説明

インモールド成形装置

【課題】加飾フィルムの位置決め精度の向上を図るのに効果的で、転写精度に優れたインモールド成形装置を提供することを目的とする。
【解決手段】可動型と固定型を上下に配置した樹脂射出成形装置と、その金型間を横方向に通過するように配設した加飾フィルム供給装置とを備え、加飾フィルム供給装置は、加飾フィルムを転写層が略水平方向になるように可動型と固定型との一方の間から供給し、他方の間から射出樹脂体とともに出てくる加飾フィルムを間欠的に巻き取るものであり、テンション付加装置は、射出成形型と供給リールとの間に配置するとともに、テンションアーム装置と、テンションアームの先に設けたテンションローラとを有し、テンションローラにて加飾フィルム面を押圧し、テンションアーム装置にてテンションアームのテンション角度を所定の範囲に制御するものであることを特徴とするインモールド成形装置とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂体の射出成形と同時に樹脂体の表面を加飾するインモールド成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インモールド成形は、射出成形と同時に加飾フィルムからロゴ等を印刷した転写層を樹脂体表面に転写する成形方法であるが、射出成形品の意匠性の向上を目的に転写性の高精度化に対する要求が増している。
インモールド成形用の樹脂射出成形装置としては、従来可動型と固定型を水平方向に配置した横締型を用い、加飾フィルムを上下縦方向に供給するものであった。
しかし、加飾フィルムを上下に配置すると、加飾フィルムを射出成形型の上から供給し、射出成形により加飾フィルムに付着した樹脂体とともに射出成形型の下に送り出すことになるため、加飾フィルムが樹脂体の重量により下方向に引張られた状態になる。
すると、樹脂体の有無、樹脂体の重量等により、この引張り力が変化することになり、また射出成形初めから連続成形に伴う温度変化も加わり、加飾フィルムの伸びにバラツキが生じ、転写位置決め精度が低かった。
この場合に図4に示すように横方向からテンションローラ113をバネ111等の弾性力を用いて加飾フィルム103の張力を調整する方法も考えられるが、加飾フィルムの伸び量変化まで弾性力の付加で調整するのは難しく、また弾性力では張力変化に対して所定の反復振動が生じる場合もあり、応答性が低かった。
特開2003−62869号公報には、加飾フィルムを横方向にテンションを付加しながら配置する技術を開示するが、フィルムに樹脂体を付着したまま型外に取り出すものでなく、仮に樹脂体を付着したまま取り出すと、フィルムに付着した樹脂体の重量が下方向に付加する点では上下方向にフィルムを配置する場合と同じである。
【0003】
【特許文献1】特開2003−62869号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記技術的課題に鑑みて、加飾フィルムの位置決め精度の向上を図るのに効果的で、転写精度に優れたインモールド成形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の技術的要旨は、可動型と固定型を上下に配置した竪締射出成形型を有する樹脂射出成形装置と、可動型と固定型の間を横方向に通過するように配設した加飾フィルム供給装置とを備え、加飾フィルム供給装置は、供給リールと巻取りリールとテンション付加装置とを有し、供給リールは所定の間隔毎に転写層を有する加飾フィルムを転写層が略水平方向になるように可動型と固定型との一方の間から供給するものであり、巻取りリールは可動型と固定型との他方の間から射出樹脂体とともに出てくる加飾フィルムを間欠的に巻き取るものであり、テンション付加装置は、射出成形型と供給リールとの間に配置するとともに、テンションアーム装置と、テンションアームの先に設けたテンションローラとを有し、テンションローラにて加飾フィルム面を押圧し、テンションアーム装置にてテンションアームのテンション角度を所定の範囲に制御するものであることを特徴とするインモールド成形装置とした点である。
【0006】
また、射出成形型と巻取りリールとの間に射出樹脂体が付着した加飾フィルムを略水平方向に支持する支持台を有し、支持台の巻取りリール側に設けた折返しエッジ部にて加飾フィルムに摩擦力を付加するとよい。
これにより加飾フィルムの下面側を支持台で支えることになり、搬送する樹脂体の重量による伸びを抑制する。
また、加飾フィルムが伸びる方向に樹脂体の重力が直接かからないため、温度変化による伸び量変化が少ない。
ここで、テンション付加装置とは加飾フィルムに所定のテンションを加えるもので、例えばテンションアーム装置を角度センサを備えた駆動軸に角度駆動自在にテンションアームを取り付けたものとして備え、そして、テンションアームの先端に取り付けたテンションローラと、制御部とを備えた構成とすることができる。
【0007】
巻取りリールと射出成形型の間に、加飾フィルムを鋭角状に折り返す折返しエッジ部を設けると、エッジ部に強い摩擦力が生じ、この折返しエッジ部とテンションローラとの間で張力調整ができるので、加飾フィルムの横ずれ、ねじれ、蛇行送りを防ぐ。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るインモールド成形装置は、可動型と固定型を上下に配置した竪型射出成形型の間を、転写層を略水平にして通すように配設して、加飾フィルムに付着させて搬送する樹脂体を支えるように支持台を備えたため、加飾フィルムに対する樹脂体重量の影響を抑制し、加飾フィルムで搬送する樹脂体の個数や、加飾フィルムの幅や厚みが変わった場合の加飾フィルムの伸びバラツキを防止できる。
これにより、加飾フィルムの転写層の位置決めを高精度に行える。
又、テンションアームの角度制御によるテンション付加装置を備えているため、ばね等の弾性力で加飾フィルム面を押圧する場合と比較して、反復振動を防止できる。
射出成形の型締め前にあっては、支持台のエッジ部とテンションローラとの間で加飾フィルムを張りながら供給することで転写層の位置を精度良く位置決め出来、型締め後は、型とテンションローラの間でテンションアームの角度にて強く張ることが出来るので、樹脂体の射出成形時に加飾フィルムが引き込まれるのを防止出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明に関するインモールド成形装置の実施の形態例の模式図を図1に示す。
インモールド成形装置20は、固定型(キャビティ型)31に対して、可動型(コア型)32が上下に移動する竪締射出成形型を備えた樹脂射出成形装置30を採用している。
成形装置30は固定型31と可動型32部分にてキャビティ33を形成し、溶融樹脂材料を可動型側のゲート34から射出する。
対象となる樹脂材料はアクリル樹脂、ポリカーボネート等特に限定されないが、シリコンゴム等のゴム材は除く。
固定型31と可動型32の間には帯状で、所定間隔毎に転写層3cを有する加飾フィルム3を横向きに、転写層が略水平方向となるように転写層3c面を上向きにして通過配置する。
加飾フィルム3は供給リール21と巻取りリール22との間にその下面を支持ローラ23及び支持台24で支えて張設している。
加飾フィルムはPET等広く採用されている材料でよく、樹脂体に転写する転写層はロゴや文字、模様等であり、保護膜であってもよい。
転写層3cは、基体フィルム3bとの境界の剥離層と、印刷層として樹脂製品を装飾する図柄層と、樹脂製品に図柄層を密着接合させる接着層とからなっていて、図ではわかりやすくするため極端に厚く描いてある。
固定型31と可動型32との間においてクランプ35により加飾フィルム3の挿入側と排出側の2箇所をクランプ可能としている。
この供給リール21と巻取りリール22とを備えた加飾フィルム供給装置は、テンション付加装置10を備えて加飾フィルム3の張力を調整して、加飾フィルム3を固定型31と可動型32の間の供給リール21側から通して、巻取りリール側に射出樹脂体2とともに間欠的に送り出す。
テンション付加装置10は、テンションアーム11aを駆動軸11bに角変位可能に連結しているテンションアーム装置11と、テンションアーム11aの先端に備えたテンションローラ12と、インモールド成形装置からの制御信号を受けてテンションアーム装置を角度制御する制御部(図示省略)より構成している。
テンション付加装置10は、射出成形型と供給リール21との間に配設し、加飾フィルム面3aをテンションローラ12で押圧することで、その張力を調整している。
この場合に加飾フィルム3を供給リール21と巻取りリール22にて順送りして、位置センサー26a、26bでこの転写層3cをキャビティ33内に正確に位置決めする。
そして、樹脂体2を射出成形した後は転写層3cを転写した樹脂製品1に基体フィルム3bを付着させた状態でそのまま金型外に順送りして製品を搬出する。
このように、金型内で基体フィルム3bと樹脂製品の引き剥がしを行わないことで、引き剥がしに伴ういわゆる箔カスと呼ばれる細かいカスが、キャビティ内に付着することを防止している。
製品1からの基体フィルム3bの引き剥がしは、製品1を支持台24のエッジ部25まで搬送した後にエッジ部25のエッジ形状を利用して行う。
このように、加飾フィルムを横向きに配設して、加飾フィルム下面を支持台24で支持しながら、製品1を基体フィルム上に載せて金型間から搬出する構造としていることから、製品1の重量による加飾フィルム3の伸びへの影響を抑制して、高い転写精度が得られ、又、製品の搬送個数や加飾フィルムが変更となった場合にも装置調整を簡単に行える。
また、このように支持台24で略水平状態に支持しながら製品1を基体フィルム3bに載せて搬送することで、エッジ部を利用しながらテンション付加装置により比較的強い張力を加飾フィルムに付加しても、安定して製品を搬送することが出来る。
【0010】
インモールド成形装置の動作について説明する。
図2(イ)(ロ)に示すように型開き状態において、先ず供給リール21と巻取りリール22とを駆動して加飾フィルム3の送り動作を行い、位置決めセンサー26a、26bで転写層3cをキャビティ33内に位置決めする。
そして、この時に図2(ハ)に示すように、テンションアーム11aの駆動軸11bを駆動して、角度Aから角度Bのように変位させ、位置決め出来る程度の張力を加飾フィルムに負荷する。
そして、クランプ35で加飾フィルム3をクランプする。
加飾フィルム3はエッジ部25にて鋭角状に折り返されているため、横すべり、蛇行送りを防止している。
特にエッジ部25においては、加飾フィルム3を副ローラー25eに向けて鋭角状に折返し、このエッジ部分を支点(起点)とする強い摩擦力を生じさせて、効果的に加飾フィルム3の幅方向のずれ防止している。
このように、加飾フィルムの支持ローラ等の支持部材に対するずれや、縁部分の反りを効果的に防止して、例えば転写層の印刷精度と加飾フィルムの位置決め精度を合わせた許容誤差を0.1mm以下とするような高精度な転写精度を得ることが出来る。
テンションアーム11aの応答は製品によって切り替えることで、製品毎の調整を簡単に行うことが出来る。
型締め後はテンションローラにより強く加飾フィルムを張り樹脂の射出による加飾フィルムの引き込みを防止し、図2(ニ)に示すように可動型32のゲート34からキャビティ内に溶融樹脂5を注入し射出成形する。
そして、樹脂体2の表面に、加飾フィルム3を転写層3cの部分で付着させ、図2(ホ)に示すように可動型32を上昇させて型開きし、製品1の表面と基体フィルム3bとを付着させたまま金型の横にそのまま順送りで搬出する。
そして、エッジ部25において、エッジ形状を利用して皮を剥くように鋭角に基体フィルム3bを製品1から引き剥がす。
エッジ部25においては、製品1から基体フィルム3bを引き剥がした直後に基体フィルム3bを製品のパスラインより下へもぐりこませる構造であるため、箔カスの飛散を効果的に防止する。
製品1は、基体フィルム3bを剥がす際に基体フィルム3bで送りながらベルトコンベアー(製品台)27上へ載せる。
このように、加飾フィルム(基体フィルム)を横方向に張設しているため、製品を次の工程に連続的に流しやすい。
また、水平送りなので人の作業も行いやすくなっている。
本発明は、このように樹脂体を射出成形すると同時に帯状の加飾フィルムにて樹脂体表面に加飾を施すものであれば、フィルムインサート成形に応用しても良い。
【0011】
図3は可動型側と固定型側の両方に加飾フィルムを備えたインモールド成形装置の形態例の模式図を示す。
固定型側の加飾フィルム3と可動型側の加飾フィルム4とは、供給リール21、21aと巻取りリール22、22a間にそれぞれ張設し、テンション付加装置10、10a、位置決めセンサー26a、26b、26c、26dをそれぞれ備えている。
固定型側の加飾フィルム3は小径ローラ25cと副ローラ25dで加飾フィルム3を鋭角状に折り返すエッジ部25aを形成し、一方可動型側加飾フィルム4は2つのローラ25f、25gで鋭角状に加飾フィルム3を折り返してエッジ部25bを形成している。
可動型側の加飾フィルム4は供給リール21aや巻取りリール22aやテンション付加装置10a等が可動型32aと同時に上下する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係るインモールド成形装置の縦断面の模式図を示す。
【図2】インモールド成形装置の装置動作の説明図を示す。
【図3】本発明に関する両面インモールド成形装置の縦断面の模式図を示す。
【図4】ばねの弾性力により加飾フィルム面を押圧する構造の説明図を示す。
【符号の説明】
【0013】
1、1a 製品
2 射出樹脂体
3、4 加飾フィルム
3a 加飾フィルム面
3b 基体フィルム
3c 転写層
5 溶融樹脂
10、10a テンション付加装置
11 テンションアーム装置
11a テンションアーム
11b 駆動軸
11c 角度センサー
12 テンションローラ
20、20a インモールド成形装置
21、21a 供給リール
22、22a 巻き取りリール
23 支持ローラ(支持部材)
24 支持台(支持部材)
25、25a、25b 折返しエッジ部
25c エッジ部小径ローラ
25d、25e エッジ部副ローラ
25f、25g エッジ部ローラ
26a、26b、26c、26d 位置センサー
27 ベルトコンベア
30、30a 竪型成形機
31、31a 固定型
32、32a 可動型
33 キャビティ
34 ゲート
35 クランプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動型と固定型を上下に配置した竪締射出成形型を有する樹脂射出成形装置と、可動型と固定型の間を横方向に通過するように配設した加飾フィルム供給装置とを備え、
加飾フィルム供給装置は、供給リールと巻取りリールとテンション付加装置とを有し、
供給リールは所定の間隔毎に転写層を有する加飾フィルムを転写層が略水平方向になるように可動型と固定型との一方の間から供給するものであり、
巻取りリールは可動型と固定型との他方の間から射出樹脂体とともに出てくる加飾フィルムを間欠的に巻き取るものであり、
テンション付加装置は、射出成形型と供給リールとの間に配置するとともに、テンションアーム装置と、テンションアームの先に設けたテンションローラとを有し、テンションローラにて加飾フィルム面を押圧し、テンションアーム装置にてテンションアームのテンション角度を所定の範囲に制御するものであることを特徴とするインモールド成形装置。
【請求項2】
射出成形型と巻取りリールとの間に射出樹脂体が付着した加飾フィルムを略水平方向に支持する支持台を有し、支持台の巻取りリール側に設けた折返しエッジ部にて加飾フィルムに摩擦力を付加することを特徴とする請求項1記載のインモールド成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−289660(P2006−289660A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−110168(P2005−110168)
【出願日】平成17年4月6日(2005.4.6)
【出願人】(000132932)株式会社タカギセイコー (29)
【Fターム(参考)】