説明

ウェブシール装置

走行している材料ウェブを所定の気体雰囲気中で処理する装置は、移動している材料ウェブ2が第1の端の入口から第2の端の出口まで搬送されるプロセスチャンバ1と、プロセスチャンバ1内に所定の気体雰囲気を提供するように意図される気体を導入すると共に制御する手段とを備え、入口及び出口はそれぞれ、材料ウェブ2の周りの外部気体境界層3の進入を最小限に抑えつつ材料ウェブ2を通過させることができるように設計されたシール手段4a、4bを備え、プロセスチャンバ1内で、プロセスチャンバ1の第2の端からプロセスチャンバ1の第1の端へ気体を再循環させて、プロセスチャンバ1内で入口及び出口間のいかなる圧力差も実質的に打ち消すようになっている1つ又は複数の再循環チャネル7、8も備えることを特徴とする。当該装置は、非熱平衡プラズマ生成装置又はコロナ放電アセンブリの一部であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動している材料ウェブが異なる雰囲気の下流にあるプロセスチャンバに入るときに、材料ウェブを囲む気体境界層において、摩擦効果によって引き起こされた気体を除去するか又は当該気体の量を大幅に低減するシール機構の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ウェブは、移動している基材であり、織布及び不織布、凝集した織物繊維、ヤーン、プラスチックフィルム、金属箔並びに金属コイルのような可撓性材料から成る。一般的に、そのようなウェブは、オープンリール式プロセスによって搬送される。
【0003】
材料ウェブを、特定の気体雰囲気、通常は非反応性ガスを含有する不活性雰囲気中で処理する必要のあるプロセスでは、このような処理に使用されるプロセスチャンバに入る酸素/空気のような汚染外部気体を排除するか、又はそのような気体の導入を少なくとも最小限に抑えることが必要である。シール等の使用及び漏れのないプロセスチャンバの使用が実質的にこれを達成するが、材料ウェブを処理する場合、外部雰囲気を通る材料ウェブの移動によって引き起こされる摩擦効果又は引き込み(drag)効果によって、プロセスチャンバ内へ引き入れられる材料ウェブの表面上の/材料ウェブの表面に隣接する気体の薄い境界層、例えば空気が、材料ウェブと同じ方向に導入される可能性がある。さらに、材料ウェブが多孔質である場合、外部雰囲気からの流体、例えば酸素/空気又は水がさらに材料ウェブ内に捕捉される可能性がある。そのような汚染物質の存在によって、プロセスチャンバ内で実行されるプロセスの結果に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0004】
通常、非多孔質材料の場合、必要なプロセスが行なわれるプロセスチャンバの入口及び出口に簡単なシールが設置され、所定の気体又は気体の混合物がプロセスチャンバ内に噴射され、その結果、行なう必要のあるプロセスに必要な雰囲気がもたらされる。このシールは、入って来る汚染物質及び流出する所定の気体のバリアを形成するのに使用される。しかし、気体の除去に対するバリアは、プロセスチャンバに流入する汚染物質がプロセスチャンバから出ることを妨げる可能性があることも意味する。完璧なシールシステムがないため、プロセスチャンバ内の雰囲気を一定に維持することを確実にするために、特定量の所定の気体を連続的又は定期的に供給する必要がある。したがって、シールされると、プロセスチャンバは必要な雰囲気を生成するためにパージされ、その後多くの場合、必要な雰囲気を維持して所定の気体のいかなる損失も補うためにさらに連続的又は周期的に所定の気体が導入される。
【0005】
移動している材料ウェブは、プロセスチャンバ領域内に留まる間、汚染物質等である周囲の気体の推進流を誘導し続ける。十分な寸法のチャンバでは、この推進流が、材料ウェブの表面に沿って、材料ウェブの移動によって引き起こされる引き込み効果から離れたプロセスチャンバの領域を通って入口シールに戻る気体の再循環パターンを確立する。このタイプのシステムの例として、プロセスチャンバ内の材料ウェブの表面を処理するためにカーテンコーティングユニットが設けられるカーテンコーティング装置であってもよい。しかし、材料ウェブに対して平行な壁間に約25mm未満の間隙を必要とするプラズマ処理システムのように、プロセスチャンバがやむを得ず狭い場合(例えば、平行電極が材料ウェブを処理するのに必要なプラズマを生成する電位を印加するプラズマシステムの場合)、材料ウェブと、プロセスチャンバの境界壁との間の距離はごく小さく、例えば5mmとなり、入口へ戻る気体の自由な再循環を実質的に妨げることになる。この場合、異なる圧力の領域がプロセスチャンバの入口及び出口に形成される。この圧力差によって、入口シールを通ってシステム内に引き込まれる汚染物質の量が増加することになり、したがってシステム効率を低下させる。
【0006】
従来技術において見られる1つの主要な問題は、カーテンコーティングプロセスに必要とされる比較的大きなプロセスチャンバにおいてさえも、引き込み又は摩擦に起因して境界層が生じるため、材料ウェブがプロセスチャンバを通る速度が上昇するにつれて境界層の効果がより深刻なものとなることである。これはカーテンコーティング装置の場合に特に見られ、この理由は、約150m/分よりも速い速度で移動している材料ウェブにコーティングが施される場合、コーティングプロセスにおいて用いられる液体の「カーテン」が境界層によって変形し、その結果、例えば変位が均一でないために液体のカーテンが材料ウェブにわたってほぼ波状のパターンを呈し得ることから、基材の不規則なコーティングが生じ、コーティングプロセスが悪影響を受けるためである。
【0007】
境界層の効果を打ち消す複数の解決策が、特に、移動している基材に液体を塗布することに関して、特にカーテンコーティングプロセスに関して提案されている。
【0008】
米国特許第3508947号明細書及び米国特許第5976630号明細書は、空気シールドの異なる用途を記載している。米国特許第3508947号明細書では、境界層は、空気シールドを設けることによって除去され、この空気シールドは、境界層がカーテンに到達する前に境界層を取り除くことによってカーテンを境界層の効果から遮蔽するために、基材ウェブに隣接して配置される真空マニホルドを備えている。米国特許第5624715号明細書では、境界層の空気は、基材の境界層及びカーテンによって生じる境界層の両方から取り除かれる。米国特許第6743478号明細書及び米国特許出願公開第2004/0112282号明細書は、移動している基材から境界層を除去する吸引装置の使用を記載している。
【0009】
米国特許第6146690号明細書は、移動している平面基材にコーティングを施す方法であって、動圧を所定値に維持することが必要とされる場合に吸込装置を作動するようになっている動的空気圧センサをカーテンコーティング湿潤ラインの近傍に設けることによって、湿潤ライン近くの動圧を制御することにより境界層を妨げることを含む方法を記載している。欧州特許第0489978号明細書は、周囲の空気と空気シールドの内部との間の圧力差は、ウェブに付着する空気の境界層を排気するほど十分に高くなければならないが、基材の移動と反対の、コーティングカーテンから空気シールドへの方向の空気流を回避するように制限する必要があることを確認した。これは、このような空気流によってカーテンの少なくとも一部が空気シールド内に吸引されることになるためである。国際公開第03/053597号明細書は、空気シールドと、基材及び基材の境界空気層の移動方向と逆向きに移動される動的湿潤ライン近くの空気供給とを使用することを含むカーテンコーティングする方法及び装置を記載している。
【0010】
米国特許第2003/0145785号明細書は、基材表面及び基材表面上のロールに対して滑ることなく押圧されるシール要素の形態の、コーティング領域の上流にある減衰装置(attenuation device)を使用するカーテンコーティングプロセスを記載している。減衰装置は、電極機構又は超音波源を備えてもよい。本出願人の意見では、上記のもののいずれも、プラズマを生成するために短い距離だけ離間している必要のある平行電極間で生成されたプラズマにウェブを通す必要のあるプラズマ処理のようなプロセスに関して、本発明において想定される制限されたサイズのプロセスチャンバには適していない。
【0011】
国際公開第02/24987号明細書は、境界層が入口から装置内に入ることを阻止されると考えられている、高速ヤーン仕上げ装置及び方法を記載している。欧州特許第0989455号明細書は、減圧下でシート材料を連続的に処理する装置であって、ウェブタイプの基材が、共に駆動ローラによってシールされている入口から出口へ通ることのできるハウジングを備えた装置を記載している。ハウジングを通る基材の通路を維持するのに一連のローラ対が用いられ、また、各駆動ローラをシールすることによって隣接する駆動ローラ対間にシールチャンバを形成するために、回転可能なシール手段が設けられ、この駆動ローラは、欧州特許第0527859号明細書に記載されるように、真空下で連続基材を処理するカーテンコーティング塗布又は連続的なプラズマによって液体コーティングを施すために、減圧下で処理セルとして使用される。
【0012】
本発明は特に、実質的な大気圧又は真空下で非熱平衡プラズマ技術を使用する連続ウェブ処理方法に関する。プラズマは、物質の第4の状態と呼ばれることもある。物質に連続的にエネルギーを供給すると、その温度が上昇し、通常は固体から液体へ、次いで気体状態に変化する。エネルギー供給を続けることによって、この系は、気体の中性原子又は分子がエネルギー衝突によって分解し、負の電荷を帯びた電子、正の電荷又は負の電荷を帯びたイオン、及び他の励起種を生成するさらなる状態の変化を受け、集団挙動(collective behaviour)を呈するこれらの粒子の混合物がプラズマである。それらの電荷によって、プラズマは、これらのプラズマを容易に制御可能にする外部の電磁場によって強く影響される。さらに、プラズマは、エネルギー含量が高いことによって、液体若しくは気体による処理のように、他の物質の状態では不可能であるか又は困難である処理を達成することができる。
【0013】
「プラズマ」という用語は、その密度及び温度が何桁にもわたって変化する広範な系をカバーする。いくつかのプラズマは、非常に高温であると共にそれらの全ての微視的な種(イオン、電子等)が熱平衡に近い状態にあり、系に投入されるエネルギーが原子/分子レベルの衝突によって広く分散され、例としては、非常に高温で表面に溶融固体を吹き付けることを含むフレーム・プラズマ噴霧技術がある。しかし、衝突が比較的頻繁に起こらない低圧(例えば100Pa)プラズマのような他のプラズマは、広範な異なる温度でその成分種を有し、「非熱平衡」プラズマと呼ばれる。これらの非熱平衡プラズマでは、自由電子は数千ケルビン(K)の温度を有する非常に高温なものであるが、中性種及びイオン種は低温のままである。自由電子はほとんど質量を有しないため、系全体の熱容量が低く、プラズマは室温に近い温度で働くことによって、試料に損傷を与えるような熱負担を与えることなくプラスチック又はポリマーのような感温材料を処理することを可能にする。しかし、ホットエレクトロンは、高エネルギー衝突によって、強い化学的及び物理的な反応性を有することのできる高い化学ポテンシャルエネルギーを有するラジカル及び励起種の豊富な源を形成する。
【0014】
非熱平衡プラズマ処理は、結果として生じるコーティングが薄い層の場合であっても概して微細孔を伴わないため、繊細で感熱性の材料ウェブの形態の基材をコーティングするのに理想的である。コーティングの光学特性、例えば色は、多くの場合カスタマイズすることができ、プラズマコーティングは、例えばポリエチレンの極性を有しない材料、及び鋼(例えば金属リフレクタの耐食フィルム)、繊維等に良好に付着する。
【0015】
プラズマの1つのタイプは一般的に、拡散誘電体バリア放電(拡散DBD)と称され、この1つの形態を大気圧グロー放電と称することができる(Sherman, D.M. et al, J. Phys.D.; Appl. Phys. 2005, 38 547-554))。この用語は、プロセスガスの分解がプラズマギャップにわたって均一に生じ、結果としてプラズマチャンバの幅及び長さにわたって均一なプラズマがもたらされるグロー放電及び誘電体バリア放電の両方をカバーするのに一般的に使用される(Kogelschatz, U. 2002 「Filamentary, patterned, and diffuse barrier discharges」 IEEE Trans. Plasma Sci. 30, 1400-8)。これらは、真空及び大気圧の両方で生成され得る。そのような系は、電極表面間に最小限のアーク放電を有することが重要である。アーク放電は完全に防止されるのが好ましい。大気圧拡散誘電体バリア放電の場合、ヘリウム、アルゴン又は窒素を含む気体を、プラズマを発生させるプロセスガスとして使用し、高周波(例えば1kHzよりも大きい)電源を使用して、大気圧で電極間に均質又は均一なプラズマを生成する。拡散DBDを形成する正確なメカニズムは依然として議論すべき問題であるが、ペニング電離が、陰極表面からの二次電子放出と組み合わせて重要な役割を果たすというより多くの証拠がある(例えば、Kanazawa et al, J. Phys. D: Appl. Phys. 1988, 21, 838、Okazaki et al, Proc. Jpn. Symp. Plasma Chem. 1989, 2, 95、Kanazawa et al, Nuclear Instruments and Methods in Physical Research 1989, B37/38, 842及びYokoyama et al., J. Phys. D:Appl. Phys. 1990, 23,374を参照のこと)。
【0016】
大気圧プラズマは、例えばウェブ基材がプラズマ領域を自由に出入りでき、したがって、大小の面積のウェブ又はコンベヤで搬送される別個の被加工物をオンラインで連続的に処理する開口ポート又は周辺システムを産業界に提供する。スループットは高く、高圧動作から得られる高い種束によって強化される。繊維、包装、紙、医療、自動車、航空宇宙産業等の多くの工業部門は、連続的なオンライン処理にほとんど全面的に依存しており、大気圧で開口ポート/周辺システムのプラズマが新たな産業処理能力を提供するようになる。
【0017】
点、縁及び/又はワイヤ状の供給源を使用して生成される局所的に激しい電界、すなわち均一でない電界を生成するシステムは従来、コロナ放電システムとして説明されている。コロナ放電システムは、30年以上にわたり経済的且つ頑丈な表面活性手段を産業界に提供している。しかし、均一な蒸着を行なう市販のコロナ放電システムはない。これは、このようなコロナ放電システムは堆積プロセスに適用される場合にかなりの制限を有するためである。コロナ放電システムは通常、周囲の空気において動作し、その結果、蒸着化学(deposition chemistry)の制御を困難にする酸化蒸着環境をもたらす。コロナ放電システムの設計は、プロセスチャンバにわたって異なるエネルギー密度を生じる局所的に激しい放電を生成するようなものである。高エネルギー密度の領域では、基材は放電によって損傷を受けやすく、一方で低エネルギー密度領域では処理速度が制限される。低エネルギー密度領域において処理速度を高めようと試みた結果、許容不可能なレベルの基材又は高エネルギー領域におけるコーティング損傷が生じる。これらのエネルギー密度のばらつきは、プロセスチャンバにわたる非均一な蒸着化学及び/又は非均一な蒸着速度をもたらす。さらに、コロナプロセスは厚いウェブ又は立体的な被加工物には適合しない。
【0018】
フレーム処理システムは、熱平衡プラズマの例である。フレーム処理システムは、高い気体温度で動作し、本質的に酸化性であり、これは、蒸着プロセスに適用される場合にかなりの制限を有することを意味する。そのような高温の気体では、蒸着されるコーティングの前駆体の化学構造及び/又は機能性を維持することが不可能である。さらに、高いプロセス温度は、感熱性の基材とは適合しない。
【発明の開示】
【0019】
従来技術は概して、ウェブの空気境界層によって生じる問題を克服する手段に集中しており、代替的な雰囲気中で行なう必要のある下流のプロセスにおいて空気又は代替的な反応性気体のような気体汚染物質の進入を回避することに関する研究はほとんどなされていないように思われる。本発明の発明者らは、制御された雰囲気中をウェブが通過するプロセスチャンバの入口及び出口間の圧力差を打ち消すか又は少なくとも最小限に抑えることによって、制御された雰囲気中へ搬送される境界層の効果及びサイズを低減する手段を特定した。
【0020】
本発明によると、走行している材料ウェブを所定の気体雰囲気中で処理する装置であって、移動している材料ウェブが第1の端の入口から第2の端の出口まで搬送されるプロセスチャンバと、該プロセスチャンバ内に前記所定の気体雰囲気を提供するように意図される気体を導入すると共に制御する手段とを備え、前記入口及び前記出口はそれぞれ、前記材料ウェブの周りの外部気体境界層の進入を最小限に抑えつつ前記材料ウェブを通過させることができるように設計されたシール手段を備えた装置において、前記プロセスチャンバ内で、該プロセスチャンバの前記第2の端から該プロセスチャンバの前記第1の端へ気体を再循環させて、該プロセスチャンバ内で前記入口及び前記出口間のいかなる圧力差も実質的に打ち消すようになっている1つ又は複数の再循環チャネルも備えることを特徴とする装置が提供される。
【0021】
走行している材料ウェブを所定の気体雰囲気中で処理する装置であって、
第1の端に入口と、第2の端に出口とを有するプロセスチャンバであって、前記入口及び前記出口はそれぞれ、材料ウェブの周りの外部気体境界層の進入を最小限に抑えつつ前記材料ウェブを通過させるように設計されたシール手段を備えるプロセスチャンバと、
前記プロセスチャンバ内で前記所定の気体雰囲気を提供することを意図された気体を導入すると共に制御する手段と、
前記プロセスチャンバ内で、該プロセスチャンバの第2の端から該プロセスチャンバの第1の端へ気体を再循環させて、前記プロセスチャンバ内で前記入口及び前記出口間のいかなる圧力差も実質的に打ち消す1つ又は複数の再循環チャネルと
を備える装置。
【0022】
本発明の目的のために、「いかなる圧力差も実質的に打ち消す」という用語(及びその派生語)は、本発明によるチャネルを使用することによって、入口及び出口間の圧力差をゼロにまで完全に低減するか又はほとんど完全に低減すること、すなわち、入口及び出口間に最小限の圧力差しか生じない状況をカバーすることを意図している。よって好ましくは、一方が上述のチャネルを有していること以外は同一の2つ機器を比較する場合、チャネルを含む機器が有する入口及び出口間の圧力差は、上述のチャネルを有しない機器において生成される入口及び出口間の圧力差の10%以下であり、好ましくは5%以下である。
【0023】
好ましくは、所定の気体雰囲気は不活性雰囲気である。任意の好適な不活性ガスを使用してもよい。例えば、ヘリウム、アルゴン、窒素及びこれらの2つ以上の組み合わせ、ケトン及び/又は関連する化合物をさらに含有するアルゴン系混合物でもよい。これらの気体は単独で、又は例えば、プロセスチャンバ内で行なわれるプロセスによって決定される所定比でアンモニア、O2、H2O、NO2、CO2、空気若しくは水素のような潜在的に反応性である気体と組み合わせて使用してもよい。
【0024】
プロセスチャンバに入る前に材料ウェブを囲む境界層を形成し、概して引き込み又は摩擦の効果によってプロセスチャンバ内に引き入れられる気体は、材料ウェブがプロセスチャンバの外部へ引き出されるときに通る雰囲気を形成する任意の気体又は気体混合物であってもよい。したがって、材料ウェブが前処理されない限り、この気体は通常空気であるが、通常は、材料ウェブがプロセスチャンバに入る前に搬送されるときに通る外部雰囲気に存在する他の任意の気体を含んでもよい。
【0025】
シールの任意の好適な組み合わせを使用して、プロセスチャンバの入口を画定するシール手段と、材料ウェブが制御された雰囲気中で処理されるプロセスチャンバの出口を画定するシール手段とを形成してもよい。各シール手段は、例えば、固定シール部材を備えてもよく、又は使用時に材料ウェブがプロセスチャンバへ出入りするために間を通るローラ対の形態であってもよい。このシールは代替的に、容易に引っ掻き傷が付く材料及び/又は容易に損傷する繊細な材料を含むいくつかの材料ウェブには適しない可能性がある標準的なリップシールであってもよい。さらなる代替案は、通過する材料ウェブに取り込まれた空気を除去するのに効果的であることが知られているピンチローラを使用することである。ピンチローラは、固い(solid hard)表面又はシールを改善するゴムの柔らかい表面を有してもよく、摩擦を低減するために自由回転するか又は駆動してもよい。さらに他の代替案は、1つ又は複数の真空ローラと共にピンチローラを使用することを含んでもよい。この方法は、ピンチローラを、シールローラの全体サイズ及び複雑さを低減させつつ使用するという利点を有する。広い面積の材料ウェブ上でピンチローラを使用する場合、ローラの直径及びサイズはかなり大きくなるであろう。
【0026】
シールは、ローラ対間に異なる圧力のゾーンを生成する直列のピンチローラを備えた、欧州特許第0989455A1号明細書に記載されるタイプのものであってもよい。これらのピンチローラは、それ自体が小さいローラに対してシールされ、この小さいローラはさらに摩耗パッドに対してシールされる。摩耗パッドの代替案は、標準的なリップシールを使用することである。いずれかの設計によって、ピンチローラ上で使用されるかなりの圧力が最小限の気体(空気)しか取り込まないことを確実にすることができる。気体(空気)が少量しか取り込まれず、漏れが最小限であることによって、ピンチローラ対間で所望される必要な圧力環境が達成されると共に維持されることが確実となる。シールは、制御された雰囲気へ流入する気体(空気)及び漏れていく気体それぞれに対するバリアを形成するのに使用される。完全なシールシステムがないため、不活性チャンバ内の雰囲気が一定に保たれていることを確実にするために、必要な雰囲気を形成するのに必要とされる特定量の気体/気体混合物を連続的又は定期的に供給する必要がある。
【0027】
使用時に、材料ウェブがシール部材を通ってプロセスチャンバへ入るときに、材料ウェブの表面上の気体、通常は空気の薄い境界層が材料ウェブの移動によって、材料ウェブと同じ方向にプロセスチャンバ内へ引き入れられる。移動している基材は、入口シールを通過すると、周囲の気体の推進流を誘導する。この推進流は、基材表面に沿って、本発明による再循環チャネルを通って入口シールへ戻る気体の再循環パターンを確立する。本発明の再循環チャネルは、従来技術のシステムにおいて生じる、プロセスチャンバの出口と比較した場合の入口における相対的な減圧を最小限に抑えることによって入口及び出口間の圧力差をなくすか又は最小限に抑えて、プロセスチャンバ内に引き込まれる外部気体の量を低減/最小限に抑え、入口シールの効率を維持する。通常、入口及び出口間の相対的な圧力差を生じる引き込み効果は、材料ウェブがプロセスチャンバを通過するときに、材料ウェブに対して平行であるチャンバ壁間の距離が15cm未満になると生じ始める。チャンバ壁間の距離が減少するにつれて、相対的な圧力差がより明らかとなり、以下で説明するような拡散誘電体バリア放電プラズマシステムにおいて平行な電極間を材料ウェブが通過する場合に可能性があるように、チャンバ壁間の距離が2cm未満であり材料ウェブの厚さがチャンバ壁間の距離の最大80%になると、プロセスチャンバ内の引き込み効果がかなり大きくなり、プロセスガスは、材料ウェブによってプロセスチャンバ内へ引き込まれると実質的にほとんど入口へ戻ることができない。
【0028】
本発明による再循環チャネルを設けることによって、多くのプロセス、特に連続的なプラズマコーティングプロセスを、他の方法で可能な場合よりもさらに高速で行なうことができることが理解される。これは、材料ウェブが入口を通じて引き込む外部気体の量が大幅に減るためである。これは、プロセスチャンバ内の気体の量/割合がほとんど変化せず、はるかに高い割合の必要な気体を含むという点において、従来技術に勝る2倍の利点を有する。これは、外部気体を除去するためにシステムをパージする際に消費される必要な空気が大幅に減ることと、境界層の実質的に全てが必要な気体を含むこととを意味する。これらの利点はそれぞれ、プロセスチャンバ内でコーティングされる材料ウェブの良好な品質のコーティングをもたらす。境界層の効果に通常関連する変形が実質的に回避されるため、コーティングを、約150m/分、さらにはこれよりも速い速度で施すことができる。
【0029】
任意の数の再循環チャネルを設けてもよい。多孔質の材料ウェブの場合、材料ウェブの一方の側にある単一の再循環チャネル又は一連の再循環チャネルが好ましい。気体が材料ウェブのマトリックスを容易に通過できない非多孔質の材料ウェブの場合、材料ウェブのいずれか一方の側に少なくとも2つの再循環チャネルがあることが好ましい。
【0030】
プロセスチャンバ内で多孔質の材料ウェブを処理する場合、特に(上述したような)拡散誘電体バリア放電のような非熱平衡プラズマ処理用途に関して、材料ウェブの一方の側において単一の再循環チャネル又は一連の再循環チャネルを使用することは、材料ウェブの両方の側に再循環チャネルを有することに勝るいくつかの利点を有する。これらは、材料ウェブの一方の側において1つ又は複数の再循環チャンバを使用することによって、必要な気体(例えばヘリウム)及び(存在する場合に)反応剤が材料ウェブを通って再循環チャネルへ向かい、次いで通過することによって、コーティングプロセスの効率を高めると共に反応剤の損失を最小限に抑えることを含む。さらに、残りの反応剤を再循環チャネルを通じて排出することによって、特に例えば、チャンバが、2つ以上のプラズマがプロセスチャンバ内で生成される非熱平衡プラズマ生成チャンバ(例えば拡散DBD)として使用されるようになっている場合に、特に材料ウェブの主要な処理領域が、材料ウェブが通る第2のプラズマゾーンであると、コーティングプロセスをより効果的にすることができる。これは、残りの反応剤が(もしある場合に)、再循環チャネルを通って引き込まれ、次いで再びプラズマ処理され、また第1のプラズマ領域においてコーティング材料の形態で使用されることになるためである。
【0031】
必要な気体の損失が生じる可能性はあるが、大幅に低減される。しかし、以前のように、損失を補うために必要な気体をチャンバに加えてもよい。さらに、パージシステムを用いて気体の一部を除去し、入口シールを通って漏れている可能性のある、材料ウェブによって引き込まれた外部気体(通常は空気)の濃度が増加するのを防止してもよい。
【0032】
本発明者らが克服しようと試みているさらなる問題は、外部流体、通常は、上述したように、プロセスチャンバに入る多孔質の材料ウェブのマトリックス内にそれぞれ捕捉される空気及び溶媒/水のような気体並びに液体を除去する問題である。
【0033】
したがって、本発明による装置は、上述したプロセスチャンバの上流にある中間チャンバを備えてもよく、この中間チャンバは、走行している多孔質の材料ウェブがプロセスチャンバに入る前に、必要な気体で材料ウェブをパージして、中間チャンバに入ると多孔質の材料ウェブに捕捉されている流体を、材料ウェブがプロセスチャンバに入る前に必要な気体と交換するパージ手段と、多孔質の材料ウェブからパージされた流体を排出する除去手段とを備える。
【0034】
中間チャンバは、さらなるシールシステムであってこれを通って材料ウェブがプロセスチャンバの上流を走行しなければならないシールシステムを導入することによって単に形成してもよい。好ましくは、前述した任意の適切なシールシステムを再び用いて、中間チャンバへの入口を形成してもよい。一つの実施形態では、中間チャンバの出口シールは、プロセスチャンバの入口シールとしてさらに機能してもよい。好ましくは、中間チャンバとプロセスチャンバとを分離するシールは、不活性ガスを中間チャンバに噴射すると共に適切な排出手段により残りの必要な気体/流体混合物を排出することによって、取り込まれた外部の気体が、プロセスチャンバに入る前に所定の雰囲気、通常は不活性ガス中で使用される気体と交換されるように配置される。好ましくは、気体噴射手段及び排出手段は、気体通路が材料ウェブへ向かい、これを通り、次いでここから離れることを確実にするように、材料ウェブの反対の側に配置される。
【0035】
材料ウェブから排出される流体は、中間チャンバに入る前に材料ウェブに捕捉されている任意の流体を含んでもよく、例えば前の処理からの空気若しくは酸素又はいくつかの他の気体であるか、或いは処理前に材料ウェブを洗浄した溶媒のような液体であるか又は単に水等であってもよい。
【0036】
単一の中間チャンバを使用することによって、材料ウェブのマトリックスから十分な流体を除去することが可能となる。しかし、酸素のような外部流体の実質的に全ての痕跡(all traces)を除去することがいくつかの用途に必要である場合があり、これは、この痕跡があることによって、プロセスチャンバ内で行なわれるプロセスの結果に悪影響を与える可能性があるためである。そのような場合、一連の中間チャンバが好ましい。
【0037】
複数の中間チャンバが設けられる場合、これらは、1つの中間チャンバの出口シールがその隣の中間チャンバの入口を形成するように相互に連結してもよい。各中間チャンバを通して必要な気体を供給することと、必要な気体/排出された流体を除去することとは、他の中間チャンバ及びプロセスチャンバと完全に独立していてもよいが、好ましくはプロセスチャンバ内で必要な気体を供給及び排出することは中間チャンバ内の供給及び排出と独立している。しかし、中間チャンバは1つ又は複数のチャネルによって連結しているため、必要な純粋な気体は、プロセスチャンバに隣接している中間チャンバに導入され、次いで、材料ウェブが通過する方向とは反対の方向に中間チャンバを通じて移動する必要な気体の向流が生じるように、中間チャンバから離れるように気体が進むにつれて順次他の中間チャンバに導入される。必要な気体のこの向流は、中間チャンバにさらに低い濃度の流体しか存在しないように、材料ウェブがプロセスチャンバに近づくにつれて各中間チャンバの高濃度の必要な気体の中を通過することを確実にする。したがって、外部気体/必要な気体の混合物は次いで、適切な排出手段によって、材料ウェブが最初に通る中間チャンバから引き出される。
【0038】
次に、排出された気体は、必要な気体を分離して再生処理することによって雰囲気に対して必要な気体の損失を最小限に抑えるための適切な分離システムに搬送してもよい。
【0039】
多孔質の材料ウェブから必要な気体を再生処理する目的で、捕捉された必要な気体を材料ウェブから除去し、これを通常は空気と交換するために、又は複数のステップのプロセスでは第2の必要な気体と交換するために、プロセスチャンバの下流にある後処理チャンバにおいて逆のプロセスを行なうことができることが理解されよう。この逆のプロセスは、必要な気体が高価である場合に有用である。さらに、そのような逆のプロセスでは、一連の中間チャンバにおいて向流プロセスから排出された気体混合物は、後処理チャンバにおける必要な気体と外部気体との交換において使用される向流気体として用いてもよい。結果として生じる外部気体/必要な気体の混合物は、分離及び再生処理するために適切な分離システムへ搬送される。
【0040】
したがって、複数のプロセスのウェブの処理用に一連の外部気体除去チャンバを設けることができるか、又は代替的に、材料ウェブは第1のコーティングのためにシステム内を一方向へ通過し、次いでシステム内を逆方向に通過することによって、材料ウェブの第1の通過の後処理チャンバは第2の通過では中間チャンバとなることができ、またその逆も可能である。第2のコーティングの処理に必要な気体は変更してもよく、気体が流れる方向は逆になる。明らかに、これは、第1の通過の中間チャンバは次いで後処理排出チャンバ(post-process extraction chambers)として使用されることを意味する。中間チャンバ及びシールのモジュール構成によって、プロセスチャンバにおいて行われるプロセスの必要に応じて、複数の向流アセンブリを設置することも設置しないことも可能である。
【0041】
本発明の一つの実施形態では、多孔質の材料ウェブを使用する場合、このような材料ウェブは、材料ウェブが走行する方向が約90度変化するように、中間チャンバ又は後処理チャンバ内のローラの周りを搬送され得る(すなわち、ローラを離れると、材料ウェブの方向は、材料ウェブがローラに近づく方向に対しておおよそ垂直になる)。本発明者らは、材料ウェブがそのようなローラと噛み合うことは、捕捉されている外部気体を材料ウェブの孔から押し出す、材料ウェブ内の「孔」における「圧搾」効果を有する傾向にあることを特定した。さらに、材料ウェブ/ローラが相互接続する直前にローラ及び材料ウェブ間の間隙に向けて中間チャンバ内に必要な気体を導入することによって、必要な気体による不要な気体の交換が向上する。本発明者らは、そのような効果を有するのには1つのみのローラしか必要ではないが、そのようなプロセスは、好ましくは材料ウェブが90度移動した後で第1のローラと共に材料ウェブを効果的に挟む第2のローラを設けることによってさらに高めることができることを見出した。この挟み効果は、外部気体の引き込み効果を防止するか、又は少なくとも低減する。本発明のさらに他の実施形態では、各前処理チャンバ並びに後処理チャンバの入口及び/又は出口は、以下で図面においてさらに詳細に説明するような方法で材料ウェブを搬送してもよい。
【0042】
本発明のさらなる実施形態では、向流システムは、真空ニップローラシステムの一部を含んでもよく、このローラが、多孔質の材料ウェブから流体を排出する手段と、材料ウェブの周りの外部気体の境界層が進入することを阻止するか又は実質的に阻止する手段との両方として働くようにする。1つの好適な選択肢では、真空ニップローラは、プロセスチャンバの入口及び出口の両方のリードローラとして機能し、好ましくはプロセスチャンバにおける処理の前後で必要な気体を交換する目的で本発明の中間チャンバを含むようなサイズにしてもよい。そのようなローラを用いることによって、プロセスチャンバへ搬送される材料ウェブがプロセスチャンバ内での処理後の処理した材料ウェブと同じ速度で走行するというさらなる安心を使用者に提供する。これは、入口ニップローラの速度及び出口ニップローラの速度における非常に小さい差であっても、特に繊細な材料ウェブに関しては、材料ウェブの損傷又は引裂きをもたらす可能性があるという、このタイプのシステムでしばしば見られる特に困難な問題を解決する。
【0043】
したがって、好ましくは、必要に応じて2つ以上の気体を中間チャンバ及び後処理チャンバに供給してもよい。向流プロセスは、例えば、第1の処理/コーティングステップから空気及び通常は酸素を排出することが重要であるが、続いてプロセスチャンバ内で異なる必要な気体が必要とされる酸化ステップを第2のコーティングステップが含む場合に想定され得る。
【0044】
必要な気体は、チャンバ内の処理における雰囲気を形成するのに必要とされる任意の気体又は気体の混合物であってもよい。
【0045】
多孔質の材料ウェブと共に用いる本発明によるシステムは、プロセスチャンバと、任意選択的に材料ウェブから外部気体を除去する中間チャンバ内及び再生処理及び再利用のために必要な気体を排出する後処理チャンバ内の両方で圧力を平衡させる再循環システムとを備える。
【0046】
本発明に従って用いられる一般的な概念は、カーテンコーティング、紙処理プロセス、並びに連続プラズマ及びコロナ放電処理プロセスのような所定の雰囲気中で材料ウェブを処理する装置及び方法において用いることができる。特に、本願において説明する装置及び方法は、連続非熱平衡プラズマ処理装置(例えば、国際公開第03/086031号明細書及び国際公開第02/28548号明細書等に記載されるタイプのグロー放電のような拡散DBD)、及び/又は好適なコロナ放電装置において用いることを特に意図している。
【0047】
通常の非熱平衡プラズマ生成装置の場合、プラズマは、3mm〜50mm、例えば5mm〜25mmの間隙内の一対の電極間で発生し、したがって材料ウェブのコーティングに特に有用である。グロー放電プラズマのような大気圧における定常拡散誘電体バリア放電の生成は好ましくは、使用されるプロセスガスに応じて、最大5cm離間し得る隣接する電極間において得られる。しかし通常、電極間の距離は、2cm未満、好ましくは1cm未満であり、したがって、そのような幾何学的形状の電極間を通過する材料ウェブにとって入口及び出口間の圧力差の期間が徐々に増加することは悪影響となる可能性がある。放電は、電極間のプラズマ領域にわたってプロセスガスが均一に分解されることによって生成され、その結果プラズマチャンバの幅及び長さにわたって均質なプラズマがもたらされる。プラズマは、少なくとも一方が誘電体バリアで覆われている2つの平行な高圧平面電極間で生成される。電極の幾何学的形状は、プラズマ領域における均一な電界を確実にするようなものである。
【0048】
電極は、1kHz〜100kHz好ましくは10kHz〜50kHzにおいて1kV〜100kV、好ましくは1kV〜30kVの範囲の電極間の放電を起動及び維持するのに十分な実効(rms)電位によって高周波励振される。プラズマを形成するのに使用される電圧は通常、1kV〜30kV、より好ましくは2.5kV〜10kVであるが、実際の値は化学成分(chemistry)/気体の選択及び電極間のプラズマ領域のサイズによって変わる。
【0049】
任意の適切な電極システムを用いることができる。各電極は、誘電性材料内に保持される金属板又は金属ゲージ等を備えてもよく、又は例えば、本出願人の同時係属中の出願である国際公開第02/35576号明細書に記載されるタイプのものであってもよく、この場合、隣接する誘電体板を有する電極と、電極の平面を覆うように電極の外側に導電性の冷却液を導く冷却液分散システムとを含む電極ユニットが設けられている。このタイプの電極ユニットはそれぞれ、通常は、1つの面が誘電体板であり、内部に金属板又はゲージ電極が取り付けられる水密な箱を備える。冷却器と、噴霧ノズルを組み込んでいる再循環ポンプ及び/又は散布パイプとを備える液体分散システムに取り付けられた液体入口及び液体出口もある。冷却液(好ましくは水又は塩水溶液)は、誘電体板から離れた電極の面を覆う。誘電体板は、電極の外周を越えて延び、冷却液も、電極の周囲を境界する誘電体の少なくともその部分を覆うように誘電体板上に向けられる。水は、金網電極が使用される場合に、縁部、角部、メッシュ端部のようないかなる金属電極の境界、特異点又は不均一点も電気的に不動態化するように働く。
【0050】
代替的に、少なくとも1つの電極は、本出願人の同時係属中の出願である国際公開第2004/068916号明細書に記載されるタイプのものであってもよい。この場合、電極は、内壁及び外壁を有するハウジングを備え、少なくとも内壁は誘電体材料から形成される。ハウジングは、内壁と直接接触する少なくとも実質的に非金属の導電性材料を含むようになっている。このタイプの電極は、結果として生じる放電が均質であり、金属板の電極を用いるシステムと比較して不均質性を大幅に低減するので、グロー放電のような拡散誘電体バリア放電を生成するのに好ましい。好ましくは、非金属導電性材料は、電極の内壁と直接接触している。
【0051】
任意の適切な誘電体材料を使用することができ、例えば、ポリカーボネート、ポリエチレン、ガラス、ガラスラミネート、エポキシ充填(epoxy filled)ガラスラミネート等であってもよいが、これらに限定されない。好ましくは、誘電体は、電極内の導電性材料による誘電体のいかなる反り(bowing)又は外観の乱れ(disfigurement)も防止するために十分な強度を有する。好ましくは、使用される誘電体は、機械加工可能であり、厚さが最大50mm、より好ましくは最大40mmの厚さ、最も好ましくは15mm〜30mmの厚さで提供される。選択された誘電体が十分に透明ではない場合、生成されるプラズマを目視によって診断することを可能にするようにガラス等の窓を用いてもよい。
【0052】
非金属電極は、スペーサ等によって離間することができ、スペーサも誘電体材料から作製されることが好ましく、これによって、導電性液体の縁間に放電するいかなる可能性もなくすことによりシステムの全体的な絶縁耐力の増加に影響する。
【0053】
実質的に非金属の導電性材料は、例えば、水、アルコール及び/又はグリコール、あるいは塩水溶液及びそれらの混合物である極性溶媒であり得るが、塩水溶液が好ましい。水のみが使用される場合、水道水又は鉱水を含むことが好ましい。好ましくは、水は、アルカリ金属塩、例えばナトリウム金属塩又はカリウム金属塩又はアルカリ土類金属塩のような水溶性塩を最大約25重量%含有する。
【0054】
代替的に、実質的に非金属の導電性材料は、導電性ポリマーペースト組成物であってもよい。そのようなペーストは現在、電子部品の接着及び熱管理用に電子産業において用いられており、十分な流動性を有し、表面の不規則部分に適合する。
【0055】
好適なペーストは、シリコーン、ポリオキシポリオレフィンエラストマー、シリコーンワックス等のワックス系ホットメルト、樹脂/ポリマーブレンド、シリコーンポリアミドコポリマー、若しくは他のシリコーン−有機コポリマー等、又はエポキシ、ポリイミド、アクリレート、ウレタン若しくはイソシアネート系ポリマーを含んでもよい。ポリマーは通常、通常は銀である導電性粒子を含むが、金、ニッケル、銅、さまざまな金属酸化物、及び/若しくはカーボンナノチューブを含むカーボン、又は金属化ガラス若しくはセラミックビーズ等の代替的な導電性粒子を使用してもよい。
【0056】
導電性材料に液体を使用する1つの大きな利点は、各電極対が各電極内に異なる量の液体を有することができ、その結果、異なるサイズのプラズマゾーン、したがって経路長さ、よって潜在的には、異なる電極対間を基材が通過するときに基材の異なる反応時間がもたらされることである。これは、基材にコーティングが施されるときに、第1のプラズマゾーンにおける洗浄プロセスの反応時間の期間が、第2のプラズマゾーンの経路長さ及び/又は反応時間とは異なる場合があり、これらを変化させることに含まれる唯一の動作は、異なる量の導電性液体を異なる電極対に導入することであることを意味する。好ましくは、両方の電極が上述したようなものである場合、電極対の各電極に同量の液体が使用される。
【0057】
本発明に従って、電極と共に工業規模で使用され得るアセンブリのタイプの一例は、少なくとも第1の平行に離間した電極対及び第2の平行に離間した電極対を備える大気圧プラズマアセンブリである。各電極対の内側板間の間隔は、第1のプラズマ領域及び第2のプラズマ領域をそれぞれ形成し、アセンブリは、当該第1のプラズマ領域及び当該第2のプラズマ領域を通じて基材を順次搬送する手段と、当該第1のプラズマ領域又は当該第2のプラズマ領域のうちの一方に噴霧液体又は固体のコーティング作製材料を導入するようになっている噴霧器とをさらに備える。そのような機器の基本的な概念は、本出願人の同時係属中の出願である国際公開第03/086031号明細書に記載され、参照により本明細書に援用される。
【0058】
好ましい実施形態では、電極は垂直に配置される。垂直という用語は、実質的に垂直であることを含むことが意図され、水平に対して正確に90度に配置される電極のみに限定されないことを理解されたい。
【0059】
大気圧放電アセンブリは、任意の適切な温度で動作することができるが、好ましくは室温(20℃)〜70℃の温度で動作し、通常は30℃〜50℃の範囲の温度で用いられる。
【0060】
材料ウェブ上にコーティングされる材料は、気体、液体又は固体の形態で任意の適切な手段によってプロセスチャンバ内に導入してもよい。好ましくは、材料ウェブをコーティングする液体及び固体の材料が、国際公開第02/28548号明細書に記載の送達システムを使用して導入され、この場合、液体ベースのポリマー前駆体が、エアロゾルの液滴の形態で大気圧プラズマ放電又はこれから生じる励起種に導入される。さらに、コーティング形成材料は、キャリアガスなしでプラズマ放電又は結果として生じる流れに導入することができ、すなわち、コーティング形成材料は、例えば、直接噴射によって直接導入することができ、それによって、コーティング形成材料はプラズマに直接噴射される。
【0061】
コーティング形成材料は、任意の適切な噴霧器を使用して霧化してもよい。好ましい噴霧器は、例えば、超音波ノズル、すなわちエネルギーが高周波で液体に加えられる空気噴霧器又は振動噴霧器である。振動噴霧器は、オリフィスを通じて排出される液体流に高周波振動を伝達する電磁変換器又は圧電変換機を使用してもよい。これらは、サイズが振動周波数に応じる実質的に均一な液滴を形成する傾向にある。霧化される材料は、液体、固体、又は液体/固体スラリーの形態であることが好ましい。噴霧器は好ましくは、10μm〜100μm、より好ましくは10μm〜50μmの液滴サイズのコーティング形成材料を生成する。使用され得る好適な超音波ノズルは、ソノテク社(アメリカ合衆国、乳ヨーク州、ミルトン)又はレヒラー社(ドイツ、メッツィンゲン)からの超音波ノズルである。用いられ得る他の適切な噴霧器は、気体霧化ノズル、空気噴霧器、圧力噴霧器等であってもよい。
【0062】
本発明の装置は、プロセスチャンバ内に複数の噴霧器を含んでもよく、例えば当該装置が2つの異なるコーティング形成材料から基材上へのコポリマーコーティングを形成するのに使用される場合に特に有用であり、この場合、モノマーは非混和性であるか、又は例えば第1のものは固体であり第2のものは気体若しくは液体であるように異なる相にある。
【0063】
この実施の形態で使用されるような本発明の必要な気体は、プラズマを生成するのに使用されるプロセスガスである。本発明において用いる適切なプラズマを生成するのに適した任意の気体を使用することができるが、例えばヘリウム、アルゴン、窒素、及びこれらの2つ以上の混合物、ケトン及び/又は関連する化合物をさらに含有するアルゴン系混合物のような不活性ガス又は不活性ガス系混合物が好ましい。これらのプロセスガスは、単独で、又は例えば、プロセスチャンバ内で行なわれるプロセスによって決定される所定比でアンモニア、O2、H2O、NO2、CO2、空気若しくは水素のような潜在的に反応性である気体と組み合わせて使用してもよい。最も好ましくは、プロセスガスはヘリウムのみであるか、又は酸化ガス若しくは還元ガスとの組み合わせである。気体の選択は、行なわれるプラズマプロセスによって決まる。酸化ガス又は還元ガスが必要とされる場合、90%〜99%の希ガスと1%〜10%の酸化ガス又は還元ガスとを含む混合物で用いられるのが好ましい。したがって、そのような高価な気体を再利用できることが、使用者にとって大きな経済的節約となることが理解される。
【0064】
酸化条件下で本発明の方法を用いて、基材上に酸素含有コーティングを形成することができる。例えば、シリカ系コーティングは、噴霧ケイ素含有コーティング形成材料から基材表面上に形成することができる。還元条件下では、本発明の方法を用いて酸素非含有コーティングを形成することができ、例えば炭化ケイ素系コーティングを、噴霧ケイ素含有コーティング形成材料から形成することができる。したがって、所定の雰囲気のタイプに関して選択可能であることが望まれる場合、空気のような外部気体のシステム内への進入を最小限に抑え、材料ウェブに施されるコーティングの望ましくない酸化を回避することが非常に重要である。
【0065】
窒素含有雰囲気中では、窒素は基材表面に結合することができ、窒素及び酸素の両方を含有する雰囲気中では、硝酸塩を基材表面に結合し、及び/又は基材表面上に形成することができる。そのような気体を用いて、コーティング形成物質に暴露する前に基材表面を前処理することもできる。例えば、基材の酸素含有プラズマ処理は、施されるコーティングの接着性を改善することができる。酸素含有プラズマは、酸素ガス又は水のような酸素含有材料をプラズマに導入することによって生成される。
【0066】
一つの実施形態では、本発明のウェブ基材は、異なる組成の複数の層でコーティングすることができる。これらの層は、基材を一連の異なるプロセスチャンバに通すことによって、又は基材若しくは部分的にコーティングされた基材をプロセスチャンバに繰り返し通すことによって施すことができる。複数回コーティングされた適当な基材を達成するために、任意の適切な数のサイクル又はプロセスチャンバを用いることができる。
【0067】
例えば、本発明に従って用いられる基材は、複数のプロセスチャンバ及び/又はプラズマに付すことができ、複数のプロセスチャンバ及び/又はプラズマはそれぞれ、例えば第1のプラズマ領域が、例えば酸素/ヘリウムのプロセスガス中で基材表面を酸化する手段として用いられ得るようにさまざまに機能することができる。しかし、基材は一旦酸化されると、酸素と使用されるコーティング材料とが相互作用するため、第2のコーティングステップが起こり得る前に材料ウェブから全ての酸素を除去することが必須であり得る。これは、本発明によると、全てではないにしてもかなりの酸素を材料ウェブから除去することを確実にするために、コーティングを施す前に材料ウェブが通らなければならない1つ又は複数の中間チャンバを組み込むことによって容易に達成することができる。これは、1つのプロセスチャンバ、又は本発明に従って必要に応じて機能するようになっている中間チャンバが組み入れられた一連のプロセスチャンバのいずれかを使用することによって達成することができる。材料ウェブのさらなるコーティング又は処理を必要に応じて行なって、材料ウェブ上に、必要とされる全体的なコーティングを得ることができる。
【0068】
基材がコーティングされるさらに他の実施形態では、複数の一連のプラズマアセンブリを有するものよりも、1つのプラズマ領域を含むプロセスチャンバを、プロセスチャンバに導入されると共に通常は電極間に形成されるプラズマ領域を通過するコーティング材料を変更する手段と共に用いることができる。例えば、最初に、プラズマ領域を通過する物質は、電極間に電位を印加することによって励起されてプラズマ領域を形成するヘリウムのようなプロセスガスのみであり得る。結果として生じるヘリウムプラズマを用いて、プラズマ領域を通過するか又はプラズマ領域に対して移動している基材を洗浄及び/又は活性化することができる。次いで、1つ又は複数のコーティング形成前駆体材料及び活性材料を導入することができ、この1つ又は複数のコーティング形成前駆体はプラズマ領域を通過することによって励起され、基材を処理する。基材は、複数回プラズマ領域を通過して複数成層され、適切な場合には、コーティング形成前駆体材料の組成は、例えば1つ又は複数のコーティング形成前駆体材料及び/又は活性材料を入れ替えること、添加すること、或いはこれらの材料の1回又は複数回の導入を中止することによって変化させることができる。
【0069】
任意の適切な非熱平衡プラズマ機器を使用して本発明の方法を行うことができるが、連続モード又はパルスモードのいずれかで動作し得る、大気圧グロー放電、誘電体バリア放電(DBD)及び低圧グロー放電のような拡散誘電体バリア放電を形成する手段が好ましい。
【0070】
プラズマ機器はまた、基材がプラズマ源から離れて下流に配置される、例えば国際公開第03/085693号明細書に記載されるようなプラズマジェットの形態であってもよい。
【0071】
大気圧拡散誘電体バリア放電を生成することによってプロセスガスの分解がプラズマギャップにわたって均一に起こり、その結果、プラズマチャンバの幅及び長さにわたって均質なプラズマを生じる任意の従来の手段を使用してもよい。例えば、大気圧プラズマジェット、大気圧マイクロ波グロー放電、及び大気圧グロー放電である。通常、そのような手段は、プロセスガスとしてヘリウムと、高周波(例えば1kHzよりも大きい)電源とを用いて、前述したペニング電離メカニズムによって大気圧で均質な拡散誘電体バリア放電(例えば均質なグロー放電)を生成する。上述したコロナプロセスは、プロセスガスの均一な分解がプラズマギャップにわたって均一に起こらず、したがって均質な放電を生成しないため、上述のものからは除外される。
【0072】
低圧グロー放電プラズマのような低圧プラズマの場合、液体前駆体及び活性材料は、容器内に保持されているか、又は上述のような噴霧液体スプレーの形態で反応器内に導入されることが好ましい。低圧プラズマは、プラズマ放電を加熱及び/又はパルス化する液体若しくは気体の前駆体及び/又は活性材料を用いて行うことができるが、さらなる加熱を必要とすることなく実行することが好ましい。加熱が必要である場合、低圧プラズマ技術を用いる本発明による方法は、周期的、すなわち、液体前駆体が加熱を伴うことなくプラズマ処理され、その後プラズマ処理を伴うことなく加熱される等であり得るか、又は同時に、すなわち液体前駆体の加熱及びプラズマ処理が一緒に起こり得る。プラズマは、高周波、マイクロ波又は直流(DC)のような任意の適切な供給源からの電磁放射によって生成され得る。8MHz〜16MHzの範囲の高周波(RF)が適しており、13.56MHzのRFが好ましい。低圧拡散誘電体バリア放電又はグロー放電の場合、任意の適切な反応チャンバを用いることができる。電極システムの電力は、1W〜100Wであり得るが、連続低圧プラズマ技術には5W〜50Wの範囲であることが好ましい。チャンバ圧力は、例えば0.1mbar〜0.001mbar(10Pa〜0.1Pa)の任意の適切な圧力に低減され得るが、0.05mbar〜0.01mbar(5Pa〜1Pa)が好ましい。
【0073】
特に好ましいパルス化プラズマ処理プロセスは、プラズマ放電を室温でパルス化することを含む。プラズマ放電は、例えば10W未満、好ましくは1W未満の電力といった非常に低い平均電力が印加されるように、特定の「オン」時間及び「オフ」時間を有するようにパルス化される。オン時間は通常、10μ秒〜10000μ秒、好ましくは10μ秒〜1000μ秒であり、オフ時間は通常、1000μ秒〜10000μ秒であり、好ましくは1000μ秒〜5000μ秒である。噴霧液体前駆体及び活性材料は、追加のガスを用いることなく、すなわち直接噴射によって真空中に導入され得るが、ヘリウム又はアルゴンのような追加のプロセスガスを、必要であると見なされる場合にはキャリアガスとして用いてもよい。
【0074】
低圧プラズマの選択肢の場合では、プラズマを形成するプロセスガスは、大気圧システムに関して説明したものと同様であり得るが、代替的には、ヘリウム及び/又はアルゴンのような希ガスを含んでいなくてもよく、したがって純粋に酸素、空気若しくは代替的に酸化ガスであってもよい。
【0075】
プロセス領域は、1つ又は複数の電極対を含み、この電極対間で、プロセスチャンバを通過するプロセスガス又は必要な気体の励起によってプラズマが生成される。プロセスチャンバは、材料ウェブが、第1の平行な電極対(好ましくは垂直に位置合わせれる)間に生成されるプラズマを通過し、次いで第2の平行な電極対(好ましくは同様に垂直に位置合わせれる)間に生成されるプラズマを通過するように設計してもよい。材料ウェブを搬送する任意の適切な手段を用いることができるが、好ましくは基材を搬送する手段は、オープンリールベースのプロセスである。基材は、上方方向又は下方方向に第1のプラズマ領域を通じて搬送することができる。好ましくは、基材が1つのプラズマ領域を上方方向に通過し、他のプラズマ領域を下方方向に通過する場合、プロセスチャンバ内で基材を両方のプラズマ領域へガイドする1つ又は複数のガイドローラが設けられる。各プラズマ領域内に基材が滞留する時間は、コーティングの前に予め定めることができ、各プラズマ領域を通る基材の速度を変えるよりも、基材が各プラズマ領域を走行するときに通る必要のある経路長さを変えて、基材が同じ速度で両プラズマ領域を通過し得るが、それぞれのプラズマ領域を通る経路長さが異なることによって、各プラズマ領域において異なる期間滞留することができるようにしてもよい。
【0076】
本発明の電極が垂直に配向されることを鑑みて、基材は、本発明による大気圧プラズマアセンブリ内を、1つのプラズマ領域を上方に、他のプラズマ領域を下方に搬送されることが好ましい。以下で説明するように、隣接する電極間の距離に基づいて、基材は概してプラズマ領域内を垂直方向又は対角線方向に搬送されるが、多くの場合は垂直又は実質的に垂直であることが理解される。
【0077】
好ましくは、各基材は、大気圧プラズマアセンブリを一回通過させるだけでよいが、必要であれば大気圧プラズマアセンブリをさらに通過するように第1のリールに戻してもよい。
【0078】
少なくとも一方が誘電体材料でコーティングされている追加の電極対をシステムに追加して、使用時に基材が通過するさらなる連続するプラズマ領域を形成してもよい。この追加の電極対は、基材が前処理ステップ又は後処理ステップを受けるように、第1の電極対及び第2の電極対の前後に位置付けることができる。上記追加の電極対は、第1の電極対及び第2の電極対の前後に位置付けることが好ましいが、第1の電極対及び第2の電極対の後が最も好ましい。追加の電極対によって形成されるプラズマ領域において施される処理は、第1のプラズマ領域及び第2のプラズマ領域で行われるものと同じであるか又は異なっていてもよい。前処理又は後処理のために追加のプラズマ領域が設けられる場合、基材が大気圧プラズマアセンブリを通過することを確実にするために、必要な数のガイド及び/又はローラが設けられる。同様に、基材は、大気圧プラズマアセンブリ内の全ての近接しているプラズマ領域を上方及び下方に交互に搬送されることが好ましい。
【0079】
本発明を用いて、多くの異なるタイプの基材コーティングを形成することができる。基材に形成されるコーティングのタイプは、使用されるコーティング形成材料によって決まり、本発明の方法を用いて、基材表面上にコーティング形成モノマー材料を(共)重合することができる。コーティング形成材料は、有機若しくは無機、固体、液体若しくは気体、又はそれらの混合物であってもよい。捕捉される活性材料は、本発明の機器及びプロセスによって基材表面上に塗布され得る。活性材料という用語は、本明細書において使用する場合、特定の環境にある場合に1つ又は複数の特定の機能を果たす1つ又は複数の材料を意味するように意図され、本願の場合は、プラズマ環境内で反応を形成する化学結合を受けない化学種である。活性材料は、「反応性」という用語からは明らかに区別されることが理解される。反応性材料又は化学種は、プラズマ環境内で反応を形成する化学結合を受ける種を意味することが意図されている。活性材料はもちろん、コーティングプロセス後に反応を受けることができる。
【0080】
基材は、合成繊維及び/又は天然繊維、繊維織物又は繊維不織物、織物又は不織物、天然繊維、合成繊維セルロース材料、凝集した織物繊維、ヤーン等を含むウェブの形態であってもよい。しかし、基材のサイズは、大気圧プラズマ放電が生成される容量の寸法、すなわちプラズマを生成する手段の電極間の距離によって制限される。
【0081】
コーティングされる基材は、例えば、プラスチック、例えばポリエチレン及びポリプロピレン等のポリオレフィンのような熱可塑性樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル(例えばポリアルキレンテレフタレート、特にポリエチレンテレフタレート)、ポリメタクリレート(例えばポリメチルメタクリレート及びヒドロキシエチルメタクリレートのポリマー)、ポリエポキシ、ポリスルホン、ポリフェニレン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリアミド、ポリアラミド、ポリスチレン、フェノール、エポキシ及びメラミン−ホルムアルデヒド樹脂、並びにそれらのブレンド及びコポリマーを含んでもよい。好ましい有機高分子材料は、ポリオレフィン、特にポリエチレン及びポリプロピレンである。他の基材は、例えば、アルミニウム、鋼、ステンレス鋼及び銅等から作製される金属薄膜を含む。
【0082】
本発明の装置を用いてコーティングされる基材は、さまざまに使用することができる。例えば、酸化雰囲気中で生成されるケイ素系コーティングは、基材のバリア特性及び/又は拡散特性を高めることができ、また、追加の材料が基材表面に付着する能力を高めることができる。ハロ官能性有機又はシロキサンコーティング(例えばペルフルオロアルケン)は、疎水性、疎油性並びに耐燃料油性及び耐汚損性を増加させ、基材における気体及び液体のフィルタリング特性及び/又は放出性を高めることができる。ポリジメチルシロキサンコーティングは、基材の耐水性及び放出性を高め、また、布地の触感の柔らかさを高めることができ、ポリアクリル酸ポリマーコーティングは、可湿性コーティング、生体適合性コーティング、若しくは基材表面への接着を促進する接着層、又はラミネート構造の一部として使用することができる。コーティング中にコロイド金属種を含むことによって、基材に表面導電性を提供するか、又は基材の光学特性を高めることができる。ポリチオフェン及びポリピロールは、金属基材を耐食性にすることもできる導電性ポリマーコーティングを提供する。酸性又は塩基性の機能性コーティングは、表面をpH制御し、アミノ酸及びタンパク質のような生物学的に重要な分子との相互作用を制御する。
【0083】
本明細書において説明する発展した形態のそれぞれによって、プロセスチャンバを通る材料ウェブの速度が改善し、この材料ウェブの速度は、大気圧プラズマ処理プロセスの場合、多孔質の材料ウェブ及び非多孔質の材料ウェブを現在可能であるよりも高速で操作する連続大気圧プラズマ処理プロセス(CAPTP)を可能にする。この設計は、現在は大気圧環境で実行される真空プラズマチャンバに制限されている多孔質の材料ウェブの処理を可能にする。このプロセスは、現在のバッチ式の方法ではなく、連続する方法で実行することができる。
【0084】
上記設計によって、CAPTPの設計が実質的に平らなシステムになることが可能となる。適当なシールが、以前は考えることのできなかった多くのタイプのシステムの幾何学的形状を可能にするであろう。
【0085】
本発明は、添付の図面を参照して、例示としてのみ与えられる本発明のいくつかの実施形態の以下の説明から、よりはっきりと理解されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0086】
図1aにおいて、材料ウェブ2が通過するプロセスチャンバ1が設けられている。プロセスチャンバ1は、入口がシール4aによって、且つ出口がシール4bによってシールされている。シール4aはプロセスチャンバ1の入口を画定し、シール4bは出口を画定する。必要な気体は、プロセスチャンバ1内に所定の雰囲気を維持することが必要であるときにシステムに導入できる。図1aは、必要な気体がチャンバ壁に沿って出口から入口へ再循環することによって、発達しかねないいかなる圧力差も均等にし/打ち消して、入口及び出口間の圧力差を防止し、且つそのような圧力差によって生じる外部気体のシステム内への進入を実質的に防止することができるように、移動している材料ウェブに対して平行であるが当該材料ウェブからは十分に離れている(例えば25mm)壁を備えたプロセスチャンバ1を有するシステムを示すことを意図している。シール4aは、外部気体、例えば空気3がプロセスチャンバ1内に引き込まれるのを実質的に防止する。これらの符号は、同じ特徴部を示すのに以下の全ての図において用いられる。
【0087】
同じ状況は図1bでは生じない。図1bでは、プロセスチャンバ1の幅が大幅に小さいことが理解される。この場合、材料ウェブ2とプロセスチャンバ1の外壁との間には十分な自由空間がないため、必要な気体の再循環は、プロセスチャンバ1の寸法と、プロセスチャンバ1を通過する材料ウェブ2によって生じる引き込み効果とによって実質的に防止される。この場合、異なる圧力の領域が、プロセスチャンバ1の入口及び出口に形成される。この圧力差によって、多くの量の汚染物質6が入口シール4aを通ってシステム内に引き込まれて、システムの効率を低下させることにつながる。出口のシール4bでも同様に、外部環境に対する圧力の増加は、プロセスチャンバ1内の気体を、出口のシール4bを通して吹き出させる。
【0088】
図2は、2つの再循環チャネル7、8が設けられている場合の本発明の第1の実施形態を示している。これらの再循環チャネル7、8は、システム内の必要な気体を、プロセスチャンバ1内で、シール4bに近接している出口領域からシール4aに近接している入口領域へ再循環させることを可能にする。このような再循環システムは、入口領域及び出口領域間の差圧の形成を防止し、入口のシール4aの完全性を保護して、外部気体の進入を防止/最小化する。プロセスチャンバ1を連続的又は周期的にパージして、材料ウェブ2の周りの境界層としてプロセスチャンバ1内に吸い込まれる外部気体を除去するために、必要なプロセスガスの入口5及び出口9も設けられている。
【0089】
図3は、多孔質の材料ウェブ2に捕捉されている流体をプロセスチャンバ1に入る前に除去する手段と組み合わせて、多孔質の材料ウェブ2を処理するために使用されている、図2で説明したような本発明の第1の実施形態を示している。図3では、プロセスチャンバ1の上流に、中間チャンバ10が設けられている。シール4aは、プロセスチャンバ1の入口シール及び中間チャンバ10の出口シールとして働く。中間チャンバ10の入口のシールは4cとして示されている。図3では、プロセスチャンバ1で使用される気体混合物が11において中間チャンバ10へ導入される。中間チャンバ10は、必要な気体が除去された流体と共に、入口11から、中間チャンバ10を走行する多孔質の材料ウェブ2を通って流れて、出口12から出ることができるように設計されている。好ましくは、除去された気体/流体の混合物は次いで、必要な気体をシステム内で再び使用する場合に、再利用のために戻される。よって、材料ウェブ2のマトリックスは、プロセスチャンバ1に入る前には実質的に外部流体を含まず、材料ウェブ2の周りの境界層も、空気のような不要な外部気体ではなく、必要な気体から実質的に構成される。
【0090】
図4には、プロセスチャンバ1の上流に、一連の2つの向流式の中間チャンバ10及び15が設けられた図3のシステムの拡大バージョンが示されている。この場合、シール4cは、中間チャンバ10の入口シールと、中間チャンバ15の出口シールとを示し、シール4dは、中間チャンバ15の入口シールを示している。必要な気体は、最初に入口11を通って中間チャンバ10内へ供給され、次に材料ウェブ2へ入ってこれを通って進み、チャネル17を通って中間チャンバ15へ出て再び材料ウェブ2を通り、次いで、結果として生じる必要な気体及び前に捕捉された流体/境界層の混合物が、再利用のために出口12から除去される。
【0091】
プロセスチャンバ1における処理に続いて、材料ウェブ2から必要な気体を除去するために、追加のチャンバ18も設けられている。外部気体混合物(又は図示しない次のプロセスチャンバに必要な気体混合物)が入口19aから材料ウェブ2へ向かいこれを通って、プロセスチャンバ1から必要な気体を全て除去する。結果として生じる気体混合物は、再利用のために出口19bから除去される。チャンバ18は、プロセスチャンバ1の出口シールとして働く入口のシール4bと出口のシール4eとを有している。
【0092】
図5は、一連の中間チャンバと、多孔質性基材の材料ウェブから不要な気体を除去する後処理チャンバとを備えた本発明による大気圧プラズマシステムを示している。いずれかの実施形態を互いに独立して使用することができるが、システムの効率を最大限にするために両方の実施形態を使用することが好ましいことを理解されたい。図5は、材料ウェブ2が通過するプロセスチャンバ1を示している。プロセスチャンバ1は、2つのプラズマ領域、すなわち平行な電極32及び33間に第1のプラズマ領域と、平行な電極34及び35間に第2のプラズマ領域とを備えている。プロセスチャンバ1の入口及び出口を連結すると共にこれらの間のいかなる圧力差も打ち消すために、再循環チャネル7が設けられている。
【0093】
図5は、材料ウェブ2のマトリックスに捕捉されている流体を、必要な気体と交換する3つの中間チャンバ10、15、30の向流システムも示している。本発明のタイプのプラズマプロセスでは通常、プロセスチャンバ1と、入口11からチャネル17及び31を通って出口12への中間チャンバ10、15、30を通過する向流システムとの両方において用いられる必要な気体は、上述の任意の適切な気体であるが、通常はヘリウムを含む。この場合、シール4cは、中間チャンバ10の入口シール及び中間チャンバ15の出口シールを示し、シール4dは、中間チャンバ15の入口シール及び中間チャンバ30の出口シールを示し、シール4fは、中間チャンバ30の入口シールを示している。さらに、この例では、プロセスチャンバ1における材料ウェブ2の処理後に、後処理チャンバ44に入る必要な気体(通常はヘリウム)を外部気体(通常は空気)と交換する3つの後処理チャンバ42、43、44の向流システムも設けられている。必要な気体は、後処理チャンバ44内の全般的な雰囲気の一部を形成するか、及び/又は材料ウェブ2の周りの境界層を構成するか、及び/又は材料ウェブ2のマトリックス内に捕捉され得る。この場合、シール4gは、後処理チャンバ44の出口シール及び後処理チャンバ43の入口シールを示し、シール4hは、後処理チャンバ43の出口シール及び後処理チャンバ42の入口シールを示し、シール4jは、後処理チャンバ42の出口シールを示している。後処理チャンバ42は、チャネル45を介して後処理チャンバ43に接続され、後処理チャンバ43は、チャネル46を介して後処理チャンバ44に接続されている。気体は、必要な気体の回収のために、入口41によって後処理チャンバ42に入り、出口47から後処理チャンバ44を出る。
【0094】
使用時には、材料ウェブ2は、入口のシール4aを通ってプロセスチャンバ1に入る前に、外部の(図示しない)供給手段からシール4fを通って中間チャンバ30に入り、次いで中間チャンバ15及び10を順次進む。材料ウェブ2は、中間チャンバ30、15、10を通過するときに、中間チャンバ10、15及び30を反対方向に通過するさらに濃縮された量の必要な気体(ヘリウム)と接触する。この3つの中間チャンバ10、15、30のプロセスは、材料ウェブ2の周りの境界層に残っているいかなる外部気体も除去して、プロセスチャンバ1に入る境界層が実質的に必要な気体から成るように設計される。3つの中間チャンバ10、15、30のプロセスは、全てではないにしても大部分の材料ウェブ2内に捕捉されている流体が、中間チャンバ30に入ると、材料ウェブ2がプロセスチャンバ1に入るときまでに必要な気体と交換されていることも確実にする。出口12を通って中間チャンバ30から出る必要な気体と汚染物質(外部気体及び捕捉された流体)との混合物は、その後、再利用の前に外部気体からプロセスガスを分離する再処理システムに搬送されるか、又は代替的に出口12からチャネル40に沿って、プロセスチャンバ1を通過した後の材料ウェブ2から必要な気体を除去するように設計された向流プロセスの入口41に直接搬送されてもよい。材料ウェブ2は、プロセスチャンバ1に入ると、適切な処理のために、電極32及び33間と、電極34及び35間との2つのプラズマ領域を順次通過し、次いで出口のシール4bを通してプロセスチャンバ1から引き出される。再循環チャネル7は、プロセスチャンバ1の入口及び出口間の圧力差を最小限に抑えるように設けられている。図5の場合、材料ウェブ2は、後処理チャンバ44、43、42を順次通過し、後処理チャンバ42、43、44を順次通過するさらに濃縮された量の外部気体(空気)と接触し、材料ウェブ2がシール4jを通って後処理チャンバ42から出る前に、できる限り多くの必要な気体を除去する。
【0095】
図6は、材料ウェブ2の孔から不要な気体を除去することを高める本発明の強化された形態を示している。図6では、材料ウェブ2は、ピンチローラ101及び102を通過する前後の材料ウェブ2の水平経路を維持したまま、最初にピンチローラ101及び102間を搬送される。材料ウェブ2は次いで、材料ウェブ2の経路がローラ103上を移動した後に方向が約90度変わるように、ローラ103に搬送されてこの上を案内される(すなわち、材料ウェブ2の移動の方向は、ローラ103を離れると、材料ウェブ2がローラ103に近づく方向に対しておよそ垂直である)。材料ウェブ2とローラ103との噛み合いによって、材料ウェブ2内の「孔」に対して最初の伸張効果すなわち孔開放効果が生じ、材料ウェブ2の孔から、捕捉されている外部気体を押し出す。さらに、必要な気体(本明細書で使用されるプラズマの例では通常はヘリウム)を、最初の材料ウェブ2/ローラ103の相互接続の直前にローラ103及び材料ウェブ2間の間隙に導入することによって、必要な気体による不要な気体の交換が高められる。本発明者らは、そのような効果が生じるのには1つのみのローラ103が必要であるが、この効果は、材料ウェブ2が90度移動した後にローラ103と併せて使用すると材料ウェブ2を「挟む」ようになっている第2のローラ104を設けることによって、さらに高めることができる。材料ウェブ2を2つのローラ103及び104間に搬送することから生じる挟み効果は、材料ウェブ2がシステムを素早く移動することによって生じる引き込み効果によって、不要な気体が材料ウェブ2と共にシステムのローラ103及び104を通過する可能性を回避するか又は少なくとも実質的に低減する。
【0096】
図7は、不要な気体の交換が、図6で説明したタイプの一連のローラ対を単に使用して完全に又は少なくとも実質的に行なわれる本発明のさらに他の実施形態の例を示している。図7は、材料ウェブ2がプロセスチャンバ120に入る前に搬送される2つの前処理チャンバを示している。この実施形態では、材料ウェブ2は、両方の前処理チャンバの移動する壁として使用されている。材料ウェブ2が搬送される最初の前処理チャンバは、ローラ101と、材料ウェブ2と、ローラ103と、ローラ106と、ローラ面シール111と、壁130と、ローラ面シール109とを備えている。第2の前処理チャンバは、ローラ104、ローラ面シール110、外壁132、ローラ面シール112、ローラ108、材料ウェブ2、ローラ105間に形成されている。材料ウェブ2は、以下の経路に沿って搬送される。すなわち、ローラ101及び102間、ローラ103の周り(約90度)、ローラ103及びローラ104間、ローラ105の周り(約90度)、ローラ105及び106間、ローラ107の周り(約90度)、ローラ107及びローラ108間を通ってプロセスチャンバ120に入る。必要な気体は、ローラ107及び材料ウェブ2が噛み合う直前にローラ107及び材料ウェブ2間に形成された間隙に導入される。必要な気体は、材料ウェブ2を通って第2の前処理チャンバ内へ向けられる。必要な気体は、材料ウェブ2を通って、好ましくは材料ウェブ2及びローラ105間の間隙内、さらに第1の前処理チャンバ内へ向けられ、第1の前処理チャンバを通って、材料ウェブ2及びローラ103が噛み合う直前に、好ましくは材料ウェブ2及びローラ103間の間隙へ向けられる。材料ウェブ2を通って第1の前処理チャンバを出る気体混合物は次いで、任意選択的に再利用のために、適切な出口手段へ向けられる。
【0097】
実行され得るプラズマプロセスのより詳細な説明は、本発明に従って可撓性基材を処理する方法を示す図が提供されている図8を用いて説明される。基材をプロセスチャンバ内で搬送する手段は、ガイドローラ70、71、72と、必要な気体の入口75と、アセンブリ蓋76と、コーティング材料の入口導入手段74との形態で提供される。好ましくは、入口導入手段74は、噴霧液体をプラズマ領域60へ導入する超音波ノズル74のような液体の液滴又は液体/固体スラリー由来の液滴をプロセスチャンバ内へ供給する手段である。必要な気体の入口75はこの場合、電極対間にプラズマを生成する必要のある気体の入口であり、アセンブリ蓋76に示されている。
【0098】
使用時には、可撓性基材は、ガイドローラ70上へ搬送されて、電極20a及び26間のプラズマ領域25へ案内される。プラズマ領域25において生成されたプラズマは、洗浄ヘリウムプラズマであり、すなわち反応剤はプラズマ領域25へ向けられない。ヘリウムは、入口75からシステムに導入される。ヘリウムは空気よりも軽いため、ヘリウムが流出することを防止するためにシステムの上部にアセンブリ蓋76が配置されている。プラズマ洗浄された基材は、プラズマ領域25を出ると、ガイドローラ71の上を通過し、電極26及び20b間のプラズマ領域60を下方へ、ガイドローラ72の上へ向かい、次に同じタイプのさらなる処理を行なうさらなるユニットへ進み得る。しかし、プラズマ領域60は、超音波ノズル74を通して、液体又は固体のコーティング形成材料を噴射することによって、基材のコーティングを生成する。コーティングされる反応剤が液体又は固体であるという事実の重要な態様は、当該噴霧液体又は固体が重力下でプラズマ領域60を走行し、プラズマ領域25からは分離されたままであり、したがってプラズマ領域25ではコーティングは起こらないということである。コーティングされた基材は次いで、プラズマ領域60を通過してコーティングされ、次にガイドローラ72の上を搬送されて収集されるか、又は追加のプラズマ処理によってさらに処理される。ガイドローラ70及び72は、ローラではなくリールであってもよい。通過したものは基材をプラズマ領域25及びガイドローラ71へ案内するようになっている。
【実施例】
【0099】
本発明による再循環チャネルを使用する場合に、さまざまな速度で材料ウェブが通過するプラズマ領域において生成されるプラズマの質を大幅に改善することを示す、本発明を裏付ける実施例を以下に提供する。
【0100】
本実施例では、使用した電極は、国際公開第2004/068916号明細書に記載されているような塩溶液を含む2本の平行な非金属電極であった。この電極は、1.2平方mであり、電極間に形成されるプラズマの結果として生成されるプルームが目に見えるように十分に透明であった。板は6mm間隔の距離に固定された。シールは、材料ウェブがシール間を移動するときに材料ウェブに軽い圧力が加わるように、リップの前縁が1mmだけ重なるように配置されるゴムリップシールであった。プラズマを生成するのに使用される電極間の電位は4kVであった。ヘリウムが10標準リットル毎分(slpm)の定速度でシステムに供給された。プラズマ内を搬送される材料ウェブは、0.15mmの厚さを有する300mmの幅のポリプロピレンフィルムであった。
【0101】
上記の基準を用いて生成されたプラズマの質は、プルームが見える電極間の可視領域によって求めた。本発明に従って、材料ウェブの速度が上昇しながらも極めて最良のプラズマが生成されることが以下の表1から分かり、この場合、プラズマチャンバの始め及び終わりにはリップシールが設けられ、プラズマチャンバは、当該プラズマチャンバ内の内圧を安定化させるのに使用される再循環チャネルを有するものであった。
【0102】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1a】特にプロセスチャンバのサイズを参照する、従来技術のチャンバにおいて見られる状況を例示することを意図する図である。
【図1b】特にプロセスチャンバのサイズを参照する、従来技術のチャンバにおいて見られる状況を例示することを意図する図である。
【図2】2つの再循環チャネルを有するプロセスチャンバを示す図である。
【図3】プロセスチャンバの上流の中間チャンバを有する図2のようなプロセスチャンバを示す図である。
【図4】多孔質の材料ウェブから外部流体を除去する一連の向流中間チャンバを有する、図2のようなプロセスチャンバを示す図である。
【図5】再循環チャネルと、多孔質の材料ウェブから外部流体を除去する一連の向流中間チャンバとを備えた連続大気圧プラズマシステムを示す図である。
【図6】前処理チャンバ又は後処理チャンバを走行させながら材料ウェブの孔を伸張する手段を示す図である。
【図7】多孔質の材料ウェブから外部流体を除去する一連の向流前処理チャンバの代替的な実施形態を示す図である。
【図8】本発明の装置の一部を形成し得るプラズマシステムを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行している材料ウェブを所定の気体雰囲気中で処理する装置であって、
移動している材料ウェブ(2)が第1の端の入口から第2の端の出口まで搬送されるプロセスチャンバ(1)と、
該プロセスチャンバ(1)内に前記所定の気体雰囲気を提供するように意図される気体を導入すると共に制御する手段と
を備え、
前記入口及び前記出口はそれぞれ、前記材料ウェブ(2)の周りの外部気体境界層(3)の進入を最小限に抑えつつ前記材料ウェブ(2)を通過させることができるように設計されたシール手段(4a、4b)を備えた装置において、
前記プロセスチャンバ内で、該プロセスチャンバの前記第2の端から該プロセスチャンバの前記第1の端へ気体を再循環させて、該プロセスチャンバ(1)内で前記入口及び前記出口間のいかなる圧力差も実質的に打ち消すようになっている1つ又は複数の再循環チャネル(7、8)も備えることを特徴とする装置。
【請求項2】
処理される前記材料ウェブ(2)が多孔質である場合、全ての稼動中の再循環チャネル(7、8)は、前記材料ウェブ(2)の1つの側に位置付けられることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記材料ウェブ(2)が非多孔質である場合、少なくとも1つの稼動中の再循環チャネル(7、8)は前記材料ウェブ(2)のいずれかの側に位置付けられることを特徴とする、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記装置は、前記プロセスチャンバ(1)の上流及び/又は下流の少なくとも一方に中間チャンバ(10、18)も備え、
該中間チャンバ(10、18)は、
走行している多孔質の前記材料ウェブ(2)に捕捉された流体を必要な気体と交換するために、前記プロセスチャンバ(1)に入る前又は該プロセスチャンバ(1)から出た後に前記材料ウェブ(2)を必要な気体でパージするパージ手段(11、19a)と、
前記中間チャンバ(10、18)からパージされた流体を排出する気体除去手段(12、19b)と
を備えることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記プロセスチャンバ(1)の上流及び/又は下流に、複数の中間チャンバ(10、15)及び/又は(18)を備えることを特徴とする、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記中間チャンバ(18)のそれぞれに必要な気体を供給することと、前記中間チャンバ(18)のそれぞれから必要な気体/排出された流体を除去することとは、他の中間チャンバとは独立していることを特徴とする、請求項4又は5に記載の装置。
【請求項7】
前記プロセスチャンバ(1)において必要な気体を供給すること及び排出することは、前記中間チャンバ(10)及び(18)又は該中間チャンバ(10)及び(18)のそれぞれにおいて気体を供給すること及び排出することとは独立していることを特徴とする、請求項4〜6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
隣接する中間チャンバ(10、15)は、前記材料ウェブ(2)が通過する方向とは反対の方向に前記中間チャンバ(10、15)を移動する必要な気体の向流を提供するように、前記プロセスチャンバ(1)と近接している前記中間チャンバ(10)に、次いで他の中間チャンバ(15)に、前記プロセスチャンバ(1)から離れて進むときに順次連続して純粋な必要な気体を供給するようになっている1つ又は複数のチャネル(17)によって連結されることを特徴とする、請求項4〜7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記材料ウェブ(2)が前記プロセスチャンバ(1)の上流において通過する第1の中間チャンバ(15)は、流体/外部気体/必要な気体の混合物を排出する手段(12)を備えることを特徴とする、請求項4〜8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記シール手段(4a〜4j)は、ニップシール、リップシール及び/又はピンチローラ、又はそれらの任意の適切な組み合わせから選択されることを特徴とする、請求項4〜9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記プロセスチャンバ(1)は、少なくとも1つの非熱平衡プラズマ生成手段又は少なくとも1つのコロナ放電アセンブリを備えることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記非熱平衡プラズマ生成手段は、拡散誘電バリア放電を生成する手段を含むことを特徴とする、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記プロセスチャンバ(1)内の気体の圧力は実質的に大気圧であることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
移動している材料ウェブ(2)を所定の気体雰囲気中で処理する方法であって、
前記移動している材料ウェブ(2)を、所定の気体雰囲気を有するプロセスチャンバ(1)と、1つ又は複数の再循環チャネル(7)とを通して前記プロセスチャンバの第1の端の入口から該プロセスチャンバの第2の端の出口まで搬送することを含み、
前記入口及び前記出口はそれぞれ、前記材料ウェブ(2)の周りの外部気体境界層の進入を最小限に抑えつつ該材料ウェブ(2)を通過させるシール手段(4a、4b)を備え、
前記1つ又は複数の再循環チャネル(7)は、前記入口及び前記出口間のいかなる圧力差も実質的に打ち消すように、前記プロセスチャンバ(1)内で、該プロセスチャンバ(1)の前記第2の端から該プロセスチャンバ(1)の前記第1の端へ前記気体を再循環させる方法。
【請求項15】
材料ウェブ(2)が多孔質であることを特徴とする、所定の気体雰囲気中で前記材料ウェブ(2)を処理する方法。
【請求項16】
所定の気体雰囲気を用いて前記プロセスチャンバ(1)内で処理されるか又は処理された移動している前記多孔質の材料ウェブ(2)は、前記プロセスチャンバ(1)内で処理する前又は処理した後に、前記材料ウェブ(2)を1つ又は複数の中間チャンバ(10、15)又は(18)内に搬送するステップによって前処理及び/又は後処理され、
前記材料ウェブ(2)が前記中間チャンバ(10、15、18)のそれぞれの内部に留まる間に、該中間チャンバ(10、15、18)は、前記多孔質の材料ウェブ(2)内に捕捉された流体を必要な気体と交換するために適切な気体でパージされることを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
大気圧プラズマ処理装置又はコロナ放電アセンブリにおける、請求項1〜13のいずれか一項に記載の装置の使用。
【請求項18】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の装置を備える大気圧プラズマ処理装置。

【図1a】
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【図1b】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2009−535513(P2009−535513A)
【公表日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−508443(P2009−508443)
【出願日】平成18年5月2日(2006.5.2)
【国際出願番号】PCT/GB2006/050088
【国際公開番号】WO2007/128946
【国際公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(502286568)ダウ・コーニング・アイルランド・リミテッド (11)
【氏名又は名称原語表記】Dow Corning Ireland Limited
【住所又は居所原語表記】Unit 12, Owenacurra Business Park, Midleton, Co. Cork, Ireland
【Fターム(参考)】