説明

ウェブの洗浄方法および装置

【課題】高い清浄度でウェブを洗浄する。
【解決手段】ウェブ2の表裏面の少なくとも一方の面に対して、洗浄液が供給される。これにより、ウェブ2の面に沿った液流が発生させられる。この洗浄液には、ウェブ2の面に存在する異物11に接触させるためのブラスト材12が混入されている。したがって、ウェブ2の表面に沿った液流自体による剥離作用だけでなく、ブラスト材12が接触することによる剥離作用が、異物11に対して働く。このようにして、ウェブ2の面に沿った液流により、ウェブ2の面に存在する異物11が除去される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックフィルム、ガラスフィルム、金属フィルム等のウェブの洗浄方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックフィルム、ガラスフィルム、金属フィルム等の各種ウェブは、FPD(フラットパネルディスプレイ)分野、エレクトロニクス分野、光学用分野等の様々な分野で使用されている。プラスチックフィルムは、製膜、塗工、貼合等の工程を経て、部材や、プロセス材として使用される。例えば、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、SED、CRT等の製品において、機能性光学用プラスチックフィルムが使用されている。また、リチウムイオン電池等の製品において、銅箔やアルミ箔等の金属フィルム(金属箔)が使用されている。
【0003】
このようなウェブの製造工程においては、終始クリーンな環境下での取り扱いが必須であり、埃、繊維、フィルム粕等の異物の製品への混入や付着等の欠陥、及びそれらに起因するキズ、押し跡等の物理的欠陥の発生は厳重に管理されている。また、欠陥の程度についても、従来問題とされなかった非常に微細な欠陥が許容されなくなってきており、改善が要請されている。
【0004】
このような問題を解消するため、近年では、プラスチックフィルム等のウェブを洗浄することにより、ウェブ上の異物を除去する取組みが行われている。
【0005】
例えば、下記特許文献1では、超音波発生ノズルを有し、この超音波発生ノズルから噴出されるエアによる気流と超音波による振動とによって、フィルム上の塵埃を除去する洗浄ノズルが提案されている。
【0006】
また、下記特許文献2では、洗浄手段が洗浄ノズルから連続して洗浄液を噴霧し、洗浄液再循環手段が落下した洗浄液を再循環させ、乾燥手段が連続して温風を吹き付ける光学用プラスチックフィルムの洗浄・乾燥方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−239761号公報
【特許文献2】特開2002−292347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、吹き付けたエアによって剥離した塵埃が付近に散乱して、フィルムに再付着する虞があり、また、フィルムに強固に付着したものについては十分に除去できないという問題がある。
【0009】
また、特許文献2に記載の技術では、洗浄液としてアルコール、エステル等を使用した場合には、プラスチックフィルムの可塑剤が溶出して、フィルム特性の変化と均一性の低下を招くことが問題となる。また、ロールまたはバーによるスキージングのみでは洗浄液を十分除去できず、生産性が低いという問題もある。
【0010】
このように特許文献1および2に記載の技術では、フィルムを洗浄しても、フィルムの表面に付着した非常に微細な異物を良好に除去することができないという問題があった。
【0011】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、高い清浄度でウェブを洗浄することが可能なウェブの洗浄方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成すべく、本発明に係るウェブの洗浄方法は、ウェブの表裏面の少なくとも一方の面に対して洗浄液を供給することにより、前記ウェブの面に沿った液流を発生させる液流発生ステップと、前記液流により前記ウェブの面に存在する異物を除去する除去ステップと、を有し、前記異物に接触させるためのブラスト材が前記洗浄液に混入されていることを特徴とする。
【0013】
また、上記目的を達成すべく、本発明に係るウェブの洗浄装置は、ウェブの表裏面の少なくとも一方の面に対して洗浄液を供給することにより、前記ウェブの面に沿った液流を発生させるノズル装置を有し、前記液流により前記ウェブの面に存在する異物を除去するようにしたウェブの洗浄装置であって、前記異物に接触させるためのブラスト材が前記洗浄液に混入されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、高い清浄度でウェブを洗浄することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係るウェブの洗浄装置の概略構成を示す図である。
【図2】図1のII−II線に沿うノズル装置の概略断面図である。
【図3】図2のIII−III線に沿うノズル装置の概略断面図である。
【図4】ノズル装置の導入口および流出口の周辺を模式的に示す概略断面図である。
【図5】図4に対応する部分を示す概略斜視図である。
【図6】異物を除去する様子を説明するための図である。
【図7】本発明の他の実施形態に係るウェブの洗浄装置の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るウェブの洗浄装置1の概略構成を示す図、図2は、図1のII−II線に沿うノズル装置の概略断面図、図3は、図2のIII−III線に沿うノズル装置の概略断面図である。なお、各図面における各要素は、発明の理解を容易にするために適宜拡大、縮小または簡略化されて描かれており、実際とは異なる場合がある(以降の図面において同じ)。
【0017】
図1に示すように、洗浄装置1は、ウェブ2を洗浄するための洗浄槽3と、当該洗浄槽3の後工程側に設けられ洗浄後のウェブ2をリンスするための3つのリンス槽4とを有している。洗浄装置1は、全体枠をなす壁部6を備えており、洗浄槽3およびリンス槽4の各槽間はそれぞれ隔壁7で区画されている。なお、隔壁7を設けることなく、各槽が独立した壁部を有していてもよい。
【0018】
本実施形態では、洗浄対象のウェブ2として、例えば液晶ディスプレイ等に用いられるプラスチックフィルムが使用される。使用されるプラスチックフィルムの厚さは、5〜2000μm、好ましくは15〜500μm、より好ましくは20〜200μmの範囲内である。但し、本発明は、ガラスフィルム、金属フィルム等の他の種類のウェブにも適用可能である。
【0019】
洗浄槽3には、ウェブ2上の異物11に接触させるためのブラスト材12(図6参照)を含有する洗浄液13が収容されている。洗浄液13としては、特に限定されるものではないが、例えば防錆剤を含む準水系の液体が好ましくは使用される。このようにすれば、ウェブ2がプラスチックフィルムの場合であっても、品質が損なわれることはない。但し、ウェブ2が例えば銅箔やアルミ箔等の金属フィルムの場合には、当該金属と反応するものでなければ洗浄液にアルコール、エステル等が含まれていてもよい。一方、リンス槽4には、リンス水14が収容されている。リンス水14としては、超純水が好ましくは使用される。なお、「洗浄液」の用語は、リンス水を含む概念として使用する。
【0020】
異物11(図6参照)は、ウェブ2の面に付着して存在する埃、繊維、フィルム粕、汚れ等を含む概念であり、10μm程度の微細な塵埃を含むものである。
【0021】
ブラスト材12(図6参照)の材質は特に限定されないが、ブラスト材12が洗浄後のウェブ2上に残りにくいように、ノズル装置5により発生させられる液流でウェブ2上から容易に除去されるものが望ましい。例えば、アルミナ、ガラスビーズ、セラミック、プラスチック等の粉粒体が使用され得る。また、ブラスト材12は、洗浄対象を傷つけることなく、ノズル装置5のスリット状の貫通孔51(図2参照)によって形成される狭い流路を通過することを考慮して、直径が数十μm以下の球体あるいは角の丸い粉粒体であることが好ましい。さらには、ブラスト材12として、炭酸水素アルカリ金属塩等の水溶性粒子が使用され得る。この場合、洗浄後の超純水リンス時に、水溶性粒子を水中に溶解させることができ、ブラスト材を使い捨て材として使用することができる。また、ブラスト材12は、ウェブ2上からより容易に除去されるように、ウェブ2の電位と同極性の電位を帯びていることが望ましい。
【0022】
洗浄装置1は、ウェブ2の表裏面の少なくとも一方の面に対して洗浄液を供給することにより、ウェブ2の面に沿った液流を発生させるノズル装置5を有している。洗浄装置1は、このノズル装置5によって発生させられた液流によりウェブ2の面に付着して存在する異物11を除去するようにしたものである。
【0023】
図2および図3においては、ノズル装置5がウェブ2の表面(上面)に対して洗浄液を供給する場合について図示されているが(図4および図5においても同様)、裏面(下面)に対して洗浄液を供給する構成が採用されてもよい。さらには、ウェブ2の表裏両面に対して洗浄液を供給する構成が採用されてもよく、このようにすれば、ウェブ2の表裏両面を同時に洗浄することができるため好ましい。
【0024】
図2および図3に示すように、ノズル装置5は、ウェブ2を内部に通過させて搬送するためのスリット状の貫通孔51と、当該貫通孔51の内面に開口するとともに搬送されるウェブの面に対向して設けられた洗浄液の流出口52と、当該流出口52に連通する洗浄液の導入口53と、を有している。ここで、貫通孔51の、ウェブ2の搬入側の開口を入口54、搬出側の開口を出口55と称する。
【0025】
本実施形態では、洗浄槽3内に、洗浄用のノズル装置5が設置されている。すなわち、洗浄槽3内のノズル装置5は、ウェブ2上の異物11に接触させるためのブラスト材12が混入されている洗浄液の液流を発生させるものである。一方、各リンス槽4,4間に、リンス用のノズル装置5が設置されている。各リンス槽4,4間のノズル装置5は、リンス水の液流を発生させるものであり、貫通孔51の入口54および出口55が隣接する2つのリンス槽4,4の内部にそれぞれ開口するように設置されている。
【0026】
洗浄装置1は、複数のローラ9に懸架されたウェブ2を、図中矢印方向に搬送する図示しない搬送手段を備えている。搬送手段の動作により、ウェブ2は、各ノズル装置5の貫通孔51を経由して洗浄槽3およびリンス槽4に順次搬送されるように構成されている。
【0027】
各ノズル装置5には、洗浄液をノズル装置5に供給するための洗浄液供給ライン8(図1参照)が接続されており、洗浄液供給ライン8にはポンプPが設置されている。したがって、洗浄槽3内から取り入れたブラスト材12を含有する洗浄液は、洗浄用のノズル装置5の内部に一定圧力で導入され得る。また、リンス槽4内から取り入れたリンス水は、リンス用のノズル装置5の内部に一定圧力で導入され得る。最も後工程側のリンス槽4には、ポンプPの動作により、図示しない供給源から超純水が供給される構成とされている。
【0028】
また、洗浄装置1は、ウェブ2の洗浄に使用された後の洗浄液中のブラスト材12を再利用のために回収する回収手段としてのブラスト材分級機構10を備えている。これにより、ブラスト材12の有効利用が図られ、ランニングコストが低減される。ブラスト材分級機構10は、洗浄槽3内から取り入れた洗浄液を、ブラスト材12を含有する洗浄液と、異物11を含有する排液とに分離する。なお、ブラスト材12や洗浄液は、ブラスト材分級機構10から、洗浄槽3内に追加投入され得る。但し、図示しない投入装置により、ブラスト材12や洗浄液が洗浄槽3内に追加投入されてもよい。
【0029】
図4は、ノズル装置5の導入口53および流出口52の周辺を模式的に示す概略断面図、図5は、図4に対応する部分を示す概略斜視図である。図4に示すように、ノズル装置5の導入口53と流出口52とは、導入口53から導入された洗浄液を減圧するための絞り56を介して繋がっている。絞り56を通って流出口52から流出した洗浄液は、ノズル装置5の貫通孔51の内面とウェブ2の表面との間の隙間57を通って高速で流れてウェブ2を洗浄する。隙間57は、ウェブ厚さ方向の幅寸法が例えば0.25mm以下の狭い隙間であることが好ましい。
【0030】
なお、図2および図3においては、流出口52が貫通孔51の内面に開口するとともに搬送されるウェブ2の面に対向して設けられていることと、導入口53が流出口52に連通していることとが示されているが、導入口53、流出口52、および絞り56の形状や大きさは簡略化されている。
【0031】
ノズル装置5の導入口53に導入される洗浄液の圧力をPsとすると、洗浄液は絞り56を通って流出口52では圧力Piとなり、貫通孔51を通ってウェブ2を洗浄した後、排出されてPoとなる。図4および図5の構成は、絞り56として、複数の穿孔を用いた場合を示しており、ノズル装置5のウェブ長手方向(搬送方向と同じ)の長さ寸法を短くしてコンパクト化できる利点がある。但し、絞り56の構成は適宜変更可能である。
【0032】
ノズル装置5の内部にスリット状の貫通孔51を通過させてウェブ2を搬送し、搬送されるウェブ2の面に対して流出口52から洗浄液を供給するようにした上記構成は、ウェブ2の面に沿った液流を良好に発生させることができる。但し、ウェブ2の面に沿った液流を発生させるための構成は、上記構成に限定されるものではない。
【0033】
次に、上記のように構成された洗浄装置1の動作について説明する。まず、ブラスト材12を含有する洗浄液13が、ポンプPの動作により、洗浄槽3内からブラスト材分級機構10に取り入れられる。ブラスト材分級機構10により、ブラスト材12を含有する洗浄液13は、ブラスト材12を含有する洗浄液と、異物11を含有する排液とに分離される。そして、ブラスト材12が混入している洗浄液は、洗浄用のノズル装置5に供給される。一方、異物11を含有する排液は外部に排出される。
【0034】
ウェブ2は、図示しない搬送手段により、洗浄槽3に搬入された後、スリット状の貫通孔51を有するノズル装置5の内部に当該貫通孔51を通過して搬送させられる。洗浄用のノズル装置5に供給される洗浄液は、搬送されるウェブ2の表面に対向して設けられた流出口52に連通する導入口53に導入される。この結果、ノズル装置5の内部を搬送させられるウェブ2の表面に対して、ブラスト材12が混入されている洗浄液が流出口52から供給される。これにより、ウェブ2の表面に沿った高速の液流が発生する。
【0035】
図6は、異物11を除去する様子を説明するための図である。図6に示すように、ウェブ2の表面に沿った高速の液流自体により、異物11に対して剥離作用が働くことに加え、ブラスト材12がウェブ2上の異物に接触ないし衝突することによっても異物11に対して剥離作用が働くことになり、ウェブ2の表面に存在する異物11がより確実に除去される。しかも、ブラスト材12は液流に乗ってウェブ2の表面に平行に運ばれるため、ウェブ2の表面に略垂直に衝突するようなことはなく損傷を与えることがない。このようにして高い清浄度でウェブ2を洗浄することが可能となる。
【0036】
洗浄用のノズル装置5に供給されたブラスト材12を含有する洗浄液は、ウェブ2の洗浄後に、貫通孔51の入口54および出口55の双方から、除去された異物11とともに排出される。ここで、洗浄用のノズル装置5は、洗浄槽3の洗浄液13中に設置されているため、貫通孔51の入口54または出口55から排出された洗浄液の運動エネルギーを分散し、飛散を減少させる効果がある。
【0037】
洗浄後のウェブ2は、洗浄槽3から引き上げられて、ウェブ搬送順で最初のリンス槽4(図中右側)内に搬入される。リンス槽4内に搬入されたウェブ2は、最初のリンス槽4と2番目のリンス槽4との間の隔壁7に設置されているリンス用のノズル装置5の内部に貫通孔51を通過して搬送させられる。
【0038】
このリンス用のノズル装置5には、2番目のリンス槽4内から一定圧力で加圧したリンス水が供給される。これにより、最初のリンス槽4から2番目のリンス槽4へのリンス水の持込みが抑制されるとともに、ウェブ2の表面に沿った高速の液流により、ウェブ2の表面にソフトに付着している可能性がある異物11およびブラスト材12が除去される。
【0039】
また、隔壁7に設置されているリンス用のノズル装置5の内部の圧力損失は、貫通孔51の入口54側よりも出口55側において大きくなるように設定されている。ここでは、具体的には、流出口52から入口54までの距離をL、流出口52から出口55までの距離をLとした場合に、L>Lとなるように設定されている。これにより、リンス水の流れを入口54側に集中できるため、異物11やブラスト材12等の汚染の後工程への持込みをより低減することができる。なお、圧力損失を入口54側よりも出口55側において大きく設定するために、隙間57を入口54側よりも出口55側において狭くする方法や、後工程側の槽の液面よりも前工程側の槽の液面を低くして水頭差を設ける方法等の他の方法が採用されてもよい。
【0040】
リンス後のウェブ2は、2番目のリンス槽4内に搬入された後、2番目のリンス槽4と3番目のリンス槽4との間の隔壁7に設置されているリンス用のノズル装置5の内部に貫通孔51を通過して搬送させられる。このリンス用のノズル装置5においても、前述したリンス処理と同様の処理が行われる。
【0041】
このように、隔壁7に設置されているリンス用のノズル装置5におけるリンス処理が繰り返し行われることにより、リンス槽4内のリンス水は一定量が引き抜かれてノズル装置5を介して清浄度のより低いリンス槽4へと供給されていく。なお、最初のリンス槽4内のリンス水は図示しないポンプの動作により洗浄槽3内に供給されることが望ましい。このため、必要に応じた数のリンス槽4を組み合わせることにより、各リンス槽4内に汚染が蓄積することなく、ウェブ2の仕上げ段階で高い清浄度を得ることができる。
【0042】
以上述べたように、本実施形態では、ウェブ2の表裏面の少なくとも一方の面に対して、ウェブ2の面に存在する異物11に接触させるためのブラスト材12が混入されている洗浄液を供給することにより、ウェブ2の面に沿った液流が発生させられ、当該液流によりウェブ2の面に存在する異物11が除去される。
【0043】
このように本実施形態によれば、ウェブ2の表面に沿った液流自体による剥離作用だけでなく、ブラスト材12が接触することによる剥離作用が、異物11に対して働く結果、ウェブ2の表面に存在する異物11がより確実に除去される。しかも、ブラスト材12がウェブ2の表面に平行に運ばれるため、ウェブ2に損傷を与えることがない。このようにして高い清浄度でウェブ2を洗浄することが可能になる。
【0044】
図7は、本発明の他の実施形態に係るウェブの洗浄装置1aの概略構成を示す図である。図1に示した実施形態と同様の構成および作用は、この実施形態に取り込まれるものとして詳細な説明を省略し、図1に示した実施形態と相違する構成および作用について重点的に説明する。なお、図7において、図1に示した実施形態と機能が共通する部材には同一の符号を付してある。
【0045】
この実施形態では、洗浄槽3とリンス槽4との間の隔壁7に、リンス水の液流を発生させるノズル装置5が、貫通孔51の入口54および出口55が隣接する洗浄槽3およびリンス槽4の内部にそれぞれ開口するように設置されている。すなわち、図1に示した実施形態では、洗浄後のウェブ2は、洗浄槽3から引き上げられて最初のリンス槽4内に搬入されるが、この実施形態では、洗浄槽3から引き上げられることなく、リンス用のノズル装置5の内部を通過させられて最初のリンス槽4内に搬入される。
【0046】
このリンス用のノズル装置5には、最初のリンス槽4内から一定圧力で加圧したリンス水が供給される。これにより、ブラスト材12を含有する洗浄液が収容されている洗浄槽3から最初のリンス槽4への当該洗浄液の持込みが抑制されるとともに、ウェブ2の表面に沿った高速の液流により、ウェブ2の表面にソフトに付着している可能がある異物11およびブラスト材12が除去される。
【0047】
また、この洗浄槽3およびリンス槽4間に設置されているノズル装置5の内部の圧力損失は、前述したリンス槽4,4間に設置されているノズル装置5と同様に、貫通孔51の入口54側よりも出口55側において大きくなるように設定されている。これにより、リンス水の流れを入口54側に集中できるため、異物11やブラスト材12等の汚染の後工程への持込みをより低減することができる。
【0048】
この実施形態によれば、洗浄装置1aの構造が簡単になる。また、ウェブ2は洗浄槽3から一旦空中に引き上げられることなく最初のリンス槽4に搬入されるため、空中で異物が付着してしまう虞を防止することができる。したがって、簡単な構成により、高い清浄度でウェブ2を洗浄することが可能となる。
【0049】
本発明は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、特許請求の範囲内において、種々改変することができる。
【0050】
例えば、上述した実施形態において、洗浄槽3は1つ、リンス槽4は3つ設置されているが、洗浄槽3およびリンス槽4の設置数は図示の例に限定されるものではない。例えば、洗浄用のノズル装置が内部に設置された洗浄槽3が1つのみ設けられた構成であっても、本発明の効果を得ることは可能である。但し、洗浄槽3およびリンス槽4がそれぞれ少なくとも1つずつ設置されていることが好ましい。このようにすれば、ブラスト材12が洗浄後のウェブ2上に残置される事態がより確実に防止される。
【0051】
そして、洗浄槽3およびリンス槽4をそれぞれ必要に応じた数だけ組み合わせることにより、各槽3,4内に汚染が蓄積することなく、ウェブ2の仕上げ段階で高い清浄度を得ることができる。一般に、ウェブ2の搬送速度を上げると、後工程の槽に持ち込まれるブラスト材12の量が増えるため、複数の槽を多段化して使用することにより、高速化に対応することが可能となる。
【符号の説明】
【0052】
1,1a 洗浄装置
2 ウェブ
3 洗浄槽
4 リンス槽
5 ノズル装置
10 ブラスト材分級機構(回収手段)
11 異物
12 ブラスト材
13 洗浄液
14 リンス水(洗浄液)
51 貫通孔
52 流出口
53 導入口
54 入口
55 出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェブの表裏面の少なくとも一方の面に対して洗浄液を供給することにより、前記ウェブの面に沿った液流を発生させる液流発生ステップと、
前記液流により前記ウェブの面に存在する異物を除去する除去ステップと、を有し、
前記異物に接触させるためのブラスト材が前記洗浄液に混入されていることを特徴とするウェブの洗浄方法。
【請求項2】
前記液流発生ステップは、スリット状の貫通孔を有するノズル装置の内部に前記貫通孔を通過させて前記ウェブを搬送する搬送ステップと、前記ノズル装置の前記貫通孔の内面に開口するとともに搬送されるウェブの面に対向して設けられた流出口に連通する導入口に洗浄液を導入する導入ステップと、を有することを特徴とする請求項1に記載のウェブの洗浄方法。
【請求項3】
前記ブラスト材は、前記ウェブの電位と同極性の電位を帯びていることを特徴とする請求項1または2に記載のウェブの洗浄方法。
【請求項4】
前記ウェブの洗浄に使用された後の前記洗浄液中の前記ブラスト材を再利用のために回収する回収ステップをさらに有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のウェブの洗浄方法。
【請求項5】
ウェブの表裏面の少なくとも一方の面に対して洗浄液を供給することにより、前記ウェブの面に沿った液流を発生させるノズル装置を有し、前記液流により前記ウェブの面に存在する異物を除去するようにしたウェブの洗浄装置であって、
前記異物に接触させるためのブラスト材が前記洗浄液に混入されていることを特徴とするウェブの洗浄装置。
【請求項6】
前記ノズル装置は、前記ウェブを内部に通過させて搬送するためのスリット状の貫通孔と、当該貫通孔の内面に開口するとともに搬送されるウェブの面に対向して設けられた前記洗浄液の流出口と、前記流出口に連通する前記洗浄液の導入口と、を有することを特徴とする請求項5に記載のウェブの洗浄装置。
【請求項7】
前記ブラスト材は、前記ウェブの電位と同極性の電位を帯びていることを特徴とする請求項5または6に記載のウェブの洗浄装置。
【請求項8】
前記ウェブの洗浄に使用された後の前記洗浄液中の前記ブラスト材を再利用のために回収する回収手段をさらに有することを特徴とする請求項5〜7のいずれか一項に記載のウェブの洗浄装置。
【請求項9】
ウェブを洗浄するための少なくとも1つの洗浄槽と、当該洗浄槽の後工程側に設けられ前記ウェブをリンスするための少なくとも1つのリンス槽とを有し、
前記洗浄槽内または各洗浄槽間に、前記ブラスト材を混入させた洗浄液の液流を発生させるノズル装置が設置され、
前記リンス槽内または各リンス槽間に、リンス水の液流を発生させるノズル装置が設置され、
前記ウェブは、前記各ノズル装置の貫通孔を経由して前記洗浄槽および前記リンス槽に順次搬送されることを特徴とする請求項5〜8のいずれか一項に記載のウェブの洗浄装置。
【請求項10】
前記洗浄槽と前記リンス槽との間に、前記リンス水の液流を発生させるノズル装置が、前記貫通孔の入口および出口が前記洗浄槽および前記リンス槽の内部にそれぞれ開口するように設置されていることを特徴とする請求項9に記載のウェブの洗浄装置。
【請求項11】
前記各洗浄槽間若しくは前記各リンス槽間又は前記洗浄槽と前記リンス槽との間に設置される前記各ノズル装置の内部の圧力損失は、前記貫通孔の前記入口側よりも前記出口側において大きくなるように設定されていることを特徴とする請求項9または10に記載のウェブの洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−255342(P2011−255342A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−133826(P2010−133826)
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】