説明

インラインX線透視目視検査装置

【課題】オペレータが被検査物のX線透視像を目視で観察して、その被検査物の合否判定を行う装置において、不合格品が頻発する状態になっても処理レートが殆ど低下することがなく、しかも、不合格品が合格品として流出するこ恐れのないインラインX線透視目視検査装置を提供する。
【解決手段】X線発生装置2とX線ラインセンサ3よりも搬送方向下流側に振り分け装置9を配置し、オペレータの合否判定結果を入力する入力手段8による入力歩手用に基づき、その入力がなされた対象である被検査物Wが振り分け装置9の配設位置に搬送されるタイミングと合わせて当該振り分け装置9に対して駆動制御信号を供給することにより、オペレータによる合否判定の入力操作が種々に変化しても、該当の被検査物Wが合否判定結果に応じて振り分け装置9により確実に振り分けられることを可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線発生装置とX線ラインセンサの間を、コンベア等の搬送装置により検査物を順次通過させ、その際に得られるX線透過データを用いて被検査物のX線透視像を表示器に表示するインラインX線透視検査装置に関し、更に詳しくは、表示器に表示された被検査物のX線透視像をオペレータが目視検査して合否判定を行うインラインX線透視目視検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線発生装置とX線ラインセンサを対向させ、これらの間で被検査物をコンベア等の搬送装置で順次搬送し、被検査物がX線発生装置とX線ラインセンサの間を通過する際に得られるX線透過データを用いて、被検査物のX線透視像を構築して表示器に表示する装置が知られている。
【0003】
この種の装置においては、被検査物がX線ラインセンサを完全に通過し終わるまで、つまり被検査物の全体の透視像を表示することのできるX線透過データが揃うまで、X線ラインセンサの出力をメモリに蓄えた後、被検査物の静止画像を表示器に表示する方式が多用されている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
被検査物のX線透視像から、その合否を判定する手法として、X線透視像を画像処理し、トレース検出方式や2値化方式、あるいはマスクを用いた2値化方式などにより自動的に判定する手法が採用される(例えば前記特許文献1参照)ほか、被検査物の種類によっては、このような自動判定が極めて困難であるか、あるいはこのような自動判定では見逃す可能性のある合否判定をする必要がある場合があり、このような場合には、オペレータによるX線透視像の目視による合否判定方式が採用される。
【0005】
ここで、各種自動判定方式を採用した装置においては、例えばX線発生装置とX線ラインセンサの配設位置よりも搬送装置による搬送方向下流側に振り分け装置を設け、その振り分け装置に対して、搬送装置による被検査物の搬送速度との関連において一定のタイミングで判定結果に基づく駆動制御信号を自動的に供給する構成が多用されている。
【0006】
しかしながら、X線透視像をオペレータが目視観察して合否判定を行う装置では、被検査物がX線発生装置とX線ラインセンサの位置を通過してその全体のX線透視像が構築されて表示された後、オペレータが合否判定を下すまでの時間が一定でないこともあって、上記の自動判定方式のように振り分け装置を設けて、その振り分け装置に対して判定結果に基づいた駆動制御信号を供給することは、誤った振り分けをする可能性もあることから採用しにくく、実際には、この種のオペレータによるX線透視像の目視判定を行う装置では、不合格品を見つけたら、装置の停止ボタンをおして装置の運転を停止させ、その不合格品を取り除くという方法が多用されている。
【特許文献1】特開2006−71423号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、X線透視像を観察してオペレータが合否判定を下す方式の上記した従来の検査装置においては、不合格品が到来するごとに装置を停止する必要がある。この装置の停止に際しては、搬送装置の停止のみならず、X線照射を停止しなければならず、また、再運転する前にX線防護箱を開いて不合格品の取り出し・再度防護箱を閉じるという操作を引き続いて行う必要がある。不合格品が頻発する状況となると、装置の運転停止と再運転に相当の時間を必要とし、処理レートが大幅に低下するという問題があった。
【0008】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたもので、オペレータが被検査物のX線透視像を目視で観察して、その被検査物の合否判定を行う装置において、不合格品が頻発する状況になっても処理レートが殆ど低下することがなく、しかも、不合格品を合格品として流出させる恐れのないインラインX線透視目視検査装置の提供をその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明のインラインX線透視目視検査装置は、互いに対向配置されたX線発生装置およびX線ラインセンサと、これらのX線発生装置とX線ラインセンサの間で被検査物を搬送する搬送装置と、その搬送装置により被検査物が上記X線発生装置とX線ラインセンサの間を通過する際に取り込んだX線透過データを用いて、被検査物のX線透視像を構築して表示器に表示する表示手段を備えたインラインX線透視目視検査装置において、上記表示器に表示された被検査物の透視像の目視によるオペレータの合否判定結果を入力するための入力手段と、上記X線発生装置とX線ラインセンサの配設位置よりも上記搬送装置による搬送方向下流側に配設され、被検査物を合格/不合格のいずれかに振り分ける振り分け装置と、上記入力手段による入力内容に基づき、その入力がなされた対象である被検査物が上記振り分け装置の配設位置に搬送されるタイミングと合わせて当該振り分け装置に対して駆動制御信号を供給する制御手段を備えていることによって特徴づけられる(請求項1)。
【0010】
ここで、本発明においては、上記入力手段は、合格の旨を入力する手段のみからなり、上記振り分け装置は、常時不合格側に位置しているとともに、上記制御手段は、上記入力手段から合格の旨の入力があった場合に限り、上記振り分け装置を合格側に駆動する構成(請求項2)を採用することができる。
【0011】
また、本発明においては、上記制御手段は、上記表示器に被検査物の透視像が表示された後、規定の期間内に上記入力手段から合格の入力があった場合に限り、上記振り分け装置を合格側に駆動する構成(請求項3)を好適に採用することができる。
更に、本発明は、上記した振り分け装置に代えて、被検査物に合格/不合格のいずれかのラベルを貼るか、あるいはマークを付する識別情報付与装置を配置(請求項4)してもよい。
【0012】
この場合においても、表示器に被検査物の透視像が表示された後、規定の期間内に入力手段からの合格の入力があった場合に限り、識別情報付与装置に対して合格情報を被検査物に付与する旨の駆動制御信号を供給するように構成すること(請求項5)が望ましい。
【0013】
本発明は、被検査物のX線透視像をオペレータが目視観察により、その合否判定を行うタイプのインラインX線透視目視検査装置において、オペレータの合否判定のための操作が(入力)のタイミングが種々に変化しても、該当の被検査物が振り分け装置もしくは識別情報付与装置を通過するタイミングで当該振り分け装置もしくは識別情報付与装置を駆動制御することで、オペレータによる目視判定を行う装置において振り分け装置ないしは識別情報付与装置の使用を可能とし、従来のように不合格品が到来するごとに装置を停止する必要をなくすることができる。
【0014】
そして、請求項2に係る発明のように、オペレータが合否判定を入力するための入力手段を、合格の旨の入力のみを可能とし、かつ、振り分け装置は、常時は不合格側に位置し、合格の旨の入力があった場合に限って合格側に駆動する構成を採用することにより、オペレータの勘違い等の操作ミスを少なくし、特に、判定入力を忘れて不合格品を合格品として流してしまう誤りを防止することができる。
【0015】
また、オペレータの合否判定が遅い場合の対策として、請求項3に係る発明のように、定められた期間内に判定入力がない場合には、振り分け装置を不合格側に位置した状態を維持することにより、被検査物の混同を防止し、不合格品が合格品として流出することを有効に防止することができる。識別情報付与装置を設ける場合についても、請求項5に係る発明のように、定められた期間内に判定入力がない場合に、合格情報を付与することを禁じることで、被検査物の混同を防止し、不合格品が誤って合格品とされるこどう有効に防止することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、オペレータが被検査物のX線透視像を目視で観察して合否判定を行うタイプのインラインX線透視検査装置でありながら、その判定入力により振り分け装置を駆動して合格品と不合格品を確実に振り分けることができ、従来のこの種の検査装置のように不合格品の到来時に装置を停止する必要がなくなる。その結果、不合格が頻発した場合でも処理レートが大幅に低下することを防止することができる。
【0017】
また、請求項2に係る発明によれば、判定入力を合格のみとし、かつ、振り分け装置を常時は不合格側に位置させ、合格の判定入力があった場合に限って合格側に駆動する構成を採用しているので、入力を忘れて不合格品を合格品として流出させてしまう過誤等をなくすることができる。
【0018】
更に、請求項3に係る発明によると、オペレータの合否判定がある定められた期間内に行われなかった場合に、該当の被検査物を不合格品とするため、次々と搬送されてくる被検査物の混同を防止し、不合格品が誤って合格品として流出することを確実に防止することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。
図1は本発明の実施の形態の全体構成図で、機械的構成を表す模式図とシステム構成を表すブロック図とを併記して示す図である。
【0020】
被検査物Wは、コンベア1によって図中矢印で示す向きに搬送される。コンベア1による搬送路上に、X線発生装置1とX線ラインセンサ3とが鉛直方向に対向して配置されている。
【0021】
X線発生装置2からのX線はスリット(図示せず)等によりファンビーム状に形成されるとともに、X線ラインセンサ3はそのX線の広がり方向に画素が並ぶように配置されており、被検査物Wがこれらの間を通過する際にその被検査物Wを透過したX線がX線ラインセンサ3に入射し、X線透過データが得られる。なお、X線発生装置2とX線ラインセンサ3の周辺は防護箱(図示せず)により囲まれている。
【0022】
X線ラインセンサ3の出力は制御装置4に刻々と取り込まれ、この制御装置4では、X線ラインセンサ3の出力から、後述するように被検査物Wの到来を検知し、被検査物WのX線透視像を静止画像でモニタ5に表示する。また、制御装置4には、モニタ5のほかに、振り分け信号生成部6と操作パネル7が接続されており、振り分け信号生成部6には検査合格スイッチ8が接続されているとともに、上記した操作パネル7も接続されている。
【0023】
X線発生装置2とX線ラインセンサ3の配設位置よりもコンベア1による搬送方向下流側には振り分け装置9が配設されている。この振り分け装置9は、振り分け信号生成部6からの駆動制御信号に従い、コンベア1により搬送されてくる被検査物Wを、そのまま直進させて合格品の搬送路に導くべくコンベア1による搬送路から退避した状態の合格品通過状態と、コンベア1により搬送されてくる被検査物Wを、不合格品排除用コンベア10上へと導くべくコンベア1による搬送路を塞ぐ状態の不合格品排除状態のいずれかの状態に駆動制御される。この振り分け装置9は、常時は不合格品排除状態を維持しており、振り分け信号生成部6からの振り分け信号が供給された場合に限り、合格品通過状態へと駆動制御される。この制御の仕方の詳細については後述する。
【0024】
次に、X線ラインセンサ3の出力から被検査物WのX線透視像を構築してモニタ5に表示する手法について説明する。図2は制御装置4の構成のうち、X線ラインセンサ3の出力の処理に関連する部分の構成を示すブロック図である。
【0025】
制御装置4では、前記したようにX線ラインセンサ3の出力により被検査物Wが到来したことを検知し、その被検査物WのX線透視像を構築しはじめるタイミングを知る。すなわち、X線ラインセンサ3は入射したX線線量の1次分布に応じた信号を出力し続ける。被検査物WがX線発生装置2とX線ラインセンサ3の間にない場合には、図3(A)に示すように、X線ラインセンサ3の入射面Rに到達するX線は線量が大きく一様であるために、X線ラインセンサ3の出力も大きい値で一様な分布となるのに対し、被検査物WがX線発生装置2とX線ラインセンサ3の間に差しかかると、同図(B)に示すように、X線ラインセンサ3の入射面Rには被検査物Wにより部分的に減衰したX線が入射するため、その出力は一様ではなくなる。このX線ラインセンサ3の出力の変化が検査物検知部41で捕らえられ、その検知信号がタイミング制御部42に出力される。
【0026】
X線ラインセンサ3の出力は、また、FIFOメモリ43に取り込まれており、このFIFOメモリ43によりX線ラインセンサ3の出力がディレイされた上で、画像メモリ(0)44または画像メモリ(1)45に送られる。このようにX線ラインセンサ3の出力をディレイさせる理由は、被検査物Wの到来がX線ラインセンサ3の出力により検知された時点では、すでに被検査物Wの先頭部のX線透過データがX線ラインセンサ3から出力されてしまっているので、その検知タイミングより前の被検査物Wの先頭部を含む部分(被検査物Wの先頭より少し前)からのX線透過データが得られるようにするためである。このFIFOメモリ43によるディレイ量は操作パネル7の操作によりあらかじめ設定される。
【0027】
ディレイ量の例を述べると、モニタ5に例えば被検査物Wの先頭から10mmのところまで表示させる場合、X線ラインセンサ3として1024画素/ライン、スキャン時間1msのものを用い、コンベア1による搬送速度を0.5m/秒とすると、被検査物Wの先頭から10mmの部分まで画像として表示するためのFIFOメモリ43によりディレイ時間は、1ラインスキャンで被検査物Wが進む距離が0.5mmであるので、10mm分は20ラインスキャンである。よって、FIFOメモリ43はX線ラインセンサ3の出力を20ライン分遅れさせればよいことになる。X線ラインセンサ3は1024画素であるので、20×1024=20,480画素分のFIFOメモリによってX線ラインセンサ3の出力をシフトすればよい。操作パネル7により、被検査物Wの先頭より10mmのところまで見る旨の設定を行うことにより、上記の手法によりディレイ量が自動的に設定される。
【0028】
タイミング制御部42では、図4にタイミングチャートを示すように、検査物検知部43からの検査物検知信号が入ると、画像メモリ(0)44、画像メモリ(1)45に取り込み指令信号を供給し、画像入力選択を(1)から(0)に切り換える。これにより、画像メモリ(0)44は、取り込み指令信号がONの間、FIFOメモリ43からのディレイされたX線透過データを取り込む。取り込み指令信号は後述する時間LだけONとなり、そのONの時間が経過すると同時に、画像出力選択を(1)から(0)に切り換える。取り込み指令信号がOFFになると、画像メモリ(0)44はFIFOメモリ43からのデータの取り込みを停止し、表示制御部46は画像メモリ(0)44の画像を表示データとして、この画像メモリ(0)44に蓄積された画像、つまり今通過した被検査物WのX線透視像をモニタ5に表示する。なお、モニタ5には、このタイミングより前は画像メモリ(1)からの画像、つまり前に通過した被検査物WのX線透視像を表示していたことになる。
【0029】
前記した取り込み指令信号のONの持続時間Lは、被検査物Wの長さを表すパラメータで、運転前に操作パネル7により被検査物Wの長さに基づいて搬送方向への視野の長さを設定することによって、以下のようにして自動的に設定される。
時間Lの算出の仕方の例を述べると、搬送方向に250mm分の表示をさせる場合、搬送速度が0.5m/秒の場合、L=250/500=500msとなる。
【0030】
また、取り込み指令信号をOFFにした時点から、運転前に操作パネル7により設定した時間Da分だけ、表示切替信号をONにする。この時間Daは、被検査物Wの透視像を次のものに切り換えた後、以下に示す検査合格信号の受付を不可とする時間である。
【0031】
次に、振り分け信号生成部6について説明する。図5は振り分け信号生成部6の詳細構成を示すブロック図で、図6は更にそのディレイ制御部63の詳細構成を示すブロック図である。
【0032】
合格禁止タイマ61は、上記した表示切替信号がONになった時点から、あらかじめ設定されている合格信号受付時間だけ出力をOFFにし、その後ONにする。この合格禁止タイマ61の出力と、表示切替信号とはNOR回路62に導入され、そのNOR回路62の出力がディレイ制御部63に供給される。このNOR回路62の出力は、従って、後述する図7に示される期間だけONとなり、このON期間においてのみ、以下に示す検査合格信号が受け付けられる。この合格信号受付に係る信号は、前記した表示切替信号と、オペレータが検査合格スイッチ8を操作することによって発生する検査合格信号とともにディレイ制御部63に導入される。
【0033】
ディレイ制御部63は、前記した表示切替信号が入力される個数カウンタ631と、その個数カウンタ631からのカウント値を入力するセレクタ632と、前記した合格受付信号と後述する検査合格信号を入力するAND回路633と、それぞれが振り分けディレイ部634a,合格検知部634bおよび振り分け時間タイマ634cとが1セットになった検査物毎ディレイ部634の複数個(N個)と、各検査物毎ディレイ部634の出力が入力されるOR回路635によって構成されている。
【0034】
被検査物Wが1個通過するごとに、制御装置4のタイミング制御部42から出力される表示切替信号がONになるので、個数カウンタ631はそのONとなるごとにカウントアップし、セレクタ632はそのカウント値に基づいて、信号処理に供すべき検査物毎ディレイ部634を[0]〜[N−1]に順次切り換えていく。検査物毎ディレイ部634の数Nは、X線発生装置2とX線ラインセンサ3の対向位置から振り分け装置9までの間に存在し得る被検査物Wの数よりも多く設定される。また、個数カウンタ631の出力の最大値は検査物毎ディレイ部634の数Nと一致し、[0]〜[N−1]でサイクリックに値が変わるように設定されている。つまり、個数カウンタ631のカウント値は、N−1となっている状態で表示切替信号がONになると0となる。
【0035】
セレクタ632による検査物毎ディレイ部634の選択は、実際には振り分けディレイ部634aと合格検知部634bに対して行われる。振り分けディレイ部634aは、セレクタ632に選択された時点を起点として、あらかじめ設定されているディレイ時間後にパルス信号を出力する。この振り分けディレイ部634aの動作は、一旦セレクタ632から選択信号を受け取ると、後はセレクタ632の状態に関わらず上記の時間後にパルス信号を出力する。合格検知部634bは、その振り分けディレイ部634aの出力と、検査合格信号と合格受付信号を入力するAND回路633の出力を取り込み、AND回路633の出力を入力することによってその出力をONにし、振り分けディレイ部634aの出力を入力することによってその出力をOFFに戻す。
【0036】
振り分け時間タイマ634cは、合格検知部634bの出力がONの状態で、振り分けディレイ部634aの出力がONになった時点でその出力をONにし、あらかじめ設定されている時間だけそのON状態を維持する。そてし、この振り分け時間タイマ634cの出力はOR回路635を通じて振り分け装置9に供給される。
【0037】
次に、以上の構成からなる本発明の実施の形態の動作の例を、図7に示すタイミングチャートを参照しつつ説明する。
この図7の例は、被検査物Wが連続して搬入されてくる例を示し、各被検査物Wを搬送順に被検査物0,被検査物1,被検査物2・・と表す。この例において、被検査物0と被検査物1とは通常の間隔で搬送され、被検査物1と被検査物2は通常より間隔が短く、あらかじめ設定しておいた合格信号受付時間よりも短い時間間隔で搬送されてきた例を示している。また、ディレイ制御部63内の検査物毎ディレイ部634については、それぞれの被検査物0,1,2・・に対応して選択されるものについて[0],[1],[2]・・を付して表す。
【0038】
この図7の例において、被検査物0に関して目視検査者(オペレータ)は被検査物0の検査合格スイッチ8を入力するのが遅れている。被検査物1に関しては、目視検査者は検査合格スイッチの入力は通常ならば間に合っているのであるが、被検査物2が早く搬入されたため、検査合格スイッチ8の入力タイミングでは既に表示されているX線透視像が被検査物2の像に切り換わってしまっている。被検査物2についしは、検査合格スイッチ8は正常なタイミングで入力されている。このような被検査物Wの搬入状況と目視検査者のスイッチ操作状況をもとに、以下に装置の動作を説明する。
【0039】
被検査物0のX線透視像が表示切替信号がONになるのと同時にモニタ5に表示される。図6の個数カウンタ631のカウント値はこのときに0であるとすると、振り分けディレイ部634は[0]が選択される。被検査物0に対して検査合格スイッチ8が操作されて検査合格信号がONになっているが、検査受付時間を過ぎてONになっているので、AND回路633の出力はONにならず、従って合格検知部[0]の出力はOFFのままとなる。なお、[0]の振り分けディレイ部634aの出力は表示切替信号の到来後、一定の時間(振り分けディレイ時間)が経過した後にONになるが、合格検知部[0]の出力がOFFのままであるため、振り分け信号はONとはならない。従って、振り分け装置9は不合格品排除状態を維持する。
【0040】
被検査物0のX線透視像がモニタ5に表示されている状態で表示切替信号が発生すると、モニタ5の表示は、次に搬送されてきた被検査物1のX線透視像に切り換わる。このとき、個数カウンタ631のカウント値は1となり、検査物毎ディレイ部634は[1]が選択され、上記と同様に、振り分けディレイ部[1]の出力はその時点から振り分けディレイ時間経過後にONとなる。目視検査者は検査合格スイッチ8を操作して検査合格信号が発生しているが、次の被検査物2の搬入が早かったために、その検査合格信号は合格信号受付期間外となってしまっており、AND回路633の出力は反応せず、従って合格検知部[1]の出力はOFFのままである。よって振り分け信号はONとはならず、振り分け装置9は不合格品排除状態を維持する。
【0041】
被検査物1のX線透視像がモニタ5に表示されている状態で表示切替信号が発生すると、モニタ5の表示は被検査物2のX線透視像に切り換わる。このとき、個数カウンタ631のカウント値が2となって、検査物毎ディレイ部634は[2]が選択された状態となる。これにより、振り分けディレイ部[2]は振り分けディレイ時間が経過した時点でその出力をONとする。また、目視検査者はこの被検査物2についても検査合格スイッチ8を操作し、検査合格信号が発生している。この合格信号は合格信号受付期間内に発生しているため、AND回路633の出力はONとなって、合格検知部[2]の出力はONとなる。この合格検知部[2]の出力と振り分けディレイ部[2]の出力を入力する振り分け時間タイマ[2]は、振り分けディレイ部[2]からのON信号が到来した時点で、あらかじめ設定されている振り分けON時間分だけその出力をONにする。この振り分け時間タイマ[2]からの信号はOR回路635を通じて振り分け装置9に供給され、この信号がONとなっている時間だけ、振り分け装置9は合格品通過状態へと駆動制御される。この駆動のタイミングは、該当の被検査物2が振り分け装置9を通過する直前であり、X線発生装置2とX線ラインセンサ3の配設位置と振り分け装置9の配設位置との距離と、コンベア1による搬送速度に基づいて、あらかじめ各振り分けディレイ部634aによるディレイ量を設定しておくことによって実現できる。
【0042】
以上の実施の形態において特に注目すべき点は、目視検査者による合否判定を検査合格スイッチ8の操作による合格判定のみとしているとともに、振り分け装置9は常時は不合格品排除状態として、合格判定があった場合に限って合格品通過状態とする点であり、これにより、目視検査者が例え合否判定のためのスイッチ操作をわすれても、不合格品が誤って合格品として流出してしまうことを確実に防止することができる。
【0043】
また、目視検査者による検査合格スイッチ8の操作が、該当の被検査物WのX線透視像が表示されている期間内であらかじめ設定されている期間内で行われた場合にのみ、その操作を有効とし、該当の被検査物Wが振り分け装置9に到達する直前に当該振り分け装置9を駆動制御するため、被検査物Wが連続して搬送され、かつ、その間隔が一定でない場合においても、判定結果が正しく該当の被検査物Wの振り分け動作に反映される。
【0044】
ここで、以上の実施の形態では、目視検査者の判定により検査合格の場合にのみスイッチ操作をした例を示したが、搬送速度が十分に遅いラインでは、検査不合格を入力するようにしてもよい。その場合、上記の例において振り分け信号がONの場合に振り分け装置を不合格品排除状態、OFFの場合に合格品通過状態とすればよい。
【0045】
また、以上の実施の形態においては、X線発生装置とX線ラインセンサよりも搬送方向下流側に振り分け装置を配置して、被検査物を目視検査者の判定結果に基づいて合格品/不合格品の振り分けを行った例を示したが、振り分け装置に代えて、被検査物に合格のラベルを貼るか、あるいは不合格のラベルを貼るラベル貼り機や、合格のマークもしくは不合格のマークを付するマーキング機などの識別情報付与装置を配置し、上記した振り分け信号に代えてこれらの装置に対して合格もしくは不合格のラベルまたはマーク付するための駆動制御信号を供給する運用を行うこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施の形態の全体構成図で、機械的構成を表す模式図とシステム構成を表すブロック図とを併記して示す図である。
【図2】図1の本発明の実施の形態における制御装置4の構成のうち、X線ラインセンサ3の出力の処理に関連する部分の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態における検査物検知部41による被検査物の検知方法の説明図である。
【図4】本発明の実施の形態におけるタイミング制御部42の動作を表すタイミングチャートである。
【図5】本発明の実施の形態における振り分け信号生成部6の詳細構成を示すブロック図である。
【図6】図5の振り分け信号生成部6中のディレイ制御部63の詳細構成を示すブロック図である。
【図7】本発明の実施の形態の動作例を示すタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0047】
1 コンベア
2 X線発生装置
3 X線ラインセンサ
4 制御装置
41 検査物検知部
42 タイミング制御部
43 FIFOメモリ
44,45 画像メモリ
46 表示制御部
5 モニタ
6 振り分け信号生成部
61 合格禁止タイマ
62 NOR回路
63 ディレイ制御部
631 個数カウンタ
632 セレクタ
633 AND回路
634 検査物毎ディレイ部
634a 振り分けディレイ部
634b 合格検知部
634c 振り分け時間タイマ634c
635 OR回路
7 操作パネル
8 検査合格スイッチ
9 振り分け装置
10 不合格品排除用コンベア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向配置されたX線発生装置およびX線ラインセンサと、これらのX線発生装置とX線ラインセンサの間で被検査物を搬送する搬送装置と、その搬送装置により被検査物が上記X線発生装置とX線ラインセンサの間を通過する際に取り込んだX線透過データを用いて、被検査物のX線透視像を構築して表示器に表示する表示手段を備えたインラインX線透視目視検査装置において、
上記表示器に表示された被検査物の透視像の目視によるオペレータの合否判定結果を入力するための入力手段と、上記X線発生装置とX線ラインセンサの配設位置よりも上記搬送装置による搬送方向下流側に配設され、被検査物を合格/不合格のいずれかに振り分ける振り分け装置と、上記入力手段による入力内容に基づき、その入力がなされた対象である被検査物が上記振り分け装置の配設位置に搬送されるタイミングと合わせて当該振り分け装置に対して駆動制御信号を供給する制御手段を備えていることを特徴とするインラインX線透視目視検査装置。
【請求項2】
上記入力手段は、合格の旨を入力する手段のみからなり、上記振り分け装置は、常時不合格側に位置しているとともに、上記制御手段は、上記入力手段から合格の旨の入力があった場合に限り、上記振り分け装置を合格側に駆動することを特徴とする請求項1に記載のインラインX線透視目視検査装置。
【請求項3】
上記制御手段は、上記表示器に被検査物の透視像が表示された後、規定の期間内に上記入力手段から合格の入力があった場合に限り、上記振り分け装置を合格側に駆動することを特徴とする請求項1または2に記載のインラインX線透視目視検査装置。
【請求項4】
互いに対向配置されたX線発生装置およびX線ラインセンサと、これらのX線発生装置とX線ラインセンサの間で被検査物を搬送する搬送装置と、その搬送装置により被検査物が上記X線発生装置とX線ラインセンサの間を通過する際に取り込んだX線透過データを用いて、被検査物のX線透視像を構築して表示器に表示する表示手段を備えたインラインX線透視目視検査装置において、
上記表示器に表示された被検査物の透視像の目視によるオペレータの合否判定結果を入力するための入力手段と、上記X線発生装置とX線ラインセンサの配設位置よりも上記搬送装置による搬送方向下流側に配設され、被検査物に合格/不合格のいずれかのラベルを貼るか、もしくはマークを付する識別情報付与装置と、上記入力手段による入力内容に基づき、その入力がなされた対象である被検査物が上記識別情報付与装置の配設位置に搬送されるタイミングと合わせて当該振り分け情報付与装置に対して駆動制御信号を供給する制御手段を備えていることを特徴とするインラインX線透視目視検査装置。
【請求項5】
請求項4に記載のインラインX線透視目視検査装置において、上記制御手段は、上記表示器に被検査物の透視像が表示された後、規定の期間内に上記入力手段からの合格の入力があった場合に限り、上記識別情報付与手段に対して合格情報を被検査物に付与する旨の駆動制御信号を供給することを特徴とするインラインX線透視目視検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−128231(P2009−128231A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−304603(P2007−304603)
【出願日】平成19年11月26日(2007.11.26)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】