説明

インテリジェント伝送器とそのソフトウェア更新方法

【課題】 マスター部及びスレーブ部からなるインテリジェント伝送器において、作業者のリスクを低減し、安全確保及び交換作業に要するコストを削減することのできるインテリジェント伝送器を提供することを目的とする。
【解決手段】 マスターメモリ313上のバージョンアップデータのバージョンとスレーブメモリ224上のソフトウェアのバージョン情報が不一致の場合にバージョンアップデータがスレーブ部側に転送され、スレーブメモリ224上のソフトウェアが書き換えられる。マスターメモリ313上のバージョンアップデータを更新することで、スレーブ部2のハードウェアを交換せずにスレーブ部2のソフトウェアを更新できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプロセス量を計測するためのインテリジェント伝送器のソフトウェアの更新方法に関し、特にマスター部とスレーブ部を備えたインテリジェント伝送器におけるスレーブ部のソフトウェアの更新方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図8は従来のインテリジェント伝送器の一例を示す説明図である。インテリジェント伝送器はマスター部73とスレーブ部72のセットから構成され、共にCPUとそれを制御するためのソフトウェアが載ったアンプ(回路基板)を持つ。マスター部73は上位システム76と2線式ループ75を介して接続されて上位システム76とデータ通信を行うとともに、上位システム76からインテリジェント伝送器を駆動するための電力を得るパスパワード形である。スレーブ部72はマスター部73とケーブル74を介して接続し、マスター部73とデータ通信を行うとともに、マスター部73からスレーブ部72を駆動するための電力を得るパスパワード形である。スレーブ部72はプロセス流体の圧力や温度などのプロセス量をセンサで計測し、マスター部73はこのプロセス変量をケーブル74を介して取得し、LCD等からなる表示器77に表示するとともに2線式ループ75を介して上位システム76に伝送する。
【0003】
上記のようなインテリジェント伝送器に関連する先行技術文献としては次のようなものがある。
【0004】
【特許文献1】特開2002−215566号公報
【特許文献2】特開2005−227920号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、プロセスオートメーションの分野では伝送器の高機能化が進み、プラントの分散制御を目的として従来DCSの持っていた通信制御・プロセス制御などの各種機能を伝送器が持つようになってきた。それに伴い、伝送器側のソフトウェアもバグ修正や機能追加によるバージョンアップが頻繁に行われるようになった。
【0006】
伝送器ソフトウェアのバージョンアップは、現状ではハードウェアの交換が主流である。Foundation Fieldbus のようにネットワークを介して伝送器のソフトウェアをバージョンアップする手法(ドメインダウンロード)が標準化されているが、伝送器内の複数のCPUに対するバージョンアップについては規定がなく、実施例もない。したがって、図8のような構成を持つ製品のスレーブ部72のバージョンアップには、ハードウェア(例:本体、アンプ)の交換が必要とされる。
【0007】
しかしながら、図8のような構成の製品はその特徴から計測地点が作業員の立ち入りにくい場所(閉所・狭所・高所・危険エリア 等)にあるような場面で使われることが多い。この場合、計測地点にスレーブを設置し、作業員のアクセスし易い場所にマスターを設置することにより、作業員が計測地点に行かずともマスターの表示器で計測結果を確認できるようにする。
【0008】
そのため、スレーブ側のバージョンアップ(交換作業)には、プラント停止、安全装備(耐熱服、防毒マスク、落下防止装置・・・) 等の十分な安全確保が必要となり、容易に実施できないといった問題が生じる。
【0009】
本発明はこのような課題を解決しようとするもので、マスター部及びスレーブ部からなるインテリジェント伝送器において、ハードウェアの交換なしにスレーブ部のソフトウェアをバージョンアップできるようにすることにより、作業者のリスクを低減し、安全確保及び交換作業に要するコストを削減することのできるインテリジェント伝送器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような課題を達成するために、本発明のうち請求項1記載の発明は、
上位システムから第1の通信ラインを介して電源が供給されるマスター部と、
該マスター部から第2の通信ラインを介して電源が供給され、ソフトウェアにしたがって、計測したプロセス変量を前記第2の通信ラインを介して前記マスター部に送信するスレーブ部と
を備えたインテリジェント伝送器において、
前記マスター部は
前記ソフトウェアのバージョンアップデータを記憶する第1のメモリを備え、
前記スレーブ部は
前記ソフトウェアとそのバージョンを記憶する書込可能な第2のメモリを備える
ことを特徴とする。
【0011】
請求項2記載の発明は、
請求項1記載の発明であるインテリジェント伝送器において、
前記マスター部は前記スレーブ部から送信される前記ソフトウェアのバージョン情報と前記バージョンアップデータのバージョン情報とを比較し、
前記スレーブ部は前記バージョン情報が一致しないとき前記マスター部から送信された前記バージョンアップデータに基づいて前記第2のメモリの前記ソフトウェアを書き換える
ことを特徴とする。
【0012】
請求項3記載の発明は、
請求項1又は請求項2記載の発明であるインテリジェント伝送器において、
前記マスター部は前記第1の通信ラインを介して前記バージョンアップデータを前記上位システムから受信することを特徴とする。
【0013】
請求項4記載の発明は、
請求項1乃至請求項3記載の発明であるインテリジェント伝送器において、
前記マスター部はバージョンアップ中の進捗情報を表示器及び前記上位システムに出力することを特徴とする。
【0014】
請求項5記載の発明は、
請求項1乃至請求項4記載の発明であるインテリジェント伝送器において、
前記マスター部はバージョンアップ後に前記第2のメモリにおける前記ソフトウェアの記憶内容を前記バージョンアップデータと照合することを特徴とする。
【0015】
請求項6記載の発明は、
請求項5記載の発明であるインテリジェント伝送器において、
照合結果が不一致の場合に前記ソフトウェアのデータを修復することを特徴とする。
【0016】
請求項7記載の発明は、
請求項1乃至請求項6記載の発明であるインテリジェント伝送器において、
前記マスター部と前記スレーブ部はコネクタで接続され、同一の伝送器ケースに収納されることを特徴とする。
【0017】
請求項8記載の発明は、
請求項1乃至請求項6記載の発明であるインテリジェント伝送器において、
複数の前記スレーブ部と、
該複数のスレーブ部をそれぞれ前記マスター部に接続する複数の前記第2の通信ラインとを備え、
前記バージョンアップデータは前記スレーブ部ごとに識別情報を有し、該識別情報にしたがってそれぞれの前記スレーブ部の前記ソフトウェアを更新することを特徴とする。
【0018】
請求項9記載の発明は、
マスター部は上位システムから第1の通信ラインを介して電源が供給され、
スレーブ部は前記マスター部から第2の通信ラインを介して電源が供給され、ソフトウェアにしたがって、計測したプロセス変量を前記第2の通信ラインを介して前記マスター部に送信する
インテリジェント伝送器のソフトウェア更新方法において、
前記マスター部は
前記ソフトウェアのバージョンアップデータを第1のメモリに記憶し、
前記スレーブ部は
前記ソフトウェアとそのバージョンを書込可能な第2のメモリに記憶する
ことを特徴とする。
【0019】
請求項10記載の発明は、
請求項9記載の発明であるインテリジェント伝送器のソフトウェア更新方法において、
前記マスター部は前記スレーブ部から送信される前記ソフトウェアのバージョン情報とバージョンアップデータのバージョン情報とを比較し、
前記スレーブ部は前記バージョン情報が一致しないとき前記マスター部から送信された前記バージョンアップデータに基づいて前記ソフトウェアを書き換える
ことを特徴とする
【0020】
請求項11記載の発明は、
請求項9又は請求項10記載の発明であるインテリジェント伝送器のソフトウェア更新方法において、
前記マスター部は前記第1の通信ラインを介して前記バージョンアップデータを前記上位システムから受信することを特徴とする。
【0021】
請求項12記載の発明は、
請求項9乃至請求項11記載の発明であるインテリジェント伝送器のソフトウェア更新方法において、
前記マスター部はバージョンアップ中の進捗情報を表示器及び前記上位システムに出力することを特徴とする。
【0022】
請求項13記載の発明は、
請求項9乃至請求項12記載の発明であるインテリジェント伝送器のソフトウェア更新方法において、
前記マスター部はバージョンアップ後に前記ソフトウェアの記憶内容を前記バージョンアップデータと照合することを特徴とする。
【0023】
請求項14記載の発明は、
請求項13記載のインテリジェント伝送器のソフトウェア更新方法において、
照合結果が不一致の場合に前記ソフトウェアのデータを修復することを特徴とする。
【0024】
請求項14記載の発明は、
請求項9乃至請求項14記載のインテリジェント伝送器のソフトウェア更新方法において、
前記バージョンアップデータは前記スレーブ部ごとに識別情報を有し、該識別情報にしたがって複数の前記スレーブ部の前記ソフトウェアを更新することを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
以上述べたように、本発明によれば、マスター部のメモリに持たせたバージョンアップデータをスレーブ部に転送し、スレーブ部のメモリを書き換えることにより、スレーブ部のハードウェアを交換せずにソフトウェアのバージョンアップが可能となり、作業者のリスクを低減し、安全確保及び交換作業に要するコストの削減が可能なインテリジェント伝送器を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下本発明につき図面を用いて詳細に説明する。
図1は本発明に係るインテリジェント伝送器の一実施例を示す構成ブロック図である。
インテリジェント伝送器1は図8の従来例と同様、別々のケースに分離されたスレーブ部2及びマスター部3のセットから構成される。スレーブ部2はCPUとそれを制御するためのソフトウェアが載ったアンプ(回路基板)を持ち、マスター部3はCPUとそれを制御するためのソフトウェア及びスレーブ2のCPUを制御するためのソフトウェアのバージョンアップデータが載ったアンプ(回路基板)を持つ。マスター部3は上位システム6と第1の通信ラインである2線式ループ5を介して接続されて上位システム6とデータ通信を行うとともに、上位システム6からインテリジェント伝送器1を駆動するための電力を得るパスパワード形である。スレーブ部2はマスター部3と第2の通信ラインであるデータバス4を介して接続し、マスター部3とデータ通信を行うとともに、マスター部3からスレーブ部2を駆動するための電力を得るパスパワード形である。スレーブ部2はプロセス流体の圧力をセンサで計測し、マスター部3はこのプロセス変量をデータバス4を介して取得し、表示器に表示するとともに2線式ループ5を介して上位システム6に伝送する。
【0027】
スレーブ部2において、センサモジュール21はプロセス流体の圧力を検出し、アンプモジュール22はセンサモジュール21で検出した信号をディジタルデータに変換し、演算処理し、マスター部3とのデータ通信を行う。
【0028】
センサモジュール21において、センサドライバ212は振動式圧力センサ211内の振動子を励振し、圧力に応じて変化する振動子の振動周波数を電気信号として取り出し出力する。不揮発性メモリ213には個々のセンサのバラツキを補正するためのデータが格納される。この補正により、センサモジュールとアンプモジュールは互いに独立性を持ち、センサモジュールとアンプモジュールを組み替えても常に同じ結果が得られる。
【0029】
アンプモジュール22(スレーブアンプともいう)において、周波数カウンタ221、第2のメモリ224(スレーブメモリともいう。第1のメモリについては後述)及び通信ドライバ223はCPUバスを介してCPU222に接続する。センサドライバ212から出力された電気信号は周波数カウンタ221で計数されて周波数情報に変換され、CPU222で演算処理された後、圧力情報となる。メモリ224はフラッシュROMやEPROMなどの書込可能なメモリで、不揮発性メモリ213から読み出したセンサ個々のデータを用いた補正演算処理等、CPU222の動作を制御するソフトウェア及びそのバージョン情報を記憶する。
【0030】
マスター部3において、アンプモジュール31はスレーブ部2及び上位システム6とのデータ通信、スレーブ部2から受信した測定データの送信、表示等の外にスレーブ部2のソフトウェアの更新処理を行い、表示器モジュール32はアンプモジュール31から送られるデータに基づいて測定プロセス量等を表示する他、バージョンアップの進捗情報を表示する。
【0031】
アンプモジュール31(マスターアンプともいう)において、通信ドライバ311、第1のメモリ313(マスターメモリともいう)及び変換部314はCPUバスを介してCPU312に接続する。通信ドライバ311はデータバス4を介して通信ドライバ223と接続し、相互にデータの送受信を行う。変換部314はCPU312から出力されるディジタルデータを4−20mA等の伝送信号に変換して2線式ループ5に出力する。メモリ313はCPU312を制御するためのソフトウェアとともにスレーブ部2のソフトウェアのバージョンアップデータを記憶する書込可能のメモリである。ここで、バージョンアップデータとはバージョンアップに必要な情報を集めたデータのことをいい、バージョンアップデータのバージョン、ソフトウェアデータ、ソフトウェアデータの書込先アドレスとサイズの情報を含む。
【0032】
表示器モジュール32において、表示器ドライバ321はCPU312からCPUバスを介して出力される表示データに基づいてLCD等からなる表示器322を駆動し、測定プロセス量やバージョンアップの進捗情報などを表示する。
【0033】
図1の装置のバージョンアップ動作を図2のフローを用いて以下に説明する。
1)マスター部3の起動又は上位システム6からの命令実行により(ステップ701)、マスター部3からスレーブ部2にソフトウェアのバージョン情報を要求する(ステップ702)。
2)スレーブ部2はマスター部3からのソフトウェアのバージョン情報の要求に応じてバージョン情報をマスター部3に転送する(ステップ703)。
3)マスター部3はバージョンアップの要/不要を判定する(ステップ704)。
スレーブ部2から取得したバージョン情報とバージョンアップデータのバージョンが同一でない場合にバージョンアップが必要と判断し、バージョンアップモードに遷移する(ステップ706)。両バージョンが同一の場合は不要と判断し、通常の運転モードとなり、インテリジェント伝送器1はプロセス変量の計測、出力を行う(ステップ705)。
4)バージョンアップモードへの遷移(ステップ706)
マスター部3はスレーブ部2に〔バージョンアップモードへの遷移〕を要求し、自らもバージョンアップモードへ遷移し、その旨のメッセージを表示器322に表示する。ここで、バージョンアップモードとはバージョンアップを行うためのモードで、バージョンアップ時はフラッシュメモリ等の書き換えにより、製品の規格より大きな電流を必要とすることがあるので、このモードに入っている間は以下a)〜d)の消費電流対策を行う。
a)出力電流を大きくして供給電流を増やす。例えば、4−20mA機器の場合、供給電流は出力電流の大きさで決まる。
b)CPUクロック周波数を低下することにより消費電流を減らし、その分をフラッシュメモリの書き換えに回す。
c)バージョンアップに不要な周辺機器(機能)を停止することにより、消費電流を減らし、その分をフラッシュメモリの書き換えに回す。
d)フラッシュメモリの書き換えを細切れに行うことにより、最大消費電流を下げる方法で、例えば特開2005−227920号公報に開示された方法を用いる。
5)スレーブ部2は〔バージョンアップモードへの遷移〕を要求されると、バージョンアップモードへ遷移する(ステップ707)。4)と同様の消費電流対策を行うとともにデータ保存準備を実施する。
6)マスター部3はメモリ313からスレーブ部2へバージョンアップデータを転送する(ステップ708)。全てのバージョンアップデータが転送し終わるまで繰り返す。
7)スレーブ部2はマスター部3からバージョンアップデータを受信し、同データ内のアドレスに相当するメモリ224のメモリ領域に前記データ内のサイズ分のソフトウェアデータを書き込む(ステップ709)。図3はこのときのデータのイメージを示す動作説明図である。
8)マスター部3はバージョンアップを完了する(ステップ710)。
マスター部3からスレーブ部2にCPUリセットを要求し、マスター部3もCPUリセットを行う。
9)スレーブ部2はCPUリセットを要求されると、それを実行する(ステップ711)。
CPUリセット後、スレーブ部2はバージョンアップ後のソフトウェアで動作する。
【0034】
図2のフローの図1の装置における主要動作を以下に示す。
ステップ703、704(ソフトウェアのバージョン情報の取得と比較):メモリ224に記憶されたスレーブ部2のソフトウェアのバージョン情報はCPU222に読み出され、通信ドライバ223及びデータバス4を介して通信ドライバ311に送信され、メモリ313から読み出されたバージョンアップデータのバージョン情報とCPU312により比較される。
【0035】
ステップ705(通常の運転モード):
センサドライバ212から出力された周波数信号は周波数カウンタ221で周波数情報に変換される。この周波数情報は、メモリ224内のソフトウェアにしたがって、CPU222において不揮発メモリ213の読み出しデータを用いる補正演算等が行われ、圧力情報となる。この測定圧力データは通信ドライバ223、データバス4及び通信ドライバ311を介してCPU312に送られる。CPU312はメモリ313内のソフトウェアにしたがって、測定圧力データを変換器314及び2線式ループ5を介して上位システム6に送信するとともに、表示データとして表示器モジュール32に出力する。
【0036】
ステップ708、709(バージョンアップデータのメモリ224への転送と書き込み):メモリ313内のバージョンアップデータはCPU312により読み出され、通信ドライバ311からデータバス4を経由して通信ドライバ223に送信され、CPU222によりメモリ224に書き込まれる。
【0037】
また、進捗データ表示、ソフトウェア更新データのダウンロードは次のように行われる。
進捗データの表示:メモリ313に記憶されたソフトウェアに基づくバージョンアップ動作の進展に伴って進捗情報データがCPU312から表示器ドライバ321に出力される。
バージョンアップデータのダウンロード:バージョンアップデータは上位システム6から2線式ループ5を介して送信され、変換器314で信号変換された後、CPU312を経由してメモリ313に格納される。
【0038】
上記のような構成のインテリジェント伝送器によれば、マスター部3のメモリ313に持たせたバージョンアップデータを更新することにより、スレーブ部2のハードウェアを交換せずにスレーブ部2のソフトウェアのバージョンアップが可能となる。したがって、作業員が立ち入りにくい場所に行かなくても計測結果を確認することができるようになる。この結果、作業者のリスクが低減し、安全確保及び交換作業に要するコストの削減が可能となる。
【0039】
なお、上記の実施例ではセンサモジュールにおいて振動式圧力センサを用いたが、これに限らず、他の方式の圧力センサや温度、流量その他の各種のプロセス量センサの場合に適用することができる。
【0040】
また、上記の実施例ではマスター部3のメモリ313のバージョンアップデータの更新はFoundation Fieldbus で標準化されているドメインダウンロード等を用いてネットワーク経由で行ったが、アンプ交換等のハードウェア交換によって行ってもよい。
【0041】
また、バージョンアップは新しいバージョンに更新する場合だけでなく、古いバージョンに戻す場合も含む。
【0042】
また、上記の実施例ではスレーブメモリ224上のソフトウェアを書き換える場合を示したが、メモリ224に余裕がある場合は別の領域に書き込むようにしてもよい。この場合は古いバージョンへ簡単に戻すことができる。
【0043】
また、上記の実施例ではマスター部3においてバージョンアップデータとCPU312制御用ソフトウェアを同一のメモリ313に格納したが、バージョンアップデータを別のメモリに格納してもよい。バージョンアップデータ更新の際にそのメモリのみを交換すれば、交換コストを下げることができる。
【0044】
また、上記の実施例ではマスター部3の起動や上位システム6からの命令実行をバージョンアップ開始のトリガとしたが、機器に次のような設定情報を持たせてバージョンアップ開始のトリガを自由に選択できるようにしてもよい。
1)起動時にバージョンアップを開始
2)上位システムからの命令(通信)によりバージョンアップを開始
3)指定した時刻になったらバージョンアップを開始
【0045】
また、バージョンアップの進捗情報として、%、バーグラフ、データ照合中、データ照合完了、照合エラー発生、データ修復中 等をマスター部3の表示器に表示し、2線式ループ5を介して上位システムに出力してもよい:
【0046】
また、バージョンアップを拒否する機能をもたせてもよい。バージョンアップは、ソフトウェアだけでなく、ハードウェアにも施されることがある。この場合、古いハードウェア上では新しいハードウェア用のソフトウェアが正常に動作しないという問題があり、これを回避するため、ハードウェアがサポートしていないバージョンアップは拒否する必要がある。このため、例えば、マスター部とスレーブ部それぞれにハードウェアバージョンを割り当てて、その情報をそれぞれのメモリに持たせ、バージョンアップデータには、対応しているハードウェアのバージョン情報を持たせる。その結果、バージョンアップ時に、バージョンアップデータが対象とするハードウェアのバージョンを機器のハードウェアバージョンと比較し、対象外である場合はバージョンアップを拒否することができる。
【0047】
また、バージョンアップデータのデータ構造は様々にとることができる。例えば、予めデータサイズを固定しておけばアドレスとデータのみの構成とすることができ、書込先アドレスを予め決めておけばバージョンアップデータとサイズのみの構成とすることができる。
【0048】
また、バージョンアップの種類は様々に選ぶことができる。例えば、スレーブ部におけるメモリ224の書き換え動作として、部分的な書き換え(パッチを当てるイメージで部分的にソフトウェアを書き換える)や全書き換え(ソフトウェアの格納領域を複数持ち、バージョンアップ後に領域を切り換える)を行うことができる。
【0049】
また、上記の実施例や変形例では上位システムとの接続に2線式ループを用いる2線式伝送器の場合を示しているが、プロセスオートメーション分野で用いられる3線式伝送器や4線式伝送器にも適用することができる。
【0050】
図4は図1のインテリジェント伝送器の一変形例で、より一般的な伝送器の形態を示す構成説明図である。伝送器ケース11内にマスターアンプ31とスレーブアンプ22が配設され、両者をコネクタ41が接続してデータバス4を形成する。マスターアンプ31は2線式ループ5を介して上位システム6と接続する。
【0051】
図4の構成で示したように、一般的な伝送器の形態であっても、マスター/スレーブの内部構成を持っていれば本発明を適用することができる。この場合、ケースが1つで済み、データバス4を構成するケーブルが不要なので、検出信号中のノイズの減少とコストダウンを図ることができる。
【0052】
図5は図1のインテリジェント伝送器の第2の変形例で、スレーブ部2が複数である場合を示す構成説明図である。第1のスレーブ部121及び第2のスレーブ部122はそれぞれデータバス用ケーブル401、402を介してマスター部13と接続し、マスター部13は2線式ループ5を介して上位システム6と接続する。この場合は、バージョンアップデータにスレーブ部121用、スレーブ部122用の識別情報を持たせ、前述の手順によりそれぞれのソフトウェアを更新する。
【0053】
図5のような構成のインテリジェント伝送器によれば、多変量を検出する場合等に複数のスレーブ部で1つのマスター部を共用することができるので、コストダウンを図ることができる。
【0054】
なお、上記の変形例ではスレーブ部が2つの場合を示したが、3以上の任意の複数の場合について適用することができる。
【0055】
図6は図1のインテリジェント伝送器の第3の変形例で、バージョンアップ成功の確認と失敗時の修復を行うものを示す動作説明図である。バージョンアップが成功したことを確認するため、マスター部3とスレーブ部2間でソフトウェアデータの照合を行うもので、マスター部3のバージョンアップデータとスレーブ部2のメモリ224の記憶内容(アドレス・サイズ・データ)が一致することを確認する。図6のスレーブメモリのアドレス(4)のように一致しない場合は再度バージョンアップデータをマスター部からスレーブ部へ転送してデータの修復を試みる。修復後に再度初めから照合を行い、完全に一致するまで繰り返す。数回繰り返しても不一致がなくならない場合は、バージョンアップ失敗として伝送器内のステータスを立てることもできる。上記の動作は、図1の装置において、例えばバージョンアップデータの各アドレスに対応するメモリ224内のデータをマスター3側に転送し、CPU312において、そのサイズ及びデータをバージョンアップデータのそれと比較することにより実現することができる。
【0056】
なお、図7は図1のインテリジェント伝送器の第4の変形例を示す動作説明図である。図6では照合は全てのデータを対象としたが、図7に示すように領域を適当なブロックに分け、その領域のSUM値同士を照合してもよい。ここでSUM値とは、その領域のソフトウェアデータの総和であり、ソフトウェアデータに誤りがあれば総和値に相違が生じることを利用している。この結果、転送するデータが減るので、高速に処理することができる。この場合は図1の装置において、例えばスレーブ側のCPU222で予め所定の領域のデータの和を算出した上でマスター側に転送し、マスター側のCPU312で比較すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明に係るインテリジェント伝送器の一実施例を示す構成ブロック図である。
【図2】図1の装置のバージョンアップ動作を示すフローである。
【図3】バージョンアップ時のデータのイメージを示す動作説明図である。
【図4】図1のインテリジェント伝送器の第1の変形例を示す構成説明図である。
【図5】図1のインテリジェント伝送器の第2の変形例を示す構成説明図である。
【図6】図1のインテリジェント伝送器の第3の変形例を示す動作説明図である。
【図7】図1のインテリジェント伝送器の第4の変形例を示す動作説明図である。
【図8】従来のインテリジェント伝送器の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0058】
1 インテリジェント伝送器
2,121,122 スレーブ部
3,13 マスター部
4,401,402 第2の通信ライン
5 第1の通信ライン
6 上位システム
11 伝送器ケース
41 コネクタ
224 第2のメモリ
313 第1のメモリ
322 表示器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上位システムから第1の通信ラインを介して電源が供給されるマスター部と、
該マスター部から第2の通信ラインを介して電源が供給され、ソフトウェアにしたがって、計測したプロセス変量を前記第2の通信ラインを介して前記マスター部に送信するスレーブ部とを備えたインテリジェント伝送器において、
前記マスター部は
前記ソフトウェアのバージョンアップデータを記憶する第1のメモリを備え、
前記スレーブ部は
前記ソフトウェアとそのバージョンを記憶する書込可能な第2のメモリを備える
ことを特徴とするインテリジェント伝送器。
【請求項2】
前記マスター部は前記スレーブ部から送信される前記ソフトウェアのバージョン情報と前記バージョンアップデータのバージョン情報とを比較し、
前記スレーブ部は前記バージョン情報が一致しないとき前記マスター部から送信された前記バージョンアップデータに基づいて前記第2のメモリの前記ソフトウェアを書き換える
ことを特徴とする請求項1記載のインテリジェント伝送器。
【請求項3】
前記マスター部は前記第1の通信ラインを介して前記バージョンアップデータを前記上位システムから受信することを特徴とする請求項1又は請求項2記載のインテリジェント伝送器。
【請求項4】
前記マスター部はバージョンアップ中の進捗情報を表示器及び前記上位システムに出力することを特徴とする請求項1乃至請求項3記載のインテリジェント伝送器。
【請求項5】
前記マスター部はバージョンアップ後に前記第2のメモリにおける前記ソフトウェアの記憶内容を前記バージョンアップデータと照合することを特徴とする請求項1乃至請求項4記載のインテリジェント伝送器。
【請求項6】
照合結果が不一致の場合に前記ソフトウェアのデータを修復することを特徴とする請求項5記載のインテリジェント伝送器。
【請求項7】
前記マスター部と前記スレーブ部はコネクタで接続され、同一の伝送器ケースに収納されることを特徴とする請求項1乃至請求項6記載のインテリジェント伝送器。
【請求項8】
複数の前記スレーブ部と、
該複数のスレーブ部をそれぞれ前記マスター部に接続する複数の前記第2の通信ラインとを備え、
前記バージョンアップデータは前記スレーブ部ごとに識別情報を有し、該識別情報にしたがってそれぞれの前記スレーブ部の前記ソフトウェアを更新することを特徴とする請求項1乃至請求項6記載のインテリジェント伝送器。
【請求項9】
マスター部は上位システムから第1の通信ラインを介して電源が供給され、
スレーブ部は前記マスター部から第2の通信ラインを介して電源が供給され、ソフトウェアにしたがって、計測したプロセス変量を前記第2の通信ラインを介して前記マスター部に送信する
インテリジェント伝送器のソフトウェア更新方法において、
前記マスター部は
前記ソフトウェアのバージョンアップデータを第1のメモリに記憶し、
前記スレーブ部は
前記ソフトウェアとそのバージョンを書込可能な第2のメモリに記憶する
ことを特徴とするインテリジェント伝送器のソフトウェア更新方法。
【請求項10】
前記マスター部は前記スレーブ部から送信される前記ソフトウェアのバージョン情報とバージョンアップデータのバージョン情報とを比較し、
前記スレーブ部は前記バージョン情報が一致しないとき前記マスター部から送信された前記バージョンアップデータに基づいて前記ソフトウェアを書き換える
ことを特徴とする請求項9記載のインテリジェント伝送器のソフトウェア更新方法。
【請求項11】
前記マスター部は前記第1の通信ラインを介して前記バージョンアップデータを前記上位システムから受信することを特徴とする請求項9又は請求項10記載のインテリジェント伝送器のソフトウェア更新方法。
【請求項12】
前記マスター部はバージョンアップ中の進捗情報を表示器及び前記上位システムに出力することを特徴とする請求項9乃至請求項11記載のインテリジェント伝送器のソフトウェア更新方法。
【請求項13】
前記マスター部はバージョンアップ後に前記ソフトウェアの記憶内容を前記バージョンアップデータと照合することを特徴とする請求項9乃至請求項12記載のインテリジェント伝送器のソフトウェア更新方法。
【請求項14】
照合結果が不一致の場合に前記ソフトウェアのデータを修復することを特徴とする請求項13記載のインテリジェント伝送器のソフトウェア更新方法。
【請求項15】
前記バージョンアップデータは前記スレーブ部ごとに識別情報を有し、該識別情報にしたがって複数の前記スレーブ部の前記ソフトウェアを更新することを特徴とする請求項9乃至請求項14記載のインテリジェント伝送器のソフトウェア更新方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−102668(P2008−102668A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−283575(P2006−283575)
【出願日】平成18年10月18日(2006.10.18)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】