説明

ウエザストリップ

【課題】加飾層による外観品質の向上を図り、剥離に起因する不具合の懸念を払拭する。
【解決手段】ウエザストリップ4は、断面略U字形のトリム部5及び中空状のシール部6を備えるとともに、トリム部5には意匠リップ18が延出形成され、その基体はEPDMにより構成されている。意匠リップ18の外表面などの意匠面Dに、接着樹脂層を介在させてPET製の不織布等で構成される加飾層26を設ける。接着樹脂層を、基体側に配設され、オレフィン系樹脂よりなる第1フィルム層25Aと、加飾層26側に配設される第2フィルム層25Bとから構成する。第2フィルム層25Bを、多価カルボン酸と多価アルコールの割合が1:1で、その酸のうち芳香族系の酸と脂肪族系の酸との割合が45〜65:55〜35であるポリエステル樹脂を主成分とし、第1フィルム層25Aと相溶性のあるオレフィン系材料を含有してなる混合樹脂素材により形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両のドア開口周縁に用いられるウエザストリップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車等の車両のドアの周縁部又はドア開口周縁にはウエザストリップが設けられる。ウエザストリップは、ドアの周縁部又はドア開口周縁のフランジに嵌め込まれる断面略U字状のトリム部と、該トリム部から突出して設けられた中空状のシール部とを備えている。これらトリム部等を構成する基体としては、EPDM(エチレン−ジエン−プロピレン共重合ゴム)が用いられるのが一般的である。そして、ドア閉時には、ドア開口周縁又はドアの周縁部にシール部が圧接されることによって、ドアとボディとの間がシールされる。
【0003】
近年では、トリム部の意匠面に布地(織布)を貼ることにより、意匠性の向上を図っているウエザストリップも見受けられる(例えば、特許文献1参照。)。また、意匠リップの外表面など、意匠面にポリエステル製の不織布で構成される加飾層を設ける技術も提案されている(例えば、特許文献2参照。)。このように織布や不織布からなる加飾層を設けるにあたっては、EPDMからなる基体と加飾層との間に接着樹脂層を介在させることが行われる。
【0004】
しかし、基体を構成するEPDMは極性を有しないのに対し、ポリエステル樹脂よりなる加飾層は極性を有するため、両者に対し接合可能な接着樹脂層を採用する必要がある。かかる接着樹脂層として、第1のフィルム及び第2のフィルムの2層からなり、基体側に配設される第1のフィルムとしてオレフィン系樹脂を用い、加飾層側に配設される第2のフィルムとしてポリエステル樹脂を用いたものがある(例えば特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平6−104343号公報
【特許文献2】特開2007−131096号公報
【特許文献3】特許第2545301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献3に記載された技術によれば、第1のフィルムがEPDMに対し相溶性があることから基体に接着し、第2のフィルムは極性を有するため加飾層に接着する。
【0007】
ところが、第2のフィルムを構成するポリエステル樹脂は、特定の温度において結晶化しやすい素材である。このため、比較的巨大化した結晶質部分が非晶質部分に影響を及ぼし、第2のフィルム内部において歪み応力が生じてしまうおそれがある。このため、かかる結晶化の促進に伴い、接着後において第2のフィルムが第1のフィルムから剥離してしまうという懸念が生じうる。
【0008】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、加飾層による外観品質の向上を図ることができるとともに、剥離に起因する不具合の懸念を払拭することのできるウエザストリップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、上記問題を解決するのに適した各手段につき、項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果等を付記する。
【0010】
手段1.車両のドア開口周縁のフランジに保持される断面略U字状のトリム部と、
前記トリム部から突出して設けられ、ドア閉時にドアの周縁に圧接される中空状のシール部とを備え、基体がEPDMにより形成されてなるウエザストリップにおいて、
前記トリム部の外表面に、シート状の接着樹脂層を介在させた上で、ポリエステル樹脂よりなる織布又は不織布で構成される加飾層を設け、
前記接着樹脂層を、前記基体側に配設され、オレフィン系樹脂よりなる第1フィルム層と、前記加飾層側に配設される第2フィルム層とから構成するとともに、
前記第2フィルム層を、多価カルボン酸と多価アルコールの割合が1:1で、その多価カルボン酸のうち芳香族系の多価カルボン酸と脂肪族系の多価カルボン酸との割合が45〜65:55〜35であるポリエステル樹脂を主成分とし、前記第1フィルム層と相溶性のあるオレフィン系材料を含有してなる混合樹脂素材により形成したことを特徴とするウエザストリップ。
【0011】
ここで、第2フィルム層の主成分たるポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等が挙げられる。当該ポリエステル樹脂は一般に、多価カルボン酸(主としてジカルボン酸)と多価アルコール(主としてジオール)の割合が1:1(モル比)の関係で構成されており、多価カルボン酸の種類としては芳香族系、脂肪族系がある。そして、本願では芳香族系と脂肪族系の多価カルボン酸の割合を45〜65:55〜35(モル比)としている。一方、第2フィルム層に含有されるオレフィン系材料、及び、第1フィルム層を構成するオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等が代表例として挙げられる。なお、オレフィン系材料には、ゴム成分が均質に微分散されているものであれば、TPO(オレフィン系熱可塑性エラストマー)を用いることも可能である。また、第2フィルム層に含有されるオレフィン系材料としては第1フィルム層と接着性が良好のものが好適に用いられる。
【0012】
手段1によれば、トリム部の外表面に設けられた加飾層により、外観品質の向上を図ることができる。また、手段1では、基体が極性に乏しいEPDMよりなり、加飾層は極性の大きいポリエステル樹脂よりなるのであるが、両者間にシート状の接着樹脂層が介在させられている。当該接着樹脂層は、基体側に配設され、オレフィン系樹脂よりなる第1フィルム層と、加飾層側に配設され、ポリエステル樹脂を主成分とする第2フィルム層とから構成されている。このため、第1フィルム層が基体に対し強く固着されるとともに、第2フィルム層が加飾層に対し強く固着されることとなる。ここで、第2フィルム層がポリエステル樹脂を主成分としていることから、結晶化に起因する歪み応力の発生が懸念されるところであるが、手段1では、第2フィルム層中にオレフィン系材料が含有されている。従って、第2フィルム層中にオレフィン系材料成分が介在されることとなり、ポリエステル樹脂の結晶質成分の巨大化が妨げられる。すなわち、ポリエステル樹脂の結晶質成分が比較的細かいものとなり、これにより歪み応力自体も比較的小さく分散されたものとなる。また、ポリオレフィン系材料成分が歪み緩和成分として機能し、これにより歪み応力が一層低減されることとなる。その結果、歪み応力に起因して第2フィルム層が第1フィルム層から剥離してしまうといった事態を抑制することができ、ひいては加飾層の剥離による外観品質の低下等の不具合を確実に防止することができる。また、ポリエステル樹脂を構成する多価カルボン酸について、芳香族系と脂肪族系の多価カルボン酸の割合が45〜65:55〜35(モル比)となっている。このため、第2フィルム層は適度なフレキシビリティを有する一方で、柔らかくなりすぎることもない。
【0013】
手段2.車両のドア開口周縁のフランジに保持される断面略U字状のトリム部と、
前記トリム部から突出して設けられ、ドア閉時にドアの周縁に圧接される中空状のシール部と、
前記トリム部の外表面から延出形成されたリップ部とを備え、基体がEPDMにより形成されてなるウエザストリップにおいて、
少なくとも前記リップ部の外表面に、シート状の接着樹脂層を介在させた上で、ポリエステル樹脂よりなる織布又は不織布で構成される加飾層を設け、
前記接着樹脂層を、前記基体側に配設され、オレフィン系樹脂よりなる第1フィルム層と、前記加飾層側に配設される第2フィルム層とから構成するとともに、
前記第2フィルム層を、多価カルボン酸と多価アルコールの割合が1:1で、その多価カルボン酸のうち芳香族系の多価カルボン酸と脂肪族系の多価カルボン酸との割合が45〜65:55〜35であるポリエステル樹脂を主成分とし、前記第1フィルム層と相溶性のあるオレフィン系材料を含有してなる混合樹脂素材により形成したことを特徴とするウエザストリップ。
【0014】
手段2によれば、基本的には手段1と同様の作用効果が奏される。
【0015】
手段3.前記第2フィルム層のうち、ポリエステル樹脂の含有量を70質量%以上92質量%以下とし、オレフィン系材料の含有量を8質量%以上30質量%以下としたことを特徴とする手段1又は手段2に記載のウエザストリップ。
【0016】
手段3のように、第2フィルム層のうち、ポリエステル樹脂の含有量を70質量%以上92質量%以下、オレフィン系材料の含有量を8質量%以上30質量%以下とするのが望ましい。ポリエステル樹脂の含有量が下限値を下回る場合には、加飾層との接着性を十分に確保できないことが懸念され、ポリエステル樹脂の含有量が上限値を上回る場合、つまり、オレフィン系樹脂の含有量が少なすぎる場合には、上述した歪み応力の分散化、歪み緩和が十分に図ることが困難となるおそれがあり、また、第1フィルム層に対する接着性を十分に確保できないことが懸念される。
【0017】
手段4.前記第2フィルム層を構成するポリエステル樹脂の芳香族系の酸としてテレフタル酸、脂肪族系の酸としてアジピン酸、オレフィン系材料としてポリエチレン樹脂が用いられていることを特徴とする手段1乃至手段3のいずれかに記載のウエザストリップ。
【0018】
ポリエステル樹脂の芳香族系の酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸があるが、このうち、テレフタル酸の方が結晶化が安定しており好ましい。脂肪族系の酸としては、アジピン酸、セパシン酸があるが、アジピン酸の方が好ましい。オレフィン系材料としては、上記したように、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、TPO等があり、さらにPEは、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等の汎用の安価な材料であるので好ましく適用される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】自動車を示す斜視図である。
【図2】一実施形態におけるウエザストリップを示す断面図である。
【図3】ウエザストリップの中間成形体を示す断面図である。
【図4】接着樹脂層及び加飾層を説明するための部分拡大断面図である。
【図5】ウエザストリップの製造ラインの一部を示す模式図である。
【図6】別の実施形態におけるウエザストリップを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、一実施形態について図面を参照して説明する。図1に示すように、車両としての自動車1の側方にはドア2が開閉可能に設けられ、ドア2に対応するボディ側のドア開口3周縁にはウエザストリップ4が装着されている。本実施形態のウエザストリップ4は、主として押出成形法によって成形され、全体として環状をなす。
【0021】
図2に示すように、ウエザストリップ4はトリム部5及びシール部6を備えている。トリム部5は、車内側側壁部11、車外側側壁部12及び両側壁11,12を連結する連結部13を備えており、全体として断面略U字状をなす。トリム部5は、EPDM(エチレン−プロピレン−ジエン共重合)ソリッドゴムによって構成されており、その内部には金属製のインサート14が埋設されている。なお、トリム部5としては、EPDMの微発泡ゴムやEPDMの発泡ゴム(スポンジゴム)を用いることができる。
【0022】
車外側側壁部12の内面(車内側面)にはトリム部5の内側(車内側)に向かって延びる複数の保持リップ部15が一体形成され、車内側側壁部11の内面(車外側面)にはトリム部5の内側(車外側)に向かって延びる保持リップ部16が一体形成されている。連結部13には図示しないガーニッシュ等の内装品の端部を覆う意匠リップ18が延出形成されている。意匠リップ18が本実施形態におけるリップ部に相当する。トリム部は、車外側側壁部と底壁としての連結部とにより断面略L字形に構成してもよい。この場合、内部にインサートが埋設されていなくてもよい。また、保持リップが形成されておらず、両面接着テープによって次述するフランジ23に貼着される構成としてもよい。
【0023】
ドア開口3周縁には、ボディのインナパネル21及びアウタパネル22が接合固定されることにより前記フランジ23が形成されており、このフランジ23にトリム部5が嵌め込まれたり、接着されたりして固定されることにより、ウエザストリップ4がドア開口3周縁に装着される。
【0024】
一方、シール部6は、車外側側壁部12の車外側において突出して一体に設けられ、EPDMスポンジゴムによって中空状に構成されている。そして、ドア2閉時には、シール部6がドア2の周縁に圧接されることで、ドア2と自動車1のボディとの間がシールされる。
【0025】
ウエザストリップ4の取付状態では、意匠リップ18の略先端部から基端部、さらにはトリム部5の連結部13、車外側側壁部12におけるシール部6との連接部に至る範囲の外表面は、外観に現れる意匠面Dとなる。図4の部分拡大断面図に示すように、この意匠面Dには、シート状(フィルム状を含む)の接着樹脂層25を介在させて、ポリエチレンテレフタレート(PET)製の織布、不織布等の布で構成される加飾層26が形成されている(以下には、加飾層26が不織布で構成されている場合について例示する)。不織布は、例えば、PETを溶融し、紡口から繊維として噴出させ、熱ロールでエンボス加工を施してシート状にするスパンボンド法等にて製造することができる。スパンボンド法によれば、比較的薄くても柔らかくて丈夫な不織布が得られる。もちろん、乾式法(ケミカルボンド、サーマルボンド、スパンレース、ニードルパンチ、ステッチボンド)やフラッシュ紡糸法等、他の方法で製造してもよい。なお、この加飾層26に対し、室内の内装品等の色にマッチした着色が施されていることとしてもよい。また、本実施形態における意匠面Dは、図2,3に示すように、意匠リップ18の先端にまで加飾層26が貼着されてなり、折返し部を含んでいる。
【0026】
さて、本実施形態における接着樹脂層25は、図4に示すように、基体(=ウエザストリップ本体;EPDM)側に配設され、オレフィン系樹脂よりなる第1フィルム層25Aと、加飾層26側に配設される第2フィルム層25Bとから構成されており、両者が積層状態で接合されている。かかる積層状態にある接着樹脂層25(積層フィルム)を形成する方法としては、公知のエクストルージョンラミネーション法、ホットメルトラミネーション法、2層インフレーション法等を用いることができる。そのうち、最も好適な積層フィルムの製造方法であるエクストルージョンラミネーション法は、押出機の先端に設けたT字型のダイスから、第1フィルム層25A及び第2フィルム層25Bの各溶融樹脂材料を共押出することにより、幅広のフィルムを積層形成するものである。
【0027】
本実施形態において、前記第2フィルム層25Bは、ポリエステル樹脂を主成分とし、オレフィン系材料を含有してなる混合樹脂素材により形成されている。ここで、ポリエステル樹脂としては、PET、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等が挙げられるが、本実施形態のポリエステル樹脂は、一般のものと比べて低融点(例えば120〜180℃、より好ましくは120〜140℃)の結晶性の低いものが好適に用いられる。ポリエステル樹脂は一般に、多価カルボン酸(主としてジカルボン酸)と多価アルコール(主としてジオール)の割合が1:1(モル比)の関係で構成されており、多価カルボン酸の種類としては芳香族系、脂肪族系がある。そして、本実施形態では芳香族系と脂肪族系の多価カルボン酸の割合を45〜65:55〜35(モル比)としている。ポリエステル樹脂の芳香族系の酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸があるが、このうち、テレフタル酸の方が、結晶化が安定しており好ましい。脂肪族系の酸としては、アジピン酸、セパシン酸があるが、アジピン酸の方が好ましい。より具体的には、芳香族系の酸のテレフタル酸(100%)と、脂肪族系の酸のアジピン酸(100%)が、その割合を45〜65:55〜35として配合されたものが好適に用いられる。グリコールとしては、エチレングリコール若しくは1,4−ブタンジオールが用いられ得るが、とりわけ1,4−ブタンジオールが好適に用いられる。なお、芳香族系の酸としてはテレフタル酸が、その配合割合(モル比)で80%以上が好ましく(イソフタル酸が若干(19%以下)配合されていても可)、100%のテレフタル酸のみのものがさらに好ましい。
【0028】
一方、第2フィルム層25Bに含有されるオレフィン系樹脂、及び、前記第1フィルム層25Aを構成するオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等が代表例として挙げられるが、ゴム成分が均質に微分散されているものであれば、TPO(オレフィン系熱可塑性エラストマー)を用いることも可能である。特に、PEは、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等の汎用の安価な材料であるので好ましく適用される。
【0029】
また、第2フィルム層25Bに含有されるオレフィン系樹脂としては結晶性が低いPEが好ましい。特に低密度PE(LDPE)、直鎖低密度PE(LLDPE)を用いるといった具合である。
【0030】
さらに、本実施形態では、第2フィルム層25Bを構成するポリエステル樹脂及びオレフィン系樹脂の融点は、いずれも加飾層26を構成するポリエステル樹脂の融点よりも低くされている。併せて、第2フィルム層25Bのうち、ポリエステル樹脂と、オレフィン系材料との融点差が40℃以下となるように設定されている。
【0031】
また、第2フィルム層25Bのうち、ポリエステル樹脂の含有量が70質量%以上92質量%以下に設定され、オレフィン系材料の含有量が8質量%以上30質量%以下に設定されている。オレフィン系樹脂の含有量は9質量%〜20質量%がさらに望ましい。さらに、本実施形態では、第1フィルム層25Aが第2フィルム層25Bの厚みよりも大きく設定されており、例えば第1フィルム層25Aの厚みが30〜40μm、第2フィルム層25Bの厚みが20〜30μmとなっている。第2フィルム層25Bの厚みが20μmより小さい場合は、加飾層26との接着が不十分になるおそれがあるとともに、30μmを超えると加飾層26との接着が満足する以上にフィルム層全体が硬くなり、トリム部5を曲げるときの柔軟性が悪くなるおそれがある。また、第1フィルム層25Aの厚みが30μmより小さい場合は、EPDMのトリム部5等への接着が不十分になるおそれがあるとともに、40μmを超えるとトリム部5等への接着が満足する以上にフィルム層全体が硬くなり、トリム部5を曲げるときの柔軟性が悪くなるおそれがある。
【0032】
次に上記ウエザストリップ4の製造方法について説明する。図5はウエザストリップ4の製造ラインの一部を示す模式図であり、同図中においてウエザストリップ4は左側から右方向に進みながら製造される。但し、本実施形態では、上述した接着樹脂層25が予め裏打ちされてなる加飾層26(=ラミネート不織布35)が用意されているもの、すなわち、加飾層26に接着樹脂層25の第2フィルム層25Bが熱溶着されたものが用意されているものとして説明する。
【0033】
まず、押出成形工程においては、ゴム押出機31に対し、EPDM未加硫ゴムとともにインサート14が連続的に供給される。そして、EPDM未加硫ゴムによってインサート14が被覆された状態で、ゴム押出機31のダイスからウエザストリップ4の本体部となる中間成形体32(図3参照)が押出成形される。この段階では、トリム部5に対応するインサート14を埋設した部位が図3に示すように開いた状態で略平板状に押出される。
【0034】
続く、加硫工程では、押出された中間成形体32が高周波加硫槽(UHF)33に案内され、一次加硫が施される。その後、熱風加硫槽(HAV)34に案内され、二次加硫が施され、加硫が完了する。
【0035】
その後、加飾層形成工程において、中間成形体32に加飾層26を設ける。より詳しくは、PET製の不織布(加飾層26)に接着樹脂層25が熱溶着により裏打ちされたラミネート不織布35を繰り出し、加硫の直後で比較的高温となっている中間成形体32の意匠面Dに対応する部位に圧着させる。これにより、接着樹脂層25の第1フィルム層25Aが溶融し、前記ラミネート不織布35が中間成形体32に熱溶着される。
【0036】
加飾層形成工程を経た中間成形体32は曲げ加工機37により曲げ加工され、断面略U字状のトリム部5が形成される。その後、カッター38で所定の寸法に裁断され、ウエザストリップ4が得られる。
【0037】
以上詳述したように、本実施形態では、意匠リップ18の外表面など、ウエザストリップ4の意匠面Dに形成される加飾層26がPET製の不織布で構成されているため、織布を用いた場合と同様のファブリック調の外観とすることができ、美しい外観が得られ、風合いも優れたものとなる。
【0038】
一方で、生産性の高い不織布を用いるため、低コストで生産可能となる。また、本実施形態では、PEシートが裏打ちされたラミネート不織布35が、中間成形体32に圧着させられて熱溶着される。従って、接着剤の塗布工程が不要となり、また、加硫直後の比較的高温となっている中間成形体32に圧着させるため、熱溶着のための加熱工程が別途必要となることもない。その結果、加飾層26の接合が比較的容易となり、この点においても、生産性の向上が図られ、低コストを実現できる。
【0039】
また、本実施形態では、ウエザストリップ4を構成する基体が極性に乏しいEPDMよりなり、加飾層26は極性の大きいポリエステル樹脂よりなるのであるが、両者間にシート状の接着樹脂層25が介在させられている。当該接着樹脂層25は、オレフィン系樹脂よりなる第1フィルム層25Aと、加飾層26側に配設され、ポリエステル樹脂を主成分とする第2フィルム層25Bとから構成されている。このため、第1フィルム層25Aが基体(EPDM)に対し強く固着されるとともに、第2フィルム層25Bが加飾層26に対し強く固着されることとなる。ここで、第2フィルム層25BがPETを主成分としていることから、結晶化による歪み応力の発生が懸念されるところであるが、本実施形態では、第2フィルム層25B中にオレフィン系材料が8〜30質量%含有されている。従って、第2フィルム層25B中にオレフィン系材料成分が適度に介在されることとなり、PETの結晶質成分の巨大化が妨げられる。すなわち、PETの結晶質成分が比較的細かいものとなり、これにより歪み応力自体も比較的小さく分散されたものとなる。また、ポリオレフィン系材料成分が歪み緩和成分として機能し、これにより歪み応力が一層低減されることとなる。その結果、歪み応力に起因して第2フィルム層25Bが第1フィルム層25Aから剥離してしまうといった事態を抑制することができ、ひいては加飾層26の剥離による外観品質の低下等の不具合を確実に防止することができる。また、ポリエステル樹脂を構成する多価カルボン酸について、芳香族系と脂肪族系の多価カルボン酸の割合が45〜65:55〜35(モル比)となっている。このため、第2フィルム層25Bは適度なフレキシビリティを有する一方で、柔らかくなりすぎることもない。
【0040】
また、第2フィルム層25Bを構成するポリエステル樹脂及びオレフィン系材料の融点は、いずれも加飾層26を構成するPETの融点よりも低い。このため、加飾層26(ラミネート不織布35)を、接着樹脂層25を介して熱溶着しようとした場合に、加飾層26を構成するPET樹脂の融点よりも低い温度で熱溶着させることができる。従って、加飾層26が熱によるダメージを受けることなく強固な熱溶着を実現することができる。
【0041】
さらに、本実施形態では第2フィルム層25Bのうち、ポリエステル樹脂と、オレフィン系材料との融点差が40℃以下に設定されているため、熱溶着に際し一方が溶融しなかったりすることが起こりにくく、双方の材料を均等に再溶融させ溶着させることができる。その結果、上述した作用効果がより確実に奏されることとなる。
【0042】
ここで、本実施形態の作用効果を確認するべく、次の実験を行った。先ず、第2フィルム層を形成する素材のうち、ポリエステル樹脂を構成する多価カルボン酸について、芳香族系と脂肪族系の多価カルボン酸の割合を種々変更させた上で、第2フィルム層、及び、接着樹脂層が裏打ちされてなる加飾層(=ラミネート不織布)並びにウエザストリップを作製した。そのときのウエザストリップ本体に対するラミネート不織布の形状追従性、及び、ウエザストリップ作製時における耐伸張性を評価するとともに、柔軟性等に関する総合評価を下すこととした。その結果を表1に示す。但し、この場合において、芳香族系の多価カルボン酸として、テレフタル酸を用いるとともに、脂肪族系の多価カルボン酸としてアジピン酸を用いた。また、第2フィルム層のうち、ポリエステル樹脂の含有量を80質量%、オレフィン系材料(ここでは直鎖低密度PEを用いた)の含有量を20質量%とした。さらに、第1フィルム層の厚みを35μm、第2フィルム層の厚みを25μmとし、加飾層として、PET製の不織布を用いた。表1中、二重丸印は極めて良好、丸印は良好、バツ印は不良であることを示す。
【0043】
【表1】

【0044】
表1に示すように、ポリエステル樹脂を構成する多価カルボン酸について、芳香族系と脂肪族系の多価カルボン酸の割合が45〜65:55〜35(モル比)の場合には、適度なフレキシビリティを有する一方で、柔らかくなりすぎることもなく、適度な柔軟性を有することが明らかとなった(実施例1〜3)。特に、芳香族系の多価カルボン酸と脂肪族系の多価カルボン酸の割合が55:45の場合に、最も良好な柔軟性を有することが明らかとなった。これに対し、芳香族系の多価カルボン酸の割合が多すぎた場合には、柔軟性はあるものの、柔らかすぎてしまい、ウエザストリップ作製時に第2フィルム層が延びてしまうという不具合が起こってしまった(比較例1)。また逆に、脂肪族系の多価カルボン酸の割合が多すぎた場合には、フレキシビリティに乏しく、得られたウエザストリップを曲げた際に、ウエザストリップ本体の曲げに追従できず、突っ張ってしまうという不具合が起こってしまった(比較例2)。このことからも、ポリエステル樹脂を構成する多価カルボン酸について、芳香族系と脂肪族系の多価カルボン酸の割合は45〜65:55〜35(モル比)である必要があるといえる。
【0045】
次に、第2フィルム層を形成する素材のうち、ポリエステル樹脂の含有量と、オレフィン系材料の含有量とを種々変更させた上で、第2フィルム層、及び、接着樹脂層が裏打ちされてなる加飾層(=ラミネート不織布)並びにウエザストリップを作製した。そして、加飾層に対する第2フィルム層の耐剥離性、及び、第1フィルム層に対する第2フィルム層の耐剥離性をそれぞれ評価するとともに、第2フィルム層の耐剥離性に関する総合評価を下すこととした。その結果を表2に示す。但し、この場合において、ポリエステル樹脂を構成する多価カルボン酸について、芳香族系の多価カルボン酸として、テレフタル酸を用いるとともに、脂肪族系の多価カルボン酸としてアジピン酸を用い、テレフタル酸とアジピン酸との割合が55:45(モル比)のものを用いた。また、オレフィン系材料として、直鎖低密度PEを用いた。さらに、第1フィルム層の厚みを35μm、第2フィルム層の厚みを25μmとし、加飾層として、PET製の不織布を用いた。表2中、二重丸印は極めて良好、丸印は良好、三角印は良好品に比べやや劣ることを示す。
【0046】
【表2】

【0047】
表2に示すように、第2フィルム層のうち、ポリエステル樹脂の含有量が70質量%以上92質量%以下、オレフィン系材料の含有量が8質量%以上30質量%以下の場合には、加飾層及び第1フィルム層に対し、それぞれ優れた耐剥離性を備えることが明らかとなった(実施例5〜7:尚、実施例6は実施例2と同じのものである)。これに対し、ポリエステル樹脂の含有量が70質量%を下回る場合(実施例8)には、加飾層に対する接着性が実施例5〜7に比べやや劣ることとなった。また、ポリエステル樹脂の含有量が92質量%を上回る場合、つまり、オレフィン系樹脂の含有量が8質量%を下回る場合には、第1フィルム層に対する接着性が実施例5〜7に比べやや劣ることになった(実施例5)。このことからも、優れた接着性を確保するという観点においては、第2フィルム層のうち、ポリエステル樹脂の含有量が70質量%以上92質量%以下、オレフィン系材料の含有量が8質量%以上30質量%以下であることが望ましいといえる。
【0048】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0049】
(a)上記実施形態では、(サイドフロント)ドア2に対応するボディ側のドア開口3周縁に設けられるウエザストリップ4について具体化しているが、ドア2の周縁部、又は、リヤドア、バックドア、ラッゲージドア(トランクリッド)、ルーフドア(スライディングルーフパネル)等の他のドアの周縁部又はそれらのドアに対向するドアの開口周縁に設けられるウエザストリップについて適用することも可能である。
【0050】
(b)上記実施形態におけるウエザストリップ4は、リップ部としての意匠リップ18を備えているが、図6に示すように、ウエザストリップ41が、意匠リップ18を省略して構成されることとしてもよい。この場合において、トリム部5の車外側側壁部12の連結部13側端部から車内側側壁部11にかけての外表面が外観に現れる。そのため、ウエザストリップ41は、当該意匠面に対して加飾層26が設けられて構成されている。
【0051】
(c)上記実施形態では、ウエザストリップ4のトリム部5を構成する素材としてEPDMソリッドゴムを例示しているが、EPDMの微発泡ゴム、EPDMのスポンジゴム等の他の形態のゴム材料を用いてもよい。
【0052】
(d)上記実施形態では、加飾層26として不織布を採用しているが、ポリエステル製の織布を用いてもよい。
【0053】
(e)上記実施形態では、ウエザストリップ4がドア開口3周縁の全周にわたって取付けられているが、必ずしも全周でなくてもよく、例えば部分的に取付けられるウエザストリップであってもよい。また、部分的に型成形部を備えていても良い。
【符号の説明】
【0054】
1…自動車、2…ドア、3…ドア開口、4…ウエザストリップ、5…トリム部、6…シール部、18…意匠リップ、25…接着樹脂層、25A…第1フィルム層、25B…第2フィルム層、26…加飾層、D…意匠面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のドア開口周縁のフランジに保持される断面略U字状のトリム部と、
前記トリム部から突出して設けられ、ドア閉時にドアの周縁に圧接される中空状のシール部とを備え、基体がEPDMにより形成されてなるウエザストリップにおいて、
前記トリム部の外表面に、シート状の接着樹脂層を介在させた上で、ポリエステル樹脂よりなる織布又は不織布で構成される加飾層を設け、
前記接着樹脂層を、前記基体側に配設され、オレフィン系樹脂よりなる第1フィルム層と、前記加飾層側に配設される第2フィルム層とから構成するとともに、
前記第2フィルム層を、多価カルボン酸と多価アルコールの割合が1:1で、その多価カルボン酸のうち芳香族系の多価カルボン酸と脂肪族系の多価カルボン酸との割合が45〜65:55〜35であるポリエステル樹脂を主成分とし、前記第1フィルム層と相溶性のあるオレフィン系材料を含有してなる混合樹脂素材により形成したことを特徴とするウエザストリップ。
【請求項2】
車両のドア開口周縁のフランジに保持される断面略U字状のトリム部と、
前記トリム部から突出して設けられ、ドア閉時にドアの周縁に圧接される中空状のシール部と、
前記トリム部の外表面から延出形成されたリップ部とを備え、基体がEPDMにより形成されてなるウエザストリップにおいて、
少なくとも前記リップ部の外表面に、シート状の接着樹脂層を介在させた上で、ポリエステル樹脂よりなる織布又は不織布で構成される加飾層を設け、
前記接着樹脂層を、前記基体側に配設され、オレフィン系樹脂よりなる第1フィルム層と、前記加飾層側に配設される第2フィルム層とから構成するとともに、
前記第2フィルム層を、多価カルボン酸と多価アルコールの割合が1:1で、その多価カルボン酸のうち芳香族系の多価カルボン酸と脂肪族系の多価カルボン酸との割合が45〜65:55〜35であるポリエステル樹脂を主成分とし、前記第1フィルム層と相溶性のあるオレフィン系材料を含有してなる混合樹脂素材により形成したことを特徴とするウエザストリップ。
【請求項3】
前記第2フィルム層のうち、ポリエステル樹脂の含有量を70質量%以上92質量%以下とし、オレフィン系材料の含有量を8質量%以上30質量%以下としたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のウエザストリップ。
【請求項4】
前記第2フィルム層を構成するポリエステル樹脂の芳香族系の多価カルボン酸としてテレフタル酸、脂肪族系の多価カルボン酸としてアジピン酸、オレフィン系材料としてポリエチレン樹脂が用いられていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のウエザストリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−255909(P2009−255909A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−69334(P2009−69334)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】