説明

ウェブ洗浄方法、ウェブ洗浄装置、およびウェブ粗面化処理ライン

【課題】本発明は、ウェブにスプレーした洗浄液によってスジ状の汚れが生じることを効果的に防止できるウェブ洗浄方法、ウェブ洗浄装置、およびウェブ粗面化処理ラインの提供。
【解決手段】胴の表面が弾性材料または金属から形成され、前記ウェブが胴の下側の表面に巻き掛けられる搬送ローラ2と、胴の表面が弾性材料または金属から形成され、前記ウェブが胴の上側の面に巻き掛けられる搬送ローラ3とによってアルミニウムウェブWを支持しつつ、搬送ローラ2の表面に上方から洗浄液を供給させて前記ウェブの洗浄を行うウェブ洗浄方法、ウェブ洗浄装置、および前記ウェブ洗浄装置を備えるウェブ粗面化処理ライン。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェブ洗浄方法、ウェブ洗浄装置、およびウェブ粗面化処理ラインにかかり、特に、ウェブにスプレーした洗浄液によってスジ状の汚れが生じることを効果的に防止できるウェブ洗浄方法、ウェブ洗浄装置、およびウェブ粗面化処理ラインに関する。
【背景技術】
【0002】
平版印刷版は、通常、純アルミニウムまたはアルミニウム合金のウェブであるアルミニウムを一定の方向に搬送しつつ、前記アルミニウムウェブの一方または両方の面を粗面化して製造された平版印刷版用支持体の粗面化面に感光性、感熱性、または光重合性の製版層を形成することにより、製造される。
【0003】
そして、アルミニウムウェブの粗面化は、通常、機械的粗面化装置による機械的な粗面化の後、エッチング処理槽でアルカリ溶液によってエッチング処理をし、前記エッチング処理槽におけるアルカリエッチング処理後、電解粗面化処理層において酸性電解液中で交流電解処理するという手順で行われる。
【0004】
ここで、エッチング処理後および交流電解処理後には、アルミニウムウェブの表面に灰黒色〜黒色の析出物であるスマットが生じるから、希硫酸などの酸性溶液でアルミニウムウェブの表面を洗浄してスマットを除去するデスマット処理を行うことが一般的である。
【0005】
従来は、デスマット処理としては、アルミニウムウェブに直接デスマット液を吹き付ける方法がある(特許文献1)。
【0006】
デスマット処理においてウェブを支持、搬送する洗浄ローラとして表面が不織布で構成されたローラを用いることも提案された(特許文献2)。
【特許文献1】特開平5−305785号公報
【特許文献2】特開平5−105295号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来は、デスマット処理においてアルミニウムウェブに直接デスマット液を吹き付けていたので、吹き付けたデスマット処理液がアルミニウムウェブを下方に向かって流下し、アルミニウムウェブの搬送方向に沿った汚れがアルミニウムウェブの粗面化面に生じ、得えられる支持体等の外観が悪化するという問題があった。
【0008】
また、表面が不織布で形成されたローラは、洗浄ローラとしては種々の点で好ましくない。
【0009】
本発明は、上記問題を解決すべく成されたものであり、ウェブにスプレーした洗浄液によってスジ状の汚れが生じることを効果的に防止できるウェブ洗浄方法、ウェブ洗浄装置、およびウェブ粗面化処理ラインの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、一定方向に搬送されるウェブを洗浄液で洗浄処理するウェブ洗浄方法であって、胴の表面が弾性材料または金属から形成され、前記ウェブが胴の下側の表面に巻き掛けられる一の搬送ローラと、胴の表面が弾性材料または金属から形成され、前記ウェブが胴の上側の面に巻き掛けられる他の搬送ローラとによって前記ウェブを支持しつつ、前記一の搬送ローラの表面に上方から洗浄液を供給するか、または前記洗浄液を、前記一の搬送ローラの表面における前記ウェブに接触する部分に供給して前記一の搬送ローラとウェブとの間に洗浄液の液溜りを形成すると共に、前記ウェブの一方または両方の側縁から洗浄液を流下させてウェブを洗浄処理する洗浄方法に関する。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のウェブ洗浄方法において、前記一の搬送ローラの表面に向かって洗浄液噴射ノズルで洗浄液を噴射して洗浄液を供給するものに関する。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のウェブ洗浄方法において、前記洗浄液噴射ノズルの下方に樋状部材を配置し、前記洗浄液噴射ノズルから噴射された洗浄液を前記樋状部材で承け、前記樋状部材の縁部から下方に溢流させ、前記一の搬送ローラの表面に洗浄液を供給するものに関する。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れか1項に記載のウェブ洗浄方法において、前記ウェブが、純アルミニウムまたはアルミニウム合金のウェブであって平版印刷版用支持体に加工されるアルミニウムウェブであり、前記洗浄液が、前記アルミニウムの片面または両面をアルカリエッチングまたは交流電解処理して生じるスマットを除去するデスマット処理に使用されるデスマット液であり、前記洗浄処理は前記デスマット処理であるものに関する。
【0014】
請求項5に記載の発明は、一定方向に搬送されるウェブを洗浄液で洗浄処理するウェブ洗浄装置であって、胴の表面が弾性材料または金属から形成され、前記ウェブが胴の下側の面に巻き掛けられる水平に配置された一の搬送ローラと、胴の表面が弾性材料または金属から形成され、前記ウェブが胴の上側の面に巻き掛けられる水平に配置された他の搬送ローラと、前記一の搬送ローラの表面に上方から洗浄液を供給するか、または前記洗浄液を、前記一の搬送ローラの表面における前記ウェブに接触する部分に供給して前記一の搬送ローラとウェブとの間に洗浄液の液溜りを形成すると共に、前記ウェブの一方または両方の側縁から洗浄液を流下させる液溜り形成手段と、を備えるものに関する。
【0015】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載のウェブ洗浄装置において、前記洗浄液供給手段が、前記一の搬送ローラの表面に向かって洗浄液を噴射する洗浄液噴射ノズルを備えるものに関する。
【0016】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載のウェブ洗浄装置において、前記洗浄液供給手段が、前記洗浄液噴射ノズルに加え、前記洗浄液噴射ノズルの下方に配置され、前記洗浄液噴射ノズルから噴射された洗浄液を承けて下方に溢流させる樋状部材を備えるものに関する。
【0017】
請求項8に記載の発明は、請求項5〜7の何れか1項に記載のウェブ洗浄装置において、前記ウェブが、純アルミニウムまたはアルミニウム合金のウェブであるアルミニウムウェブであり、前記洗浄液は、前記アルミニウムの片面または両面をアルカリエッチングまたは交流電解処理して生じるスマットを除去するデスマット処理に使用されるデスマット液であり、前記洗浄処理が前記デスマット処理であるものに関する。
【0018】
請求項9に記載の発明は、純アルミニウムまたはアルミニウム合金のウェブであるアルミニウムウェブを一定方向に搬送しつつ、前記アルミニウムウェブの一方または両方の面を粗面化して平版印刷版用支持体とするウェブ粗面化処理ラインであって、前記アルミニウムウェブを機械的に粗面化する機械的粗面化装置と、前記機械的粗面化装置で機械的に粗面化されたアルミニウムウェブをアルカリエッチング処理するエッチング処理槽と、前記エッチング処理槽でアルカリエッチング処理されたアルミニウムウェブを酸性電解液中で交流電解処理する電解粗面化処理槽と、前記エッチング処理槽と前記電解粗面化処理層との間、または前記アルミニウムウェブの搬送方向に沿って前記電解粗面化処理層の下流側に配設された請求項8に記載のウェブ洗浄装置と、を備えるものに関する。
【発明の効果】
【0019】
請求項1のウェブ洗浄方法においては、前記一の搬送ローラにおいては、ウェブが下側の表面に巻き掛けられ、換言すれば前記一の搬送ローラにおける下側に当接する。
【0020】
また、前記一の搬送ローラは、表面がゴムや熱可塑性エラストマ、軟質樹脂のような弾性材料、または金属から形成されている。
【0021】
洗浄液が、上方から前記一の搬送ローラに供給され、または、前記一のローラとウェブとが接触する部分に供給されることにより、一の搬送ローラとウェブとの間に洗浄液の液溜りが形成される。そして、液溜りを形成した洗浄液は、前記一の搬送ローラの表面には殆ど吸収されることなく、前記ウェブの一方または両方の側縁から流下する。
【0022】
したがって、新鮮な洗浄液のウェブの幅方向に沿った流れが形成されることから、洗浄液は、ウェブの全幅に亘って均一に接触しつつ、ウェブの側縁から流下する故に、ウェブ上を洗浄液が流下することによるスジ状の品質故障が生じることが効果的に防止される。
【0023】
また、ウェブの表面に洗浄液を直接にスプレーする場合とは異なり、洗浄液の飛散が効果的に抑制される。更に、ウェブを洗浄液に浸漬して洗浄するDip方式とは異なり、常に新鮮な洗浄液で洗浄できる上、洗浄液全体の汚染を防止できる。
【0024】
更に、供給された洗浄液は、一の搬送ローラとウェブとの間の微小空間に送り込まれるから、洗浄液のウェブの幅方向および搬送方向の何れの方向にも攪拌されるから、洗浄処理が促進される。
【0025】
一の搬送ローラの表面に上方から洗浄液を供給する方法によれば、洗浄液の飛散を特に効果的に抑えることができる。
【0026】
一方、前記一の搬送ローラの表面における前記ウェブに接触する部分に供給する方法によれば、前記一の搬送ローラとウェブとの間に微小空間に洗浄液が直接供給されるから、洗浄液のウェブの幅方向および搬送方向の何れの方向にもより強く攪拌され、洗浄処理がより促進される。
【0027】
ここで、「洗浄処理」は、ウェブの表面を何らかの液体で洗浄する処理であり、具体的には、水洗や後述するデスマット処理などがある。
【0028】
請求項2のウェブ洗浄方法においては、一の搬送ローラに洗浄液を供給する手段として従来のデスマット処理装置で使用されていたものと同様の洗浄液噴射ノズルを流用することができるから、前記洗浄方法に使用するための設備の改修が容易である。
【0029】
請求項3のウェブ洗浄方法においては、洗浄液噴射ノズルから噴射された洗浄液を前記樋状部材で承け、前記樋状部材の縁部から下方に溢流させ、前記一の搬送ローラの表面に洗浄液を供給しているから、洗浄液噴射ノズルから前記一の搬送ローラに向かって洗浄液を直接噴射する場合と比較して、前記一の搬送ローラにより均一に洗浄液を供給できる。
【0030】
請求項4のウェブ洗浄方法によれば、デスマット処理においてアルミニウムウェブの表面をデスマット液が流下することによって生じるスジ状の品質故障の発生を効果的に防止できる。
【0031】
請求項5のウェブ洗浄装置によれば、請求項1のところで説明したのと同様に、浄液が、上方から前記一の搬送ローラに供給され、または、前記一のローラとウェブとが接触する部分に供給されることにより、一の搬送ローラとウェブとの間に洗浄液の液溜りが形成される。液溜りを形成した洗浄液は、前記一の搬送ローラの表面には殆ど吸収されることなく、前記ウェブの一方または両方の側縁から流下する。
【0032】
したがって、新鮮な洗浄液のウェブの幅方向に沿った流れが形成されることから、洗浄液は、ウェブの全幅に亘って均一に接触しつつ、ウェブの側縁から流下する故に、ウェブ上を洗浄液が流下することによるスジ状の品質故障が生じることが効果的に防止される。
【0033】
また、供給された洗浄液は、一の搬送ローラとウェブとの間の微小空間に送り込まれるから、洗浄液のウェブの幅方向および搬送方向の何れの方向にも攪拌され、洗浄処理が促進される。
【0034】
さらに、ウェブの表面に洗浄液を直接にスプレーする形態のウェブ洗浄装置とは異なり、洗浄液の飛散が効果的に抑制される。更に、ウェブを洗浄液に浸漬して洗浄するDip方式とは異なり、常に新鮮な洗浄液で洗浄できる上、洗浄液全体の汚染を防止できる。
【0035】
一の搬送ローラの表面に上方から洗浄液を供給するウェブ洗浄装置においては、洗浄液の飛散を特に効果的に抑えることができる。
【0036】
一方、前記一の搬送ローラの表面における前記ウェブに接触する部分に供給するウェブ洗浄装置によれば、前記一の搬送ローラとウェブとの間に微小空間に洗浄液が直接供給されるから、洗浄液のウェブの幅方向および搬送方向の何れの方向にもより強く攪拌され、洗浄処理がより促進される。
【0037】
請求項6のウェブ洗浄装置においては、一の搬送ローラに洗浄液を供給する手段として従来のデスマット処理装置で使用されていたものと同様の洗浄液噴射ノズルを流用することができるから、前記ウェブ洗浄装置への改修が容易である。
【0038】
請求項7のウェブ洗浄装置においては、洗浄液噴射ノズルから噴射された洗浄液を前記樋状部材で承け、前記樋状部材の縁部から下方に溢流させ、前記一の搬送ローラの表面に洗浄液を供給しているから、洗浄液噴射ノズルから前記一の搬送ローラに向かって洗浄液を直接噴射するウェブ洗浄装置と比較して、前記一の搬送ローラへの洗浄液の供給がより均一に行われる。
【0039】
したがって、ウェブ上を洗浄液が流下することによるスジ状の品質故障が生じることが効果的に防止される。
【0040】
請求項8のウェブ洗浄装置によれば、デスマット処理装置においてアルミニウムウェブの表面をデスマット液が流下することによって生じるスジ状の品質故障の発生を効果的に防止できる。
【0041】
請求項9のウェブ粗面化処理ラインによれば、アルカリエッチング処理および交流電解処理によってアルミニウムウェブ表面に生じるスマットが効果的に除去され、しかもデスマット処理においてアルミニウムウェブの表面をデスマット液が流下することによって生じるスジ状の品質故障の発生も効果的に防止されるから、外観に優れた平版印刷版支持体が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
1.実施形態1
【0043】
以下、本発明のウェブ洗浄装置の一例であるデスマット処理装置について以下に説明する。
【0044】
実施形態1に係るデスマット処理装置10は、デスマット槽1と、デスマット槽1の底面近傍に水平に配設された3本の搬送ローラ2と、デスマット槽1の天井面近傍に水平に配設された2本の搬送ローラ3と、デスマット槽1においてアルミニウムウェブWが導入されるウェブ導入口1Aに水平に配設されたウェブ導入ローラ4と、デスマット槽1においてアルミニウムウェブWが導出されるウェブ導出口1Bに水平に配設されたウェブ導出ローラ5と、搬送ローラ2の上方に1本の搬送ローラ2について2本ずつ配設されたスプレー管6とを備える。
【0045】
搬送ローラ2および搬送ローラ3は、夫々本発明の一の搬送ローラおよび他の搬送ローラに相当する。また、スプレー管6は、本発明における洗浄液供給手段および洗浄液噴射ノズルに相当する。なお、搬送ローラ2,3の本数は夫々3本および2本には限定ざれず、夫々1本ずつであってもよく、3本および2本よりも多くてもよい。
【0046】
デスマット槽1の外側におけるウェブ導入口1Aおよびウェブ導出口1Bの近傍には、夫々ニップローラ7、8が配設されている。
【0047】
スプレー管6としては、図2において(A)に示すように管体に一定の間隔で本発明の洗浄液に相当するデスマット液を噴射するデスマット液噴射孔を穿設したものが用いられる。スプレー管6は、通常は図1に示すようにデスマット液噴射孔6Aが搬送ローラ2を向くように配設されるが、図3に示すように、デスマット液噴射孔6Aが搬送ローラ2とアルミニウムウェブWとの間に形成される液溜りPを向くように配設されてもよい。
【0048】
更に、図2において(B)に示すように、デスマット液噴射孔6Aが下方に向くようにスプレー管6を配設するとともに、スプレー管6の下方に樋状部材9を配設し、デスマット液噴射孔6Aから噴射されたデスマット液が、同図において矢印bで示すように樋状部材9を溢流して搬送ローラ2の表面または駅溜りPに向かって流下するようにしてもよい。
【0049】
搬送ローラ2、3は、何れも表面がゴムやエラストマ、軟質樹脂のような弾性材料、または金属から形成されている。ゴムとしては、ポリブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、弗素ゴム、ポリイソプレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体、ニトリルゴム、アクリルゴムなどの合成ゴム、天然ゴム、および塩素化ゴムのような半合成ゴムなどが挙げられる。エラストマとしては、ポリウレタン系エラストマ、エポキシ樹脂系エラストマ、ポリウレタン系エラストマ、ポリアミド系エラストマ、ポリオレフィン系エラストマなどがある。軟質樹脂としては、軟質塩化ビニル樹脂および塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体などがある。金属としてはステンレス鋼やチタニウム及びその合金などがある。また、表面がクローム鍍金またはニッケル鍍金された鋼鉄製であってもよい。
【0050】
なお、アルミニウムウェブWは、粗面化された側の面が搬送ローラ2に当接し、粗面化された側とは反対側の面が搬送ローラ3に当接するように搬送ローラ2および3に巻き掛けられる。そして、ニップローラ7および8によって図1において矢印aに示すように左方から右方に向かって搬送される。
【0051】
デスマット処理装置10で使用されるデスマット液としては、酸性電解液が挙げられる。酸性電解液としては、硫酸、塩酸、硝酸、燐酸、スルホン酸などの無機または有機の強酸の溶液が挙げられる。強酸の濃度は5〜35質量%が好ましい。また、アルミニウムイオンなどの金属イオンを含んでいてもよい。
【0052】
デスマット処理装置10は、アルミニウムウェブWの一方または両方の面を粗面化するウェブ粗面化処理ライン(図示せず。)におけるエッチング処理槽(図示せず。)と電解粗面化処理層(図示せず。)との間、またはアルミニウムウェブWの搬送方向aに沿って前記電解粗面化処理層の下流側に配設される。デスマット処理装置10をエッチング処理層と電解粗面化処理装置との間に配設するときは、エッチング処理層とデスマット処理装置10との間、デスマット処理装置10を電解粗面化処理装置の下流側に配設するときは電解粗面化処理装置とデスマット処理装置10との間にアルミニウムウェブWを水洗する水洗装置を配設してもよい。
【実施例】
【0053】
1.実施例1
【0054】
図1に示すデスマット処理装置10を組み込んだウェブ粗面化処理ラインを用いて幅1400mmの純アルミニウムからなるアルミニウムウェブWの一方の面を粗面化し、平版印刷版用支持体を製造した。
【0055】
前記ウェブ粗面化処理ラインは、アルミニウムウェブWの一方の面を機械的に粗面化する機械的粗面化装置と、前記機械的粗面化装置で機械的に粗面化されたアルミニウムウェブWにおける粗面化面をアルカリエッチング処理するエッチング処理槽と、前記エッチング処理槽でアルカリエッチング処理されたアルミニウムウェブWを水洗する第一の水洗装置と、前記第一の水洗装置で水洗したアルミニウムウェブWをデスマット処理するデスマット処理装置10と、前記デスマット処理装置10でデスマット処理されたアルミニウムウェブWを酸性電解液中で交流電解処理する電解粗面化処理槽と、前記電解粗面化処理装置で交流電解処理されたアルミニウムウェブWを水洗する第二の水洗装置とを有する。
【0056】
デスマット処理装置10においては、スプレー管6として、長さ1750mmの管に20mmのピッチで直径3mmのデスマット液噴射孔6Aを用い、デスマット液噴射孔6Aが下方を向くように配設した。
【0057】
ライン速度は80m/分に設定した。また、デスマット液としては、硫酸を15質量%、アルミニウムイオンを7.5質量%含有する酸性電解液を用いた。
【0058】
得られた平版印刷版用支持体を目視観察した結果、アルミニウムウェブWにおける搬送ローラ2および3の間の部分に同様のスプレー管でデスマット液を噴射した場合とは異なり、スジ状の汚れは認められなかった。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明のウェブ洗浄方法およびウェブ洗浄装置は、アルミニウムウェブのデスマット処理だけでなく、金属ウェブや合成樹脂フィルムのウェブなどの洗浄にも使用される。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】図1は、実施形態1に係るデスマット処理装置の構成を示す概略図である。
【図2】図2は、実施形態1に係るデスマット処理装置におけるスプレー管の構成を示す側面部及び正面図である。
【図3】図3は、実施形態1に係るデスマット処理装置におけるスプレー管の別の例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0061】
1 デスマット槽
1B ウェブ導出口
1A ウェブ導入口
2 搬送ローラ
3 搬送ローラ
4 ウェブ導入ローラ
5 ウェブ導出ローラ
6 スプレー管
6A デスマット液噴射孔
7 ニップローラ
8 ニップローラ
9 樋状部材
10 デスマット処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定方向に搬送されるウェブを洗浄液で洗浄処理するウェブ洗浄方法であって、
胴の表面が弾性材料または金属から形成され、前記ウェブが胴の下側の表面に巻き掛けられる一の搬送ローラと、胴の表面が弾性材料または金属から形成され、前記ウェブが胴の上側の面に巻き掛けられる他の搬送ローラとによって前記ウェブを支持しつつ、
前記一の搬送ローラの表面に上方から洗浄液を供給するか、または前記洗浄液を、前記一の搬送ローラの表面における前記ウェブに接触する部分に供給して前記一の搬送ローラとウェブとの間に洗浄液の液溜りを形成すると共に、前記ウェブの一方または両方の側縁から洗浄液を流下させてウェブを洗浄処理するウェブ洗浄方法。
【請求項2】
前記一の搬送ローラの表面に向かって洗浄液噴射ノズルで洗浄液を噴射して洗浄液を供給する請求項1に記載のウェブ洗浄方法。
【請求項3】
前記洗浄液噴射ノズルの下方に樋状部材を配置し、前記洗浄液噴射ノズルから噴射された洗浄液を前記樋状部材で承け、前記樋状部材の縁部から下方に溢流させ、前記一の搬送ローラの表面に洗浄液を供給する請求項2に記載のウェブ洗浄方法。
【請求項4】
前記ウェブは、純アルミニウムまたはアルミニウム合金のウェブであって平版印刷版用支持体に加工されるアルミニウムウェブであり、前記洗浄液は、前記アルミニウムの片面または両面をアルカリエッチングまたは交流電解処理して生じるスマットを除去するデスマット処理に使用されるデスマット液であり、前記洗浄処理は前記デスマット処理である請求項1〜3の何れか1項に記載のウェブ洗浄方法。
【請求項5】
一定方向に搬送されるウェブを洗浄液で洗浄処理するウェブ洗浄装置であって、
表面が弾性材料または金属から形成され、前記ウェブが胴の下側の面に巻き掛けられる水平に配置された一の搬送ローラと、
表面が弾性材料または金属から形成され、前記ウェブが胴の上側の面に巻き掛けられる水平に配置された他の搬送ローラと、
前記一の搬送ローラの表面に上方から洗浄液を供給するか、または洗浄液を、前記一の搬送ローラの表面における前記ウェブに接触する部分に供給して前記一の搬送ローラとウェブとの間に洗浄液の液溜りを形成すると共に、前記ウェブの一方または両方の側縁から洗浄液を流下させる液溜り形成手段と、
を備えるウェブ洗浄装置。
【請求項6】
前記洗浄液供給手段は、前記一の搬送ローラの表面に向かって洗浄液を噴射する洗浄液噴射ノズルを備える請求項5に記載のウェブ洗浄装置。
【請求項7】
前記洗浄液供給手段は、前記洗浄液噴射ノズルに加え、前記洗浄液噴射ノズルの下方に配置され、前記洗浄液噴射ノズルから噴射された洗浄液を承けて下方に溢流させる樋状部材を備える請求項6に記載のウェブ洗浄装置。
【請求項8】
前記ウェブは、純アルミニウムまたはアルミニウム合金のウェブであるアルミニウムウェブであり、前記洗浄液は、前記アルミニウムの片面または両面をアルカリエッチングまたは交流電解処理して生じるスマットを除去するデスマット処理に使用されるデスマット液であり、前記洗浄処理は前記デスマット処理である請求項5〜7の何れか1項に記載のウェブ洗浄装置。
【請求項9】
純アルミニウムまたはアルミニウム合金のウェブであるアルミニウムウェブを一定方向に搬送しつつ、前記アルミニウムウェブの一方または両方の面を粗面化して平版印刷版用支持体とするウェブ粗面化処理ラインであって、
前記アルミニウムウェブを機械的に粗面化する機械的粗面化装置と、
前記機械的粗面化装置で機械的に粗面化されたアルミニウムウェブをアルカリエッチング処理するエッチング処理槽と、
前記エッチング処理槽でアルカリエッチング処理されたアルミニウムウェブを酸性電解液中で交流電解処理する電解粗面化処理槽と、
前記エッチング処理槽と前記電解粗面化処理層との間、または前記アルミニウムウェブの搬送方向に沿って前記電解粗面化処理層の下流側に配設された請求項8に記載のウェブ洗浄装置と、
を備えるウェブ粗面化処理ライン。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2010−52939(P2010−52939A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−222815(P2008−222815)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】