説明

インモールドラベル付き薄肉容器

【課題】ブロー成形による合成樹脂製の薄肉容器へのインモールド成形法において、ラベルの貼着に起因する容器の変形を効果的に抑制するための層構成の設計指標を創出し、この指標を基に、容器の変形の問題、ラベルの端部を起点とした割れの問題、エア溜りが発生する問題、ラベルのカールに係る問題を総合的に解決する。
【解決手段】合成樹脂製の容器本体の胴部の周壁にブロー成形と同時にインモールドラベルを貼着した薄肉容器において、容器本体の胴部の周壁の平均肉厚は0.8mm以下とし、インモールドラベルは、基材フィルム層の内側に、胴部の周壁に接着する接着層を積層した層構成を有し、厚さを0.08mm以下とし、[ラベルの引張弾性率(MPa)]×[ラベルの厚さ(mm)]で算出されるA値を0.12以下とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はブロー成形と同時にラベルを貼着したインモールドラベル付き薄肉容器に関する。

【背景技術】
【0002】
ブロー成形による合成樹脂製容器の表面に対する装飾模様とか商品名や説明文の表示を達成する手段として、表面に装飾模様とか商品名、説明文を印刷表示したラベルを、容器本体の胴部の周壁に貼着する方法が用いられている。
たとえば、特許文献1には胴部の周壁にラベルが貼着一体化された薄肉のプラスチックボトルについての記載がある。しかしながら特許文献1に記載される方法では、薄肉容器のブロー成形後、ラベルを貼着するために用意した金型内に容器本体とラベルを供給する工程が必要であり、生産効率やエネルギー効率が劣るといった問題があった。
【0003】
一方、このラベルを貼着する方法の一つとして、容器本体をブロー成形する際に、インモールドラベル(以下、単にラベルと記載する場合がある。)を予め成形型面にセットして成形と同時にこのラベルを貼着する、所謂、インモールド成形法がある。
【0004】
このインモールド成形法によれば、容器本体の成形と同時に容器本体に対するラベルの貼着が達成され、専用の別工程の貼着作業を必要としないこと、容器本体の表面とラベルとの間に段差が生じないので、この段差による容器の外観体裁や触感の劣化の恐れがないこと、そして容器本体の薄肉化に関わり無く、容器本体に対するラベルの強固で安定した貼着を確実に得ることができること、と云う優れた作用が発揮される。

【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−321722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、化石資源の消費縮減、炭酸ガス排出量削減による地球温暖化防止等の地球環境への配慮の観点、あるいはコスト削減の観点から、容器本体に使用される樹脂量のさらなる削減、すなわち、さらなる薄肉化が要請される中、容器本体の胴部の肉厚を数100マイクロメートル程度にまで薄肉化することが要請されている。
【0007】
一方、容器本体を薄肉化するとインモールド成形法でラベルを貼着する際、ラベルの剛性やラベルの厚さが大きい場合、ラベルの貼着領域では、それ以外の領域に比較して、胴部の周壁の収縮が抑えられ周壁が変形してしまうと云う問題がある。
図4は、楕円筒状の胴部の平断面図で見られるこの種の変形の典型的な例をしめすもので、ラベル11を貼着した領域では周壁2wの収縮が抑制されるので、ラベル11の端部11eの近傍で周壁2wが凹んで、所謂、ヒケが発生してしまう。
【0008】
また、インモールド成形法でラベルを貼着する方法では上記変形の他にも、ラベルの端部に形成されるノッチ状の溝を起点とした割れの発生や、ラベルと周壁の層間にエア溜りができる問題、さらにはラベルのカールに係る問題等があり、これらの点を総合的に考慮しながらラベルの層構成を設計する必要がある。
【0009】
本発明はブロー成形による合成樹脂製の薄肉容器へのインモールド成形法によるラベルの貼着に起因する容器の変形を効果的に抑制するための層構成の設計指標を創出し、この指標を基に、上記容器の変形の問題、ラベルの端部を起点とした割れの問題、エア溜りが発生する問題、ラベルのカールに係る問題を総合的に解決することを課題とするものである。

【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための手段に係る本発明の主たる構成は、
合成樹脂製の容器本体の胴部の周壁にブロー成形と同時にインモールドラベルを貼着した薄肉容器において、
容器本体の胴部の周壁の平均肉厚は0.8mm以下とし、
インモールドラベルは、基材フィルム層の内側に、胴部の周壁に接着する接着層を積層した層構成を有し、厚さを0.08mm以下とし、
[ラベルの引張弾性率(MPa)]×[ラベルの厚さ(mm)]で算出されるA値を0.12以下とする、と云うものである。
【0011】
インモールドラベル付き容器に使用するラベルについては、次の1)〜7)に記載する要素や問題等を考慮して、積層構造、各層の材質、層厚さ等のラベルの構成、さらにはその製造方法を選定する必要がある。
1)ラベルの製造工程あるいは加工工程の生産性
2)ラベルのカール
3)インモールド成形において、ラベルを所定のホルダー内に整列させて、連続的かつ一枚毎に確実に金型内に供給する工程に係る生産性
4)高温の溶融樹脂からなるパリソンが膨張変形しながらラベルに接触することによるラベルでの皺の発生や、エア溜まりの発生
5)金型内での樹脂の冷却固化そして成形後の収縮に伴う容器の変形
6)ラベルの容器表面への接着性
7)ラベルの端部と容器本体との境界部に形成されるV字型のノッチ状の溝に起因する落下衝撃による容器の割れ
【0012】
特に容器本体の胴部の周壁の平均肉厚が0.8mm以下の薄肉容器の場合、4)に記載される皺やエア溜まりの問題、5)に記載される容器の変形の問題が顕著に出現するので、周壁の肉厚が大きな場合とは異なる観点で、ラベルの層構成を設計する必要がある。
たとえば成形中におけるラベルでの皺やエア溜りの発生を抑制することを考慮して、ラベルの弾性率あるいはラベルの厚さを大きくすると、一方で、ラベルの貼着に起因する容器の変形が大きくなってしまう等の問題が発生するため、上記した1)〜7)の要素や問題を全体的に考慮してラベルの構成を適宜選択する必要がある。
【0013】
上記、本発明の主たる構成においてラベルのAの値はラベルの弾性率と厚さとを含んだ、謂わば、ラベルの剛性あるいは腰強さの指標となる値で、その上限値は特に上記の5)の容器の変形に係るものである。
発明者らは胴部の周壁の平均肉厚が0.8mm以下の薄肉容器の、インモールド成形法によるラベルの貼着に起因する胴部の周壁の変形の改良を、数多くの異なる層構成を有するラベルについてこのA値を指標として検討するなかで、このA値を0.12以下の値とすることにより、この種のラベルの貼着に起因する容器の変形を効果的に抑制し、防ぐことができるのを見出し、上記主たる構成を創出するに到った。
すなわち、上記主たる構成において使用するラベルのA値を指標とし、このA値を0.12以下の値とすることによりラベルの貼着に起因する、前述したような周壁の変形を効果的に抑制することが可能となる。
【0014】
一方、ラベルの厚さの上限値は7)のノッチ状の溝に起因する割れの発生に係るものである。
インモールド成形法でラベルを貼着した場合、ラベルの端部と周壁との境界部にV字型のノッチ状の溝が形成されるが、ラベルが厚すぎるとこの溝が深く大きくなり、特に薄肉容器の場合、落下衝撃により、この溝を基点として容器が割れると云う問題があるが、
上記構成のように、ラベルの厚さを0.08mm以下とすることにより、溝を小さくでき、たとえ薄肉容器であってもこのノッチ状の溝に起因する容器の割れを防ぐことが可能となる。
【0015】
なお、A値が小さくなりすぎると、前述した1)のラベルの製造工程あるいは加工工程の生産性の問題、2)のラベルのカールの問題、さらには3)のラベルの供給工程での生産性の問題がでてくるので、A値は0.02以上として一定の腰強さを確保することが好ましい。
また併せて、ラベルの厚さについても、小さくなりすぎると同様な問題の原因となるため、ラベルの厚さは0.03mm以上とすることが好ましい。
【0016】
本発明の他の構成は、上記主たる構成において、接着層を容器本体と同系統の合成樹脂を押出ラミネート法で0.005〜0.025mmの範囲の層厚に積層し、その後エンボス加工により凹凸を形成したものとする、と云うものである。
【0017】
上記構成は、前述した1)のラベルの製造工程あるいは加工工程の生産性の問題、2)のラベルのカールの問題、3)のラベルの供給に係る生産性の問題、さらには4)のエア溜まり発生の問題、また6)の強固な接着性に係るものである。
押出ラミネート法の場合、押出樹脂の厚さと基材フィルム層のテンションを制御することにより、ラベルのカールを容易に防止することができ、カールの発生によるラベルの供給に係る生産性の低下を防止することができる。
また、押出ラミネート法の場合、接着層の厚さを0.01〜0.02mm程度の厚さにすることが可能であり、エンボス加工によるエンボスの深さを十分確保することが可能となる。
【0018】
また、押出ラミネート法において、押出樹脂である接着層の層厚さを大きくしすぎると、冷却後の押出樹脂の収縮によりラベルにカールが発生してしまうため、接着層の厚さは0.025mm以下の範囲とすることが好ましい。
一方、接着層の層厚を小さくしすぎるとエンボス加工による凹凸の深さが不十分で、ラベルに皺やエア溜まりが発生し易くなってしまうので、接着層の層厚は0.005mm以上とするのが好ましい。
【0019】
また、上記構成で接着層を容器本体と同系統の合成樹脂製とすることにより、接着層の表面がパリソンの熱で溶融し、ラベルが容器本体表面と溶着するため、強固に接着し、高温多湿などの過酷な環境下で使用されたり、内容物を取り出すために容器をスクイズしたり、押し潰したりしてもラベルが剥がれることがない。
【0020】
ここで、接着層の積層方法としては、上記構成の押出ラミネート法の他に、基材フィルム層にドライラミネート法で接着フィルムを積層する方法、基材フィルム層に感熱性接着剤を塗布する方法がある。
ドライラミネート法により基材フィルム層に接着層となる接着フィルムを積層する際には、接着フィルムとしてある程度の厚さ(最低限の厚さは概ね0.03mm)がないとドライラミネート時のテンションにより接着フィルムが伸びたり、皺が入ったりしてしまう。
このため、A値を上限値以下の範囲に収めて容器の変形がないようにすると、接着フィルムの層厚が厚い分、基材フィルム層の層厚を小さくする必要があり、ドライラミネート時の基材フィルム層へのテンションによりカールが発生しまう。
このため、接着層をドライラミネート法で積層するラベルでは、ラベルの製造法に由来する制約から、ラベルの貼着に起因する容器の変形と、ラベルのカールを共に防ぐことは困難であると云える。
また、感熱性接着剤を塗布する方法によると接着層を厚くできないので、エンボスの深さを十分に大きくすることができない。
【0021】
本発明のさらに他の構成は、容器本体をポリエチレン樹脂製とし、ラベルを、ポリプロピレン樹脂無延伸フィルム(CPP)製の基材フィルム層に低密度ポリエチレン(LDPE)樹脂製の接着層を押出ラミネート法により積層した構成とする、と云うものである。
【0022】
上記構成は本発明のラベル付き薄肉容器の具体的な構成に係るものである。
接着層を容器本体と同種の樹脂とすることにより、インモールド成形法の作用効果も相俟って、ラベルを強固に接着固定することができる。
また、CPPは無延伸フィルムのため比較的弾性率が低く、延伸フィルムに比較して引張弾性率が低くまた等方的であるので、A値を比較的容易に上限値内の値に収めることができる。

【発明の効果】
【0023】
本発明のラベル付き薄肉容器は上記した構成となっているので、以下に示す効果を奏する。
主たる構成を有するものにあっては、容器本体が0.8mm以下の薄肉であっても、[ラベルの引張弾性率(Mpa)]×[ラベルの厚さ(mm)]で算出されるラベルの腰強さの指標に相当するA値の値を0.12以下とすることにより、ラベルの貼着に起因する容器の変形を効果的に抑制することができると共に、ラベルの厚さを0.08mm以下とすることにラベルの端面に形成されるノッチ状の溝に起因する容器の落下衝撃による割れを効果的に防ぐことができ、
インモールド成形法の特徴を損なうことなく生かしながら、容器本体の表面に強固に接着し、容器に変形のない良好な外観のラベル付き薄肉容器を提供することができる。

【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の容器の一実施例を示す正面図である。
【図2】図1中のA−A線に沿って示す平断面図である。
【図3】図1の容器に使用されているラベルの層構成を示す断面図である。
【図4】容器の変形態様の一例を平断面で示す概略説明図である。
【図5】本発明の容器を成形するための工程の概略説明図である。
【図6】実施例、比較例の容器に使用する各種ラベルの層構成をまとめた表である。
【図7】図6中のラベルの物性、貼着状態等の評価結果をまとめた表である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明のラベル付き容器の実施の形態を実施例に沿って図面を参照しながら説明する。
図1〜図3は本発明の容器の一実施例を示すものであり、図1は正面図、図2は図1中のA−A線に沿って示す平断面図、そして図3はラベル11の層構成を示す断面図である。
容器本体1は、高密度ポリエチレン(HDPE)樹脂製のダイレクトブロー成形による楕円筒状の胴部2を有する壜体で、高さが200mm、容量が400mlであり、胴部2の平均肉厚は0.45mmである。
【0026】
胴部2の正面と背面には、矩形状のラベル11が、インモールド成形法により容器本体1のブロー成形と同時に貼着されている。
このラベル11は、基材フィルム層12/グラビア印刷層13/アンカーコート(AC)層14/接着層15と云う層構成を有する(図3参照)。
基材フィルム層12はPP樹脂製無延伸フィルム(CPP)製で層厚は0.04mm、そして接着層15は低密度ポリエチレン(LDPE)樹脂を押出ラミネート法により積層したもので後述するエンボス加工前の層厚が0.01mmであり、ラベル11全体の平均厚さは0.058mmである。
なお接着層15にエンボス加工を施したラベル11では、図3中、tで示した寸法をラベル11の厚さとしている。
【0027】
ここで、図5は、本実施例のインモールドラベル付き薄肉容器を成形するインモールド成形法の工程の概略説明図である。ダイス21から円筒状のHDPE樹脂製のパリソン22を押し出し、その上下をブロー成形割金型23で挟んだ状態である。
この状態で、ブローエアを吹き込むとパリソン22は膨張し(図5中の矢印方向参照)キャビティの形状に賦形され(図5中の2点鎖線の状態参照)、容器本体1が成形されるが、この成形と同時に予め型面に減圧吸気路24により固定配設しておいたラベル11は胴部の周壁2wに一体化された状態に貼着される。
【0028】
ラベル11の接着層15はインモールド成形法により容器本体1の胴部2の周壁2w表面に接着(溶着)する機能を果たすものであるが、LDPE樹脂を押出ラミネート法により積層した後に、この接着層15にはエンボス加工により凹凸が形成されている。
【0029】
そして、この凹凸がインモールド成形時における空気の逃げ道としての機能を発揮してラベル11に、エア溜りに起因する浮き(ブリスター)の発生がないようにしている。
また、この凹凸により、皺の発生の主たる要因である高温のパリソンの接触によるラベルの収縮挙動を緩和することができ、皺の発生を効果的に抑制することができる。
さらに、この凹凸がホルダー内に重ねて整列されたラベルの表面とラベル裏面との接触面積を小さくするため、ラベルの金型への自動供給においてラベルを一枚毎に、確実にホルダーから取り出し、金型内に供給することができる。
【0030】
そして、このラベル11は、基材フィルム層12の一方の面を、コロナ処理をし、グラビア印刷により印刷層13を形成し、さらに有機チタネート系、有機イソシアネート系、ポリエチレンイミン系等の接着剤を主成分とするAC層を介して押出ラミネート法により接着層15を積層し、上述したように接着層15にエンボス加工を施した後に、所定の形状でブッシュ方式により打ち抜いて作製したものである。
【0031】
次に、上記実施例のラベル付き容器と比較するため、上記実施例に使用したラベル(以下、ラベルLとする)とは異なる層構成を有する5種類のラベルを用意し、実施例に使用したHDPE樹脂製の容器本体1と同じ容器本体に、同様なインモールド成形法でこれら5種のラベル(以下、ラベルLc1〜ラベルLc5とする。)を貼着して、比較例1〜5のラベル付き容器を用意した。
【0032】
図6は、上記ラベルLとラベルLc1〜ラベルLc5の層構成をまとめた表である。この表中、ラベルの層構成の記載で使用している略号は次のようである。
・CPP;PP樹脂製無延伸フィルム
・OPP;PP樹脂製二軸延伸フィルム
・Co−PP;共重合ポリプロピレン樹脂製無延伸フィルム
・押出LDPE;押出ラミネート法により積層した低密ポリエチレン樹脂層
・AC;アンカーコート層
・DL;ドライラミネート層
なお図6の表中、( )内の数値はマイクロメートル単位で示す層厚である。
また、ラベルLc1に使用される合成紙はユポ・コーポレーション社製のユポIDS80である。
【0033】
また図7は、実施例及び比較例1〜5のラベル付き容器について、使用したラベルL、ラベルLc1〜ラベルLc5の物性値やカールの有無、そして容器本体にラベルを貼着した後の、容器の変形、エア溜りの有無、落下衝撃試験の結果をまとめて示した表である。
この表中、ラベルの引張弾性率は、縦方向と横方向に各ラベルをASTM−1822Lのダンベル形状に打ち抜き、1mm/分の引張速度で引張り試験を実施して測定した値である。
ここで、ラベルの縦方向は、容器本体11に貼着した際の容器本体11の軸方向に相当し、横方向はそれに直角な方向に相当する。従ってA値についても縦方向と横方向について算出している。
また、落下衝撃試験の試験方法は、容器に規定量の水を充填し、5℃に調整した恒温槽内に24時間放置後、取り出し、直ちに1mの高さから正立状態、横倒状態の順に落下させる。これを1サイクルとし、10サイクル落下させ、容器が破損しなければ異常なしとする。
【0034】
次に図7の表に記載される実施例と比較例1〜5について、そのデータに沿って、本発明のなかで定めた層構成の設計基準に相当する、A値が0.12以下、ラベルの厚さが0.08mm以下、接着層の層厚が0.005〜0.025mmの範囲と云う要件等と比較しながら、以下説明する。
【0035】
(1)実施例の容器
ラベルLの層構成は前述した通りで、ラベルLの厚さは0.058mm、またA値は縦方向0.044、横方向0.027で、LDPE樹脂を押出ラミネート法により積層した接着層15のエンボス加工前の層厚は0.01mmである。
そして、このラベルLではカールの発生がなく、A値は0.12以下の範囲にあり、図2の平断面図に示されるようにラベルの貼着に起因する容器本体1の胴部2の周壁2wの変形のないものであった。
また、接着層15のエンボス加工前の層厚は0.01mmで、エンボス加工による凹凸の深さを十分にとることができ、エア溜りの発生はなく、接着層15が容器本体1と同種の合成樹脂製であること、さらにはインモールド成形法による作用効果が相俟って強固な接着性が達成されている。
また、ラベルLの厚さは0.058mmと0.08mm以下の値であり、ラベルの端部11e(図2参照)と周壁2wとの境界部に形成されるV字型のノッチ状の溝を小さくでき、この溝に起因する落下衝撃による容器の割れは見られなかった。
【0036】
(2)比較例1の容器
この比較例1は、基材フィルムとして合成紙を使用したもので、接着層として感熱接着性樹脂が設けられ、この接着層にはエンボス加工が施されたラベルLc1を使用したもので、引張弾性率と厚さが共に大きく、A値が0.12を超え縦方向では0.543とした、謂わば、モデル的な例であり、図4の平断面図で示されるような変形が発生し、落下衝撃試験ではVノッチ状の溝に起因する容器の割れが発生した。
容器本体の肉厚が十分に大きな場合には、この種のラベルを使用することができるが、本発明のような薄肉容器では使用することができない。
【0037】
(3)比較例2の容器
この比較例2に使用したラベルLc2の層構成は、実施例に使用したラベルLと略同様で、基材フィルム層12の層厚を0.02mm、接着層15の層厚を0.01mm大きくし、また接着層15にエンボス加工を施していない例である。
層厚を大きくしたため、A値が0.12を超えて0.2程度になり容器に図4の平断面図で示されるような変形が発生した。
また、ラベルの厚さも0.08mmを超え、落下衝撃試験ではVノッチに起因する容器の破損が発生した。
また、エンボス加工による凹凸がない状態ではエア溜りが発生する。
【0038】
(4)比較例3の容器
この比較例3に使用したラベルLc3の層構成は、実施例に使用したラベルLと略同様であるが、基材フィルムをPP樹脂製二軸延伸フィルム(OPP)製で層厚0.04mmとし、接着層15の層厚を0.01mmから0.02mmとした例である。
上記基材フィルムの材質変更により、ラベルLに比較してラベルLc3のラベルの厚さは大きく変化していないが、引張弾性率が4倍程度にまで大きくなり、その結果、その分、A値が0.2程度まで大きくなり、図4の平断面図で示されるような変形が発生した。
【0039】
(5)比較例4の容器
この比較例4に使用したラベルLc4の層構成は、実施例に使用したラベルLと略同様で、基材フィルム層12の層厚を0.05mmから0.06mmと大きくした例である。
上記層厚の変更により、ラベルLに比較してラベルLc4のラベルの厚さと引張弾性率が若干程度大きくなり、その結果、A値が0.12を僅かではあるが超えて0.13程度なり、この場合も、図4の平断面図で示されるような変形が見られた。
【0040】
(6)比較例5の容器
この比較例5に使用したラベルLc5の層構成は、CPP製の基材フィルム層12にドライラミネート法により、エンボス加工された、Co−PP製の接着フィルムからなる接着層15を積層した例である。
ドライラミネート法により基材フィルム層12に接着層15となる接着フィルムを積層する際には、接着フィルムとしてある程度の厚さ(最低限の厚さは概ね0.03mm程度)がないとドライラミネート時のテンションにより接着フィルムが伸びたり、皺が入ったりしてしまう。
このため、ラベルLc5のようにA値を0.12以下の範囲に収めて容器の変形がないような層構成にしようとすると、接着フィルムの層厚が厚い分、基材フィルム層12の層厚を小さくする(本例では0.03mm)ことが必要であり、ドライラミネート時の基材フィルム層12へのテンションにより出来上がったラベルにカールが発生してしまう。
ラベルにカールが発生した場合、ラベルをホッパー内に整列した状態で入れることができず、ラベルを装置で自動的に金型へ供給することができない。
この比較例5から分かるように接着層15をドライラミネート法で積層するラベルでは、ラベルの製造法に由来する制約から、ラベルの貼着に起因する容器の変形と、ラベルのカールを共に防ぐことは困難であると云える。
【0041】
以上、実施例、比較例1〜5のラベル付き薄肉容器に係る評価結果について説明したが、これら実施例や比較例1〜5を含めた、層構成や層厚を変えた多数のラベルを用いた評価結果から、次のようにまとめることができる。
(1)ラベルの貼着に起因する容器の変形の有無は、ラベルの腰強さの指標に相当するA値で予測することでき、A値を0.12以下することにより変形を効果的に防ぐことができる。
(2)上記のように、A値を0.12以下として容器の変形を防ぐと共に、ラベルのカールを防ぐためには、基材フィルム層と接着層の積層は押出ラミネート法が適している。
(3)ラベルの厚さを0.8mm以下とすることによりラベルの端部に形成されるVノッチに起因する落下衝撃による破損を防ぐことができる。
【0042】
以上、実施例に沿って、また比較例を参照しながら本発明の実施の形態とその作用効果を説明したが、本願発明はこの実施例に限定されるものではない。
容器本体1とラベル11に使用する材料の組み合わせはさまざまな組み合わせとすることができる。
たとえば、上記実施例では容器本体1をHDPE樹脂製としたが、PP樹脂製等の他のポリオレフィン系樹脂や、ポリエステル系樹脂等、従来からブロー成形に使用されている樹脂を使用することができる。
【0043】
また、ラベル11の層構成についてもA値や、ラベルの厚さを所定の範囲に収めると云う範疇のなかで、さまざまな構成とすることができる。上記実施例では基材フィルム層12としてCPPフィルムを使用したが、他にもたとえば他のポリオレフィン系樹脂製のフィルムやポリエステル系樹脂製のフィルムを使用することができ、また接着層15についても容器本体との接着性を考慮して適宜選択することができる。

【産業上の利用可能性】
【0044】
以上説明したように本発明のインモールドラベル付き薄肉容器は、ラベルの貼着に起因する容器の変形がなく、またエア溜りの発生がなく、さらにラベル端面を起点とした落下衝撃による割れが抑制されたものであり、インモールドラベルで高品位に外装した薄肉容器としてさまざまな用途での使用の展開が期待される。

【符号の説明】
【0045】
1 ;容器本体
2 ;胴部
2w;胴壁
11;ラベル
11e;(ラベルの)端部
12;基材フィルム層
13;印刷層
14;アンカーコート層
15;接着層
21;ダイス
22;パリソン
23;ブロー割型
24;減圧吸気路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂製の容器本体(1)の胴部(2)の周壁(2w)にブロー成形と同時にインモールドラベル(11)を貼着した薄肉容器であって、前記容器本体(1)の周壁(2w)の平均肉厚は0.8mm以下とし、前記インモールドラベル(11)は、基材フィルム層(12)の内側に、前記周壁(2w)に接着する接着層(15)を積層した層構成を有し、厚さを0.08mm以下とし、[ラベルの引張弾性率(MPa)]×[ラベルの厚さ(mm)]で算出されるA値を0.12以下としたことを特徴とするインモールドラベル付き薄肉容器。
【請求項2】
接着層(15)を容器本体(1)と同系統の合成樹脂を押出ラミネート法で0.005〜0.025mmの範囲の層厚に積層し、その後エンボス加工により凹凸を形成したものとした、請求項1記載のインモールドラベル付き薄肉容器。
【請求項3】
容器本体(1)をポリエチレン樹脂製とし、ラベル(11)を、ポリプロピレン樹脂無延伸フィルム製の基材フィルム層(12)に低密度ポリエチレン樹脂製の接着層(15)を押出ラミネート法により積層した構成とした請求項1または2記載のインモールドラベル付き薄肉容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−180096(P2012−180096A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−42349(P2011−42349)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】