説明

インライン成形・無菌充填工場施設

【課題】 インライン成形・無菌充填工場施設に成形材料を搬入することに伴ってクリーンルームの清浄度が阻害される可能性を低減する。
【解決手段】 工場施設1には、シャッター付きの入口10を備えた入庫室3、保管室4、クリーンルームの製品製造室5などを有する。入庫室3と保管室4は第1のエアシャワー室13を通じて連絡され、保管室4と製品製造室5は第2のエアシャワー室20を通じて連絡されている。保管室4は1週間分のコンテナを保管できる容量を有し、空調機15によって恒温、恒湿及び一定の清浄度が維持される。入庫室3に搬入されたコンテナは、第1のエアシャワー室13を通過する第1のローラコンベア14で保管室4に搬入される。保管室4内のコンテナは第2のエアシャワー室20を通過する第2のローラコンベア22によって製品製造室5に搬入される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック容器に内容物を充填する無菌充填工場施設に関し、より詳しくは、工場施設内で、容器を成形し、次いで内容物を充填して製品を作るインライン成形・無菌充填の工場施設に関する。
【背景技術】
【0002】
ミネラルウオーター、清涼飲料水、緑茶、紅茶、コーヒーなどをプラスチックボトル(典型的にはPETボトル)に充填して消費者に提供する飲料メーカは、プラスチックボトルの成形と内容物の充填とを連続した工程で行うインライン成形・無菌充填ラインを導入する動きがある(特許文献1、2)。このようなインライン成形・充填に対応するため、包材メーカは、数多くのプリフォームをコンテナに収容して飲料メーカに供給することを検討している(特許文献3)。
【0003】
実際にインライン成形・充填ラインを導入した飲料メーカは、究極的にはプラスチック原料から容器を作る願望を持っているものの、現状では、包材メーカからプリフォームの供給を受けて、このプリフォームから容器を作るのが現実的であることから、包材メーカから納入されるプリフォーム入りコンテナを保管するために、インライン成形・無菌充填ラインを設置した工場施設とは別棟の倉庫を用意して、この倉庫でプリフォーム入りコンテナを保管するようにしている。
【0004】
言うまでもないことであるが、飲料などの製造メーカは、無菌状態で、容器の成形及び内容物の充填を行うことが求められているため、インライン成形・無菌充填ラインを設置した工場施設は全体的にクリーンルーム化され、また、陽圧に維持されて、外部から遮断した状態に保たれる。
【特許文献1】特開2000−85001号公報
【特許文献2】特開2001−212874号公報
【特許文献3】特開2000−326935号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
インライン成形・無菌充填工場施設は、前述したように、全体的にクリーンルーム化されているため、この工場施設内に原料を搬入するときには細心の注意が必要となる。
【0006】
ところで、インライン成形・無菌充填工場施設で例えばプリフォームからボトルを成形する場合、プリフォームの含水率はボトル成形に影響を及ぼすことが知られており、特に、プラスチックボトルの肉厚を薄く設計したときには、プリフォームの含水率を一定に維持することが不良品発生率を抑えるのに効果的である。
【0007】
本発明の目的は、インライン成形・無菌充填工場施設に成形材料を搬入する際の入庫管理つまり成形材料の搬入に伴ってクリーンルームの清浄度が阻害される可能性を低減することのできるインライン成形・無菌充填工場施設を提供することにある。
【0008】
本発明の更なる目的は、クリーンルームの清浄度の維持管理を容易化しつつ、クリーンルームへの成形材料の供給管理を容易化することのできるインライン成形・無菌充填工場施設を提供することにある。
【0009】
本発明の更なる目的は、インライン成形・無菌充填工場施設の設置コストや維持管理コストを増加させることなく、クリーンルームの清浄度の維持管理が容易であり且つ作業員の労力及び人数を減らすことのできるインライン成形・無菌充填工場施設を提供することにある。
【0010】
本発明の更なる目的は、包材メーカからプリフォームの供給を受けて、このプリフォームから容器を製造し且つこの容器に内容物を充填するインライン成形・無菌充填工場施設に関し、プリフォームの含水率の管理を徹底することで成形不良の発生率を低減することのできるインライン成形・無菌充填施設を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる技術的課題は、本発明の第1の観点によれば、
成型機を使って容器を成形し且つ該容器に内容物を充填して製品を製造するインライン成形及び充填ラインを設置したクリーンルームを備え、内部が陽圧に維持されるインライン成形・無菌充填工場施設であって、
前記クリーンルームに隣接して配置され、外部から前記容器の成形材料の搬入を受け入れて、該成形材料を保管し、必要に応じて前記クリーンルームに前記成形材料を供給するための保管室と、
該保管室を前記クリーンルームから隔絶する隔壁と、
前記保管室と外部とを連絡するための第1のエアシャワー室と、
前記保管室と前記クリーンルームとを連絡するための第2のエアシャワー室とを有し、
前記保管室がフィルタ付きの空調機によって恒温及び恒湿並びに一定の清浄度に維持されることを特徴とするインライン成形・無菌充填工場施設を提供することにより達成される。
【0012】
また、上述した技術的課題は、本発明の第2の観点によれば、、
成型機を使って容器を成形し且つ該容器に内容物を充填して製品を製造するインライン成形及び充填ラインを設置したクリーンルームを備え、内部が陽圧に維持されるインライン成形・無菌充填工場施設であって、
外部から前記容器の成形材料の搬入を受け入れるための入庫室と、
前記クリーンルームに隣接して配置され、前記入庫室から前記成形材料を受け入れて該成形材料を保管し、必要に応じて前記クリーンルームに前記成形材料を供給するための保管室と、
前記保管室を前記入庫室及び前記クリーンルームから夫々隔絶する隔壁と、
前記入庫室と前記保管室とを連絡するための第1のエアシャワー室と、
前記保管室と前記クリーンルームとを連絡するための第2のエアシャワー室とを有し、
前記保管室がフィルタ付きの空調機によって恒温及び恒湿並びに一定の清浄度に維持されることを特徴とするインライン成形・無菌充填工場施設を提供することにより達成される。
【0013】
すなわち、本発明は、インライン成形・無菌充填工場施設の内部に、クリーンルームに隣接して実質的に倉庫と呼ぶことのできる保管室を設置した点に第1の特徴を有する。この倉庫と呼べる保管室はクリーンルームではないため比較的安価に設置することができる。換言すれば、インライン成形・無菌充填工場施設のクリーンルームの一部に原料倉庫の機能を与えたエリアを設置した場合、高コストのクリーンルームの容積が大幅に大きくなってしまい、インライン成形・無菌充填工場施設を作るためのコスト及び維持管理コストが大幅に増大してしまう。このことから、このコスト上昇を抑えるために、クリーンルーム内の原料保管エリアは制限的なものにならざるを得ず、したがって、クリーンルームで保管する成形材料の量も限定的なものとなってしまい、これを補充するための作業の頻度が高くならざるを得ない。
【0014】
これに対して、本発明の第1の特徴によれば、インライン成形・無菌充填工場施設の内部に、クリーンルームに隣接して倉庫と呼べるエリアを設置したとしても、これはクリーンルームではないため、インライン成形・無菌充填工場施設を作るためのコストや維持管理コストが大幅に増大することを抑えることができる。したがって、保管室の容積の設定も比較的自在であり、この保管庫の容積を充分に大きすることで保管庫に成形材料を補充するための作業の頻度を下げることができるという自由度がある。
【0015】
本発明の第2の特徴は、互いに隣接した保管室とクリーンルームとを隔壁によって隔絶し、保管室を空調機を使って恒温恒湿に維持するだけでなく、空調機のフィルタによって保管室を清浄に保つようにしたことにある。これにより、外部とクリーンルームとの間に、オープンエリアなどの汚染ゾーンに比べて比較にならないほど清浄な状態のバッファゾーンが介在することになる。
【0016】
恒温、恒湿の保管庫で保管される過程で、成形材料は、その含水率が一定になることから、クリーンルームでの容器の成形で不良品が発生する率を低減することができ、これに伴う工場施設の生産能力の低下を防止することができる。
【0017】
本発明の第3の特徴は、保管室と外部との間を第1のエアシャワー室を介して連絡したことにある。変形例として、保管室と、外部から成形材料を受け入れる入庫室との間を隔壁によって隔絶し、保管室と入庫室との間を第1のエアシャワー室を介して連絡してもよい。この第3の特徴により、オープンエリアの外部又は汚染ゾーンと呼べる入庫室から保管室へ成形材料を搬入する過程で通過する第1のエアシャワー室によって、成形材料を媒体として汚染物が保管室に侵入するのを阻止することができる。
【0018】
本発明の第4の特徴は、保管室とクリーンルームとを第2のエアシャワー室を介して連絡したことにある。この第4の特徴により、クリーンルームに比べて清浄度の低いとは言え、保管室も一定の清浄度が維持されていることから、保管室からクリーンルームに成形材料を搬入する過程で通過する第2のエアシャワー室によって、成形材料を媒体として汚染物が保管室に侵入するのを確実に阻止することができる。より詳しく説明すると、この成形材料は、既に、保管室に搬入される過程で第1のエアシャワー室により汚染物が除去されており、更にその上、クリーンルームに入る段階で第2のエアシャワー室によって2重の浄化が行われることになる。つまり、汚染物が成形材料を媒体としてクリーンルームに侵入する可能性に対して、本発明の工場施設は、第1、第2のエアシャワー室による2重のバリアが設けられている。
【0019】
叙上のように、本発明の第1〜第4の特徴により、クリーンルームに隣接した保管室を、成形材料をクリーンルームに搬入する過程でのバッファゾーンとして機能させることができ、したがって、インライン成形・無菌充填工場施設に成形材料を搬入する際の入庫管理つまり成形材料の搬入に伴ってクリーンルームの清浄度が阻害される可能性を低減することができる。また、本発明によれば、クリーンルームに隣接した保管室に大量の成形材料を保管しておくことで、クリーンルームへの成形材料の供給管理を容易化することができる。また、クリーンルームに隣接した保管室は、設置コスト及び維持管理コストが比較的低く、このことから保管室の容積を充分に大きくして、この保管室に格納する成形材料の量を例えば3日分〜1週間分というように大量の成形材料を保管することで、この保管室への成形材料の補充の頻度を下げることができる。したがって、保管室の容積が大きいほど、上述したクリーンルームの清浄度の維持管理が益々楽になるだけでなく、保管室の恒温、恒湿並びに清浄度の維持管理を容易化でき、日常的に作業員が補充作業を行う必要がないため、補充作業に伴う人員コストも下げることができる。
【0020】
保管室に自動制御の搬送手段を設け、保管室内部での成形材料の移動を全自動化して無人化するのがよい。これによれば、保管室での作業要員が不要になるだけなく、作業員が媒体となって汚染物が保管室に侵入する可能性が無くなるため、保管室の清浄度の維持管理を容易化できる。
【0021】
本発明の好ましい実施の形態によれば、外部と保管室との間の連絡又は入庫室と保管室との間の連絡が第1のエアシャワー室を通過する第1のコンベアによって行われ、また、保管室からクリーンルームとの間の連絡が第2のエアシャワー室を通過する第2のコンベアによって行われる。これによれば、外部から搬入された成形材料を第1のコンベアに載せて保管室まで搬入することができ、また、保管室で保管されている成形材料を自動搬送手段によって第2のコンベアに載せることでクリーンルームに搬入することができるため、これらの作業に必要とされる作業員の人数や労力を低減することができる。
【0022】
本発明の好ましい実施の形態のインライン成形・無菌充填工場施設では、包材メーカから供給されたプリフォームを使ってプラスチック容器が成形される。このプリフォームは包材メーカからコンテナに収容した状態で供給される。したがって、保管室では、コンテナに入れた状態でプリフォームが取り扱われる。このコンテナの開梱作業をクリーンルーム内で行うことで、プリフォームの汚染を防止することができる。この開梱作業は、上述した第2のコンベアの下流端に隣接したエリアで行うようにすれば、第2のコンベアで搬入されたコンテナを直ちに開梱することができるため、クリーンルーム内で作業員がコンテナを運ぶ手間を省くことができる。勿論、成型機にプリフォームを供給するための供給機を開梱エリアに隣接して配置するのが好ましい。
【0023】
本発明は、例えばインライン成形・無菌充填工場施設1を地上階とその上の二階を含む建物で構成し、二階にクリーンルームを設け、保管室4を、入庫室3が設けられた地上階から二階まで連続した内部空間を有するようにしてもよい。このように、保管室4を地上階から二階まで連続させることで保管室4の内部空間を拡大させることができるため、比較的小さな敷地占有面積であっても大量のコンテナを収容することができ大容量の保管室4を作ることができる。また、地上階の入庫室3と二階のクリーンルーム(製品製造室5)とは二階のフロアが隔壁となるため、これらの間に特別な隔壁を設ける必要は無い。
【0024】
また、インライン成形・無菌充填工場施設1を設計するに際し、入庫室3を実質的に省いてもよい。図4は、入庫室3を省いたインライン成形・無菌充填工場施設100の設計を例示するものである。この施設100にあっては、シャッター付きの入口10に臨んで第1のエアシャワー室13が設けられている。入口10で第1のローラコンベア14に搭載されたコンテナは第1のエアシャワー室13を通じて保管室4に搬入される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下に、添付の図面に基づいて本発明の実施例を説明する。
【0026】
図1の参照符号1はインライン成形及び無菌充填工場施設を示す。工場施設1の内部で、成型機によりプラスチック容器を作ると共にこの容器に内容物の充填して製品を作り、次いで、製品を梱包して出荷する一連の工程が行われる。具体的には、工場施設1は、ミネラルウオーターを対象にしたインライン成型・無菌充填を行う施設であり、工場施設1の内部では、原材料のプリフォームからプラスチックボトルを成形し、このプラスチックボトルにミネラルウオーターを充填して、これを出荷するまでの一連の工程が行われる。
【0027】
工場施設1の内部は、部屋を画成するための隔壁2によって、入庫室3、保管室4、製品製造室5、梱包室6、出荷室7が形成され、また、蒸気及び加圧エアを生成するための室8が形成されている。なお、蒸気及び加圧エアを生成するための室8を工場施設1から切り離して、別の工場施設内に設置してもよい。
【0028】
工場施設1の内部は陽圧状態つまり外気よりも高い圧力状態に維持されて、外部から隔絶した状態に維持されている。工場施設1は、その一端側のシャッター付きの入口10と、他端側のシャッター付きの出口11とを有し、入口10を通じて原料を工場施設1の内部まで搬入し、出口11を通じて製品出荷される。入口10及び出口11は、原料の搬入及び製品の出荷のときだけシャッタを開け、常時はシャッタで閉じられている。上述した各部屋3〜7は、製品の流れに対応して、入口10から出口11に向けて入庫室3、保管室4、製品製造室5、梱包室6、出荷室7の順で配置されている。
【0029】
PETボトル成形用のプリフォームは、これを製造する包材メーカからコンテナに収容した状態で納品される。より具体的には、コンテナの中には、プラスチック袋で梱包された所定数のプリフォームが収容されている。
【0030】
ボトルの原料として包材メーカから搬入されるプリフォーム入りコンテナなどは、図2に示すように、敷地内の別棟の原料貯蔵倉庫12で保管され、この貯蔵倉庫12から、必要な個数のコンテナをフォークリフトなどの場内車両を使って工場施設1の入口10まで運ばれる。勿論のことであるが、図2に一点鎖線で示すように、包材メーカから運ばれて来るコンテナを原料貯蔵倉庫12を介在させることなく、直接的に、入口10まで運び込むようにしてもよい。
【0031】
入庫室3と保管室4とは第1のエアシャワー室13によって隔絶され、入庫室3と保管室4とは第1のエアシャワー室13を通過する第1のローラコンベア14によって連絡されている。入口10まで運び込まれたコンテナは第1のローラコンベア14に搭載される。すなわち第1のローラコンベア14の上流端は、入口10の近傍まで延びており、第1のローラコンベア14に搭載されたコンテナは、第1のローラコンベア14によって保管室4に搬入される過程で第1のエアシャワー室13で浄化される。これにより、コンテナを媒体として汚染物が保管室4の内部に運び込まれることが阻止される。
【0032】
保管室4は、その附帯施設として空調機15を有し、空調機15は、保管室4内のエアを吸引配管16を通じて取込み、温度及び湿度を調整した後のエアを放出配管17を通じて保管室4に還流することにより、保管室4の内部の温度及び湿度を一定に管理する。吸引配管16、放出配管17の少なくとも一方にフィルタ18、19が介装されている。このフィルタ18、19は任意の濾過度のフィルタを設置することができる。このフィルタ18、19で浄化したエアは、常時、保管室4に供給され、これにより保管室4は、恒温、恒湿に維持されるだけでなく清浄度も維持される。
【0033】
保管室4は、その容積が、3日分〜1週間分のプリフォーム入りコンテナを保管できるように設定され、したがって、この保管室4には、数日間隔で入庫室3からコンテナが補充される。保管室4に搬入されたコンテナは自動制御のクレーンなどの自動制御搬送手段を使って固定棚に格納される。すなわち、保管室4は無人化されている。
【0034】
製品製造室5は高いレベルの清浄度に維持された、いわゆるクリーンルームである。保管室4と製品製造室5とは第2のエアシャワー室20によって隔絶され、保管室4と製品製造室5とは、第2のエアシャワー室20を通過する第2のローラコンベア22によって連結されている。保管室4内のコンテナは固定棚から自動制御クレーンによって運び出され、第2のローラコンベア22に移載されて、この第2のローラコンベア22によって製品製造室5に搬入される。
【0035】
製品製造室5は、ボトル成形ラインを設置した第1空間25、ボトル洗浄ライン及びPETボトルに内容物のミネラルウオーターを充填するラインを設置した第2空間26がパーティション27で仕切られている。なお、第1空間25は、クラス10万の清浄度に維持され、第2空間26はクラス1万の清浄度に維持される。
【0036】
キャップで密封したミネラルウオーター入りPETボトルは、製品製造室5と梱包室6との間の隔壁2に設けられた窓28を通じて梱包室6に搬入され、この梱包室6で段ボール箱に詰められた後に、パレットに積まれて梱包室6から出荷室7に搬出され、出荷室7から出口11を通じて出荷される。
【0037】
梱包室6は中レベルの清浄度に保たれた準クリーンルームであり、この梱包室6は次の出荷室7と第3のエアカーテン29を介して隔絶され、これにより梱包室6の清浄度が維持される。梱包室6と出荷室7は、第3のエアカーテン29を通過する第3のローラコンベア30によって連結されており、ミネラルウオーター入りPETボトルを箱詰めにした段ボール箱はパレットに積まれて出荷室7に搬入される。
【0038】
図3は、製品製造室5内での製品の流れを示す。保管室4内のコンテナは、第2のローラコンベア22により第2のエアシャワー室20を通じて製品製造室5に搬入される。第2のローラコンベア22の下流端は、第2のエアシャワー室20の出口近傍つまりボトル成形ラインを設置した第1空間25に設定されており、ボトル成形ラインを設置した第1空間25に搬入されたコンテナは、第2のエアシャワー室20に隣接した開梱エリアで、コンテナに収容されているプリフォームが作業員により取り出される。開梱エリアに隣接して、プリフォーム供給エリアが設けられており、コンテナから取り出したプリフォームは、プリフォーム供給装置を介して成型エリアのブロー成型機に供給される。
【0039】
このプリフォーム供給から後の工程は、従来と同様に、一連の搬送ラインで接続されている。ブロー成型機は、ブロー成型法によってプリフォームからPETボトルを成形し、成形後のPETボトルは、所定の本数のPETボトルを蓄積した状態を作るアキュムレートエリアを介してボトル洗浄エリアに運ばれて洗浄される。このアキュムレートエリアが介在していることにより、ブロー成型機が成形できる能力と、その後のラインの処理能力との調整を行うことができ、ボトル成形エリアの後の工程、PETボトルが互いに連なった状態で移動する。すなわち、成形後のPETボトルは、次々と次の第2空間26に移動して、この第2空間で洗浄後、内容物のミネラルウオーターが充填され、次にキャップで密封されるなど連続的に従来と同様の工程を経て梱包室6まで移動して、この梱包室6でミネラルウオーター入りPETボトルが前述したように箱詰めされる。
【0040】
上述した実施例の工場施設1つまりインライン成型・無菌充填施設によれば、プリフォーム入りのコンテナを保管する倉庫として機能する保管室4を工場施設1の内部に設置したことから、コンテナを保管室4から外気に触れることなく直接的に製品製造室5に搬入することができる。
【0041】
保管室4は、前述したように、空調機15によって恒温恒湿に維持されているだけでなく、入庫室3とは第1のエアシャワー室13によって隔絶された状態で、空調機15の濾過エアの循環によって清浄度も維持されていることから、保管室4を通じて汚染物が製品製造室5に侵入する可能性は極めて小さく、したがって製品製造室5の高レベルの清浄度の維持管理が容易になる。
【0042】
また、保管室4は空調機15によって恒温恒湿に維持されていることから、この保管室4内で数日間保管する過程でコンテナの中のプリフォームの含水率を一定にすることができる。そして、この含水率が一定のプリフォームを使ってブロー成形することができるため、含水率の変動に伴う成形不良の発生を防止することができ、一定品質のPETボトルを製造することができる。したがって、成形不良の発生に伴う工場施設1内部の混乱、つまり充填ラインの動作停止などの問題発生の確率を低下させることができ、これにより工場施設1内部での生産効率の低下を防止することができる。
【0043】
図1を参照した叙上の説明は、工場施設1が一階建てであるか、二階建て又は複数階を備えているかは問わない。例えば、二階建てであれば、入庫室3を地上階に設置し、クリーンルームである製品製造室5などを二階に設置し、保管室4の内部空間を一階から二階まで連続させるのがよい。この場合、汚染源となり易いコンプレッサやボイラなどを設置した室8を一階に設けるのが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】実施例のインライン成形・無菌充填工場施設の概要を示す図である。
【図2】インライン成形・無菌充填工場施設を設置した敷地内でボトルの原料を場内フォークリフトで搬送することを説明するための図である。
【図3】図1のインライン成形・無菌充填工場施設のクリーンルームで行うPETボトルの成形及び洗浄工程の手順及びプリフォーム及びボトルの流れに従って順に配置された各エリアを説明するための図である。
【図4】変形例のインライン成形・無菌充填工場施設の概要を示す図である。
【符号の説明】
【0045】
1 インライン成形・無菌充填工場施設
2 部屋を画成するための隔壁
3 入庫室
4 保管室
5 製品製造室
10 入庫室の入口
12 別棟の原料貯蔵倉庫
13 入庫室と保管室との間の第1のエアシャワー室
14 第1のエアシャワー室を通るローラコンベア
15 空調機
16 エア吸引配管
17 エア放出配管
18、19 フィルタ
20 保管室と製品製造室との間の第2のエアシャワー室
22 第2のエアシャワー室を通るローラコンベア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成型機を使って容器を成形し且つ該容器に内容物を充填して製品を製造するインライン成形及び充填ラインを設置したクリーンルームを備え、内部が陽圧に維持されるインライン成形・無菌充填工場施設であって、
前記クリーンルームに隣接して配置され、外部から前記容器の成形材料の搬入を受け入れて、該成形材料を保管し、必要に応じて前記クリーンルームに前記成形材料を供給するための保管室と、
該保管室を前記クリーンルームから隔絶する隔壁と、
前記保管室と外部とを連絡するための第1のエアシャワー室と、
前記保管室と前記クリーンルームとを連絡するための第2のエアシャワー室とを有し、
前記保管室がフィルタ付きの空調機によって恒温及び恒湿並びに一定の清浄度に維持されることを特徴とするインライン成形・無菌充填工場施設。
【請求項2】
成型機を使って容器を成形し且つ該容器に内容物を充填して製品を製造するインライン成形及び充填ラインを設置したクリーンルームを備え、内部が陽圧に維持されるインライン成形・無菌充填工場施設であって、
外部から前記容器の成形材料の搬入を受け入れるための入庫室と、
前記クリーンルームに隣接して配置され、前記入庫室から前記成形材料を受け入れて該成形材料を保管し、必要に応じて前記クリーンルームに前記成形材料を供給するための保管室と、
前記保管室を前記入庫室及び前記クリーンルームから夫々隔絶する隔壁と、
前記入庫室と前記保管室とを連絡するための第1のエアシャワー室と、
前記保管室と前記クリーンルームとを連絡するための第2のエアシャワー室とを有し、
前記保管室がフィルタ付きの空調機によって恒温及び恒湿並びに一定の清浄度に維持されることを特徴とするインライン成形・無菌充填工場施設。
【請求項3】
第1のエアシャワー室を通過する第1のコンベアを更に有し、該第1のコンベアによって前記成形材料が前記入庫室から前記保管室に搬入される、請求項2に記載のインライン成形・無菌充填工場施設。
【請求項4】
第2のエアシャワー室を通過する第2のコンベアを更に有し、該第2のコンベアによって前記成形材料が前記保管室から前記クリーンルームに搬入される、請求項2又は3に記載のインライン成形・無菌充填工場施設。
【請求項5】
前記保管室が無人化され、自動制御の搬送手段により前記成形材料の移動が行われる、請求項4に記載のインライン成形・無菌充填工場施設。
【請求項6】
前記入庫室の入口がシャッタにより開閉可能であり、前記成形材料を搬入するときに前記シャッタが開放される、請求項5に記載のインライン成形・無菌充填工場施設。
【請求項7】
前記成形材料が、プラスチックボトル用のプリフォームであり、該プリフォームがコンテナに収容された状態で前記入庫室に搬入され、また、前記保管室で保管される、請求項2〜6のいずれか一項に記載のインライン成形・無菌充填工場施設。
【請求項8】
前記コンテナを開梱する開梱エリアが前記クリーンルーム内に設けられ、該開梱エリアが前記第2のコンベアに隣接して配置されている、請求項7に記載のインライン成形・無菌充填工場施設。
【請求項9】
前記インライン成形・無菌充填工場施設が少なくとも地上階とその上の二階とを有し、前記クリーンルームが二階に設けられ、前記保管室が、前記入庫室が設けられた地上階から二階まで連続した内部空間を有する、請求項2〜8のいずれか一項に記載のインライン成形・無菌充填工場施設。
【請求項10】
前記クリーンルームでは、該クリーンルームで成形したプラスチックボトルに液体が充填される、請求項9に記載のインライン成形・無菌充填工場施設。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−52873(P2006−52873A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−233455(P2004−233455)
【出願日】平成16年8月10日(2004.8.10)
【出願人】(000111487)ハウス食品株式会社 (262)
【Fターム(参考)】