説明

ウエザストリップ及びその製造方法

【課題】被取付部に取着されるクリップを備えるウエザストリップに関し、製造作業性の向上を図ることのできるウエザストリップ及びその製造方法を提供する。
【解決手段】ドアウエザストリップ5は、ドアフレーム7の外周に沿って取付けられる基底部11と、中空状のシール部12と、基底部11に取付けられたクリップ21とを備える。クリップ21は、ドアフレーム7に形成された取付孔22に嵌め込まれて係合可能な係合部31と、基底部11に係止される係止部41とを備える。係止部41は、細長形状の係止片部42と、係止片部42の長手方向中間部位と係合部31とを連結する連結部43とを備える。また、略筒状をなし先端が尖った挿入ピン51を具備する挿入手段を用いて、挿入ピン51を基底部11に突き刺し、挿入ピン51の内周側を通して係止片部42を基底部11の内面側に送り出すことにより、クリップ21が基底部11に取付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエザストリップ及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両(自動車)のボディの開口部周縁や当該開口部を開閉する扉体(ドア)の周縁部にはウエザストリップが取付けられる。例えば、ドアの周縁部に沿って設けられるドアウエザストリップは、ドア周縁部に取付けられる取付基部と、取付基部に一体形成され、中空部を有するシール部とを備えている。そして、ドア閉時には、ドアウエザストリップのシール部が自動車ボディのドア開口周縁部に圧接されることによって、ドアと自動車ボディとの間がシールされる。
【0003】
ところで、ウエザストリップの取付方法の一つとしてクリップ(留め具)を用いる方法が知られている(例えば、特許文献1等参照。)。当該取付けに用いられるクリップとしては、車両の開口部周縁や扉体周縁部に形成された取付孔に嵌め込まれて係合される係合部と、前記取付基部に係止される係止部とを備えている。係止部は、略棒状の係止片部と、係止片部の長手方向略中央部と係合部とを連結する連結部とを備え、全体として略T字状をなしている。
【特許文献1】実開昭59−20016号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載のクリップを取付基部に取付けるためには、きりやドリル等の孔開け治具を用いて、取付基部に係止片部及び連結部を挿通させるための挿通孔を形成する必要があった。当該挿通孔の形成に際しては、形成に伴って発生する形成屑を吸引装置等で除去する必要がある。また、たとえ吸引装置等を作動させたとしても、形成屑がウエザストリップの内部(中空部内)に入ってしまうと、これを取出す作業が別途必要になってしまうおそれがある。さらに、挿通孔を形成する工程とは別に、係止部を挿通孔にねじ込んで係止片部をシール部内側の中空部に位置させる工程を必要としているため、工数の増加を招いてしまう。このように、クリップによって自動車のドアやボディ等に取付けられるタイプのウエザストリップは、製造作業性の向上を図る上で種々の支障があった。
【0005】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、車両の開口部周縁や扉体周縁部等の被取付部に取着されるクリップを備えるウエザストリップに関し、製造作業性の向上を図ることのできるウエザストリップ及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記目的等を解決するのに適した各手段につき項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果等を付記する。
【0007】
手段1.被取付部に取付けられる取付基部と、前記取付基部から延出するシール部と、前記取付基部に取付けられた留め具とを備えるウエザストリップにおいて、
前記留め具は、前記被取付部に形成された取付孔に嵌め込まれて係合可能な係合部と、前記取付基部に係止される係止部とを備え、
前記係合部は、棒状の軸部と、前記軸部の一端部から鍔状に広がる傘部と、前記軸部の外周部から外方かつ前記傘部側に向けて延びる支持部とを備え、
前記係止部は、前記取付基部の内面側に位置する細長形状の係止片部と、前記係止片部から当該係止片部の長手方向に対して交差する方向に延びて前記取付基部を貫通し、前記傘部と連結される連結部とを備え、
前記取付基部から突出する前記係合部を前記取付孔に嵌め込むことで、前記傘部と前記支持部の先端部との間に前記取付孔の周縁部が挟持される構成であって、
略筒状をなし先端が尖った挿入ピンを具備する挿入手段を用いて、前記挿入ピンを前記取付基部にその底面側から突き刺し、前記挿入ピンの内周側を通して前記係止片部を前記取付基部の前記底面とは反対側の内面側に送り出すことにより、前記留め具が前記取付基部に取付けられていることを特徴とするウエザストリップ。
【0008】
手段1によれば、ウエザストリップは取付孔に嵌め込まれて係合する係合部を有する留め具を備えている。当該留め具は、係止片部を、取付基部に突き刺された挿入ピンの内周側を通して取付基部の内面側に送り出すことでウエザストリップに取付けられる。従って、留め具をウエザストリップに取付けるために、取付基部の肉を切り取ったり削ったりして開口部(孔)を形成するといった作業を省略することができる。このため、前記開口部の形成に伴う形成屑の発生を回避することができ、形成屑を除去するための手間や装置(吸引装置等)を省略することができる。結果として、製造作業性の向上や品質の向上等を図ることができる。また、いわば一工程で留め具をウエザストリップに取付けることができるため、取付基部に予め開口部を形成する工程と、開口部に留め具を挿通させる工程とを必要としていた従来技術に比べ、作業効率の向上を図ることができる。これらのことから、留め具を用いて被取付部に取付けられるウエザストリップの製造作業性の向上、ひいては生産性の向上を図ることができる。
【0009】
尚、「非取付部に取付けられる」とあるのを「車両の開口部周縁又は当該開口部を開閉する扉体の周縁部に沿って取付けられる」としてもよい。また、連結部は前記係止片部の長手方向の中間部位と前記係合部とを連結することとしてもよい。この場合、係止部の係止状態の安定化を図ることができる。さらに、係止片部は直線状に形成されていることとしてもよい。この場合、係止片部を挿入ピンの内周側に通しやすくなり、係止部の取付基部への取付作業性の向上が図られる。
【0010】
手段2.前記係止片部から前記傘部までの距離は、前記係止部の係止状態において前記係止片部と前記傘部との間に挟み込まれることとなる前記取付基部の厚みよりも小さく設定されていることを特徴とする手段1に記載のウエザストリップ。
【0011】
手段2によれば、係止片部から傘部までの距離を、挟み込まれる側の取付基部の厚みよりも小さくしている。このため、ウエザストリップに対する留め具のがたつきを防止することができる。結果として、ウエザストリップの被取付部への取付状態の安定化を図ることができる。
【0012】
手段3.前記連結部は可撓性を有することを特徴とする手段1又は2に記載のウエザストリップ。
【0013】
手段3によれば、連結部が可撓性を有することにより、係止部の取付基部への挿通に際し連結部を追従的に形状変化させることができる。このため、係止片部を取付基部の内面側へと無理なく、かつ、確実に押し込むことができる。
【0014】
手段4.前記係止片部は前記連結部よりも高剛性であることを特徴とする手段1乃至3のいずれかに記載のウエザストリップ。
【0015】
手段4によれば、留め具が取付けられた後において、係止片部が屈曲すること等に起因して、係止部が取付基部から抜け出してしまうといった事態を抑制することができる。
【0016】
手段5.前記連結部は、前記係止片部との境界部において、その他の一般部位よりも厚肉な係止側補強部を備え、
前記係止側補強部の肉厚は、前記連結部の前記係止片部側の端部に向けて次第にかつ連続的に大きくなっていることを特徴とする手段1乃至4のいずれかに記載のウエザストリップ。
【0017】
手段5によれば、係止側補強部を設けることで、連結部と係止片部とのなす角度が広がるような変形が生じた際に、連結部と係止片部との境界部に作用する応力を分散させる(応力の集中を抑制する)ことができる。従って、留め具を取付基部に取付ける際に、留め具が連結部と係止片部との境界部において破損してしまうといった事態を抑制することができる。また、留め具の取付基部への取付状態において、留め具に対して抜け方向への応力が作用した場合に、留め具が連結部と係止片部との境界部において破損してしまうといった事態を抑制することができる。さらに、連結部の全体を厚肉とするわけではないので、留め具の取付基部への取付に際し、連結部が変形し難くなってしまうことに起因して、取付作業性の低下等を招いてしまうといった事態を防止することができる。
【0018】
尚、「前記係止側補強部のうち、前記一般部位よりも前記連結部の外周側に位置する傾斜部は、前記係止片部側に向けて凹となる湾曲形状をなしていること」としてもよい。この場合、留め具の取付基部への取付に際し、比較的スムースに係止側補強部を取付基部に挿通させることができるといった作用効果が一層確実に奏される。さらには、係止片部の取付基部への挿通に際し、係止側補強部(係止側補強部の一部)においても追従的に形状変化させることができ、係止側補強部を設けることに起因して、留め具の取付基部への取付作業性(係止片部の挿通作業性)が低下してしまうといった事態をより確実に抑制することができる。
【0019】
手段6.前記係止側補強部は、前記係止片部の延在方向において前記連結部が厚肉とされることで構成され、前記係止片部の延在方向に対して直交する方向における前記係止側補強部の肉厚は、前記一般部位と同じ又はほぼ同じであることを特徴とする手段5に記載のウエザストリップ。
【0020】
手段6によれば、係止片部の延在方向に対して直交する方向において、係止側補強部と一般部位とが同じ又はほぼ同じ肉厚であるため、係止片部の延在方向に対して直交する方向において係止側補強部を一般部位よりも厚肉とした場合に比べ、係止側補強部と挿入ピン(挿入ピンの内周面)との干渉を抑制することができ、留め具の取付基部への取付に際し、係止片部を安定してスムースに取付基部の内面側へと送り出すことができる。さらに、係止片部を取付基部の内面側に送り出す際に、係止側補強部と取付基部との干渉を抑制することができ、比較的スムースに係止側補強部を取付基部に挿通させることができる。
【0021】
手段7.前記連結部は、前記傘部との境界部において、その他の一般部位よりも厚肉な傘部側補強部を備え、
前記傘部側補強部の肉厚は、前記連結部の前記傘部側の端部に向けて次第にかつ連続的に大きくなっていることを特徴とする手段1乃至6のいずれかに記載のウエザストリップ。
【0022】
手段7によれば、傘部側補強部を設けることで、連結部と傘部とのなす角度が広がるような変形が生じた際に、連結部と傘部との境界部に作用する応力を分散させる(応力の集中を抑制する)ことができる。従って、留め具を取付基部に取付ける際に、留め具が連結部と傘部との境界部において破損してしまうといった事態を抑制することができる。また、留め具の取付基部への取付状態において、留め具に対して抜け方向への応力が作用した場合に、留め具が連結部と傘部との境界部において破損してしまうといった事態を抑制することができる。さらに、連結部の全体を厚肉とするわけではないので、留め具の取付基部への取付に際し、連結部が変形し難くなってしまうことに起因して、取付作業性の低下等を招いてしまうといった事態を防止することができる。
【0023】
尚、「前記傘部側補強部は、前記連結部の周方向全域にわたって前記連結部が厚肉とされることで構成されていること」としてもよい。この場合、被取付部に取付けられた状態にあるウエザストリップに対し、当該ウエザストリップをその長手方向や車幅方向にずらすような応力が作用した場合に、留め具が連結部と傘部との境界部において破損してしまうといった事態をより確実に抑制することができる。
【0024】
手段8.上記手段1乃至7のいずれかに記載のウエザストリップの製造方法であって、
前記取付基部及び前記シール部を具備するウエザストリップ本体を成形する成形工程と、
前記留め具を、挿入手段を用いて前記ウエザストリップ本体に取付ける取付工程とを備え、
前記挿入手段は、内周側に前記係止片部を挿通させる略筒状をなす挿入ピンと、前記挿入ピンの内周側に位置する前記係止片部を前記挿入ピンの先端から押出すことのできる押出手段とを備え、
前記挿入ピンは、先端が尖った形状をなすとともに、長手方向に沿って延び、前記連結部を挿通可能な幅を有するスリットを備え、
前記取付工程は、内周側に前記係止片部をセットした前記挿入ピンを前記取付基部に突き刺す工程と、前記押出手段によって前記係止片部を前記取付基部の内面側に押出す工程と、前記挿入ピンを抜き取る工程とを備えることを特徴とするウエザストリップの製造方法。
【0025】
手段8によれば、取付工程を経ることで、係止片部が取付基部の内面側に位置するとともに連結部が取付基部を貫通した状態とされ、留め具がウエザストリップ本体に取付けられる。従って、上記各手段の作用効果が奏されるウエザストリップを確実に得ることができる。
【0026】
手段9.前記スリットは、前記挿入ピンに挿入された前記係止片部が抜け出さない幅に設定されていることを特徴とする手段8に記載のウエザストリップの製造方法。
【0027】
手段9によれば、スリットから係止片部が抜け出してしまうといったおそれがなくなるため、挿入手段によって係止片部を取付基部の内面側へと挿入する作業をスムースに行うことができる。
【0028】
手段10.前記挿入ピンの先端部には、その内周側において前記スリット側に突出するガイド部が形成され、前記ガイド部の突出量は、前記挿入ピンの先端部側に向けて次第にかつ連続的に大きくなっていることを特徴とする手段8又は9に記載のウエザストリップの製造方法。
【0029】
手段10によれば、ガイド部の存在により、係止片部を挿入ピンの先端部から押し出す際に、係止片部をスリットの形成されている側に傾倒させる(係合部側に案内する)ことができる。これにより、取付基部の内面側に押し出された係止片部の傾倒動作をスムースに行わせることができる。さらに、係止片部を挿入ピンの先端部から押し出す際に、連結部と係止片部との境界部(係止側補強部)にかかる負担を軽減させることができる。特に、上記手段2に記載のように、係止片部から前記傘部までの距離が取付基部の厚みよりも小さい場合等には、連結部と係止片部との境界部が取付基部の内面側に位置する段階では連結部が緊張状態にあり、この状態で、連結部が伸長させられるような力が負荷されると、連結部と係止片部との境界部に対して多大な応力が作用するおそれがあるが、本手段10の構成を採用することで、かかる応力を抑制することができる。従って、留め具が連結部と係止片部との境界部において破損してしまうといった事態をより確実に防止することができる。
【0030】
尚、「挿入ピンの外形状は直線状であること」としてもよい。つまり、挿入ピンの先端部から押し出される係止片部を係合部側に案内するべく、挿入ピンの先端部を外形状ごと屈曲又は湾曲させる場合には、挿入ピンを取付基部に貫通させる(突き刺す)際に挿入ピンを押し込みにくくなるおそれがある上、挿入ピンを突き刺すことで取付基部に形成される孔が、取付基部に対して垂直かつ真直ぐに(取付基部の厚み方向に沿って真直ぐに)形成されないことが懸念される。これに対し、挿入ピンが直線状であれば、挿入ピンを取付基部に貫通させる際に挿入ピンを押し込みやすく、挿入ピンを突き刺すことで取付基部に形成される孔を取付基部に対して垂直かつ真直ぐに形成することができる。従って、挿入ピンを取付基部に貫通させる作業を比較的容易に行うことができる上、取付基部への取付状態にある留め具の連結部を取付基部に対して垂直かつ真直ぐに延在させることができ、留め具の取付状態の安定化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下に、一実施形態について図面を参照して説明する。図1に示すように、車両としての自動車1のボディに形成されたドア開口部2には、自動車ドア(図ではフロントドア:以下、単に「ドア3」という)が開閉可能に設けられており、ドア3の周縁部にはドアウエザストリップ5が取着されている。ドアウエザストリップ5は、長手方向略全域が所定の押出成形機によって形成される1つの押出成形体からなり、押出成形体の長手方向両端部を接続することで環状となっている。
【0032】
図2に示すように、ドアウエザストリップ5は、ドアフレーム7の外周に沿って設けられた断面略C字状のリテーナ部8(被取付部)に嵌合される取付基部としての基底部11と、当該基底部11から延出する中空状のシール部12とを備えている。そして、ドア3が閉じられたときに、シール部12が自動車ボディのドア開口部2の周縁に圧接して変形し、これにより自動車ボディ及びドア3間がシールされるようになっている。また、本実施形態の基底部11及びシール部12はEPDM(エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム)により構成されている。
【0033】
また、ドアウエザストリップ5は、シール部12の内側に形成される中空部をドアフレーム7内周側の第1中空部12aと、外周側の第2中空部12bとに分けるブリッジ13を備えている。ブリッジ13は、押出成形に際して基底部11及びシール部12と同時形成される。加えて、シール部12の車外側の付根部付近から車外側に突出するリップ部14が設けられている。当該リップ部14は、その先端部側がドアフレーム7(ドアウエザストリップ5の車外側においてドアフレーム7の外周方向に延出した部分)と圧接する。
【0034】
さて、本実施形態では、基底部11に対して、ドアウエザストリップ5の長手方向に沿って所定間隔毎に留め具としてのクリップ21が取付けられている。そして、クリップ21をリテーナ部8に形成された取付孔22に嵌め込むとともに、基底部11をリテーナ部8の内側に嵌め込むことでドアウエザストリップ5がドアフレーム7に取付けられている。
【0035】
クリップ21は、ポリオキシメチレンやポリアミド等の合成樹脂材料よりなり、図3等に示すように、取付孔22に嵌め込まれて係合される係合部31と、基底部11に係止される係止部41とを備えている。
【0036】
係合部31は、棒状の軸部32と、軸部32の一端部から鍔状に広がる傘部33と、軸部32の外周部から外方かつ傘部33側に向けて延びる一対の支持片部34とを備えている。一対の支持片部34は軸部32を挟んで反対側に位置している。支持片部34は軸部32との境界部付近を中心に傾動するようにして弾性変形可能に設けられている。
【0037】
また、図2に示すように、各支持片部34の先端部には、突起35が形成されることで外面側に段差部36が形成されている。加えて、各支持片部34の内側面と傘部33とを連結する補助板部37が設けられている。
【0038】
図3等に示すように、係止部41は、軸部32の延在方向に対して直交する方向に延びる円柱状の係止片部42と、軸部32の延在方向に対して平行する方向に延び、係止片部42の長手方向中央部と傘部33の中央部とを連結する円柱状の連結部43とを備え、全体として略T字状をなしている。
【0039】
クリップ21の基底部11への取付状態においては、係止片部42が第1中空部12a内に位置し、係止片部42と傘部33との間に基底部11が挟持される格好となる。本実施形態では、係止片部42から傘部33までの距離が、クリップ21の取付状態において係止片部42と傘部33との間に挟持されることとなる基底部11の肉厚よりも小さく設定されている。このため、クリップ21の基底部11への取付状態(係止部41の係止状態)においては、係止片部42や傘部33が基底部11に若干くい込んでいる。
【0040】
また、連結部43は可撓性を有しており、本実施形態では、軸部32の延在方向に対して係止部41を約90度程度(軸部32の延在方向とほぼ平行するまで)傾けることができ、さらに、その状態から自らの弾性力によりほぼ元の状態に復帰可能となっている。加えて、係止片部42の周長は連結部43の周長よりも長くなっている。
【0041】
以上のように構成されるドアウエザストリップ5のリテーナ部8への取付状態においては、傘部33と支持片部34の先端部(段差部36)との間に取付孔22周縁のリテーナ部8が挟持される。また、ドアウエザストリップ5の取付状態においては、突起35が取付孔22の内周側に位置して段差部36が取付孔22の周縁部に係合するため、取付孔22に嵌め込まれたクリップ21、ひいてはドアウエザストリップ5の位置ずれを防止することができる。
【0042】
尚、傘部33の存在により、取付孔22の周縁部をシールすることができるとともに、クリップ21が基底部11に埋没しすぎてしまい、係合部31を挿通孔22に嵌め込みにくくなってしまうといった事態を防止することができる。
【0043】
次にドアウエザストリップ5の製造工程について説明する。
【0044】
先ず、押出成形機に対してEPDM未加硫ゴムを連続的に供給し、ダイスから中間成形体(ウエザストリップ本体5a)を押出成形する。続いて、ウエザストリップ本体5aを加硫し、冷却後、シール部12の表面にシリコン塗装等の表面処理を施す。
【0045】
その後、ウエザストリップ本体5aに対してクリップ21を取付ける。本実施形態では、図7に示すように、内周側に係止片部42を挿通させる略筒状の挿入ピン51と、挿入ピン51の内周側を挿入ピン51の長手方向に沿ってスライド可能な押出棒55(押出手段)とを備える挿入手段を用いて、クリップ21をウエザストリップ本体5aに取付ける。
【0046】
挿入ピン51には長手方向に沿って連結部43を挿通可能なスリット53が形成されている。スリット53の幅は、連結部43の直径よりも大きく、かつ、係止片部42の直径よりも小さくなっている。これにより、挿入ピン51の内周側に係止片部42をセットした状態で、クリップ21を挿入ピン51の長手方向に沿ってスライドさせることができるとともに、スリット53から係止片部42が抜け出してしまうといった事態を防止することができる。
【0047】
また、挿入ピン51の先端部は針のように尖っており、ウエザストリップ本体5aの基底部11に対して予め開口部等を形成しておかなくても、当該先端部を基底部11に押付けることで、比較的スムースに当該先端部を基底部11に突き通すことができる。尚、係止片部42の周長は軸部32の周長よりも短く構成されており、係止片部42を挿通する挿入ピン51の径が大きくなって基底部11に突き通しにくくなってしまうといった事態を抑制している。
【0048】
ここで、クリップ21をウエザストリップ本体5aに取付ける取付工程について図面を参照しつつ説明する。先ず、図4に示すように、係止片部42を挿入ピン51の内周側にセットし、基底部11の底面に対してほぼ垂直に挿入ピン51を突き刺す。
【0049】
そして、図5に示すように、基底部11に対して挿入ピン51を完全に突き通し、挿入ピン51の先端部(挿入ピン51の先端部に形成される開口部)を第1中空部12aに位置させた後、押出棒55を挿入ピン51の先端側にスライドさせる。これにより、係止片部42が押出棒55によって押され、挿入ピン51の先端部から押し出される。この途中、傘部33が基底部11に接触するが、連結部43や傘部33が追従的に撓むため、押出棒55をさらに奥まで押し込むことができ、係止片部42全体を挿入ピン51の先端から第1中空部12aの内側へと押し出すことができるようになっている。
【0050】
そして、図6に示すように、挿入ピン51の先端から係止片部42を押し出した後、基底部11から挿入ピン51を引き抜く。このとき、第1中空部12aに残された係止片部42は、連結部43の弾性力等により、係止片部42の長手方向が基底部11の法線方向に対して直交する方向(例えば図2等ではドアウエザストリップ5の長手方向)となるように自然と変位する。このようにして、係止片部42が第1中空部12aの内側に残ることで、当該係止片部42が基底部11の内面に係止されることとなる。ちなみに、連結部43が貫通する基底部11は、係止部41の挿通に際し、肉が切り取られたり削られたりするのではなく、挿入ピン51が突き刺されるだけなので、挿入ピン51が抜かれた後は、押し広げられていた分の肉が収縮して連結部43に圧接する。
【0051】
取付工程の後、クリップ21が取付けられたウエザストリップ本体5aは、カッター67により所定の寸法に裁断される。その後、所定の寸法に裁断されたウエザストリップ本体5aの両端部を接続して環状のドアウエザストリップ5を得る。
【0052】
以上詳述したように、本実施形態のドアウエザストリップ5は、取付孔22に嵌め込まれて係合する係合部41を有するクリップ21を備えている。当該クリップ21は、係止片部42を、基底部11に突き刺された挿入ピン51の内周側を通して第1中空部12aに送り出すことで基底部11に取付けられる。従って、クリップ21を基底部11に取付けるために、基底部11の肉を切り取ったり削ったりして開口部を形成するといった作業を省略することができる。このため、前記開口部の形成に伴う形成屑の発生を回避することができ、形成屑を除去するための手間や装置(吸引装置等)を省略することができる。結果として、製造作業性の向上や品質の向上等を図ることができる。また、いわば一工程でクリップ21を基底部11に取付けることができるため、基底部11に予め開口部を形成する工程と、開口部にクリップ21を挿通させる工程とを必要としていた従来技術に比べ、作業効率の向上を図ることができる。
【0053】
また、係止片部42から傘部33までの距離が、係止片部42と傘部33との間に挟み込まれる基底部11の厚みよりも小さくなっている。このため、基底部11に対するクリップ21のがたつきを防止することができる。結果として、ドアウエザストリップ5のドアフレーム7への取付状態の安定化を図ることができる。
【0054】
さらに、連結部43が可撓性を有することにより、係止部41の基底部11への挿通に際し連結部43を追従的に形状変化させることができる。このため、係止片部42を第1中空部12aへと無理なく、かつ、確実に押し込むことができる。
【0055】
また、係止片部42の周長は連結部43の周長よりも長く構成されるため、係止片部42は連結部43よりも高剛性となっている。このため、クリップ21がウエザストリップ本体5aに取付けられた後において、例えば、係止片部42が屈曲すること等に起因して、係止部41が基底部11から抜けてしまうといった事態を抑制することができる。
【0056】
また、例えば、基底部11に開口部を形成した上で、クリップをかかる開口部に挿通させる従来の技術においては、先ず連結部から側方に突出する係止片部の一端を挿通孔に挿通させ、その後、係止部を押し込みつつ係止片部と連結部との境界部を中心に回動させるようにして係止片部の他端を挿通孔にねじ込むといった作業を行っていた。これに対し、本実施形態では、挿入ピン51を突き刺して、押出棒55をスライドさせるといったいわば一工程の動作だけで済むため、挿入手段の構成や挿通工程の簡素化等を図ることができる。さらに、従来のように、係止部によって基底部11の肉を押広げつつ挿入するといった場合に比べ、本実施形態では、係止部41にそれ程の剛性を必要としない(つまり、係止部41を細くできる)ため、使用材料を削減することができ、結果として省資源化を図ることができる。
【0057】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0058】
(a)上記実施形態におけるクリップ21の形状は特に限定されるものではなく、取付孔22に嵌め込まれて係合する係合部31と、挿入ピン51によって第1中空部12aの内側に挿通され、基底部11に係止される係止部41とを備えていればよい。例えば、補助板部37が突起35の先端部と傘部33とを連結する構成にしたり、補助板部37を省略したりしてもよい。また、例えば、傘部33を図示したものよりも小径にしたりしてもよい。加えて、軸部32を短くして、軸部32のうち傘部33が設けられていない方の端部から支持片部34が延出する構成としてもよい。さらに、係止片部42や連結部43は断面円形状でなくてもよく、例えば、断面楕円形状、断面四角形状、断面三角形状に構成されてもよい。
【0059】
尚、係止片部42は、挿入ピン51の内周側を通して基底部11の内側に挿通させる必要があるため、屈曲した形状であるよりも直線形状であることが望ましい。また、上記実施形態では特に言及しなかったが、クリップ21は、型成形により係合部31及び係止部41が同時形成されることとしてもよいし、係合部31及び係止部41を別々に形成しておき、後で両者を結合してもよい。
【0060】
(b)また、クリップ21の変形例として、図9(a),(b)、図10に示すクリップ71を採用してもよい。さらに、挿入手段の変形例として、図10に示す挿入ピン91を具備する挿入手段を採用してもよい。以下、クリップ71及び挿入ピン91について図面を参照して詳細に説明する。尚、図9、図10に示すクリップ71及び挿入手段(挿入ピン91)は基本的に上記実施形態のクリップ21及び挿入手段と同様の構成を具備するため、便宜上、上記実施形態と同じ部材名称及び部材番号を用いて説明する。
【0061】
クリップ71のうち、係止片部42の長手方向略中央部から係止片部42と直交する方向に延びる連結部43は、係止片部42との境界部において、その他の一般部位72よりも厚肉な係止側補強部73を備えるとともに、傘部33との境界部において、一般部位72よりも厚肉な傘部側補強部74を備えている。
【0062】
係止側補強部73は、係止片部42の延在方向において連結部43が厚肉とされることで構成され、係止片部42の延在方向(長手方向)に対して直交する方向における係止側補強部73の肉厚は、一般部位72とほぼ同じとなっている。つまり、係止側補強部73を形成したとしても、これに伴って挿入ピン91に形成されるスリット53の幅を広げる必要はなく、係止片部42の外周面のうち挿入ピン91(挿入ピン51)の内周面によって支持される面積は上記実施形態と同じとなる。加えて、図9(b)、図10に示すように、係止側補強部73(傾斜部77)を係止片部42の延在方向と直交する方向から見ると左右対称形状となっており、係止側補強部73を連結部43の長手方向に対して直交する方向に切断したときの断面形状は略長方形状となっている。つまり、係止側補強部73は、係止片部42の基底部11への挿入方向先端側に連結部43の厚みを大きくしただけでなく、その反対側にも連結部43の厚みを大きくすることで構成されている。
【0063】
また、係止側補強部73の肉厚は、連結部43の係止片部42側の端部に向けて次第にかつ連続的に大きくなっている。さらに、係止側補強部73のうち、一般部位72よりも連結部43の外周側に位置する部位(以下、傾斜部77と称する)は、係止片部42側に向けて凹となる湾曲形状をなしている。つまり、連結部43と係止片部42とが交差する角部はR形状となっている。
【0064】
傘部側補強部74は、連結部43の周方向全域にわたって連結部43が厚肉とされることで構成されている。また、傘部側補強部74の肉厚は、連結部43の傘部33側の端部に向けて次第にかつ連続的に大きくなっている。さらに、傘部側補強部74の外周面は、傘部33側に向けて凹となる湾曲形状をなしている。つまり、連結部43と傘部33とが交差する角部がR形状となっている。
【0065】
図10に示す挿入ピン91の先端部には、その内周側においてスリット53側に突出するガイド部92が形成されている。ガイド部92の突出量(肉厚)は、挿入ピン91の先端部側に向けて次第にかつ連続的に大きくなっている。このため、挿入ピン91の先端部から係止片部42を押し出す際に、係止片部42は、ガイド部92によって係合部31側に案内される(スリット53の形成されている側に傾倒変形させられる)こととなる。但し、挿入ピン91の外形状は、基本的に上記実施形態の挿入ピン51と同様の形状をなしており、途中で湾曲したり屈折したりすることなく、直線状に延びている。
【0066】
以上説明したように、上記態様例では、連結部43のうち係止片部42との境界部において一般部位72よりも肉厚な係止側補強部73が設けられており、当該係止側補強部73の肉厚は、連結部43の係止片部42側の端部に向けて次第にかつ連続的に大きくなっている。このため、連結部43と係止片部42とのなす角度が広がるような変形が生じた際に、連結部43と係止片部42との境界部に作用する応力を分散させる(応力の集中を抑制する)ことができる。従って、クリップ71をウエザストリップ本体5a(基底部11)に取付ける際や、クリップ71の基底部11への取付状態において、クリップ71に対して抜け方向への応力が作用した際に、クリップ71が連結部43と係止片部42との境界部において破損してしまうといった事態を抑制することができる。
【0067】
また、上記態様例では、連結部43のうち傘部33との境界部において、一般部位72よりも厚肉な傘部側補強部74が設けられており、当該傘部側補強部74の肉厚は、連結部43の傘部33側の端部に向けて次第にかつ連続的に大きくなっている。このため、連結部43と傘部33とのなす角度が広がるような変形が生じた際に、連結部43と傘部33との境界部に作用する応力を分散させる(応力の集中を抑制する)ことができる。従って、クリップ71を基底部11に取付ける際や、クリップ71の基底部11への取付状態において、クリップ71に対して抜け方向への応力が作用した際に、クリップ71が連結部43と傘部33との境界部において破損してしまうといった事態を抑制することができる。
【0068】
また、連結部43のうち係止片部42との境界部及び傘部33との境界部に関しては厚肉とされるものの、連結部43全体を厚肉とするわけではないので、クリップ71の基底部11への取付に際し、連結部43が変形し難くなってしまうことに起因して、取付作業性の低下等を招いてしまうといった事態を防止することができる。
【0069】
さらに、例えば、係止側補強部73に段差部が形成される場合には、係止片部42の基底部11への挿通時に、かかる段差部が基底部11に引っ掛かってしまうおそれがあるが、本態様例のように、係止側補強部73の肉厚が次第にかつ連続的に変化するといった構成を採用することで、係止片部42の挿通時における係止側補強部73と基底部11との干渉を抑制することができる。結果として、比較的スムースに係止側補強部73を基底部11に挿通させることができ、係止側補強部73を設けることに起因して、クリップ71の基底部11への取付作業性が低下してしまうといった事態を抑制することができる。
【0070】
特に、係止側補強部73のうち、一般部位72よりも連結部43の外周側に位置する傾斜部77が、係止片部42側に向けて凹となる湾曲形状をなしていることから、クリップ71の基底部11への取付に際し、比較的スムースに係止側補強部73を基底部11に挿通させることができるといった作用効果が一層確実に奏される上、係止片部42の基底部11への挿通に際し、係止側補強部73においても追従的に形状変化させることができる。従って、係止側補強部73を設けることに起因して、クリップ71の基底部11への取付作業性が低下してしまうといった事態をより確実に抑制することができる。
【0071】
また、係止側補強部73は、係止片部42の延在方向において連結部43が厚肉とされることで構成され、係止片部42の延在方向に対して直交する方向における係止側補強部73の肉厚は、一般部位72とほぼ同じである。このため、係止側補強部73と挿入ピン91(挿入ピン91の内周面)との干渉を抑制することができ、クリップ71の基底部11への取付に際し、係止片部42を安定してスムースに基底部11の内面側(第1中空部12a)へと送り出すことができる。さらに、係止片部42を基底部11の内面側に送り出す際に、係止側補強部73と基底部11との干渉を抑制することができ、係止側補強部73を設けることに起因して、クリップ71の基底部11への取付作業性(挿入作業性)が低下してしまうといった事態を抑制することができる。また、係止側補強部73の剛性が高くなりすぎることに起因して連結部43が変形し難くなってしまい、係止片部42の基底部11への挿通作業性が低下してしまうといった事態を抑制することができる。
【0072】
さらに、傘部側補強部74は、連結部43の周方向全域にわたって連結部43が厚肉とされることで構成されている。このため、リテーナ部8に取付けられた状態にあるドアウエザストリップ5に対し、当該ドアウエザストリップ5をその長手方向や車幅方向にずらすような応力が作用した場合に、クリップ71が連結部43と傘部33との境界部において破損してしまうといった事態をより確実に抑制することができる。尚、傘部側補強部74は係止側補強部73のように基底部11に挿通させる必要はなく、連結部43の周方向全域にわたって厚肉とした場合であっても、取付作業性(挿通作業性)の低下を招くおそれはない。
【0073】
また、挿入ピン91の先端部には、挿入ピン91の先端部から押し出される係止片部42を係合部31側に案内するガイド部92が設けられている。当該ガイド部92の存在により、基底部11の内面側に押し出された係止片部42の傾倒動作をスムースに行わせることができる。さらに、係止片部42を挿入ピン91の先端部から押し出す際に、連結部43に対して当該連結部43が伸長させられるような力が作用してしまうといった事態を抑制することができ、連結部43と係止片部42との境界部(係止側補強部73)にかかる負担を軽減させることができる。従って、クリップ71が連結部43と係止片部42との境界部において破損してしまうといった事態をより確実に防止することができる。
【0074】
また、係止側補強部73は、係止片部42の基底部11への挿入方向先端側に連結部43の厚みを大きくしただけでなく、その反対側にも連結部43の厚みを大きくすることで構成されている。このため、係止片部42を挿入ピン91の内周側にセットする際に、クリップ71の向き(傾斜部77が挿入ピン91の先端部側に向いているか)を確認しなくても済み、作業性の向上等を図ることができる。また、クリップ71の基底部11への取付状態において、クリップ71に対して抜け方向への応力が作用した際に、クリップ71が連結部43と係止片部42との境界部において破損してしまうといった事態をより確実に抑制することができる。
【0075】
加えて、挿入ピン91の外形状は直線状に構成されている。例えば、挿入ピンの先端部から押し出される係止片部を係合部側に案内するべく、挿入ピンの先端部を外形状ごと屈曲又は湾曲させる場合には、挿入ピンを基底部に貫通させる(突き刺す)際に挿入ピンを押し込みにくくなるおそれがある上、挿入ピンを突き刺すことで基底部に形成される孔が、基底部に対して垂直かつ真直ぐに(基底部の厚み方向に沿って真直ぐに)形成されないことが懸念される。これに対し、挿入ピン91が直線状であれば、挿入ピン91を基底部11に貫通させる際に挿入ピン91を押し込みやすく、挿入ピン91を基底部11に対して垂直に突き刺すことで基底部11に形成される孔を基底部11に対して垂直かつ真直ぐに形成することができる。従って、挿入ピン91を基底部11に貫通させる作業を比較的容易に行うことができる上、基底部11への取付状態にあるクリップ71の連結部43を基底部11に対して垂直かつ真直ぐに延在させることができ、クリップ71の取付状態の安定化を図ることができる。
【0076】
尚、係止側補強部73は、連結部43の周方向全域にわたって連結部43が厚肉とされることで構成されていることとしてもよい。また、係止側補強部73を連結部43の長手方向に対して直交する方向に切断したときの断面形状を、長円状に構成することとしてもよい。つまり、連結部43の周方向、及び係止片部42の周方向において、傾斜部77に段差が形成されないように構成してもよい。さらに、傾斜部77は、傘部33側に向けて凸となる湾曲形状をなしていることとしてもよいし、湾曲していなくてもよい。加えて、挿入ピン91の製造方法は特に限定されるものではなく、ガイド部92の形成に際し、鍛造、切削、溶接等を行うこととしてもよい。また、上記態様例では、係止側補強部73は、係止片部42の基底部11への挿入方向先端側に連結部43の厚みを大きくしただけでなく、その反対側にも連結部43の厚みを大きくすることで構成されているが、係止片部42の基底部11への挿入方向先端側にのみ連結部43の厚みを大きくするだけで係止側補強部73を構成することとしてもよい。すなわち、上記態様例では、一対の傾斜部77が設けられているが、どちらか一方の傾斜部77を省略することとしてもよい。
【0077】
(c)上記実施形態では、フロントドアのドアウエザストリップ5について具体化したが、取付けられるドアの部位は何ら限定されるものではなく、例えばリヤドアに取着されるドアウエザストリップに具体化することもできる。また、ドアウエザストリップだけでなく、ドア開口部2の周縁に沿って取付けられるウエザストリップ(オープニングトリム)に具体化することもできる。さらに、ドアの周縁部やドア開口部の周縁だけではなく、自動車ボディに形成される開口部(エンジンルーム、トランクルーム、ルーフ等の開口部)の周縁、端縁や、当該開口部を開閉する扉体(ボンネット、トランクリッド、ループパネル等)の周縁部に設けられるウエザストリップ、或いは、カウルルーバーの端縁部に取付けられるウエザストリップ(シール部材)に具体化することも可能である。
【0078】
また、上記実施形態では中空状のシール部12を具備するウエザストリップに具体化しているが、中空状のシール部12に代えてリップ状のシール部を具備するウエザストリップに具体化することもできる。さらに、シール部12に加え、シール部12とリップ部14との境界部付近からドア3の閉時におけるドア開口部2の周縁部に向けて延出するシールリップを備え、ドア3の閉時にシールリップがドア開口部2の周縁部に圧接する構成のウエザストリップに具体化することも可能である。
【0079】
加えて、上記実施形態では、基底部11が断面略C字状のリテーナ部8に嵌合されるとともに、クリップ21がリテーナ部8に形成された取付孔22に嵌め込まれることでドアウエザストリップ5がドアフレーム7に取付けられているが、クリップ21が取付孔22に嵌め込まれることのみでドアウエザストリップ5がドアフレーム7に取付けられていることとしてもよい。
【0080】
(d)上記実施形態では、基底部11及びシール部12(ウエザストリップ本体5a)がEPDMにより形成され、クリップ21がポリオキシメチレンやポリアミド等の合成樹脂材料により構成されているが、その他の素材を用いて形成してもよい。例えば、基底部11及びシール部12をTPO(オレフィン系熱可塑性エラストマー)により構成してもよいし、クリップ21をポリエチレン、ポリプロピレン、TPO、TPV(動的架橋型オレフィン系熱可塑性エラストマー)により構成してもよい。
【0081】
(e)上記実施形態では、クリップ21を取付孔22に嵌め込むとともに、基底部11をリテーナ部8に嵌め込むことで、ドアウエザストリップ5がドアフレーム7に取付けられているが、例えば、リテーナ部8を省略する代わりに基底部11の底面に対して両面接着テープを貼り付け、クリップ21との併用によりドアウエザストリップ5の取付けが行われることとしてもよい。もちろんクリップ21のみで取付けることとしてもよい。
【0082】
また、上記実施形態では、基底部11に対し、クリップ21がドアウエザストリップ5の長手方向に沿って所定間隔毎に取付けられているが、特にこのような構成に限定されるものではなく、長手方向において少なくとも一部がクリップ21によってドアフレーム7に取付けられる構成となっていればよい。例えば、ドアウエザストリップ5の大部分が基底部11のリテーナ部8への嵌合により取付けられ、リテーナ部8の形成されていない部位においてのみ、クリップ21を用いて取付けが行われることとしてもよい。
【0083】
(f)上記実施形態では、ドアウエザストリップ5(ウエザストリップ本体5a)は押出成形体のみで構成されているが、押出成形部と型成形部とにより構成してもよい。また、ドアウエザストリップ5は環状に繋がっていなくてもよい。
【0084】
尚、上記実施形態のようにウエザストリップ本体5aが押出成形体のみで構成される場合には、基底部11に対しクリップ21を取付ける作業を、ドアウエザストリップ5の製造工程の一連の流れ作業の中で挿入手段により自動化することができる。結果として、手作業による面倒なクリップ21の取付作業を必要としないことから製造工程が簡素化され、作業効率を高めることができる。一方、型成形部を備え、型成形部にもクリップ21を取付けるような場合には、挿入手段をハンドツール化して(押出棒55をスライド動作させる操作部を設けたりする)取付作業を行うことも可能である。
【0085】
(g)上記実施形態では、係止片部42を第1中空部12aに挿入して基底部11に係止片部42を係止させているが、図8に示すように、係止片部42を第2中空部12bにまで挿入し、ブリッジ13に係止片部42を係止させてもよい。尚、当該構成を採用する場合、係止部41の係止状態において係止片部42と傘部33との間に挟み込まれることとなる基底部11及びブリッジ13が取付基部を構成する。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】フロントドアが開状態にある自動車の斜視図である。
【図2】ドアウエザストリップの断面図である。
【図3】クリップを示す斜視図である。
【図4】クリップの取付工程を示す説明図である。
【図5】クリップの取付工程を示す説明図である。
【図6】クリップの取付工程を示す説明図である。
【図7】挿入手段の先端部を示す斜視図である。
【図8】別の実施形態におけるドアウエザストリップを示す断面図である。
【図9】(a)は別の実施形態におけるクリップを示す斜視図であり、(b)は別の実施形態におけるクリップの係止部を示す部分断面図である。
【図10】別の実施形態におけるクリップ及び挿入手段を示す模式図である。
【符号の説明】
【0087】
1…自動車、2…ドア開口部、3…ドア、5…ドアウエザストリップ、7…ドアフレーム、8…リテーナ部、11…基底部、12…シール部、12a…第1中空部、13…ブリッジ、21…クリップ、22…取付孔、31…係合部、32…軸部、33…傘部、34…支持片部、41…係止部、42…係止片部、43…連結部、51…挿入ピン、53…スリット、55…押出棒。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被取付部に取付けられる取付基部と、前記取付基部から延出するシール部と、前記取付基部に取付けられた留め具とを備えるウエザストリップにおいて、
前記留め具は、前記被取付部に形成された取付孔に嵌め込まれて係合可能な係合部と、前記取付基部に係止される係止部とを備え、
前記係合部は、棒状の軸部と、前記軸部の一端部から鍔状に広がる傘部と、前記軸部の外周部から外方かつ前記傘部側に向けて延びる支持部とを備え、
前記係止部は、前記取付基部の内面側に位置する細長形状の係止片部と、前記係止片部から当該係止片部の長手方向に対して交差する方向に延びて前記取付基部を貫通し、前記傘部と連結される連結部とを備え、
前記取付基部から突出する前記係合部を前記取付孔に嵌め込むことで、前記傘部と前記支持部の先端部との間に前記取付孔の周縁部が挟持される構成であって、
略筒状をなし先端が尖った挿入ピンを具備する挿入手段を用いて、前記挿入ピンを前記取付基部にその底面側から突き刺し、前記挿入ピンの内周側を通して前記係止片部を前記取付基部の前記底面とは反対側の内面側に送り出すことにより、前記留め具が前記取付基部に取付けられていることを特徴とするウエザストリップ。
【請求項2】
前記係止片部から前記傘部までの距離は、前記係止部の係止状態において前記係止片部と前記傘部との間に挟み込まれることとなる前記取付基部の厚みよりも小さく設定されていることを特徴とする請求項1に記載のウエザストリップ。
【請求項3】
前記連結部は可撓性を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のウエザストリップ。
【請求項4】
前記係止片部は前記連結部よりも高剛性であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のウエザストリップ。
【請求項5】
前記連結部は、前記係止片部との境界部において、その他の一般部位よりも厚肉な係止側補強部を備え、
前記係止側補強部の肉厚は、前記連結部の前記係止片部側の端部に向けて次第にかつ連続的に大きくなっていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のウエザストリップ。
【請求項6】
前記係止側補強部は、前記係止片部の延在方向において前記連結部が厚肉とされることで構成され、前記係止片部の延在方向に対して直交する方向における前記係止側補強部の肉厚は、前記一般部位と同じ又はほぼ同じであることを特徴とする請求項5に記載のウエザストリップ。
【請求項7】
前記連結部は、前記傘部との境界部において、その他の一般部位よりも厚肉な傘部側補強部を備え、
前記傘部側補強部の肉厚は、前記連結部の前記傘部側の端部に向けて次第にかつ連続的に大きくなっていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のウエザストリップ。
【請求項8】
上記請求項1乃至7のいずれかに記載のウエザストリップの製造方法であって、
前記取付基部及び前記シール部を具備するウエザストリップ本体を成形する成形工程と、
前記留め具を、挿入手段を用いて前記ウエザストリップ本体に取付ける取付工程とを備え、
前記挿入手段は、内周側に前記係止片部を挿通させる略筒状をなす挿入ピンと、前記挿入ピンの内周側に位置する前記係止片部を前記挿入ピンの先端から押出すことのできる押出手段とを備え、
前記挿入ピンは、先端が尖った形状をなすとともに、長手方向に沿って延び、前記連結部を挿通可能な幅を有するスリットを備え、
前記取付工程は、内周側に前記係止片部をセットした前記挿入ピンを前記取付基部に突き刺す工程と、前記押出手段によって前記係止片部を前記取付基部の内面側に押出す工程と、前記挿入ピンを抜き取る工程とを備えることを特徴とするウエザストリップの製造方法。
【請求項9】
前記スリットは、前記挿入ピンに挿入された前記係止片部が抜け出さない幅に設定されていることを特徴とする請求項8に記載のウエザストリップの製造方法。
【請求項10】
前記挿入ピンの先端部には、その内周側において前記スリット側に突出するガイド部が形成され、前記ガイド部の突出量は、前記挿入ピンの先端部側に向けて次第にかつ連続的に大きくなっていることを特徴とする請求項8又は9に記載のウエザストリップの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−290703(P2008−290703A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−17328(P2008−17328)
【出願日】平成20年1月29日(2008.1.29)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】