説明

インドールアミン2,3−ジオキシゲナーゼ(IDO)阻害剤

インドールアミン2,3−ジオキシゲナーゼ(IDO)の阻害剤を提供する。さらに、そのような阻害剤を含む医薬組成物、ならびにIDOが介在するトリプトファン代謝経路の病変により特徴づけられる哺乳類被験体における症状の治療のためのそのような阻害剤および組成物の使用も提供する。そのような症状は、T細胞性免疫応答の抑制を伴うか、あるいはトリプトファンの枯渇またはトリプトファン分解産物の蓄積が直接の原因となって起こる。特定の病状には、白内障、加齢に伴う眼の黄変、神経変性疾患、気分障害、癌および種々の細菌/ウイルス感染症が含まれる。本発明のIDO阻害剤は置換ナフタレンおよびアントラセンジオンである。本発明の新規化合物には、タウリン置換ナフトキノン構造が含まれる。

【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
インドールアミン2,3−ジオキシゲナーゼ(IDO;分子量48,000;EC 1.13.11.42)は、ヘム含有酵素であり、この酵素は哺乳類トリプトファン代謝における最初の酵素であり、律速酵素である。IDOは、必須アミノ酸であるトリプトファンの二酸素によるN−ホルミルキヌレニンへの酸化を触媒し、ヒト体内でのトリプトファンの処理に関与する。IDOは、ヘム含有酵素の一般的な阻害剤によって非特異的に阻害されることが分かっている。また、1−メチル−L−トリプトファン(1MT)やβ−(3−ベンゾフラニル)−DL−アラニンなどの特定のトリプトファン(基質)類似体も、IDOの競合的阻害剤である(Sono, M. and Cady, S.G. (1989) Biochemistry 28:5392;およびCady, S.G. & Sono, M. (1991) Arch. Biochem. Biophys. 291:326-333)。
【0002】
インターフェロンγは、いくつかある強力なIDO発現インデューサーのうちの1つである。高濃度のインターフェロンγによる刺激によって引き起こされる免疫活性化が持続する間、遊離した血清トリプトファンの利用可能性はIDOによって低下する。結果として、セロトニン生産も減少する。これらの変化は、キノリン酸(これもまたIDOによって誘導される)などの神経活性キヌレニン代謝産物の蓄積とともに起こり、神経/精神障害の発生の原因となり、いくつかの気分障害、ならびにIDO活性化およびトリプトファン分解を特徴とする慢性疾患(エイズ(AIDS)、アルツハイマー病、数種類の鬱病および癌など)における関連症状の一因である(Wirleitner, Curr. Med. Chem. 10, 1581-91 (2003))。
【0003】
IDO活性は、加齢性核性白内障の発生にも関与している。IDOは、眼の水晶体でのUVフィルター生合成における最初の酵素で、律速酵素である。トリプトファン分解により得られるUVフィルター化合物(キヌレニンおよび3−ヒドロキシルキヌレニングルコシド)は、ヒト水晶体に存在するタンパク質を改変する。これらのUVフィルター付加物の量は加齢に伴って増加し、このようなUVフィルター付加物は、加齢性核性白内障として知られている水晶体の漸進的な混濁化に関与することが報告されている(Takikawa et al., Adv. Exp. Med. Biol. 467, 241 (1999))。IDO阻害剤はこの自然過程を阻止する(Takikawa et al, Exp. Eye Res. 72, 271 (2001))。
【0004】
IDO発現は、局所Tリンパ球増殖を阻止することにより免疫応答の抑制にも関与している。Tリンパ球は、トリプトファン欠乏に極めて敏感であり、トリプトファン枯渇条件下では細胞周期をG1期で停止させる。T細胞性免疫応答のそのような抑制は、自己免疫疾患、同種拒絶反応、神経変性疾患、鬱病、細菌感染症、ウイルス感染症(ヒト免疫不全ウイルス(HIV)など)および癌を含む多くの疾患の一因である(Swanson et al., Am. J. Respir. Cell Mol. Biol. 30, 311 (2003);Sarkhosh et al., J. Cell. Biochem. 90, 206 (2003);Mellor et al., J. Immunol. 171, (2003);およびWirleitner et al. Current Medicinal Chemistry, 10, 1581-1591 (2003))。IDO阻害剤は、T細胞性免疫応答の調節に有用である(米国特許第6,482,416号、米国特許第6,451,840号およびMunn et al. 米国特許出願公開第2004/0234623号)。また、胎盤におけるIDO活性は、IDO阻害剤である1−メチル−L−トリプトファン(1MT)の投与による胎児拒絶反応などの胎児の同種拒絶反応の予防において重要である。
【0005】
大部分のヒト腫瘍は、IDOを構成的に(constituitively)発現することが分かり、予備免疫したマウスのマウス腫瘍細胞が、IDOの発現;すなわち、1MTの投与によって無効になる影響、によってそれら自体を拒絶反応から保護することが証明された。よって、癌治療の有効性はIDO阻害剤の同時投与することにより向上するであろう。(Uyttenhove et al, Nat. Med. 9, 1269-1274 (2003); Prendergast et al. 国際公開第2004/094409号および国際公開第2004/093871号;ならびにMunn et al. 米国特許出願公開第2004/0234623号)。
【0006】
IDO阻害剤は、気分障害の抑制にも、IDOが介在するトリプトファン代謝経路の病変により特徴づけられるその他の疾患(ウイルス感染症(AIDSなど)、細菌感染症(ライム病および連鎖球菌感染症など)、神経変性疾患(例えば、アルツハイマー病、ハンチントン病およびパーキンソン病)、鬱病、癌(T細胞性白血病および結腸癌など)、眼の症状(例えば、白内障および加齢に伴う黄変)ならびに自己免疫疾患を含む)の治療にも有用であろう。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、一つには、種々のジオン置換ナフタレンおよびアントラセンジオンがIDO阻害剤として働き、多くの場合において、そのような阻害が非競合的であるという発見に基づくものである。そのような化合物はこれまでIDO阻害剤としては知られていなかったが、一部の化合物ではin vitroにおける特定の細胞傷害活性または抗生物質活性について指摘されていた。そのような化合物の作用機序はすぐに判明し、今やそのような化合物は、IDOが介在するトリプトファン代謝経路の病変により特徴づけられる哺乳類被験体における疾患のin vivo治療または予防に有用であることが知られている。こうして、これらの化合物は、現在、トリプトファン分解産物が原因となって起こる病状(例えば、白内障および加齢に伴う眼の黄変)だけでなく、IDOが介在するトリプトファン枯渇が原因となって起こる病状(T細胞性免疫応答の抑制を伴うもの(例えば、癌および種々の細菌/ウイルス感染症)など)の治療または予防用に利用されている。さらに、そのような化合物は、トリプトファンの枯渇に関連している他の病状(気分障害、鬱病、不安および神経変性疾患など)の治療または予防にも使用することができる。これらの使用はどれも、特定の化合物にin vitroにおける細胞増殖を抑制または阻害する能力があるというこれまでの知識からは明らかにならない。
【0008】
本発明は、IDOの阻害のための、IDOが介在するトリプトファン代謝経路の病変により特徴づけられる疾患の治療または予防における、本明細書において記載する化合物の使用を意図するものであり、それらの化合物にはそれらの互変異性体だけでなく、それらの構造的類似体、その医薬上許容される塩、およびそのような化合物、類似体または塩の少なくとも1種類を含んでなる医薬上許容される組成物も含まれる。そのような疾患としては、限定されるものではないが、腫瘍性疾患、癌、眼の疾患、白内障、自己免疫疾患、気分障害、鬱病および不安が挙げられる。使用には、in vivoおよびin vitro適用だけでなく、医薬やIDO阻害薬剤および組成物の製造における使用も含まれる。
【0009】
本発明は、海産ヒドロ虫Garveia annulataおよび海産海綿Xestospongiaの抽出物からの合成または単離によって得られる新規置換ナフトキノンおよびナフタレン、その構造的類似体および誘導体とその医薬上許容される塩、ならびにそのような置換ナフトキノン、ナフタレン、その構造的類似体または誘導体および塩の少なくとも1種類を含む医薬上許容される組成物も提供する。
【0010】
自然源から本発明の化合物を単離する方法および合成のための方法が提供され、一度抽出または合成すれば、それらの使用のための方法も提供される。
【発明の具体的説明】
【0011】
本発明の種々の実施形態は、以下に示す式I、II、III、IVまたはVのうちの1つから選択される少なくとも1種類の化合物(互変異性体、ならびにその医薬上許容される塩を含む)を含む。また、そのような化合物または塩の少なくとも1種類と、好適な担体、希釈剤または補助薬を含んでなる、IDOが介在するトリプトファン代謝経路の病変により特徴づけられる疾患の治療のための組成物も含まれる。
【化1】

【0012】
、X、X、X、XおよびXは、独立して、以下の群:H、R、OH、OR、F、Cl、Br、I、NH、NHR、NR、CN、SH、SR、SOH、SOR、SOR、OSORおよびNOから選択され、さらに、XおよびXは、独立して、オキソ(=O)であってよい。Rは、必要に応じて置換されていてもよい直鎖、分枝鎖もしくは環状の飽和もしくは不飽和アルキル基、または必要に応じて置換されていてもよいアリール基である(ここで、Rの任意置換とは、アリール、エーテル、アミノ、ヒドロキシ、エステル、チオエーテル、チオール、ニトリル、ニトロ、アミド、カルボニル、カルボキシル、カルボキシレートおよびハロゲン化物基から選択される置換基が存在することを意味し得る)。Rがアリール基であるか、またはアリール基によって置換されている場合には、前記アリール基は、必要に応じてエーテル、アミノ、ヒドロキシ、エステル、チオエーテル、アミド、ニトロ、カルボニル、カルボキシル、カルボキシレートおよびハロゲン化物基で置換されていてよい。
【0013】
、R、R、R、R、R、RおよびRは、独立して、H、OH、ORおよび直鎖、分枝鎖もしくは環状の飽和もしくは不飽和アルキル基(ここで、アルキル主鎖の1個以上の炭素原子が、必要に応じてかつ独立して、置換されていてもよいか、または酸素(O)もしくは硫黄(S)原子または第二級アミノ(NR)基に置き換えられていてよい)からなる群から選択される。任意置換基は、アリール、エーテル、アミノ、ヒドロキシ、エステル、チオエーテル、チオール、ニトリル、ニトロ、アミド、カルボニル、カルボキシル、カルボキシレートおよびハロゲン化物基から選択してよい。Rは上記のとおりである。
【0014】
Wは、式IIまたはIVのナフトキノン核(naphthquinone nucleus)と縮合された、C、O、NもしくはS原子を含有する置換もしくは非置換の5員環、6員環もしくは7員環を完成させる原子群である。Wの例は、構造(a)〜(e)によって以下に示す(この際、Xは上記X〜Xと同じ定義を有する)。いずれの場合にも、示した配向またはその逆配向でのWの縮合によって形成される総ての位置異性体が含まれる。
【化2】

【0015】
Uは、式IIおよびIVのナフトキノン核と縮合された、C、O、NもしくはS原子を含有する置換もしくは非置換の芳香族もしくは非芳香族単環系、二環系もしくは三環系を完成させる原子群である。Uの例は、構造(f)〜(k)によって以下に示す(この際、Xは上記Xと同じ定義を有する)。さらに、総ての位置異性体も含まれる。
【化3】

【0016】
本発明のいくつかの実施形態は、IDOが介在するトリプトファン代謝経路の病変により特徴づけられる疾患の治療のための、表1に示す構造から選択される少なくとも1種類の化合物およびその互変異性体、その医薬上許容される塩、ならびにそのような化合物または塩を含んでなる医薬上許容される組成物を含む。
【0017】
【表1】

【0018】
表1において、R〜R、X〜XおよびUとして表示される置換基は、上記のとおりである。各々のR”は、同じであっても、異なっていてもよく、かつ上記Rと同じ定義を有する。R、R10、R12、R13およびR14の各々は、R〜Rと同じ定義を有する。
【0019】
上述の本発明の実施形態のうち、特に興味深い実施形態は、Wが前掲の構造(d)を有する式IIまたはIVの実施形態である。例えば、特に興味深いこれらの化合物は、以下の式
【化4】

によって記載され、それらにはその互変異性体も含まれる。
【0020】
式VIの化合物は、Schmitz et al. J. Org. Chem. (1988) 53, 3922-3925およびConcepcion, G. P. et al. Phil. J. Micorbial Infect. Dis. (1994), 24, 6-19に記載されている以下の個々の化合物:
【化5】

【化6】

を除いて、新規なものである。
【0021】
式VIにおいて、XおよびXは上記のとおりである。R15およびR16は、個別の置換基であってよいし、または結合された単一の基であってもよい。R15およびR16が個別の置換基である場合、それらは、独立して、上記RおよびRと同じ定義を有する。R15およびR16が結合されている場合、それらはともに、上記Uと同じ定義を有する。
【0022】
式VIの化合物には、以下の構造:
【化7】

を有する化合物とそれらの互変異性体が含まれる。
【0023】
およびX13は、独立して、上記XおよびXと同じ定義を有する。
【0024】
本発明のいくつかの実施形態において、X〜X13およびR〜R16の1つ以上は、独立して、H、C−Cアルキル、OH、COOH、C(O)R、COORおよびハロゲンからなる群から、上記定義に合致するように選択されることがある(ここで、Rは上記のとおりである)。また、いくつかの実施形態において、XおよびXのうちの1つまたは両方は、オキソであってもよい。
【0025】
いくつかの実施形態において、置換基R〜R16は、H、OH、C−CアルキルおよびC−Cアルコキシからなる群から選択され、置換基X〜XおよびX〜X13は、H、OH、C−Cアルキル、C−Cアルコキシおよびハロゲンからなる群から選択され、そして置換基XおよびXは、H、OH、C−Cアルキル、C−Cアルコキシおよびオキソからなる群から選択される。
【0026】
本発明の特定の実施形態では、IDOが介在するトリプトファン代謝経路の病変により特徴づけられる疾患の治療のために、以下の表2および表3に示す化合物から選択される少なくとも1種類の化合物およびそれらの互変異性体、医薬上許容される塩、ならびに少なくとも1種類のそのような化合物またはその医薬上許容される塩と、医薬上許容される好適な担体、希釈剤または補助薬との組成物を利用することができる。好ましくは、本発明に使用するために選択される化合物は、IDO阻害アッセイにおけるK値がマイクロモル濃度以下であるものである。K値はナノモル範囲以下であることがより好ましい。いくつかの既知基質類似体IDO阻害剤については、K値がマイクロモル範囲であることが報告されている。
【0027】
本発明はまた、式I、II、III、IVおよびVの中からの新規化合物、それらの新規塩、ならびに許容される担体(本明細書において記載する置換基を有する)を含んでなる医薬上許容される組成物も提供する。これらの新規化合物から、表2に示すもの、あるいは当技術分野で公知のものは排除される。
【0028】
本発明はまた、表3に示す新規化合物およびそれらの互変異性体、ならびにその医薬上許容される塩、さらに医薬上許容される担体と少なくとも1種類のそのような化合物またはその塩とを含んでなる組成物も提供する。
【0029】
【表2A】

【表2B】

【表2C】

【表2D】

【表2E】

【0030】
【表3】

【0031】
本明細書において記載する化合物は、以下の典型的なスキームをはじめとする、当該技術分野から選択されるプロトコールを用いて合成することができる。
【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【0032】
当業者ならば、これらの反応機構を用いて、本明細書において記載する化合物を調製することが可能であろう。例えば、アドシアキノン(Adociaquinones)AおよびBの具体的な合成は、Harada et al. Tetrahedron: Asymmetry 6 375-376 (1995)に見られる。コニカキノン(Conicaquinones)AおよびBの具体的な合成は、Aiello et al. Eur. J. Org. Chem. 898-900 (2003)に見られる。
【0033】
本発明のいくつかの化合物は、海産ヒドロ虫Garveia annulataなどの自然源から単離することができる(Fahy et al. J. Org. Chem. 51, 5145-5148 (1986);およびFahy et al. J. Org. Chem. 51, 57-61 (1986))。Garveia annulataは、冬から春にかけて、カナダのブリティッシュコロンビア州バークレーサウンドで、スキューバを用いて手で採取することができる。Garveia annulataは、冬から春にかけて、アラスカから南カリフォルニアにいたる岩礁亜潮間帯で一般的に遭遇するブリリアントオレンジ色のヒドロ虫である。Garveia annulataからの化合物の単離は、以下のメタノール抽出手順を用いて行うことができる。
【0034】
新たに採取したGarveia annulataの試料全体をメタノールに入れ、それを室温にて保存することができる。このメタノール抽出物を後にデカントし、セライト(商標)で濾過する。この濾液を真空蒸発させて、水性懸濁液を得、この水性懸濁液を蒸留水で400mLに希釈し、ヘキサン(3×400mL)、塩化メチレン(3×400mL)および酢酸エチル(2×400mL)で連続抽出する。
【0035】
ヘキサン(600mg)および塩化メチレン(4g)抽出物を別々に、グラスフィルター(径10cm)において3.5cm厚のシリカパッドを用いるステップ勾配真空フラッシュクロマトグラフィーにより分画する。各分離で同じ溶媒組成で溶出する画分を合わせる。20%酢酸エチル/ヘキサン、50%酢酸エチル/ヘキサン、100%酢酸エチル/ヘキサンおよび20%メタノール/酢酸エチルを用いて溶出することによって、それぞれ画分A(140mg)、B(500mg)、C(1.5g)およびD(700mg)を得る。
【0036】
フラッシュ画分は、蒸発乾固し、LH20(90%メタノール/塩化メチレン;1m×4cmカラム)でのクロマトグラフィーに付すことができる。LH20クロマトグラフィーで得られた任意の主要なピークの分取シリカゲルTLCにより画分を得ることができ、これらの画分はTLCを用いてさらに精製することができる。任意の化合物の最終精製は、順相HPLCを用いて行うことができる。
【0037】
いくつかの化合物は、Xestospongia属の太平洋産海綿から単離することができる(Schmitz et al. J. Org. Chem., 53, 3922-3925))。Xestospongiaは、11月から1月に、トラック礁湖の竹島エリアで、深度約5〜10mにおいてスキューバを用いて手で採取することができる。Xestospongiaは、パプアニューギニア周辺でも見られる。Xestospongiaからの化合物の単離は、以下の抽出手順を用いて行うことができる。
【0038】
新たに採取したXestospongiaのサンプルは、採取の数時間以内でなら凍結することができる。この凍結試料をCHCl/MeOH(1:1)に1日間浸漬し、その後CHCl/MeOH(2:1)にさらに浸漬することができる。合した溶液を減圧濃縮し、この濃縮物をCHClと30%水性MeOHとで分液する。次いで、このクロロホルム可溶分をクロマトグラフィーに付して、分画する。溶媒浴での抽出時間は12時間〜2日で変更してよく、抽出溶媒はメタノール、クロロホルムまたはn−ヘキサンであってよい。
【0039】
自然源から得た反応生成物または抽出物をIDO阻害活性についてスクリーニング(例えば、ハイスループットスクリーニング)もしくは試験するために、またはIDO阻害の速度を測定するために、種々のin vitroアッセイ(例えば、Takikawa, et al. J. Biol. Chem. 263, 2041-2048 (1988)を参照)を用いることができる。例えば、IDO活性は、リン酸カリウムバッファー(50mM、pH6.5)、アスコルビン酸(20mM)、カタラーゼ(200マイクログラム/mL)、メチレンブルー(10mM)、L−トリプトファン(400mM)および精製ヒトIDOを含有する反応混合物(総量100マイクロリットル)を用いてアッセイすることができる。以下に示す反応は、40分間(37℃)進行させ、30%(w/v)トリクロロ酢酸20マイクロリットルを加えることにより停止させることができる。次いで、この間に反応混合物中のトリプトファンから生成したN−ホルミルキヌレニンを、反応混合物を65℃にて15分間インキュベートすることにより、キヌレニンに変換させる。反応混合物を室温に冷却した後、等量の酢酸中2%(w/v)p−ジメチルアミノベンズアルデヒドを加えて、反応混合物中に含まれているキヌレニンを、480nmにて検出できる黄色付加物に変換することができる。この後者の反応の標準曲線は、オーセンティックなL−キヌレニンから調製した標準溶液を使用して作製することができる。タンパク質濃度は、標準としてウシ血清アルブミンを使用するBradfordのクーマシーブルー色素結合法により測定することができる。(Takikawa et al, J. Biol. Chem. 263, 2041-2048)。
【0040】
【化12】

【0041】
ブリティッシュコロンビア州で採取した海産ヒドロ虫Garveia annulaおよびパプアニューギニアで採取した海綿Xestospongia種からの未精製抽出物は、上記アッセイにおいて活性を示す。バイオアッセイによる分画により、アンヌリン(annulins)A、BおよびC、ガルベアチン(garveatins)A、C、EおよびF、ならびに2−ヒドロキシガルビン(2-hydroxygarvin)Aが、Garveia annulata抽出物由来のIDO活性阻害剤であると確認される。アンヌリンAおよびB、ガルベアチンAおよびC、ならびに2−ヒドロキシガルビンAについては、すでに報告されていた(Fahy et al J. Org. Chem., (1985), 50, 1149-50;J. Org. Chem., (1986), 51, 57-61;J. Org. Chem., (1986), 51, 5145-48; Can. J. Chem., (1987), 65, 376-83)が、それらがIDO阻害剤であるとは分かっていなかった。アンヌリンC、ガルバロン(Garvalone)CおよびガルベアチンEおよびFは新規なものである。同様に、キセストキノン(xestoquinone)、アドシアキノンAおよびアドシアキノンBが、Xestospongia抽出物由来のIDO活性阻害剤であると確認される。キセストキノン、アドシアキノンAおよびアドシアキノンBについては、海綿抽出物からすでに単離されており、それらの構造は文献で報告されている(Schmitz and Bloor J. Org. Chem. (1988), 53, 3922-3925)が、それらはIDO阻害剤としては知られていなかった。GarveiaおよびXestospongia天然物の種々のナフトキノン類似体は、入手可能であり、阻害活性も示した。このようにして、メナジオン(ビタミンKの別名でも知られる)は、これまでには分かっていなかった、IDO阻害剤であるということが証明される。
【0042】
IDOはいくつかの疾患に関与しており、それらの疾患としては、クラミジア・シッタシ(Clamydia psittaci)感染および化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)感染、全身性紅斑性狼瘡、関節リウマチ、アルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病、ライム神経ボレリア症、遅発性ライム脳症(late lyme encephalopathy)、トゥーレット症候群、全身性硬化症、多発性硬化症、冠動脈性心臓病、T細胞性免疫疾患、慢性感染症(ウイルス、細菌、真菌および微生物)、鬱病、神経疾患、癌腫瘍、ならびに白内障が挙げられる。これらの疾患を治療するために、IDOの阻害剤を使用することができる。IDO阻害剤を使用して、治療することができる他の疾患としては、限定されるものではないが、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、AIDSによる癌、副腎皮質癌(adrenocorticocancer)、基底細胞癌、膀胱癌、腸癌、脳およびCNS腫瘍、乳癌、B細胞リンパ腫、カルチノイド腫瘍、子宮頸癌、小児癌、軟骨肉腫、絨毛癌、慢性骨髄性白血病、直腸癌、内分泌癌、子宮内膜癌、食道癌、ユーイング肉腫、眼癌、胃癌または癌腫、消化管癌、泌尿生殖器癌、神経膠腫、婦人科癌、頭頸部癌、肝細胞癌、ホジキン病、下咽頭癌、島細胞癌、カポジ肉腫、腎臓癌、喉頭癌、肝臓癌、肺癌(小細胞肺癌および非小細胞癌腫を含む)、リンパ腫、男性乳癌、黒色腫、中皮腫、多発性骨髄腫、鼻咽腔癌、神経芽腫、非ホジキンリンパ腫、非黒色腫皮膚癌、骨肉腫、卵巣癌、膵臓癌、下垂体癌、前立腺癌、腎細胞癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、肉腫、皮膚癌、扁平上皮癌、胃癌、精巣癌または精上皮腫、胸腺癌、甲状腺癌、移行上皮癌、絨毛癌、子宮癌、膣癌、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、ならびにビルムス腫瘍、結腸直腸、頸部、子宮内膜、卵巣、精巣、中皮内層(mesothelial lining)、白血球(リンパ腫および白血病を含む)食道、筋肉、結合組織、副腎、骨、膠芽腫および皮膚基底細胞癌が挙げられる。
【0043】
本発明の、または本発明に使用する、多くの化合物は、一般に水溶性であり、塩として作製することができる。そのような場合において、本発明の医薬組成物は、そのような化合物の塩、好ましくは当技術分野で公知の生理学的に許容される塩を含んでいてよい。医薬製剤は、一般に、製剤の投与様式が注射、吸入、局所投与、洗浄によるものであろうと、または選択した治療に適した他の様式であろうと、製剤の投与様式にふさわしい1種類以上の担体を含んでなる。好適な担体は、そのような投与様式に用いられる、当技術分野で公知のものである。
【0044】
好適な医薬組成物は、当技術分野で公知の手段によって製剤することができ、それらの投与様式および用量については、当業者ならば決めることができる。非経口投与用には、化合物を滅菌水もしくは生理食塩水または非水溶性化合物の投与に用いられる医薬上許容されるビヒクル(ビタミンKに用いられるものなど)に溶かしてよい。腸内投与用には、化合物を錠剤、カプセル剤として、または液体形態に溶かして投与することができる。錠剤(table)またはカプセル剤は、腸溶コーティングしてもよいし、または持続放出性処方物にしてもよい。多くの好適な処方物が知られており、それらには、放出させる化合物を封入した高分子もしくはタンパク質微粒子、化合物を局所または局部投与するのに使用することができる軟膏、ゲル、ヒドロゲルまたは溶液が含まれる。長時間にわたって放出させるために、持続放出性パッチまたはインプラントを使用してもよい。当業者に公知の多くの技術については、Remington: the Science & Practice of Pharmacy by Alfonso Gennaro, 20th ed., Williams & Wilkins, (2000)に記載されている。非経口投与用の処方物には、例えば、賦形剤、ポリエチレングリコールなどのポリアルキレングリコール、植物性の油類または水素化ナフタレンが含まれる。化合物の放出を制御するために、生体適合性、生分解性ラクチド重合体、ラクチド/グリコリド共重合体またはポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体を使用してもよい。調節化合物についての潜在的に有用な他の非経口送達系には、エチレン−酢酸ビニル共重合体粒子、浸透圧ポンプ、埋め込み可能な注入系およびリポソームが含まれる。吸入用処方物は、賦形剤、例えば、ラクトースを含むものであってよいし、または例えば、ポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル、グリココール酸塩およびデオキシコール酸塩を含有する水溶液であってよいし、または点鼻薬形態での投与のための油性溶液、もしくはゲル剤であってもよい。Munn et al. (米国特許第6,451,840号および同第6,482,416号)は、IDOの阻害剤を含んでなる医薬組成物の有効量の被験体への投与とその使用について記載している。
【0045】
眼用組成物、例えば、滅菌水溶液については、当業者ならば、当技術分野で公知の技術を用いて調製することができる。Pigiet et al. (米国特許第4,771,036号)は、白内障の予防および回復のための方法と眼用組成物について記載している。Itoh et al. (米国特許第6,500,813号)は、光透過性の低下を予防するのに用いられる、点眼薬をはじめとする眼用組成物について記載している。Babizhayev et al. Drugs R&D, 3, 87-103には、白内障の治療用の、リン酸緩衝生理食塩水中に薬剤を含む点眼薬の臨床試験について記載されている。眼用組成物は、眼に滴下するのに採用された好適な容器または点眼瓶にパッケージングすることができる。
【0046】
本明細書において記載する化合物は、特に、癌の治療のために、化学療法薬または他の治療モダリティと併用してもよい。他の治療モダリティとしては、限定されるものではないが、化学療法薬、放射線療法、抗ウイルス薬、抗菌薬、抗真菌薬、抗微生物薬、シグナル変換阻害剤、サイトカイン、ワクチン、ホルモン療法、外科的切除、免疫賦活療法、抗腫瘍ワクチン、抗体療法、全身照射法、骨髄移植および末梢血幹細胞移植が挙げられる。IDO阻害剤は、他の治療モダリティの前、その後またはその期間中に投与することができる。
【0047】
本明細書において、「化学療法薬」とは、患者における疾患の治療に用いられる化学化合物または組成物を指す。多くの化学療法薬があるが、特に興味深いものが癌化学療法薬である。
【0048】
癌化学療法薬には多くの種類があるが、それらとしては、アルキル化および酸化剤、代謝拮抗剤、抗生物質、有糸分裂阻害剤、クロマチン機能阻害剤、ホルモンおよびホルモン阻害剤、抗体、免疫調節剤、脈管形成阻害剤、レスキュー/保護剤などが挙げられる。
【0049】
癌化学療法薬のアルキル化および酸化剤クラスには、7つのサブクラスがある:ナイトロジェンマスタード、エチレンイミン、スルホン酸アルキル、ニトロソ尿素、トリアゼンおよび白金配位錯体。ナイトロジェンマスタードの例としては、メクロレタミン(Mustargen(商標))、シクロホスファミド(Cytoxan(商標)およびNeosar(商標))、イフォスファミド(Ifex(商標))、フェニルアラニンマスタード、メルファレン(melphalen)(Alkeran(商標))、クロラムブコル(chlorambucol)(Leukeran(商標))、ウラシルマスタードおよびエストラムスチン(Emcyt(商標))が挙げられる。エチルアニミン(ethylanimine)の一例がチオテパ(Thioplex(商標))である。スルホン酸アルキルの一例がブスルファン(Myerlan(商標))である。ニトロソ尿素の例としては、ロムスチン(CeeNU(商標))、カルムスチン(BiCNU(商標)およびBCNU(商標))およびストレプトゾシン(Zanosar(商標))がある。トリアジン(triazines)の例としては、ジカルバジン(dicarbazine)(DTIC-Dome(商標))およびテモゾルアミド(temozolamide)(Temodar(商標))がある。白金配位錯体の例としては、シス−プラチナム、シスプラチン(Platinol(商標)およびPlatinol AQ(商標))およびカルボプラチン(Paraplatin(商標))がある。アルキル化および酸化剤の他の例としては、アルトレタミン(Hexalen(商標))およびヒ素(Trisenox(商標))が挙げられる。このクラスの化学療法薬は、一般に(細胞周期G1、S期においてより大きな効果が認められることが多いが)細胞周期に非特異的であり、DNAのアルキル化により(カルボニウムイオン中間体を通じて)作用する。それらはDNA、RNAおよびタンパク質の共有架橋結合を促し、一本鎖DNA切断を引き起こし、または異常なDNA塩基対形成をもたらし得る。これらの化学療法薬は、これらの機構を通じて、細胞複製を妨害する傾向がある。特に、白金配位錯体薬は、一般にDNA鎖の架橋結合を起こし、(N7位の)グアニン塩基および(N7位の)アデニンにおいてアルキル化を起こしやすい。これにより、鎖間および鎖内架橋結合が起こり得る。薬剤自体もタンパク質SH基と結合し得る。
【0050】
癌化学療法薬の代謝拮抗剤クラスには、葉酸類似体、ピリミジン類似体およびプリン類似体が含まれる。葉酸の例としては、メトトレキサート(Amethopterin(商標)、Folex(商標)、Mexate(商標)、Rheumatrex(商標))が挙げられる。ピリミジン類似体の例としては、5−フルオルラシル(5-fluoruracil)(Adrucil(商標)、Efudex(商標)、Fluoroplex(商標))、フロクスウリジン、5−フルオロデオキシウリジン(FUDR(商標))、カペシタビン(Xeloda(商標))、フルルダラビン(flurdarabine)(Fludara(商標))、シトシンアラビノシド(Cytaribine(商標)、Cyrosar(商標)、ARA-C(商標))が挙げられる。プリン類似体の例としては、6−メルカプトプリン(Purinethol)、6−チオグアニン(Thioguanine(商標))、ゲムシタビン(Gemzar(商標))、クラドリビン(Leustatin(商標))、デオキシコホルマイシンおよびペントスタチン(Nipent(商標))が挙げられる。これらの化学療法薬は、一般にS期に特異的であり、多くの場合、通常の細胞成分と構造的に関係がある。それらは、ヌクレオチド合成への干渉を通じて作用することが多く、DNAおよびRNA合成において細胞のヌクレオチドと競合する。
【0051】
癌化学療法薬の抗生物質クラスには、ドキソルビシン(Adriamycin(商標)、Rubex(商標)、Doxil(商標)、Daunoxome(商標)−リポソーム製剤)、ダウノルビシン(Daunomycin(商標)、Cerubidine(商標))、イダルビシン(Idamycin(商標))、バルルビシン(Valstar(商標))、エピルビシン、ミトキサントロン(Novantrone(商標))、ダクチノマイシン(Actinomycin D(商標)、Cosmegen(商標))、ミトラマイシン、プリカマイシン(Mithracin(商標))、マイトマイシンC(Mutamycin(商標))、ブレオマイシン(Blenoxane(商標))、プロカルバジン(Matulane(商標))が含まれる。このクラスの化学療法薬も、一般に細胞周期に非特異的である(ブレオミアシン(bleomyacin)および、プロカルボジン(procarbozine)は例外である)。このクラスの化学療法薬は、一般に二本鎖DNAの間に入り、DNAヘリックスと結合することによってそのDNAを切断する。これらの化学療法薬はまた、ヌクレオチドの組込みを阻害することによるか、またはDNA依存性RNA合成を阻害することによりDNA合成も阻害する。これらの化学療法薬のうちのいくつかのものは、DNAのらせん化も阻害し、一部の例では鎖を切断するトポイソメラーゼIIを阻害することによりこれを成し遂げる。特に、ドキソルビシンはDNAの間に入り、DNAの糖リン酸骨格と結合する。ドキソルビシンは、細胞膜とも結合して、ホスファチジルイノシトールの活性化をブロックする。ドキソルビシンは、トポイソメラーゼIIも阻害することができる。
【0052】
癌化学療法薬の有糸分裂阻害剤クラスには、タキサン、すなわちジテレペン(diterepenes)およびビンカアルカロイドが含まれる。タキサンの例としては、パクリタキセル(Taxol(商標))およびドセタキセル(Taxotere(商標))が挙げられる。ビンカアルカロイドの例としては、硫酸ビンブラスチン(Velban(商標)、Velsar(商標)、VLB(商標))、硫酸ビンクリスチン(Oncovin(商標)、Vincasa PFS(商標)、Vincrex(商標))および硫酸ビノレルビン(vinorelbine sulfate)(Navelbine(商標))が挙げられる。このクラスの化学療法薬は、細胞周期に特異的であり、一般に細胞周期をM期で停止させる。このクラスの癌化学療法薬は、紡錘体を破壊することによって、染色体分離を阻害し、有糸分裂を阻止する。パクリタキセルやドセタキセルなどのタキサン系有糸分裂阻害剤は、タイヘイヨウイチイ(Pacific Yew)の樹皮から得られる。それらは微小管の脱重合を抑制することによって、微小管ネットワークの再構築を阻害する。微小管の安定化により異常な束化微小管の形成も促される。
【0053】
癌化学療法薬のクロマチン機能阻害剤クラスには、カンプトテシンおよびエピポドフィロトキシンが含まれる。カンプトテシンの例としては、トポテカン(Camptosar(商標))およびイリノテカン(Hycamtin(商標))が挙げられる。エピポドフィロトキシンの例としては、エトポシド(VP-16(商標)、VePesid(商標)およびToposar(商標))およびテニポシド(VM-26(商標)およびVumon(商標))が挙げられる。これらの化学療法薬は、一般に細胞周期に特異的であり、トポイソメラーゼIまたはトポイソメラーゼIIのいずれかと結合し得る。それらがトポイソメラーゼIと結合する場合では、これにより切断されたDNAの再連結が阻止される。それらがトポイソメラーゼIIと結合する場合では、これによりDNAの転写複製が阻止され、細胞が死滅する。
【0054】
癌化学療法薬のホルモンおよびホルモン阻害剤クラスには、エストロゲン、抗エストロゲン、アロマターゼ阻害剤、プロゲスチン、GnRHアゴニスト、アンドロゲン、抗アンドロゲンおよび合成阻害剤が含まれる。エストロゲンの例としては、ジエチルスチルベステロール(Stilbesterol(商標)およびStilphostrol(商標))、エストラジオール、エストロゲン、エステル化エストロゲン(Estratab(商標)およびMenest(商標))およびエストラムスチン(Emcyt(商標))が挙げられる。抗エストロゲンの例としては、タモキシフィン(tamoxifin)(Nolvadex(商標))およびトレミフェン(Fareston(商標))が挙げられる。アロマターゼ阻害剤の例としては、アナストロゾール(Arimidex(商標))およびレトロゾール(letrozol)(Femara(商標))が挙げられる。プロゲスチンの例としては、17−OH−プロゲステロン、メドロキシプロゲステロンおよび酢酸メガストロール(megastrol acetate)(Megace(商標))が挙げられる。GnRHアゴニストの例としては、ゴセレリン(gosereline)(Zoladex(商標))およびロイプロリド(Leupron(商標))が挙げられる。アンドロゲンの例としては、テストステロン、メチルテストステロンおよびフルオキスメステロン(fluoxmesterone)(Android-F(商標)、Halotestin(商標))が挙げられる。抗アンドロゲンの例としては、フルタミド(Eulexin(商標))、ビカルタミド(Casodex(商標))およびニルタミド(Nilandron(商標))が挙げられる。合成阻害剤の例としては、アミノグルテチミド(Cytadren(商標))およびケトコノゾール(ketoconozole)(Nizoral(商標))が挙げられる。これらの化学療法薬は、種々のホルモン、一般に、エストロゲンおよびアンドロゲンと結合するか、またはこれらのホルモンの受容体を遮断する。これらの化学療法薬は、受容体を遮断するか、またはホルモン自体と結合することによって、特定のホルモンと結合する細胞の能力を妨げ、細胞の増殖および発生を減じる。
【0055】
癌化学療法薬の抗体クラスには、リツキシマブ(Rituxan(商標))、トラスツズマブ(Herceptin(商標))、ゲムツズマブオゾガマイシン(Mylotarg(商標))、トシツモマブ(Bexxar(商標))およびベバシズマブが含まれる。これらの化学療法薬は、癌細胞の表面の特定のタンパク質に向けられる抗体であり得る。これらの抗体は、抗体に対する免疫応答を引き起こすための、ゆえに、癌細胞に対するモチーフを提供するか、あるいはアポトーシスを誘導する。このクラスの化学療法薬の他の作用機序としては、癌細胞にある受容体と結合することによる、増殖因子による刺激の抑制がある。
【0056】
癌化学療法薬の免疫調節剤クラスには、デニロイキンディフチトクス(Ontak(商標))、レバミゾール(Ergamisol(商標))、カルメット・ゲラン桿菌(bacillus Calmette-Gueran)、BCG(TheraCys(商標)、TICE BCG(商標))、インターフェロンα−2a、インターフェロンα−2b(Roferon-A(商標)、Intron A(商標))およびインターロイキン−2およびアルデスロイキン(ProLeukin(商標))が含まれる。これらの化学療法薬は、宿主免疫系が癌細胞を攻撃できるように、宿主免疫系と相互作用するか、または宿主免疫系を刺激する。インターロイキン−2による調節、すなわち、細胞傷害性T細胞、マクロファージ、ならびにB細胞の刺激は、このクラスの癌化学療法薬に共通した作用機序である。
【0057】
癌化学療法薬の脈管形成クラスには、サリドマイド(Thalomid(商標))、アンジオスタチンおよびエンドスタチンが含まれる。これらの化学療法薬は、一般に、腫瘍の血管新生を抑制し、そうすることによって腫瘍への血液供給を減少させて、腫瘍の成長を阻止する。
【0058】
癌化学療法薬のレスキュー/保護剤クラスには、デクスラゾキサン(Zinecard(商標))、アミフォスチン(Ethyol(商標))、G−CSF(Neupogen(商標))、GM−CSF(Leukine(商標))、エリトポエチン(erythopoetin)(Epogen(商標)、Procrit(商標))、オプレルベキンおよびIL−11(Neumega(商標))が含まれる。これらの化学療法薬は、種々の異なる作用機序を通じて作用する。これらの作用機序には、DNAの保護、腎臓を保護するシスプラチン代謝産物との結合または心臓保護機構が含まれる。このクラスの他の化学療法薬は、顆粒球、マクロファージ、赤血球前駆細胞および巨核球の増殖および分化を促進する。
【0059】
他の癌化学療法薬としては、メシル酸イマチニブ、STI−571(Gleevec(商標))、1−アスパリギナーゼ(1-aspariginase)(Elspar(商標)、Kidrolase(商標))、ペグアスパスガーゼ(pegaspasgase)(Oncaspar(商標))、ヒドロキシ尿素(Hydrea(商標)、Doxia(商標))、ロイコボリン(Wellcovorin(商標))、ミトーテン(Lysodren(商標))、ポルフィマー(Photofrin(商標))およびトレチノイン(Veasnoid(商標))が挙げられる。いくつかの化学療法薬、例えば、メシル酸イマチニブは、Bcr−Ablチロシンキナーゼを阻害するものである。
【0060】
Prendergast et al(国際公開第2004/093871号)は、IDO阻害剤単独およびIDO阻害剤と他の化学療法薬との併用による癌、悪性および慢性ウイルス感染症の治療のための方法について記載している。Munn et al. (米国特許出願公開第2004/0234623号)は、インドールアミン−2,3−ジオキシゲナーゼ阻害剤の、他の治療モダリティとを組み合わせた使用について記載している。
【0061】
IDO阻害剤、化学療法薬またはその両方の施与は、独立して、全身、非経口、静脈内、皮下、経皮的、経粘膜的、筋肉内、頭蓋内、眼窩内、経眼的、心室内、嚢内、脊髄内、大槽内、腹腔内、経鼻的、エアロゾール、局所、外科的、経口または非経口投与であってよい。投与量および治療期間は、標準的なプロトコールと、選択した化合物の活性および毒性に関する情報に従って医師により決定される。
【0062】
本発明の、または本発明に使用する、化合物または医薬組成物は、インプラント、グラフト、人工器官、ステントなどのような医療機器または器具によって投与してもよい。また、そのような化合物または組成物を含み、それらを放出させることを目的としたインプラントを考案してもよい。その一例が、化合物をある期間にわたって放出するように構成された高分子材料でできたインプラントである。
【実施例】
【0063】
実施例1−IDO阻害活性
以下の反応(Sono, M., Cady, S.G. Biochemistry 28, 5392-5399 (1989))を利用して、本発明の化合物と、比較のために表4に記載する他の化合物とを使用してIDO阻害の速度を測定した。
【化13】

【0064】
0.1Mリン酸カリウムバッファー(pH6.5;37℃で最適)、25μMメチレンブルー、200μg/mlのカタラーゼ、10mMアスコルビン酸、50nMの組換えヒトIDOおよび100μM L−トリプトファンの溶液を調製した。生成物の生成速度(N−ホルミルキヌレニンについては、Δε321=3.75mM−1cm−1)を、時間の関数としての321nmにおける初期吸光度増加直線の傾きから決定した。試験した化合物それぞれの結果を表4に記載している。いくつかの化合物(ビタミンKおよびアンヌリンC)では、異なる濃度を用いてこのアッセイを繰り返し、それらの化合物がIDO活性を非競合的に阻害するということが分かった。この特徴と本発明の化合物のIDO阻害剤としての有効性からそれらは治療薬として特に有用なものとなる。
【0065】
【表4A】

【表4B】

【表4C】

【表4D】

【表4E】

【表4F】

【0066】
以上、本発明を、明瞭な理解を目的に例として詳細に記載してきたが、本発明の教示に照らして、添付の請求項の精神または範囲を逸脱することなく、本発明に変更および改変を加えることができることを、当業者ならば容易に分かるであろう。本明細書において引用した総ての特許、特許出願および刊行物は、引用することにより本明細書の一部とされる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式VIの化合物またはその医薬上許容される塩:
【化1】

[式中、
およびXは独立して、H、R、OH、OR、F、Cl、Br、I、NH、NHR、NR、CN、SH、SR、SOH、SOR、SOR、OSOR、およびNOから選択され、ここで、Rは、必要に応じて置換されていてもよい直鎖、分枝鎖もしくは環状の飽和もしくは不飽和アルキル基、または必要に応じて置換されていてもよいアリール基であり、
15およびR16は独立して、H、OH、OR、および直鎖、分枝鎖もしくは環状の飽和もしくは不飽和アルキル基から選択される個別の置換基であり、ここで、アルキル基の1個以上の炭素原子は、必要に応じてかつ独立して置換されているか、または酸素(O)もしくは硫黄(S)原子または第二級アミノ(NR)基に置き換えられており、この際、Rは上記のとおりであり、
あるいは、R15およびR16は、縮合して、C、O、NもしくはS原子を含有する置換もしくは非置換の芳香族もしくは非芳香族単環系、二環系もしくは三環系を構成する]
(ただし、以下の構造:
【化2】

【化3】

を有する化合物を除く)。
【請求項2】
Rがアルキルである場合に、アルキルが必要に応じて、アリール、エーテル、アミノ、ヒドロキシ、エステル、チオエーテル、チオール、ニトリル、ニトロ、アミド、カルボニル、カルボキシル、カルボキシレートまたはハロゲン化物で置換されている、請求項1に記載の化合物または塩。
【請求項3】
Rがアリール基であるか、またはアリール基によって置換されている場合に、前記アリールが、必要に応じてエーテル、アミノ、ヒドロキシ、エステル、チオエーテル、アミド、ニトロ、カルボニル、カルボキシル、カルボキシレートまたはハロゲン化物で置換されている、請求項1または2に記載の化合物または塩。
【請求項4】
15およびR16が個別の置換基であって、R15およびR16のうちの1つまたは両方が前記定義の通りのアルキル基であり、ここで、その少なくとも1個の炭素原子が、必要に応じてアリール、エーテル、アミノ、ヒドロキシ、エステル、チオエーテル、チオール、ニトリル、ニトロ、アミド、カルボニル、カルボキシル、カルボキシレートまたはハロゲン化物によって置換されている、請求項1、2または3に記載の化合物または塩。
【請求項5】
15およびR16が独立して、H、C−Cアルキル、OH、COOH、C(O)R、COORおよびハロゲンから選択される個別の置換基であり、ここで、Rは前記定義のとおりである、請求項1、2または3に記載の化合物または塩。
【請求項6】
15およびR16が独立して、H、OH、C−CアルキルおよびC−Cアルコキシから選択される個別の置換基である、請求項1、2または3に記載の化合物または塩。
【請求項7】
15およびR16が縮合して、下記から選択される構造を構成する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物または塩:
【化4】

(式中、Xは、XおよびXの定義を有する)。
【請求項8】
下記の構造を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物または塩:
【化5】

(式中、X、X10、X12およびX13の各々は、個別に、XおよびXの定義を有する)。
【請求項9】
、X、X、X、X10、X12およびX13が、存在する場合には、独立して、H、C−Cアルキル、OH、COOH、C(OR)、COORおよびハロゲンから選択され、ここで、Rは定義のとおりである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の化合物または塩。
【請求項10】
、X、X、X、X10、X12およびX13が、存在する場合には、独立して、H、OH、C−CアルキルおよびC−Cアルコキシから選択される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の化合物または塩。
【請求項11】
表3で示される化合物またはその化合物の互変異性体、あるいはその医薬上許容される塩。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の化合物または塩と、医薬上許容される担体とを含んでなる、組成物。
【請求項13】
IDOが介在するトリプトファン代謝の病変により特徴づけられる症状の治療または予防に用いるための、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
IDOが介在するトリプトファン代謝の病変により特徴づけられる症状を治療し、予防し、またはその症状が発症する可能性を低下させる方法であって、
それを必要とする患者に、請求項1〜11のいずれか一項に記載の化合物または請求項12に記載の組成物の有効量を投与することを含んでなる、方法。
【請求項15】
前記症状が癌であり、化合物または組成物が化学療法薬または放射線療法の施与前、その期間中またはその後に投与される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
IDOが介在するトリプトファン代謝の病変により特徴づけられる症状の治療または予防のための、請求項1〜11のいずれか一項に記載の化合物または請求項12に記載の組成物の使用。
【請求項17】
IDOが介在するトリプトファン代謝の病変により特徴づけられる症状の治療または予防のための医薬の製造のための、請求項1〜11のいずれか一項に記載の化合物または請求項12に記載の組成物の使用。
【請求項18】
IDOが介在するトリプトファン代謝の病変により特徴づけられる症状を治療し、予防し、またはその症状が発症する可能性を低下させる方法であって、それを必要とする患者に、
【化6】

【化7】

を含む、式I、II、III、IV、V、VIおよびVIIのうちのいずれか1つの化合物または塩の有効量を投与することを含む、方法。
【請求項19】
前記症状が癌であり、化合物または組成物が化学療法薬または放射線療法の施与前、その期間中またはその後に投与される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
IDOが介在するトリプトファン代謝の病変により特徴づけられる症状の治療または予防のための、
【化8】

【化9】

を含む、式I、II、III、IV、V、VIおよびVIIの化合物または塩の使用。
【請求項21】
前記治療または予防のための医薬の製造のための、請求項20に記載の使用。
【請求項22】
化合物が式II、IV、VIまたはVIIの化合物である、請求項14〜21のいずれか一項に記載の方法または使用。
【請求項23】
Uが、存在する場合には、構造(f)〜(k)のうちの1つである、請求項14〜22のいずれか一項に記載の方法または使用。
【請求項24】
Wが、存在する場合には、構造(a)〜(e)のうちの1つである、請求項14〜23のいずれか一項に記載の方法または使用。
【請求項25】
〜X13およびR〜R16が存在する場合には、それらのうちの1つ以上がH、C−Cアルキル、OH、COOH、C(O)R、COORおよびハロゲンから選択され、ここで、Rは定義のとおりである、請求項14〜24のいずれか一項に記載の方法または使用。
【請求項26】
〜X13およびR〜R16が存在する場合には、それらのうちの1つ以上がH、OH、C−CアルキルおよびC−Cアルコキシから選択される、請求項14〜25のいずれか一項に記載の方法または使用。
【請求項27】
およびXが存在する場合には、それらのうちの1つまたは両方がオキソである、請求項14〜26のいずれか一項に記載の方法または使用。
【請求項28】
13およびR14が、存在する場合には、縮合して、構造(f)〜(k)のうちの1つを構成する、請求項14〜27のいずれか一項に記載の方法または使用。
【請求項29】
症状が白内障または眼の黄変である、請求項14〜28のいずれか一項に記載の方法または使用。
【請求項30】
症状が癌である、請求項14〜28のいずれか一項に記載の方法または使用。
【請求項31】
症状がT細胞性免疫の抑制に起因する、請求項14〜28のいずれか一項に記載の方法または使用。
【請求項32】
症状がトリプトファン分解産物の蓄積に起因する、請求項14〜28のいずれか一項に記載の方法または使用。
【請求項33】
症状が神経変性障害である、請求項14〜28のいずれか一項に記載の方法または使用。
【請求項34】
症状が気分障害である、請求項14〜28のいずれか一項に記載の方法または使用。
【請求項35】
症状がウイルスまたは微生物による慢性感染症に起因する、請求項14〜28のいずれか一項に記載の方法または使用。

【公表番号】特表2008−505937(P2008−505937A)
【公表日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−520625(P2007−520625)
【出願日】平成17年7月13日(2005.7.13)
【国際出願番号】PCT/CA2005/001087
【国際公開番号】WO2006/005185
【国際公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【出願人】(505093792)ザ ユニバーシティ オブ ブリティッシュ コロンビア (17)
【氏名又は名称原語表記】THE UNIVERSITY OF BRITISH COLUMBIA
【Fターム(参考)】