説明

インフルエンザの治療および予防

本発明は、インフルエンザの治療および/または予防に有用である、二本鎖領域を含む核酸分子、およびそれらをコードする核酸コンストラクトに関する。詳細には、本発明は、鳥インフルエンザ感染に少なくとも感受性が低いようなトランスジェニック家禽、例えばニワトリを生成するために使用することができる、(1つまたは複数の)二本鎖RNA分子をコードする核酸コンストラクトに関する。例えば、家禽における鳥インフルエンザを治療および/または予防するための治療剤として使用することができる、二本鎖領域を含む核酸分子も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インフルエンザの治療および/または予防に有用である、二本鎖領域を含む核酸分子、およびそれらをコードする核酸コンストラクトに関する。詳細には、本発明は、鳥インフルエンザ感染に少なくとも感受性が低いようなトランスジェニック動物、例えばニワトリを生成するために使用することができる、(1つまたは複数の)二本鎖RNA分子をコードする核酸コンストラクトに関する。例えば、家禽における鳥インフルエンザを治療および/または予防するための治療剤として使用することができる、二本鎖領域を含む核酸分子も提供する。
【背景技術】
【0002】
3つの型のインフルエンザウイルス、A、B、およびC型が知られており、それらはオルトミクソウイルス科と呼ばれる一本鎖マイナス鎖エンベロープRNAウイルスのファミリーに属する。ウイルスゲノムは約12000〜15000ヌクレオチド長であり、11個のタンパク質をコードする8個のRNAセグメント(C型中では7個)を含む。
【0003】
インフルエンザAウイルスは、ヒト、ブタ、ウマ、海洋哺乳類、および鳥類などの多くの動物に感染する(Nicholson et al.、2005)。その天然宿主は水辺性鳥類であり、鳥類では、大部分のインフルエンザウイルス感染は、気道および腸管の軽い局所感染を引き起こす。しかしながら、このウイルスは家禽において高病原性の影響を有することがあり、突発的に大発生し、罹患した家禽集団中で高い死亡率を引き起こす可能性がある。
【0004】
インフルエンザAウイルスは、ウイルス結合および細胞放出に必要とされる表面糖タンパク質、すなわちヘマグルチニン(HA)およびノイラミニダーゼ(NA)をコードする2つの遺伝子の抗原領域対立遺伝子変異に基づいて複数の亜型に分類することができる。他の主なウイルスタンパク質には、核タンパク質、ヌクレオカプシド構造タンパク質、マトリクスタンパク質(M1およびM2)、ポリメラーゼ(PA、PB1およびPB2)、および非構造タンパク質(NS1およびNS2)がある。
【0005】
少なくとも16個のHAの亜型(H1〜H16)および9個のNA(N1〜N9)抗原変異体がインフルエンザAウイルスにおいて知られている。鳥類インフルエンザ株は、低病原性および高病原性株として特徴付けることも可能である。低病原性株はHA前駆体の切断部位の位置-1および-3に2つの塩基性アミノ酸のみを典型的に有し、一方高病原性株は多塩基切断部位を有する。亜型H5およびH7は家禽において高病原性感染を引き起こす可能性があり、特定の亜型はヒトとの種の壁を越えることが示されている。高病原性H5およびH7ウイルスは、飼育家禽において低病原性前駆体から出現する可能性もある。鳥インフルエンザ感染の症状は、典型的なインフルエンザ型症状(発熱、咳、咽頭痛および筋肉痛)から、結膜炎、肺炎、急性呼吸窮迫、および他の生命を脅かす合併症に及ぶ。
【0006】
畜産業における生産性および福利を改善するためだけでなく、さらにヒトへの健康上のリスクを低減するための、家禽などの動物中のインフルエンザウイルスの生存および/または複製を制御する方法を開発する必要性が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】US20070004667
【特許文献2】EP0320308
【特許文献3】米国特許第4,883,750号
【特許文献4】米国特許第7,067,308号
【特許文献5】米国特許第5,162,215号
【特許文献6】米国特許第7,145,057号
【特許文献7】米国特許出願第20060206952号
【特許文献8】米国特許第4,897,355号
【特許文献9】米国特許第5,264,618号
【特許文献10】米国特許第5,459,127号
【特許文献11】米国特許第5,279,833号
【特許文献12】米国特許第5,283,185号
【特許文献13】米国特許第5,932,241号
【特許文献14】米国特許第5,837,533号
【特許文献15】米国特許第6,127,170号
【特許文献16】米国特許第6,379,965号
【特許文献17】WO03/093449
【特許文献18】米国特許第4,903,635号
【特許文献19】米国特許第5,056,464号
【特許文献20】米国特許第5,136,979号
【特許文献21】US20060075973
【特許文献22】米国特許第4,501,729号
【特許文献23】US60/938,315
【特許文献24】AU2007902616
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】J.Perbal、A Practical Guide to Molecular Cloning、John Wiley and Sons(1984)
【非特許文献2】J.Sambrook et al.、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、Cold Spring Harbour Laboratory Press(1989)
【非特許文献3】T.A.Brown(編者)、Essential Molecular Biology: A Practical Approach、Volumes1および2、IRL Press(1991)
【非特許文献4】D.M.Glover and B.D.Hames(編者)、DNA Cloning: A Practical Approach、Volumes1〜4、IRL Press(1995および1996)
【非特許文献5】F.M.Ausubel et al.(編者)、Current Protocols in Molecular Biology、Greene Pub.Associates and Wiley-Interscience(1988、現在までの全ての最新版含む)
【非特許文献6】Ed Harlow and David Lane(編者)Antibodies: A Laboratory Manual、Cold Spring Harbour Laboratory、(1988)
【非特許文献7】J.E.Coligan et al.(編者)Current Protocols in Immunology、John Wiley & Sons (現在までの全ての最新版含む)
【非特許文献8】「PCR」(Ed.M.J.McPherson and S.G Moller(2000)BIOS Scientific Publishers Ltd、Oxford)
【非特許文献9】Houdebine、Transgenic animals-Generation and Use(Harwood Academic、1997)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者らは、感染動物細胞において、インフルエンザウイルスの複製および/または生成を低減することができる二本鎖領域を含む核酸分子を同定した。
【課題を解決するための手段】
【0010】
したがって、本発明は、二本鎖領域を含むRNA分子をコードする核酸コンストラクトであって、このRNA分子が、このRNA分子を欠く同系インフルエンザAウイルス感染動物細胞と比較したときに、動物細胞中のインフルエンザAウイルスの複製を低減させ、かつ/または動物細胞中の感染性インフルエンザAウイルス粒子の生成を低減させ、かつ/またはインフルエンザAウイルス感染動物細胞中のインフルエンザAウイルスポリペプチドの発現を低減させる、核酸コンストラクトを提供する。
【0011】
二本鎖領域は、
(i)配列番号1の位置2240〜2341内のヌクレオチド、
(ii)配列番号2の位置2257〜2341内のヌクレオチド、
(iii)配列番号3の位置2087〜2233内のヌクレオチド、
(iv)配列番号4の位置1484〜1565内のヌクレオチド、
(v)配列番号6〜15または52〜54のいずれか1つのヌクレオチド配列、
(vi)(i)〜(v)のいずれか1つと少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列、
(vii)ストリンジェントな条件下で(i)〜(v)のいずれか1つとハイブリダイズするヌクレオチド配列から選択されるヌクレオチドの配列を含むことが好ましい。
【0012】
一実施形態では、このRNA分子は、このRNA分子を欠く同系インフルエンザAウイルス感染動物細胞と比較したとき、動物細胞中のインフルエンザAウイルスの複製を低減させる。別の実施形態では、このRNA分子は、このRNA分子を欠く同系インフルエンザAウイルス感染動物細胞と比較したとき、動物細胞中の感染性インフルエンザAウイルス粒子の生成を低減させる。さらに別の実施形態では、このRNA分子は、このRNA分子を欠く同系感染動物細胞と比較したとき、インフルエンザAウイルス感染動物細胞中のインフルエンザAウイルスポリペプチドの発現を低減させる。
【0013】
インフルエンザAウイルスは、鳥インフルエンザウイルスであることが好ましい。
【0014】
本発明の核酸コンストラクトは、二本鎖領域を含む任意の型のRNA分子をコードすることができる。二本鎖領域は少なくとも19塩基対長であることが好ましい。二本鎖領域は100塩基対長未満であることも好ましい。
【0015】
特に好ましい実施形態では、コードされるRNA分子は低分子ヘアピン型RNAである。
【0016】
好ましい一実施形態では、RNA分子によってコードされる二本鎖領域は、配列番号7のヌクレオチドの配列を含む。
【0017】
別の好ましい実施形態では、RNA分子によってコードされる二本鎖領域は、配列番号9のヌクレオチドの配列を含む。
【0018】
別の好ましい実施形態では、RNA分子によってコードされる二本鎖領域は、配列番号12のヌクレオチドの配列を含む。
【0019】
さらに別の好ましい実施形態では、RNA分子によってコードされる二本鎖領域は、配列番号6のヌクレオチドの配列を含む。
【0020】
好ましい一実施形態では、RNA分子によってコードされる二本鎖領域は、配列番号8のヌクレオチドの配列を含む。
【0021】
さらに別の好ましい実施形態では、RNA分子によってコードされる二本鎖領域は、配列番号13のヌクレオチドの配列を含む。
【0022】
さらに別の好ましい実施形態では、RNA分子によってコードされる二本鎖領域は、配列番号15のヌクレオチドの配列を含む。
【0023】
幾つかの場合、核酸コンストラクトが2つ以上のRNA分子、例えば2、3、4、5つまたはそれより多くのRNA分子をコードすることは望ましい可能性がある。したがって、本発明は、2つ以上のRNA分子をコードする核酸コンストラクトを提供する。コードされるRNA分子は異なるか同じでよく、またはそれらの組合せであってよい。さらに、コードされるRNA分子は、同じまたは異なるインフルエンザAウイルス遺伝子、またはそれらの組合せを標的化することができる。一実施形態では、それぞれのRNA分子は、異なるインフルエンザAウイルス遺伝子に相当するヌクレオチド配列を含む。
【0024】
本発明は、それぞれのRNA分子が、RNAポリメラーゼIIプロモーターまたはRNAポリメラーゼIIIプロモーターと作用可能に連結したヌクレオチド配列によってコードされる、本発明の核酸コンストラクトをさらに提供する。好ましい実施形態では、プロモーターはRNAポリメラーゼIIIプロモーターである。
【0025】
幾つかの場合、プロモーター配列が、核酸コンストラクトをトランスフェクト/形質転換する動物および/または細胞、またはその子孫由来の天然に存在するプロモーター配列と同じであることが望ましい可能性がある。一実施形態では、プロモーターはニワトリ、シチメンチョウおよび/またはアヒルのプロモーターである。
【0026】
プロモーターはU6、7SKおよび/またはH1プロモーターから選択されることが好ましい。
【0027】
特定の一実施形態では、U6プロモーターはcU6-1、cU6-2、cU6-3、および/またはcU6-4である。
【0028】
さらなる実施形態では、プロモーターは配列番号22〜25のいずれか1つから選択されるヌクレオチド配列を含む。
【0029】
本発明者らは、shRNAの転写を誘導するのに必要とされる最小量のプロモーター配列を含有するU6プロモーターを含む核酸コンストラクトは、U6プロモーターと上流配列の追加的な100bpとを含むコンストラクトと、shRNAの転写において少なくとも同程度有効であったことを予想外に発見した。したがって、本発明の一実施形態では、プロモーターは配列番号22〜25のいずれか1つから選択されるヌクレオチド配列からなる。
【0030】
さらに別の実施形態では、RNA分子をコードするそれぞれのヌクレオチド配列は、異なるRNAポリメラーゼIIIプロモーターと作用可能に連結している。
【0031】
一実施形態では、RNA分子は配列番号1〜5のいずれか1つによってコードされるインフルエンザAウイルスポリペプチドの発現を低減させる。
【0032】
特定の一実施形態では、インフルエンザAウイルスポリペプチドはPB1、PB2、PA、NPおよび/またはM1から選択することができる。ポリペプチドは鳥インフルエンザポリペプチドであることが好ましい。
【0033】
一実施形態では、鳥インフルエンザは高病原性株である。
【0034】
鳥インフルエンザはH5N1であることが好ましい。
【0035】
別の実施形態では、コンストラクトはインフルエンザAウイルス配列と天然に存在する宿主動物配列のみを含む。例えば、ニワトリへのトランスフェクション用にコンストラクトを設計するとき、核酸コンストラクトはニワトリおよびインフルエンザAウイルス配列からなることが望ましいはずである。したがって、一実施形態において本発明は、ニワトリおよびインフルエンザAウイルスヌクレオチド配列からなる本発明の核酸コンストラクトを提供する。
【0036】
好ましい実施形態では、本発明の核酸コンストラクトは、二本鎖領域を含む3つのRNA分子をコードし、前記二本鎖領域は
(i)配列番号9、配列番号13および配列番号15、
(ii)配列番号6、配列番号7および配列番号8、ならびに
(iii)配列番号7、配列番号9および配列番号12
から選択されるヌクレオチド配列を含む。
【0037】
別の好ましい実施形態では、核酸コンストラクトは、配列番号16〜21および61〜63から選択されるヌクレオチド配列、もしくはその断片、または配列番号16〜21および61〜63から選択されるヌクレオチド配列と少なくとも95%同一である配列を含む。断片は配列の5'および/または3'末端から100以下のヌクレオチド、より好ましくは配列の5'および/または3'末端から50以下のヌクレオチド、より好ましくは配列の5'および/または3'末端から20以下のヌクレオチド、より好ましくは配列の5'および/または3'末端から10以下のヌクレオチドを欠くヌクレオチド配列を含むことが好ましい。
【0038】
本発明は、二本鎖領域を含む単離および/または外因性核酸分子であって、前記二本鎖領域が、
(i)配列番号1の位置2240〜2341内のヌクレオチド、
(ii)配列番号2の位置2257〜2341内のヌクレオチド、
(iii)配列番号3の位置2087〜2233内のヌクレオチド、
(iv)配列番号4の位置1484〜1565内のヌクレオチド、
(v)配列番号6〜15または52〜54のいずれか1つのヌクレオチド配列、
(vi)(i)〜(v)のいずれか1つと少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列、
(vii)ストリンジェントな条件下で(i)〜(v)のいずれか1つとハイブリダイズするヌクレオチド配列
から選択されるヌクレオチドの配列を含む、単離および/または外因性核酸分子をさらに提供する。
【0039】
一実施形態では、前記の単離および/または外因性核酸分子は、この核酸分子を欠く同系インフルエンザAウイルス感染動物細胞と比較したとき、動物細胞中のインフルエンザAウイルスの複製を低減させる。別の実施形態では、前記の単離および/または外因性核酸分子は、この核酸分子を欠く同系インフルエンザAウイルス感染動物細胞と比較したとき、動物細胞中の感染性インフルエンザAウイルス粒子の生成を低減させる。さらに別の実施形態では、前記の単離および/または外因性核酸分子は、この核酸分子を欠く同系インフルエンザAウイルス感染動物細胞と比較したとき、インフルエンザAウイルス感染動物細胞中のインフルエンザAウイルスポリペプチドの発現を低減させる。
【0040】
別の実施形態では、前記の本発明の単離および/または外因性核酸分子は、配列番号1〜5のいずれか1つによってコードされるインフルエンザAウイルスポリペプチドの発現を低減させる。
【0041】
前記の単離および/または外因性核酸分子の二本鎖領域は、少なくとも19ヌクレオチド長であることが好ましい。幾つかの実施形態では、二本鎖領域は100ヌクレオチド長未満であることが好ましい。
【0042】
一実施形態では、前記の単離および/または外因性核酸分子は二本鎖RNAを含む。
【0043】
前記の単離および/または外因性核酸分子は、低分子干渉RNAまたは低分子ヘアピン型RNAであることが好ましい。
【0044】
好ましい一実施形態では、前記の単離および/または外因性核酸分子は、配列番号16〜21および61〜63から選択されるヌクレオチド配列、もしくはその断片、または配列番号16〜21および61〜63から選択されるヌクレオチド配列と少なくとも95%同一である配列を含む。断片は配列の5'および/または3'末端から100以下のヌクレオチド、より好ましくは配列の5'および/または3'末端から50以下のヌクレオチド、より好ましくは配列の5'および/または3'末端から20以下のヌクレオチド、より好ましくは配列の5'および/または3'末端から10以下のヌクレオチドを欠くヌクレオチド配列を含むことが好ましい。
【0045】
本発明の一実施形態では、核酸コンストラクトならびに/または単離および/もしくは外因性核酸分子は、細胞のゲノム中に存在する。
【0046】
本発明は、本発明の核酸コンストラクトならびに/または本発明の単離および/もしくは外因性核酸分子を含むベクターをさらに提供する。
【0047】
本発明は、本発明の核酸コンストラクト、単離および/もしくは外因性核酸分子ならびに/またはベクターを含む細胞をさらに提供する。
【0048】
本発明の一実施形態では、細胞は始原生殖細胞、例えばニワトリの始原生殖細胞である。
【0049】
本発明は、本発明の核酸コンストラクト、単離および/もしくは外因性核酸分子、ベクターならびに/または細胞を含むトランスジェニック非ヒト生物をさらに提供する。トランスジェニック生物は任意の生物、例えば動物または植物であってよい。
【0050】
一実施形態では、トランスジェニック生物は非ヒト動物である。
【0051】
別の実施形態では、トランスジェニック生物は鳥類である。好ましい実施形態では、トランスジェニック生物は家禽である。さらにより好ましい実施形態では、トランスジェニック生物はニワトリ、シチメンチョウまたはアヒルである。
【0052】
一実施形態では、本発明のトランスジェニック生物は、二本鎖領域を含む少なくとも1つのRNA分子をコードする、配列番号16〜21および61〜63から選択されるヌクレオチド配列、もしくはその断片、または配列番号16〜21および61〜63から選択されるヌクレオチド配列と少なくとも95%同一である配列を含む。配列番号16〜21および61〜63と密接に関係がある断片および/または配列は、この実施形態によって包含される;なぜならば、生物のゲノム中に組み込まれるときコンストラクトの5'および/または3'領域が消失する可能性があり、および/または多世代にわたる細胞分裂中のわずかな突然変異が元のコンストラクトと比較したとき1個または数個のヌクレオチドの違いをもたらす可能性があるからである。断片は配列の5'および/または3'末端から100以下のヌクレオチド、より好ましくは配列の5'および/または3'末端から50以下のヌクレオチド、より好ましくは配列の5'および/または3'末端から20以下のヌクレオチド、より好ましくは配列の5'および/または3'末端から10以下のヌクレオチドを欠くヌクレオチド配列を含むことが好ましい。
【0053】
さらなる実施形態では、トランスジェニック生物は2つ以上の本発明の核酸コンストラクトを含む。
【0054】
本発明は、本発明の核酸コンストラクト、本発明の単離および/もしくは外因性核酸分子、本発明のベクター、本発明の細胞ならびに/または本発明の核酸分子を含む組成物をさらに提供する。
【0055】
本発明の核酸コンストラクト、単離および/または外因性核酸分子、ベクターならびに宿主細胞を使用して、対象中のインフルエンザAウイルス感染を治療および/または予防することができる。例えば、核酸コンストラクト、単離および/または外因性核酸分子、ベクターならびに宿主細胞を使用して、ニワトリ、シチメンチョウまたはアヒルだけには限られないが、これらなどの家禽を鳥インフルエンザから保護することができる。さらに、鳥類の集団における鳥インフルエンザの局地的発生の場合、鳥インフルエンザの発生を封じ込める試みにおいて、周辺地域、例えば周辺飼育場内の鳥類を感染から保護することが望ましい可能性がある。
【0056】
したがって、本発明は、対象中のインフルエンザAウイルス感染を治療および/または予防する方法であって、本発明の核酸コンストラクト、本発明の単離および/もしくは外因性核酸分子、本発明のベクター、ならびに/または本発明の細胞を対象に投与するステップを含む方法をさらに提供する。
【0057】
一実施形態では、その方法は、飲料水中またはエアロゾル中の核酸コンストラクト、単離および/または外因性核酸分子、ベクター、および/または細胞を投与するステップを含む。
【0058】
特定の一実施形態では、インフルエンザAウイルスは鳥インフルエンザである。
【0059】
鳥インフルエンザは高病原性株であることが好ましい。
【0060】
最も好ましい実施形態では、鳥インフルエンザはH5N1である。
【0061】
好ましくは、対象は鳥類であり、より好ましくは家禽である。最も好ましい実施形態では、対象はニワトリ、シチメンチョウまたはアヒルである。
【0062】
本発明は、細胞中の1つまたは複数のインフルエンザAウイルス遺伝子の発現を低減させる方法であって、本発明の単離および/または外因性核酸分子を細胞に投与するステップを含む方法をさらに提供する。
【0063】
本発明は、インフルエンザAウイルス感染を治療および/または予防するための医薬品の製造における、本発明の核酸コンストラクト、本発明の単離および/もしくは外因性核酸分子、本発明のベクター、ならびに/または本発明の細胞の使用をさらに提供する。
【0064】
本発明は、本発明の核酸コンストラクト、または本発明の単離および/もしくは外因性核酸分子を含む動物を同定する方法であって、
動物から得たサンプル中の本発明の核酸コンストラクトならびに/または本発明の単離および/もしくは外因性核酸分子の有無を決定するステップを含む方法をさらに提供する。
【0065】
一実施形態では、その方法は、核酸コンストラクトもしくはその断片、あるいは単離および/もしくは外因性核酸分子またはその断片を増幅するステップを含む。
【0066】
別の実施形態では、その方法は、
動物から得たサンプルを、ストリンジェントな条件下で核酸コンストラクトまたは単離および/もしくは外因性核酸分子とハイブリダイズするプローブと接触させて複合体を形成するステップと、
複合体の有無を決定するステップと
を含む。
【0067】
本発明は、インフルエンザに耐性がある非ヒトトランスジェニック動物を繁殖する方法であって、
(i)本発明の核酸コンストラクトを非ヒト動物細胞中に導入するステップと、
(ii)核酸コンストラクトを含むトランスジェニック非ヒト細胞を選択するステップと、
(iii)トランスジェニック非ヒト細胞からトランスジェニック非ヒト動物を再生するステップと、
(iv)トランスジェニック非ヒト動物を繁殖させてトランスジェニック子孫を生成するステップと、
(v)インフルエンザに耐性があるトランスジェニック子孫を選択するステップと
を含む方法をさらに提供する。
【0068】
本発明は、食料を生産する方法であって、
(i)本発明の核酸コンストラクトを動物細胞中に導入するステップと、
(ii)核酸コンストラクトを含むトランスジェニック細胞を選択するステップと、
(iii)トランスジェニック細胞からトランスジェニック動物を再生するステップと、
(iv)トランスジェニック動物を繁殖させてトランスジェニック子孫を生成するステップと、
(v)トランスジェニック子孫から食料を生産するステップと
を含む方法をさらに提供する。
【0069】
一実施形態では、食料は肉および卵から選択される。
【0070】
本発明は、インフルエンザに耐性があるトランスジェニック非ヒト動物を作製する方法であって、
(i)トランスポゾンを含む第一の核酸を細胞中に導入するステップであって、前記の核酸が二本鎖RNA分子をコードするステップと、
(ii)トランスポザーゼをコードする第二の核酸を細胞中に導入するステップと、
(iii)細胞のゲノム中に第一の核酸を含むトランスジェニック細胞を選択するステップと、
(iv)細胞からトランスジェニック非ヒト動物を再生するステップと、
(v)トランスジェニック非ヒト動物を繁殖させるステップと
を含む方法をさらに提供する。
【0071】
一つの核酸分子上の第一および第二の核酸を細胞中に導入することができ、または代替的に、別個の核酸分子上の第一および第二の核酸を細胞中に導入することができる。別個の核酸分子上の第一および第二の核酸を細胞中に導入することが好ましい。
【0072】
一実施形態では、トランスポゾンはTol2トランスポゾンであり、かつトランスポザーゼはTol2トランスポザーゼである。
【0073】
別の実施形態では、細胞はニワトリの始原生殖細胞である。
【0074】
本発明は、インフルエンザに耐性があるトランスジェニック非ヒト動物をさらに提供する。
【0075】
一実施形態では、トランスジェニック動物は、二本鎖領域を含むRNA分子をコードする核酸コンストラクトを含み、このRNA分子は、このRNA分子を欠く同系インフルエンザウイルス感染動物細胞と比較したとき、動物の細胞中のインフルエンザウイルスの複製を低減させる。
【0076】
別の実施形態では、トランスジェニック動物は、二本鎖領域を含むRNA分子をコードする核酸コンストラクトを含み、このRNA分子は、このRNA分子を欠く同系インフルエンザウイルス感染動物細胞と比較したとき、動物の細胞中の感染性インフルエンザウイルス粒子の生成を低減させる。
【0077】
別の実施形態では、トランスジェニック動物は、二本鎖領域を含むRNA分子をコードする核酸コンストラクトを含み、このRNA分子は、このRNA分子を欠く同系インフルエンザウイルス感染動物細胞と比較したとき、インフルエンザウイルス感染動物の細胞中のインフルエンザウイルスポリペプチドの発現を低減させる。
【0078】
さらに別の実施形態では、トランスジェニック非ヒト動物はニワトリであり、インフルエンザはインフルエンザAである。
【0079】
トランスジェニック非ヒト生物は、本発明の核酸コンストラクト、本発明の単離もしくは外因性核酸分子、本発明のベクターおよび/または本発明の細胞を含むことが好ましい。
【0080】
本発明は、繁殖のための、本発明の非ヒトトランスジェニック動物または本発明のトランスジェニック非ヒト生物の使用をさらに提供する。
【0081】
本発明は、食料生産のための、本発明の非ヒトトランスジェニック動物または本発明の非ヒトトランスジェニック生物の使用をさらに提供する。
【0082】
明らかとなるように、本発明の一態様の好ましい特徴および特性は、本発明の多くの他の態様に適用可能である。
【0083】
本明細書を通じて、語句「含む(comprise)」、または「含む(comprises)」もしくは「含んでいる(comprising)」などの変形は、言及する要素、整数もしくはステップ、または複数の要素、整数もしくはステップの群の包含を暗示し、任意の他の要素、整数もしくはステップ、または複数の要素、整数もしくはステップの群の除外は暗示しないことは理解されよう。
【0084】
下記の非限定的な実施例により、添付の図面を参照しながら以下に本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】shRNA発現カセットに関するPCRの図である。shRNA発現ベクターを生成するために使用したPCR戦略の概略図である。PCRは全てのshRNA構成要素を含む逆方向プライマーと対形成する順方向プライマーを使用した。全ての最終PCR産物は、ニワトリU6または7SKプロモーター、shRNAセンス、ループ、shRNAアンチセンス、終結配列およびXhoI部位からなっていた。
【図2】MWH-1導入遺伝子の構築の図である。A、個々の転写単位はワンステップPCR手法を使用して生成した。PCR産物は、ニワトリpolIIIプロモーターおよびshRNA構成要素(センス、ループ、アンチセンスおよび終結配列)を含有する。B、3つの転写単位を、PCR産物の5'および3'末端上で適合性SalIおよびXhoI部位を使用して一つに連結させた。C、最終導入遺伝子は、3つの個々のshRNAを発現して選択したインフルエンザAウイルス遺伝子を標的化する3つの転写単位を含有する。
【図3】pStuffitのプラスミドマップ(6151塩基対)の図である。ニワトリゲノムの4つのクローン領域をマップ上で標識し陰影付けする。クローニング制限部位および他の関連導入制限部位を示す。MWH導入遺伝子をME1 200とGRM5 200の間に位置する特有EcoRI部位に挿入する。pIC20HのHindIII酵素部位を使用して、ニワトリゲノム中に挿入するための一断片としてスタッファー/バッファー隣接配列を含むMWH導入遺伝子全体を切除することができる。
【図4】トランスジェニックマウスのインフルエンザ抗原投与の図である。A、shEGFPを発現するマウスに対するshNP-1496を発現するマウスにおける重量パーセントの変化。B、shEGFPを発現するマウスに対するshNP-1496を発現するマウスにおける相対的なウイルス遺伝子発現。
【0086】
配列表の手掛かり
配列番号1-インフルエンザA PB2遺伝子のコンセンサスヌクレオチド配列。
配列番号2-インフルエンザA PB1遺伝子のコンセンサスヌクレオチド配列。
配列番号3-インフルエンザA PA遺伝子のコンセンサスヌクレオチド配列。
配列番号4-インフルエンザA NP遺伝子のコンセンサスヌクレオチド配列。
配列番号5-インフルエンザA M1遺伝子のコンセンサスヌクレオチド配列。
配列番号6〜15-インフルエンザA遺伝子および/またはそれによってコードされるmRNAを標的化する核酸分子のヌクレオチド配列。
配列番号16-MWH1のヌクレオチド配列およびスタッファー配列。5'スタッファー(ヌクレオチド1〜1748);cU6-3 shMP-592(ヌクレオチド1759〜2234);cU6-1 shPA-2087(ヌクレオチド2235〜2622);cU6-4 shNP-1496(ヌクレオチド2623〜2974);3'スタッファー(ヌクレオチド2985〜4745)。
配列番号17-MWH2のヌクレオチド配列およびスタッファー配列。5'スタッファー(ヌクレオチド1〜1748);cU6-4 shPB1-2257(ヌクレオチド1774〜2125);cU6-1 shPB2-2240(ヌクレオチド2126〜2513);c7SK shPB1-129(ヌクレオチド2514〜2911);3'スタッファー(ヌクレオチド2936〜4696)。
配列番号18-MWH3のヌクレオチド配列およびスタッファー配列。5'スタッファー(ヌクレオチド1〜1748);cU6-4 shNP-1484(ヌクレオチド1774〜2129);cU6-1 shPA-2087(ヌクレオチド2130〜2517);c7SK shPB1-2257(ヌクレオチド2518〜2917);3'スタッファー(ヌクレオチド2947〜4702)。
配列番号19-MWH1のヌクレオチド配列。
配列番号20-MWH2のヌクレオチド配列。
配列番号21-MWH3のヌクレオチド配列。
配列番号22-ニワトリU6-1プロモーター(cU6-1)のヌクレオチド配列。
配列番号23-ニワトリU6-3プロモーター(cU6-3)のヌクレオチド配列。
配列番号24-ニワトリU6-4プロモーター(cU6-4)のヌクレオチド配列。
配列番号25-ニワトリ7SKプロモーターのヌクレオチド配列。
配列番号26〜51-オリゴヌクレオチドプライマー。
配列番号52〜54-インフルエンザA遺伝子および/またはそれによってコードされるmRNAを標的化する核酸分子のヌクレオチド配列。
配列番号55〜60-オリゴヌクレオチドプライマー。
配列番号61-MWH4のヌクレオチド配列。
配列番号62-MWH3およびTol2トランスポゾンのヌクレオチド配列。
配列番号63-MWH4およびTol2トランスポゾンのヌクレオチド配列。
【発明を実施するための形態】
【0087】
一般的技法および選択定義
他に具体的に定義しない限り、本明細書で使用する全ての技術および科学用語は、(例えば、細胞培養、分子遺伝学、ウイルス学、免疫学、免疫組織化学、タンパク質化学、および生化学における)当業者によって一般的に理解されているのと同じ意味を有するものとする。
【0088】
他に示さない限り、本発明中で利用する分子生物学、ウイルス学、細胞培養、および免疫学の技法は、当業者によく知られている標準的手順である。このような技法は、J.Perbal、A Practical Guide to Molecular Cloning、John Wiley and Sons(1984)、J.Sambrook et al.、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbour Laboratory Press(1989)、T.A.Brown(編者)、Essential Molecular Biology:A Practical Approach、Volumes1および2、IRL Press(1991)、D.M.Glover and B.D.Hames(編者)、DNA Cloning:A Practical Approach、Volumes1〜4、IRL Press(1995および1996)、およびF.M.Ausubel et al.(編者)、Current Protocols in Molecular Biology、Greene Pub.Associates and Wiley-Interscience(1988、現在までの全ての最新版含む)、Ed Harlow and David Lane(編者)Antibodies:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbour Laboratory、(1988)、およびJ.E.Coligan et al.(編者)Current Protocols in Immunology、John Wiley & Sons (現在までの全ての最新版含む)などの文献情報源中で記載および説明されており、かつ参照により本明細書に組み込まれている。
【0089】
本明細書で使用する用語「治療すること(treating)」、「治療する(treat)」または「治療(treatment)」は、インフルエンザAウイルス、特に鳥インフルエンザウイルス感染の少なくとも1つの症状を低減または除去するのに十分な、治療有効量の本発明の核酸コンストラクト、ベクター、細胞および/または核酸分子を投与することを含む。
【0090】
用語「予防すること(preventing)」は、インフルエンザAウイルスに曝された対象がインフルエンザAウイルス感染の少なくとも1つの症状を発症するのを防御すること、またはインフルエンザAウイルスに曝された対象中の感染の症状の重度を低減させることを指す。
【0091】
本明細書で使用するように、ウイルス性病原菌に「耐性がある」動物は、ウイルス性病原菌に曝されたとき、例えばインフルエンザウイルスに曝されたときに感染しやすい動物と比較して、低減した疾患症状または無症状を示す。
【0092】
本明細書で使用する用語「鳥類」は、ニワトリ、シチメンチョウ、アヒル、ガチョウ、ウズラ、キジ、オウム、フィンチ、タカ、カラスならびにダチョウ、エミューおよびヒクイドリを含めた走鳥類などの生物だけには限られないが、これらなどの、分類学の鳥綱の生物の任意の種、亜種、または品種を指す。この用語は、様々な既知の系統の野鶏属(ニワトリ)、例えば白色レグホン、茶色レグホン、プリマスロック、サセックス、ニューハンプシャー、ロードアイランドレッド、オーストラロープ、コーニッシュ、ミノルカ、アムロックス、カリフォルニアグレイ、ヨーロッパヤマウズラ、ならびにシチメンチョウ、キジ、ウズラ、アヒル、ダチョウの系統、ならびに商業的生産量で一般に繁殖される他の家禽を含む。
【0093】
用語「家禽」は、肉または卵用に飼育、採取、または家畜化される全ての鳥類、例えばニワトリ、シチメンチョウ、ダチョウ、闘鶏、ひな鳥、ホロホロチョウ、キジ、ウズラ、アヒル、ガチョウ、およびエミューを含む。
【0094】
本明細書で使用する「鳥インフルエンザウイルス」は、鳥類に感染する可能性がある任意のインフルエンザAウイルスを指す。鳥インフルエンザウイルスの例には亜型H1〜H16、およびN1〜N9のいずれかの1つまたは複数があるが、これらだけには限られず、かつ高病原性および低病原性株を含む。一実施形態では、鳥インフルエンザウイルスはH5亜型のウイルスである。別の実施形態では、鳥インフルエンザウイルスはH7亜型のウイルスである。別の実施形態では、鳥インフルエンザウイルスはH5N1亜型のウイルスである。
【0095】
用語「インフルエンザAウイルスポリペプチド」は、インフルエンザAウイルス遺伝子によってコードされる任意のタンパク質、例えばPB1、PB1-F2、PB2、ポリメラーゼPA(PA)、ヘマグルチニン(HA)、ヌクレオカプシドタンパク質(NP)、ノイラミニダーゼ(NA)、マトリクスタンパク質1(M1)、マトリクスタンパク質2(M2)、非構造タンパク質1(NS1)および非構造タンパク質2(NS2)を指す。
【0096】
本明細書で使用する「ウイルスの複製」は、宿主細胞中のウイルスゲノムの増幅を指す。
【0097】
本明細書で使用する用語「ウイルス粒子」は、タンパク質殻またはカプシドによって囲まれる核酸を含むウイルス構造全体と関係があるとして理解されよう。ウイルスの幾つかの粒子はタンパク質殻によって囲まれる糖タンパク質エンベロープも含み、この場合用語ウイルス粒子はウイルスエンベロープも含む。「感染性ウイルス粒子」は、生物の細胞中に侵入し複製することができる。
【0098】
ポリペプチドまたは遺伝子の「発現を低減させる」または「発現を低減させている」によって、宿主細胞中のポリペプチド配列の翻訳および/またはヌクレオチド配列の転写が、下方制御または阻害されることを意味する。下方制御または阻害の程度は、宿主細胞に与えられる核酸コンストラクトまたは核酸分子の性質および量、コンストラクトから発現される1つまたは複数のRNA分子の同一性、性質、およびレベル、投与後の時間などと共に変わり得るが、例えば、標的遺伝子タンパク質発現および/または関連標的または細胞機能の検出可能な低下として明らかとなり、または例えば、ウイルス複製などのレベルの低下など、望ましくは本発明により処理しなかった細胞と比較して10%、33%、50%、75%、90%、95%または99%を超える阻害の程度が得られる。
【0099】
本明細書で使用する用語「対象」は動物、例えば、鳥類または哺乳動物を指す。一実施形態では、対象はヒトである。他の実施形態では、対象は鳥類、例えばニワトリ、シチメンチョウまたはアヒルなどの家禽であってよい。
【0100】
「サンプル」は、本発明の核酸コンストラクト、核酸分子、ベクター、および/または細胞を含有する疑いがある物質を指す。サンプルは供給源から直接得て、または(部分的)精製の少なくとも1つのステップの後に使用することができる。本発明の方法に干渉しない任意の好都合な培地中で、サンプルを調製することができる。典型的には、以下でより詳細に記載するようにサンプルは水溶液または生体液である。サンプルは例えば血液、血清、血漿、唾液、痰、接眼レンズ液、汗、糞便、尿、乳、腹水、粘液、滑液、腹膜液、経皮滲出液、咽頭滲出液、気管支肺胞洗浄液、気管吸引液、脳脊髄液、精液、頸管粘液、膣分泌物または尿道分泌物、羊水などを含めた生理液などの任意の供給源に由来しうる。一実施形態では、サンプルは血液またはその分画である。前処理は、例えば血液由来の血漿の調製、粘液の希釈などを含むことができる。処理の方法は、干渉成分の濾過、蒸溜、分離、濃縮、不活性化、および試薬の添加を含むことができる。試験前の生物サンプルの選択および前処理は当技術分野でよく知られており、さらに記載する必要はない。
【0101】
本明細書で使用する用語「トランスポゾン」は、トランスポゾンと挿入部位の間の広範囲のDNA配列相同性、および古典的相同交叉に必要な組換え酵素を必要としないプロセスによって、生物のゲノム内の1つの位置から他の位置に移動(転位)することができる遺伝エレメントを指す。
【0102】
本明細書で使用する「同系」は、ほぼ同一であるゲノムDNA、例えば同系生物または細胞のゲノムDNAと少なくとも約92%、好ましくは少なくとも約98%、および最も好ましくは少なくとも約99%同一であるゲノムDNAによって特徴付けられる生物または細胞を指す。
【0103】
本明細書で使用する用語「導入する」は、それが核酸コンストラクトまたは核酸分子に関するとき、可能な限り広義に解釈され、かつ細胞または生物中に存在する核酸コンストラクトまたは核酸分子を生成する任意の方法を含む。例えば、核酸コンストラクトまたは核酸分子は、任意の適切なトランスフェクションまたは形質転換技法、例えばエレクトロポレーションなどによって裸のDNAとして細胞に送達することができる。あるいは、核酸コンストラクトまたは核酸分子は、ゲノム中に挿入する、および/または細胞中で導入遺伝子によって発現させることが可能である。
【0104】
RNA干渉
用語「RNA干渉」、「RNAi」または「遺伝子サイレンシング」は、二本鎖RNA分子が、その二本鎖RNA分子が実質的または全体的相同性を共有する核酸配列の発現を低減させるプロセスを一般に指す。しかしながら、非RNA二本鎖分子を使用してRNA干渉を得ることができることが、さらに近年示されてきている(例えば、US20070004667参照)。
【0105】
本発明は、RNA干渉用の二本鎖領域を含むおよび/またはコードする核酸分子を含む。核酸分子は典型的にはRNAであるが、化学修飾されたヌクレオチドおよび非ヌクレオチドを含むことができる。
【0106】
二本鎖領域は少なくとも19の隣接ヌクレオチド、例えば約19〜23のヌクレオチドでなければならず、またはさらに長くてよく、例えば30もしくは50ヌクレオチド、または100ヌクレオチド以上であってよい。遺伝子転写産物全体に相当する完全長配列を使用することができる。それらは約19〜約23ヌクレオチド長であることが好ましい。
【0107】
標的転写産物と核酸分子の二本鎖領域の同一度は少なくとも90%、およびより好ましくは95〜100%でなければならない。核酸分子は当然ながら、分子を安定化するために機能し得る無関係な配列を含む可能性がある。
【0108】
本明細書で使用する用語「低分子干渉RNA」または「siRNA」は、二本鎖部分が50ヌクレオチド長未満、好ましくは約19〜約23ヌクレオチド長である、例えばRNAiを配列特異的な方法で仲介することにより遺伝子発現を阻害または下方制御することができるリボヌクレオチドを含む核酸分子を指す。例えば、siRNAは自己相補的センスおよびアンチセンス領域を含む核酸分子であってよく、この場合アンチセンス領域は標的核酸分子またはその一部分中のヌクレオチド配列と相補的であるヌクレオチド配列を含み、かつセンス領域は標的核酸配列またはその一部分に相当するヌクレオチド配列を有する。siRNAは2つの別個のオリゴヌクレオチドから構築することができ、この場合一方の鎖はセンス鎖でありもう一方はアンチセンス鎖であり、かつアンチセンス鎖とセンス鎖は自己相補的である。
【0109】
本明細書で使用する用語「siRNA」は、配列特異的RNAiを仲介することができる核酸分子、例えばミクロ-RNA(miRNA)、低分子ヘアピン型RNA(shRNA)、低分子干渉オリゴヌクレオチド、低分子干渉核酸(siNA)、低分子干渉修飾オリゴヌクレオチド、化学修飾siRNA、転写後遺伝子サイレンシングRNA(ptgsRNA)、およびその他を記載するために使用する、他の用語と同等であることを意味する。さらに、本明細書で使用する用語RNAiは、転写後遺伝子サイレンシング、翻訳阻害、またはエピジェネティクスなどの配列特異的RNA干渉を記載するために使用する、他の用語と同等であることを意味する。例えば、本発明のsiRNA分子を使用して、転写後レベルまたは転写前レベルの両方において、エピジェネティクスによって遺伝子を抑制することができる。非限定的な例では、本発明のsiRNA分子による遺伝子発現のエピジェネティック制御は、遺伝子発現を改変するためのクロマチン構造のsiRNA仲介型修飾からもたらすことができる。
【0110】
「shRNA」または「低分子ヘアピン型RNA」によって、約50未満のヌクレオチド、好ましくは約19〜約23のヌクレオチドが同じRNA分子上に位置する相補的配列と塩基対形成し、かつ前記配列と相補的配列が、塩基相補性の2領域によって生成されるステム構造上の一本鎖ループを形成する少なくとも約4〜約15ヌクレオチドの非対領域によって隔てられているRNA分子を意味する。一本鎖ループの配列の一例は5'UUCAAGAGA3'を含む。
【0111】
shRNAに含まれるのは、RNA分子が一本鎖スペーサー領域によって隔てられた2つ以上のこのようなステム-ループ構造を含む、デュアルまたはバイフィンガーおよびマルチフィンガーヘアピン型dsRNAである。
【0112】
設計した後、二本鎖領域を含む核酸分子を、当技術分野で知られている任意の方法、例えばin vitro転写によって、組換えによって、または合成手段によって生成することができる。
【0113】
ヌクレオチドの修飾体または類似体を導入して、本発明の核酸分子の性質を改善することができる。改善される性質には、ヌクレアーゼ耐性の増大および/または細胞膜を透過する能力の増大がある。したがって、用語「核酸分子」および「二本鎖RNA分子」は、イノシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2-アミノアデニン、6-メチル-、2-プロピル-および他のアルキル-アデニン、5-ハロウラシル、5-ハロシトシン、6-アザシトシンおよび6-アザチミン、シュードウラシル、4-チウラシル、8-ハロアデニン、8-アミノアデニン、8-チオールアデニン、8-チオールアルキルアデニン、8-ヒドロキシルアデニンおよび他の8置換アデニン、8-ハログアニン、8-アミノグアニン、8-チオールグアニン、8-チオアルキルグアニン、8-ヒドロキシルグアニンおよび他の置換グアニン、他のアザおよびデアザアデニン、他のアザおよびデアザグアニン、5-トリフルオロメチルウラシルおよび5-トリフルオロシトシンだけには限られないが、これらなどの合成修飾塩基を含む。
【0114】
核酸
「単離核酸分子」によって、本発明者らは、(それが元来完全に存在する場合)それがその天然状態で結合または連結しているヌクレオチド配列から一般に分離されている核酸分子を意味する。好ましくは、単離核酸分子は、それが元来結合している他の構成要素から、少なくとも60%遊離、より好ましくは少なくとも75%遊離、およびより好ましくは少なくとも90%遊離している。さらに、用語「核酸分子」は、用語「ポリヌクレオチド」と本明細書では互換的に使用する。
【0115】
核酸の文脈における用語「外因性」は、細胞中、または無細胞発現系中に存在するとき、その天然状態と比較して量が変化した(本発明の核酸コンストラクトを含めた)核酸を指す。特に好ましい実施形態では、細胞は、核酸または核酸コンストラクトを元来含まない細胞である。
【0116】
用語「核酸分子」または「ポリヌクレオチド」は、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチドまたはそれらの任意の断片を指す。それはゲノムまたは合成起源のDNAまたはRNAであってよく、炭水化物、脂質、タンパク質、または他の物質と組合せて本明細書で定義する個々の活性を実施することができる。
【0117】
核酸分子の同一率は、ギャップ生成ペナルティー=5、およびギャップ伸長ペナルティー=0.3で、GAP(Needleman and Wunsch、1970)分析(GCGプログラム)によって決定する。検索配列は少なくとも19ヌクレオチド長であり、GAP分析は少なくとも19ヌクレオチドの領域上の2配列のアラインメントをとる。あるいは、検索配列は少なくとも150ヌクレオチド長であり、GAP分析は少なくとも150ヌクレオチドの領域上の2配列のアラインメントをとる。あるいは、検索配列は少なくとも300ヌクレオチド長であり、GAP分析は少なくとも300ヌクレオチドの領域上の2配列のアラインメントをとる。2配列はそれらの全長でアラインメントをとることが好ましい。
【0118】
定義した核酸分子に関して、前に与えた数字より大きい同一率の数字は好ましい実施形態を包含することは理解されよう。したがって、適切である場合、最小の同一率の数字に照らし合わせて、核酸分子は、関連する所定の配列番号と少なくとも90%、より好ましくは少なくとも91%、より好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも93%、より好ましくは少なくとも94%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%、より好ましくは少なくとも99.1%、より好ましくは少なくとも99.2%、より好ましくは少なくとも99.3%、より好ましくは少なくとも99.4%、より好ましくは少なくとも99.5%、より好ましくは少なくとも99.6%、より好ましくは少なくとも99.7%、より好ましくは少なくとも99.8%、およびさらにより好ましくは少なくとも99.9%同一であるヌクレオチド配列を含むことが好ましい。
【0119】
本発明の核酸分子は、ストリンジェントな条件下でインフルエンザAウイルスポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと選択的にハイブリダイズすることができる。本明細書で使用するように、ストリンジェントな条件下は、(1)洗浄用に低イオン強度および高温、例えば、50℃で0.015MのNaCl/0.0015Mのクエン酸ナトリウム/0.1%のNaDodSO4を利用する、(2)ホルムアミドなどの変性剤、例えば50%(vol/vol)ホルムアミドおよび0.1%のウシ血清アルブミン、0.1%のFicoll、0.1%のポリビニルピロリドン、50mMのリン酸ナトリウムバッファー、pH6.5および750mMのNaCl、75mMのクエン酸ナトリウム、42℃をハイブリダイゼーション中に利用する、または(3)50%のホルムアミド、5×SSC(0.75MのNaCl、0.075Mのクエン酸ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH6.8)、0.1%のピロリン酸ナトリウム、5×デンハルトの溶液、超音波処理したサケ精子DNA(50g/ml)、0.1%のSDSおよび10%の硫酸デキストラン、42℃、0.2×SSCおよび0.1%のSDS中を利用する条件下である。
【0120】
本発明の核酸分子は、天然に存在する分子と比較したとき、ヌクレオチド残基の欠失、挿入、または置換である1つまたは複数の突然変異を有する領域(例えば天然に存在するプロモーター)を有し得る。突然変異体は天然に存在する(すなわち、天然源から単離された)、または(例えば、前に記載した核酸での部位特異的突然変異誘発の実施による)合成のいずれかであってよい。したがって、本発明のポリヌクレオチドは天然に存在するか、または組換え体のいずれかであってよいことは明らかである。
【0121】
通常、核酸のモノマーはホスホジエステル結合またはその類似体により連結して、比較的短いモノマー単位、例えば12〜18個から数百のモノマー単位までの大きさの範囲のオリゴヌクレオチドを形成する。ホスホジエステル結合の類似体には、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロセレノエート、ホスホロジセレノエート、ホスホロアニロチオエート、ホスホロアニリデート、ホスホロアミデートがある。
【0122】
核酸コンストラクト
本明細書で使用する「核酸コンストラクト」は、本明細書で定義する二本鎖RNA分子をコードする任意の核酸分子を指し、ベクター中の核酸分子、染色体外核酸分子として細胞中に存在するときの核酸分子、およびゲノムに組み込まれた核酸分子を含む。典型的には、核酸コンストラクトは、二本鎖DNAまたは二本鎖RNA、またはそれらの組合せであり得る。さらに、核酸コンストラクトは、二本鎖RNAをコードするオープンリーディングフレームと作用可能に連結した適切なプロモーターを典型的には含み得る。核酸コンストラクトは、異なる、または好ましくは同一の、核酸コンストラクトによる、二本鎖RNA分子の第一の一本鎖、および第二のオープンリーディングフレームによってコードされる相補的(第二の)鎖をコードする第一のオープンリーディングフレームを含むことができる。核酸コンストラクトは直線状断片または環状分子であってよく、それは複製することができるか、あるいはできない。本発明の核酸コンストラクトは適切なベクター内に含めることが可能であることを、当業者は理解しているはずである。レシピエント細胞への核酸コンストラクトのトランスフェクションまたは形質転換によって、細胞は核酸コンストラクトによってコードされるRNA分子を発現することができる。
【0123】
本発明の核酸コンストラクトは、二本鎖領域を含む多数の異なるRNA分子、例えば低分子ヘアピン型RNAを含めた、同一、および/または1つまたは複数(例えば、1、2、3、4、5個、またはそれより多く)の多数のコピーを発現することができる。互いに「同一である」と考えられるRNA分子は同一の二本鎖配列のみを含む分子であり、かつ互いに「異なる」と考えられるRNA分子は、それぞれの異なる二本鎖配列によって標的化される配列が、同一、または異なる遺伝子、または2個の異なる遺伝子の配列内に存在するかどうかとは無関係に、異なる二本鎖配列を含み得る。
【0124】
核酸コンストラクトは、追加的な遺伝的エレメントも含むことができる。コンストラクト中に含めることができるエレメントの型は決して制限されず、かつ当業者によって選択することができる。幾つかの実施形態では、核酸コンストラクトは導入遺伝子として宿主細胞に挿入する。このような場合、導入遺伝子挿入過程からRNA分子をコードする配列を保護し外部読み過ごし転写のリスクを低減するように設計された「スタッファー」断片をコンストラクト中に含めることは望ましい可能性がある。スタッファー断片は、例えば、プロモーターとコード配列および/またはターミネーター要素の間の距離を増大するためにコンストラクト中に含めることもできる。スタッファー断片は、5〜5000以上ヌクレオチドの任意の長さであってよい。プロモーター間には1つまたは複数のスタッファー断片が存在してよい。多数のスタッファー断片の場合、それらは同じ長さまたは異なる長さであってよい。スタッファーDNA断片は、異なる配列であることが好ましい。スタッファー配列は、それらが挿入されている細胞、またはその子孫内で見られる配列と同一である配列を含むことが好ましい。さらなる実施形態では、核酸コンストラクトは、(1つまたは複数の)二本鎖RNAをコードする(1つまたは複数の)オープンリーディングフレームと隣接するスタッファー領域を含む。
【0125】
あるいは、核酸コンストラクトは、(1つまたは複数の)二本鎖RNAをコードするオープンリーディングフレームと隣接する逆方向末端反復配列によって特徴付けられる、転位可能エレメント、例えばトランスポゾンを含むことができる。適切なトランスポゾンの例には、Tol2、ミニ-Tol、Sleeping Beauty、MarinerおよびGalluhopがある。
【0126】
核酸コンストラクト中に含めることができる追加的な遺伝的エレメントの他の例には、GFPまたはRFPなどの蛍光マーカータンパク質に関する1つまたは複数の遺伝子などのレポーター遺伝子、β-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、β-グルクロニダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼまたは胚分泌型アルカリホスファターゼなどの容易にアッセイ可能な酵素、またはイムノアッセイが容易に適用可能であるホルモンまたはサイトカインなどのタンパク質がある。本発明の実施形態において使用を見出すことができる他の遺伝的エレメントには、アデノシンデアミナーゼ、アミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ、ジヒドロ葉酸レダクターゼ、ヒグロマイシン-B-ホスホトランスフェラーゼなどの、選択的増殖の利点、または薬剤耐性を細胞に与える、タンパク質をコードするエレメントがある。
【0127】
核酸コンストラクトを動物にトランスフェクトする場合、プロモーターおよび任意の追加的な遺伝的エレメントは、その動物のゲノム中に本来存在するヌクレオチド配列からなることが望ましい。RNA分子をコードする配列はインフルエンザAウイルスの配列からなることがさらに望ましい。
【0128】
プロモーター
本明細書で使用する「プロモーター」は、作用可能に連結した核酸分子の転写を誘導することができる核酸配列を指し、例えばRNAポリメラーゼIIおよびRNAポリメラーゼIIIプロモーターを含む。細胞型特異的、組織特異的、または経時特異的形式でプロモーター依存性の遺伝子発現を調節可能にするのに十分である、または外部作用物質またはシグナルにより誘導可能である転写制御エレメント(例えばエンハンサー)も、この定義内に含まれる。
【0129】
プロモーターを含む核酸コンストラクトを宿主動物にトランスフェクトするとき、プロモーターはその動物のゲノム中に本来存在するプロモーターであることが望ましい。例えば、トランスジェニック動物がニワトリである場合、プロモーターはニワトリのプロモーターであることが好ましく、トランスジェニック動物がシチメンチョウである場合、プロモーターはシチメンチョウのプロモーターであることが好ましく、かつトランスジェニック動物がアヒルである場合、プロモーターはアヒルのプロモーターであることが好ましい。
【0130】
本明細書で使用する「作用可能に連結した」は、2個以上の核酸(例えばDNA)セグメント間の機能的関係を指す。典型的には、それは転写制御エレメントと転写される配列の機能的関係を指す。例えばプロモーターは、それが適切な細胞中でコード配列の転写を刺激または調節する場合、本明細書で定義する二本鎖RNA分子をコードするオープンリーディングフレームなどのコード配列と作用可能に連結している。一般に、転写される配列と作用可能に連結したプロモーター転写制御エレメントは、転写される配列と物理的に隣接している、すなわちそれらはシス作用性である。しかしながら、エンハンサーなどの幾つかの転写制御エレメントは、それらがその転写を促進するコード配列と物理的に隣接している、またはそれらと非常に接近して位置する必要はない。
【0131】
「RNAポリメラーゼIIIプロモーター」または「RNApolIIIプロモーター」または「ポリメラーゼIIIプロモーター」または「polIIIプロモーター」によって、細胞中においてその本来の状況で、RNAポリメラーゼIIIと結合または相互作用してその作用可能に連結した天然または工学処理済みの遺伝子、またはその任意の変異体を転写する、選択した宿主細胞中でRNAポリメラーゼIIIと相互作用して作用可能に連結した核酸配列を転写する、任意の無脊椎動物、脊椎動物、または例えばニワトリ、ヒト、ネズミ、ブタ、ウシ、霊長類、サルなどの哺乳動物のプロモーターを意味する。U6プロモーター(例えば、ニワトリU6、ヒトU6、ネズミU6)、H1プロモーター、または7SKプロモーターによって、RNAポリメラーゼIIIと相互作用してその同系RNA産物、すなわちそれぞれU6RNA、H1RNA、または7SKRNAを転写するための、天然で見られる任意の無脊椎動物、脊椎動物、または哺乳動物のプロモーターまたは多型変異体または突然変異体を意味する。適切なプロモーターの例には、cU6-1(配列番号22)、cU6-3(配列番号23)、cU6-4(配列番号24)およびc7SK(配列番号25)がある。
【0132】
幾つかの適用例中で好ましいのは、5'隣接領域に存在し、TATAボックスを含み、内部プロモーター配列を欠く、U6、H1、および7SKを含めたIII型RNApolIIIプロモーターである。polIII5SrRNA、tRNAまたはVARNA遺伝子に関する内部プロモーターが存在する。7SKRNApolIII遺伝子は、転写に必要な遺伝子の5'隣接領域中に弱度の内部プロモーターおよび配列を含有する。核酸コンストラクト中での特定の適用例、例えば鳥またはヒトウイルスに対するヘアピン型RNAなどの二本鎖RNA分子を発現させるために利用するためのPolIIIプロモーターは、例えば鳥PolIIIプロモーターを含めて、鳥宿主細胞において鳥インフルエンザウイルス(H5N1)などの鳥ウイルスに対する複数のヘアピン型dsRNAを転写するように設計された発現コンストラクト中での、宿主細胞RNAポリメラーゼIIIによる最適な結合および転写のために有利に選択することができる。
【0133】
「異なる」ポリメラーゼプロモーターによって、例えば3つの「異なる」ポリメラーゼプロモーターと考えられるヒト7SKプロモーター、ヒトU6プロモーター、およびヒトH1プロモーターなどの、特定の種において異なる同系転写産物の転写を誘導し得る、その多型変異体および突然変異体などの変異体を含めたRNAポリメラーゼIIまたはRNAポリメラーゼIIIプロモーターなどの、任意の2つのRNAポリメラーゼプロモーターを意味する。「異なる」ポリメラーゼプロモーターは、例えばcU6-1、cU6-2、cU6-3およびcU6-4プロモーターが「異なる」プロモーターであると考えられるニワトリU6プロモーターのファミリーなどの、プロモーターのファミリーの個々のメンバーも指す。本発明のコンストラクト中での異なるポリメラーゼプロモーターの使用は、再配列または欠失などの分子内および/または分子間組換え事象の可能性を低減し得る。
【0134】
幾つかの態様では、「同じ」RNAポリメラーゼIIまたはRNAポリメラーゼIIIプロモーターの多数のコピーを本発明の核酸コンストラクト中に含めることが可能である。幾つかの実施形態では、本発明の核酸コンストラクトは、「異なる」ポリメラーゼプロモーター、例えばshRNAなどのRNA分子をコードする配列とそれぞれ作用可能に連結した3、4、5個、またはそれより多くのU6プロモーターを含まない、同じポリメラーゼプロモーターの多数のコピーを包含することができる。場合によっては、幾つかの実施形態では、2つ以上のポリメラーゼプロモーター、例えば1つまたは複数のポリメラーゼIプロモーター、1つまたは複数のミトコンドリアプロモーターなどに加えて、他のプロモーターを含めることが可能である。一態様では、多数のポリメラーゼプロモーター(2、3、4、5個、またはそれより多く)を含む発現コンストラクトを工学処理して多数のdsRNAヘアピンまたはshRNAを発現させ、その場合、「異なる」RNAポリメラーゼプロモーターも含まれるかどうかとは無関係に、同じポリメラーゼプロモーターの2、3、4、5個、またはそれより多くのコピーを使用することができる。
【0135】
幾つかの場合、核酸コンストラクトは、組織特異的または細胞特異的プロモーターを含むことが望ましい可能性もある。用語「組織特異的」は、それをプロモーターに適用するとき、異なる型の組織(例えば脳)中での対象とする同じヌクレオチド配列の発現の相対的不在下で、特異的型の組織(例えば肺)に対する対象とするヌクレオチド配列の選択的発現を誘導することができるプロモーターを指す。このような組織特異的プロモーターには、Ick、myogenin、またはthy1などのプロモーターがある。用語「細胞特異的」は、プロモーターに適用するとき、同じ組織内の異なる型の細胞中での対象とする同じヌクレオチド配列の発現の相対的不在下で、特異的型の細胞中での対象とするヌクレオチド配列の選択的発現を誘導することができるプロモーターを指す(例えばHigashibata、et al.(2004);Hoggatt、et al.(2002);Sohal、et al.、(2001);およびZhang、et al.、(2004)を参照)。用語「細胞特異的」は、プロモーターに適用するとき、一組織内の領域中の対象とするヌクレオチド配列の選択的発現を促進することができるプロモーターも意味する。あるいは、プロモーターは構成的または制御可能であってよい。追加的に、プロモーターを修飾して異なる特異性を持たせることが可能である。
【0136】
核酸の増幅
「ポリメラーゼ連鎖反応」(「PCR」)は、「上流」および「下流」プライマーからなる「プライマーのペア」または「プライマーのセット」、ならびにDNAポリメラーゼ、および典型的には熱安定性ポリメラーゼ酵素などの重合の触媒を使用して、その中で複製コピーが標的ポリヌクレオチドで作られる反応である。PCRに関する方法は当技術分野で知られており、例えば「PCR」(Ed.M.J.McPherson and S.G Moller(2000)BIOS Scientific Publishers Ltd、Oxford)中に教示される。生物サンプルから単離した逆転写mRNAから得たcDNAに、PCRを実施することができる。
【0137】
プライマーは、標的配列と配列特異的な形式でハイブリダイズすることが可能であり、PCR中に延長することが可能である、一般に約20ヌクレオチド長、最小で約15ヌクレオチドのオリゴヌクレオチドであることが多い。さらに長い核酸分子、例えば少なくとも50または100またはそれより多くのヌクレオチド長の核酸分子も、プライマーとして使用することができる。アンプリコンまたはPCR産物またはPCR断片または増幅産物は、プライマーおよび新たに合成された標的配列のコピーを含む延長産物である。多重PCRシステムは、2つ以上のアンプリコンの同時生成をもたらす多数のプライマーのセットを含有する。プライマーは標的配列に完全に適合させることが可能であり、またはプライマーは、特定標的配列中の制限酵素または触媒核酸認識/切断部位の導入をもたらす可能性がある内部ミスマッチ塩基を含有することができる。プライマーは、アンプリコンの捕捉または検出を容易にするために、追加的な配列および/または修飾もしくは標識ヌクレオチドも含有することができる。DNAの熱変性、プライマーとそれらの相補配列のアニーリング、およびポリメラーゼによるアニーリングプライマーの延長の反復サイクルは、標的配列の指数関数的増幅をもたらす。用語標的または標的配列または鋳型は、増幅される核酸配列を指す。
【0138】
別の核酸増幅技法は逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)である。最初に、逆転写酵素を使用して相補的DNA(cDNA)をRNAの鋳型から作製し、次いでPCRを生成したcDNAに実施する。
【0139】
別の増幅法は、EP0320308中に開示されたリガーゼ連鎖反応(「LCR」)である。LCRでは、2つの相補的プローブ対を調製し、かつ標的配列の存在下で、それぞれの対はそれらが隣接するように標的の反対の相補鎖と結合する。リガーゼの存在下では、2つのプローブ対が連結して一単位を形成する。PCR中と同様の温度サイクルによって、結合連結単位は標的から解離し、次いで過剰なプローブ対の連結用の「標的配列」として働く。米国特許第4,883,750号は、プローブ対と標的配列を結合させるための、LCRと類似の方法を記載する。
【0140】
核酸分子の他の増幅法は当業者に知られており、等温増幅法および転写ベースの増幅システムを含む。核酸コンストラクト、またはその断片、または単離もしくは外因性核酸分子、またはその断片を増幅するのに適した任意の方法を、本発明の方法中で使用することができる。
【0141】
ベクターおよび宿主細胞
幾つかの場合、本発明の核酸コンストラクトおよび/または核酸分子をベクターに挿入することが望ましい可能性がある。ベクターは、例えばバクテリオファージ、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルス、ポックスウイルスまたはヘルペスウイルス由来の、例えばプラスミド、ウイルスまたは人工染色体であってよい。このようなベクターには、染色体、エピソームおよびウイルス由来ベクター、例えば細菌プラスミド、バクテリオファージ、酵母エピソーム、酵母染色体エレメント、およびウイルス由来のベクター、これらの組合せ由来のベクター、プラスミドとバクテリオファージ遺伝的エレメント、コスミドおよびファージミド由来のベクターなどがある。したがって、1つの代表的なベクターは二本鎖DNAファージベクターである。別の代表的なベクターは二本鎖DNAウイルスベクターである。
【0142】
その中に核酸コンストラクトが挿入されるベクターは、1つまたは複数の二本鎖RNAをコードするオープンリーディングフレームと隣接する逆方向末端反復配列によって特徴付けられる、転位可能エレメント、例えばトランスポゾンも含むことができる。適切なトランスポゾンの例には、Tol2、ミニ-Tol、Sleeping Beauty、MarinerおよびGalluhopがある。本明細書でのTol2トランスポゾンに対する言及は、ミニ-Tol2などのTol2由来のトランスポゾンを含む。
【0143】
本発明は、その中に本発明の核酸コンストラクト、核酸分子および/またはベクターが導入されている宿主細胞も提供する。本発明の宿主細胞は、例えばdsRNA分子の生成または発現のための生成系として使用することができる。in vitro生成用に、真核細胞または原核細胞を使用することができる。
【0144】
有用な真核宿主細胞は、動物、植物、または真菌細胞であってよい。動物細胞として、CHO、COS、3T3、DF1、CEF、MDCKメラノーマ、ベビーハムスター腎臓(BHK)、HeLa、またはVero細胞などの哺乳動物細胞、アフリカツメガエル卵母細胞などの両生類細胞、またはSf9、Sf2l、もしくはTn5細胞などの昆虫細胞を使用することができる。DHFR遺伝子(dhfr-CHO)またはCHOK-1を欠くCHO細胞も使用することができる。例えばリン酸カルシウム法、DEAE-デキストラン法、カチオンリポソームDOTAP(Boehringer Mannheim)法、エレクトロポレーション、リポフェクションなどによって、宿主細胞にベクターを導入することができる。
【0145】
有用な原核細胞には、大腸菌、例えばJM109、DH5a、およびHB101、または枯草菌などの細菌細胞がある。
【0146】
DMEM、MEM、RPM11640、またはIMDMなどの培養培地を動物細胞に使用することができる。ウシ胎児血清(FCS)などの血清サプリメントを含むか含まない、培養培地を使用することができる。培養培地のpHは約6と8の間であることが好ましい。細胞は典型的には約30℃〜40℃で約15〜200時間培養し、必要な場合、培養培地を交換、通気、または攪拌することができる。
【0147】
トランスジェニック非ヒト動物
「トランスジェニック非ヒト動物」は、同じ種または品種の野生型動物中で見られない核酸コンストラクト(「導入遺伝子」)を含有するヒト以外の動物を指す。本明細書に言及する「導入遺伝子」は、バイオテクノロジーの分野における通常の意味を有し、組換えDNAまたはRNA技術によって生成または改変された、かつ動物、好ましくは鳥類、細胞中に導入された遺伝子配列を含む。導入遺伝子は、動物細胞由来の遺伝子配列を含むことができる。典型的には、導入遺伝子はヒトの操作によって、例えば形質転換などによって動物中に導入されているが、当業者が理解するように任意の方法を使用することができる。導入遺伝子は、染色体に導入される遺伝子配列および染色体外である配列を含む。
【0148】
トランスジェニック動物を生成するための技法は当技術分野でよく知られている。この主題に関する有用で一般的な教科書は、Houdebine、Transgenic animals-Generation and Use(Harwood Academic、1997)である。
【0149】
異種DNAは、例えば受精卵に導入することができる。例えば、分化全能性または多能性幹細胞は、微量注入、リン酸カルシウム介在沈殿、リポソーム融合、レトロウイルス感染または他の手段によって形質転換することができ、形質転換した細胞は次いで胚に導入し、胚は次いでトランスジェニック動物に発達する。一方法では、発達する胚に所望のDNAを含有するレトロウイルスを感染させ、感染した胚からトランスジェニック動物を生成する。代替法では、しかしながら、適切なDNAを好ましくは単細胞段階で、胚の前核または細胞質に同時注入し、胚を成熟したトランスジェニック動物に発達させる。
【0150】
トランスジェニック動物を生成するために使用する別の方法は、標準的な方法によって前核段階の卵に核酸をマイクロインジェクトすることを含む。次いで注入した卵を、偽妊娠レシピエントの卵管への導入前に培養する。
【0151】
トランスジェニック動物は、核導入技術によって生成することもできる。この方法を使用して、ドナー動物由来の線維芽細胞を、調節配列の制御下において、対象とする結合ドメインまたは結合パートナーのコード配列を取り込んだプラスミドで安定的にトランスフェクトする。次いで安定したトランスフェクタントを除核卵母細胞と融合し、培養しメスのレシピエントに移す。
【0152】
精子仲介遺伝子導入(SMGT)は、トランスジェニック動物を作製するために使用することができる別の方法である。この方法はLavitrano et al.(1989)によって最初に記載された。
【0153】
トランスジェニック動物を生成する別の方法は、リンカーベースの精子仲介遺伝子導入技術(LB-SMGT)である。この手順は米国特許第7,067,308号中に記載される。簡単に言うと、新たに採取した精子を洗浄し、(ATCCアクセッション番号PTA-6723を割り当てられたハイブリドーマにより分泌される)ネズミモノクローナル抗体mAbCおよび次いでコンストラクトDNAとインキュベートする。モノクローナル抗体はDNAと精子の結合に役立つ。次いで精子/DNA複合体をメスに人工授精する。
【0154】
生殖系トランスジェニックニワトリは、新たに産まれたヒヨコ卵の胚盤葉の胚下腔に複製欠陥レトロウイルスを注入することよって生成することができる(米国特許第5,162,215号;Bosselman et al.、1989;Thoraval et al.、1995)。外来遺伝子を有するレトロウイルス核酸を胚細胞の染色体にランダムに挿入し、その数匹がそれらの生殖系の導入遺伝子を有するトランスジェニック動物を作製する。挿入部位における位置効果を克服するための、融合遺伝子コンストラクトの5'または3'領域に挿入する挿入エレメントの使用が記載されている(Chim et al.、1993)。
【0155】
生殖系トランスジェニック動物を作製するための別の方法は、トランスポゾン、例えばTol2トランスポゾンを使用して、本発明の核酸コンストラクトを動物のゲノムに組み込むことである。魚類メダカOryzias latipesから最初に単離されたトランスポゾンのhATファミリーに属するTol2トランスポゾンはKoga et al.(1996)およびKawakami et al.(2000)中に記載される。ミニ-To12はTo12の変異体であり、Balciunas et al.(2006)中に記載される。To12およびミニ-Tol2トランスポゾンは、Tol2トランスポザーゼと相互作用するとき生物のゲノム中への導入遺伝子の組み込みを容易にする。Tol2トランスポザーゼを別の非複製プラスミドに送達することによって、Tol2またはミニ-Tol2トランスポゾンおよび導入遺伝子のみがゲノムに組み込まれ、Tol2トランスポザーゼを含有するプラスミドは限られた数の細胞分裂内に失われる。したがって、組み込まれたTol2またはミニ-Tol2トランスポゾンは、後の転位事象を被る能力をもはや有し得ない。さらに、Tol2が天然に存在する鳥類トランスポゾンであることは知られていないので、鳥類細胞、例えばニワトリ細胞において、さらなる転位事象を引き起こすための内因性トランスポザーゼ活性は存在しない。
【0156】
任意の他の適切なトランスポゾン系を本発明の方法中で使用することができる。例えば、トランスポゾン系はSleeping Beauty、Frog PrinceまたはMos1トランスポゾン系であってよく、あるいはトランスポゾンのtc1/marinerまたはhATファミリーに属する任意のトランスポゾンを使用することができる。
【0157】
キメラ鳥類を生成するためのレシピエント胚への鳥類胚幹細胞の注入は米国特許第7,145,057号中に記載される。生成するキメラの繁殖は、そのゲノムが外因性DNAからなるトランスジェニック鳥類をもたらす。
【0158】
鳥類始原生殖細胞(PGC)の長期培養からトランスジェニックニワトリを得る方法は、米国特許出願第20060206952号中に記載される。知られている手順によって宿主鳥類胚と組合せたとき、これらの修飾PGCは生殖系を介して伝わりトランスジェニック子孫が生成する。
【0159】
任意の適切なウイルスに基づくウイルス送達系を使用して、本発明の核酸コンストラクトを細胞に送達することができる。さらに、ハイブリッドウイルス系を使用することができる。ウイルス送達系の選択は、例えば対象とする細胞、組織、または器官への送達の効率、系の導入効率、病原性、免疫学的および毒性関連事項などの、様々なパラメーターに依存し得る。全ての適用例に適したウイルス系は1つも存在しないことは明らかである。本発明中で使用するためのウイルス送達系を選択するとき、核酸コンストラクト含有ウイルス粒子が好ましくは1)再現的および安定的に増殖する、2)高力価に精製することが可能である、かつ3)標的化送達(広範囲の播種なしの、対象とする細胞、組織、または器官への核酸発現コンストラクトの送達)を仲介することが可能である系を選択することが重要である。
【0160】
組成物および投与
好ましい実施形態では、本発明の組成物は適切な担体を含む医薬組成物である。適切な医薬担体、賦形剤および/または希釈剤には、ラクトース、スクロース、デンプン粉末、タルク粉末、アルカン酸、ステアリン酸マグネシウム、酸化マグネシウム、結晶セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのセルロースエステル、ゼラチン、グリセリン、アルギン酸ナトリウム、抗菌剤、抗真菌剤、アラビアゴム、アカシアゴム、リン酸および硫酸のナトリウム塩およびカルシウム塩、ポリビニルピロリドンおよび/またはポリビニルアルコール、生理食塩水、および水があるが、これらだけには限られない。
【0161】
幾つかの実施形態では、本発明の1つまたは複数の核酸コンストラクトおよび/または核酸分子を、米国特許第4,897,355号、米国特許第5,264,618号または米国特許第5,459,127号中に開示された組成物などの、1つまたは複数のカチオン性脂質またはカチオン性両親媒性物質と複合体形成させる。他の実施形態では、カチオン性脂質を含みかつ場合によっては中性脂質などの別の構成要素を含むリポソーム/リポソーム組成物と、それらを複合体形成させる(例えば、米国特許第5,279,833号、米国特許第5,283,185号、および米国特許第5,932,241号を参照)。他の実施形態では、米国特許第5,837,533号、米国特許第6,127,170号、および米国特許第6,379,965号の多機能分子複合体、または望ましくは、WO03/093449の多機能分子複合体または油/水カチオン性両親媒性物質エマルジョンと、それらを複合体形成させる。後者の出願は、核酸、コレステロールまたは脂肪酸を含むエンドソーム溶解性スペルミン、および細胞表面分子のリガンドを含む標的スペルミンを含む組成物を教示する。組成物の正電荷と負電荷の割合は01.と2.0の間、好ましくは0.5と1.5までの間であり、エンドソーム溶解性スペルミンは組成物中のスペルミン含有分子の少なくとも20%を構成し、かつ標的スペルミンは組成物中のスペルミン含有分子の少なくとも10%を構成する。正電荷と負電荷の割合は0.8と1.2までの間、0.8と0.9までの間などであることが望ましい。
【0162】
核酸コンストラクト、核酸分子および/または組成物の投与は、鳥類の卵への注入、および一般的には空気嚢への注入によって都合よく実施することができる。空気嚢は卵内投与の好ましい経路であるにもかかわらず、卵黄嚢または絨毛膜尿膜腔液などの他の領域にも注入により接種することができる。空気嚢が投与の標的ではないとき、必ずしも商業上許容不能なレベルではないが、孵化率が若干低下する可能性がある。注入のメカニズムは本発明の実施に重要ではないが、卵または発達中の胚の組織および器官または胚周囲の過剰な胚膜に対して、針は過度の損傷を引き起こさないことが好ましい。
【0163】
一般に、約22ゲージの針を備える皮下注射器が鳥類の卵内投与に適している。本発明の方法は、米国特許第4,903,635号、米国特許第5,056,464号、米国特許第5,136,979号およびUS20060075973中に記載された使用などの、自動注入システムを用いた使用に非常に良く適合する。
【0164】
別の実施形態では、本発明の核酸コンストラクト、核酸分子および/または組成物は、エアロゾルまたは噴霧乾燥製剤の吸入などの肺送達によって投与する。例えば、エアロゾルは吸入デバイスまたはネブライザーによって投与することができ(例えば、米国特許第4,501,729号参照)、関連肺組織への核酸分子の迅速な局所摂取をもたらすことができる。微粉化核酸組成物の呼吸可能な乾燥粒子を含有する固体粒子組成物は、乾燥または凍結乾燥核酸組成物を破砕し、次いで微粉化組成物を例えば400メッシュスクリーンに通して、大きな凝集体を破壊または分離することによって調製することができる。本発明の核酸組成物を含む固体粒子組成物は、エアロゾルの形成を容易にするのに役立つ分散剤、および他の治療用化合物を場合によっては含有することができる。適切な分散剤は、1対1の重量比などの任意の適切な比で核酸化合物とブレンドすることができるラクトースである。
【0165】
ネブライザーは、狭いベンチュリオリフィスを介した圧縮気体、典型的には空気または酸素の加速によって、または超音波攪拌によって、活性成分の溶液または懸濁液を治療用エアロゾルミストに変換する市販のデバイスである。ネブライザーにおいて使用するのに適した製剤は、製剤の40%w/wまで、好ましくは20%w/w未満の量で液状担体中に活性成分を含む。担体は典型的には水または希釈水性アルコール溶液であり、例えば塩化ナトリウムまたは他の適切な塩の添加によって体液と等張にすることが好ましい。任意選択の添加剤には、製剤が無菌状態で調製されない場合、防腐剤、例えばメチルヒドロキシベンゾエート、抗酸化剤、香味料、揮発性油、緩衝剤および乳化剤および他の製剤サーファクタントがある。活性組成物およびサーファクタントを含む固体粒子のエアロゾルは、任意の固体粒子エアロゾル発生器を用いて同様に生成することができる。固体粒子治療剤を対象に投与するためのエアロゾル発生器は、前に説明したように呼吸可能な粒子をもたらし、ヒトへの投与に適した割合で所定量の治療用組成物を含有する一定体積のエアロゾルを生成する。
【0166】
本発明の核酸コンストラクト、核酸分子および/または組成物は、動物飼料または飲料水に加えることもできる。動物がその食餌と共に治療上適切な量を摂取するように、飼料および飲料水組成物を処方することは好都合である可能性がある。飼料または飲料水に加えるためにプレミックスとして組成物を示すことも好都合であり得る。
【実施例】
【0167】
(実施例1:導入遺伝子における封入用のshRNA配列の選択)
インフルエンザAの最も高度に保存された遺伝子、PB1、PB2、PA、NPおよびM1をRNAi標的化用に選択した。本発明者らは、siVirus(高度に分岐したウイルス配列用のウェブベースのアンチウイルスsiRNA設計ソフトウェア、Naito et al.、2006)を使用して、選択遺伝子内の高度に保存された領域を同定し、shRNAの選択に関して本発明者らがスクリーニングすることができるsiRNA配列をさらに予想した。このソフトウェアは、特にshRNA設計の対象であった分析したインフルエンザAゲノムセグメント内の幾つかの領域、すなわちPB1、PB2、PAおよびNPの3'領域に焦点を与えた。より具体的には、それらはセグメント1(PB2遺伝子)ヌクレオチド2240〜2341、セグメント2(PB1遺伝子)ヌクレオチド2257〜2341、セグメント3(PA遺伝子)ヌクレオチド2087〜2233およびセグメント5(NP遺伝子)ヌクレオチド1484〜1565であった。
【0168】
本発明者らはsiVirusから29の予想siRNA配列を選択して、shRNAの選択に関してスクリーニングした(表1)。特定の標的遺伝子に関して考えられるsiRNA配列を選択するために利用可能な幾つかのアルゴリズムが存在する。しかしながら、多くのこれらの予想siRNAは、発現されたshRNAからプロセシングされるとき有効に機能しないことが示されている。Taxman et al.(2006)は有効なshRNA分子を予想するためのアルゴリズムを具体的に設計しており、本発明者らは本発明者ら独自の修正をこのアルゴリズムに加えてshRNA予想を改善している。本発明者らは修正Taxmanアルゴリズムを29のsiVirusにより選択したsiRNAに適用して、インフルエンザAウイルス複製の特異的阻害に関してshRNAと同様に試験するための配列を選択した。
【0169】
【表1】

【0170】
Taxmanアルゴリズムを使用したshRNA選択に関する4つの基準が存在する。その基準の3つは4ポイントの最大数からスコア付けする。これらの基準は1)配列の5'末端上のCまたはG=1ポイント、5'末端上のAまたはT=-1ポイント;2)3'末端上のAまたはT=1ポイント、3'末端上のCまたはG=-1ポイント;3)7個の3'塩基中の5個以上のAまたはT=2ポイント、7個の3'塩基中の4個のAまたはT=1ポイントである。最高スコアを有するshRNA配列が好ましい。4つの基準は、19ヌクレオチド配列に関するshRNA配列の6個の中心塩基(アンチセンス鎖の塩基9〜14とハイブリダイズしたセンス鎖の塩基6〜11)の自由エネルギーに関する計算に基づく。-12.9kcal/molを超える中心二本鎖ΔGを有するshRNAが好ましい。Taxmanアルゴリズムに対する本発明者らの修正は、Freier et al.(1986)によって公開されたのと同様に、RNA二本鎖の安定性を予想するために異なる自由エネルギーパラメーターを使用することである。このアルゴリズムに基づいて、本発明者らはおそらく有効なshRNAにおいて使用するための13のsiVirus siRNA配列を選択して、インフルエンザAウイルス複製を阻害するそれらの能力を試験した。選択した配列は表1中に太字で強調し、それらの5'-3'配列は表2中に示す。これらの13配列を使用して、10個のshRNAの発現用にddRNAiプラスミドを構築した。
【0171】
【表2】

【0172】
(実施例2:ニワトリのプロモーターの配列)
導入遺伝子コンストラクトを設計するとき、ポリメラーゼ酵素とプロモーター配列の効率良い結合を可能にするための上流配列を含む、プロモーターを含むことが望ましいことは知られている。それにもかかわらず、ニワトリU6プロモーターを、shRNAの転写を誘導するのに必要とされる最小量のプロモーター配列を含有させて設計および試験して、それによって導入遺伝子コンストラクトの全体のサイズの低減を可能にした。
【0173】
2つの型のコンストラクト、pcU6-4 shNP-1496およびpcU6-4(+100)shNP-1496を、RNAse保護アッセイ(RNAse protection assay)によってshRNAの発現に関して、またはウイルスサイレンシングに関して試験した。第一プラスミドは、shNP-1496低分子ヘアピン型RNAを発現するのに必要とされる最小のニワトリU6-4配列を含有する。第二プラスミドは、cU6-4プロモーターの上流に100bpの追加配列を含有する。100bpの追加上流配列を含有する第二コンストラクトは、より良いshRNA発現をもたらし得ると予想した。
【0174】
表3は、両プラスミドからのshRNA発現によって誘導されたウイルス生成の阻害を測定するための、赤血球凝集アッセイ(HAアッセイ)実験の結果を詳述する。このアッセイを実施するために、MDCK細胞を対数期まで増殖させ、次いでAmaxa Nucleofectorを使用してshRNAプラスミドでエレクトロポレーションした。次いでトランスフェクト細胞を、一定範囲の感染多重度(moi)で、8時間後に低病原性H1N1A/PR/8/34(PR8)インフルエンザAウイルスに感染させた。ウイルス力価(HA単位)は、HAアッセイを実施することによって感染後48時間測定した。アッセイはV底96ウエルプレート中で実施した。ウイルスサンプルの連続2倍希釈液を等体積のニワトリ赤血球の0.5%懸濁液(vol/vol)と混合し、氷上で1時間インキュベートした。赤血球の付着、均質層を含有するウエルは陽性として記録した。
【0175】
HAアッセイ実験中、最小プロモーター配列を含有するpcU6-4 shNP-1496は、追加の上流プロモーター配列および擬似プラスミドを含有していたpcU6-4(+100)shNP-1496より、試験した全てのMOIでのウイルスのサイレンシングにおいて有効であった。
【0176】
【表3】

【0177】
(実施例3:選択したshRNAの発現用のddRNAiプラスミドの構築)
ニワトリポリメラーゼIIIプロモーターcU6-1(GenBankアクセッション番号DQ531567)、cU6-3(DQ531569)、cU6-4(DQ531570)およびc7SK(EF488955)を鋳型として使用して、ワンステップPCRによって、選択したshRNA用のddRNAi発現プラスミドを構築した(図1)。プラスミドを構築するためのPCRは、cU6-1プロモーター用のTD218またはTD275と対形成するプライマーTD135、cU6-4プロモーター用のTD216、TD274またはTD302と対形成するTD175、cU6-3プロモーター用のTD217と対形成するTD176、およびc7SKプロモーター用のTD307またはTD316と対形成するTD269を使用した(増幅した特異的shRNAのプライマー配列および詳細に関する表4参照)。それぞれのPCR中の逆方向プライマーはそれぞれのプライマー配列、shRNAセンス、ループ、およびshRNAアンチセンス配列の最後の20ntを含むように設計し、HPLC精製した。完全長の増幅発現カセット産物はpGEM-TEasyと連結させ、次いで塩基配列決定した。
【0178】
選択した13のshRNAの中で、7個の配列に関して発現プラスミドを首尾良く構築した。ウイルス阻害アッセイ中で使用した最終的なshRNA発現プラスミドは、pcU6-1-shPB2-2240、pcU6-1-shPA-2087、pcU6-3-shMP-592、pcU6-4-shNP-1496、pcU6-4-shNP-1484、pc7SK-shPB1-129、pcU6-4-shPB1-2257およびpc7SK-shPB1-2257と名付けた。cU6-1無関連対照プラスミドも構築し、ウイルス阻害アッセイ中での擬似比較用に使用した(以下参照)。この擬似プラスミド用に、順方向プライマーTD135を、chU6-1プロモーターの最後の20ntおよび全ての他の無関連shRNA(shirr)構成要素を含む逆方向プライマーTD155と対形成させた。PCR産物はpGEM-TEasyと連結させ、塩基配列決定した。
【0179】
それぞれのddRNAiプラスミドは、それぞれのshRNA配列の開始が天然U6または7SKsnRNA転写産物の+1位置であるように構築した。終結シグナルの下流のXhoI制限酵素部位を工学処理して、pGEM-TEasy中に挿入した完全長shRNA産物のスクリーニングを可能にした。全ての最終shRNA発現ベクターは、完全長ニワトリU6または7SKプロモーター、shRNAセンス配列、ループ配列、shRNAアンチセンス配列、終結配列およびXhoI部位のいずれか1つからなっていた。全てのshRNAにおいて使用したループ配列は5'UUCAAGAGA3'であった。
【0180】
(実施例4:ウイルス阻害に関する選択したshRNAの試験)
表5は、shRNA発現プラスミドによって誘導されたウイルス生成の阻害を測定するための、赤血球凝集アッセイ(HAアッセイ)実験の結果を要約する。これらのアッセイを実施するために、MDCK細胞を対数期まで増殖させ、次いでAmaxa Nucleofector(商標)を使用してshRNAプラスミドでエレクトロポレーションした。次いでトランスフェクト細胞を、一定範囲の感染多重度(moi)で、8時間後にインフルエンザAウイルス、低病原性H1N1A/PR/8/34(PR8)または高病原性H5N1A/ニワトリ/Vietnam/008/2004(H5N1)のいずれかに感染させた。ウイルス力価(HA単位)は、HAアッセイの実施による感染後48時間測定した。アッセイはV底96ウエルプレート中で実施した。ウイルスサンプルの連続2倍希釈液を等体積のニワトリ赤血球の0.5%懸濁液(vol/vol)と混合し、氷上で1時間インキュベートした。赤血球の付着、均質層を含有するウエルは陽性として記録した。
【0181】
【表4】

【0182】
表5中に要約したHAアッセイ実験の全てにおいて、shPB1-2257、shNP-1484およびshNP-1496を発現したプラスミドは、擬似プラスミドと比較してPR8ウイルスとH5N1ウイルスの両方の生成を非常に効率良く阻害することができた。shPB1-2257とshNP-1484の場合、数回の実験中それらは両方のウイルスの複製を完全に阻害することができ、それらの有効性を確認した。shPA-2087およびshMP-592を発現したプラスミドもウイルスの生成を効率良く阻害することができたが、shPB1-2257、shNP-1484およびshNP-1496ほど効率良くなかった。shPB1-129分子は低病原性PR8株の生成を阻害したが、高病原性H5N1株は阻害しなかった。最後に、可能性のある標的shRNA配列として最初に同定したにもかかわらず、shPB2-2240は試験したいずれのウイルスの複製も阻害することができなかった。
【0183】
(実施例5:Multi-Warhead(MWH)導入遺伝子の構築)
1個の導入遺伝子から多数のshRNAを発現させて、RNAi戦略に対するウイルス標的配列変動性のリスクをさらに低減することは、有意な利益があることがわかっている。これらの「Multi-Warhead」(MWH)導入遺伝子は、それぞれが前に記載した異なるインフルエンザA遺伝子の保存配列を標的化する個別のshRNA分子を発現する異なるニワトリpolIIIプロモーター(cU6-1、cU6-3、cU6-4およびc7SK)を有する、多数の転写単位からなる。プロモーター配列はニワトリに固有であり、かつ小分子の21bpのshRNA配列はAI感染またはワクチン接種鳥類中に既に存在し得る。RNAi標的はインフルエンザAウイルスに完全に特異的であり、したがってこのような特異的導入遺伝子が標的を外すことは存在し得ない。
【0184】
4個のMWH導入遺伝子を以下のように選択したshRNAから構築した:
【0185】
a.MWH1-cU6-3 shMP-592;cU6-1 shPA-2087;cU6-4 shNP-1496
それぞれのMWH導入遺伝子は、ニワトリpolIIIプロモーターから1個のshRNA分子を独自に発現する3個の転写単位を含有する。3個の個別の転写単位はワンステップPCRを使用して増幅し、生成した断片を次いで1つに連結してMWH導入遺伝子を生成した(図2)。したがってMWHは1個の導入遺伝子から3個の個別のshRNAを発現することができる。MWH1に関する3個の転写単位は、cU6-4 shNP-1496、cU6-3 shMP-592およびcU6-1 shPA-2087である。cU6-4 shNP-1496転写単位は順方向プライマーTD233および逆方向プライマーTD216を使用して増幅し、cU6-3 shMP-592転写単位は順方向プライマーTD234および逆方向プライマーTD217を使用して増幅し、かつcU6-1 shPA-2087転写単位は順方向プライマーTD232および逆方向プライマーTD218を使用して増幅した(プライマーの詳細は表4中に記載する)。PCR産物のそれぞれをpGEM-TEasyにクローニングした、かつそれぞれは5'SalI制限酵素部位および3'XhoI制限酵素部位を含有する。これらの制限部位の両方が適合性のある突出部分を有し、これらは個別の転写単位を1つに連続連結して、最終MWH導入遺伝子を生成するのを可能にした(図2)。
【0186】
【表5A】

【0187】
【表5B】

【0188】
b.MWH2-cU6-4 shPB1-2257;cU6-1 shPB2-2240;c7SK shPB1-129
MWH2に関する3個の転写単位は、cU6-4 shPB1-2257、cU6-1 shPB2-2240およびc7SK shPB1-129である。cU6-4 shPB1-2257転写単位は順方向プライマーTD233および逆方向プライマーTD274を使用して増幅し、cU6-1 shPB2-2240転写単位は順方向プライマーTD232および逆方向プライマーTD275を使用して増幅し、かつc7SK shPB1-129転写単位は順方向プライマーTD306および逆方向プライマーTD307を使用して増幅した(プライマーの詳細は表4中に記載する)。PCR産物のそれぞれをpGEM-TEasyにクローニングし、連続的に連結して、前および図2中に記載するように最終MWH導入遺伝子を構築した。
【0189】
c.MWH3-cU6-4 shNP-1484;cU6-1 shPA-2087;c7SK shPB1-2257
MWH3に関する3個の転写単位は、cU6-4 shNP-1484、cU6-1 shPA-2087およびc7SK shPB1-2257である。cU6-4 shNP-1484転写単位は順方向プライマーTD233および逆方向プライマーTD302を使用して増幅し、cU6-1 shPA-2087転写単位は順方向プライマーTD232および逆方向プライマーTD218を使用して増幅し、かつc7SK shPB1-2257転写単位は順方向プライマーTD306および逆方向プライマーTD316を使用して増幅した(プライマーの詳細は表4中に記載する)。PCR産物のそれぞれをpGEM-TEasyに再度クローニングし、連続的に連結して、前および図2中に記載するように最終MWH導入遺伝子を構築した。
【0190】
d.MWH4-cU6-4 shPBl-2257;cU6-3 shNP-1484;cU6-1 shPA-2087
MWH4に関する3個の転写単位は、cU6-4 shPBl-2257、cU6-3 shNP-1484およびcU6-1 shPA-2087である。cU6-4 shPBl-2257転写単位は順方向プライマーTD233および逆方向プライマーTD274を使用して増幅し、cU6-3 shNP-1484転写単位は順方向プライマーTD234および逆方向プライマーTD343を使用して増幅し、かつcU6-1 shPA-2087転写単位は順方向プライマーTD232および逆方向プライマーTD218を使用して増幅した(プライマーの詳細は表4中に記載する)。PCR産物のそれぞれをpGEM-TEasyに再度クローニングし、連続的に連結して、前および図2中に記載するように最終MWH導入遺伝子を構築した。
【0191】
4個の最終MWH導入遺伝子は、H5N1インフルエンザAウイルスを使用してHAアッセイにおいて、ウイルス生成を阻害するそれらの能力に関しても試験した(表4、実験8)。MWH3および4が最も有効な導入遺伝子であった。MWH1もH5N1ウイルスの生成を効率良く阻害したが、一方MWH2はMWH1ほど有効ではなかった。
【0192】
(実施例6:pStuffitベクターへのMWH導入遺伝子のクローニング)
それぞれのMWHをpStuffitプラスミドにクローニングした(図3)。このプラスミドは、ニワトリゲノムDNAのスタッファー/バッファー断片間のMWH導入遺伝子の挿入を容易にして、導入遺伝子挿入過程と外部読み過ごし転写の両方からMWH配列をおそらく保護する。ME1およびGRM5スタッファー断片はニワトリゲノム由来の大きなイントロン配列(すなわち、ゲノム砂漠)から選択し、MWH導入遺伝子の発現に干渉する可能性がある転写エレメントを欠いている。GenBankにおいて記載された具体的な領域は、ME1 1500(chr3)gb|AADN02002420.1 30995〜32489bp;ME1 200(chr3)gb|AADN02002420.1 5079〜5276bpおよびGRM5 1500(chr1)gb|AADN02004814.1 13141〜13113、13078〜12911、12848〜11638bp;GRM5 200(chr1)gb|AADN02004814.1 10126〜9927bpである。
【0193】
プラスミドpStuffitの構築
プラスミドpStuffitを、pIC20Hクローニングベクターへの、制限酵素部位の使用によって示した指定の順序での、ニワトリゲノムの4個の領域のクローニングによって構築した(図3)。表6中に挙げた断片は、表7中に挙げたプライマーを使用して最初にPCR増幅し、次いでpGEM-TEasy(Invitrogen)に個別にクローニングし、塩基配列決定した。次いでこれらの断片をpGEM-TEasyから切除し、表5中に挙げた制限酵素部位を使用して連続的にクローニングした。最初に、GRM5 200をpIC20Hに、次にME1 200、GRM5 1500およびME1 1500にクローニングした。それぞれのクローニング段階で、生成したプラスミドを制限酵素による消化およびDNA塩基配列決定によって調べた。最終構築プラスミドはpStuffitと表示した。
【0194】
【表6】

【0195】
【表7】

【0196】
pStuffitへのMWH導入遺伝子の挿入
pStuffitベクターは、GRM5 200配列とME1 200配列の間に位置する独自のEcoRI制限部位を有し、それぞれのMWH導入遺伝子の挿入を可能にする。それぞれのMWH導入遺伝子は、このEcoRI制限部位への連結によってpStuffitに挿入した。様々な量の隣接配列を有するコンストラクトの切除を可能にするためのPacIおよびSwaIも含まれた(図3)。pIC20HベクターのHindIII制限酵素部位を使用して、クローン配列全体を切除することができる。したがって、MWH挿入体のそれぞれを含有する最終pStuffitプラスミドをHindIII制限酵素で消化して、最終挿入体を切り離し、精製し精子仲介遺伝子導入(SMGT)プロセスに使用した。
【0197】
(実施例7:リンカーベースの精子仲介遺伝子導入)
ニワトリ受精卵にコンストラクトを送達するプロセスは、リンカーベースの精子仲介遺伝子導入によって実施することができる。この手順は米国特許第7,067,308号中に記載されたのと同様に実施する。簡単に言うと、新たに採取したニワトリ精子を洗浄し、(ATCCアクセッション番号PTA-6723を割り当てられたハイブリドーマにより分泌される)ネズミモノクローナル抗体mAbCおよび次いでコンストラクトDNAとインキュベートする。加えるモノクローナル抗体はDNAと精子の結合に役立つ。次いで精子/DNA複合体をメンドリに人工授精する。このプロセスは授精間に72時間で4回繰り返す。初回授精後第2日から最終授精後第3日まで、卵は1日1回回収する。
【0198】
(実施例8:Tol2中へのMWH導入遺伝子の挿入およびニワトリへの送達)
MWH3(配列番号21)およびMWH4(配列番号61)導入遺伝子を、Tol2トランスポゾンベクターpminiTol2/MCS中にクローニングした((配列番号64);Balciunas et al.、2006)。2つの導入遺伝子は、SalIおよびXhoIでの二重消化によってpGEM-TEasyベクターから除去した。次いでこの断片を、Tol2トランスポゾンベクターのマルチクローニングサイト内の独自のXhoI部位に連結させた。
【0199】
ニワトリ胚にMWH3Tol2コンストラクト(配列番号62)およびMWH4Tol2コンストラクト(配列番号63)を送達するプロセスは、始原生殖細胞(PGC)を使用することによって実施することができる。簡単に言うと、PGCはドナーニワトリ胚から、胚が2日齢のときは血液から、または5.5日齢胚の生殖腺のいずれかから採取する。磁気抗体細胞分離(MACS)を使用することによって、血液または生殖腺組織からPGCを精製する。次いで精製したPGCを、Amaxa Nucleofectorを使用してTol2コンストラクトおよびTol2トランスポザーゼをコードする別のプラスミド(pCMV-Tol2;配列番号65;Balciunas et al.、2006)とエレクトロポレーションする。次いでこれらの細胞を、2.5日齢であるレシピエント胚に再度注射する。形質転換PGCは移動して発生中の胚の生殖腺を確立する。
【0200】
ニワトリ胚にTol2コンストラクトを送達するプロセスは、新たに産まれた卵の胚盤葉の直接エレクトロポレーションによって実施することもできる。簡単に言うと、新たに産まれた受精卵を割り胚盤葉を露出させる。マイクロキャピラリーピペットおよびTol2トランスポザーゼをコードするプラスミドを使用してTol2コンストラクトDNAを胚盤葉に注射する。次いでBTX ECM830 Electro Square Poratorを使用して卵内の胚盤葉にエレクトロポレーションする。PGCは胚盤葉の中心に位置し、これらの細胞をエレクトロポレーション後にこのコンストラクトで形質転換する場合、これらの細胞は発生中の胚の生殖腺内で生殖細胞の状態に進行し得る。
【0201】
(実施例9:トランスジェニック用のG0子孫のスクリーニング)
少量の血液を1週齢のG0子孫の翅脈または羽先端のいずれかから採取する。ゲノムDNAは、QIAmp DNA Blood Miniキット(Qiagen)を使用して翅脈の血液から調製する。羽先端の血液由来のDNAは、QuickExtract(商標)DNA抽出溶液(Epicentre Biotechnologies)を使用して調製する。2つの試験をこれらのサンプルに実施して、コンストラクトの存在を確認する。
【0202】
サザンブロット
PCRは表8中に挙げた順方向および逆方向プライマーを使用してゲノムサンプルに実施する。次いでPCR混合物をアガロースゲルに施し、膜に移し、放射能標識した固定核酸プローブ(表8)とハイブリダイズさせる。ハイブリダイゼーションおよび高ストリンジェンシー溶液中での洗浄後、膜はX線フィルムに曝す。生成したオートラジオグラフ上で検出される適切な大きさのバンドによって陽性が示される。
【0203】
【表8】

【0204】
リアルタイム定量PCR
リアルタイムPCRを、表9中に挙げたプライマーを使用してゲノムサンプルに実施する。このアッセイは、SYBR Green試薬と二本鎖DNAの結合、および陽性サンプルを決定するためのその後の融解曲線分析を使用する。
【0205】
【表9】

【0206】
(実施例10:トランスジェニック鳥類の試験)
LB-SMGT
G0集団中でトランスジェニックとして同定した鳥を、性的に成熟するまで保持および収容する。性的に成熟した後、鳥を交配実験において使用して、それぞれの細胞中にコンストラクトのコピーを有するG1トランスジェニック子孫を生成する。サザンブロットおよびリアルタイムPCRを再度使用して、G1子孫のトランスジェニック性を示す。
【0207】
コンストラクトの挿入部位およびコピー数に関する、ゲノムサザンブロットおよびPCRを使用したさらに詳細な分析を、これらの鳥に実施する。
【0208】
関連コンストラクト挿入体を有するとして同定したG1の鳥を、性的成熟まで飼育する。これらの鳥由来のG2子孫の数匹を動物実験において使用して、様々な鳥類インフルエンザ株に対するそれらの耐性を確認する。他のG2鳥は、様々な組織中および様々な年齢でのコンストラクトの発現に関して分析する。
【0209】
Tol2トランスポゾン
Tol2形質転換PGCを与えたか、またはTol2コンストラクトでエレクトロポレーションしたいずれかのG0胚を孵化させる。G0のオスのヒヨコのみを保持し、性的成熟まで飼育する。精子をオス鳥から回収し、かつPCRを行って、任意の鳥が関連コンストラクトを含有するかどうか確認する。PCR陽性である鳥を交配実験において使用して、それぞれの細胞中にコンストラクトのコピーを有するG1トランスジェニック子孫を生成する。サザンブロットおよびリアルタイムPCRを再度使用して、G1子孫のトランスジェニック性を示す。
【0210】
(実施例11:モデル系-インフルエンザA耐性トランスジェニックマウス)
本発明者らは、トランスジェニックマウスの生成用に2つのshRNA導入遺伝子カセットを構築した。それぞれのカセットは、shNP-1496またはshEGFPのいずれかの発現用のマウスU6プロモーターを含有していた。次いで2つの導入遺伝子を使用して、レンチウイルス技術を使用しトランスジェニックマウスを生成した。簡単に言うと、shNP-1496およびshEGFPshRNA導入遺伝子カセットを、レンチウイルス遺伝子導入ベクター(AusGene、Bentleigh、オーストラリア)にクローニングした。次いでトランスジェニックウイルスコンストラクトをレンチウイルス粒子にパッケージした。レンチウイルス力価を決定し、レンチウイルス粒子は初期段階マウス胚の囲卵腔に注射した。これらの胚を偽妊娠メスマウスに再移植し、生成した子孫はサザンブロット分析によってスクリーニングした。いずれかの導入遺伝子が安定して組み込まれたトランスジェニック創始マウスを得た。次いで創始マウスを野生型マウスと交配させてF1子孫を生成した。次いでトランスジェニックF1マウスを、インフルエンザA感染に対する耐性の抗原投与実験において試験した。
【0211】
抗原投与実験は、それぞれが5匹のマウスを含有する3群からなっていた。群1および2はそれぞれ、shNP-1496shRNAを含む5匹のマウスを含有していた。群3はshEGFPshRNAを含む5匹のマウスを含有していた。群2および3には、5×102TCID50の低病原性H1N1A/PR/8/34(PR8)インフルエンザAウイルスを鼻腔内抗原投与した。群1にはウイルスを含まないリン酸緩衝生理食塩水を抗原投与した。体重は抗原投与後10日間および実験の最後に1日1回モニターし、マウスは安楽死させ、ウイルスRNAのqPCR測定用に肺サンプルを採取した。
【0212】
図4中に示すように、shNP-1496導入遺伝子を含むトランスジェニックマウスは、無関係なshEGFP導入遺伝子を含むマウスと比較して、感染に対して高レベルの耐性を有していた。shNP-1496マウスはPBS対照群と比較したとき、実験の行程中体重が減少しなかった。比較によって、shEGFPマウスは統計上有意な体重の減少を示し、インフルエンザウイルスによる活動性感染が示された。群2および3中のマウス由来の肺サンプル中のウイルスRNAを測定したとき、shNP-1496導入遺伝子を含むマウスは、無関係なshEGFP導入遺伝子を含有するマウスと比較して90%を超えるウイルスRNAの減少があった。全体としてこれらの結果は、shNP-1496などのインフルエンザAウイルスを特異的に標的化するshRNA分子を含有するトランスジェニックマウスは、H1N1A/PR/8/34(PR8)インフルエンザAウイルスを用いた実験的抗原投与に対して非常に耐性があることを示す。
【0213】
広く記載するような本発明の精神または範囲から逸脱せずに、多数の変形および/または変更形態を具体的な実施形態中に示すように本発明に施すことができることは、当業者によって理解されよう。したがって、本発明の実施形態は、全ての点において例示的であり限定的ではないと考えられる。
【0214】
本明細書で論じたおよび/または参照した全ての刊行物は、それらの全容が本明細書に組み込まれている。
【0215】
本出願は、それらの全容が参照により本明細書に組み込まれている、US60/938,315およびAU2007902616の優先権を主張するものである。
【0216】
本明細書中に含めた文書、作用、物質、デバイス、記事などのいずれの論述も、単に本発明の場面を提供するためのものである。本出願のそれぞれの特許請求の優先日前に本発明は存在したので、任意または全てのこれらの事項が、従来技術の土台の一部分を形成する、または本発明が関係する分野における共通の一般知識であったことを承認するものとみなすべきでない。
【0217】
[参考文献)]


【特許請求の範囲】
【請求項1】
二本鎖領域を含むRNA分子をコードする核酸コンストラクトであって、前記RNA分子を欠く同系インフルエンザAウイルス感染動物細胞と比較したとき、前記RNA分子が動物細胞中のインフルエンザAウイルスの複製を低減させ、かつ/または動物細胞中の感染性インフルエンザAウイルス粒子の生成を低減させ、かつ/またはインフルエンザAウイルス感染動物細胞中のインフルエンザAウイルスポリペプチドの発現を低減させる核酸コンストラクト。
【請求項2】
前記二本鎖領域が、
(i)配列番号1の位置2240〜2341内のヌクレオチド、
(ii)配列番号2の位置2257〜2341内のヌクレオチド、
(iii)配列番号3の位置2087〜2233内のヌクレオチド、
(iv)配列番号4の位置1484〜1565内のヌクレオチド、
(v)配列番号6〜15または52〜54のいずれか1つのヌクレオチド配列、
(vi)(i)〜(v)のいずれか1つと少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列、
(vii)ストリンジェントな条件下で(i)〜(v)のいずれか1つとハイブリダイズするヌクレオチド配列
から選択されるヌクレオチドの配列を含む、請求項1に記載の核酸コンストラクト。
【請求項3】
前記RNA分子を欠く同系インフルエンザAウイルス感染動物細胞と比較したとき、前記RNA分子が動物細胞中のインフルエンザAウイルスの複製を低減させる、請求項2に記載の核酸コンストラクト。
【請求項4】
前記RNA分子を欠く同系インフルエンザAウイルス感染動物細胞と比較したとき、前記RNA分子が動物細胞中の感染性インフルエンザAウイルス粒子の生成を低減させる、請求項2に記載の核酸コンストラクト。
【請求項5】
前記RNA分子を欠く同系インフルエンザAウイルス感染動物細胞と比較したとき、前記RNA分子がインフルエンザAウイルス感染動物細胞中のインフルエンザAウイルスポリペプチドの発現を低減させる、請求項2に記載の核酸コンストラクト。
【請求項6】
前記二本鎖領域が少なくとも19塩基対長である、請求項1から5のいずれか一項に記載の核酸コンストラクト。
【請求項7】
前記二本鎖領域が100塩基対長未満である、請求項1から6のいずれか一項に記載の核酸コンストラクト。
【請求項8】
前記RNA分子が低分子ヘアピン型RNAである、請求項1から7のいずれか一項に記載の核酸コンストラクト。
【請求項9】
前記RNA分子によってコードされる前記二本鎖領域が配列番号7のヌクレオチドの配列を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の核酸コンストラクト。
【請求項10】
前記RNA分子によってコードされる前記二本鎖領域が配列番号9のヌクレオチドの配列を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の核酸コンストラクト。
【請求項11】
前記RNA分子によってコードされる前記二本鎖領域が配列番号12のヌクレオチドの配列を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の核酸コンストラクト。
【請求項12】
前記RNA分子によってコードされる前記二本鎖領域が配列番号6のヌクレオチドの配列を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の核酸コンストラクト。
【請求項13】
前記RNA分子によってコードされる前記二本鎖領域が配列番号8のヌクレオチドの配列を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の核酸コンストラクト。
【請求項14】
前記RNA分子によってコードされる前記二本鎖領域が配列番号13のヌクレオチドの配列を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の核酸コンストラクト。
【請求項15】
前記RNA分子によってコードされる前記二本鎖領域が配列番号15のヌクレオチドの配列を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の核酸コンストラクト。
【請求項16】
前記コンストラクトが2つ以上のRNA分子をコードする、請求項1から15のいずれか一項に記載の核酸コンストラクト。
【請求項17】
それぞれのRNA分子が、異なるインフルエンザAウイルス遺伝子に相当するヌクレオチド配列を含む、請求項16に記載の核酸コンストラクト。
【請求項18】
それぞれのRNA分子が、RNAポリメラーゼIIプロモーターまたはRNAポリメラーゼIIIプロモーターと作用可能に連結したヌクレオチド配列によってコードされる、請求項16または請求項17に記載の核酸コンストラクト。
【請求項19】
前記プロモーターがRNAポリメラーゼIIIプロモーターである、請求項18に記載の核酸コンストラクト。
【請求項20】
前記プロモーターがニワトリ、シチメンチョウおよび/またはアヒルのプロモーターである、請求項18または請求項19に記載の核酸コンストラクト。
【請求項21】
前記プロモーターがU6、7SKおよび/またはH1プロモーターから選択される、請求項19または請求項20に記載の核酸コンストラクト。
【請求項22】
前記U6プロモーターがcU6-1、cU6-2、cU6-3、および/またはcU6-4である、請求項21に記載の核酸コンストラクト。
【請求項23】
RNA分子をコードするそれぞれのヌクレオチド配列が、異なるRNAポリメラーゼIIIプロモーターと作用可能に連結している、請求項19から22のいずれか一項に記載の核酸コンストラクト。
【請求項24】
前記インフルエンザAウイルスポリペプチドがPB1、PB2、PA、NPおよび/またはM1から選択される、請求項1から23のいずれか一項に記載の核酸コンストラクト。
【請求項25】
前記インフルエンザAウイルスポリペプチドが配列番号1〜5のいずれか1つによってコードされる、請求項1から24のいずれか一項に記載の核酸コンストラクト。
【請求項26】
前記ポリペプチドが鳥インフルエンザポリペプチドである、請求項1から25のいずれか一項に記載の核酸コンストラクト。
【請求項27】
前記鳥インフルエンザがH5N1である、請求項26に記載の核酸コンストラクト。
【請求項28】
ニワトリおよびインフルエンザAウイルスのヌクレオチド配列からなる、請求項1から27のいずれか一項に記載の核酸コンストラクト。
【請求項29】
二本鎖領域を含む3つのRNA分子をコードし、前記二本鎖領域が
(i)配列番号9、配列番号13および配列番号15、
(ii)配列番号6、配列番号7および配列番号8、ならびに
(iii)配列番号7、配列番号9および配列番号12
から選択されるヌクレオチド配列を含む、請求項1から28のいずれか一項に記載の核酸コンストラクト。
【請求項30】
配列番号16〜21および61〜63から選択されるヌクレオチド配列、もしくはその断片、または配列番号16〜21および61〜63から選択されるヌクレオチド配列と少なくとも95%同一である配列を含む、請求項1から28のいずれか一項に記載の核酸コンストラクト。
【請求項31】
二本鎖領域を含む単離および/または外因性核酸分子であって、前記二本鎖領域が、
(i)配列番号1の位置2240〜2341内のヌクレオチド、
(ii)配列番号2の位置2257〜2341内のヌクレオチド、
(iii)配列番号3の位置2087〜2233内のヌクレオチド、
(iv)配列番号4の位置1484〜1565内のヌクレオチド、
(v)配列番号6〜15および52〜54のいずれか1つのヌクレオチド配列、
(vi)(i)〜(v)のいずれか1つと少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列、
(vii)ストリンジェントな条件下で(i)〜(v)のいずれか1つとハイブリダイズするヌクレオチド配列
から選択されるヌクレオチドの配列を含む、単離および/または外因性核酸分子。
【請求項32】
前記核酸分子を欠く同系インフルエンザAウイルス感染動物細胞と比較したとき、前記核酸分子が動物細胞中のインフルエンザAウイルスの複製を低減させる、請求項31に記載の単離および/または外因性核酸分子。
【請求項33】
前記核酸分子を欠く同系インフルエンザAウイルス感染動物細胞と比較したとき、前記核酸分子が動物細胞中の感染性インフルエンザAウイルス粒子の生成を低減させる、請求項31または請求項32に記載の単離および/または外因性核酸分子。
【請求項34】
前記核酸分子を欠く同系インフルエンザAウイルス感染動物細胞と比較したとき、前記核酸分子がインフルエンザAウイルス感染動物細胞中のインフルエンザAウイルスポリペプチドの発現を低減させる、請求項31から33のいずれか一項に記載の単離および/または外因性核酸分子。
【請求項35】
前記核酸分子が配列番号1〜5のいずれか1つによってコードされるインフルエンザAウイルスポリペプチドの発現を低減させる、請求項34に記載の単離および/または外因性核酸分子。
【請求項36】
前記二本鎖領域が少なくとも19ヌクレオチド長である、請求項31から35のいずれか一項に記載の単離および/または外因性核酸分子。
【請求項37】
前記二本鎖領域が100ヌクレオチド長未満である、請求項31から36のいずれか一項に記載の単離および/または外因性核酸分子。
【請求項38】
前記分子が二本鎖RNAを含む、請求項31から37のいずれか一項に記載の単離または外因性核酸分子。
【請求項39】
低分子干渉RNAまたは低分子ヘアピン型RNAである、請求項31から38のいずれか一項に記載の単離および/または外因性核酸分子。
【請求項40】
配列番号16〜21および61〜63から選択されるヌクレオチド配列、もしくはその断片、または配列番号16〜21および61〜63から選択されるヌクレオチド配列と少なくとも95%同一である配列を含む、請求項31から39のいずれか一項に記載の単離および/または外因性核酸分子。
【請求項41】
請求項1から30のいずれか一項に記載の核酸コンストラクトならびに/または請求項31から40のいずれか一項に記載の単離および/もしくは外因性核酸を含むベクター。
【請求項42】
請求項1から30のいずれか一項に記載の核酸コンストラクト、請求項31から40のいずれか一項に記載の単離および/もしくは外因性核酸ならびに/または請求項41に記載のベクターを含む細胞。
【請求項43】
ニワトリの始原生殖細胞である、請求項42に記載の細胞。
【請求項44】
請求項1から30のいずれか一項に記載の核酸コンストラクト、請求項31から40のいずれか一項に記載の単離および/もしくは外因性核酸、請求項41に記載のベクターならびに/または請求項42もしくは請求項43に記載の細胞を含むトランスジェニック非ヒト生物。
【請求項45】
非ヒト動物である、請求項44に記載のトランスジェニック生物。
【請求項46】
鳥類である、請求項45に記載のトランスジェニック生物。
【請求項47】
家禽である、請求項46に記載のトランスジェニック生物。
【請求項48】
ニワトリ、シチメンチョウまたはアヒルである、請求項47に記載のトランスジェニック生物。
【請求項49】
二本鎖領域を含む少なくとも1つのRNA分子をコードする、配列番号16〜21もしくは61〜63から選択されるヌクレオチド配列、もしくはその断片、または配列番号16〜21もしくは61〜63と少なくとも95%同一である配列を含む、請求項44から48のいずれか一項に記載のトランスジェニック生物。
【請求項50】
請求項1から30のいずれか一項に記載の核酸コンストラクト、請求項31から40のいずれか一項に記載の単離および/もしくは外因性核酸分子、請求項41に記載のベクター、ならびに/または請求項42もしくは請求項43に記載の細胞を含む組成物。
【請求項51】
対象中のインフルエンザAウイルス感染を治療および/または予防する方法であって、請求項1から30のいずれか一項に記載の核酸コンストラクト、請求項31から40のいずれか一項に記載の単離および/もしくは外因性核酸分子、請求項41に記載のベクター、ならびに/または請求項42もしくは請求項43に記載の細胞を前記対象に投与するステップを含む方法。
【請求項52】
飲料水中またはエアロゾル中の前記核酸コンストラクト、前記単離および/または外因性核酸分子、前記ベクター、および/または前記細胞を投与するステップを含む、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記インフルエンザAウイルスが鳥インフルエンザである、請求項51または52に記載の方法。
【請求項54】
前記対象が鳥類である、請求項51から53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
前記対象が家禽である、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記対象がニワトリ、シチメンチョウまたはアヒルである、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
細胞中の1つまたは複数のインフルエンザAウイルス遺伝子の発現を低減させる方法であって、請求項31から40のいずれか一項に記載の単離および/または外因性核酸分子を前記細胞に投与するステップを含む方法。
【請求項58】
インフルエンザAウイルス感染を治療および/または予防するための医薬品の製造における、請求項1から30のいずれか一項に記載の核酸コンストラクト、請求項31から40のいずれか一項に記載の単離および/もしくは外因性核酸分子、請求項41に記載のベクター、ならびに/または請求項42もしくは請求項43に記載の細胞の使用。
【請求項59】
請求項1から30のいずれか一項に記載の核酸コンストラクト、または請求項31から40のいずれか一項に記載の単離および/もしくは外因性核酸分子を含む動物を同定する方法であって、
前記動物から得たサンプル中の請求項1から30のいずれか一項に記載の核酸コンストラクトならびに/または請求項31から40のいずれか一項に記載の単離および/もしくは外因性核酸分子の有無を決定するステップを含む方法。
【請求項60】
前記核酸コンストラクトまたはその断片、あるいは前記単離および/もしくは外因性核酸分子またはその断片を増幅するステップを含む、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記動物から得たサンプルを、ストリンジェントな条件下で前記核酸コンストラクトならびに/または前記単離および/もしくは外因性核酸分子とハイブリダイズするプローブと接触させて複合体を形成するステップと、
前記複合体の有無を決定するステップと
を含む、請求項59または請求項60に記載の方法。
【請求項62】
インフルエンザに耐性がある非ヒトトランスジェニック動物を繁殖する方法であって、
(i)請求項1から30のいずれか一項に記載の核酸コンストラクトを非ヒト動物細胞中に導入するステップと、
(ii)前記核酸コンストラクトを含むトランスジェニック非ヒト細胞を選択するステップと、
(iii)前記トランスジェニック非ヒト細胞からトランスジェニック非ヒト動物を再生するステップと、
(iv)前記トランスジェニック非ヒト動物を繁殖させてトランスジェニック子孫を生成するステップと、
(v)インフルエンザに耐性があるトランスジェニック子孫を選択するステップと
を含む方法。
【請求項63】
食料を生産する方法であって、
(i)請求項1から30のいずれか一項に記載の核酸コンストラクトを動物細胞中に導入するステップと、
(ii)前記核酸コンストラクトを含むトランスジェニック細胞を選択するステップと、
(iii)前記トランスジェニック細胞からトランスジェニック動物を再生するステップと、
(iv)前記トランスジェニック動物を繁殖させてトランスジェニック子孫を生成するステップと、
(v)前記トランスジェニック子孫から食料を生産するステップと
を含む方法。
【請求項64】
トランスジェニック非ヒト動物を作製する方法であって、
(i)トランスポゾンを含む第一の核酸を細胞中に導入するステップであって、前記核酸が二本鎖RNA分子をコードするステップと、
(ii)トランスポザーゼをコードする第二の核酸を前記細胞中に導入するステップと、
(iii)前記細胞のゲノム中に前記第一の核酸を含むトランスジェニック細胞を選択するステップと、
(iv)前記細胞からトランスジェニック非ヒト動物を再生するステップと、
(v)前記トランスジェニック非ヒト動物を繁殖させるステップと
を含む方法。
【請求項65】
前記トランスポゾンがTol2トランスポゾンであり、前記トランスポザーゼがTol2トランスポザーゼである、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記細胞がニワトリの始原生殖細胞である、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
インフルエンザに耐性があるトランスジェニック非ヒト動物。
【請求項68】
前記トランスジェニック動物が二本鎖領域を含むRNA分子をコードする核酸コンストラクトを含み、前記RNA分子を欠く同系インフルエンザウイルス感染動物細胞と比較したとき、前記RNA分子が前記動物の細胞中のインフルエンザウイルスの複製を低減させる、請求項67に記載のトランスジェニック非ヒト動物。
【請求項69】
前記トランスジェニック動物が二本鎖領域を含むRNA分子をコードする核酸コンストラクトを含み、前記RNA分子を欠く同系インフルエンザウイルス感染動物細胞と比較したとき、前記RNA分子が前記動物の細胞中の感染性インフルエンザウイルス粒子の生成を低減させる、請求項67に記載のトランスジェニック非ヒト動物。
【請求項70】
前記トランスジェニック動物が二本鎖領域を含むRNA分子をコードする核酸コンストラクトを含み、前記RNA分子を欠く同系インフルエンザAウイルス感染動物細胞と比較したとき、前記RNA分子が前記動物のインフルエンザウイルス感染細胞中のインフルエンザウイルスポリペプチドの発現を低減させる、請求項67に記載のトランスジェニック非ヒト動物。
【請求項71】
前記トランスジェニック非ヒト動物がニワトリであり、前記インフルエンザがインフルエンザAである、請求項67から70のいずれか一項に記載のトランスジェニック非ヒト動物。
【請求項72】
繁殖のための、請求項44から49のいずれか一項に記載の非ヒトトランスジェニック生物または請求項67から71のいずれか一項に記載のトランスジェニック非ヒト動物の使用。
【請求項73】
食料生産のための、請求項44から49のいずれか一項に記載の非ヒトトランスジェニック生物または請求項67から71のいずれか一項に記載のトランスジェニック非ヒト動物の使用。

【図3】
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【図1】
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【図2】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−526542(P2010−526542A)
【公表日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−507765(P2010−507765)
【出願日】平成20年5月16日(2008.5.16)
【国際出願番号】PCT/AU2008/000692
【国際公開番号】WO2008/138072
【国際公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(509316718)エムエーティー・マルタ・アドヴァンスト・テクノロジーズ・リミテッド (2)
【出願人】(305039998)コモンウェルス サイエンティフィック アンド インダストリアル リサーチ オーガニゼイション (92)
【Fターム(参考)】