説明

ウインドシールド下端支持構造

【課題】
歩行者保護と剛性を両立したウインドシールド下端支持構造を提供することである。
【解決手段】
自動車のウインドシールドの下端を支持するウインドシールド下端支持構造であって、ウインドシールドロアパネルを概略への字に折り曲げ前部と剛性の高い後部とし、該ウインドシールドロアパネルのヘの字の屈曲部近傍の前記前部とウインドシールドの下端とを接着固定して構成し、歩行者衝突時に前記ウインドシールドロアパネルが接着固定部から前側で下方に変形するようにしたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車のウインドシールドの下端を支持するウインドシールド下端支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、自動車のウインドシールド(フロントガラス)は、ウインドシールドロアパネルにより支持される。従来のウインドシールド下端支持構造として、ウインドシールドロアパネルの前縁部近傍でウインドシールドの下端を支持するようにした構造が知られている。ウインドシールドロアパネルは、インストルメントパネルの支持部として十分な剛性を必要とし、音振動特性や車両のハンドリングなどの特性に重要な役割を持っている。
【0003】
更に、歩行者との正面衝突時に、ボンネットに跳ね上げられた歩行者がウインドシールドの下端部分に衝突した際、この衝撃力を十分吸収して歩行者保護を図るウインドシールド下端支持構造が要望されている。
【0004】
例えば、特開2001−80543号公報には、ワイパー回転軸の取り付け部分を薄肉にして変形させ易くしておくことにより、ワイパー回転軸部分への歩行者等の衝突時にこの薄肉部が適度に変形してその衝撃力を吸収するようにした車両の前部車体構造が開示されている。
【特許文献1】特開2001−80543号公報
【特許文献2】特開2004−34841号公報
【特許文献3】特開2004−155351号公報
【特許文献4】特開2004−262290号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ウインドシールドロアパネルの前縁部近傍でウインドシールドの下端部を支持するようにした従来の構造では、ウインドシールドの中央部が前面に張り出すデザインの場合、ウインドシールドロアパネルの支持剛性の弱い部位でウインドシールドを支持するので、ノイズ及び振動性能を満足させることは困難であった。
【0006】
更に、カウルトップの車室側はウインドシールドロアパネルの前端部で支持しているが、従来のウインドシールド下端支持構造ではその構造上ウインドシールドロアパネルが変形し難いため、ボンネット上に跳ね上げられた歩行者がカウルトップに衝突した際、その衝撃力を十分吸収することが困難であった。
【0007】
また、特許文献1に記載された車両の前部車体構造では、歩行者等の保護性能は十分確保できるものの、薄肉部の剛性が低下し、車体振動が車室内へ伝達され易いという問題がある。
【0008】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、歩行者保護と剛性を両立するようにしたウインドシールド下端支持構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の発明によると、自動車のウインドシールドの下端を支持するウインドシールド下端支持構造であって、ウインドシールドロアパネルを概略への字に折り曲げ前部と剛性の高い後部とし、該ウインドシールドロアパネルのヘの字の屈曲部近傍の前記前部とウインドシールドの下端とを接着固定して構成し、歩行者衝突時に前記ウインドシールドロアパネルが接着固定部から前側で下方に変形するようにしたことを特徴とするウインドシールド下端支持構造が提供される。
【0010】
請求項2記載の発明によると、請求項1記載の発明において、ウインドシールドロアパネルの後部の車体幅方向中央部近傍を、エンジンルーム側に突出又は膨出するように潰し形状にしたウインドシールド下端支持構造が提供される。
【0011】
請求項3記載の発明によると、請求項2記載の発明において、ウインドシールド下端支持構造は、ウインドシールドロアパネルの下端が接合されたダッシュボードアッパと、このダッシュボードアッパに溶接され、ダッシュボードアッパと共に車体幅方向に閉断面を形成するクロスメンバーと、下端がこのクロスメンバーに固定支持されてウインドシールドロアパネルの潰し形状部分にエンジンルーム側から当てがわれたブラケットと、を更に含んでいる。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明によると、歩行者衝突時にウインドシールドロアパネルの前部が変形して衝突の衝撃を吸収できると共に、ウインドシールドロアパネルの後部の剛性を高く構成したため、歩行者保護と剛性の両立を図ることができる。
【0013】
請求項2記載の発明によると、ウインドシールドロアパネルの後部の車体幅方向中央部近傍を潰し形状にしたため、簡単な構成で後部の高い剛性を確保することができる。
【0014】
請求項3記載の発明によると、クロスビームに固定支持されたブラケットをエンジンルーム側から潰し形状部分に当てがったため、より大きな剛性を確保することができ、十分なノイズ及び振動性能を達成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。尚、本明細書において、「前」、「後ろ」、「左」、「右」、「上」、「下」は運転者から見た方向に従うものとする。
【0016】
図1は本発明に係るウインドシールド下端支持構造を具備した車両を前から見た斜視図であり、ボンネット(フード)2で覆われたエンジンルーム内には符号4で示す位置にエンジン及びトランスミッションが搭載されている。車室内に外気を取り入れるためのカウルトップは中央パネル8と、左サイドパネル10と、右サイドパネル12に3分割されている。
【0017】
ウインドシールド(フロントガラス)14の下部には黒色セラミック膜15が貼付されている。16はルーフ、18はワイパーアーム、20はフロントグリル、22はヘッドライト、24はフロントバンパである。
【0018】
エンジンルーム内には、フロントサスペンションのダンパ(ストラット)を連結支持する一対のダンパハウジング(ストラットタワー)26が配置されている。
【0019】
図2は図1の概略側面図であり、カウルトップ6の中央パネル8の上面がボンネット2と概略同一面を成すように配置されている。
【0020】
図3は図1のA−A線断面図であり、本発明実施形態に係るウインドシールド下端支持構造を示している。符号25はダッシュボードアッパ組立体であり、図4に示すように構成されている。
【0021】
ダッシュボードアッパ組立体25は、自動車の車室とエンジンルームとを分離するものであり、図4でダッシュボードアッパ組立体25より下側がエンジンルーム側、上側が車室側である。
【0022】
ダッシュボードアッパ組立体25は、左右端が左右のダンパベース上面まで延在するように車体幅方向に伸長するダッシュボードアッパ28と、このダッシュボードアッパ28にスポット溶接され、ダッシュボードアッパ28と共に車体幅方向に閉断面を形成するクロスメンバー30と、このクロスメンバー30の左右両端の延長線上でダンパベース上面と重なるようにダッシュボードアッパ28にスポット溶接された一対のダンパプレート34とから構成される。
【0023】
クロスメンバー30には軽量化のための複数の穴32が形成されている。38はタイヤハウスであり、このタイヤハウス38にはダンパハウジング(ストラットタワー)26が溶接されている。40はボンネットヒンジ用サイドメンバーであり、ダンパプレート34に溶接されている。図3のダッシュボードアッパ組立体25は図4のA−A線断面図である。
【0024】
再び図3を参照すると、符号42はウインドシールドロアパネルであり、屈曲部42cで概略への字に折り曲げられてウインドシールド14と概略平行の前部42aと、その下端がダッシュボードアッパ28に溶接された剛性の高い後部42bとから構成される。
【0025】
ウインドシールドロアパネル42の後部42bの車体幅方向中央部近傍はエンジンルーム側に突出又は膨出するように潰し形状45に形成されている。
【0026】
図5はウインドシールドロアパネル42を車室側から見た斜視図を示している。潰し形状部分45にはインストルメントパネル取り付け用のボルト46が突出している。48は前部42aの前縁から垂直に立ち上がった打刻面フランジであり、この打刻面フランジ48の裏(エンジンルーム側)にはエンジン番号等が打刻されている。
【0027】
再び図3を参照すると、ウインドシールド14の下端は、ウインドシールドロアパネル42のへの字の屈曲部42c近傍の接着固定部44でウインドシールドロアパネル42の前部42aに接着固定されている。
【0028】
カウルトップ6の中央パネル8は一体的に形成されたクリップ取り付け座52を有しており、クリップ取り付け座52に取り付けられたクリップ54をウインドシールドロアパネル42の前端部に係合することにより、カウルトップ6の車室側がウインドシールドロアパネル42に取り付けられる。
【0029】
ダッシュボードアッパ28の先端にはダッシュボードアッパリッド50がボルト接合されており、このダッシュボードアッパリッド50の先端にクリップ56によりカウルトップ6のエンジンルーム側が取り付けられる。
【0030】
ブラケット(ステイ)58の下端がクロスメンバー30に溶接されて、ウインドシールドロアパネル42の潰し形状部分45にエンジンルーム側から当てがわれている。
【0031】
図3の断面図には示されていないが、図5に示したウインドシールドロアパネル42の打刻面フランジ48はカウルトップ6内に挿入されるため、運転席側からカウルトップ6の外気取り入れ用グリルを介して打刻面フランジ48が見えることになる。よって、この打刻面フランジ48に例えば黒色のプラスチックカバーを被せることにより、見栄えが良くなり商品性を向上することができる。
【0032】
本実施形態のウインドシールド下端支持構造によると、前面衝突した歩行者がボンネット2上に跳ね上げられてカウルトップ6に衝突すると、ウインドシールドロアパネル42が接着固定部44から前側で2点鎖線60で示すように折り曲げ変形するため、歩行者がカウルトップ6に衝突する際の衝撃を有効に吸収することができ、歩行者保護を図ることができる。
【0033】
更に、ウインドシールドロアパネル42の後部42bの車体幅方向中央部近傍は潰し形状45に形成されると共に、この潰し形状部分45に下側からブラケット58が当てがわれているため、ウインドシールドロアパネル42の後部42bの剛性を十分確保することができる。このようにウインドシールドロアパネル42の剛性を十分確保できるため、ノイズが低減され、また車体振動が車室内へ伝達されることが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明実施形態のウインドシールド下部支持構造を具備した自動車を前から見た斜視図である。
【図2】図1の概略側面図である。
【図3】図1のA−A線断面図である。
【図4】ダンパベースに取り付けられたダッシュボードアッパ組立体の平面図である。
【図5】ウインドシールドロアパネルの斜視図である。
【符号の説明】
【0035】
2 ボンネット
6 カウルトップ
8 中央パネル
14 ウインドシールド(フロントガラス)
25 ダッシュボードアッパ組立体
28 ダッシュボードアッパ
30 クロスメンバー
42 ウインドシールドロアパネル
42a 前部
42b 後部
42c 屈曲部
44 接着固定部
45 潰し形状部
50 ダッシュボードアッパリッド
58 ブラケット(ステイ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のウインドシールドの下端を支持するウインドシールド下端支持構造であって、
ウインドシールドロアパネルを概略への字に折り曲げ前部と剛性の高い後部とし、
該ウインドシールドロアパネルのヘの字の屈曲部近傍の前記前部とウインドシールドの下端とを接着固定して構成し、
歩行者衝突時に前記ウインドシールドロアパネルが接着固定部から前側で下方に変形するようにしたことを特徴とするウインドシールド下端支持構造。
【請求項2】
前記後部の車体幅方向中央部近傍は前方に突出された潰し形状をしていることを特徴とする請求項1記載のウインドシールド下端支持構造。
【請求項3】
前記後部の下端が接合されたダッシュボードアッパと、
該ダッシュボードアッパに車体幅方向に閉断面を形成するように溶接されたクロスメンバーと、
該クロスメンバーに下端が溶接され、前記後部の潰し形状部分にエンジンルーム側から当てがわれたブラケットとを更に具備したことを特徴とする請求項2記載のウインドシールド下端支持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−327446(P2006−327446A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−155033(P2005−155033)
【出願日】平成17年5月27日(2005.5.27)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】