説明

インフレーターの製造方法

【課題】簡便な構成の充填装置を使用して、容易かつ安価に製造することができるインフレーターの製造方法を提供すること。
【解決手段】インフレーター1の製造時、まず、充填流路20を経てハウジング2の内外を連通させるように、閉塞体16を充填用開口3に配置し、さらに、閉塞体と充填用開口の周縁4との間のシール性を確保可能に、閉塞体4を充填用開口の周縁4に当接させる。ついで、加圧ガスGを噴出可能な充填ノズル30を、閉塞体の流入口20bの周縁21に押し当て、充填ノズルから加圧ガスを噴出させて、加圧ガスGを、充填流路を経て、ハウジング内に充填する。そして、充填流路を閉塞するために、閉塞体16に抵抗溶接電流を通電して、充填流路20の内周部位を抵抗溶接する。また同時に、閉塞体16を、シール性を維持可能に抵抗溶接により充填用開口の周縁4に固定して、インフレーター1を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアバッグへ膨張用のガスとして供給される加圧ガスが充填された構成のハイブリッドタイプやストアードタイプのインフレーターの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハウジング(ボトルともいう)の内部に加圧ガスを充填させて構成されるタイプのインフレーターでは、ハウジングに、加圧ガスを充填させるための充填用開口が形成され、この充填用開口が、加圧ガスの充填後において、抵抗溶接によって充填用開口の周縁に溶着される閉塞体(溶接ピンともいう)により、閉塞されていた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
そして、このようなインフレーターの製造では、まず、ハウジングの充填用開口の周縁を、筒状のカバー体でシール性(気密性)を確保しつつ覆うとともに、閉塞体と充填用開口の内周面との間に充填用の隙間を設けて、閉塞体を、充填用開口に挿入させるように、充填用開口に配置する。さらに、その閉塞体の上方には、抵抗溶接用の電極を配置させる。その後、加圧ガス源から供給される加圧ガスをカバー体内に流入させ、流入した加圧ガスを、閉塞体と充填用開口の内周面との隙間を経て、ハウジング内に充填する。そして、加圧ガスのハウジング内への充填完了後、カバー体を充填用開口の周縁に押し当てて気密性を確保した状態で、閉塞体を押し可能に電極を下降させ、閉塞体を充填用開口の周縁に押圧しつつ、閉塞体に抵抗溶接用電流を通電し、閉塞体を、充填用開口の周縁に抵抗溶接し、充填用開口を閉塞するようにハウジングに固定して、インフレーターを製造していた。
【特許文献1】特開2000−227199公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のインフレーターの製造方法では、大気圧雰囲気下で、閉塞体を充填用開口の周縁に固定しているわけではなく、すなわち、ハウジング内への加圧ガスを充填している圧力(35〜55MPa)下において、ガス漏れが無いように、充填用開口、閉塞体、及び、抵抗溶接用の電極の周囲をカバー体で気密性を確保しつつ、閉塞体を抵抗溶接していた。そのため、使用する充填ノズルや電極を備えてなる充填装置が、カバー体内での電極の可動部分のシール構造を含めて、複雑となり、簡便にインフレーターを製造する点に、改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するものであり、簡便な構成の充填装置を使用して、容易かつ安価に製造することができるインフレーターの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るインフレーターの製造方法は、エアバッグへ膨張用ガスとして供給される加圧ガスをハウジングに充填させて製造するインフレーターの製造方法であって、
加圧ガスの充填用開口を有したハウジングを準備するハウジング準備工程、
充填用開口を閉塞可能な閉塞体であり、かつ、ハウジング内に加圧ガスを充填可能な充填流路を貫通させた閉塞体、を準備する閉塞体準備工程、
ハウジング準備工程と閉塞体準備工程とを経た後の工程であって、充填流路を経てハウジングの内外を連通させるように、充填流路における加圧ガスの流出口をハウシングの内側に向け、かつ、充填流路における加圧ガスの流入口をハウジングの外側に向けて、閉塞体を充填用開口に配置する閉塞体セット工程、
閉塞体セット工程を経た後の工程であって、閉塞体と充填用開口の周縁との間のシール性を確保可能に、閉塞体を充填用開口の周縁に当接させる閉塞体当接工程、
閉塞体当接工程を経た後、若しくは、閉塞体当接工程と同時に行う工程であって、加圧ガスを噴出可能な充填ノズルを、シール性を確保するように、閉塞体の流入口の周縁に押し当てる充填ノズル配置工程、
充填ノズル配置工程を経た後の工程であって、充填ノズルから加圧ガスを噴出させて、加圧ガスを、充填流路を経て、ハウジング内に充填する加圧ガス充填工程、
加圧ガス充填工程を経た後の工程であって、充填流路の内周面を溶融固化させて充填流路を閉塞するように、閉塞体に抵抗溶接電流を通電して、充填流路の内周部位を抵抗溶接する充填流路閉塞工程、
を具備するとともに、
閉塞体を、シール性を維持可能として、充填用開口の周縁に固定する閉塞体固定工程を具備し、
閉塞体固定工程が、閉塞体当接工程と同時に行うか、若しくは、閉塞体当接工程後に行って製造することを特徴とする。
【0007】
本発明に係るインフレーターの製造方法では、ハウジング内への加圧ガスの充填時、充填ノズル配置工程を経て、加圧ガス充填工程を行い、その後、充填流路閉塞工程において、閉塞体の充填流路を、抵抗溶接を利用して、閉塞することにより、インフレーターを製造している。
【0008】
そして、閉塞体とハウジングの充填用開口の周縁とのシール性を維持した状態での固定工程(閉塞体固定工程)は、閉塞体当接工程と同時に行うか、若しくは、閉塞体当接工程後に行うこととしている。すなわち、例えば、閉塞体固定工程を閉塞体当接工程と同時に行う場合には、閉塞体当接工程が、閉塞体セット工程を経た後の工程であって、閉塞体と充填用開口の周縁との間のシール性を確保可能に、閉塞体を充填用開口の周縁に当接させる工程であり、この時同時に、抵抗溶接、あるいは、他のアーク溶接やろう付け等の抵抗溶接以外の溶接、さらには、ねじ結合、無理嵌め等の圧入、接着等の固定作業により、閉塞体をハウジングに固定する閉塞体固定工程を行えば、その固定作業は、加圧ガスの充填前に行う作業であって、大気雰囲気下で行うことができる。また、閉塞体固定工程を、閉塞体当接工程後、例えば、加圧ガス充填工程後に行うこととしても、加圧ガス充填工程では、閉塞体当接工程において、既に、閉塞体と充填用開口の周縁とのシール性を確保した状態としており、充填ノズルを閉塞体の流入口の周縁に押し当てる充填ノズル配置工程を経て、充填ノズルから加圧ガスを噴出させれば、ガス漏れなく、加圧ガスは、充填流路を経て、ハウジング内に充填されて、円滑に加圧ガス充填工程を完了させることとができる。そして、加圧ガス充填工程後においては、シール性を確保して充填ノズルを閉塞体の流入口の周縁に押し当てる充填ノズル配置工程の状態、すなわち、充填ノズルを閉塞体の流入口の周縁に押し当てる状態、を維持しておけば、閉塞体自体と充填用開口の周縁とのシール性が既に閉塞体当接工程により確保されていることと相まって、ハウジングや閉塞体から加圧ガスの漏れが無い状態を維持される。そのため、加圧ガス充填工程後において、閉塞体をハウジングに固定する閉塞体固定工程を行う際の固定作業では、閉塞体とハウジングの充填用開口の周縁との固定部位相互を、大気中に露出させておくことが可能となる。勿論、閉塞体当接工程後における加圧ガス充填工程前でも、閉塞体とハウジングの充填用開口の周縁との固定部位相互は、大気中に露出させておくことができる。
【0009】
以上のように、閉塞体固定工程を、閉塞体当接工程と同時に行うか、若しくは、閉塞体当接工程後に行うこととしても、どちらの場合でも、閉塞体とハウジングの充填用開口の周縁との固定部位相互を、大気中に露出させた大気雰囲気下(常圧下)で、溶接等の固定作業により固定することができる。そして、加圧ガスを充填する際の充填ノズルや電極を備えた充填装置としては、単に、充填ノズルを閉塞体における充填流路の流入口側の周縁に押圧してシールする構造を確保するだけで、従来のような、シール性を確保しつつ充填用開口の周縁を大きく囲うようなカバー体を設けずに済み、簡便な構成とすることができる。
【0010】
したがって、本発明に係るインフレーターの製造方法では、簡便な構成の充填装置を使用して、インフレーターを容易かつ安価に製造することができる。
【0011】
そして、閉塞体当接工程は、閉塞体を充填用開口の周縁に当接させつつ押圧して、閉塞体と充填用開口の周縁との間のシール性を確保する工程として、閉塞体固定工程は、閉塞体当接工程後に行なってもよい。すなわち、閉塞体固定工程を閉塞体当接工程後に行なう場合の閉塞体当接工程が、閉塞体を充填用開口の周縁に押圧して、閉塞体と充填用開口の周縁との間のシール性を確保できる工程としておけば、単に、閉塞体を充填用開口の周縁側に押圧する押圧作業で、容易に、閉塞体当接工程を完了させることができる。
【0012】
また、閉塞体固定工程としては、抵抗溶接により、閉塞体を充填用開口の周縁に固定する工程としていれば、充填流路を閉塞する際の抵抗溶接に利用する抵抗溶接電源等を共用でき、他のアーク溶接等の溶接等の固定手段を利用する場合に比べて、使用する機器を少なくして、一層、容易かつ安価に、インフレーターを製造することができる。
【0013】
勿論、充填流路を閉塞する際の抵抗溶接に利用する抵抗溶接用電極自体を利用して、抵抗溶接により行う閉塞体固定工程を、充填流路閉塞工程と同時に行うこともでき、その場合には、一層、使用する機器を少なくして、インフレーターを製造することができる。
【0014】
また、充填ノズルとして、充填流路閉塞工程で使用する抵抗溶接用の電極を兼用していれば、加圧ガス充填工程において使用した充填ノズルを、閉塞体における充填流路の流入口の周縁に押し当てて、流入口の周縁のシール性を確保した状態で、自動的かつ迅速に、充填流路閉塞工程に移行でき、かつ、充填流路閉塞工程を完了することができる。
【0015】
さらに、充填ノズルが、閉塞体当接工程と同時に充填ノズル配置工程を行い可能に、閉塞体の流入口の周縁への圧接時に、閉塞体自体を充填用開口の周縁に当接させつつ押圧するように構成してもよく、この場合でも、閉塞体当接工程において、閉塞体を押圧する押圧部材を別途設けなくともよく、使用する機器を少なくして、インフレーターを製造することができる。
【0016】
この場合、閉塞体における充填流路の流出口側の端部は、充填用開口の内周側に挿入可能で、かつ、挿入方向への押圧時に、充填用開口の周縁の全周に対し、シール性を確保して、外周面を圧接可能な先細り形状に形成しておいてもよい。このような構成では、充填ノズル配置工程における充填ノズルの閉塞体の押圧時に、閉塞体を充填用開口に押し込んで、容易に、シール性を確保して、閉塞体を充填用開口の周縁に圧接することができる。
【0017】
なお、充填ノズルが、閉塞体固定工程で使用する抵抗溶接用の電極を兼用する構成としてもよく、この場合には、加圧ガス充填工程の前に、閉塞体を充填用開口の周縁に抵抗溶接し、閉塞体当接工程と閉塞体固定工程とを同時に行ったり、あるいは、充填流路閉塞工程と同時に閉塞体固定工程を行うことも可能となる。
【0018】
そして、上記のような製造方法により製造されたインフレーターでは、従来のようなカバー体を設けずに済む簡便な構成の充填装置を使用して、容易かつ安価に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明すると、第1実施形態の製造方法で製造するインフレーター1は、車両に搭載されるエアバッグ装置のエアバッグに膨張用のガスを供給するものであり、図1に示すように、ガス発生剤11の燃焼ガスと充填されたアルゴン等の不活性ガスからなる加圧ガスGとを、エアバッグの膨張用のガスに利用するハイブリッドタイプとしている。インフレーター1は、略円筒状のハウジング2の前端側に、吐出側口金部7を溶接等により固着させ、ハウジング2の後端側に、ガス発生剤11とガス発生剤11に着火するスクイブ10とを保持したスクイブ側口金部9を、溶接等により固着させている。吐出側口金部7は、複数のガス吐出口7bを設けた頭部7aを突設させている。
【0020】
ハウジング2における吐出側口金部7とスクイブ側口金部9との境界部位には、それぞれ、スクイブ10の点火による衝撃波やガス発生剤11の着火に伴う内圧上昇等により破裂可能として、ハウジング2側を閉塞する破裂板13,14が配設され、そして、破裂板13,14間のハウジング2内には、35〜70MPa程度の圧力で加圧ガスGが充填されている。このインフレーター1の作動時には、スクイブ10が点火され、スクイブ10により着火されたガス発生剤11が燃焼ガスを発生して、破裂板14が破裂し、さらに、ハウジング2内の内圧上昇により、破裂板13が破裂し、ガス発生剤11の燃焼ガスと加圧ガスGとが、ガス吐出口7bから吐出されることとなる。
【0021】
そして、このハウジング2は、抵抗溶接可能で、かつ、低炭素鋼やスチール鋼等の耐圧性を確保可能な金属パイプから形成され、その外周壁2aの前後方向の中央付近には、閉塞体16によって閉塞されて、加圧ガスGを充填させるための充填用開口3が配設されている。この充填用開口3は、円形に開口し、その軸方向CDを略円筒形状のハウジング2の軸直交方向として、ハウジング2の内外を貫通している。
【0022】
閉塞体16は、ハウジング2と同様に、抵抗溶接可能な低炭素鋼等の金属材から形成され、抵抗溶接によって、充填用開口3の周縁4に溶着(溶接)されている。閉塞体16は、充填用開口3の周縁4に溶着された周縁溶着部23を有する元部側端部18から、充填用開口3の軸方向CDに沿って、先端部19を充填用開口3の周縁4から突出するように延ばした栓素材17(図2,3参照)、から形成されている。
【0023】
そして、閉塞体16は、ハウジング2への溶接前の栓素材17の状態では、図3のAに示すように、ハウジング2内に加圧ガスGを充填可能に、元部側端部18の充填用開口3側に露出させた端面18aから先端部19の端面19aまで貫通される充填流路20が、形成されている。この充填流路20は、加圧ガスGのハウジング2内への充填後には、抵抗溶接により、内周面20a側を溶着されて(溶融固化されて)形成される溶着閉塞部24によって、閉塞されることとなる(図2、図4のB参照)。充填流路20は、元部側端部18の端面18aに開口された流出口20cが、閉塞前の充填用開口3より小さな開口面積として、形成されている。なお、第1実施形態の場合、充填流路20は、溶着閉塞部24の形成前の状態では、先端部19の端面19aに開口された流入口20bから元部側端部18の端面18aの流出口20cまでの全域において、同じ円形の開口形状としている。
【0024】
また、閉塞体16(栓素材17)は、先端部19における加圧ガスGを充填する際の流入口20bの周縁が、加圧ガスGを充填する際に使用する充填ノズル30を当接させるためのノズル受け座21としている。第1実施形態の場合、このノズル受け座21は、先端部19の端面19a近傍の外周面19bの部位として、元部側端部18側にかけて円錐台形状に拡径するように傾斜するテーパ面としている。そして、このノズル受け座21は、充填ノズル30を充填用開口3の軸方向CDに沿ってハウジング2側に押し当てた際に、充填ノズル30の開口30aの周囲のテーパ状の周縁部30bに圧接されて、充填流路20内と開口30a内とを気密性(シール性)を確保して連通可能に、充填ノズル30の先端内周縁(周縁部)30bに対応して、傾斜して、構成されている。
【0025】
さらに、第1実施形態の閉塞体16(栓素材17)では、元部側端部18が、外形を円錐台形状として、端面18a側を充填用開口3の内周側に挿入可能で、かつ、充填ノズル30のノズル受け座21への押圧時に、充填用開口3の周縁4の全周に対して、気密性を確保して圧接可能な先細り形状(図例ではテーパ状)の外周面18b、を備えている。すなわち、外周面18bにおける端面18a側の部位18baの外径寸法DTが、充填用開口3の内径寸法HDより小さく、外周面18bにおける先端部19側の部位18bbの外径寸法DBが、充填用開口3の内径寸法HDより大きく、設定されている(図3のA,B参照)。
【0026】
インフレーター1の製造時に使用する加圧ガスGを充填するための充填装置26は、図3のCや図4のA,Bに示すように、閉塞体16(栓素材17)をハウジング2の充填用開口3の周縁4に抵抗溶接する周縁溶着用電極27と、充填流路20の内周面20a側を、抵抗溶接により溶着して閉塞する流路閉塞用電極28と、を備えて構成されるとともに、ノズル受け座21に圧接させて、図示しない加圧ガス源から供給される加圧ガスGを充填流路20に流入させる充填ノズル30、を備えて構成されている。そして、第1実施形態の場合には、これらの周縁溶着用電極27、流路閉塞用電極28、及び、充填ノズル30が、兼用されるように、一体化された電極兼用ノズル32として、構成されている。そして、この電極兼用ノズル32では、閉塞体16の先端部19の外周面19b側に、先端面32a(周縁部30b)を押し当てる際、既述したように、先端部19の端面19a近傍の外周面19bに嵌合するように、テーパ状の先端面32aが形成されている。
【0027】
なお、第1実施形態の栓素材17は、先端部19の外周面19bを元部側端部18の側にかけて、拡開するようなテーパ状に形成されて、元部側端部18のテーパ状の外周面18bの部位18bbに連ならせて、算盤の玉形状(略樽形状)としており、充填用開口3を閉塞可能な外径寸法DBを確保して、極力、軸方向の長さ寸法L0(図3のB参照)を短くして、ハウジング2の充填用開口3を閉塞した閉塞体16が、ハウジング2の外周壁2aから突出する長さ寸法L1(図4のB参照)を短くできるように、構成されている。
【0028】
つぎに、この第1実施形態のインフレーター1の製造方法について説明すると、第1実施形態では、ハウジング準備工程、閉塞体準備工程、閉塞体セット工程、閉塞体当接工程、充填ノズル配置工程、加圧ガス充填工程、充填流路閉塞工程、及び、閉塞体固定工程を経て、インフレーター1を製造している。
【0029】
ハウジング準備工程は、エアバッグへ膨張用ガスとして供給される加圧ガスGを充填させるための充填用開口3を有したハウジング2を準備する工程である。そして、第1実施形態の場合のハウジング準備工程では、ハウジング2を構成する金属パイプに、孔開け加工により充填用開口3を設けてハウジング2を形成し、さらに、ハウジング2に対し、破裂板13,14を設けて、吐出側口金部7とスクイブ側口金部9とを取り付けている。なお、スクイブ10とガス発生剤11とは、ハウジング2を充填装置26にセットする前でなく、加圧ガスGを充填させた後に、別途、スクイブ側口金部9内に組み付けてもよい。
【0030】
閉塞体準備工程は、充填用開口3を閉塞可能として、ハウジング2内に加圧ガスGを充填可能な充填流路20を貫通させた閉塞体16(栓素材17)、を準備する工程である。第1実施形態の閉塞体準備工程では、所定の金属ブロックから栓素材17の外形形状を金属加工して形成して、ついで、充填流路20を孔開け加工することにより、栓素材17を形成している。
【0031】
閉塞体セット工程は、ハウジング準備工程と閉塞体準備工程とを経た後の工程であって、図3のA,Bに示すように、充填流路20を経てハウジング2の内外を連通させるように、充填流路20の加圧ガスGの流出口20cをハウジング2の内側に向け、かつ、充填流路20の加圧ガスGの流入口20bをハウジング2の外側に向けて、閉塞体16(栓素材17)を充填用開口3に配置する工程である。そして、第1実施形態の閉塞体セット工程では、閉塞体16を、元部側端部18の端面18a側をハウジング2の充填用開口3内に挿入せて、充填用開口3の周縁4に外周面18bを接触させるように、充填用開口3に配置させている。
【0032】
閉塞体当接工程は、閉塞体セット工程を経た後の工程であって、図3のCに示すように、閉塞体16と充填用開口3の周縁4との間のシール性を確保可能に、閉塞体16を充填用開口3の周縁4に当接させる工程であり、第1実施形態では、充填ノズル配置工程と同時に行っている。
【0033】
充填ノズル配置工程は、図3のCに示すように、加圧ガスGを噴出可能な充填ノズル30を、シール性を確保するように、閉塞体16の流入口20bの周縁におけるノズル受け座21に押し当てる工程である。第1実施形態の充填ノズル配置工程では、充填流路20の流入口20bと電極兼用ノズル32(充填ノズル30)の開口30aとを連通させるように、電極兼用ノズル32の先端面32a(充填ノズル30の周縁部30b)を、閉塞体16のノズル受け座21に押し当てて、電極兼用ノズル32の先端面32aとノズル受け座21との気密性を確保している。
【0034】
と同時に、この時、第1実施形態では、栓素材17(閉塞体16)の元部側端部18と充填用開口3の周縁4との気密性は、電極兼用ノズル(充填ノズル30)32のノズル受け座21への押圧時における閉塞体16の充填用開口3の周縁4への押圧力により、確保されて、閉塞体当接工程と同時に、充填ノズル配置工程が行われている。
【0035】
加圧ガス充填工程は、図4のAに示すように、充填ノズル配置工程を経た後の工程であって、充填ノズル30から加圧ガスGを噴出させて、加圧ガスGを、充填流路20を経て、ハウジング2内に充填する工程である。第1実施形態の加圧ガス充填工程では、図示しない加圧ガス源側のバルブ等を開けて、充填ノズル30の開口30aから加圧ガスGを噴出させており、噴出した加圧ガスGは、流入口20bから充填流路20内に流入し、充填流路20の流出口20cから流出して、ハウジング2内に充填され、ハウジング2内の圧力が35〜70MPaの範囲内の所定の圧力値となるまで、加圧ガスGを充填している。
【0036】
充填流路閉塞工程は、加圧ガス充填工程を経た後の工程であって、図4のBに示すように、充填流路20の内周面20aを溶融固化させて充填流路20を閉塞するように、閉塞体16(栓素材17)に抵抗溶接電流を通電して、充填流路20の内周部位を抵抗溶接する工程である。第1実施形態の場合の充填流路閉塞工程では、シール性を維持可能として閉塞体16を充填用開口3の周縁4に固定する閉塞体固定工程と同時に行っており、加圧ガスGのハウジング2内への充填が完了した後、電極兼用ノズル32をノズル受け座21にさらに圧接させて、閉塞体16を充填用開口3の周縁4に強く押し付けつつ、電極兼用ノズル32に、抵抗溶接用電流を所定時間通電する。すると、図4のBに示すように、閉塞体16を充填用開口3の周縁4に強く押し付けることにより、充填流路20の内周面20aにおける充填用開口3の周縁4付近が、縮径されるように変形して、充填流路20の内周面20a自体が周壁相互を溶接させるように、溶融固化して、溶着閉塞部24が形成されて充填流路20を閉塞する。
【0037】
と同時に、第1実施形態では、元部側端部18の外周面18bと充填用開口3の周縁4とも、抵抗溶接され、閉塞体16が、周縁溶着部23を形成して、充填用開口3を閉塞するように周縁4に溶着されることとなり、閉塞体16がシール性を維持可能として充填用開口3の周縁4に固定される閉塞体固定工程も完了することとなる。
【0038】
その後、第1実施形態では、加圧ガス源からの加圧ガスGの電極兼用ノズル32の開口30a側への供給を停止して、電極兼用ノズル32を閉塞体16から離し、充填装置26からハウジング2を取り外せば、ハウジング2に加圧ガスGを充填して製造したインフレーター1を得ることができる。
【0039】
そして、第1実施形態では、閉塞体16とハウジング2の充填用開口3の周縁4とのシール性を維持した状態での固定工程(閉塞体固定工程)が、閉塞体当接工程後、詳しくは、加圧ガス充填工程後の充填流路閉塞工程時に同時に行うこととしており、加圧ガス充填工程では、閉塞体当接工程(図3のC参照)において、既に、閉塞体16と充填用開口3の周縁4とのシール性を確保した状態としており、充填ノズル30を閉塞体16の流入口20b周縁のノズル受け座21に押し当てる充填ノズル配置工程を経て、充填ノズル30から加圧ガスGを噴出させれば、ガス漏れなく、加圧ガスGは、充填流路20を経て、ハウジング2内に充填されて、円滑に加圧ガス充填工程を完了させることとができる。そして、加圧ガス充填工程後においては、シール性を確保して充填ノズル30を閉塞体16の流入口20bの周縁におけるノズル受け座21に押し当てる充填ノズル配置工程の状態、すなわち、充填ノズル30を閉塞体16の流入口20bの周縁におけるノズル受け座21に押し当てる状態、を維持しておけば、閉塞体16自体と充填用開口3の周縁4とのシール性が既に閉塞体当接工程により確保されていることと相まって、ハウジング2や閉塞体16から加圧ガスの漏れが無い状態を維持される。そのため、加圧ガス充填工程後において、閉塞体16をハウジング2に固定する閉塞体固定工程を行う際の固定作業では、閉塞体16とハウジング2の充填用開口3の周縁4との固定部位相互を、大気中に露出させておくことが可能となる。
【0040】
すなわち、第1実施形態では、閉塞体固定工程において、閉塞体16とハウジング2の充填用開口3の周縁4との固定部位相互を、大気中に露出させた大気雰囲気下(常圧下)で、抵抗溶接等の固定作業により固定することができる。そして、加圧ガスGを充填する際の充填ノズル30や電極(周縁溶着用電極27や流路閉塞用電極28)を備えた充填装置26としては、単に、充填ノズル30を閉塞体16における充填流路20の流入口20b側周縁のノズル受け座21に押圧してシールする構造を確保するだけで、従来のような、シール性を確保しつつ充填用開口の周縁を大きく囲うようなカバー体を設けずに済み、簡便な構成とすることができる。
【0041】
したがって、第1実施形態では、簡便な構成の充填装置26を使用して、インフレーター1を容易かつ安価に製造することができる。
【0042】
そして、第1実施形態では、閉塞体当接工程が、図3のCに示すように、閉塞体16を充填用開口3の周縁4に当接させつつ押圧して、閉塞体16と充填用開口3の周縁4との間のシール性を確保する工程として、閉塞体固定工程を、図4のBに示すように、閉塞体当接工程後に行なっている。すなわち、この第1実施形態のように、閉塞体固定工程を閉塞体当接工程後に行なう場合の閉塞体当接工程が、閉塞体16を充填用開口3の周縁4に当接させつつ押圧して、閉塞体16と充填用開口3の周縁4との間のシール性を確保できる工程としておけば、単に、閉塞体16を充填用開口3の周縁4側に押圧する押圧作業で、容易に、閉塞体当接工程を完了させることができる。
【0043】
なお、閉塞体16を充填用開口3の周縁4に当接させつつ押圧して、閉塞体16と充填用開口3の周縁4との間のシール性を確保する場合には、第1実施形態のように、押圧部材として、充填ノズル30を使用する他、例えば、栓素材17を充填用開口3の周縁4側に押圧できるようなクランプや押圧プランジャ等を利用してもよい。一例として、簡便なクランプを利用する場合には、挟持する部位は、例えば、栓素材17では、ハウジング2側に押圧可能な押圧部位、すなわち、外周面19bの外縁19c付近(図2参照)であり、ハウジング2側では、充填用開口3の反対側の外周面部位2b(図1参照)として、両者を挟持するクランプを利用して、閉塞体固定工程を閉塞体当接工程後に行なう場合の閉塞体当接工程自体、を行ってもよい。なお、この時の充填ノズル30は、クランプと干渉しないように、外径寸法を小さくして構成すればよい。
【0044】
但し、第1実施形態では、充填ノズル配置工程に使用する充填ノズル30の閉塞体16の押圧時に、同時に、閉塞体当接工程を行って、充填ノズル30自体を、閉塞体16を充填用開口3の周縁4側に押圧する押圧部材として利用している。そのため、第1実施形態では、閉塞体当接工程において、閉塞体16を押圧する押圧部材を別途設けなくともよく、使用する機器を少なくして、インフレーターを製造することができる。
【0045】
特に、第1実施形態では、閉塞体16における充填流路20の流出口20c側の端部(元部側端部)18が、充填用開口3の内周側に挿入可能で、かつ、挿入方向への押圧時に、充填用開口3の周縁4の全周に対し、シール性を確保して、外周面18bを圧接可能な先細り形状に形成されている。そのため、充填ノズル配置工程における充填ノズル30の閉塞体16の押圧時に、閉塞体16を充填用開口3に押し込んで、容易に、シール性を確保して、閉塞体16を充填用開口3の周縁4に圧接することができる。
【0046】
また、第1実施形態では、閉塞体固定工程として、抵抗溶接により、閉塞体16を充填用開口3の周縁4に固定する工程としている。そのため、充填流路20を閉塞する際の抵抗溶接に利用する抵抗溶接電源等を共用でき、他のアーク溶接等の溶接等の固定手段を利用する場合に比べて、使用する機器を少なくして、一層、容易かつ安価に、インフレーター1を製造することができる。なお、この点を考慮しなければ、他のアーク溶接等の抵抗溶接以外の溶接等を利用して、閉塞体16(栓素材17)を充填用開口3の周縁4に固定(固着)させてもよい。
【0047】
勿論、第1実施形態のように、閉塞体固定工程が、抵抗溶接により、閉塞体16を充填用開口3の周縁4に固定する工程としていれば、充填流路20を閉塞する際の抵抗溶接に利用する抵抗溶接用電極(周縁溶着用電極27と流路閉塞用電極28)自体を利用して、閉塞体固定工程を、充填流路閉塞工程と同時に行うこともでき、その場合には、一層、使用する機器を少なくして、インフレーター1を製造することができる。
【0048】
また、第1実施形態では、充填ノズル30として、充填流路閉塞工程で使用する抵抗溶接用の電極(流路閉塞用電極)28を兼用していれば、加圧ガス充填工程において使用した電極兼用ノズル32を、閉塞体16における充填流路20の流入口20b周縁のノズル受け座21に押し当てて、流入口20bの周縁のシール性を確保した状態で、自動的かつ迅速に、充填流路閉塞工程に移行でき、かつ、充填流路閉塞工程を完了することができる。
【0049】
特に、第1実施形態では、充填ノズル30が、周縁溶着用電極27、流路閉塞用電極28、及び、閉塞体当接工程の閉塞体16を押圧する押圧部材を兼用しており、一層、使用する機器を少なくして、インフレーター1を製造することができ、そして、迅速かつ円滑に、閉塞体当接工程、充填ノズル配置工程、加圧ガス充填工程、充填流路閉塞工程、及び、閉塞体固定工程に移行して、インフレーター1を製造することができる。
【0050】
なお、第1実施形態では、閉塞体当接工程における閉塞体16の元部側端部18と充填用開口3の周縁4との気密性(シール性)を、充填時の充填ノズル30のノズル受け座21への押圧時における閉塞体16の充填用開口3の周縁4への押圧力により、確保しているが、図5に示す第2実施形態のインフレーター1Aの製造方法のように、閉塞体当接工程を閉塞体固定工程と同時に行って、両者のシール性を、耐久性を維持して確保できるように、構成してもよい。ちなみに、第2実施形態の閉塞体固定工程は、閉塞体36を充填用開口3の周縁4に抵抗溶接する固定作業により、行っている。
【0051】
この第2実施形態で製造するインフレーター1Aは、閉塞体36の構成が、第1実施形態のインフレーター1の閉塞体16と相違するだけで、他のハウジング2側の構成は、第1実施形態と同様であり、第1実施形態と同一の部材や部位は、第1実施形態と同じ符号を付して説明を省略する。
【0052】
第2実施形態の閉塞体36は、第1実施形態の閉塞体16と同様に、抵抗溶接可能な低炭素鋼等の金属材から形成され、抵抗溶接によって、ハウジング2の充填用開口3の周縁4に溶着(溶接)されている。閉塞体36は、充填用開口3の周縁4に溶着された周縁溶着部43を有する元部側端部38から、充填用開口3の軸方向CDに沿って、先端部39を充填用開口3の周縁4から突出するように延ばした栓素材37、から構成されている。なお、第2実施形態の閉塞体36の栓素材37では、元部側端部38から先端部39側の端面39aに至るまでの中間部37aが、元部側端部38より外径寸法DS(図6のB参照)を小さくして、円筒状に長く形成されている。そして、中間部37aの端面39aまでの長さ寸法L3は、図7のAに示すように、溶着閉塞部44を形成する抵抗溶接用の流路閉塞用電極48,48に外周面37bを挟持されるスペース(溶接作業スペース)S(図7のB,C参照)を確保可能に、ハウジング2の充填用開口3の周縁4から突出する長さ寸法L2とするように、元部側端部38から延びている。
【0053】
また、閉塞体36(栓素材37)も、ハウジング2への溶接前の状態では、図6のAに示すように、ハウジング2内に加圧ガスGを充填可能に、元部側端部38の充填用開口3側に露出させた端面38aから先端部39の端面39aまで貫通される充填流路40が、形成されている。この充填流路40も、第1実施形態と同様に、加圧ガスGのハウジング2内への充填後には、抵抗溶接により、内周面40a側を溶着されて(溶融固化されて)形成される溶着閉塞部44によって、閉塞されることとなる(図7のC参照)。充填流路40は、第1実施形態と同様に、元部側端部38の端面38aに開口された流出口40cが、閉塞前の充填用開口3より小さな開口面積として、形成され、さらに、先端部39の端面39aに開口された流入口40bから元部側端部38の流出口40cまでの全域において、同じ円形の開口形状としている。
【0054】
さらに、閉塞体36は、栓素材37の先端部39の端面39a側における加圧ガスGを充填する際の流入口40bの周縁が、加圧ガスGを充填する際に使用する充填ノズル50を当接させるためのテーパ面状のノズル受け座41としている。このノズル受け座41は、第1実施形態と同様に、充填ノズル50を充填用開口3の軸方向CDに沿ってハウジング2側に押し当てた際に、充填ノズル50の開口50aの周縁の先狭まりのテーパ状の周縁部50bに圧接されて、充填流路40内と開口50a内とを気密性を確保して連通可能に、充填ノズル50の先端外周面(周縁部50b)に対応して、テーパ状に、構成されている。
【0055】
さらに、第2実施形態の閉塞体36でも、栓素材37の元部側端部38が、端面38a側を充填用開口3の内周側に挿入可能で、かつ、周縁溶着用電極47における先端部39のハウジング2側への押圧時、充填用開口3の周縁4の全周に対して、圧接可能な先細り形状(図例ではテーパ状)の外周面38bを備えている。すなわち、第1実施形態と同様に、外周面38bにおける端面38a側の部位38baの外径寸法DTが、充填用開口3の内径寸法HDより小さく、外周面38bにおける先端部39側の部位38bbの外径寸法DBが、充填用開口3の内径寸法HDより大きく、設定されている(図6のA,B参照)。
【0056】
インフレーター1Aの製造時に使用する加圧ガスGを充填するための充填装置46は、図6のCと図7のBに示すように、閉塞体36をハウジング2の充填用開口3の周縁4に抵抗溶接する周縁溶着用電極47と、充填流路40の内周面40a側を、抵抗溶接により溶着して閉塞する流路閉塞用電極48,48と、を備えて構成されるとともに、ノズル受け座41に押圧させて、図示しない加圧ガス源から供給される加圧ガスGを充填流路40に流入させる充填ノズル50と、を備えて構成されている。そして、第2実施形態の場合には、周縁溶着用電極47と充填ノズル50とが、兼用されるように、一体化された電極兼用ノズル52として、構成されている。また、流路閉塞用電極48,48は、中間部37aをその軸直交方向から挟持できるように配設されている。
【0057】
この第2実施形態のインフレーター1Aの製造方法について説明すると、第2実施形態では、ハウジング準備工程、閉塞体準備工程、閉塞体セット工程、閉塞体当接工程、充填ノズル配置工程、加圧ガス充填工程、充填流路閉塞工程、及び、閉塞体固定工程を経て、インフレーター1Aを製造しており、既述したように、閉塞体固定工程が閉塞体当接工程と同時に行われている。
【0058】
ハウジング準備工程は、第1実施形態と同様に、ハウジング2を構成する金属パイプに、孔開け加工により充填用開口3を設けてハウジング2を形成し、さらに、ハウジング2に対し、破裂板13,14を設けて、吐出側口金部7とスクイブ側口金部9とを取り付けている。
【0059】
閉塞体準備工程は、充填用開口3を閉塞可能として、ハウジング2内に加圧ガスGを充填可能な充填流路40を貫通させた閉塞体36(栓素材37)、を準備する工程であり、第2実施形態の閉塞体準備工程でも、所定の金属ブロックから栓素材37の外形形状を金属加工して形成して、ついで、充填流路40を孔開け加工することにより、栓素材37を形成している。
【0060】
ハウジング準備工程と閉塞体準備工程を経た後には、閉塞体セット工程に移行し、閉塞体セット工程では、図6のA,Bに示すように、閉塞体36を、元部側端部38の端面38a側をハウジング2の充填用開口3内に挿入せて、充填用開口3の周縁4に外周面38bを当接させるように、充填用開口3に配置させる。
【0061】
閉塞体セット工程を経た後では、閉塞体当接工程に移行する。第2実施形態の閉塞体当接工程では、図6のC,Dに示すように、閉塞体36の先端部39のノズル受け座41に電極兼用ノズル(周縁溶着用電極47)52を押し当て、閉塞体36の元部側端部38の外周面38bを充填用開口3の周縁4の全周に当接させつつ押圧し、閉塞体36の元部側端部38の外周面38bと充填用開口3の周縁4とのシール性を確保する。そして、周縁溶着用電極47に抵抗溶接電流を所定時間通電する。すると、元部側端部38の外周面38bと充填用開口3の周縁4とが、抵抗溶接され、閉塞体36が、周縁溶着部43を形成して、シール性を維持可能に、充填用開口3を閉塞するように周縁4に溶着され、閉塞体固定工程も完了することとなる。
【0062】
この時、電極兼用ノズル(充填ノズル50)52は、既に、充填流路40の流入口40bと電極兼用ノズル52(周縁溶着用電極47)の開口50aとを連通させるように、先端外周面52a(充填ノズル50の周縁部50b)を、閉塞体36のノズル受け座41に押し当てて、充填ノズル50の周縁部50bとノズル受け座41との気密性が確保されており、第2実施形態では、充填ノズル配置工程が、閉塞体当接工程や閉塞体固定工程と同時に既に行われることとなる。
【0063】
そして、充填ノズル配置工程後に迅速にその後の加圧ガス充填工程に移行でき、加圧ガス充填工程では、図7のAに示すように、図示しない加圧ガス源側のバルブ等を開けて、開口50aから加圧ガスGを流出させる。すると、加圧ガスGが、充填流路40を経てハウジング2内に充填されることとなる。
【0064】
加圧ガス充填工程での加圧ガスGのハウジング2内への充填が完了すれば、充填流路閉塞工程に移行する。第2実施形態の充填流路閉塞工程では、図7のB,Cに示すように、閉塞体36の中間部37aを挟持するように、流路閉塞用電極48,48を相互に接近させて、充填流路40の内周面40aを縮径させるように変形させつつ、流路閉塞用電極48,48に抵抗溶接電流を所定時間通電する。すると、充填流路40の内周面40a側では、内周面40a自体が周壁相互を溶接させるように、溶融固化して、溶着閉塞部44が形成されて充填流路40を閉塞する。
【0065】
その後、加圧ガス源からの加圧ガスGの電極兼用ノズル52の開口50a側への供給を停止して、電極兼用ノズル52や流路閉塞用電極48,48を閉塞体36から離して、充填装置46からハウジング2を取り外せば、ハウジング2に加圧ガスGを充填して製造したインフレーター1Aを、得ることができる。
【0066】
そして、この第2実施形態のインフレーター1Aの製造方法では、閉塞体36とハウジング2の充填用開口3の周縁4とのシール性を維持した状態での固定工程(閉塞体固定工程)が、図6のC,Dに示すように、閉塞体当接工程と同時に行っている。すなわち、第2実施形態では、閉塞体固定工程を閉塞体当接工程と同時に行って、閉塞体当接工程が、閉塞体セット工程を経た後の工程であって、閉塞体36と充填用開口3の周縁4との間のシール性を確保可能に、閉塞体36を充填用開口3の周縁4に当接させている。そして、この時同時に、抵抗溶接の固定作業により、閉塞体36をハウジング2に固定する閉塞体固定工程を行っており、この固定作業は、加圧ガスGの充填前に行う作業であって、大気雰囲気下で行うことができる。すなわち、閉塞体36の外周面38bとハウジング2の充填用開口3の周縁4との固定部位相互を、大気中に露出させた大気雰囲気下(常圧下)で、抵抗溶接による固定作業によって固定することができる。そのため、加圧ガスGを充填する際の充填ノズル50や電極(周縁溶着用電極47や流路閉塞用電極48)を備えた充填装置46としては、単に、充填ノズル50を閉塞体36における充填流路40の流入口40b側周縁のノズル受け座41に押圧してシールする構造を確保するだけで、従来のような、シール性を確保しつつ充填用開口の周縁を大きく囲うようなカバー体を設けずに済み、簡便な構成とすることができる。
【0067】
したがって、第2実施形態でも、簡便な構成の充填装置46を使用して、インフレーター1Aを容易かつ安価に製造することができる。
【0068】
また、第2実施形態では、閉塞体固定工程として、抵抗溶接により、閉塞体36を充填用開口3の周縁4に固定する工程としており、充填流路40を閉塞する際の抵抗溶接に利用する抵抗溶接電源等を共用でき、他のアーク溶接等の溶接等の固定手段を利用する場合に比べて、使用する機器を少なくして、一層、容易かつ安価に、インフレーター1Aを製造することができる。
【0069】
勿論、この点を考慮しなければ、閉塞体36をハウジング2の充填用開口3の周縁4に固定する閉塞体固定工程を、閉塞体セット工程後の閉塞体当接工程時に同時に行うように、他のアーク溶接やろう付け等の抵抗溶接以外の溶接、さらには、ねじ結合、無理嵌め等の圧入、接着等の固定作業により、行ってもよい。この場合、閉塞体36の外周面38bとハウジング2の充填用開口3の周縁4との固定部位相互は、大気中に露出させた大気雰囲気下(常圧下)にあり、容易に、閉塞体36を充填用開口3の周縁に固定(固着)させることができる。さらに、この場合、加圧ガスGを充填する前に、予め、閉塞体36を溶接等により固着させて閉塞体固定工程を終了させておいたハウジング2を多数準備しておき、充填装置46を、加圧ガスGを充填するだけの充填ノズル50と流路閉塞用電極48とを設けて構成し、このような充填装置46を使用して、加圧ガスGの充填と溶着閉塞部44の形成とだけを行って、インフレーター1Aを製造するように構成することも可能となる。
【0070】
同様に、第1実施形態のインフレーター1においても、予め、加圧ガスGの充填前に、閉塞体16を充填用開口3の周縁4に溶接等により固着して閉塞体固定工程を終了させておき、流路閉塞用電極28と充填ノズル30とを一体化させた電極兼用ノズル32を設けた充填装置26を使用して、ハウジング2内への加圧ガスGの充填と溶着閉塞部24の形成とを行って、インフレーター1を製造してもよい。
【0071】
また、第2実施形態では、充填ノズル50が、閉塞体当接工程と同時に充填ノズル配置工程を行い可能に、閉塞体36の流入口40b周縁のノズル受け座41への圧接時に、閉塞体36自体を充填用開口3の周縁4に当接させつつ押圧するように構成している。そのため、この場合でも、閉塞体当接工程において、閉塞体36を押圧する押圧部材を別途設けなくとも、充填ノズル50を利用でき、使用する機器を少なくして、インフレーター1Aを製造することができる。
【0072】
さらに、第2実施形態では、充填ノズル50が、閉塞体固定工程で使用する抵抗溶接用の電極(周縁溶着用電極)52を兼用する電極兼用ノズル52として構成されている。そのため、加圧ガス充填工程の前に、容易に、閉塞体36を充填用開口3の周縁4に抵抗溶接できて、別途、周縁溶着用電極47を準備する場合に比べ、使用する機器を少なくして、一層、容易かつ安価に、インフレーター1Aを製造することができる。
【0073】
勿論、この点を考慮しなければ、周縁溶着用電極47と充填ノズル50とを一体化した電極兼用ノズル52を使用せずに、周縁溶着用電極47と充填ノズル50とを別体として、加圧ガスGの充填ノズル50の配置前に、閉塞体36を充填用開口3の周縁4に溶接等により固定させて、閉塞体固定工程を完了させておいてもよい。
【0074】
なお、第2実施形態でも、閉塞体36における充填流路40の流出口40c側の端部(元部側端部)38が、充填用開口3の内周側に挿入可能で、かつ、挿入方向への押圧時に、充填用開口3の周縁4の全周に対し、シール性を確保して、外周面38bを圧接可能な先細り形状に形成されている。そのため、このような構成では、電極兼用ノズル52の押圧により、閉塞体36を充填用開口3に押し込んで、閉塞体36を充填用開口3の周縁4に圧接することができ、容易に、閉塞体36の外周面38bと充填用開口3の周縁4との相互を抵抗溶接することができる。
【0075】
また、この第2実施形態では、充填流路閉塞工程において、栓素材37の先端部39側を流路閉塞用電極48,48で挟持して通電することにより、溶着閉塞部44を形成して、インフレーター1Aを製造している。そして、この第2実施形態では、閉塞体36における栓素材37の先端部39側の中間部37aが、溶着閉塞部44を形成する抵抗溶接用の流路閉塞用電極48,48に外周面37bを挟持される溶接作業スペースSを確保可能な長さ寸法L2分を、充填用開口3の周縁4で、確保している。
【0076】
そのため、この充填流路閉塞工程において、第2実施形態では、溶接作業スペースSにより、充填ノズル50の押圧部位となる流入口40b周縁のノズル受け座41から離れた別位置の先端部39側の中間部37aの外周面37bに、容易に流路閉塞用電極48,48を配置でき、さらに、充填ノズル50を流入口40bの周縁に圧接させた状態、すなわち、流入口40bの周縁のシール性を安定して確保した状態、を維持して抵抗溶接できる配置位置に、容易に、流路閉塞用電極48,48を配置させて、溶着閉塞部44を形成することができる。その結果、加圧ガスGの充填前に、閉塞体36が充填用開口3の周縁4に溶接されていることと相まって、加圧ガスGの漏れを極力抑えて、ハウジング2に加圧ガスGを充填してインフレーター1Aを製造することができる。
【0077】
また、第1,2実施形態のインフレーター1,1Aでは、ハイブリッドタイプのものを例示したが、エアバッグへ供給する膨張用ガスを加圧ガスだけで行うストアードタイプのインフレーターに本発明を使用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明に係る第1実施形態のインフレーターを示す断面図である。
【図2】第1実施形態のインフレーターの充填用開口付近の拡大断面図である。
【図3】第1実施形態のインフレーターの製造工程を説明する図である。
【図4】第1実施形態のインフレーターの製造工程を説明する図であり、図3の後の工程を示す。
【図5】第2実施形態のインフレーターを示す断面図である。
【図6】第2実施形態のインフレーターの製造工程を説明する図である。
【図7】第2実施形態のインフレーターの製造工程を説明する図であり、図6の後の状態を示す。
【符号の説明】
【0079】
1,1A…インフレーター、
2…ハウジング、
3…充填用開口、
4…(充填用開口の)周縁、
16,36…閉塞体、
18,38…元部側端部、
20,40…充填流路、
20a,40a…内周面、
20b,40b…流入口、
20c,40c…流出口、
26,46…充填装置、
30,50…充填ノズル、
G…加圧ガス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアバッグへ膨張用ガスとして供給される加圧ガスをハウジングに充填させて製造するインフレーターの製造方法であって、
前記加圧ガスの充填用開口を有したハウジングを準備するハウジング準備工程、
前記充填用開口を閉塞可能な閉塞体であり、かつ、前記ハウジング内に前記加圧ガスを充填可能な充填流路を貫通させた閉塞体、を準備する閉塞体準備工程、
前記ハウジング準備工程と前記閉塞体準備工程とを経た後の工程であって、前記充填流路を経て前記ハウジングの内外を連通させるように、前記充填流路における前記加圧ガスの流出口を前記ハウシングの内側に向け、かつ、前記充填流路における前記加圧ガスの流入口を前記ハウジングの外側に向けて、前記閉塞体を前記充填用開口に配置する閉塞体セット工程、
該閉塞体セット工程を経た後の工程であって、前記閉塞体と前記充填用開口の周縁との間のシール性を確保可能に、前記閉塞体を前記充填用開口の周縁に当接させる閉塞体当接工程、
該閉塞体当接工程を経た後、若しくは、前記閉塞体当接工程と同時に行う工程であって、前記加圧ガスを噴出可能な充填ノズルを、シール性を確保するように、前記閉塞体の前記流入口の周縁に押し当てる充填ノズル配置工程、
該充填ノズル配置工程を経た後の工程であって、前記充填ノズルから前記加圧ガスを噴出させて、前記加圧ガスを、前記充填流路を経て、前記ハウジング内に充填する加圧ガス充填工程、
該加圧ガス充填工程を経た後の工程であって、前記充填流路の内周面を溶融固化させて前記充填流路を閉塞するように、前記閉塞体に抵抗溶接電流を通電して、前記充填流路の内周部位を抵抗溶接する充填流路閉塞工程、
を具備するとともに、
前記閉塞体を、シール性を維持可能として、前記充填用開口の周縁に固定する閉塞体固定工程を具備し、
該閉塞体固定工程が、前記閉塞体当接工程と同時に行うか、若しくは、前記閉塞体当接工程後に行う構成として製造することを特徴とするインフレーターの製造方法。
【請求項2】
前記閉塞体当接工程が、前記閉塞体を前記充填用開口の周縁に当接させつつ押圧して、前記閉塞体と前記充填用開口の周縁との間のシール性を確保する工程とし、
前記閉塞体固定工程が、前記閉塞体当接工程後に行なわれることを特徴とする請求項1に記載のインフレーターの製造方法。
【請求項3】
前記閉塞体固定工程が、抵抗溶接により、前記閉塞体を前記充填用開口の周縁に固定する工程としていることを特徴とする請求項1若しくは請求項2に記載のインフレーターの製造方法。
【請求項4】
前記閉塞体固定工程が、前記充填流路閉塞工程と同時に行われることを特徴とする請求項3に記載のインフレーターの製造方法。
【請求項5】
前記充填ノズルが、前記充填流路閉塞工程で使用する抵抗溶接用の電極を兼用していることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のインフレーターの製造方法。
【請求項6】
前記充填ノズルが、前記閉塞体当接工程と同時に前記充填ノズル配置工程を行い可能に、前記閉塞体の前記流入口の周縁への圧接時に、前記閉塞体自体を前記充填用開口の周縁に当接させつつ押圧していることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のインフレーターの製造方法。
【請求項7】
前記閉塞体における前記充填流路の前記流出口側の端部が、前記充填用開口の内周側に挿入可能で、かつ、挿入方向への押圧時に、前記充填用開口の周縁の全周に対し、シール性を確保して、外周面を圧接可能な先細り形状に形成されていることを特徴とする請求項6に記載のインフレーターの製造方法。
【請求項8】
前記充填ノズルが、前記閉塞体固定工程で使用する抵抗溶接用の電極を兼用していることを特徴とする請求項3に記載のインフレーターの製造方法。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の製造方法により製造されたインフレーター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−2005(P2010−2005A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−162130(P2008−162130)
【出願日】平成20年6月20日(2008.6.20)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】