をより高めて音響性能の向上を図っている。
【0032】
さらに、図4に示すように、スピーカ11の背面にはプリント基板14、上側及び左右側にはカバー筐体1aの枠部、下側には映像表示部13の上面が配置され、スピーカ11の後ろの空間を密閉する構造としている。
【0033】
プリント基板14は、カバー筐体1aの背面側からネジで固定して配置され、カバー筐体1aとベース筐体1bとの空間を分離させている。この構成により、スピーカ11背面側の空間の密閉性を向上させて、ネジ穴や切り欠き、ベース筐体1bに設けられた放熱口や通信線などの入線口からスピーカ11の音が漏れるのを抑制し、音響性能を向上できる。なお、プリント基板14の縦横方向の大きさはカバー筐体1aの縦横方向の大きさに近いほど音響効果が得られる。
【0034】
次に、図5(a)から(c)に示すように、カバー筐体1aの操作ボタン部12に対応する位置には穴部15が形成され、操作ボタン部12が押下されていない状態において、この穴部15の内側面と、操作ボタン部12の外側面とが密着する。この構成により、スピーカ11背面側の空間の密閉性を高めて、音が漏れるのを抑制して音響性能を向上させている。
【0035】
さらに、図5(a)に示すように、プリント基板14には、カバー筐体1aの映像表示部13の下方に設けられた「火災、ガス、留守、警戒、戸締り」等の表示に対応する位置に複数のLED16が配置されている。そして、図5(d)及び(e)に示すように、カバー筐体1aのプリント基板14上のLED16に対応する位置に穴部17が形成され、この穴部17の底面とプリント基板14の表面とが密着する。この構成により、プリント基板14に設けられたLED16の周囲とカバー筐体1aとを密着させてスピーカ11周辺の密閉性を向上させ、音響性能を向上させている。
【0036】
図6のグラフの横軸はスピーカ11から発する音声の周波数、縦軸がスピーカ11から発せられる音の音圧を示し、本実施の形態に係るインターホン1の音響性能(曲線60)は、全周波数帯域で従来の音響性能(曲線61)より音圧特性が向上していることが分かる。
【0037】
特に、本実施の形態1に係るインターホン1の音響特性(曲線60)では、曲線61に示すような音声通話にとって重要な横軸中央付近の周波数特性の谷を軽減することができ、周波数特性が平坦化されてスピーカ11から聞こえる音声のこもり感やスカスカ感が解消され、スピーカ11の高音質化が実現できていることが分かる。
【0038】
以上の説明のように、本実施の形態にかかるインターホン1では、カバー筐体1aの上側がベース筐体1bの上側に係止され、カバー筐体1aには係止される側と反対側にネジ用の貫通孔14aが形成され、スピーカ11は、カバー筐体1aがベース筐体1bに係止された側と近い側に配置される。この構成により、スピーカ11の近傍にはネジ穴や切り欠きを設ける必要がなく、スピーカ11の周囲の空間に形成される隙間を少なくして、音が漏れることを防止してスピーカ11の音響性能を向上できる。
【0039】
なお、本発明は、上記実施の形態の構成に限られず、発明の趣旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、インターホンのカバー筐体の係止部を下側に設けスピーカを下側に配置し、ネジ用の貫通孔を上側に設けることも考えられ、操作ボタン部を左側に並べて配置することも考え得る。また、インターホンは、本図の構成のものに限られず、電気回路部品等がベース筐体に収容されたものなど、インターホン機能を有する機器全般を含む。
【符号の説明】
【0040】
1 インターホン
1a カバー筐体
1b ベース筐体
1c,1d 係止部
1e,1f 枠部
2 ドアホン子器
11 スピーカ
12 操作ボタン部
13 映像表示部
14 プリント基板
14a 貫通孔
14b ネジ穴
15,17 穴部
16 LED

【特許請求の範囲】
【請求項1】
他の機器と通信するための通信線が接続されるベース筐体と、映像表示部、音声を鳴らすスピーカ、操作ボタン部、及び前記映像表示部と前記スピーカと前記操作ボタン部とを駆動させる回路を有するプリント基板が収容されるカバー筐体と、を備え、前記ベース筐体の前面に前記カバー筐体を固定して成るインターホンにおいて、
前記カバー筐体の上下いずれか一方が前記ベース筐体の上下いずれか一方に係止され、前記カバー筐体には前記係止される側と反対側にネジ用の貫通孔が形成され、
前記スピーカは、前記カバー筐体が前記ベース筐体に係止された側と近い側に配置されることを特徴とするインターホン。
【請求項2】
前記カバー筐体の背面側の周縁に形成された枠部の内側面は、前記ベース筐体の正面側の周縁に形成された枠部の外側面に密着することを特徴とする請求項1記載のインターホン。
【請求項3】
前記スピーカが、前記カバー筐体の上側に配置される場合、前記スピーカの上側及び左右側に前記カバー筐体の枠部、下側に前記映像表示部の上面、後側に前記プリント基板が配置されることを特徴とする請求項2記載のインターホン。
【請求項4】
前記映像表示部は、前記カバー筐体の略中央に配置されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のインターホン。
【請求項5】
複数の前記操作ボタン部は、前記カバー筐体の右側又は左側に並んで配置され、
前記スピーカは、前記操作ボタン部の配置と反対側の前記カバー筐体の左側又は右側に配置されることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のインターホン。
【請求項6】
前記プリント基板の縦横方向の幅は、前記カバー筐体の縦横方向の幅と略同じであることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載のインターホン。
【請求項7】
前記プリント基板には、機器からの情報を表示する表示部が設けられ、
前記カバー筐体には、前記プリント基板に設けられた前記表示部と対応する位置に、底面において前記プリント基板の表面と密着する穴部が形成されることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載のインターホン。
【請求項8】
前記カバー筐体には、前記操作ボタン部を配置する位置にボタン穴が形成され、
前記操作ボタン部が押下されていない状態において、前記ボタン穴の内側面と前記操作ボタン部の外側面とが密着することを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載のインターホン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−228991(P2011−228991A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−97741(P2010−97741)
【出願日】平成22年4月21日(2010.4.21)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】