説明

ウエハの試験装置及び試験方法

【課題】基板加熱を伴う電気的試験を行う際に、探針が試験パッドから外れるのを防止することが可能なウエハの試験装置及び試験方法を提供すること。
【解決手段】複数の探針8が設けられたプローブカード3と、半導体ウエハWを加熱すると共に、プローブカード3に対向する位置に移動可能なウエハステージ12と、加熱板22と、探針8を観察するカメラ20とを有し、加熱板22により探針8を加熱しながら探針8をカメラ20で観察することにより探針8の位置情報を取得し、該位置情報に基づいて、半導体ウエハWの試験パッドPが探針8に触れる位置にウエハステージ12を移動させることを特徴とするウエハの試験装置による。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエハの試験装置及び試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
LSI等の半導体装置は、製品として出荷される前にウエハレベルで様々な電気的試験が行われる。近年では、複雑なデバイス特性を試験したり、車載製品のような高温状況下での使用が予定されている製品に対応したりする目的で、半導体ウエハを加熱しながら試験を行うことがある。
【0003】
例えば、MOSトランジスタのソース−ドレイン間のリーク電流を測定する試験では、半導体ウエハを加熱しながら試験を行うことで、デバイスメーカが保証する温度範囲内でリーク電流が規定値以下となるかがチップ毎に試験される。そして、規定値を満たさないチップは、不良チップとして認識され、ダイシング工程の後に破棄されることになる。
【0004】
そのような電気的試験は、プローブカードを備えたLSIテスタにおいて自動的に行われる。プローブカードはチップの試験パッドに対応した複数の探針を備えており、試験前に各探針の先端の位置をカメラで画像認識しておくことにより、探針と試験パッドとの位置合わせが自動的に行われる。
【0005】
そして、ウエハステージを加熱してその上に載置された半導体ウエハを加熱しつつ、探針からチップに試験電圧を印加することにより、上記のような基板加熱を伴う電気的試験を行うことができる。
【0006】
ところが、このように半導体ウエハを加熱すると、ウエハからの輻射熱によってその上方のプローブカードも加熱されるので、上記のように探針と試験パッドとの位置合わせを行っても、試験中に探針が熱膨張して試験パッドから外れてしまうことがある。
【0007】
こうなると、試験パッドに試験電圧が印加できなくなったり、探針によってチップが傷ついて歩留まりが低下したりするといった不都合が生じる。
【0008】
この点に鑑み、特許文献1では、ウエハステージの横に設けられた「プレヒート専用熱板」で探針を予め加熱して熱飽和状態にしておき、その後に探針を試験パッドに当てることで、熱膨張によって探針が試験パッドから外れるのを防止している。
【0009】
しかしながら、この方法では、位置合わせのためにカメラで探針の先端を認識する際、「プレヒート専用板」から探針が離れて探針が冷却してしまうので、熱飽和状態での探針をカメラで観察することができず、試験パッドから探針が外れるのを完全に防ぐことはできない。
【0010】
これに類似の方法として、予めウエハステージの上方にプローブカードを移動させ、ウエハステージからの輻射熱で探針を熱飽和状態にし、その後、位置合わせのためにカメラで探針の先端を認識する方法もある。この方法でも、カメラで探針を観察する際には、探針をウエハステージから離す必要があるので、カメラで観察中に探針が冷却してしまい、熱飽和状態における探針の先端の位置を認識することができない。
【0011】
その他に、本発明に関連する技術が下記の特許文献2にも開示されている。
【特許文献1】特開2004−266206号公報
【特許文献2】特開平7−5078号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、基板加熱を伴う電気的試験を行う際に、探針が試験パッドから外れるのを防止することが可能なウエハの試験装置及び試験方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一観点によれば、複数の探針が設けられたプローブカードと、ウエハを加熱すると共に、前記プローブカードに対向する位置に移動可能なウエハステージと、加熱部と、前記探針を観察するカメラとを有し、前記加熱部により前記探針を加熱しながら前記探針を前記カメラで観察することにより前記探針の位置情報を取得し、該位置情報に基づいて、前記ウエハの試験パッドが前記探針に触れる位置に前記ウエハステージを移動させるウエハの試験装置が提供される。
【0014】
また、本発明の別の観点によれば、加熱部によりプローブカードの探針を加熱しながら該探針を観察することにより、該探針の位置情報を取得するステップと、前記位置情報に基づいて、ウエハステージ上で加熱されているウエハの試験パッドが前記探針に触れる位置に前記ウエハステージを移動させるステップと、前記ウエハステージを移動させた後、前記探針から前記試験パッドに試験電圧を印加することにより、前記ウエハが加熱された状態で該ウエハに対して電気的試験を行うステップとを有するウエハの試験方法が提供される。
【0015】
次に、本発明の作用について説明する。
【0016】
本発明では、加熱部により予め加熱された状態にある探針の位置情報を取得し、その位置情報に基づいて、ウエハの試験パッドが探針に触れる位置にウエハステージを移動させることにより、試験パッドと探針との位置合わせを行う。これによれば、ウエハからの輻射熱によって熱膨張した後の探針が試験パッドに丁度触れるようになるので、試験の前や試験の最中に探針が試験パッドから外れるのを防止できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、加熱部により加熱された探針の位置情報に基づき、ウエハの試験パッドと探針との位置合わせを行うので、熱膨張によって探針が試験パッドから外れるのを防ぐことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【0019】
(1)試験装置
図1は、本実施形態に係るウエハの試験装置の全体斜視図である。
【0020】
その試験装置は、プローバ本体1とテストヘッド2とで構成される。そのうち、テストヘッド2は、軸2aを中心にして開閉可能となっており、試験前には図示のように開いた状態となっている。そして、テストヘッド2の内側には、試験電圧を印加するための導電性のピン4が複数立設されている。
【0021】
一方、プローバ本体1は、試験対象の半導体ウエハをその内部に収容すると共に、その半導体ウエハに対して電気的試験を行うためのプローブカード3を有する。プローブカード3は、プローバ本体1に固定された多層配線基板よりなり、その最上層には、上記のピン4に対応した複数の試験端子3bが設けられる。
【0022】
図2は、試験中の試験装置の全体斜視図である。
【0023】
図示のように、試験中は、テストヘッド2は閉じた状態となる。これにより、上記のピン4がプローブカード3の試験端子3bに当接し、ピン4からプローブカード3に試験電圧が供給されることになる。
【0024】
図3は、プローバ本体2の内部の斜視図である。
【0025】
プローバ本体2の内部には、図中のX方向とY方向のそれぞれに延在するX軸ガイドレール14とY軸ガイドレール15が設けられる。
【0026】
これらのガイドレール14、15の上にはウエハステージ12が載せられている。そのウエハステージ12は、不図示のステッピングモータ等の駆動手段によって各ガイドレール14、15に沿ってX-Y平面内(水平面内)で移動することにより、プローブカード3に対向する位置に移動することができる。
【0027】
なお、ウエハステージ12自身にも不図示のステッピングモータが設けられており、それによりウエハステージ12はZ方向(鉛直方向)に昇降可能となっている。
【0028】
また、ウエハステージ12には昇降可能な三つのピン16が挿通されている。搬送ロボットで運ばれたシリコンウエハ等の半導体ウエハWは、まずこのピン16の上に載せられ、搬送ロボットが退避した後、ピン16が降下することにより点線のようにチャック10上に載置されて、真空吸着によりチャック10上に安定的に保持されると共に、チャック10に内蔵されたヒータによって例えば100〜150℃程度に加熱される。
【0029】
なお、この例ではチャック10により半導体ウエハWを加熱する構成としたが、ウエハステージにヒータを内蔵し、ウエハステージにより半導体ウエハWを加熱するようにしてもよい。
【0030】
ここで、理想的には、半導体ウエハWとウエハステージ12のそれぞれの中心が一致するように、搬送ロボットとウエハステージ12との間で半導体ウエハWの受け渡しが行われるのが好ましい。しかし、実際には、搬送誤差によってウエハステージ12と半導体ウエハWとの間に位置ずれが発生することがある。
【0031】
そのため、ウエハステージ12の上方には、このような位置ずれを把握するためのウエハ用アライメントカメラ40が設けられる。そのウエハ用アライメントカメラ40は半導体ウエハWの画像をウエハ画像信号Swとして後段に出力し、そのウエハ画像信号Swに基づいて上記の位置ずれが把握されることになる。
【0032】
一方、ウエハステージ12の上方に設けられたプローブカード3は、矩形状の開口3aの縁に複数の探針8を有する。各探針8は、タングステン合金等からなる金属針よりなり、半導体ウエハWのチップ領域Rcに形成された試験パッドPに対応して設けられる。
【0033】
更に、ウエハステージ12の横には、透明加熱板(加熱部)22の一部領域Rを通して探針8を観察するための探針用アライメントカメラ20が設けられる。その探針用アライメントカメラ20は、探針8の画像を探針画像信号Spとして後段に出力する機能を有する。
【0034】
これら探針用アライメントカメラ20と透明加熱板22は、いずれもウエハステージ12に固定されており、ウエハステージ12と共にX-Y平面内を移動する。
【0035】
図4は、この透明加熱板22の上面図である。また、図5は、図4のI-I線に沿う断面図である。
【0036】
図4に示されるように、透明加熱板22は、石英板23に抵抗加熱ヒータ24を埋め込んでなり、抵抗加熱ヒータ24に供給する電流I1を制御することにより任意の温度、例えば100〜150℃程度に加熱される。
【0037】
抵抗加熱ヒータ24の配置の仕方は特に限定されない。但し、一部領域Rに抵抗加熱ヒータ24が存在すると、ヒータ24によって探針用アライメントカメラ20の視界が遮られ、カメラ20による探針8の観察を阻害してしまう。従って、一部領域Rを避けるようにして抵抗加熱ヒータ24を設けるのが好ましい。
【0038】
また、図示のように抵抗加熱ヒータ24を蛇行させて設けることにより、石英板23を均一に加熱することができる。
【0039】
なお、透明加熱板22の温度は、石英板23の周縁に設けられた熱電対等の温度計25により第1温度信号ST1に変換される。
【0040】
このような構造の透明加熱板22は、例えば、抵抗加熱ヒータ24を収容した型枠内に溶融石英を流し込むことで作製され得る。
【0041】
図6は、別の例に係る透明加熱板22の断面図である。この例では、透明加熱板22は、二枚の石英板28、29の間に抵抗加熱ヒータ24を挟んでなる。この場合、各石英板28、29は、接着剤によって互いに接合される。
【0042】
また、透明加熱板22を構成する透明基板は石英板23、28、29に限定されない。電気的試験は通常100〜150℃の温度範囲で行われるので、耐熱温度が150℃以上で強度に問題の無い透明基板で透明加熱板22を構成してもよい。更に、透明加熱板22の全体が均一に加熱されるようにするため、熱伝導率が1以上の透明基板で透明加熱板22を構成するのが好ましい。その場合、パーティクル源や汚染源とならない透明基板を用いることで、パーティクル等によって試験中の半導体ウエハWの歩留まりが低下するのを防止できる。
【0043】
図7は、この試験装置の機能ブロック図である。
【0044】
これに示されるように、本実施形態に係る試験装置は、統括制御部30、座標確認/画像処理部31、XYZドライバ動作指令部32、及び温度コントローラ33を備えた制御部50を有する。
【0045】
このうち、座標確認/画像処理部31は、探針用アライメントカメラ20で得られた探針画像信号Spを取り込むという機能の他に、探針用アライメントカメラ20のレンズ系を制御してその焦点を探針8の先端に合わせる焦点補正を行い、その補正量ΔFLZ1を算出する機能を有する。なお、補正量ΔFLZ1は、探針8の先端に焦点を合わすために必要なレンズ系のZ方向の移動量である。
【0046】
そして、座標確認/画像処理部31では、探針画像信号Spに基づいて、プローバ本体1に固定された座標系(以下、装置座標系という)における複数の探針8の先端のそれぞれのX座標x1とY座標y1とを算出する。また、補正量ΔFLZ1に基づいて、装置座標系における複数の探針8の先端のそれぞれのZ座標z1が座標確認/画像処理部31において算出される。
【0047】
このようにして探針8の先端の位置座標(x1、y1、z1)を算出した後、複数の探針8のなかから代表となる探針8、例えば矩形状の開口3a(図3参照)の四隅に設けられた四つの探針8が選び出される。そして、これら代表の探針8の位置座標(x1、y1、z1)に基づいて、探針8の先端の重心座標(xg、yg、zg)が位置情報SLとして統括制御部30に入力される。
【0048】
その統括制御部30は、ウエハ用アライメントカメラ40を制御してそのレンズ系の焦点を半導体ウエハWの表面に合わせる焦点補正を行う機能も有する。その補正の仕方は探針用アライメントカメラ20における焦点補正と同様であり、その補正に必要な補正量ΔFLZ2が統括制御部30において算出される。
【0049】
更に、統括制御部30には、ウエハ用アライメントカメラ40で得られたウエハ画像信号Swも入力される。
【0050】
統括制御部30では、このようにして得られた補正量ΔFLZ2とウエハ画像信号Swとに基づいて、ウエハステージ12と半導体ウエハWのそれぞれの中心を結ぶベクトルを位置ずれ量(Δx、Δy、Δz)として求める。
【0051】
そして、上記のようにして得られた探針8の重心座標(xg、yg、zg)と位置ずれ量(Δx、Δy、Δz)とに基づいて、半導体ウエハWの試験パッドPが探針8に触れるために必要なウエハステージ12のX方向、Y方向、及びZ方向の移動量(xR、yR、zR)が統括制御部30において算出される。
【0052】
XYZドライバ動作指令部32は、その移動量(xR、yR、zR)を含む移動信号SRに基づき、ウエハステージ12に対して動作信号Smを出力する。これを受けて、ウエハステージ12は、移動量(xR、yR、zR)だけ移動する。
【0053】
ウエハステージ12の移動量は、不図示の位置センサによってモニターされており、その位置センサから出力されるウエハステージ12の実際の位置がセンサ情報SactとしてXYZドライバ動作指令部32にフィードバックされる。
【0054】
XYZドライバ動作指令部32は、そのセンサ情報Sactに基づいてウエハステージ12が実際に(xR、yR、zR)だけ移動したかどうかを確認する。そして、移動していない場合には、ウエハステージ12に対して更に移動するように指示を出す。
【0055】
一方、温度コントローラ33は、第1温度信号ST1で透明加熱板22の温度をモニターしながら、電流I1を制御することにより、透明加熱板22を所定の温度に加熱する。
【0056】
更に、温度コントローラ33は、チャック10に設けられた不図示の温度計から出力される第2温度信号ST2によりチャック10の温度をモニターしつつ、チャック10が備えるヒータに供給する電流I2を制御し、チャック10を所定の温度に加熱する。
【0057】
(2)試験方法
次に、このようなウエハの試験装置を用いた試験方法について説明する。
【0058】
図8は、この試験方法について説明するためのフローチャートである。また、図9は、この試験方法を説明するための模式図である。
【0059】
図8に示されるように、この試験方法は、主要ステップとしてステップS1〜S4を有する。
【0060】
最初のステップS1では、図9(a)に示すように、透明加熱板22からの輻射熱によりプローブカード3の探針8を加熱しながら、透明加熱板22を通して探針用アライメントカメラ20で探針8を観察することにより、該探針8の重心座標(xg、yg、zg)を含んだ位置情報SLを取得する。
【0061】
なお、この時点では半導体ウエハWはウエハステージ12の上に既に載置されており、チャック10が内蔵するヒータによって所定の試験温度、例えば100〜150℃程度にまで加熱されている。
【0062】
そして、透明加熱板22は、そのチャック10と同じ温度に加熱されている。
【0063】
ここで、このステップS1は、熱膨張後の探針8の先端の重心位置を求めることを目的としているので、透明加熱板22によって探針8が十分に加熱されて熱飽和状態となり、熱膨張に伴う探針8やプローブカード22自身の変形が収まった後に、上記の位置情報SLを取得するのが好ましい。
【0064】
このように探針8を熱飽和状態にするには、探針8自身の温度を測定しなくても、熱飽和状態になるまでの加熱時間を予め求めておき、その加熱時間だけ加熱板22により探針8を加熱すればよい。その加熱時間は、典型的には約10分間である。
【0065】
また、探針8の先端が透明加熱板22に触れてしまうと、探針8が動いてしまいその位置を正確に把握することができない。よって、探針8の先端が透明加熱板22に非接触の状態で位置情報SLを取得するのが好ましい。
【0066】
更に、このように透明加熱板22を通して探針用アライメントカメラ20で探針8を観察することにより、透明基板22による探針8の加熱と、カメラ20による探針8の先端位置を読み取りとを容易に両立することができる。
【0067】
次いで、ステップS2に移り、図7を参照して説明した方法により、ウエハステージ12と半導体ウエハWとの位置ずれ量(Δx、Δy、Δz)を取得する。
【0068】
なお、ステップS1とステップS2の順序を逆にして、ステップS2を行った後にステップS1を行うようにしてもよい。
【0069】
次いで、ステップS3に移る。図9(b)は、ステップS3の処理内容を模式的に示す図である。
【0070】
そのステップS3では、位置ずれ量(Δx、Δy、Δz)と位置情報SLに含まれる探針8の重心座標(xg、yg、zg)とに基づいて、半導体ウエハWの試験パッドPが探針8に触れるために必要なウエハステージ12の移動量(xR、yR、zR)を算出し、その移動量(xR、yR、zR)だけウエハステージ12を移動させる。
【0071】
図10は、移動量(xR、yR、zR)の算出方法の一例を説明するための模式図である。
【0072】
この例では、半導体ウエハWの中心OWから(xc、yc、zc)だけ離れたチップCに対して試験を行う場合を想定している。そして、装置座標系におけるウエハステージ12の中心座標を(xs、ys、zs)とすると、図より(xR、yR、zR)=(xg、yg、zg)−(xs、ys、zs)−(Δx、Δy、Δz)−(xc、yc、zc)と算出できる。
【0073】
このような移動量(xR、yR、zR)だけウエハステージ12を移動することにより、複数の探針8の重心とチップCの中心とが重なり、図9(b)のように探針8が試験パッドPに触れることになる。
【0074】
ところで、このように探針8を試験パッドPに接触させると、半導体ウエハWからの輻射熱等によって探針8は熱膨張しようとするが、熱飽和状態における探針8の位置情報SLに基づいて上記のようにウエハステージ12を移動させたことで、熱膨張後の探針8が試験パッドPに丁度触れるようになり、しかも半導体ウエハWが加熱され続けている間は探針8が熱飽和状態にあるため、試験パッドPから探針8がずれることもない。
【0075】
これにより、自身の熱膨張によって探針8がパッドPから外れるのを防ぐことができ、半導体ウエハWにおいてパッドP以外の部分、例えばポリイミドよりなるパッシベーション膜が傷つくのが防止され、傷によって半導体チップが不良となるのを抑止することができる。
【0076】
特に、加熱板22による探針8の加熱温度と、ウエハステージ12による半導体ウエハWの加熱温度とを同じにすることで、試験パッドP上での探針8の熱膨張を実質的に無くすことができ、試験パッドPから探針8が外れるのを効果的に防止することができる。
【0077】
その後に、ステップS4に移り、探針8から試験パッドPに試験電圧を印加することにより、半導体ウエハWが加熱された状態で電気的試験を行う。
【0078】
既述のように、探針8は熱飽和状態にあるので、試験中に探針8が試験パッドPから外れることはなく、探針8から試験パッドPに試験電圧を良好に印加することができる。
【0079】
以上により、本実施形態に係るウエハの試験方法の主要ステップが終了した。
【0080】
このように、本実施形態によれば、透明加熱板22により探針8を予め熱飽和状態になるまで加熱し、その状態で探針8の位置情報SLを取得した。そして、その位置情報SLに基づき、探針8が試験パッドPに触れるようにプローブカード3と半導体ウエハWとの位置合わせをしたので、加熱されている半導体ウエハWからの輻射熱によって熱膨張した後の探針8が試験パッドPに丁度触れるようになり、試験の前や試験の最中に探針8が試験パッドPから外れるのを防止できる。
【0081】
以下に、本発明の特徴を付記する。
【0082】
(付記1) 複数の探針が設けられたプローブカードと、
ウエハを加熱すると共に、前記プローブカードに対向する位置に移動可能なウエハステージと、
加熱部と、
前記探針を観察するカメラとを有し、
前記加熱部により前記探針を加熱しながら前記探針を前記カメラで観察することにより前記探針の位置情報を取得し、該位置情報に基づいて、前記ウエハの試験パッドが前記探針に触れる位置に前記ウエハステージを移動させることを特徴とするウエハの試験装置。
【0083】
(付記2) 前記探針が熱飽和状態になるまで該探針を前記加熱部により加熱し、
前記位置情報を、前記探針が熱飽和状態になっているときに取得することを特徴とする付記1に記載のウエハの試験装置。
【0084】
(付記3) 前記複数の探針のなかから複数の代表を抽出し、該複数の代表の探針のそれぞれの先端を前記カメラにより観察して、前記複数の先端の重心座標を前記位置情報として取得することを特徴とする付記1に記載のウエハの試験装置。
【0085】
(付記4) 前記カメラの焦点を前記探針の先端に合わせる焦点補正を行い、その補正量に基づいて前記探針の鉛直方向の位置座標を求め、該位置座標を前記位置情報の一部として取得することを特徴とする付記1に記載のウエハの試験装置。
【0086】
(付記5) 前記カメラで前記探針を観察するとき、前記探針と前記加熱部とを非接触とすることを特徴とする付記1に記載のウエハの試験装置。
【0087】
(付記6) 前記加熱部の一部が透明であり、該一部を通して前記カメラが前記探針を観察することを特徴とする付記1に記載のウエハの試験装置。
【0088】
(付記7) 前記加熱部は、前記一部を避けて設けられたヒータを有することを特徴とする付記6に記載のウエハの試験装置。
【0089】
(付記8) 前記加熱部は、石英板に前記ヒータを埋め込んでなることを特徴とする付記7に記載のウエハの試験装置。
【0090】
(付記9) 前記加熱部は、二枚の石英板の間に前記ヒータを挟んでなることを特徴とする付記7に記載のウエハの試験装置。
【0091】
(付記10) 前記ウエハステージ、前記カメラ、及び前記加熱部は、互いに固定されていることを特徴とする付記1に記載のウエハの試験装置。
【0092】
(付記11) 前記ウエハは半導体ウエハであることを特徴とする付記1に記載のウエハの試験装置。
【0093】
(付記12) 加熱部によりプローブカードの探針を加熱しながら該探針を観察することにより、該探針の位置情報を取得するステップと、
前記位置情報に基づいて、ウエハステージ上で加熱されているウエハの試験パッドが前記探針に触れる位置に前記ウエハステージを移動させるステップと、
前記ウエハステージを移動させた後、前記探針から前記試験パッドに試験電圧を印加することにより、前記ウエハが加熱された状態で該ウエハに対して電気的試験を行うステップと、
を有することを特徴とするウエハの試験方法。
【0094】
(付記13) 前記位置情報を取得するステップにおいて、前記加熱部による加熱で前記探針が熱飽和状態になっているときに、前記位置情報を取得することを特徴とする付記12に記載のウエハの試験方法。
【0095】
(付記14) 前記位置情報を取得するステップにおいて、前記複数の探針のなかから複数の代表を抽出し、該複数の代表の探針のそれぞれの先端を観察して、前記複数の先端の重心座標を前記位置情報として取得することを特徴とする付記12に記載のウエハの試験方法。
【0096】
(付記15) 前記加熱部の一部が透明であり、
前記位置情報を取得するステップは、前記加熱部の前記一部を通して前記探針をカメラにより観察して行われることを特徴とする付記12に記載のウエハの試験方法。
【0097】
(付記16) 前記位置情報を取得するステップにおいて、前記カメラの焦点を前記探針の先端に合わせる焦点補正を行い、その補正量に基づいて前記探針の鉛直方向の位置座標を求め、該位置座標を前記位置情報の一部として取得することを特徴とする付記15に記載のウエハの試験方法。
【0098】
(付記17) 前記カメラで前記探針を観察するとき、前記探針と前記加熱部とを非接触とすることを特徴とする付記15に記載のウエハの試験装置。
【0099】
(付記18) 前記加熱部による前記探針の加熱温度と、前記ウエハステージによる前記ウエハの加熱温度とを同じにすることを特徴とする付記12に記載のウエハの試験方法。
【0100】
(付記19) 前記ウエハステージと前記ウエハとの位置ずれ量を取得するステップを更に有し、
前記ウエハステージを移動させるステップにおいて、前記位置ずれ量と前記位置情報の両方に基づいて、前記試験パッドが前記探針に触れる位置に前記ウエハステージを移動させることを特徴とする付記12に記載のウエハの試験方法。
【0101】
(付記20) 前記位置ずれ量を取得するステップは、前記ウエハステージと前記ウエハとの位置ずれをカメラで把握することにより行われることを特徴とする付記19に記載のウエハの試験方法。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係るウエハの試験装置の全体斜視図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態に係るウエハの試験装置の試験中の全体斜視図である。
【図3】図3は、プローバ本体の内部の斜視図である。
【図4】図4は、透明加熱板の上面図である
【図5】図5は、図4のI-I線に沿う断面図である。
【図6】図6は、別の例に係る透明加熱板の断面図である。
【図7】図7は、本発明の実施の形態に係るウエハの試験装置の機能ブロック図である。
【図8】図8は、本発明の実施の形態に係るウエハの試験方法について説明するためのフローチャートである。
【図9】図9(a)、(b)は、本発明の実施の形態に係るウエハの試験方法を説明するための模式図である。
【図10】図10は、本発明の実施の形態に係るウエハの試験方法において、ウエハステージの移動量の算出方法の一例を説明するための模式図である。
【符号の説明】
【0103】
1…プローバ本体、2…テストヘッド、2a…軸、3…プローブカード、3a…開口、3b…試験端子、8…探針、10…チャック、12…ウエハステージ、14…X軸ガイドレール、15…Y軸ガイドレール、16…ピン、20…探針用アライメントカメラ、22…透明加熱板、23、28、29…石英板、24…ヒータ、25…温度計、30…統括制御部、31…座標確認/画像処理部、32…XYZドライバ動作指令部、33…温度コントローラ、40…ウエハ用アライメントカメラ、50…制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の探針が設けられたプローブカードと、
ウエハを加熱すると共に、前記プローブカードに対向する位置に移動可能なウエハステージと、
加熱部と、
前記探針を観察するカメラとを有し、
前記加熱部により前記探針を加熱しながら前記探針を前記カメラで観察することにより前記探針の位置情報を取得し、該位置情報に基づいて、前記ウエハの試験パッドが前記探針に触れる位置に前記ウエハステージを移動させることを特徴とするウエハの試験装置。
【請求項2】
前記探針が熱飽和状態になるまで該探針を前記加熱部により加熱し、
前記位置情報を、前記探針が熱飽和状態になっているときに取得することを特徴とする請求項1に記載のウエハの試験装置。
【請求項3】
前記加熱部の一部が透明であり、該一部を通して前記カメラが前記探針を観察することを特徴とする請求項1に記載のウエハの試験装置
【請求項4】
加熱部によりプローブカードの探針を加熱しながら該探針を観察することにより、該探針の位置情報を取得するステップと、
前記位置情報に基づいて、ウエハステージ上で加熱されているウエハの試験パッドが前記探針に触れる位置に前記ウエハステージを移動させるステップと、
前記ウエハステージを移動させた後、前記探針から前記試験パッドに試験電圧を印加することにより、前記ウエハが加熱された状態で該ウエハに対して電気的試験を行うステップと、
を有することを特徴とするウエハの試験方法。
【請求項5】
前記位置情報を取得するステップにおいて、前記加熱部による加熱で前記探針が熱飽和状態になっているときに、前記位置情報を取得することを特徴とする請求項4に記載のウエハの試験方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−300655(P2008−300655A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−145556(P2007−145556)
【出願日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(308014341)富士通マイクロエレクトロニクス株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】