説明

ウォッシャノズル取付構造

【課題】洗浄液の噴射態様に影響を及ぼすことなく、ウォッシャノズルの噴射方向を調整可能なウォッシャノズル取付構造を提供する。
【解決手段】カウルパネル3には、内側にノズル装着部15が設けられ、ガラス側壁部11に洗浄液の噴射を行うための開口部12が設けられる。ウォッシャノズル30は、噴射孔を開口部12側に有し、ノズル装着部15を構成する装着片19及び上部支持片22に支持させるための後側下部当接部35及び前側上部当接部45を有する。また、ウォッシャノズル30には、ノズル装着部15を構成する装着壁部16に係止されその係止部(突起21)と当接部35,45とに弾性力を付与してノズル装着部15に弾性力を以て装着させる前側弾性片41が設けられる。角度調整部材50は、前側上部当接部45と上部支持片22との間に介在され、その操作に基づきウォッシャノズル30の姿勢を変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のフロントガラス(ウインドシールドガラス)に洗浄液を噴射するためのウォッシャノズルを該フロントガラスの下部に配設されるカウルパネルに取り付ける、その取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のフロントガラスに洗浄液を噴射するウォッシャノズルをそのフロントガラスの下部に配設されるカウルパネルに取り付ける構造としたものが知られている。このようなウォッシャノズルにおいても、フロントガラスでの洗浄液の着水点を調整するため、ウォッシャノズルの噴射方向が調整可能に構成されている。
【0003】
例えば特許文献1では、車両側に取り付けるノズルボディと、該ノズルボディに対して可動可能に取り付けられ噴射孔を有するノズル部とでウォッシャノズルを構成し、そのノズル部の可動により洗浄液の着水点の調整を行うように構成されている。
【特許文献1】特開2002−67887号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ノズル部を可動させることで、ノズルボディに形成された洗浄液供給のための供給流路に対するノズル部側の供給口の角度が変化する。すると、そのノズル部の供給口付近の洗浄液の流れが乱れ、このような内部での洗浄液の乱れが予め設定されたノズル部の噴射孔の噴射態様(噴射角度や散開形状等)に悪影響を与えてしまう。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、洗浄液の噴射態様に影響を及ぼすことなく、ウォッシャノズルの噴射方向を調整可能なウォッシャノズル取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、車両のフロントガラスの下部に配設されるカウルパネルに、前記フロントガラスの払拭面に向かって洗浄液を噴射するためのウォッシャノズルを取り付ける取付構造であって、前記カウルパネルは、内側に前記ウォッシャノズルが装着されるノズル装着部を有するとともに、前記払拭面と対向するガラス側壁部に前記ウォッシャノズルからの前記洗浄液の噴射を行うための開口部を有し、前記ウォッシャノズルは、前記洗浄液の供給を受け、前記開口部側に装着される後部に設けられた噴射孔からその供給された前記洗浄液を噴射するものであり、前記ノズル装着部に支持させるための第1及び第2支持部を少なくとも有するとともに、前記ノズル装着部に係止されその係止部と前記第1及び第2支持部とにそれぞれ弾性力を付与して前記ノズル装着部に弾性力を以て装着させる弾性片を有し、前記第1及び第2支持部のいずれか一方と前記ノズル装着部との間に介在される角度調整部材を備え、その角度調整部材の操作に基づいて前記第1及び第2支持部のいずれか他方と前記ノズル装着部との当接部分を支点として前記ウォッシャノズルの姿勢を変更し、前記洗浄液の噴射方向を調整する構成としたことをその要旨とする。
【0007】
この発明では、カウルパネルには、内側にウォッシャノズルが装着されるノズル装着部が設けられ、フロントガラスの払拭面と対向するガラス側壁部にウォッシャノズルからの洗浄液の噴射を行うための開口部が設けられる。これに対し、ウォッシャノズルは、カウルパネルの開口部側に装着される後部の噴射孔から洗浄液を噴射し、ノズル装着部に支持される第1及び第2支持部を少なくとも有するとともに、ノズル装着部に係止されその係止部と第1及び第2支持部とにそれぞれ弾性力を付与してノズル装着部に弾性力を以て装着させる弾性片を有している。角度調整部材は、その第1及び第2支持部のいずれか一方とノズル装着部との間に介在され、その角度調整部材の操作に基づいて第1及び第2支持部のいずれか他方とノズル装着部との当接部分を支点としてウォッシャノズルの姿勢が変更され、洗浄液の噴射方向が調整される。つまり、ウォッシャノズルを支持するノズル装着部との間に角度調整部材を介在させ、その角度調整部材の操作に基づきノズル装着部に対するウォッシャノズル全体の姿勢を変更して洗浄液の噴射方向を調整するため、ノズルボディにノズル部を可動可能に取り付けて構成されたウォッシャノズルのように内部での洗浄液の流れに乱れが生じることがなく、予め設定された噴射孔の噴射態様(噴射角度や散開形状等)に影響を与えない。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のウォッシャノズル取付構造において、前記ウォッシャノズルは、略直方体形状をなしており、前記第1支持部は前記ウォッシャノズルの後部に、前記第2支持部は前記ウォッシャノズルの上部に、前記弾性片は前記ウォッシャノズルの前部にそれぞれ設けられていることをその要旨とする。
【0009】
この発明では、ウォッシャノズルは、後部に設けられる第1支持部、上部に設けられる第2支持部、及び前部に設けられる弾性片にてノズル装着部に装着される。つまり、ウォッシャノズルの装着部分を側面視(噴射方向に対する側方視)で3箇所と少ないながらも、各装着部分を前後部及び上部とし略直方体形状をなすウォッシャノズルの形状に対してバランスよく配置されるため、ウォッシャノズルをノズル装着部に対して安定して装着できる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のウォッシャノズル取付構造において、前記角度調整部材は、前記ウォッシャノズルの上部に配置されて前記第2支持部と前記ノズル装着部との間に介在され、前記ウォッシャノズルにおける前後方向の操作に基づいて前記第1支持部と前記ノズル装着部との当接部分を支点として前記ウォッシャノズルの姿勢を変更することをその要旨とする。
【0011】
この発明では、角度調整部材は、ウォッシャノズルの上部に配置され同じく上部に設けた第2支持部とノズル装着部との間に介在され、該ノズルにおける前後方向の操作に基づいてウォッシャノズルの姿勢が変更される。つまり、角度調整部材は、ウォッシャノズルの上部に設けた第2支持部とノズル装着部との間に介在すべく、該ノズルの上部にしかも前後方向に移動可能に配置されることから、角度調整部材及び該調整部材を配置する部分を簡素に構成可能である。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載のウォッシャノズル取付構造において、前記角度調整部材は、前記カウルパネルに設けられる支持孔を通じて前記ウォッシャノズルが装着される内側から外側に突出するように該支持孔に対して進退可能に支持され、進退による操作により前記ウォッシャノズルの姿勢が変更されることをその要旨とする。
【0013】
この発明では、角度調整部材は、カウルパネルに設けられる支持孔にて該パネルの外側に突出させて支持され、そのカウルパネルの外側に突出する部位にて進退させることで、ウォッシャノズルの姿勢が変更される。これにより、角度調整部材のカウルパネルの外側に突出する部位での操作は容易なことから、ウォッシャノズルの姿勢の変更を容易に行うことが可能である。尚、角度調整部材のカウルパネルの外側に突出する部位は、ボンネット等の内側に隠蔽して通常時では露出させず、ボンネットの開時にのみ露出させるのが誤操作を防止する等の点で好ましい。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載のウォッシャノズル取付構造において、前記角度調整部材は、自身が介在される側の前記第1又は第2支持部と前記ノズル装着部とが対向する方向に対して交差する方向に移動可能に前記カウルパネルに対して支持され、その前記支持部及び前記ノズル装着部の少なくとも一方との当接部分が移動方向に対して傾斜する斜面部にて構成されることをその要旨とする。
【0015】
この発明では、角度調整部材は、自身が介在される側の支持部とノズル装着部との少なくとも一方における当接部分がその調整部材の移動方向に対して傾斜する斜面部で構成されるため、ウォッシャノズル(噴射方向)の角度を調整する手段を容易に形成できる。
【0016】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載のウォッシャノズル取付構造において、前記角度調整部材及び前記カウルパネルには、前記角度調整部材をその移動方向に沿って段階的に保持する保持手段が設けられていることをその要旨とする。
【0017】
この発明では、角度調整部材及びカウルパネルに設けられる保持手段により、角度調整部材が移動方向に沿って段階的に保持されるため、ウォッシャノズル(噴射方向)の角度の調整を容易に行うことが可能である。
【0018】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか1項に記載のウォッシャノズル取付構造において、前記ウォッシャノズルの前記弾性片及び前記ノズル装着部の相互の当接部分の少なくとも一方が、前記弾性片による弾性力の付与を継続的に行うべく前記角度調整部材の移動に追従して係止する係止面にて構成されていることをその要旨とする。
【0019】
この発明では、ウォッシャノズルの弾性片及びノズル装着部の相互の当接部分の少なくとも一方が、角度調整部材の移動に追従して係止する係止面とされて、弾性片による弾性力の付与が継続的に行われる。これにより、角度調整部材を操作して移動させても、ウォッシャノズルの装着状態を常に安定させることが可能である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、洗浄液の噴射態様に影響を及ぼすことなく、ウォッシャノズルの噴射方向を調整可能なウォッシャノズル取付構造を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を具体化した一実施の形態を図面に従って説明する。
図1及び図2に示すように、車両のフロントガラス1の下部とボンネット2との間には、車幅方向に長い形状をなす樹脂製のカウルパネル3が配設されている。カウルパネル3には、フロントガラス1の払拭面1aを払拭する一対の車両用ワイパ4を駆動するためのピボット軸(図示略)が挿通されている。また、カウルパネル3は、上方に凸となるように屈曲された凸状部10が長手方向に連続して設けられ、該凸状部10はフロントガラス1に対向するガラス側壁部11を有している。ガラス側壁部11には、カウルパネル3の長手方向(車幅方向)の所定の2箇所に、それぞれ略矩形状の開口部12が設けられている。各開口部12は、カウルパネル3の凸状部10の内側に配置されるウォッシャノズル30から払拭面1aへの洗浄液Wの噴射を可能としている。
【0022】
カウルパネル3の凸状部10の内側には、上方に凹設した形状をなす凹設部13が設けられている。凹設部13には、各開口部12が設けられる部分において、それぞれウォッシャノズル30を装着するためのノズル装着部15が設けられている。ノズル装着部15は、図3及び図5に示すように、カウルパネル3(凹設部13)の内側面から下方に板状に延出されウォッシャノズル30の前部を装着させるための装着壁部16を有している。装着壁部16は、その幅方向両側から連結壁部17,18を介して前記ガラス側壁部11と連結し、各壁部11,16〜18にてウォッシャノズル30を収容する四角筒状をなしている。ガラス側壁部11における開口部12の下縁部には、両側が各連結壁部17,18と接続されつつ装着壁部16側に板状に延出されウォッシャノズル30の後部を装着させるためのノズル装着部15を構成する装着片19が形成されている。
【0023】
ウォッシャノズル30は、図3及び図4に示すように、樹脂製で略直方体形状に形成され、装着壁部16に装着される前部が車両前方側に、装着片19に装着される後部が車両後方側(フロントガラス1側)に向けて装着される。
【0024】
ウォッシャノズル30の後部から説明すると、ウォッシャノズル30の後面中央には、矩形状に開口するチップ嵌挿孔31が形成されている。チップ嵌挿孔31は、ウォッシャノズル30の前側に延びている。チップ嵌挿孔31には、略直方体形状をなすノズルチップ(流体素子)32が着脱可能に装着される。ノズルチップ32は、後端部(チップ嵌挿孔31の開口側)に洗浄液Wを噴射する噴射孔33が形成されている。ノズルチップ32は、噴射孔33に通じる主流路(図示略)と、該主流路の下流側から上流側に連通されるフィードバック流路(図示略)とを有し、そのフィードバック流路を介して洗浄液Wを主流路に戻すことで主流路内の洗浄液Wを自励発振させ、噴射孔33から払拭面1aに対する洗浄液Wの噴射を拡散噴射とするものである。このようなノズルチップ32は例えば車種毎に設けられ、ウォッシャノズル30のボディを複数の車種間で共用可能としている。
【0025】
ウォッシャノズル30の後側下縁部には、凸状の後側下部当接部35が形成されている。後側下部当接部35は、ウォッシャノズル30の後側下縁部に幅方向全体に亘り連続して設けられている。この後側下部当接部35は、前記開口部12下縁に設けた装着片19の上面と当接する。後側下部当接部35の若干前方側におけるウォッシャノズル30の下面には、該ノズル30の幅方向全体に亘り連続して凸状をなす規制当接部36が設けられている。規制当接部36は、後述する前側弾性片41の弾性力にてカウルパネル3の装着片19の先端面に押圧されて当接し、ウォッシャノズル30の取付姿勢を安定させる。
【0026】
規制当接部36よりも更に前方側には、ウォッシャノズル30よりも若干幅狭の後側弾性片37が設けられている。後側弾性片37は、先端部が後側下部当接部35の近傍位置となるまで後方に向けて延出され、先端部に設けた凸状の当接部38がカウルパネル3の装着片19の下面と当接する。この場合、後側弾性片37の自身の弾性力により、該弾性片37の先端の当接部38と後側下部当接部35とでカウルパネル3の装着片19を上下方向で弾性的に挟持し、ウォッシャノズル30の後部が装着片19に対して装着される。また、後側弾性片37の先端の当接部38は、後側下部当接部35と上下方向(垂直方向)で対向するように設けたため、前側弾性片41の弾性力がウォッシャノズル30を側方から見て上下方向に振動しないようになっている。
【0027】
一方、ウォッシャノズル30の前部では、その下面側の幅方向中央に、ノズル30の前方斜め下方に向けて円筒状に延びるホース装着部40が設けられている。ホース装着部40には、ウォッシャタンク(図示略)からの洗浄液Wの供給を受けるためのゴム製のホース5が装着される(図2参照)。ここで、ウォッシャノズル30の前部を装着するカウルパネル3の装着壁部16の幅方向中央下端には、そのホース5との干渉を防止するための切欠部20が設けられている。ホース5が装着されるホース装着部40内の流路は、前記ノズルチップ32の主流路の基端部(噴射孔33と反対側)に繋がっている。そして、ホース5を通じて洗浄液Wがウォッシャノズル30に供給されることで、該ノズル30の噴射孔33から払拭面1aに対して洗浄液Wの拡散噴射がなされる。
【0028】
ウォッシャノズル30の前部両側には、それぞれ前方斜め下方に向けて延出される前側弾性片41が設けられている。前側弾性片41の略中央には、ウォッシャノズル30の前方に向けて略三角形状に突出する係止突起42が形成されている。係止突起42の下側斜面は係止面43とされ、該係止面43は前方斜め下方に向く平面をなしている。ここで、カウルパネル3の装着壁部16には、前記切欠部20の両側に、各前側弾性片41と係止する係止突起21がそれぞれ設けられている。各前側弾性片41は、その係止突起42の係止面43が装着壁部16の係止突起21に掛け止められる。この場合、前側弾性片41の弾性力により、前記規制当接部36の当接方向に弾性力が付与されて規制当接部36がカウルパネル3の装着片19の先端面に押圧されるとともに、後述する前側上部当接部45の当接方向に弾性力が付与されて前側上部当接部45が後述する角度調整部材50を介して上部支持片22の下面に押圧されて、ウォッシャノズル30がカウルパネル3(ノズル装着部15)に装着される。
【0029】
前側弾性片41の先端部は操作部44となっており、該操作部44は、前側弾性片41を後方側に傾動させて係止突起42と装着壁部16の係止突起21との係止状態を解除する。即ち、このような操作により、ウォッシャノズル30のカウルパネル3(ノズル装着部15)からの取り外しが可能となっている。
【0030】
ウォッシャノズル30の上面には、該ノズル30の幅方向全体に亘り連続する断面半円状の前側上部当接部45が形成されている。また、この前側上部当接部45の若干後方側には、幅方向中央に凸状をなす規制当接部46が形成されている。ここで、カウルパネル3(凹設部13)の内側面には、下方に向けて延出、即ち装着されたウォッシャノズル30上面の前側上部当接部45に向けて延出される板状の上部支持片22が設けられている。上部支持片22は、ガラス側壁部11と連結する一対の連結壁部23,24にて所定の剛性が確保されている。この上部支持片22とウォッシャノズル30の前側上部当接部45との間には、角度調整部材50が介在される。
【0031】
角度調整部材50は、図3及び図6に示すように、樹脂製で略長方形板状をなしており、カウルパネル3の凸状部10を構成するガラス側壁部11とは反対側の前側外壁部14にて支持されている。詳しくは、前側外壁部14に設けられる装着壁部16よりも上側には、角度調整部材50が嵌挿される断面四角形状の支持孔14aが形成されており、該支持孔14aにて角度調整部材50の中央部が支持されている。角度調整部材50は、その基端部に把持部51が構成されており、該把持部51を含む基端側が支持孔14aからカウルパネル3の凸状部10の外側に突出している。角度調整部材50は、支持孔14aに対して前後方向に進退可能に支持される。尚、カウルパネル3の前側外壁部14から突出する角度調整部材50の基端部は、ボンネット2の下側に位置している。つまり、角度調整部材50の基端部は、ボンネット2の閉時において車両外側に露出せず、ボンネット2の開時においてのみ作業者が基端部の把持部51を把持して操作可能となるように露出する。
【0032】
角度調整部材50の長手方向中央の両側部には、前後方向(進退方向)に複数の保持凹部52がそれぞれ並んで形成されている。これに対し、角度調整部材50を支持する支持孔14aの両側壁にその保持凹部52と嵌合する保持凸部14bが形成されている。つまり、角度調整部材50は、複数の保持凹部52と支持孔14aの保持凸部14bとで前後方向に段階的に保持可能とされている。
【0033】
角度調整部材50の先端部は、先細となるように下面が斜面状をなし、その部位がウォッシャノズル30の上面に設けた前側上部当接部45と当接する斜面部53とされている。この前側上部当接部45と斜面部53とが当接する状態では、角度調整部材50の先端上面54がカウルパネル3の上部支持片22の下面と当接している。また、角度調整部材50の先端端面55においては、ウォッシャノズル30の上面に設けた規制当接部46と前後方向(進退方向)に隙間Sが設けられ、先端端面55と規制当接部46とを離間させている。
【0034】
角度調整部材50の先端側の斜面部53と保持凹部52との間の一側には、側方に一旦突出しそこから基端側に向けて延出され撓み変形可能に形成される係止片56が設けられている。そして、角度調整部材50を先端部から支持孔14aに挿入して取り付ける際、係止片56は内側に可撓されて支持孔14aを挿通可能とされ、その後、係止片56は弾性復帰して支持孔14aの周縁に係止可能となることで、角度調整部材50の反挿入側への抜けが防止されている。また、角度調整部材50の挿入方向においては、その先端端面55がウォッシャノズル30の規制当接部46に当接することによるそれ以上の挿入方向への移動が規制され、同方向への抜けも防止されている。
【0035】
次に、ウォッシャノズル30の取り付けについて、ウォッシャノズル30の後部は、後側下部当接部35と後側弾性片37とでカウルパネル3の装着片19を挟み込み、該装着片19の先端面に規制当接部36が当接する状態で該装着片19に対して装着される。一方、ウォッシャノズル30の前部は、前側弾性片41の係止突起42(係止面43)が装着壁部16の係止突起21に掛け止められて該装着壁部16に対して装着される。また、この前側弾性片41の弾性力により、後部側の規制当接部36がカウルパネル3の装着片19の先端面に押圧されるとともに、カウルパネル3の上部支持片22に上方への移動が規制された角度調整部材50の斜面部53に前側上部当接部45が押圧され、これらの押圧によりウォッシャノズル30がノズル装着部15にがたつきなく装着されるとともに、姿勢が自己補正される。
【0036】
このように取り付けられたウォッシャノズル30において、洗浄液Wの噴射方向の仰角方向への調整は、ボンネット2を開状態とし、作業者が角度調整部材50を進退方向に操作することにより行われる。
【0037】
即ち、角度調整部材50を挿入方向に進出させると、ウォッシャノズル30の前側上部当接部45は、該角度調整部材50の先端部の斜面部53からその垂直方向への押圧力を受ける。すると、後側下部当接部35と装着片19との当接部分が回動支点Oとなり、ウォッシャノズル30の前部が前側弾性片41の弾性力に抗して下方に回動する。つまり、ウォッシャノズル30の噴射方向は上方を向く。
【0038】
一方、角度調整部材50を反挿入方向に退避させると、前側弾性片41の弾性力によりウォッシャノズル30の前側上部当接部45が角度調整部材50の斜面部53に接触する状態が維持され、ウォッシャノズル30の前部が上方に回動する。つまり、ウォッシャノズル30の噴射方向は下方を向く。そして、ウォッシャノズル30の噴射方向が好適となる角度調整部材50の位置にて、該角度調整部材50の保持凹部52と支持孔14aの保持凸部14bとが係止されることで、角度調整部材50の位置、即ちウォッシャノズル30の位置が保持される。また、このように角度調整した際でも、ウォッシャノズル30の前側弾性片41(係止面43)が角度調整部材50の移動に追従して装着壁部16の係止突起21に係止するため、前側弾性片41の弾性力が前記各箇所に継続的に作用することとなり、がたつかない構造となっている。
【0039】
因みに、角度調整部材50の先端端面55とウォッシャノズル30の前部側の規制当接部46との隙間Sについて、角度調整部材50が上記調整により最大退避位置に配置された場合、その隙間Sが最大となる。このような場合、カウルパネル3の開口部12からウォッシャノズル30を前方側に押し込むような外力が作用すると、ウォッシャノズル30の前部側の規制当接部46が角度調整部材50の先端端面55に当接し、それ以上の押し込み方向への移動が規制されるとともに、後側下部当接部35及び後側弾性片37によるカウルパネル3の装着片19の挟持状態は維持される。つまり、このような押し込みが生じても、ウォッシャノズル30の後部が装着片19から脱落しないように構成されている。
【0040】
次に、本実施の形態の特徴的な作用効果を記載する。
(1)カウルパネル3には、内側にウォッシャノズル30が装着されるノズル装着部15が設けられ、フロントガラス1の払拭面1aと対向するガラス側壁部11にウォッシャノズル30からの洗浄液Wの噴射を行うための開口部12が設けられている。これに対し、ウォッシャノズル30は、カウルパネル3の開口部12側に装着される後部に設けられた噴射孔33から洗浄液Wを噴射するものであり、ノズル装着部15を構成する装着片19及び上部支持片22に支持させるための後側下部当接部35及び前側上部当接部45を有している。また、このウォッシャノズル30には、ノズル装着部15を構成する装着壁部16に係止されその係止部(係止突起21)と両当接部35,45とにそれぞれ弾性力を付与してノズル装着部15に弾性力を以て装着させる前側弾性片41が設けられている。角度調整部材50は、その前側上部当接部45と上部支持片22との間に介在され、その角度調整部材50の操作に基づいて後側下部当接部35と装着片19との当接部分を支点Oとしてウォッシャノズル30の姿勢が変更され、洗浄液Wの噴射方向が調整されるようになっている。つまり、ウォッシャノズル30を支持するノズル装着部15との間に角度調整部材50を介在させ、その角度調整部材50の操作に基づきノズル装着部15に対するウォッシャノズル30全体の姿勢を変更して洗浄液Wの噴射方向を調整するため、ノズルボディにノズル部を可動可能に取り付けて構成された従来のウォッシャノズルのように内部での洗浄液Wの流れに乱れが生じることがなく、予め設定された噴射孔33の噴射態様(噴射角度や散開形状等)に影響を与えない。
【0041】
(2)ウォッシャノズル30は、後側下部当接部35を含む後側装着部分、上部に設けられる前側上部当接部45、及び前部に設けられる前側弾性片41にてノズル装着部15に装着されている。つまり、ウォッシャノズル30の装着部分を側面視(噴射方向に対する側方視)で3箇所と少ないながらも、各装着部分を前後部及び上部とし略直方体形状をなすウォッシャノズル30の形状に対してバランスよく配置されるため、ウォッシャノズル30をノズル装着部15に対して安定して装着することができる。
【0042】
(3)角度調整部材50は、ウォッシャノズル30の上部に配置され同じく上部に設けた前側上部当接部45と上部支持片22との間に介在され、該ノズル30における前後方向の操作に基づいてウォッシャノズル30の姿勢を変更する構成としている。つまり、角度調整部材50は、ウォッシャノズル30の上部に設けた前側上部当接部45と上部支持片22との間に介在すべく、該ノズル30の上部にしかも前後方向に移動可能に配置されることから、角度調整部材50及び該調整部材50を配置する部分を簡素に構成することができる。
【0043】
(4)角度調整部材50は、カウルパネル3に設けられる支持孔14aにて該パネル3の外側に突出させて支持され、そのカウルパネル3の外側に突出する部位(把持部51)にて進退させることで、ウォッシャノズル30の姿勢を変更する構成としている。これにより、角度調整部材50のカウルパネル3の外側に突出する部位での操作は容易なことから、ウォッシャノズル30の姿勢の変更を容易に行うことができる。尚、角度調整部材50のカウルパネル3の外側に突出する部位は、本実施の形態ではボンネット2の内側に隠蔽して通常時では露出させないようにし、ボンネット2の開時にのみ露出させている。これにより、角度調整部材50の誤操作が防止される。
【0044】
(5)角度調整部材50は、前側上部当接部45との当接部分がその調整部材50の移動方向に対して傾斜する斜面部53で構成されているため、ウォッシャノズル30(噴射方向)の角度を調整する手段を容易に形成することができる。
【0045】
(6)角度調整部材50の両側に設けた複数の保持凹部52と、カウルパネル3の支持孔14aに設けた保持凸部14bとで構成される保持手段により、角度調整部材50が移動方向に沿って段階的に保持されるため、ウォッシャノズル30(噴射方向)の角度の調整を容易に行うことができる。
【0046】
(7)ウォッシャノズル30の前側弾性片41の係止面43は、角度調整部材50の移動に追従して装着壁部16の係止突起21と係止するため、前側弾性片41による弾性力の付与を継続的に行うことができる。これにより、角度調整部材50を操作して移動させても、ウォッシャノズル30の装着状態を常に安定させることができる。
【0047】
尚、本発明の実施の形態は、以下のように変更してもよい。
・上記実施の形態では、ウォッシャノズル30の後部に設けられる後側下部当接部35を含む後側装着部分、上部に設けられる前側上部当接部45、及び前部に設けられる前側弾性片41にて該ノズル30をノズル装着部15に装着したが、ウォッシャノズル30の支持部や弾性片の形状や設ける位置、数はこれに限らず、適宜変更してもよい。
【0048】
・上記実施の形態では、角度調整部材50をウォッシャノズル30の前側上部当接部45と上部支持片22との間に介在させたが、ウォッシャノズル30のその他の支持部位とカウルパネル3との間に介在させ、ウォッシャノズル30(噴射方向)の角度調整を行うようにしてもよい。
【0049】
・上記実施の形態では、角度調整部材50をカウルパネル3に設けられる支持孔14aにて該パネル3の外側に突出させて支持したが、突出方向はこれに限らず、例えばカウルパネル3の凹設部13の下方に角度調整部材50を突出させてもよい。
【0050】
・上記実施の形態では、角度調整部材50における前側上部当接部45側に斜面部53を設けてウォッシャノズル30(噴射方向)の角度調整を行うようにしたが、これに限らず、例えば角度調整部材50における上部支持片22側に斜面部を設けてもよい。また、前側上部当接部45や上部支持片22側に斜面部を設けてもよい。
【0051】
・上記実施の形態では、角度調整部材50の両側に設けた複数の保持凹部52とカウルパネル3の支持孔14aに設けた保持凸部14bとで段階的に保持する保持手段を構成したが、これに限らず、例えばその凹凸関係を逆としてもよい。また、支持孔14aとは別の部分に保持手段を構成してもよい。また、段階的でなく連続的に角度調整部材50を移動可能に保持する手段としてもよい。
【0052】
・上記実施の形態では、ウォッシャノズル30の前側弾性片41に、角度調整部材50の移動に追従して装着壁部16の係止突起21と係止する係止面43を設けたが、装着壁部16側にこのような係止面を設けてもよい。
【0053】
・上記実施の形態では、ガラス側壁部11と装着壁部16とこれらを連結する連結壁部17,18とで四方を連続する壁部にて囲むようにノズル装着部15を構成したが、この構成に限らず、例えば連結壁部17,18を省略してもよい。また、装着壁部16を前側外壁部14から延出させて別途設けているが、装着壁部16を前側外壁部14に一体としてもよい。
【0054】
・上記実施の形態では、拡散噴射を行うためのノズルチップ32を内装したウォッシャノズル30を用いたが、ノズルチップ32を用いずウォッシャノズル自体に噴射孔を有するものを用いてもよい。また、拡散噴射するものに限らず、洗浄液を直線状に噴射するジェット式のウォッシャノズルを用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本実施の形態におけるウォッシャノズル装着のカウルパネルを有する車両の斜視図である。
【図2】ウォッシャノズル装着部分のカウルパネル及びその周囲の側断面図である。
【図3】ウォッシャノズル装着部分のカウルパネルの拡大側断面図である。
【図4】(a)はウォッシャノズルの後側上方から見た斜視図であり、(b)はウォッシャノズルの前側下方から見た斜視図である。
【図5】ノズル装着部の前側下方から見た斜視図である。
【図6】角度調整部材を説明するためのウォッシャノズルの前側上方から見た斜視図である。
【符号の説明】
【0056】
1…フロントガラス、1a…払拭面、3…カウルパネル、11…ガラス側壁部、12…開口部、14a…支持孔、14b…保持手段を構成する保持凸部、15…ノズル装着部、22…上部支持片、30…ウォッシャノズル、33…噴射孔、35…第1支持部としての後側下部当接部、41…弾性片としての前側弾性片、43…係止面、45…第2支持部としての前側上部当接部、50…角度調整部材、52…保持手段を構成する保持凹部、53…斜面部、O…支点、W…洗浄液。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフロントガラスの下部に配設されるカウルパネルに、前記フロントガラスの払拭面に向かって洗浄液を噴射するためのウォッシャノズルを取り付ける取付構造であって、
前記カウルパネルは、内側に前記ウォッシャノズルが装着されるノズル装着部を有するとともに、前記払拭面と対向するガラス側壁部に前記ウォッシャノズルからの前記洗浄液の噴射を行うための開口部を有し、
前記ウォッシャノズルは、前記洗浄液の供給を受け、前記開口部側に装着される後部に設けられた噴射孔からその供給された前記洗浄液を噴射するものであり、前記ノズル装着部に支持させるための第1及び第2支持部を少なくとも有するとともに、前記ノズル装着部に係止されその係止部と前記第1及び第2支持部とにそれぞれ弾性力を付与して前記ノズル装着部に弾性力を以て装着させる弾性片を有し、
前記第1及び第2支持部のいずれか一方と前記ノズル装着部との間に介在される角度調整部材を備え、その角度調整部材の操作に基づいて前記第1及び第2支持部のいずれか他方と前記ノズル装着部との当接部分を支点として前記ウォッシャノズルの姿勢を変更し、前記洗浄液の噴射方向を調整する構成としたことを特徴とするウォッシャノズル取付構造。
【請求項2】
請求項1に記載のウォッシャノズル取付構造において、
前記ウォッシャノズルは、略直方体形状をなしており、前記第1支持部は前記ウォッシャノズルの後部に、前記第2支持部は前記ウォッシャノズルの上部に、前記弾性片は前記ウォッシャノズルの前部にそれぞれ設けられていることを特徴とするウォッシャノズル取付構造。
【請求項3】
請求項2に記載のウォッシャノズル取付構造において、
前記角度調整部材は、前記ウォッシャノズルの上部に配置されて前記第2支持部と前記ノズル装着部との間に介在され、前記ウォッシャノズルにおける前後方向の操作に基づいて前記第1支持部と前記ノズル装着部との当接部分を支点として前記ウォッシャノズルの姿勢を変更することを特徴とするウォッシャノズル取付構造。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のウォッシャノズル取付構造において、
前記角度調整部材は、前記カウルパネルに設けられる支持孔を通じて前記ウォッシャノズルが装着される内側から外側に突出するように該支持孔に対して進退可能に支持され、進退による操作により前記ウォッシャノズルの姿勢が変更されることを特徴とするウォッシャノズル取付構造。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のウォッシャノズル取付構造において、
前記角度調整部材は、自身が介在される側の前記第1又は第2支持部と前記ノズル装着部とが対向する方向に対して交差する方向に移動可能に前記カウルパネルに対して支持され、その前記支持部及び前記ノズル装着部の少なくとも一方との当接部分が移動方向に対して傾斜する斜面部にて構成されることを特徴とするウォッシャノズル取付構造。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のウォッシャノズル取付構造において、
前記角度調整部材及び前記カウルパネルには、前記角度調整部材をその移動方向に沿って段階的に保持する保持手段が設けられていることを特徴とするウォッシャノズル取付構造。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のウォッシャノズル取付構造において、
前記ウォッシャノズルの前記弾性片及び前記ノズル装着部の相互の当接部分の少なくとも一方が、前記角度調整部材の移動に追従して係止する係止面にて構成されていることを特徴とするウォッシャノズル取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−155662(P2008−155662A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−343350(P2006−343350)
【出願日】平成18年12月20日(2006.12.20)
【出願人】(000101352)アスモ株式会社 (1,622)
【Fターム(参考)】