説明

インポテンスが関与する疾患の治療および予防のための医薬組成物

(a)治療上有効な量の、構造式1または2で表わされる化合物および(b)薬学的に許容可能な担体、希釈剤または賦形剤、またはその任意の組み合わせ、を含む勃起障害の治療および/または予防のための医薬組成物が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成物がAMPK活性化因子として作用しかくして勃起障害に対する優れた治療的および予防的効果を及ぼす、勃起障害を治療し予防するための医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
勃起障害(「ED」または「(男性)インポテンスとも呼ばれる)は、満足のいく性交を確保するために不可欠なプロセスである陰茎勃起を発生させ維持することの反復的かつ連続的不能を記述する医学用語である。即ち、勃起障害は、男性の陰茎勃起の達成または維持が不能であることに起因して性交が持続できない男性の性的機能障害を意味する。かかる勃起障害は、満足のいく性生活の実現を妨げ、家庭内の問題をひき起こし、重大なケースでは社交上の問題例えば神経衰弱をひき起こす。このような理由から、勃起障害の早期および連続的治療を実施する必要がある。
【0003】
勃起障害には2つの主要な原因、即ち心因性および器質性原因がある。心因性原因は、心理的および精神的効果による交感神経の過度の作用の結果としてのノルアドレナリンの過剰分泌、陰茎海綿体平滑筋の緊張の増加、および神経伝達物質の分泌阻害に帰するものである。器質性勃起障害は、原因に応じて神経性、血管性および内分泌勃起障害に分けられる。
【0004】
神経性勃起障害は、勃起神経の周囲における陰茎勃起を媒介する弛緩神経伝達物質(例えばアセチルコリンおよびNO)の不充分な分泌が関与する勃起神経(または繊維)損傷によってひき起こされ、脊髄損傷および多発性硬化症を含む中枢神経疾患または糖尿病および骨盤内の既往手術を含めた末梢神経疾患によって誘発される。糖尿病は、神経性勃起障害の最も一般的な原因であり、その合併症としての末梢神経疾患と共に勃起障害を誘発する。
【0005】
血管性勃起障害は、動脈機能不全(充てん障害)に起因する動脈性勃起障害および静脈機能不全(貯蔵障害)に起因する静脈性勃起障害に分類される。動脈性勃起障害は、動脈硬化症といったような疾病に起因する勃起動脈の内径の減少またはその閉塞の結果としてもたらされる陰茎海綿体への適切な血流の不能である。動脈性勃起障害は、高血圧、糖尿病、高脂血症および喫煙といったようなさまざまな要因によりひき起こされ得る。
【0006】
静脈性勃起障害は、陰茎海綿体内部での血液の貯蔵障害に起因する陰茎勃起の完全な達成または維持不能であり、勃起静脈の不適切な閉鎖によってひき起こされる。例えば、陰茎勃起組織として役立つ海綿体平滑筋が、損傷を受けるかまたは糖尿病、重症の動脈疾患または持続勃起症の続発症として繊維性増殖に関与し、かくして繊維性組織によりとって換わられる。
【0007】
内分泌勃起障害は、視床下部−下垂体−生殖腺軸(HPTA)の障害、高プロラクチン血症、甲状腺疾患、副腎疾患、カルシウム代謝障害などによってひき起こされる。最も一般的な内分泌疾患が糖尿病であることは公知である。
【0008】
勃起障害に関連する近年の調査は、器質性勃起障害に比較的集中して焦点があてられている。器質的勃起障害を治療するために複数の技術が利用可能である。即ち、陰茎海綿体内への勃起誘発剤の注入;外科的補綴インプラント;性欲を促進するための適切な血中男性ホルモンの維持が関与する内分泌勃起障害用の内分泌療法;および薬理療法、である。これらの技術は一般に、器質性勃起障害を治療するための心理療法と併用される。
【0009】
薬理療法を見込んで、ヨヒンビンといったような薬物が臨床的に利用可能であり、アポモルヒネといったようなドーパミンベースの薬物が開発されつつある。特に、バイアグラ(Viagra)(商標)といったようなシルデナフィル誘導体の開発によって、勃起障害用の治療薬についての多くの研究が行われることになった。
【0010】
一方、男性生殖器官の勃起組織は、大きく2つの部分即ち(陰茎)海綿体(corpus cavernosumおよびcorpus spongiosum)から成る。海綿体(cavernous)動脈から延びる多数のらせん動脈が、海綿様の海綿組織内に見られる。陰茎海綿体平滑筋の弛緩は、海綿動脈を通ってらせん動脈までの血流を導き、かくして陰茎の勃起を結果としてもたらす。海綿体組織の拡張によって、陰茎は性交を達成するのに充分なほど硬くなる。
【0011】
従って、勃起は、血管自体が損傷を受けていないかぎり陰茎海綿体平滑筋の弛緩と直接関連づけされ、この弛緩を媒介することを担当する主な因子は、一酸化窒素(NO)である(ブルネット(Burnet)AL、1997年)。即ち、全て勃起障害と密に関連する加齢および動脈硬化症、高血圧および糖尿病といったような疾病に関するモデルについて調査したところ、不適切なNO作用、一酸化窒素シンターゼ(NOS)の活性の低下および陰茎内のNOS発現の障害に起因する非アドレナリン作用性、非コリン作用性(NANC)陰茎海綿体平滑筋弛緩の障害が発生していた。この結果から、NOの生理学的活性の低下が、勃起障害をひき起こすことが確認される。
【0012】
一酸化窒素(NO)は、血管内皮細胞から分泌され拡散される気相神経伝達物質であり、内皮由来放出因子(EDRF)としても知られてきた。NOは、副交感神経系の刺激により活性化されるNOS酵素によってアルギニンから生合成される。NOは、血管平滑筋内に拡散して、グアニルシクラーゼ(GC)と呼ばれる酵素を刺激する。このとき、活性化されたGCはグアノシン三リン酸(GPT)を環状グアノシン一リン酸(cGMP)に転換する(イグナロ(Ignarro)LJ、1981年)。このような機序に従って生成されたcGMPは、細胞内のカルシウム濃度を低減させ、アクチンおよびミオシンの弛緩を導き、かくして最終的に陰茎海綿体平滑筋の弛緩をもたらす。ホスホジエステラーゼ5型(PDE5)は、cGMPからGMPへの分解を誘発してcGMPの活性を阻害する酵素であり、男性生殖器官の中に発見されることがわかっている(ブーレル(Boolell)M、ら、1996年)。
【0013】
この点において、バイアグラ(商標)といったようなシルデナフィル誘導体は、ホスホジエステル結合を加水分解してcGMPの分解を抑制する酵素(即ちPDE5)の活性を選択的に阻害し(4000倍以上)、その結果として陰茎海綿体内のcGMPの濃度を維持し平滑筋を弛緩させ、陰茎へのより多くの血流量を可能にし、かくして勃起を維持する。
【0014】
しかしながら、シルデナフィルは、例えば頭痛、顔面紅潮、心筋梗塞、心不全、低血圧症および脳梗塞といったさまざまな副作用をひき起こすことが報告されている。かくして、シルデナフィルに代わることのできる勃起障害用の安全な薬物としての使用に適した効率の良い物質を開発する緊急なニーズが増々高まっている。
【0015】
本発明人らは、特異的ナフトキノン化合物がAMP活性化タンパク質キナーゼ(AMPK)を活性化し、かくして勃起障害の治療のための強力な効能をもたらす、ということを発見した。
【0016】
図1に示されているように、AMPKは、細胞の栄養条件、運動およびストレスといったようなさまざまな因子によって左右される細胞のエネルギー状態(即ちATP/AMP比)に応えてその活性を制御するリン酸化酵素である。ひとたび活性化されると、AMPKはその後の機序における生理学的カスケードに影響を及ぼし、かくして、生体外および生体内においてグルコース、タンパク質および脂肪といったようなエネルギー源の代謝について主要な役目を果たす。従って、AMPK活性化因子は、肥満、糖尿病、代謝疾患、変性疾患およびミトコンドリア機能障害関連疾患を含めたメタボリック症候群の調節についてのそれらの中心的役割のため大きな著しく注目を集めてきた。
【0017】
AMPKの活性化が、肥満関連性糖尿病疾患を含めた慢性炎症性身体条件または内毒素ショックにおいて炎症性メディエータとして作用するiNOS酵素の活性を阻害し、かくしてインスリン感受性を増大させることのできる新しい機序をもつ薬剤の開発にとって有効であることが、ジュヌビエーブら(非特許文献1)によって報告された。更に、AMPK活性化を通したiNOS活性の阻害は、敗血症、多発性硬化症、心筋梗塞、炎症性腸疾患および膵臓ベータ細胞機能不全といったような疾病に対し臨床的に応用可能であることも報告された。
【0018】
AMPKが、ラットの筋肉および心臓細胞内においてCa−カルモジュリンの存在下で、リン酸化を通して内皮NOシンターゼを活性化することが、ジン・ピンら(非特許文献2)により報告された。これは、AMPKが、狭心症を含めた心疾患に関与することを表している。
【0019】
一方、当該技術分野においては、有効成分として従来のナフトキノンベースの化合物を含有するさまざまな医薬組成物が公知である。これらのうち、β−ラパコンは、南米に天然に育っているラパチョの木(Tabebuia avellanedae)に由来し、デュニオンおよびα−デュニオンは、同じく南米に天然に育っているストレプトカルプス・デュニイ(Streptocarpus dunnii)の葉に由来する。これらの天然に発生する3環式ナフトキノン誘導体は、抗癌剤としてのみならず、かつて南米の代表的風土病として知られていたシャーガス病の治療のための医薬としても使用されてきた。特に、抗癌剤としてのナフトキノン誘導体の薬理作用は、西欧諸国に知られて以来著しく注目を集めている。特許文献1に開示されているように、3環式ナフトキノン誘導体を利用する多くの抗癌剤が現在、数多くの研究グループにより開発されている。
【0020】
さまざまな調査にも関わらず、3環式ナフトキノン誘導体が勃起障害に対し薬理学治療および予防効果を示すという事実を確認する報告書は存在しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】米国特許第5,969,163号明細書
【非特許文献】
【0022】
【非特許文献1】J.Biol.Chem、第279号、20767〜74頁、2004年
【非特許文献2】FEBS Letters、第443号、285〜289頁、1999年
【非特許文献3】V.ナイアー(Nair)ら、Tetrahedron Lett.第42号(2001年)、4549〜4551頁
【非特許文献4】A.C.ベーリー(Baillie)ら、J.Chem.Soc.(C)、1968年、48〜52頁
【非特許文献5】J.K.スナイダー(Snyder)ら、Tetrahedron Letters、第28号(1987年)、3427〜3430頁
【非特許文献6】Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Co.,ペンシルバニア州イーストン、第18版、1990年
【非特許文献7】J.Org.Chem.、第55号(1990年)4995〜5008頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
以上で記述した事実に基づくさまざまな網羅的および集中的な研究および実験の結果として、本発明の発明人らは、所与のナフトキノンベースの化合物がAMPKの活性を介して陰茎勃起関連性神経伝達物質および酵素の発現を誘発し、かくして勃起障害の治療および予防にとって有用であることを新たに確認し、この化合物が、予め定められた部位で吸収可能であるように処方された場合に、所望の薬理学的効果を及ぼすということを発見した。従って、本発明は、以上で言及した発見事実に基づいて最終的に完成されるものである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明の一態様に従うと、前述のおよびその他の目的は、
(a)以下の構造式1および構造式2:
【化1】

【化2】

(式中、
とRが各々独立して水素、ハロゲン、ヒドロキシルまたはC−C低級アルキルまたはアルコキシであるか、そうでなければRおよびRが合わされて、飽和状態または部分不飽和または完全不飽和状態となっていてよい置換または未置換環状構造を形成してよく;
、R、R、R、RおよびRが各々独立して水素、ヒドロキシ、C−C20アルキル、アルケンまたはアルコキシ、またはC−C20シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールであるか、そうでなければR〜Rのうちの2つの置換基が合わされて、飽和状態または部分不飽和または完全不飽和状態となっていてよい環状構造を形成してよく;
XがC(R)(R’)、N(R’’)、OおよびSからなる群から選択され、ここで、R、R’およびR’’が各々独立して水素またはC−C低級アルキルであり;
YがSである場合、RおよびRは存在せず、YがNである場合、Rは水素またはC−C低級アルキルでありかつRは存在しないことを条件として、YはC、SまたはNであり;
nが0である場合、nに隣接する炭素原子は直接結合を介して環状構造を形成することを条件として、nは0または1である)
によって表わされる化合物、またはそれらの薬学的に許容可能な塩、プロドラッグ、溶媒和物または異性体の中から選択された、治療上有効な量の1つ以上の化合物、および
(b)薬学的に許容可能な担体、希釈剤または賦形剤、或いはそれらの任意の組み合わせ、
を含む、勃起障害を治療および/または予防するための医薬組成物を提供することによって達成可能である。
【0025】
反復的で網羅的かつ集中的な研究およびさまざまな実験の結果として、本発明の発明人らは、ナフトキノンベースの化合物が細胞および組織内でAMPKを活性化し、かくして例えば勃起障害といった疾患を治療するために著しく有効であることを確認した。
【0026】
更に具体的に言うと、本発明の医薬組成物は、AMPKの活性化を介して、eNOSの活性化およびcGMPの産生を促進し、かくして内皮依存性NO産生経路およびNO−cGMP経路のみならず、内皮非依存性一酸化炭素(CO)産生経路をも媒介し、これにより陰茎海綿体平滑筋の弛緩を誘発する。弛緩は、海綿状動脈への血液供給およびらせん動脈への血流量を増大させ、かくして、勃起障害に対する強力な治療および予防効果を結果としてもたらす。
【0027】
一酸化窒素(NO)と同様、一酸化炭素(CO)も、神経伝達物質の1つであり、ヘム・オキシゲナーゼ(HO)によりヘム内で内生的に形成された生体内血管拡張剤である。HOは、誘導性イソ型としてのヘムオキシゲナーゼ−1(HO−1)そして構成性イソ型としてのヘムオキシゲナーゼ−2(HO−2)に分類される。HO−2タンパク質は、主要骨盤神経節内のみに発見され、HO−2神経は性器、尿道、膀胱頸部、輸精管、および前立腺内に見られる。神経節および神経の神経伝達物質は、HOから産生されるCOであると考えられてきた。しかしながら、陰茎勃起に関与するCOの役割は、これまでのところまだ充分に研究されていない。
【0028】
COの役割に関係して繰り返し行われた実験の結果として、本発明の発明人らは、本発明に従った組成物がAMPKを活性化させ、かくして、細胞間カルシウム放出を介したCa2+−カルモジュリン結合によりeNOSリン酸化およびeNOS活性を促進するのみならず、内皮非依存性CO経路を通してCO産生をも促進し、かくして陰茎海綿体平滑筋の弛緩を誘発するために潜在的に有効である、ということを確認した。更に、発明人らは、本発明に従った組成物が、糖尿病誘発ラットにおいて陰茎海綿体平滑筋の内部圧力を上昇させるために有意に有効であることを確認した。
【0029】
従って、活性成分として構造式1または2により表わされる化合物を含有する本発明の医薬組成物は、勃起障害、特に糖尿病関連勃起障害を治療および予防するために有用である。
【0030】
本明細書で使用される際、「薬学的に許容可能な塩」というのは、それが投与される生体に著しい刺激をひき起こすことがなく、かつ化合物の生物活性および特性を無効にしない化合物の処方物を意味する。薬学的塩の例としては、例えば塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、臭化水素酸およびヨウ化水素酸などの無機酸;酒石酸、蟻酸、クエン酸、酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、グルコン酸、安息香酸、乳酸、フマル酸、マレイン酸およびサリチル酸といった有機酸;またはメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸およびp−トルエンスルホン酸などのスルホン酸などの薬学的に許容可能なアニオンを含有する非毒性酸付加塩を形成することのできる酸と化合物の酸付加塩が含まれ得る。具体的には、薬学的に許容可能なカルボン酸塩の例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウムおよびマグネシウムなどのアルカリ金属またはアルカリ土類金属との塩、アルギニン、リジンおよびグアニジンなどのアミノ酸との塩、ジシクロロヘキシルアミン、N−メチル−D−グルカミン、トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン、ジエタノールアミン、コリンおよびトリエチルアミンなどの有機塩基との塩が含まれる。本発明に従った構造式1または2の化合物は、当該技術分野において周知の従来の方法によってその塩に転換されてよい。
【0031】
本明細書で使用される際、「プロドラッグ」という用語は、生体内で親薬物へと転換される作用物質を意味する。プロドラッグは、或る種の状況下で親薬物よりも容易に投与できるという理由で、有用であることが多い。これらは例えば、親薬物がそうでない場合でも、経口投与によって生物学的利用能を有する。プロドラッグは同様に、親薬物に比べて改善された医薬組成物中の溶解度をも有し得る。プロドラッグの1つの例は、限定的な意味なく、水溶性が移動性にとって不利である場合に細胞膜を横断しての輸送を容易にするべくエステル(「プロドラッグ」)として投与されるもののその後ひとたび水溶性が有益である細胞の内部に入った時点で活性実体であるカルボン酸へと代謝的に加水分解させられる本発明の化合物であると考えられる。プロドラッグの更なる例は、酸性基に結合された短鎖ペプチド(ポリアミノ酸)であってもよく、ここでペプチドは活性部分を曝すために代謝される。
【0032】
このようなプロドラッグの一例として、本発明に従った薬学化合物は活性成分として以下の構造式1a:
【化3】

によって表されるプロドラッグを含むことができ、
式中、
、R、R、R、R、R、R、R、Xおよびnが構造式1に定義されている通りであり;
およびR10が、各々独立して−SONaであるか、または、以下の構造式A
【化4】

で表わされる置換基またはその塩であり;
この式中、
11およびR12は各々独立して水素或いは置換または未置換のC−C20直鎖アルキルまたはC−C20分岐アルキルであり、
13は、以下の置換基i)〜viii):
i)水素;
ii)置換または未置換のC−C20直鎖アルキルまたはC−C20分岐アルキル;
iii)置換または未置換アミン;
iv)置換または未置換のC−C10シクロアルキルまたはC−C10ヘテロシクロアルキル;
v)置換または未置換のC−C10アリールまたはC−C10ヘテロアリール;
vi)R、R’およびR’’が各々独立して水素、または置換または未置換のC−C20直鎖アルキルまたはC−C20分岐アルキルであり、R14が水素、置換または未置換アミン、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールおよびヘテロアリールからなる群から選択されており、lが1〜5の中から選択されている、−(CRR’−NR’’CO)−R14
vii)置換または未置換カルボキシル;
viii)−OSONa
からなる群から選択されており;
・ kが0である場合、R11およびR12は存在せず、R13はカルボニル基に対し直接結合されていることを条件として、kは0〜20の中から選択されている。
【0033】
本明細書で使用される際、「溶媒和物」という用語は、非共有分子間力により結合させられた化学量論的または非化学量論的量の溶媒を更に含む本発明の化合物またはその塩を意味する。好ましい溶媒は、揮発性、非毒性でかつ/またはヒトへの投与のために許容できるものである。溶媒が水である場合、溶媒和物は水和物を意味する。
【0034】
本明細書で使用される際、「異性体」という用語は、同じ化学式または分子式を有するものの光学的または立体的に異なっている本発明の化合物またはその塩を意味する。特別の定めのないかぎり、「構造式1または構造式2の化合物」という用語は、化合物自体およびその薬学的に許容可能な塩、プロドラッグ、溶媒和物または異性体を包含するように意図されている。
【0035】
本明細書で使用される際、「アルキル」という用語は、脂肪族炭化水素基を意味する。アルキル部分は、「飽和アルキル」基であってよく、これはそれがいかなるアルケン部分もアルキン部分も含まないことを意味している。代替的には、アルキル部分は「不飽和アルキル」部分であってもよく、これは、それが少なくとも1つのアルケンまたはアルキン部分を含むことを意味している。「アルケン」部分という用語は、少なくとも2つの炭素原子が少なくとも1つの炭素−炭素2重結合を形成している基を意味し、「アルキン」部分というのは、少なくとも2つの炭素原子が少なくとも1つの炭素−炭素3重結合を形成している基を意味する。アルキル部分は、それが置換されているか未置換であるかに関わらず、分岐、直鎖または環式であってよい。
【0036】
本明細書で使用される際、「ヘテロシクロアルキル」という用語は、内部で1つ以上の環炭素原子が酸素、窒素または硫黄で置換され、かつ限定されるわけではないが例えばフラン、チオフェン、ピロール、ピロリン、ピロリジン、オキサゾール、チアゾール、イミダゾール、イミダゾリン、イミダゾリジン、ピラゾール、ピラゾリン、ピラゾリジン、イソチアゾール、トリアゾール、チアジアゾール、ピラン、ピリジン、ピペリジン、モルホリン、チオモルホリン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、ピペラジンおよびトリアジンを含む炭素環基を意味する。
【0037】
本明細書で使用される際「アリール」という用語は、共役パイ(π)電子系を有する少なくとも1つの環を有し、炭素環式アリール(例えばフェニル)および複素環アリール(例えばピリジン)基の両方共を含む芳香族置換基を意味する。この用語には、単環式または縮合環多環式(即ち隣接する炭素原子対を共有する環)基が含まれる。
【0038】
本明細書で使用される際「ヘテロアリール」という用語は、少なくとも1つの複素環を含む芳香族基を意味する。
【0039】
アリールまたはヘテロアリールの例としては、フェニル、フラン、ピラン、ピリジル、ピリミジル及びトリアジルが含まれるが、それに限定されるわけではない。
【0040】
本発明に従った構造式1または構造式2のR、R、R、R、R、R、RおよびRは、任意に置換されていてよい。置換される場合、1つまたは複数の置換基は、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂肪環、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、メルカプト、アルキルチオ、アリールチオ、シアノ、ハロゲン、カルボニル、チオカルボニル、O−カルバミル、N カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、C−アミド、N−アミド、S−スルホンアミド、N−スルホンアミド、C−カルボキシ、O−カルボキシ、イソシアナト(isocyanato)、チオシアナト(thiocyanato)、イソチオシアナート(isothiocyanato)、ニトロ、シリル、トリハロメタンスルホニル、並びに1置換および2置換アミノを含むアミノ、およびその保護誘導体の中から個別にかつ独立して選択された1つ以上の基である。更に、構造式1a中の置換基R11、R12およびR13は以上で定義された通りに置換されていてもよく、置換される場合は、以上に言及された置換基として置換され得る。
【0041】
構造式1の化合物のうち、好ましいのは、以下の構造式3および4の化合物である。
【0042】
構造式3の化合物は、nが0であり、隣接する炭素原子がその間の直接結合を介して1つの環状構造(フラン環)を形成する化合物であり、以下では「フラン化合物」または「フラノ−o−ナフトキノン誘導体」と呼ばれることが多い。
【化5】

【0043】
構造式4の化合物は、nが1である化合物であり、以下では「ピラン化合物」または「ピラノ−o−ナフトキノン」と呼ばれることが多い。
【化6】

【0044】
構造式1中、RおよびRの各々は特に好ましくは水素である。
【0045】
構造式3のフラン化合物中、特に好ましいのは、R、RおよびRが水素である構造式3aの化合物、またはR、RおよびRが水素である構造式3bの化合物である。
【化7】

【化8】

【0046】
更に、構造式4のピラン化合物のうち、特に好ましいのは、R、R、R、R、RおよびRがそれぞれ水素である構造式4aの化合物であるか、またはRおよびRが合わされて置換または未置換の環状構造を形成する構造式4bまたは構造式4cの化合物である。
【化9】

【化10】

【化11】

【0047】
構造式2の化合物中、好ましいのは、構造式2aおよび2bの化合物であるが、これらに限定されない。
【0048】
以下の構造式2aの化合物は、nが0であり隣接する炭素原子がそれらの間の直接結合を介して環状構造を形成し、YがCである化合物である。
【化12】

【0049】
以下の構造式2bの化合物は、構造式2においてnが1でありYがCである化合物である。
【化13】

【0050】
構造式2aまたは2bにおいて、R、R、R、R、R、R、R、RおよびXは、構造式2に定義されている通りである。
【0051】
本明細書で使用される際「医薬組成物」という用語は、希釈剤または担体などのその他の化学化合物と構造式1または構造式2の化合物の混合物を意味する。医薬組成物は、生体への化合物の投与を容易にする。当該技術分野では、さまざまな化合物投与技法が公知であり、これには、経口、注入、エアロゾル、非経口および局所投与が含まれるがこれらに限定されるわけではない。医薬組成物は同様に、関心対象の化合物を塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸などといった酸と反応させることによって得ることもできる。本発明において、勃起障害の予防または治療に治療的な効果を及ぼさねばならない有効物質は、上述の構造式により表される化合物を含み、以下「活性成分」と頻繁に呼ばれる。
【0052】
「治療上有効な量」という用語は、その化合物を投与した時点で、治療を必要とする疾病の症候のうちの1つ以上を或る程度緩和または軽減する、或いは予防を必要とする疾病の臨床的指標または症候の開始を遅延するのに有効である活性成分の量を意味する。かくして、治療上有効な量というのは、(i)疾病の進行速度を逆転させる効果;(ii)疾病の更なる進行を或る程度阻止する効果;および/または(iii)疾病に付随する1つ以上の症候を或る程度緩和する(または、好ましくは除去する)効果を示す活性成分の量を意味する。治療上有効な量は、治療を必要としている疾病について公知の生体内および生体外モデル系において、関連する化合物で実験を行なうことによって、経験的に決定してよい。
【0053】
本発明に従った医薬組成物においては、以下で例示される通り、活性材料である構造式1または構造式2の化合物は、当該技術分野において公知の従来の方法および/または有機化学合成の分野における一般的技術および実践方法に基づくものであるさまざまなプロセスによって調製可能である。以下で記述されている調製プロセスは単なる一例にすぎず、その他のプロセスを利用することもできる。従って本発明の範囲は、以下のプロセスに限定されるわけではない。
【0054】
調製方法1:酸触媒環化による活性材料の合成
比較的単純な化学的構造を有する3環式ナフトキノン(ピラノ−o−ナフトキノンおよびフラノ−o−ナフトキノン)誘導体は一般に、触媒として硫酸を用いた環化を介して比較的高い収量で合成される。このプロセスに基づいて、構造式1のさまざまな化合物を合成することができる。
【0055】
より具体的には、上述の合成を以下のように要約してもよい。
【化14】

【0056】
即ち、2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノンを1つの塩基の存在下でさまざまなアリル臭化物またはその等化物と反応させた場合、C−アルキル化生成物およびO−アルキル化生成物が同時に得られる。同様に反応条件のみに応じて2つの誘導体のうちのいずれかを合成することもまた可能である。O−アルキル化誘導体は、トルエンまたはキシレンといったような溶媒を用いてO−アルキル化誘導体を還流させることによってクライゼン転位を通してもう1つのタイプのC−アルキル化誘導体に転換されることから、さまざまなタイプの3置換−2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノン誘導体を得ることが可能である。かくして得られたさまざまなタイプのC−アルキル化誘導体は、触媒として硫酸を用いた環化に付されてよく、かくして、構造式1の化合物の中でピラノ−o−ナフトキノンまたはフラノ−o−ナフトキノン誘導体を合成することができる。
【0057】
調製方法2:3−メチレン−1,2,4−[3H]ナフタレントリオンを用いたディールス・アルダー反応
非特許文献3によって教示されている通り、2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノンおよびホルムアルデヒドを合わせて加熱することで生成され3−メチレン−1,2,4[3H]ナフタレントリオンをさまざまなオレフィン化合物とのディールス・アルダー反応に付すことによって、さまざまなピラノ−o−ナフトキノン誘導体を比較的容易に合成できるということが報告されている。この方法は、さまざまな形態のピラノ−o−ナフトキノン誘導体を、触媒として硫酸を用いる環化の誘発に比べ比較的単純化された要領で合成できる、という点において有利である。
【化15】

【0058】
調製方法3:ラジカル反応によるハロアルキル化と環化
フラノ−o−ナフトキノン誘導体の合成のためにも、クリプトタンシノンおよび15,16−ジヒドロ−タンシノンの合成において用いたものと同じ方法を適切に使用できる。即ち、非特許文献4により教示されているように3−ハロプロパン酸または4−ハロブタン酸誘導体から誘導された2−ハロエチルまたは3−ハロエチルラジカル化学種を2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノンと反応させ、かくして3−(2−ハロエチルまたは3−ハロプロピル)−2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノンを合成し、これを次に適切な酸性触媒条件下で環化に付してさまざまなピラノ−o−ナフトキノンまたはフラノ−o−ナフトキノン誘導体を合成することができる。
【化16】

【0059】
調製方法4:ディールス・アルダー反応による4,5−ベンゾフランジオンの環化
クリプトタンシノンおよび15,16−ジヒドロ−タンシノンの合成において使用されるもう1つの方法は、非特許文献5によって教示されている方法であり得る。この方法に従うと、フラノ−o−ナフトキノン誘導体を、4,5−ベンゾフランジオン誘導体とさまざまなジエン誘導体の間のディールス・アルダー反応を介した付加環化により合成することができる。
【化17】

【0060】
更に、以上で言及した調製方法に基づくと、置換基の種類に応じて関連する合成方法を用いてさまざまな誘導体を合成してもよい。かくして合成された誘導体および方法の具体例は、下表1に例示されている。具体的な調製方法については、以下の実施例において記述される。
【0061】
【表1−1】

【表1−2】

【表1−3】

【表1−4】

【表1−5】

【表1−6】

【表1−7】

【表1−8】

【表1−9】

【表1−10】

【表1−11】

【0062】
本発明の医薬組成物は、それ自体公知の要領で、例えば従来の混合、溶解、造粒、糖衣錠製造、研和、乳化、カプセル化、封入または凍結乾燥プロセスを用いて製造してよい。
【0063】
従って、本発明に従って使用するための医薬組成物は、更に、薬学的に許容可能な担体、希釈剤または賦形剤またはそれらのあらゆる組み合わせから構成されていてもよい。それは、薬学的に使用することのできる調製物への活性化合物の加工を容易にする賦形剤および助剤を含む1つ以上の薬学的に許容可能な担体を用いて、従来の要領で処方してよい。医薬組成物は、生体に対する化合物の投与を容易にする。
【0064】
「担体」という用語は、細胞または組織内への化合物の取込みを容易にする化学化合物を意味する。例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)は、数多くの有機化合物の生体細胞または組織内への摂取を容易にすることから、一般に利用される担体である。
【0065】
「希釈剤」という用語は、関心対象の化合物を溶解させると同時に化合物の生物学的に活性な形態を安定化させる、水中に希釈された化学化合物を定義づけしている。緩衝溶液中に溶解した塩が、当該技術分野において希釈剤として用いられている。一般的に使用されている1つの緩衝溶液はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)であるが、それはこれが人体の体液のイオン強度条件に類似しているからである。緩衝塩は低濃度で溶液のpHを制御できることから、緩衝希釈液は、化合物の生物活性をほとんど修飾しない。
【0066】
本明細書で記述された化合物は、そのままで人間の患者に投与することもできるし、或いはまた、組み合わせ療法の場合のようなその他の活性成分または適切な担体または1つまたは複数の賦形剤と混合されている医薬組成物の形態で投与されてもよい。適切な処方は、選択された投与経路に左右される。化合物の処方および投与のための技法は、非特許文献6の中に見出すことができる。
【0067】
当該技術分野においては体内に活性成分を投与するための薬学処方物に関するさまざまな技術が公知であり、経口、注入、エアロゾル、非経口および局所投与が含まれるが、これらに限定されるわけではない。必要とあれば、医薬組成物は同様に、関心対象の化合物を塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸などといった酸と反応させることによって得ることもできる。
【0068】
薬学処方物は、当該技術分野において公知の従来の方法により処方されてよく、好ましくは、薬学処方物は、経口、外用、経皮、経粘膜および注入処方物であってよく、特に好ましくは経口処方物である。
【0069】
本発明に従った薬学化合物は、特に好ましくは、腸標的処方物に調製される経口医薬組成物であってよい。
【0070】
一般に、経口医薬組成物は、経口投与すると胃を通過し、小腸により大部分が吸収され、次に体の全ての組織中に拡散され、かくして、標的組織に対して治療効果をもたらす。
【0071】
これに関連して、本発明に従った経口医薬組成物は、腸標的処方を介して活性成分として構造式1または構造式2の化合物の活性成分の生体吸収性および生物学的利用能を増強する。より具体的には、本発明に従った医薬組成物内の活性成分が主として胃および小腸の上部部分で吸収される場合、体内に吸収された活性成分は直接肝臓代謝を受け、このときこの代謝にはこの活性成分の実質的分解が付随し、従って、所望のレベルの治療的効果をもたらすことは不可能である。一方、活性成分が概ね下部小腸の周囲およびその下流側で吸収される場合には、吸収された活性成分はリンパ管を介して標的組織まで移動し、かくして高い治療効果をもたらすと予想される。
【0072】
更に、本発明に従った医薬組成物は、それが消化プロセスの最終目標である結腸までターゲティングするような形で構築されていることから、薬物の生体内保持時間を増大させることが可能であり、かつ体内へ薬物を投与した結果としての体の代謝に起因して発生し得る薬の分解を最小限におさえることも同様に可能である。その結果、薬物の薬物速度論的特性を改善すること、疾病の治療にとって必要な活性成分の臨界有効用量を著しく低下させること、そして微量の活性成分を投与しただけでも所望の治療的効果を得ること、が可能である。更にこの経口医薬組成物においては、胃内pH変化および食糧摂取パターンの結果としてもたらされるかもしれない生物学的利用能の個体間および個体内での変動を低減させることにより薬物の吸収変動を最小限におさえることも可能である。
【0073】
従って、本発明に従った腸標的処方物は、活性成分が小腸および大腸内そしてより好ましくは空腸そして下部小腸に対応する結腸および回腸内、特に好ましくは回腸または結腸内で概ね吸収されるような形で構成されている。
【0074】
腸標的処方は、さまざまな方法を通して、消化管の数多くの生理学的パラメータを利用することによって設計することができる。本発明の1つの好ましい実施形態においては、腸標的処方物は、(1)pH感受性重合体に基づく処方方法、(2)腸特異的細菌酵素により分解可能である生分解性重合体に基づく処方方法、(3)腸特異的細菌酵素により分解可能である生分解性マトリクスに基づく処方方法、または(4)所与の遅延時間後の薬物の放出を可能にする処方方法、およびその任意の組み合わせによって調製され得る。
【0075】
具体的には、pH感受性重合体を用いた腸標的処方(1)は、消化管のpH変化に基づく薬物送達系である。胃のpHは1〜3の範囲内にあり、一方小腸および大腸のpHは、胃のものと比べて高い7以上の値を有する。この事実に基づいて、医薬組成物が消化管のpH変動に影響されることなく下部小腸部分に確実に到達するようにするために、pH感受性重合体を使用することができる。pH感受性重合体の例としては、メタクリル酸−アクリル酸エチル共重合体(オイドラギット:ロームファルマ社の登録商標)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)およびそれらの混合物からなる群から選択された少なくとも1つのものが含まれるが、それに限定されるわけではない。
【0076】
好ましくは、pH感受性重合体をコーティングプロセスにより付加してよい。例えば、重合体の添加は、溶媒内に重合体を混合して水性コーティング懸濁液を形成し、得られたコーティング懸濁液を噴射してフィルムコーティングを形成し、そしてフィルムコーティングを乾燥させることによって実施可能である。
【0077】
腸特異的細菌酵素によって分解可能である生分解性重合体を用いた腸標的処方(2)は、腸内細菌によって産生され得る特異的酵素の分解能力を利用することに基づくものである。特異的酵素の例としては、アゾレダクターゼ、細菌ヒドロラーゼグリコシダーゼ、エステラーゼ、ポリサッカリダーゼなどが含まれていてよい。
【0078】
標的としてアゾレダクダーゼを用いた腸標的処方を設計することが望まれる場合には、生分解性重合体は、アゾ芳香族連結を含む重合体例えばスチレンとヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)の共重合体であり得る。活性成分を含有する処方物に重合体が添加される場合、例えばバクテロイデス・フラギリス(Bacteroides fragilis)およびユーバクテリウム・リモスム(Eubacterium limosum)といった腸内細菌によって特異的に分泌されるアゾレダクターゼの作用を介して重合体のアゾ基の還元によって活性成分を腸内に解放させることができる。
【0079】
標的としてグリコシダーゼ、エステラーゼ、またはポリサッカリダーゼを用いた腸標的処方を設計することが望まれる場合、生分解性重合体は、天然に発生する多糖類またはその置換誘導体であってよい。例えば、生分解性重合体は、デキストランエステル、ペクチン、アミローゼ、エチルセルロースおよびその薬学的に許容可能な塩であってよい。重合体が活性成分に添加される場合、例えばビフィドバクテリア(Bifidobacteria)およびバクテロイデス(Bacteroides)菌株といった腸内細菌によって特異的に分泌される各酵素の作用を介して重合体の加水分解により腸内に活性成分を解放することができる。これらの重合体は天然材料であり、生体内毒性のリスクが低いという利点をもつ。
【0080】
腸特異的細菌酵素により分解可能である生分解性マトリクスを用いた腸標的処方(3)は、生分解性重合体が互いに架橋され活性成分または活性成分含有処方物に添加されている1つの形態であり得る。生分解性重合体の例としては、硫酸コンドロイチン、グアーガム、キトサン、ペクチンなどといった天然に発生する重合体が含まれ得る。薬物放出度は、マトリクス構成重合体の架橋度に応じて変動し得る。
【0081】
天然に発生する重合体に加えて、生分解性マトリクスは、N置換アクリルアミドに基づく合成ヒドロゲルであってよい。例えば、N−tert−ブチルアクリルアミドとアクリル酸との架橋または2−ヒドロキシエチルメタクリレートおよび4−メタクリロイルオキシアゾベンゼンの共重合により合成されるヒドロゲルをマトリクスとして使用してよい。架橋は以上で言及した通り例えばアゾ連結であり得、処方は、腸薬物送達のための最適な条件を提供するべく架橋密度が維持され、腸に薬物が送達された時点で腸粘膜と相互作用するべく連結が分解される一つの形態である。
【0082】
更に、遅延時間の後の薬物の経時的放出を伴う腸標的処方(4)は、pHの変化とは無関係に予め定められた時間の後活性成分を放出することができるようになっている1つの機序を利用する薬学送達系である。活性薬物の腸内放出を達成するためには、処方物は、胃内pH環境に対し耐性がなくてはならず、腸内への活性成分の放出に先立ち、体から腸への薬物の送達にかかる時限に対応する5〜6時間の間、サイレント期(silent phase)にあるべきである。時間特異的遅延放出処方物は、酸化ポリエチレンとポリウレタンとの共重合に基づいて調製されたヒドロゲルの付加により調製可能である。
【0083】
具体的には、遅延放出処方物は、不溶性重合体に対して薬物を適用した後以上で言及した組成を有するヒドロゲルを添加した結果、胃および小腸の上部消化管内にとどまる間に処方物が水を吸収し次に膨潤し、その後下部消化管である小腸の下部部分まで移動し薬物を解放する構成を有しており、この薬物の遅延時間はヒドロゲルの長さに応じて決定される。
【0084】
重合体のもう1つの例としては、エチルセルロース(EC)を、遅延放出投薬量処方において使用することができる。ECは不溶性重合体であり、水の浸透に起因する膨潤媒質の膨潤または蠕動運動に起因する腸の内部圧力の変化に応答して、薬物放出時間を遅延させるための因子として役立ち得る。遅延時間は、ECの厚みにより制御され得る。付加的な例としては、重合体の厚み制御により所与の時限の後に薬物を放出できるようにする遅延剤としてヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を使用してもよく、これは5〜10時間の遅延時間を有し得る。
【0085】
本発明に従った経口医薬組成物においては、活性成分は、高い結晶化度を伴う結晶構造、または低い結晶化度を伴う結晶構造を有していてよい。好ましくは、活性成分は、低い結晶度の結晶構造から構成され、これは、構造式1または2の化合物における難溶性に付随する問題を解決しかつその溶解速度および生体内吸収率を増大させることができる。
【0086】
本明細書で使用される際、「結晶化度」という用語は、合計結晶化合物の結晶部分の重量分率として定義づけされ、当該技術分野において公知の従来の方法によって決定され得る。例えば、結晶化度の測定は、結晶部分と非晶質部分の各密度に対してまたはそこから適切な値を加算および/または減算することによって得られる予め設定された値を予め仮定することにより結晶化度を計算する密度法または沈澱法、融解熱の測定が関与する方法、X線回折解析の時点でX線回折速度分布から結晶質回折分率と非晶質回折分率を分離することによって結晶化度が計算されるX線方法、または赤外吸収スペクトルの結晶性バンドの間の幅のピークから結晶化度を計算する赤外線方法によって実施することができる。
【0087】
本発明に従った経口医薬組成物中では、活性成分の結晶化度は好ましくは50%以下である。より好ましくは、活性成分は、材料の固有の結晶性が完全に失われた非晶質構造を有し得る。非晶質化合物は、結晶質化合物に比べて比較的高い溶解度を示し、薬物の溶解速度および生体内吸収を著しく改善することができる。
【0088】
本発明の1つの好ましい実施形態においては、非晶質構造は、活性成分を微細粒子または細粒の形態へ調製(活性成分の微粉化)する間に形成され得る。微細粒子は、例えば活性成分の噴霧乾燥、重合体との活性成分の融解物の形成が関与する融解方法、溶媒中への活性成物の溶解度の重合体と活性成分との共沈物の形成が関与する共沈、封入体形成、溶媒の揮発などによって調製可能である。活性成分が非晶質構造でない場合即ち結晶構造または半結晶構造を有している場合でも、活性成分の機械的粉砕を介した細粒への微粉化が、粒子の大きな比表面積に起因して、溶解度の改善に寄与し、その結果として、活性薬物の溶解速度および生体吸収速度は改善される。
【0089】
噴霧乾燥は、或る種の溶媒中に活性成分を溶解させ、結果として得た溶液を噴霧乾燥させることによって、細粒を作る方法である。噴霧乾燥プロセスの間に、ナフトキノン化合物の結晶性が高い率で失われ、そのため、非晶質状態がもたらされ、従って、細かい粉末の形態での噴霧乾燥された生成物が得られる。
【0090】
機械的粉砕は、活性成分粒子に対し強い物理的力を適用することにより活性成分を細粒へと粉砕する方法である。機械的粉砕は、ジェット粉砕、ボール粉砕、振動粉砕、ハンマー粉砕などといったさまざまな粉砕プロセスを使用することによって実施可能である。特に好ましいのは、40℃未満の温度で空気圧を用いて実施され得るジェット粉砕である。
【0091】
その一方で、結晶構造の如何に関わらず、微粒子状活性成分の粒径の減少は、比表面積の増加、ひいては、溶解速度および溶解度の増加を導く。しかしながら、粒径が小さすぎるとこのようなサイズをもつ細粒の調製が困難になり、それと同時に、溶解度の劣化を結果としてもたらしかねない粒子の集塊または凝集をもたらす。従って、1つの好ましい実施形態においては、活性成分の粒径は、5nm〜500μmの範囲内にあってよい。この範囲内であれば、粒子の集塊または凝集を最大限に阻害でき、粒子の高い比表面積に起因して溶解速度および溶解度を最大限にすることができる。
【0092】
好ましくは、細粒の形成中に発生し得る粒子の集塊または凝集を防ぐための付加的に界面活性剤を添加してもよく、かつ/または、静電気の発生を防ぐために帯電防止剤を更に添加してもよい。
【0093】
必要な場合には、粉砕プロセス中に吸湿材料を更に添加することができる。構造式1または構造式2の化合物は水により結晶化される傾向を有し、従って、吸湿材料の取込みは、経時的なナフトキノンベース化合物の再結晶化を阻害し、微粉化に起因する化合物粒子の溶解度の増加を維持することができる。更に、吸湿材料は、活性成分の治療効果に不利な影響を及ぼすことなく、医薬組成物の凝固および凝集を抑制するのに役立つ。
【0094】
界面活性剤の例としては、ドキュセートナトリウムおよびラウリル硫酸ナトリウムなどのアニオン界面活性剤;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムおよびセトリミドなどのカチオン界面活性剤;モノオレイン酸グリセリル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルおよびソルビタンエステルという非イオン性界面活性剤;ポリエチレン−ポリプロピレン重合体およびポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン重合体(ポロキサマー)およびGelucireTMシリーズ(ガットフォスコーポレーション、米国)などの両親媒性重合体;モノカプリル酸プロピレングリコール;オレオイル・マクロゴール−6−グリセリド、リノレオイル・マクロゴール−6−グリセリド、カプリロカプロイル・マクロゴール−8−グリセリド、モノラウリン酸プロピレングリコールおよびポリグリセリル−6−ジオレエートが含まれていてよいが、それらに限定されるわけではない。これらの材料は単独でも、その任意の組み合わせの形ででも使用することができる。
【0095】
吸湿剤の例としては、コロイダルシリカ、軽質無水ケイ酸、重質無水ケイ酸、塩化ナトリウム、ケイ酸カルシウム、アルミノケイ酸カリウム、およびアルミノケイ酸カルシウムなどが含まれていてよいが、それらに限定されるわけではない。これらの材料は単独でも、その任意の組み合わせの形ででも使用することができる。
【0096】
上述の吸湿剤の一部を帯電防止剤として使用してもよい。
【0097】
界面活性剤、帯電防止剤および吸湿剤は、上述の効果を達成することのできる一定の量で添加され、かかる量は、微粉化条件に応じて適切に調整されてよい。好ましくは、活性成分の合計重量に基づいて0.05〜20重量%の範囲内で添加物を使用してよい。
【0098】
1つの好ましい実施形態においては、本発明に従った医薬組成物の経口投与向け調製物への処方中に、水溶性重合体、可溶化剤および崩壊促進剤を更に添加してもよい。好ましくは、所望の剤形への組成物の処方は、溶媒中で添加物および微粒子状の活性成分を混合し、混合物を噴霧乾燥することによって行なってよい。
【0099】
水溶性重合体は、ナフトキノンベース化合物の分子または粒子の周囲を親水性にしてその結果として水溶性を増強することによって微粒子状の活性成分の凝集を防ぎ、かつ好ましくは構造式1または構造式2の活性成分の非晶質状態を維持するために役立つ。
【0100】
好ましくは、水溶性重合体はpH非依存性重合体であり、胃腸内pHの個体間および個体内変動の下でさえ、活性成分の結晶性喪失および親水性の増強をもたらすことができる。
【0101】
水溶性重合体の好ましい例としては、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ナトリウムカルボキシメチルセルロースおよびカルボキシメチルエチルセルロースなどのセルロース誘導体;ポリビニルアルコール;ポリ酢酸ビニル、ポリ酢酸ビニルフタレート、ポリビニルピロリドン(PVP)およびこれらを含有する重合体;ポリアルケンオキシドまたはポリアルケングリコールおよびこれらを含有する重合体からなる群から選択された少なくとも1つが含まれ得る。好ましいのはヒドロキシプロピルメチルセルロースである。
【0102】
本発明の医薬組成物においては、所与のレベルよりも高い水溶性重合体を過剰に含有することによって更に高い溶解度が提供されることは全くなく、不利なことに、処方物の硬度が全体的に増大することそして、溶離剤に対する曝露の時点での水溶性重合体の過度の膨潤に起因する処方物のまわりのフィルム形成により、処方物中に溶離剤が浸透しないことといったさまざまな問題をもたらす。従って、可溶化剤は好ましくは、構造式1または構造式2の化合物の物理的特性を修飾することによって処方物の溶解度を最大限にするように添加される。
【0103】
この点に関して、可溶化剤は、難溶性の構造式1または構造式2の化合物の可溶化および湿潤性を増強するために役立ち、食習慣および食糧摂取後の薬物投与の時間差に由来するナフトキノンベース化合物の生物学的利用能の変動を著しく低減させることができる。可溶化剤は、従来広く用いられてきた界面活性剤または両親媒性化合物から選択してよく、可溶化剤の具体例は、以上で定義づけした界面活性剤を意味し得る。
【0104】
崩壊促進剤は、薬物放出速度を改善するのに役立ち、標的部位における薬物の急速な放出を可能にして、薬物の生物学的利用能を増大させる。
【0105】
崩壊促進剤の好ましい例としては、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、カルボキシメチルセルロースカルシウム、デンプングリコール酸ナトリウムおよび低級置換ヒドロキシプロピルセルロースからなる群から選択された少なくとも1つのものが含まれるが、それらに限定されるわけではない。好ましいのは、クロスカルメロースナトリウムである。
【0106】
以上で記述した通りのさまざまな要因を考慮に入れた上で、活性成分100重量部に基づいて、10〜1000重量部の水溶性重合体、1〜30重量部の崩壊促進剤および0.1〜20重量部の可溶化剤を添加することが好ましい。
【0107】
上述の成分に加えて、処方に関連して当該技術分野において公知のその他の材料を、必要とあれば任意に添加してもよい。
【0108】
噴霧乾燥用溶媒は、その物理的特性の修飾の無い高い溶解度および噴霧乾燥プロセス中の容易な揮発性を示す材料である。かかる溶媒の好ましい例としては、ジクロロメタン、クロロホルム、メタノールおよびエタノールが含まれていてよいが、それらに限定されるわけではない。これらの材料は、単独でも、その任意の組み合わせの形ででも使用できる。好ましくは、噴霧溶液中の固体含有量は、噴霧溶液の合計重量に基づいて、5〜50重量%の範囲内にある。
【0109】
上述の腸標的処方プロセスは、好ましくは、以上の通りに調製された処方粒子のために実施される。
【0110】
好ましい1つの実施形態においては、本発明に従った経口医薬組成物は、
(a) 構造式1または構造式2の化合物を単独で、または界面活性剤および吸湿剤材料と組合せた形で添加し、構造式1または構造式2の化合物をジェットミルで粉砕して活性成分微細粒子を調製する工程;
(b) 水溶性重合体、可溶化剤および崩壊促進剤と併せて活性成分微細粒子を溶媒中に溶解させ、結果として得られた溶液を噴霧乾燥して処方物粒子を調製する工程;および
(c) pH感受性重合体および可塑化剤と併せて処方剤粒子を溶媒中に溶解させ、結果として得られた溶液を噴霧乾燥して、処方物粒子上に腸標的コーティングを実施する工程、
を含むプロセスによって調製され得る。
【0111】
界面活性剤、吸湿材料、水溶性重合体、可溶化剤および崩壊促進剤は、以上で定義づけした通りである。可塑化剤は、コーティングの硬化を防止するために添加される添加剤であり、例えばポリエチレングリコールなどの重合体を含み得る。
【0112】
代替的には、工程(a)のジェット粉砕されたシードとしての活性成分粒子上へ、工程(b)のビヒクルおよび工程(c)の腸標的コーティング材料を逐次的にまたは同時に噴霧することによって活性成分の処方を実施してもよい。
【0113】
その一方で、注入のために、本発明の作用物質は、水溶液、好ましくは生理学的に適合性ある緩衝液たとえばハンクス溶液、リンガー溶液、または生理食塩水といったような生理学的に適合性ある緩衝液中で処方される。経粘膜投与のためには、浸透すべき障壁に適した浸透剤が処方物中に使用される。かかる浸透剤は一般に、当該技術分野において公知である。
【0114】
化合物を、例えばボーラス注入または連続輸注といった注入による非経口投与向けに処方してもよい。注入用処方物は、防腐剤が付加された、例えばアンプルまたは多回投与用コンテナに入った、単位剤形の体裁をとっていてよい。組成物は、油性または水性ビヒクル中の懸濁液、溶液またはエマルジョンといった形をとっていてもよく、懸濁剤、安定化剤および/または分散剤といったような処方用作用物質を含有していてよい。
【0115】
代替的には、活性成分は、使用前に例えば発熱物質を含まない滅菌水といった適切なビヒクルを用いて構成するための粉末形態をしていてよい。
【0116】
本発明における使用に適した医薬組成物は、その意図された目的を達成するために有効な量で活性成分が含有されている組成物を含む。より具体的には、治療上有効な量というのは、疾病の症候を防止、軽減または改善するため、または治療対象の生存率を高めるための有効な化合物の量を意味する。治療上有効な量の判定は、特に本明細書で提供されている詳細な開示に照らして、当業者の能力範囲内に十分入るものである。
【0117】
本発明の医薬組成物が単位剤形の形態に処方される場合、活性成分としての構造式1または構造式2の化合物は、好ましくは約0.1〜1,000mgの単位用量で含まれている。投与される構造式1または構造式2の化合物の量は、治療を受ける患者の体重および年令、疾病の特徴的性質および重症度に応じて、担当医により決定される。
【0118】
本発明のもう1つの態様に従うと、勃起障害の治療または予防のための薬物の調製における構造式1または構造式2の化合物の使用が提供されている。疾病症候群の「治療」という用語は、発病の症候を示す対象において薬物を使用した場合の疾病の進行の停止または遅延を意味する。「予防」という用語は、疾病の症候を全く示さないものの発病の危険性の高い対象においてその薬物を使用した場合の、発病の症候の停止または遅延を意味する。
【0119】
本発明の上述のおよびその他の目的、特徴およびその他の利点は、添付の図面と合わせて以下の詳細な説明から更に明確に理解できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】AMP活性化されたタンパク質キナーゼ(AMPK)の活性を決定する因子およびAMPK活性から得られた結果を示す図である。
【図2】従来の勃起障害薬の薬学的に活性な成分、AMPK活性化因子として作用する化合物および化合物1を投与されたグループ間の陰茎海綿体平滑筋の弛緩効果を比較するグラフである。
【図3】eNOSのリン酸化に対する化合物1の影響を示す図である。
【図4】化合物1により誘発された陰茎海綿体平滑筋の弛緩後のL−NAME治療グループとメチレンブルー治療グループの間の弛緩阻害効果を比較するグラフである。
【図5】化合物1により誘発された陰茎海綿体平滑筋の弛緩後の、CHAPS(10−4M)が投与されたグループとCHAPSと亜鉛−プロトポルフィリン−IX(ZnPP)が投与されたグループの間の陰茎海綿体平滑筋の弛緩に対する阻害効果を比較するグラフである。
【図6】化合物1により誘発された陰茎海綿体平滑筋の弛緩後の、CHAPS(10−4M)が投与されたグループとCHAPSと亜鉛−プロトポルフィリン−IX(ZnPP)が投与されたグループの間の陰茎海綿体平滑筋の弛緩に対する阻害効果を比較するグラフである。
【図7】AICARおよび化合物1が経口投与された糖尿病誘発ラットの陰茎海綿体平滑筋の内部圧力の増加を、グループI、II、IIIおよびIV間で示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0121】
ここで、本発明について、以下の実施例並びに実験例を参考にしながら更に詳細に記述する。これらの実施例は、本発明を例示することのみを目的として提供されており、本発明の範囲および精神を制限するものとみなされるべきではない。
【実施例】
【0122】
実施例1:β−ラパコン(化合物1)の合成
17.4g(0.10M)の2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノンを120mlのDMSO中に溶解させ、それに0.88g(0.11M)のLiHを徐々に添加した。ここで、この作業は、水素が放出されることから注意深く行なうべきである。反応溶液を撹拌し、水素がそれ以上生成されないことを確認した後、更に30分間撹拌した。その後、15.9g(0.10M)の臭化プレニル(1−ブロモ−3−メチル−2−ブテン)および3.35g(0.025M)のLiIを徐々に添加した。反応溶液を45℃まで加熱し、その後その温度で12時間勢いよく撹拌した。反応溶液を10℃未満に冷却し、76gの氷をまず最初に加え、その後250mlの水を加えた。その後、結果として得た溶液を1超の酸性pHに維持するため、25mlの濃HClを徐々に添加した。反応混合物に200mlのEtOAcを添加し、これを次に勢いよく撹拌し、かくして、EtOAc中に溶解しない白色固体を得た。これらの固体をろ過し、EtOAc層を分離した。100mlのEtOAcで水性層をもう一度抽出し、先に抽出した有機層と組合せた。有機層を150mlの5%のNaHCOで洗浄し、濃縮した。結果として得た濃縮物を200mlのCHCl中に溶解させ、勢いよく振とうして、2NのNaOH水溶液70mlを添加し、2つの層を分離した。CHCl層を更に2回、2NのNaOH水溶液(70ml×2)での処理により分離した。かくして分離された水溶液を組み合わせ、2超の酸性pHに調整して、固体を形成させた。結果としての固体をろ過し、分離してラパコールを得た。かくして得られたラパコールを75%のEtOHから再結晶させた。結果としてのラパコールを80mlの硫酸と混合し、混合物を10分間室温で勢いよく撹拌し、それに200gの氷を添加して反応を完了させた。60mlのCHClを反応材料に添加し、次にこの材料を勢いよく振とうした。その後、CHCl層を分離させ、5%のNaHCOで洗浄した。30mlのCHClを用いてもう一度水性層を抽出し、5%のNaHCOで洗浄し、先に抽出した有機層と組合せた。有機層をMgSO上で乾燥させ、濃縮して、純粋でないβ−ラパコンを得た。かくして得られたβ−ラパコンをイソプロパノールから再結晶させ、それにより純粋β−ラパコン8.37gを得た。
H−NMR(CDCl,δ):8.05(1H,dd,J=1,8Hz)、7.82(1H,dd,J=1,8Hz)、7.64(1H,dt,J=1,8Hz)、7.50(1H,dt,J=1,8Hz)、2.57(2H,t,J=6.5Hz)、1.86(2H,t,J=6.5Hz)1.47(6H,s)
【0123】
実施例2:デュニオン(化合物2)の合成
実施例1内でラパコールを得るプロセスにおいて、EtOAc中に溶解させずに分離された固体は、C−アリル化生成物であるラパコールと異なりO−アルキル化生成物である2−プレニルオキシ−1,4−ナフトキノンである。分離された2−プレニルオキシ−1,4−ナフトキノンを最初にEtOAcからもう一度再結晶させた。3.65g(0.015M)のかくして精製された固体をトルエン中に溶解させ、トルエンを5時間還流させてクライゼン転位を誘発した。減圧下での蒸留によりトルエンを濃縮させ、次に更なる精製なく15mlの硫酸と混合した。結果として得た混合物を10分間室温で勢いよく撹拌し、それに100gの氷を添加して反応を完了させた。反応材料に50mlのCHClを添加し、それを勢いよく振とうした。その後、CHCl層を分離し、5%のNaHCOで洗浄した。20mlのCHClを用いて水層をもう一度抽出し、5%のNaHCOで洗浄し、以前に抽出した有機層と組合せた。有機層をMgSO上で乾燥させ、シリカゲル上のクロマトグラフィにより精製して2.32gの純粋デュニオンを得た。
H−NMR(CDCl,δ):8.05(1H,d,J=8Hz)、7.64(2H,d,J=8Hz)、7.56(1H,m)、4.67(1H,q,J=7Hz)、1.47(3H,d,J=7Hz)、1.45(3H,s)1.27(3H,s)
【0124】
実施例3:α−デュニオン(化合物3)の合成
実施例2で精製された2−プレニルオキシ−1,4−ナフトキノン4.8g(0.020M)をキシレン中に溶解させ、キシレンを15時間還流させ、こうして、実施例2に比べて著しく高い温度条件下そして延長した反応条件下でクライゼン転位を誘発した。この反応プロセスによると、環化まで進行したα−デュニオンが、クライゼン転位を受けかつ2つのメチル基のうちの1つがシフトしていたラパコールと共に得られた。減圧下での蒸留によりキシレンを濃縮し、シリカゲル上のクロマトグラフィにより精製して1.65gの純粋α−デュニオンを得た。
H−NMR(CDCl,δ):8.06(1H,d,J=8Hz)、7.64(2H,m)、7.57(1H,m)、3.21(1H,q,J=7Hz)、1.53(3H,s)、1.51(3H,s)1.28(3H,d,J=7Hz)
【0125】
実施例4:化合物4の合成
17.4g(0.10M)の2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノンを120mlのDMSO中に溶解させ、それに0.88g(0.11M)のLiHを徐々に添加した。ここで、この作業は、水素が放出されることから注意深く行なうべきである。反応溶液を撹拌し、水素がそれ以上生成されないことを確認した後、更に30分間撹拌した。その後、14.8g(0.11M)の臭化メタリル(1−ブロモ−2−メチルプロペン)および3.35g(0.025M)のLiIを徐々に添加した。反応溶液を45℃まで加熱し、その後その温度で12時間勢いよく撹拌した。反応溶液を10℃未満に冷却し、80gの氷をまず最初に加え、その後250mlの水を加えた。その後、結果として得た溶液を1超の酸性pHに維持するため、25mlの濃HClを徐々に添加した。反応混合物に200mlのCHClを添加し、これを次に勢いよく振とうして2層を分離した。70mlのCHClで水性層をもう一度抽出し、先に抽出した有機層と組合せた。TLCにより新たに2つの材料が形成されたことを確認し、これらをその後、特別ないかなる分離プロセスも無く使用した。有機層を減圧下での蒸留により濃縮し、キシレン中に再度溶解させ、その後8時間還流した。このプロセスにおいて、TLC上の2つの材料を1つに組み合わせ、かくして比較的純粋なラパコール誘導体を得た。かくして得られたラパコール誘導体を80mlの硫酸と混合し、10分間室温で勢いよく撹拌し、それに200gの氷を添加して反応を完了させた。80mlのCHClを反応材料に添加し、次にこの材料を勢いよく振とうした。その後、CHCl層を分離させ、5%のNaHCOで洗浄した。50mlのCHClを用いてもう一度水性層を抽出し、5%のNaHCOで洗浄し、先に抽出した有機層と組合せた。有機層をMgSO上で乾燥させ、濃縮して、純粋でないβ−ラパコン誘導体(化合物4)を得た。かくして得られたβ−ラパコン誘導体をイソプロパノールから再結晶させ、それにより純粋な化合物4を12.21g得た。
H−NMR(CDCl,δ):8.08(1H,d,J=8Hz)、7.64(2H,m)、7.57(1H,m)、2.95(2H,s)、1.61(6H,s)
【0126】
実施例5:化合物5の合成
臭化メタリルの代りに臭化アリルを用いたという点を除いて、実施例4と同じ要領で化合物5を得た。
H−NMR(CDCl,δ):8.07(1H,d,J=7Hz)、7.65(2H,m)、7.58(1H,m)、5.27(1H,m)、3.29(1H,dd,J=10,15Hz)、2.75(1H,dd,J=7,15Hz)、1.59(3H,d,J=6Hz)
【0127】
実施例6:化合物6の合成
20mlのエーテル中に5.08g(40mM)の3−クロロプロピニルクロリドを溶解させ、−78℃まで冷却した。結果として得られた溶液に対して1.95g(25mM)の過酸化ナトリウム(Na)を、その温度で勢いよく撹拌しながら徐々に添加し、その後更に30分間勢いよく撹拌した。反応溶液を0℃まで加熱し、それに7gの氷を付加し、続いて更に10分間付加的に撹拌を行なった。有機層を分離し、0℃の冷水10mlでもう一度洗浄し、その後0℃のNaHCO水溶液で洗浄した。有機層を分離し、MgSO上で乾燥させ、0℃未満で減圧下の蒸留によって濃縮し、こうして3−クロロプロピオン過酸を調製した。
【0128】
20mlの酢酸中に1.74g(10mM)の2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノンを溶解させ、先に調製した3−クロロプロピオン過酸を室温でそれに対して徐々に添加した。反応混合物を2時間撹拌しながら還流させ、その後減圧下で蒸留して酢酸を除去した。結果としての濃縮物をCHCl20ml中に溶解させ、20mlの5%NaHCOで洗浄した。20mlのCHClを用いてもう一度水層を抽出し、先に抽出した有機層と組合せた。有機層をMgSO上で乾燥させ、濃縮して2−(2−クロロエチル)−3−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノンと混和した形で化合物6を得た。結果として得た混合物をシリカゲル上のクロマトグラフィによって精製して、純粋なラパコン誘導体(化合物6)0.172gを得た。
H−NMR(CDCl,δ):8.07(1H,d,J=7.6Hz)、7.56−7.68(3H,m)、4.89(2H,t,J=9.2Hz)、3.17(2H,t,J=9.2Hz)
【0129】
実施例7:化合物7の合成
17.4g(0.10M)の2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノンを120mlのDMSO中に溶解させ、それに0.88g(0.11M)のLiHを徐々に添加した。ここで、この作業は、水素が放出されることから注意深く行なうべきである。反応溶液を撹拌し、水素がそれ以上生成されないことを確認した後、更に30分間撹拌した。その後、19.7g(0.10M)の臭化シンナミル(3−フェニルアリル臭化物)および3.35g(0.025M)のLiIを徐々に添加した。反応溶液を45℃まで加熱し、その後その温度で12時間勢いよく撹拌した。反応溶液を10℃未満に冷却し、80gの氷をまず最初に加え、その後250mlの水を加えた。その後、結果として得た溶液を1超の酸性pHに維持するため、25mlの濃HClを徐々に添加した。反応混合物を溶解させるために200mlのCHClを添加し、これを次に勢いよく振とうして2層を分離した。水槽を廃棄し、2NのNaOH水溶液(100ml×2)でCHCl層を処理して水層を2回分離した。この時点で、2NのNaOH水溶液での抽出後に残ったCHCl層を実施例8中で再び使用した。かくして分離された水溶液を組み合わせ、濃HClを用いて2超の酸性pHに調整して、固体を形成させた。結果としての固体をろ過し、分離してラパコール誘導体を得た。かくして得られたラパコール誘導体を75%のEtOHから再結晶させた。結果としてのラパコール誘導体を50mlの硫酸と混合し、混合物を10分間室温で勢いよく撹拌し、それに150gの氷を添加して反応を完了させた。60mlのCHClを反応材料に添加し、次にこの材料を勢いよく振とうした。その後、CHCl層を分離させ、5%のNaHCOで洗浄した。30mlのCHClを用いてもう一度水性層を抽出し、5%のNaHCOで洗浄し、先に抽出した有機層と組合せた。有機層を濃縮しシリカゲル上のクロマトグラフィにより精製して2.31gの純粋な化合物7を得た。
H−NMR(CDCl,δ):8.09(1H,dd,J=1.2,7.6Hz)、7.83(1H,d,J=7.6Hz)、7.64(1H,dt,J=1.2,7.6Hz)、7.52(1H,dt,J=1.2,7.6Hz)、7.41(5H,m)、5.27(1H,dd,J=2.5,6.0Hz)、2.77(1H,m)2.61(1H,m)、2.34(1H,m)、2.08(1H,m)、0.87(1H,m)
【0130】
実施例8:化合物8の合成
実施例7において2NのNaOH水溶液で抽出した後の残りのCHCl層を減圧下での蒸留により濃縮した。結果として得た濃縮物を30mlのキシレン中に溶解させ、その後10時間還流させてクライゼン転位を誘発した。キシレンを減圧下で蒸留により濃縮し、その後、更なる精製なく15mlの硫酸と混合した。結果として得た混合物を10分間室温で勢いよく撹拌し、100gの氷をそれに加えて反応を完了させた。50mlのCHClを反応材料に添加し、これを勢いよく振とうした。その後、CHCl層を分離し、5%のNaHCOで洗浄した。20mlのCHClを用いてもう一度水層を抽出し、5%のNaHCOで洗浄し、先に抽出した有機層と組合せた。有機層をMgSO上で乾燥させ、濃縮し、シリカゲル上のクロマトグラフィにより精製して1.26gの純粋化合物8を得た。
H−NMR(CDCl,δ):8.12(1H,dd,J=0.8,8.0Hz)、7.74(1H,dd,J=1.2,7.6Hz)、7.70(1H,dt,J=1.2,7.6Hz)、7.62(1H,dt,J=1.6,7.6Hz)、7.27(3H,m)、7.10(2H,td,J=1.2,6.4Hz)、5.38(1H,qd,J=6.4,9.2Hz)、4.61(1H,d,J=9.2Hz)、1.17(3H,d,J=6.4Hz)
【0131】
実施例9:化合物9の合成
10mlのアセトニトリル中に3.4g(22mM)の1.8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデス−7−エンおよび1.26g(15mM)の2−メチル−3−ブチン−2−オールを溶解させ、結果としての溶液を0℃まで冷却した。3.2g(15mM)のトリフルオロ酢酸無水物を撹拌しながら反応溶液に徐々に添加し、次にこれを0℃で撹拌し続けた。1.74g(10mM)の2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノンおよび135mg(1.0mM)の塩化銅(CuCl)を、もう1本のフラスコ内で10mlのアセトニトリル中に溶解させ、撹拌した。先に精製した溶液を徐々に反応溶液に添加し、これを次に20時間還流させた。反応溶液を、減圧下での蒸留により濃縮し、次にシリカゲル上のクロマトグラフィによって精製して0.22gの純粋化合物9を得た。
H−NMR(CDCl,δ):8.11(1H,dd,J=1.2,7.6Hz)、7.73(1H,dd,J=1.2,7.6Hz)、7.69(1H,dt,J=1.2,7.6Hz)、7.60(1H,dt,J=1.6,7.6Hz)、4.95(1H,d,J=3.2Hz)、4.52(1H,d,J=3.2Hz)、1.56(6H,s)
【0132】
実施例10:化合物10の合成
0.12gの化合物9を5mlのMeOH中に溶解させ、10mgの5%Pd/cをそれに添加し、その後3時間室温で勢いよく撹拌した。反応溶液をシリカゲルを通してろ過して5%のPd/Cを除去し、減圧下での蒸留により濃縮して化合物10を得た。
H−NMR(CDCl,δ):8.05(1H,td,J=1.2,7.6Hz)、7.64(2H,m)、7.54(1H,m)、3.48(3H,s),1.64(3H,s)、1.42(3H,s)、1.29(3H,s)
【0133】
実施例11:化合物11の合成
1.21g(50mM)のβ−ラパコン(化合物1)と1.14g(50mM)のDDQ(2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−1,4−ベンゾキノン)を、50mlの四塩化炭素中に溶解させ、72時間還流した。反応溶液を減圧下での蒸留により濃縮し、その後シリカゲル上でのクロマトグラフィにより精製して1.18gの純粋化合物11を得た。
H−NMR(CDCl,δ):8.08(1H,dd,J=1.2,7.6Hz)、7.85(1H,dd,J=0.8,7.6Hz)、7.68(1H,dt,J=1.2,7.6Hz)、7.55(1H,dt,J=1.2,7.6Hz)、6.63(1H,d,J=10.0Hz)、5.56(1H,d,J=10.0Hz)、1.57(6H,s)
【0134】
実施例12:化合物12の合成
1.74g(10mM)の2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノン、3.4g(50mM)の2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、3.0g(100mM)のパラホルムアルデヒドおよび20mlの1,4−ジオキサンを圧力容器内に置き、48時間100℃で撹拌しながら加熱した。反応容器を室温まで冷却し、その中味をろ過した。ろ液を減圧下での蒸留によって濃縮し、その後シリカゲル上でのクロマトグラフィにより精製してβ−ラパコンの2−ビニル誘導体として238gの化合物12を得た。
H−NMR(CDCl,δ):8.07(1H,dd,J=1.2,7.6Hz)、7.88(1H,dd,J=0.8,7.6Hz)、7.66(1H,dt,J=1.2,7.6Hz)、7.52(1H,dt,J=0.8,7.6Hz)、5.87(1H,dd,J=10.8,17.2Hz)、5.18(1H,d,J=10.8Hz)、5.17(1H,17.2Hz)、2.62(1H,m)、2.38(1H,m)、2.17(3H,s)、2.00(1H,m)、1.84(1H,m)
【0135】
実施例13:化合物13の合成
1.74g(10mM)の2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノン、4.8g(50mM)の2.4−ジメチル−1,3−ペンタジエンおよび3.0g(100mM)のパラホルムアルデヒドを、20mlの1,4−ジオキサン中に溶解させ、結果としての混合物を10時間勢いよく撹拌しながら還流させた。反応容器を室温まで冷却し、その中味をろ過して固体からパラホルムアルデヒドを除去した。ろ液を減圧下での蒸留により濃縮し、次にシリカゲル上でのクロマトグラフィにより精製してβ−ラパコン誘導体として428mgの化合物13を得た。
H−NMR(CDCl,δ):8.06(1H,dd,J=1.2,7.6Hz)、7.83(1H,dd,J=0.8,7.6Hz)、7.65(1H,dt,J=1.2,7.6Hz)、7.50(1H,dt,J=0.8,7.6Hz)、5.22(1H,bs)、2.61(1H,m)、2.48(1H,m)、2.04(1H,m)、1.80(3H,d,J=1.0Hz)、1.75(1H,m)、1.72(1H,d,J=1.0Hz)、1.64(3H,s)
【0136】
実施例14:化合物14の合成
5.3g(30mM)の2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノン、20.4g(150mM)の2,6−ジメチル−2,4,6−オクタトリエンおよび9.0g(300mM)のパラホルムアルデヒドを50mlの1,4−ジオキサン中に溶解させ、結果としての混合物を10時間勢いよく撹拌しながら還流させた。反応容器を室温まで冷却し、その中味をろ過して固体からパラホルムアルデヒドを除去した。ろ液を減圧下での蒸留により濃縮し、次にシリカゲル上でのクロマトグラフィにより精製してβ−ラパコン誘導体として1.18gの化合物14を得た。
H−NMR(CDCl,δ):8.07(1H,dd,J=1.2,7.6Hz)、7.87(1H,dd,J=0.8,7.6Hz)、7.66(1H,dt,J=1.2,7.6Hz)、7.51(1H,dt,J=0.8,7.6Hz)、6.37(1H,dd,J=11.2,15.2Hz)、5.80(1H,broad d,J=11.2Hz)、5.59(1H,d,J=15.2Hz)、2.67(1H,dd,J=4.8,17.2Hz)、2.10(1H,dd,J=6.0,17.2Hz)、1.97(1H,m)、1.75(3H,bs)、1.64(3H,bs)、1.63(3H,s)、1.08(3H,d,J=6.8Hz)
【0137】
実施例15:化合物15の合成
5.3g(30mM)の2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノン、20.4g(50mM)のテルピネンおよび9.0g(300mM)のパラホルムアルデヒドを50mlの1,4−ジオキサン中に溶解させ、結果としての混合物を10時間勢いよく撹拌しながら還流させた。反応容器を室温まで冷却し、その中味をろ過して固体からパラホルムアルデヒドを除去した。ろ液を減圧下での蒸留により濃縮し、次にシリカゲル上でのクロマトグラフィにより精製して4環式o−キノン誘導体として1.12gの化合物15を得た。
H−NMR(CDCl,δ):8.06(1H,d,J=7.6Hz)、7.85(1H,d,J=7.6Hz)、7.65(1H,t,J=7.6Hz)、7.51(1H,t,J=7.6Hz)、5.48(1H,broad s)、4.60(1H,broad s)、2.45(1H,d,J=16.8Hz)、2.21(1H,m)、2.20(1H,d,J=16.8Hz)、2.09(1H,m)、1.77(1H,m)、1.57(1H,m)、1.07(3H,s)、1.03(3H,d,J=0.8Hz)、1.01(3H,d,J=0.8Hz),0.96(lH,m)
【0138】
実施例16:化合物16および17の合成
17.4g(0.10M)の2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノンを120mlのDMSO中に溶解させ、それに0.88g(0.11M)のLiHを徐々に添加した。ここで、この作業は、水素が放出されることから注意深く行なうべきである。反応溶液を撹拌し、水素がそれ以上生成されないことを確認した後、更に30分間撹拌した。その後、16.3g(0.12M)の臭化クロチルおよび3.35g(0.025M)のLiIを徐々に添加した。反応溶液を45℃まで加熱し、その後その温度で12時間勢いよく撹拌した。反応溶液を10℃未満に冷却し、80gの氷をまず最初に加え、その後250mlの水を加えた。その後、結果として得た溶液を1超の酸性pHに維持するため、25mlの濃HClを徐々に添加した。反応混合物を溶解させるために200mlのCHClを添加し、これを次に勢いよく振とうして2層を分離した。水層を廃棄し、2NのNaOH水溶液(100ml×2)でCHCl層を処理して水層を2回分離した。この時点で、2NのNaOH水溶液での抽出後に残ったCHCl層を実施例17中で使用した。かくして分離された水溶液を組み合わせ、濃HClを用いて2超の酸性pHに調整して、固体を形成させた。結果としての固体をろ過し、分離してラパコール誘導体を得た。かくして得られたラパコール誘導体を75%のEtOHから再結晶させた。結果としてのラパコール誘導体を50mlの硫酸と混合し、混合物を10分間室温で勢いよく撹拌し、その後150gの氷を添加して反応を完了させた。60mlのCHClを反応材料に添加し、次にこの材料を勢いよく振とうした。その後、CHCl層を分離させ、5%のNaHCOで洗浄した。30mlのCHClを用いてもう一度水性層を抽出し、5%のNaHCOで洗浄し、先に抽出した有機層と組合せた。有機層を濃縮しシリカゲル上のクロマトグラフィにより精製それぞれ1.78および0.43gの純粋な化合物16および17を得た。
化合物16のH−NMR(CDCl,δ):δ8.07(1H,dd,J=0.8,6.8Hz)、7.64(2H,broad d,J=3.6Hz)、7.57(1H,m)、5.17(1H,qd,J=6.0,8.8Hz)、3.53(1H,qd,J=6.8,8.8Hz)、1.54(3H,d,6.8Hz)、1.23(3H,d,6.8Hz)
化合物17のH−NMR(CDCl,δ):δ8.06(1H,d,J=0.8,7.2Hz)、7.65(2H,broad d,J=3.6Hz)、7.57(1H,m)、4.71(1H,クインテット,J=6.4Hz)、3.16(1H,クインテット,J=6.4Hz)、1.54(3H,d,6.4Hz)、1.38(3H,d,6.4Hz)
【0139】
実施例17:化合物18および19の合成
実施例16において2NのNaOH水溶液で抽出した後の残りのCHCl層を減圧下での蒸留により濃縮した。結果として得た濃縮物を30mlのキシレン中に溶解させ、その後10時間還流させてクライゼン転位を誘発した。キシレンを減圧下で蒸留により濃縮し、その後、更なる精製なく15mlの硫酸と混合した。結果として得た混合物を10分間室温で勢いよく撹拌し、100gの氷をそれに加えて反応を完了させた。50mlのCHClを反応材料に添加し、これを勢いよく振とうした。その後、CHCl層を分離し、5%のNaHCOで洗浄した。20mlのCHClを用いてもう一度水層を抽出し、5%のNaHCOで洗浄し、先に抽出した有機層と組合せた。有機層をMgSO上で乾燥させ、濃縮し、シリカゲル上のクロマトグラフィにより精製しそれぞれ0.62および0.43gの純粋化合物18および19を得た。
化合物18のH−NMR(CDCl,δ):8.06(1H,dd,J=0.8,7.2Hz)、7.81(1H,dd,J=0.8,7.6Hz)、7.65(1H,dt,J=0.8,7.6Hz)、7.51(1H,dt,J=0.8,7.2Hz)、4.40(1H,m)、2.71(1H,m)、2.46(1H,m)、2.11(1H,m)、1.71(1H,m)、1.54(3H,d,6.4Hz)、1.52(1H,m)
化合物19のH−NMR(CDCl,δ):8.08(1H,d,J=0.8,7.2Hz)、7.66(2H,broad d,J=4.0Hz)、7.58(1H,m)、5.08(1H,m)、3.23(1H,dd,J=9.6,15.2Hz)、2.80(1H,dd,J=7.2,15.2Hz)、1.92(1H,m)、1.82(1H,m)、1.09(3H,t,7.6Hz)
【0140】
実施例18:化合物20の合成
17.4g(0.10M)の2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノンを120mlのDMSO中に溶解させ、それに0.88g(0.11M)のLiHを徐々に添加した。ここで、この作業は、水素が放出されることから注意深く行なうべきである。反応溶液を撹拌し、水素がそれ以上生成されないことを確認した後、更に30分間撹拌した。その後、21.8g(0.10M)の臭化ゲラニルおよび3.35g(0.025M)のLiIを徐々に添加した。反応溶液を45℃まで加熱し、その後その温度で12時間勢いよく撹拌した。反応溶液を10℃未満に冷却し、80gの氷をまず最初に加え、その後250mlの水を加えた。その後、結果として得た溶液を1超の酸性pHに維持するため、25mlの濃HClを徐々に添加した。反応混合物を溶解させるために200mlのCHClを添加し、これを次に勢いよく振とうして2層を分離した。水層を廃棄し、2NのNaOH水溶液(100ml×2)でCHCl層を処理して水層を2回分離した。かくして分離された水溶液を組み合わせ、濃HClを用いて2超の酸性pHに調整して、固体を形成させた。結果としての固体をろ過し、分離して2−ゲラニル−3−ヒドロキシ−1,4−ナフトキンを得た。かくして得られた生成物を更なる精製なく50mlの硫酸と混合し、混合物を10分間室温で勢いよく撹拌し、その後150gの氷を添加して反応を完了させた。60mlのCHClを反応材料に添加し、次にこの材料を勢いよく振とうした。その後、CHCl層を分離させ、5%のNaHCOで洗浄した。30mlのCHClを用いてもう一度水性層を抽出し、5%のNaHCOで洗浄し、先に抽出した有機層と組合せた。有機層を濃縮しシリカゲル上のクロマトグラフィにより精製して3.62gの純粋な化合物20を得た。
H−NMR(CDCl,δ):8.05(1H,d,J=7.6Hz)、7.77(1H,d,J=7.6Hz)、7.63(1H,t,J=7.6Hz)、7.49(1H,t,J=7.6Hz)、2.71(1H,dd,J=6.0,17.2Hz)、2.19(1H,dd,J=12.8,17.2Hz)、2.13(1H,m)、1.73(2H,m)、1.63(1H,dd,J=6.0,12.8Hz)、1.59(1H,m)、1.57(1H,m)、1.52(1H,m)、1.33(3H,s)、1.04(3H,s)、0.93(3H,s)
【0141】
実施例19:化合物21の合成
2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノンの代りに6−クロロ−2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノンを使用したという点を除き、実施例1と同じ要領で化合物21を得た。
H−NMR(CDCl,δ):8.02(1H,d,J=8Hz)、7.77(1H,d,J=2Hz)、7.50(1H,dd,J=2,8Hz)、2.60(2H,t,J=7Hz)、1.87(2H,t,J=7Hz)1.53(6H,s)
【0142】
実施例20:化合物22の合成
2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノンの代りに2−ヒドロキシ−6−メチル−1,4−ナフトキノンを使用したという点を除き、実施例1と同じ要領で化合物22を得た。
H−NMR(CDCl,δ):7.98(1H,d,J=8Hz)、7.61(1H,d,J=2Hz)、7.31(1H,dd,J=2,8Hz)、2.58(2H,t,J=7Hz)、1.84(2H,t,J=7Hz)1.48(6H,s)
【0143】
実施例21:化合物23の合成
2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノンの代りに6,7−ジメトキシ−2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノンを使用したという点を除き、実施例1と同じ要領で化合物23を得た。
H−NMR(CDCl,δ):7.56(1H,s)、7.25(1H,s)、3.98(6H,s)、2.53(2H,t,J=7Hz)、1.83(2H,t,J=7Hz)1.48(6H,s)
【0144】
実施例22:化合物24の合成
1−ブロモ−3−メチル−2−ブテンの代りに1−ブロモ−3−メチル−2−ペンテンを使用したという点を除き、実施例1と同じ要領で化合物24を得た。
H−NMR(CDCl,δ):7.30−8.15(4H,m)、2.55(2H,t,J=7Hz)、1.83(2H,t,J=7Hz)、1.80(2H,q,7Hz)1.40(3H,s)、1.03(3H,t,J=7Hz)
【0145】
実施例23:化合物25の合成
1−ブロモ−3−メチル−2−ブテンの代りに1−ブロモ−3−エチル−2−ペンテンを使用したという点を除き、実施例1と同じ要領で化合物25を得た。
H−NMR(CDCl,δ):7.30−8.15(4H,m)、2.53(2H,t,J=7Hz)、1.83(2H,t,J=7Hz)、1.80(4H,q,7Hz)0.97(6H,t,J=7Hz)
【0146】
実施例24:化合物26の合成
1−ブロモ−3−メチル−2−ブテンの代りに1−ブロモ−3−フェニレフリネニル−2−ブテンを使用したという点を除き、実施例1と同じ要領で化合物26を得た。
H−NMR(CDCl,δ):7.15−8.15(9H,m)、1.90−2.75(4H,m)、1.77(3H,s)
【0147】
実施例25:化合物27の合成
1−ブロモ−3−メチル−2−ブテンの代りに2−ブロモ−エチリデンシクロヘキサンを使用したという点を除き、実施例1と同じ要領で化合物27を得た。
H−NMR(CDCl,δ):7.30−8.25(4H,m)、2.59(2H,t,J=7Hz)、1.35−2.15(12H,m)
【0148】
実施例26:化合物28の合成
1−ブロモ−3−メチル−2−ブテンの代りに2−ブロモ−エチリデンシクロペンタンを使用したという点を除き、実施例1と同じ要領で化合物28を得た。
H−NMR(CDCl,δ):7.28−8.20(4H,m)、2.59(2H,t,J=7Hz)、1.40−2.20(10H,m)
【0149】
実施例27:化合物29の合成
実施例5で合成された化合物5を8.58g(20mM)、1000mlの四塩化炭素の中に溶解させ、その後11.4g(50mM)の2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−1,4−ベンゾキノンを添加し、結果として得られた混合物を96時間還流させた。反応溶液を減圧下での蒸留により濃縮し、結果としての赤色固体を次にイソプロパノールから再結晶させ、かくして7.18gの純粋化合物29を得た。
H−NMR(CDCl,δ):8.05(1H,dd,J=1.2,7.6Hz)、7.66(1H,dd,J=1.2,7.6Hz)、7.62(1H,dt,J=1.2,7.6Hz)、7.42(1H,dt,J=1.2,7.6Hz)、6.45(1H,q,J=1.2Hz)、2.43(3H,d,J=1.2Hz)
【0150】
実施例28:化合物30の合成
非特許文献7で教示されている通りの合成方法と類似して、p−ベンゾキノンおよび1−(N−モルホリン)プロペンを用いて、4,5−ジクロロ−3−メチルベンゾイル[1,2−b]フラン−4,5−ジオン{ベンゾフラン−4,5−ジオン}を、p−ベンゾキノンおよび1−(N−モルホリン)プロペンを用いて合成した。かくして調製されたベンゾフラン−4,5−ジオン1.5g(9.3mM)および1−アセトキン−1,3−ブタジエン3.15g(28.2mM)を200mlのベンゼン中に溶解させ、結果としての混合物を12時間還流させた。反応溶液を室温まで冷却させ、減圧下での蒸留により濃縮した。この後、シリカゲル上でのクロマトグラフィを行なって1.13gの純粋化合物30を得た。
H−NMR(CDCl,δ):8.05(1H,dd,J=1.2,7.6Hz)、7.68(1H,dd,J=1.2,7.6Hz)、7.64(1H,td,J=1.2,7.6Hz)、7.43(1H,td,J=1.2,7.6Hz)、7.26(1H,q,J=1.2Hz)、2.28(3H,d,J=1.2Hz)
【0151】
実施例29:化合物31および32の合成
1.5g(9.3mM)の4,5−ジヒドロ−3−メチルベンゾ[1,2−b]フラン−4,5−ジオン{ベンゾフラン−4,5−ジオン}および45g(0.6M)の2−メチル−1,3−ブタジエンを200mlのベンゼン中に溶解させ、結果としての混合物を5時間還流させた。反応溶液を室温まで冷却し、減圧下での蒸留により完全に濃縮した。かくして得られた濃縮物を150mlの四塩化炭素中に再び溶解させ、その後2.3g(10mM)の2,3−ジヒドロ−5,6−ジシアノ−1,4−ベンゾキノンを添加し、結果として得た混合物を更に15時間還流させた。反応溶液を冷却させ、減圧下での蒸留により濃縮させた。結果としての濃縮物を、シリカゲル上のクロマトグラフィによって精製してそれぞれ0.13gおよび0.11gの純粋化合物31および32を得た。
化合物31のH−NMR(CDCl,δ):7.86(1H,s)、7.57(1H,d,J=8.1Hz)、7.42(1H,d,J=8.1Hz)、7.21(1H,q,J=1.2Hz)、2.40(3H,s)、2.28(1H,d,J=1.2Hz)
化合物32のH−NMR(CDCl,δ):δ7.96(1H,d,J=8.0Hz)、7.48(1H,s)、7.23(2H,m)、2.46(3H,s)、2.28(1H,d,J=1.2Hz)
【0152】
実験例1:陰茎海綿体平滑筋の弛緩に対するAMPK活性化の効果
a) 陰茎海綿体切片の調製およびその弛緩効果の測定
ニュージーランド白ウサギ(2.5〜3.0kg)に麻酔をかけ、次にウサギから陰茎全体を切除した。陰茎切片を調製するため解剖顕微鏡で観察しながら95%O−5%COの気体混合物を供給した低温タイロード溶液中で白膜から陰茎海綿体平滑筋を分離した。陰茎切片を、タイロード溶液を含有する臓器浴(10cc)内で固定させた。この時点で、臓器浴の底面上に陰茎切片の片端部を固定し、その後そのもう一方の端部で力変位計を用いて陰茎海綿体平滑筋の等尺性張力の変動を測定した。平衡状態に達した後、陰茎切片を10−4Mのフェニレフリン処理により収縮させた。陰茎切片を漸進的に増大する濃度(10−9〜10−4M)のAMPK活性化因子および比較用薬物で処理し、その後、陰茎海綿体の弛緩に対する効果を観察した。
【0153】
b) 弛緩効果測定結果
陰茎切片を処理するのに用いた薬物に応じて、ここで使用した実験グループを6つのグループ、即ちi)NOドナーとしてのSNPを投与するグループ、ii)c−GMPの加水分解を媒介する酵素であるPDE−5に対する阻害物質としてのザプリナスト(Zaprinast)を投与するグループ、(iii)神経系に作用するアセチルコリンを投与するグループ、iv)従来のAMPK活性化因子の1つであるメトホルミンを投与するグループ、v)AICAR(5−アミノイミダゾール−4−カルボキサミド−1−ベータ−D−リボフラノシド)を投与するグループ、およびvi)本発明に従った化合物1を投与するグループに分けた。陰茎海綿体の弛緩(%)を考慮して、これらのグループを比較した。表2は、対応する化合物が10−4Mという恒常な濃度で投与されるグループの陰茎海綿体平滑筋の弛緩(%)を示す。図2は、漸進的に増大する濃度(即ち10−9〜10−4M)で対応する化合物を投与するグループの陰茎海綿体平滑筋の弛緩(%)を示す。
【0154】
【表2】

実施例1(化合物1)
【0155】
表2に示されたデータから明らかであるように、投与濃度が10−4Mである場合、陰茎海綿体平滑筋の弛緩は、メトホルミン<AICAR<アセチルコリン<ゼプリナスト<SNP<化合物1という順である。図2から、10−9〜10−7Mの濃度範囲において、本発明に従った化合物1を除く全ての化合物が、ほとんど弛緩効果を及ぼさないが、化合物1投与グループは、SNP投与グループのものの約2倍に相当する非常に高い弛緩(%)を示し、10−9〜10−4Mの範囲全体を通してより優れた弛緩効果を及ぼす、ということが確認できる。
【0156】
以上のことからわかるように、本発明に従った医薬組成物は、従来の医薬組成物の活性成分およびAMPK活性化因子に比べて陰茎海綿体平滑筋の弛緩に対して著しく優れた効果を示し、その上比較的少ない投薬量を投与するにも関わらず強力な効能を及ぼす。従って、これらの結果は、本発明の医薬組成物が勃起障害のための新規の薬剤として使用するのに適しているということを実証している。
【0157】
実験例2:eNOSのリン酸化に対する化合物の効果
AMPK活性化因子として作用する化合物1がNOの産生に関与するか否かを確認するため、内皮一酸化窒素シンターゼ(eNOS)の活性を促進するリン酸化を測定した。化合物1を通したeNOSのリン酸化を確認するべく、EBM2/5%FBS培地中1×10で60mm平板上にHUVEC細胞を播種し、24時間培養した。培地を血清を含まないEBM2培地と交換し、予め定められた期間中、化合物1(10μM)での処理を実施した。抗−pS1177eNOSを用いて、リン酸化されたeNOSを測定した。
【0158】
図3を見るとわかるように、化合物1での処置から30分後に、eNOS(p−eNOS)のリン酸化が最大となり、その後漸進的に減少し、2時間後には観察されず、eNOSの活性は2時間後までずっと観察される。かくして、これらの結果は、化合物1が内皮細胞内のAMPKの活性化を誘発し、eNOSのリン酸化および活性を結果としてもたらし、かくして少なくとも部分的にNO産生を促進するということを示している。
【0159】
実験例3:NO経路を通した弛緩に対する化合物1の効果
NO経路の遮断時点での陰茎海綿体平滑筋の弛緩に対する化合物1の効果を確認するため、フェニレフリン処理により陰茎海綿体平滑筋切片を収縮させ、化合物1の処置により弛緩させ、次に逐次的に、c−GMPの産生を助けるグアニル酸シクラーゼに対する阻害物質としてのメチレンブルーおよびeNOSに対する阻害活性を介したNOの産生を阻害するL−NAME(L−ニトロアルギニンメチルエステル)で処理した。
【0160】
化合物1の投与によってひき起こされた陰茎海綿体平滑筋の弛緩は、10−3MのL−NAMEおよび10−4Mのメチレンブルーによって部分的に阻害された。結果は図4に示されている。
【0161】
図4を見るとわかるように、無処理グループ(即ち化合物1を投与したグループ)と比べ、L−NAME(10−3M)処理グループの弛緩は阻害された。この挙動は、本発明に従った化合物1がeNOSを活性化し、NOの産生を増強し、陰茎海綿体平滑筋の弛緩を誘発することを表わしている。
【0162】
更に、図4を見るとわかるように、メチレンブルー10−4Mで処理されたグループの弛緩は、L−NAME処理グループに比べてより一層阻害された。この挙動は、本発明の化合物1が、主としてNO−cGMP経路を通してcGMPの産生を促進することによって陰茎海綿体平滑筋の弛緩を誘発することを確認している。
【0163】
結論として、これらの結果は、化合物1が、eNOSの活性化およびcGMPの産生を介して内皮依存性NO産生経路およびNO−cGMP経路に関与して、陰茎海綿体平滑筋の弛緩を誘発することを実証している。
【0164】
実験例4:CO産生経路を通した弛緩に対する化合物1の効果
ニュージーランド白ウサギにおいて陰茎海綿体平滑筋の弛緩に対して化合物が作用する薬理学的機序を確認するため、化合物1の処理により平滑筋切片を弛緩させ、その後溶解緩衝液として10−4MのCHAPS(緩衝溶液中3%の3−[(3−コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−1−プロパンスルフォネート;シグマ(Sigma))を用いて平滑筋切片から内皮細胞を除去した。その後、もう1つの神経伝達物質として、亜鉛−プロトポルフィリン−IX(ZnPP)をそれに投与し、これは、血液により生体内産生される一酸化炭素(CO)を産生するヘムオキシゲナーゼ−2(HO−2)を不活性化させる。結果は、図5および6に示されている。
【0165】
図5および6から、化合物1投与グループはSNP投与グループに比べて有意に優れた弛緩効果を示し、NO経路のみの阻害では弛緩効果を完全に不活性化できない、ということを確認することができる。即ち、NO経路およびCO経路の両方が阻害されて初めて、弛緩効果をほぼ完全に抑制することができた。更に、CHAPS投与グループ(Znpp無し)の弛緩が化合物1投与グループ(図示せず)の弛緩の約45%まで減少させられたこと、そしてCHAPS投与グループの陰茎海綿体平滑筋の弛緩が部分的に阻害されたこと、が確認できる。従って、これらの結果は、本発明に従った化合物1が同様に、内皮非依存性活性をも示す、ということを表わしている。ZnPP投与グループの弛緩はほぼ完全に阻害された。このことにより、化合物1が、HO−2の活性化を介して血管拡張剤として作用するCOの産生を抑制する内皮非依存性CO産生経路に関与していることが確認される。
【0166】
結論としては、化合物1が処理され、内皮依存性NO産生経路のみが遮断される場合、陰茎海綿体平滑筋の弛緩は部分的に阻害される。一方、内皮非依存性CO産生経路が遮断される場合、弛緩は完全に阻害される。これらの挙動は、化合物1が、内皮依存性NO産生経路と内皮非依存性CO産生経路の両方に関与する薬理学的機序を通して陰茎海綿体平滑筋の弛緩を誘発することを実証している。
【0167】
実験例5:糖尿病誘発されたラットの勃起した陰茎海綿体の内部圧力に対する化合物1の影響
糖尿病誘発されたラットの陰茎勃起が陰茎海綿体の内部圧力に対し影響を有するか否かを生体内で確認するために、23匹のSD(Sprague−Dawley)白色ラット(約300g)を、正常な対照グループ(グループI、n=6)、糖尿病誘発された対照グループ(グループII、n=4)、糖尿病誘発後にAICARを投与するグループ(グループIII、n=6)そして化合物1を投与するグループ(グループIV、n=7)に分ける。
【0168】
糖尿病を誘発するためにSTZ(ストレプトゾトシン)を使用し、AICARおよび化合物1を5週間、それぞれ500mg/kgおよび250mg/kgの投薬量で経口投与した。実験グループの各々を全身麻酔し、血圧を測定するため頸動脈の片側に挿管し、骨盤腔内の陰茎海綿体神経の中に電気刺激目的のカテーテルを設置し、陰茎海綿体の内部圧力を測定した。1分間、このグループに電気刺激を適用した(周波数:10Hz、遅延:4ms、持続時間;5ms、電圧:3V)。グループの内部圧力の増加を測定し、内部圧力の増加を考慮してグループを互いに比較した。
【0169】
内部圧力の増加は図7に示されている。それぞれのグループ間における電気刺激前に測定された陰茎海綿体の内部圧力の有意な差も、電気刺激中の全身的血圧変動も存在しなかった。
【0170】
図7から、グループI、II、IIIおよびIVに関する電気刺激後の陰茎海綿体の最高の内部圧力増加の平均が、それぞれ8.5±4.7、3.0±1.0、4.3±1.0および9.7±5.1mmHgであったことがわかる。化合物1を投与したグループIVの平均は、グループIIまたはIIIの平均(p=0.022)よりも有意に高い。陰茎海綿体の内部圧力増加を考慮すると、グループIVは、グループI(p=0.670)との間には統計的に有意な差異を全く示さなかったが、グループIII(p=0.027)に比べると統計的に有意なほど高い。
【0171】
従って、これらの結果は、化合物1が糖尿病誘発された白色ラットの陰茎海綿体の内部圧力を有意に上昇させることを実証している。その結果、活性成分として化合物1を含む医薬組成物は、糖尿病関連性勃起障害を含めた勃起障害を治療するための新規薬剤であるものと期待される。
【産業上の利用可能性】
【0172】
以上の記述から明らかであるように、本発明の医薬組成物は、AMPKの活性化を介した内皮依存性NO経路および内皮非依存性HO−2経路に関与し、神経伝達物質として作用するNOおよびCOの産生を促進し、かくして比較的少ない投薬量の使用にも関わらず陰茎海綿体平滑筋の弛緩を誘発するために有意なほどに有効である。従って、本発明の医薬組成物は好ましくは、勃起障害の治療および予防のために有用である。
【0173】
本発明の好ましい実施形態を例示目的で開示してきたが、当業者は、添付の請求項で開示されている通りの本発明の範囲および精神から逸脱することなく、さまざまな修正、付加および置換が可能であるということを認識するであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
勃起障害を治療および/または予防するための医薬組成物であって、
(a)治療上有効な量の、下記式(1)および(2):
【化1】

【化2】

(式中、
とRは、各々独立して水素、ハロゲン、ヒドロキシルまたはC−C低級アルキルまたはアルコキシであるか、そうでなければ、RおよびRが合わされて、飽和、部分不飽和または完全不飽和となっていてよい置換または未置換環状構造を形成してよく;
、R、R、R、RおよびRは、各々独立して水素、ヒドロキシ、C−C20アルキル、アルケンまたはアルコキシ、またはC−C20シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールであるか、そうでなければ、R〜Rのうちの2つの置換基が合わされて、飽和、部分不飽和または完全不飽和となっていてよい環状構造を形成してよく;
Xは、C(R)(R’)、N(R’’)(式中、R、R’およびR’’は、各々独立して水素またはC−C低級アルキルである)、OおよびSからなる群から選択され;
YはC、SまたはNであり、ただし、YがSである場合、RおよびRはいずれの置換基でもなく、YがNである場合、Rは水素またはC−C低級アルキルであり、Rはいずれの置換基でもなく;
nは0または1であり、ただし、nが0である場合、nに隣接する炭素原子は直接結合を介して環状構造を形成する)
で表わされる化合物、またはそれらの薬学的に許容可能な塩、プロドラッグ、溶媒和物または異性体の中から選択された1つ以上の化合物;および
(b)薬学的に許容可能な担体、希釈剤または賦形剤、或いはそれらの任意の組み合わせ
を含む組成物。
【請求項2】
XがOであることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記プロドラッグが、下記式(1a):
【化3】

(式中、
、R、R、R、R、R、R、R、Xおよびnは、前記式(1)に定義されている通りであり;
およびR10は、各々独立して−SO−Naであるか、または下記式(A):
【化4】

(式中、
11およびR12は各々独立して水素或いは置換または未置換のC−C20直鎖アルキルまたはC−C20分岐アルキルであり、
13は、下記置換基i)〜viii):
i)水素
ii)置換または未置換のC−C20直鎖アルキルまたはC−C20分岐アルキル
iii)置換または未置換アミン
iv)置換または未置換のC−C10シクロアルキルまたはC−C10ヘテロシクロアルキル
v)置換または未置換のC−C10アリールまたはC−C10ヘテロアリール
vi)式−(CRR’ −NR’’CO)−R14(式中、R、R’およびR’’は、各々独立して水素、または置換または未置換のC−C20直鎖アルキルまたはC−C20分岐アルキルであり、R14は、水素、置換または未置換アミン、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールおよびヘテロアリールからなる群から選択され、lは1〜5から選択される)で表わされる置換基
vii)置換または未置換カルボキシル
viii)−OSO−Na
からなる群から選択され;
kは、0〜20の中から選択され、ただし、kが0である場合、R11およびR12は存在せず、R13はカルボニル基に直接結合する)
で表わされる置換基またはその塩である)
で表わされる化合物であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記式(1)の化合物が、下記式(3)および(4):
【化5】

【化6】

(式中、R、R、R、R、R、R、RおよびRは、前記式(1)において定義されている通りである)
で表わされる化合物から選択されることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
およびRがそれぞれ水素であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記式(3)の化合物が、R、RおよびRがそれぞれ水素である下記式(3a):
【化7】

の化合物であるか、そうでなければ、
、RおよびRがそれぞれ水素である下記式(3b)
【化8】

の化合物であることを特徴とする請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
前記式(4)の化合物が、下記式(4a)〜(4c):
【化9】

【化10】

【化11】

で表わされる化合物から選択されることを特徴とする請求項4に記載の組成物。
【請求項8】
前記式(2)の化合物が、nが0であり、隣接する炭素原子がそれらの間の直接結合を介して環状構造を形成し、YがCである下記式(2a):
【化12】

の化合物であるか、そうでなければ、
nが1であり、YがCである下記式(2b):
【化13】

(式中、R、R、R、R、R、R、R、RおよびXは、前記式(1)において定義されている通りである)
の化合物であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記式(1)または前記式(2)の化合物が、結晶構造の形で含有されていることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記式(1)または前記式(2)の化合物が、非晶質構造の形で含有されていることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記式(1)または前記式(2)の化合物が、細粒の形態に処方されていることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
細粒の形態のための前記処方が、機械的粉砕、噴霧乾燥、沈澱方法、均質化および超臨界微粉化からなる群から選択された粒子微粉化方法を用いて実施されることを特徴とする請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記処方が、機械的粉砕としてのジェット粉砕および/または噴霧乾燥を用いて実施されることを特徴とする請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
細粒の粒子サイズが、5nm〜500μmであることを特徴とする請求項11に記載の組成物。
【請求項15】
腸を標的とする処方物に調製されていることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
腸を標的とする処方が、pH感受性重合体の付加によって実施されることを特徴とする請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
腸を標的とする処方が、腸特異的細菌酵素によって分解可能である生分解性重合体の付加によって実施されることを特徴とする請求項15に記載の組成物。
【請求項18】
腸を標的とする処方が、腸特異的細菌酵素によって分解可能である生分解性マトリクスの付加によって実施されることを特徴とする請求項15に記載の組成物。
【請求項19】
前記腸標的処方が、一定の遅延時間後に薬物が経時的に放出される構成(「時間特異的遅延放出処方」)によって実施されることを特徴とする請求項15に記載の組成物。
【請求項20】
前記勃起障害が、糖尿病関連勃起障害であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項21】
請求項1に記載の前記式(1)または(2)の化合物を用いた勃起障害の治療および/または予防のための薬剤を調製する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−510984(P2010−510984A)
【公表日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−538341(P2009−538341)
【出願日】平成19年11月26日(2007.11.26)
【国際出願番号】PCT/KR2007/006013
【国際公開番号】WO2008/066299
【国際公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(509010436)マゼンス インコーポレイテッド (11)
【出願人】(506222797)ケーティ アンド ジー カンパニー リミテッド (9)
【Fターム(参考)】