説明

ウエハ固定装置および露光装置

【課題】ウエハをウエハ載置部材上に固定するウエハ固定装置において、周縁部が上側に反り返ったウエハを、該周縁部での平坦性を確保しつつ、しかもウエハの表面を傷つける恐れなくウエハ載置部材上に固定する。
【解決手段】ウエハWfを載置するウエハ載置部材111と、該ウエハ載置部材上に該ウエハを押圧固定するクランプ部材120とを有するウエハ固定装置3において、該ウエハは、その周縁の側端面が外側に突出するよう形成されており、該クランプ機構120は、該ウエハの側端面の外側に突出する突出部分と係合して該ウエハを該ウエハ載置部材111に押圧するクランプ部材123を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエハ固定装置および露光装置に関し、特に、半導体装置の製造に用いるウエハ(以下、半導体ウエハともいう。)を、その平坦性を保持しつつウエハ載置部材上に固定する構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体ウエハを固定するウエハ固定装置は、半導体ウエハを処理する種々の半導体処理装置、例えばエッチング装置、成膜装置、露光装置などで用いられており、このような半導体処理装置内に搬入された半導体ウエハを、該半導体処理装置内のウエハ載置部材上に固定する構造を有している。
【0003】
図6は、一般的なウエハ固定装置として特許文献1に開示の投影露光装置における基板吸着固定装置を説明する図であり、該基板吸着固定装置の断面構造(図6(a))、およびそのウエハ載置面の構造(図6(b))を示している。
【0004】
図6に示すウエハ固定装置200は、半導体素子や液晶表示素子の製造に用いられる投影露光装置に設けられ、被加工材である半導体ウエハ(基板)を保持固定し、かつ反りを矯正して平面性を保つために真空吸着力を利用する基板吸着保持装置である。
【0005】
この基板吸着保持装置200は、半導体ウエハ(基板)を保持固定するウエハチャック(載置台)208を備えており、該ウエハチャック208は、基板201を載置するための載置面202と、載置面202から裏側へ貫通した3つの貫通穴203a〜203cと、これらの貫通穴203a〜203cの周囲に沿って載置面上に設けられた第1の縁堤部204a〜204cと、載置面202の周縁部に形成されている第2の縁堤部205により囲まれた領域内であって、該第1の縁堤部204a〜204cにより囲まれた領域以外の部分に設けられ、載置される基板201を支持する凸部206とを有している。
【0006】
また、この基板吸着保持装置200はさらに、上記貫通穴203a〜203cを通るようにそれぞれ配置された、ウエハ201の受渡しを行なうための3本のリフトピン209a〜209c、これらのリフトピン209a〜209cを上下動させる上下動機構部210と、ウエハチャック208を支持するウエハチャック支持部212とを備えており、さらに、載置される基板201、載置面202、第1の縁堤部204a〜304c、第2の縁堤部205、および凸部206とにより形成される空間内を減圧することにより基板201を載置面202上に吸着保持するための真空配管系211を備えている。
【0007】
次に動作について説明する。
【0008】
このような構成の基板吸着保持装置200では、外部の搬送装置(図示せず)によって被加工物であるウエハ(基板)201が、載置面202から突き出した状態で待機しているリフトピン209上に載置されると、上下動機構部210は、リフトピン209を下降させ、ウエハチャック208上にウエハ201を受け渡す。ウエハ201がウエハチャック208に接触する直前あるいは直後には、真空配管系211による真空吸引が開始し、ウエハ201はその表面が平坦になるよう載置面202上に吸着保持される。
【0009】
このようにウエハ201がウエハチャック208上に吸着保持された状態で、該ウエハに対して半導体露光装置による露光転写が行われる。
【0010】
露光転写の終了後は、上述の基板吸着保持装置へのウエハの搬入とは逆の動作により、ウエハが該基板吸着保持装置から搬出される。
【0011】
ところが、この特許文献1に開示の一般的な基板吸着保持装置200では、ウエハ(基板)201にその周縁部で浮き上がるような反りが生じている場合、このようなウエハをその周縁部がウエハチャック208の載置面202に密着するよう吸着保持することが困難であるという問題がある。
【0012】
また、従来のウエハ固定装置には、特許文献2に開示されているもののように、上記のようなウエハ周縁部での反りに対処可能なものもある。
【0013】
図7は、従来の他のウエハ固定装置として特許文献2に開示のものを説明する図であり、図7(a)及び(b)は、半導体ウエハを固定する動作を可動部の位置変化により示している。
【0014】
図7に示すウエハ固定装置は、半導体ウエハ10の載置される平坦な上面を有するプラテン(ウエハ載置部材)20と、このプラテン20の中央部に縦方向に形成された部品摺動孔21に摺動可能に挿入され、半導体ウエハ10を吸着保持する固定チャック30と、前記プラテン20の上面の、半導体ウエハ10の載置領域の周縁部に配置された弾性力を有するOリング40と、該プラテン20に昇降可能に設けられ、該半導体ウエハ10の周縁部を該Oリング40の上面上に押圧固定するクランプ部材50とを有している。
【0015】
前記プラテン20には、半導体ウエハ10の裏面、プラテン20の上面及びOリング40により形成される密閉空間を真空にするために、前記プラテン20の上面に一端が開口した吸込ダクタ部22が形成されており、また、半導体ウエハ10の裏面を冷却させるために前記密閉空間と連結されるガス注入ダクタ部23及びガス排出ダクタ部24が形成されている。
【0016】
このようなウエハ固定装置は、上述したような半導体処理装置の処理チャンバーなどの内部に設けられている。
【0017】
図8は、上記半導体ウエハ固定装置のクランプ部材を示す平面図である。
【0018】
このクランプ部材50は、半導体ウエハ10の直径より大きい内径を有するリング型の板より形成され、多数の爪部51が内周面から中心に向かって突出するよう形成されている。なお、図8中、11は、半導体ウエハ10に形成されたチップパターン(チップ領域の平面形状)である。
【0019】
次に動作について説明する。
【0020】
ウエハ搬入システム(図示せず)により半導体ウエハ10が半導体処理装置の処理チャンバー内に搬入され、上記プラテン20の上面に対向する位置に保持されると、前記プラテン20に設けられている固定チャック30が上昇して半導体ウエハ10を吸着する(図7(a)参照)。
【0021】
その後、固定チャック30が下降することにより半導体ウエハ10の周縁部下面がOリング40の上面と当接し、半導体ウエハ10はOリング40上に載置される。
【0022】
その後、固定チャック30は半導体ウエハ10から離れてさらに下降し、固定チャック30の上端のキャップ部によって、上記部品摺動孔21を閉鎖する。
【0023】
次に、前記クランプ部材50が下降して半導体ウエハ10のエッジ(周縁部)の上面を一定圧力で前記Oリング40上面に密着させて半導体ウエハ10を該プラテン上に押圧固定する。
【0024】
このように半導体ウエハ10をプラテン20上に押圧固定した状態で、この半導体ウエハに対する処理が、半導体処理装置により行われる。
【0025】
ところで、半導体ウエハに対する処理、例えばプラズマエッチングやスパッタ蒸着などの処理を行う際には、半導体ウエハは加熱されることとなるので、半導体ウエハ10の処理が行われる表面側とは反対側の裏面を冷却して半導体ウエハの温度が上がり過ぎないように温度調整が行われる。
【0026】
具体的には、まず、ガス注入ダクタ部23及びガス排出ダクタ部24を閉鎖した後、吸込ダクタ部22を通じて空気を吸い込んで、半導体ウエハ10の裏面、プラテン20の上面及びOリング40により形成される密閉空間を真空状態にする。
【0027】
その後、吸込ダクタ部22を閉鎖し、ガス注入ダクタ部23から冷却用ガスを該密閉空間に注入し、ガス排出ダクタ部24により冷却ガスを該密閉空間から排出することによって、半導体ウエハ10と冷却用ガスとの間で熱交換を行って半導体ウエハを冷却する。なお、上記熱交換ガスとしては主にNガスを用いる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0028】
【特許文献1】特開平10−233433号公報
【特許文献2】特開平9−181153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
以上説明したように、特許文献1に開示の従来の一般的なウエハ固定装置(基板吸着固定装置)200では、ウエハ(基板)201にその周縁部で浮き上がるような反りが生じている場合、このようなウエハをその周縁部がウエハチャック208の載置面202に密着するよう吸着保持することが困難であるという問題がある。
【0030】
また、上記特許文献2に開示のウエハ固定装置では、上記のようなウエハ周縁部で反りには対処可能できるが、この特許文献2に開示のウエハ固定装置では、半導体ウエハ10の周縁部をクランパ50によりOリング40上に押圧して固定しているため、ウエハの、Oリングより内側の部分の下側は中空になっており、この部分で平坦性を確保できないという課題がある。
【0031】
また、Oリングの磨耗などの状態によっては、このOリングに押圧して固定されるウエハの高さが、ウエハの表面内で変化するため、クランプ部材がウエハを押える力が変わり、プラテン表面に対するウエハ表面の平坦度が低下する場合もある。
【0032】
特に、フォトリソグラフィ技術で用いるフォトレジスト膜などを露光する露光装置では、プラテン(ウエハ載置部材)上でのウエハの平坦度が要求されることとなるが、このような露光装置では、ウエハ固定装置によりプラテン上に固定されたウエハ表面の平坦度が低下すると、ウエハWfの露光パターンにパターン飛びなどの欠陥部分P1及びP2(図5(c)参照)が生ずることとなり、エッチングマスクとしてのレジスト膜の平面パターンを所望のパターンにすることが不可能となるといった問題が生ずる。
【0033】
また、クランプ部材がウエハの周縁部の上面を当接することとなるため、ウエハ表面のチップ領域に傷が入るといった問題もある。
【0034】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、半導体ウエハをウエハ載置部材上に、該ウエハの平坦度を確保しつつウエハ表面を傷つけることなく固定することができるウエハ固定装置及びこのようなウエハ固定装置を用いた露光装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0035】
本発明に係るウエハ固定装置は、ウエハを載置するウエハ載置部材と、該ウエハ載置部材上に該ウエハを押圧固定するクランプ機構とを有するウエハ固定装置であって、該ウエハは、その周縁の側端面が外側に突出するよう形成されており、該クランプ機構は、該ウエハの側端面の外側に突出する突出部分と係合して該ウエハを該ウエハ載置部材に押圧するクランプ部材を有しており、そのことにより上記目的が達成される。
【0036】
本発明は、上記ウエハ固定装置において、前記ウエハは、その側端面の突出部分の表面形状を、該ウエハの表面に垂直な、該ウエハの中心を含む面内で湾曲した曲面形状としたものであることが好ましい。
【0037】
本発明は、上記ウエハ固定装置において、前記ウエハは、その側端面の突出部分の表面形状を、該ウエハの表面に垂直な、該ウエハの中心を含む面内で折れ曲がった多角形形状としたものであることが好ましい。
【0038】
本発明は、上記ウエハ固定装置において、前記クランプ部材は、前記ウエハの突出部分と係合する係合部分の表面形状を、該ウエハの表面に垂直な、該ウエハの中心を含む面内で湾曲した曲面形状としたものであることが好ましい。
【0039】
本発明は、上記ウエハ固定装置において、前記クランプ部材は、前記ウエハの突出部分と係合する係合部分の全体に均等な押圧力は発生するよう、弾性部材により構成されていることが好ましい。
【0040】
本発明は、上記ウエハ固定装置において、前記クランプ機構は、該クランプ部材を昇降させる昇降部材を有し、該クランプ部材は該昇降部材に着脱可能の取り付けられていることが好ましい。
【0041】
本発明は、上記ウエハ固定装置において、前記クランプ部材は、ネジ部材により前記昇降部材に取付られていることが好ましい。
【0042】
本発明は、上記ウエハ固定装置において、前記クランプ部材は、その表面を、光の反射を防止する反射防止膜により被覆したものであることが好ましい。
【0043】
本発明は、上記ウエハ固定装置において、前記ウエハ載置部材は、その表面に、該表面上に載置された前記ウエハを吸引して吸着する空気吸入口を形成したものであることが好ましい。
【0044】
本発明は、上記ウエハ固定装置において、前記ウエハ載置部材は、前記空気吸入口を、該ウエハ載置部材の表面に同心円状に複数形成された環状溝内に形成したものであることが好ましい。
【0045】
本発明に係る露光装置は、ウエハの表面に形成した感光性材料からなる感光性膜を露光する露光装置であって、該ウエハをウエハ載置部材上に固定するウエハ固定機構と、該ウエハの表面に形成した感光性膜を露光する露光光を発生する光源と、該光源で発生した露光光を該感光性膜上に導く光学系とを有し、該ウエハ固定機構は、上述した本発明によるウエハ固定装置であり、そのことにより上記目的が達成される。
【0046】
次に作用について説明する。
【0047】
本発明においては、ウエハをウエハ載置部材上に押圧固定するウエハ固定装置において、該ウエハの側端面の外側に突出する突出部分と係合して該ウエハを該ウエハ載置部材に押圧するクランプ部材を有するので、周縁部が上側に反り返ったウエハを、該周縁部での平坦性を確保しつつ、しかもウエハの表面を傷つける恐れなくウエハ載置部材上に固定することができる。
【0048】
さらには、クランプ部材の、ウエハエッチ部に当接する係合部分(クランプ部材の周縁側面部)は、ウエハのエッジ部分(ウエハの側面突出部)と同様に円弧状の断面形状を有するので、クランプ部材の円弧状側端部がウエハの円弧状側縁部に当接することとなり、ウエハエッジ部での反り返りの程度が多少変動しても、確実にウエハエッジ部をウエハ載置部材上に押圧固定することが可能となる。
【0049】
また、ウエハ載置部材の表面には、ウエハを吸着する空気吸入口を形成しているので、ウエハの平坦度を全面で維持することができる。
【0050】
また、空気吸入口を、ウエハ載置部材の表面に同心円状に複数形成された環状溝内に形成しているので、空気流によるウエハの吸着力をウエハの面内でより均一にすることができる。
【0051】
これにより、ウエハ上の平坦で有効な部分を最大限にすることができ、また、ウエハの周縁部とウエハ載置部材との接触部分からのダスト発生なども抑制することができる。
【0052】
また、クランプ部材の表面を、露光光の反射を防止する反射防止膜により被覆しているので、クランプ部材の表面での露光光の不要反射を防止することができる。
【0053】
この結果、ウエハ外周部のフォーカスずれによるパターン飛びを改善して、良好な露光状態を実現できる。
【発明の効果】
【0054】
以上のように、本発明によれば、ウエハをウエハ載置部材上に押圧固定するウエハ固定装置において、該ウエハの側端面の外側に突出する突出部分と係合して該ウエハを該ウエハ載置部材に押圧するクランプ部材を有するので、半導体ウエハをウエハ載置部材上に、該ウエハの平坦度を確保しつつウエハ表面を傷つけることなく固定することができるウエハ固定装置及びこのようなウエハ固定装置を用いた露光装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】図1は、本発明の実施形態1による露光装置を概念的に説明する図である。
【図2】図2は、本発明の実施形態1による露光装置で用いているウエハ固定装置を説明する図であり、図2(a)は、ウエハ固定装置の全体構成を模式的に示す断面図であり、図2(b)は、該ウエハ固定装置を構成するウエハ載置部材を示す平面図である。
【図3】図3は、本発明の実施形態1によるウエハ固定装置のクランプ部材の平面形状を説明する図であり、図3(a)は、内周縁の全体によりウエハを押圧する平面リング形状のクランプ部材を示し、図3(b)は、内周縁の数箇所でウエハを押圧するクランプ部材を示している。
【図4】図4は、本発明の実施形態1によるウエハ固定装置を説明する図であり、図4(a)は、クランプ部材が、側端部の断面形状が半円形状であるウエハをクランプする状態を示し、図4(b)は、クランプ部材が、側端部の断面形状が多角形形状であるウエハをクランプする状態を示している。
【図5】図5は、本発明の実施形態1によるウエハ固定装置の作用効果を説明する図であり、側端部の反りのないウエハをクランプする場合(図5(a))、側端部の反りのあるウエハをクランプする場合(図5(b))、レジスト膜の不良な露光パターン(図5(c))、レジスト膜が良好に露光された状態(図5(d))を示している。
【図6】図6は、従来のウエハ固定装置として特許文献1に開示の基板吸着固定装置を説明する図であり、該基板吸着固定装置の断面構造(図6(a))、およびそのウエハ載置面の構造(図6(b))を示している。
【図7】図7は、従来の他のウエハ固定装置として特許文献2に開示のものを説明する図であり、図7(a)及び図7(b)は、半導体ウエハを固定する動作を可動部の位置変化により示している。
【図8】図8は、従来の半導体ウェーハ固定装置のクランプ部材を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0057】
(実施形態1)
図1は本発明の実施形態1による露光装置を概念的に説明する図である。
【0058】
図1に示す露光装置1は、ウエハWfの表面に形成した感光性材料からなる感光性膜、例えばレジスト膜(図示せず)を露光する露光装置である。この露光装置1は、該ウエハをウエハ載置部材上に固定するウエハ固定機構3と、該ウエハの表面に形成した感光性膜を露光する露光光を発生する光源11と、該光源11で発生した露光光を前記感光性膜上に導く光学系2とを有している。なお、図1では、ウエハ固定機構3における、可動部及び固定部を含むステージ部分100を概念的に示している。
【0059】
ここで、光学系2は、絞り部材12、該絞り部材12を通過した光をレチクルR上に集光する第1の集光レンズ13と、該レチクルRと通過した光を、ウエハ固定機構3上に固定されたウエハWf上に集光する第2の集光レンズ14とを有している。
【0060】
図2は上記ウエハ固定機構としてのウエハ固定装置を説明する図であり、図2(a)は、該ウエハ固定装置を模式的に示す断面図であり、図2(b)は、該ウエハ固定装置を構成するウエハ載置部材を示す平面図である。
【0061】
このウエハ固定装置3は、ウエハをクランプして押圧固定するものであり、ウエハWf1を載置するウエハ載置部材111と、該ウエハ載置部材111上に該ウエハを押圧固定するクランプ機構120とを有している。
【0062】
ここで、該ウエハWfは、図4(a)に示すように、その周縁の側端面Swが外側に突出するよう形成されている。つまり、このウエハWfは、その側端面の突出部分Cvの表面形状を、該ウエハの表面に垂直な、該ウエハの中心を含む面内で湾曲した曲面形状としたものである。
【0063】
なお、ウエハ側面の突出部分の形状は、図4(a)に示すように湾曲した形状に限定されるものではない。例えば、図4(b)に示すウエハWfaでは、その側端面Swaの突出部分Cvaの表面形状は、該ウエハの表面に垂直な、該ウエハの中心を含む面内で折れ曲がった多角形形状となっており、このようなウエハの側端面の形状は図4(b)に示す多角形形状でもよい。
【0064】
そして、該クランプ機構120は、該ウエハWfの側端面の外側に突出する突出部分Cvと係合して該ウエハを該ウエハ載置部材に押圧するクランプ部材123を有している。
【0065】
このクランプ部材123は、例えば、セラミックなどの絶縁性部材により構成することができるが、ウエハの突出部分Cv1と係合する係合部分123aの全体に均等な押圧力が発生するよう、弾性部材により構成してもよい。
【0066】
また、上記クランプ機構120は、該クランプ部材123を昇降させる昇降部材122を有し、該クランプ部材123は、該昇降部材122に着脱可能となるようネジ部材122aにより取付られている。ただし、クランプ部材123は昇降部材122に溶接などにより固着されていてもよい。また、この昇降部材122は、ウエハ載置部材111に取り付けられた昇降駆動装置121に、この装置により昇降可能となるよう支持されている。
【0067】
なお、クランプ部材123は、その表面を、露光光の反射を防止する反射防止膜により被覆した構造とすることが好ましい。
【0068】
また、上記ウエハ載置部材111は、図2(b)に示す平面円形形状を有しており、上記昇降駆動装置121は、このウエハ載置部材111の外周側面に、120度の角度の間隔を隔てて取り付けられている。
【0069】
ただし、隣接する昇降部材122の間隔は、ウエハの直径以上の広さに設定し、ウエハを、隣接する昇降部材122の間を通してウエハ載置部材111上に搬入可能な構造としている。
【0070】
なお、ウエハをウエハ固定装置の外部からウエハ載置部材111上に搬入するための構造は、ウエハを、隣接する昇降部材122の間を通してウエハ載置部材111に搬入可能な構造に限定されるものではない。例えば、リング状クランプ部材123あるいは133(図3(a)あるいは(b)参照)を、中央部分で2分割可能な構造として、ウエハをウエハ固定装置の外部からウエハ載置部材111上に搬入する際には、リング状クランプ部材を2分割して、ウエハをウエハ載置部材111上に搬入する経路を形成するようにしてもよい。
【0071】
前記ウエハ載置部材111の表面には、該表面上に載置された前記ウエハを吸引して吸着するための空気吸入口112aが形成されている。この空気吸入口112aは、図2(a)に示すように、該ウエハ載置部材111の表面に同心円状に複数形成された吸着溝112の底面部に形成することが好ましい。
【0072】
また、図3は、上記クランプ部材123の平面形状を示しており、このクランプ部材123は、図3(a)に示すようにリング状形状を有しており、その内径は、ウエハの直径より若干小さく、図4(a)に示すように、ウエハの中心とリング状クランプ部材の中心とを一致させたとき、ウエハWfの側面の突出部分Cvが、クランプ部材123の内周側縁部である係合部分123aと、ウエハのオリフラ部を除く全周にわたって当接する構造となっている。
【0073】
ここで、ウエハ載置部材111は、上記空気吸入口112aに連結された複数系統の空気吸引経路113が形成されており、また、その中心部には、ウエハの受け渡しの際にウエハを昇降させる昇降ロッド104cを配置する挿通孔114が形成されており、該昇降ロッド104cの下端は、駆動機構(図示せず)により昇降する昇降プレート104bに取り付けられている。
【0074】
さらに、上記ウエハ載置部材111は、第1の可動台104上に3つの支持ロッド104aにより3点で支持されている。つまり、上記ウエハ載置部材111は、図2(b)に示すように平面円形形状を有しており、上記3つの支持ロッド104aは、このウエハ載置部材111の裏面側の外周縁近傍部に120度の角度を隔てて配置されている。
【0075】
従って、3つの支持ロッド104aの高さを独立して調整することで、光源11からの露光光の光軸に対するウエハ表面の角度を調整可能となっている。
【0076】
さらに、上記第1の可動台104は、第2の可動台103上に、該第2の可動台103に対してX方向(図2の紙面の左右方向)及びY方向(図2の紙面の奥行き方向)に移動可能に支持されており、この第2の可動台103は、第3の可動台102上に昇降ピン102aにより上下移動可能に支持されている。この第2の可動台103の上下動により、ウエハの位置を、露光光の焦点位置がウエハ表面上にくるよう調整することができる。
【0077】
また、第3の可動台102は、露光装置1の本体の固定部材101に対して水平面内で移動可能に保持され、ウエハ固定装置120を、光源から露光光によりウエハ上のチップ領域が順次露光されるよう移動させるステッパーとして機能を有している。
【0078】
また、図3(b)に示すクランプ部材133は、図3(a)に示すクランプ部材123の平面形状とは異なる平面形状を有している。
【0079】
つまり、このクランプ部材133は、リング状形状を有し、その内径がウエハの直径より若干大きい構造の本体部133aと、このリング状の本体部133aからその内周側に延びるクランプ片133bとを有し、該クランプ片の先端によりウエハWfをウエハ載置部材上に押圧固定する構造となっている。
【0080】
次に、動作について説明する。
【0081】
このような構成の露光装置1では、感光性材料膜(レジスト膜)が形成されたウエハWfが搬入されると、該ウエハWfは、ウエハ固定機構としてのウエハ固定装置3により固定される。
【0082】
つまり、図2(a)に示すように、昇降ロッド104cがウエハ載置部材111の表面より突出した状態で、ウエハ(図1参照)がこの昇降ロッド104c上に載置され、該昇降ロッド104cが昇降プレート104bの下降とともに下降することで、ウエハ固定装置3のウエハ載置部材111上にウエハは載置される。このとき、ウエハWfは、ウエハ載置部材111の表面に設けられている空気吸入口112aに吸入される空気流によりウエハ載置部材111の表面に吸着固定される。
【0083】
その後、昇降駆動装置121が昇降部材122を下降させると、昇降部材122に取付られているクランプ部材123の係合部分(内周側縁部)123aが図4(a)に示すようにウエハWfの側面の突出部分Cvに当接し、所定の押圧力により該クランプ部材123がウエハWfをウエハ載置部材111に押圧固定する。
【0084】
このとき、クランプ部材123を弾性部材により構成している場合には、クランプ部材123は、ウエハの周縁部をその全周に渡って均一な押圧力で押圧することとなる。
【0085】
これにより、図5(b)に示すように、ウエハの周縁部で反りが生じている場合でも、図5(a)に示すように、側端部の反りのないウエハをクランプする場合と同様に、ウエハの周縁部がウエハ載置部材の表面に密着固定されることとなる。
【0086】
このようにウエハがウエハ固定装置3により固定された状態で、支持ロッド104aの高さが、該ウエハ表面が光学系からの露光光の光軸に対して所定の角度、例えば、垂直になるよう調整される。
【0087】
さらに、第1の可動台104の水平面内での移動により、レチクルRを透過した露光パターンの、各チップ領域に対する位置合わせが行われ、第2の可動台103の昇降動作により、露光光の焦点位置がウエハ表面上にくるようウエハ載置部材の高さ方向の調整が行われる。
【0088】
そして、このように露光光の光学系に対するウエハの角度及び位置が調整された後、ウエハWfのチップ領域Ch毎にレジスト膜の露光が行われる。
【0089】
このとき、第3の可動台102は、ウエハ固定装置120を、光源から露光光によりウエハ上のチップ領域が順次露光されるよう移動させるステッパーとして機能する。
【0090】
このようにしてウエハWfのチップ領域に対する露光処理が完了すると、昇降駆動装置121が昇降部材122を上昇させることにより、昇降部材122に取付られているクランプ部材123の係合部分(内周側縁部)123aが、ウエハWfの側面の突出部分Cvから離間し、該クランプ部材123によるウエハWfの押圧固定が解除される。また、ウエハの空気吸引口への空気流による吸着動作が停止して、ウエハ載置部材111に対するウエハの吸着が解除される。さらに、昇降ロッド104cが上昇すると、ウエハがこの昇降ロッド104cによりウエハ載置面から持ち上げられ、この状態で、図示しない搬送装置の搬送アームにより、ウエハは、昇降ロッド104cから取り去られて、次工程の半導体処理装置、例えばエッチング装置などに処理チャンバーへ搬送される。
【0091】
このような構成の本実施形態1による露光装置1では、ウエハWfをウエハ載置部材111上に押圧固定するウエハ固定装置3を備え、該ウエハ固定装置3を、該ウエハの側端面の外側に突出する突出部分Cvと係合して該ウエハWfを該ウエハ載置部材111に押圧するクランプ部材123を有する構造としたので、周縁部が上側に反り返ったウエハWfを、該周縁部での平坦性を確保しつつ、しかもウエハの表面を傷つける恐れなくウエハ載置部材上に固定することができる。
【0092】
さらには、クランプ部材123の、ウエハエッチ部に当接する係合部分(クランプ部材の周縁側面部)123aは、ウエハのエッジ部分(ウエハの側面突出部)Cvと同様に円弧状の断面形状を有するので、クランプ部材の円弧状側端部がウエハの円弧状側縁部に当接することとなり、ウエハエッジ部での反り返りの程度が多少ばらついても、確実にウエハエッジ部Cvをウエハ載置部材111上に押圧固定することが可能となる。
【0093】
また、本実施形態では、ウエハ載置部材111の表面には、ウエハを吸着する空気吸入口112aを形成しているので、ウエハの平坦度を全面で維持することができる。
【0094】
また、空気吸入口112aを、ウエハ載置部材111の表面に同心円状に複数形成された吸着溝112内に形成しているので、空気流によるウエハの吸着力をウエハの面内でより均一にすることができる。
【0095】
これにより、ウエハ上の平坦で有効な部分を最大限にすることができ、また、ウエハの周縁部とウエハ載置部材との接触部分からのダスト発生なども抑制することができる。
【0096】
また、クランプ部材の表面を、露光光の反射を防止する反射防止膜により被覆しているので、クランプ部材の表面での露光光の不要反射を防止することができる。
【0097】
この結果、ウエハ外周部のフォーカスずれによるパターン飛びP1及びP2(図5(c))を改善して、良好な露光状態(図5(d))を実現できる。
【0098】
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した特許文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明は、ウエハ固定装置および露光装置の分野において、半導体ウエハをウエハ載置部材上に、該ウエハの平坦度を確保しつつウエハ表面を傷つけることなく固定することができるウエハ固定装置及びこのようなウエハ固定装置を用いた露光装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0100】
1 露光装置
2 光学系
3 ウエハ固定装置(ウエハ固定機構)
11 光源
12 絞り部材
13 第1の集光レンズ
14 第2の集光レンズ
102 第3の可動台
103 第2の可動台
104 第1の可動台
104a 支持ロッド
104b 昇降プレート
104c 昇降ロッド
111 ウエハ載置部材
112 吸着溝
112a 空気吸入口
114 部品摺動孔
120 クランプ機構
121 昇降駆動装置
122 昇降部材
122a ネジ部材
123、133 クランプ部材
133a クランプ部材本体部
133b クランプ片
Cv、Cva 突出部分
R レチクル
Sw、Swa ウエハ側端面
Wf、Wfa ウエハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエハを載置するウエハ載置部材と、該ウエハ載置部材上に該ウエハを押圧固定するクランプ機構とを有するウエハ固定装置であって、
該ウエハは、その周縁の側端面が外側に突出するよう形成されており、
該クランプ機構は、該ウエハの側端面の外側に突出する突出部分と係合して該ウエハを該ウエハ載置部材に押圧するクランプ部材を有しているウエハ固定装置。
【請求項2】
請求項1に記載のウエハ固定装置において、
前記ウエハは、その側端面の突出部分の表面形状を、該ウエハの表面に垂直な、該ウエハの中心を含む面内で湾曲した曲面形状としたものである、ウエハ固定装置。
【請求項3】
請求項1に記載のウエハ固定装置において、
前記ウエハは、その側端面の突出部分の表面形状を、該ウエハの表面に垂直な、該ウエハの中心を含む面内で折れ曲がった多角形形状としたものである、ウエハ固定装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載のウエハ固定装置において、
前記クランプ部材は、前記ウエハの突出部分と係合する係合部分の表面形状を、該ウエハの表面に垂直な、該ウエハの中心を含む面内で湾曲した曲面形状としたものである、ウエハ固定装置。
【請求項5】
請求項1に記載のウエハ固定装置において、
前記クランプ部材は、前記ウエハの突出部分と係合する係合部分の全体に均等な押圧力が発生するよう、弾性部材により構成されている、ウエハ固定装置。
【請求項6】
請求項1に記載のウエハ固定装置において、
前記クランプ機構は、
該クランプ部材を昇降させる昇降部材を有し、
該クランプ部材は、該昇降部材に着脱可能の取り付けられている、ウエハ固定装置。
【請求項7】
請求項6に記載のウエハ固定装置において、
前記クランプ部材は、ネジ部材により前記昇降部材に取付られている、ウエハ固定装置。
【請求項8】
請求項1に記載のウエハ固定装置において、
前記クランプ部材は、その表面を、光の反射を防止する反射防止膜により被覆したものである、ウエハ固定装置。
【請求項9】
請求項1に記載のウエハ固定装置において、
前記ウエハ載置部材は、その表面に、該表面上に載置された前記ウエハを吸引して吸着する空気吸入口を形成したものである、ウエハ固定装置。
【請求項10】
請求項9に記載のウエハ固定装置において、
前記ウエハ載置部材は、前記空気吸入口を、該ウエハ載置部材の表面に同心円状に複数形成された環状溝内に形成したものである、ウエハ固定装置。
【請求項11】
ウエハの表面に形成した感光性材料からなる感光性膜を露光する露光装置であって、
該ウエハをウエハ載置部材上に固定するウエハ固定機構と、
該ウエハの表面に形成した感光性膜を露光する露光光を発生する光源と、
該光源で発生した露光光を該感光性膜上に導く光学系とを有し、
該ウエハ固定機構は、請求項1に記載のウエハ固定装置である、露光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−146710(P2012−146710A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−1560(P2011−1560)
【出願日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】