説明

ウレタンビーズトップコート

【課題】トップコート層の特性が、つや消し効果とぬめり触感・きしみ音低減を両立させる新規なトップコート層の提供。
【解決手段】 二液性脂肪族ポリウレタン樹脂35〜50重量%、二液性脂肪族ポリウレタン・アクリル樹脂35〜50重量%、又は二液性脂肪族ポリウレタン樹脂と二液性脂肪族ポリウレタン・アクリル樹脂合計で35〜50重量%、粒径0.3〜30μmのシリカ微粒子2〜7重量%、Tgが−60〜−20℃であり、粒径が6〜15μmの範囲にある複数の粒径のポリウレタン樹脂微粒子を3〜15重量%、架橋剤15〜35重量%、シリコーン系触感剤5〜15重量%、レベリング剤0〜5重量%、増粘剤0〜3重量%からなる固形分(固形分各成分の合計は100重量%)及び水を含む水性エマルジョンからなることを特徴とする天然皮革トップコート塗膜形成用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定形状のシリカ微粒子および特定性状のポリウレタンビーズを特定量含有する天然皮革トップコート塗膜形成用組成物および前記天然皮革トップコート塗膜形成用組成物を用いて天然皮革の表面に塗布形成されるトップコートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車シート用天然皮革は、低温から高温及び低湿度から高湿度にわたる人の活動範囲に対応し、長期間わたり使用される、丈夫で、使用に際して心地よい状態を保つことが必要とされる。要求される特性としては、耐摩耗性、耐熱性、耐寒性、耐光性、防汚性及び耐久性などの材料特性の外に、いわゆるテカる状態にならないこと、特有のつやを有していること、心地よい触感を与えることなどの感性に関する特徴点として評価されることも多い。これらの特性は本来の革が有している特性に基づくものに由来する場合と、牛の皮をなめして革とした後に、さらに自動車シート用天然皮革の塗膜を形成する際に付与される特性がある。革の表面の塗膜にはポリウレタン樹脂及び(又は)アクリル樹脂を中心にした塗料による塗膜の形成が行われている。前記塗膜の形成にはポリウレタン樹脂及び(又は)アクリル樹脂が用いられる。その際に添加物することにより、特性を付与することにより特性を付与することがある。
【0003】
このような塗料の添加物としてシリカを用いることが知られている。シリカだけではなく、ポリオルガノシロキサン及び/又は変性されたポリオルガノシロキサン等で被覆された少なくとも1種の表面変性された二酸化ケイ素を含有する塗料配合物において、60°反射率計値が3未満の場合、少なくとも140のシアーズ数Mを有する塗料配合物の発明がある(特許文献1 特開2006−002151号公報)。卓越した透明度値の他に、本発明による塗料配合物は、艶消を行う効果、及び塗料表面の良好な耐引掻性が顕著であると評価される。本発明による塗料配合物は、自動車の内装のために使用されるプラスチックの被覆に適している。即ち、本発明による塗料で被覆された表面は、手触りが好ましく柔らかであるとされる。
特開2007−277483号公報(特許文献2)によれば、「艶消し剤の具体例としては、微粉末シリカを成分とするシリカ系艶消し剤のほかに、ポリエチレンやアクリルビーズ、ウレタンビーズなどの有機系艶消し剤が挙げられている。なかでも、シリカを用いることが好ましく、その配合量としては、塗装層中に2〜8重量%であることが好ましく、3〜6重量%であることがより好ましい。配合量が2重量%未満であるとウレタン樹脂の耐ブロッキング性を損なうおそれがあり、8重量%を超えると皮革表面がざらついた感じとなる」(0037)とのべる。この発明では、微粉末シリカを成分とするシリカ系艶消し剤およびポリエチレンやアクリルビーズ、ウレタンビーズなどの有機系艶消し剤の作用が同一視されている。本発明者らの知る限り、両者は別の作用をするものであり、添加剤の特性については作用の相違があることが少なくない。当然このような場合には新たに見出された特性として考えるものである。
また、微粉末を含有し、表面粗さRaが標準状態で0.5〜30μmの範囲にあるトップコートを有している表皮材料の平均粒子径が、標準状態で1μm以下であることが知られている。触感性能を向上させることができるとともに、トップコートに微粉末などを添加することにより、耐摩耗性を確保できるとされる(特許文献3 特開2006−307397号公報)。
基材と該基材より表面側に配設シリカと水性ポリウレタン樹脂シリカと水性ポリウレタン樹脂される高分子材料含有層とを有する表皮材であって、上記高分子材料含有層の表面に深さが30〜130μmである微小な凹部を有し、上記高分子材料含有層の表面の全投影面積基準で、上記凹部の投影面積の割合が5〜20%である表皮材(特許文献4 特開2008−302549号公報)も知られている。
このように、塗料に配合する微粒子は、ポリウレタンやポリアクリルなど樹脂ビーズ、シリカ微粒子を中心に多くの微粒子が提案されているものの、種々の表現が混在する状態となっている。
【0004】
また、特定のポリウレタン調剤を提案し、ポリウレタンマトリックス中で不溶性の粒子を含有し、この場合この粒子の平均直径は、1〜20μmであると記載されている。しかしながら、ポリウレタンマトリックス中で不溶性の粒子がどの程度の量で存在し、有効に利用されたかは明らかではない。注目すべきことに、本発明による水性ポリウレタン調剤を使用することにより、減少された光沢と共に高められた耐磨耗性、水安定性、弾性、僅かな再艶出し可能性、濃い色の濃さおよび快く温かく柔らかい感触を有することに寄与されているかは不明である(特許文献5 特表2005−530868号公報、特許文献6 特開2009−143235号公報)。この場合においても不溶性粒子のみが有効であるのか、マトリクスと不溶性粒子の組み合わせが良い結果をもたらしたのかも判然としない。
ポリウレタン樹脂つや消し剤について具体的に使用した内容を述べる特許文献5では、ポリウレタン微粒子を含むポリウレタンから成るポリウレタン調剤を用いて天然皮革のトップコート層を形成することにより、好ましい結果を得られていることも明らかにされている。この中にはポリウレタン微粒子の粒径の概略が示されているものの、ポリウレタン微粒子を使用する場合の粒径及び使用量などは明らかにされていない。そして、ポリウレタン微粒子は粒径及び使用量などによって得られる結果も相違するのではないかということが考えられるが、その内容は明らかでではない。
【0005】
基材上に下塗り発泡層と上塗り層とを有する好触感塗装体では、上塗り層は、有機ビーズを含む上塗り塗料を下塗り発泡層上に塗装し、加熱することにより上塗り塗料が硬化して形成された厚さが20〜30μmのものとなる。ウレタンビーズでは、上塗り層表面の動摩擦係数が大きくなリ、しっとり感と好触感を得ることができる。大きさ(粒径)としては、特に限定はされないが、5〜50μmであることが好ましく、より好ましくは5〜20μmであると述べる(特許文献7 特開2009−131821号公報、特許文献8特開2005−297200号公報)。
【0006】
特開2007−314919号公報(特許文献9)は、水性ポリウレタン樹脂(A)100質量部、ポリイソシアネート系架橋剤(B)40〜100質量部、シリコーン系化合物(C)5〜25質量部、およびフィラー(D)5〜120質量部を含有する水性樹脂組成物からなることを特徴とする皮革用表面仕上げ剤であり、また、シリカと水性ポリウレタン樹脂(A)100質量部に対して、前記フィラー(D)の配合量は、5〜120質量部の範囲が好ましく、10〜80質量部の範囲がより好ましい。フィラーの配合量がこの範囲にあれば、皮革の耐摩耗性が充分になり、皮革の柔軟な風合いが確保できる(0035)と述べる。
この発明では、フィラーの配合量を全体として述べるにとどまりシリカとポリウレタン樹脂微粒子の双方を特定量の割合で混合することも開示していないし、その形状についても開示していない。
【0007】
本発明者らは、WO2009/084227号公報(特許文献10)の発明を完成させた。
この発明の、特許請求の範囲の記載は以下のとおりである。
請求項1 二液性脂肪族ポリウレタン48〜55重量%、シリカ微粒子3〜7重量%、架橋剤23〜37重量%、シリコーン系触感剤7〜13重量%からなる固形分(固形分各成分の合計は100重量%)及び水を含む水性エマルジョンであって、前記二液性ポリウレタン中にポリウレタン樹脂微粒子を前記固形分の12〜25重量%含有することを特徴とする天然皮革塗膜形成用組成物。
請求項2 二液性脂肪族ポリウレタン51〜55重量%、シリカ微粒子3〜7重量%、架橋剤23〜37重量%、シリコーン系触感剤7〜13重量%からなる固形分(固形分各成分の合計は100重量%)及び水を含む水性エマルジョンであって、前記二液性ポリウレタン中にポリウレタン樹脂微粒子つや消し剤を前記固形分の12〜25重量%、及び二液性脂肪族ポリウレタン・アクリルエマルジョンを前記固形分の6〜10重量%を含有していることを特徴とする天然皮革塗膜形成用組成物。
【0008】
これらは、天然皮革のトップコート層の塗膜に関して、優れた耐摩耗性、ソフト感、柔軟性、滑らかで、ぬめり感のある触感を向上させるうえで、さらに不快な感じを起こさせるきしみ音の発生を極力防止することができるので、高く評価されている。
この発明では、シリカ微粒子を添加すること、これの組み合わせとして、ポリウレタン微粒子を含むポリウレタン樹脂つや消し剤を用いることが有効であるとした。ポリウレタン微粒子を含むポリウレタン樹脂つや消し剤はポリウレタンに特定量のポリウレタン微粒子を添加したものではなく、ポリウレタン製造に際して生成するポリウレタン微粒子を含むポリウレタン調剤であり、特定のポリウレタンそのものの特性により得られる特性と、ポリウレタン中に含まれるポリウレタン微粒子により得られる特性を有している。このポリウレタン樹脂つや消し剤は、きしみ音を発生させ難いので、きしみ音低減に有効であり、またぬめり感を得るのに効果的だが、反面つや消し効果は小さい。一方、シリカ微粒子はつや消し効果が大きい反面、触感がドライ(ぬめり感とは逆の、乾いたさらさらした感じ)になりやすく、又、きしみ音の原因にもなる。そこで、つや消し効果とぬめり触感・きしみ音低減を両立させるには、シリカ微粒子とポリウレタン樹脂つや消し剤を併用するのが効果的であることを述べている。
【0009】
具体的には、ポリウレタン微粒子そのものが有効に作用しているのか、特定のポリウレタンに含まれるポリウレタン微粒子全体からなるポリウレタン調剤が有効であるのかという点は不明である。
ポリウレタン樹脂微粒子とシリカ微粒子を使用するうえで、ポリウレタン樹脂微粒子とシリカ微粒子と水性ポリウレタン樹脂について、性状について明らかにして、どのような態様で用いることが有効であるのかを明確にすることが必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−002151号公報
【特許文献2】特開2007−277483公報
【特許文献3】特開2006−307397号公報
【特許文献4】特開2008−302549号公報
【特許文献5】特表2005−530868号公報
【特許文献6】特開2009−143235号公報
【特許文献7】特開2009−131821号公報
【特許文献8】特開2005−297200号公報
【特許文献9】特開2007−314919号公報
【特許文献10】WO2009/084227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
自動車シート用天然皮革のトップコート層は、自動車シート用天然皮革の表面に塗膜として形成されている最も表面の層である。トップコート層は人と接触する層であり、触感、つや、耐摩耗性、汚れ防止、耐摩耗性、柔軟性や滑らかさ、ぬめり感など自動車シート用天然皮革の評価に直接関係する項目が少なくない。これらはトップコート層を形成する塗膜およびその添加物材料により定まる。
本発明が解決しようとする課題は、トップコート層の特性が、つや消し効果とぬめり触感・きしみ音低減を両立させている新規なトップコート層を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
シリカ微粒子はつや消し効果が大きい反面、触感がドライ(ぬめり感とは逆の、乾いたさらさらした感じ)になりやすく、又、きしみ音の原因にもなる。そこで、本発明者らは、つや消し効果とぬめり触感・きしみ音低減を両立させるには、特定の性状のシリカ微粒子とポリウレタン樹脂微粒子の両者を含む組成物を併用することにより達成できることを明らかにできると考えた。
そこで、この考えに基づいて検討を進めた結果、(1) 二液性脂肪族ポリウレタン樹脂35〜50重量%、二液性脂肪族ポリウレタン・アクリル樹脂35〜50重量%又は二液性脂肪族ポリウレタン樹脂と二液性脂肪族ポリウレタン・アクリル樹脂合計で35〜50重量%、粒径0.3〜30μmのシリカ微粒子2〜7重量%、Tgが−60〜−20℃であり、粒径が6〜15μmの範囲にある複数の粒径のポリウレタン樹脂微粒子を3〜15重量%、架橋剤15〜35重量%、シリコーン系触感剤5〜15重量%、レベリング剤0〜5重量%、増粘剤0〜3重量%からなる固形分(固形分各成分の合計は100重量%)及び水を含む水性エマルジョンからなることを特徴とする天然皮革トップコート塗膜形成用組成物、及び前記天然皮革トップコート塗膜形成用組成物を用いて形成される(2)二液性脂肪族ポリウレタン樹脂0〜50重量%、二液性脂肪族ポリウレタン・アクリル樹脂0〜50重量%(二液性脂肪族ポリウレタン樹脂と二液性脂肪族ポリウレタン・アクリル樹脂は合計で35〜50重量%)、粒径0.3〜30μmのシリカ微粒子2〜7重量%、Tgが−60〜−20℃であり、粒径が6〜15μmの範囲にある複数の粒径のポリウレタン樹脂微粒子を3〜15重量%、架橋剤15〜35重量%、シリコーン系触感剤5〜15重量%、レベリング剤0〜5重量%及び増粘剤0〜3重量%(固形分各成分の合計は100重量%)からなる天然皮革の表面に塗布形成されるトップコートを見出し、ベースコート、カラーコートの上にこのトップコートを形成した自動車シート用天然皮革により課題を解決することができた。
このトップコートについて前記の効果を得られるかどうかは、触感(ぬめり感,きしみ音)、つや(クロス、耐光、官能試験)、および物性(テーバー磨耗、耐もみ)の3点より評価される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によるトップコート層は、従来のトップコート層と比較して、優れた耐摩耗性、ソフト感、柔軟性、滑らかで、ぬめり感のある触感を持たせ、さらに不快な感じを起こさせるきしみ音の発生を極力防止したつや消しトップコート層である。
つや消し効果が大きい反面、触感がドライ(ぬめり感とは逆の、乾いたさらさらした感じ)になりやすいとされきしみ音の発生原因にもなるシリカ微粒子と、ぬめり感の付与ときしみ音の低減に効果がある半面つや消し効果が小さいポリウレタン微粒子を共にトップコートに加えることにより本発明のトップコート層を得ることができた。
さらに、本発明によれば、添加するポリウレタン微粒子の数量化や規格化をはかることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】KESおよび摩擦特性を示す図である。
【図2】触感ときしみ音を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
天然皮革は、原料皮をなめすための準備工程、クロム又はクロムフリーなめし剤によるなめし工程、合成なめし剤による再なめし・染色・加脂工程とこれに続く乾燥工程、及び仕上げ工程からなる一連の工程を得て製造される。上記乾燥工程は、セッター工程、がら干し乾燥工程、味取り工程、バイブレーション工程及びバフ工程からなる。上記仕上げ工程は、裏のり工程、ベースコート層形成工程、カラーコート層形成工程、トップコート層形成工程、バイブレーション工程、裏すき工程からなる。
これらの工程は、個々の条件及び工程の組み合わせなどについては改良が進められているものの、各工程で行う操作自体は、独立しており、ほぼ定まっているといってよく、公知の工程である。
【0016】
本発明の対象となる塗膜はもっとも表面にあるトップコート層であり、塗膜の形成を、いかに行うかということが技術のうえで重要なテーマである。
トップコート層はベースコート層及びカラーコート層の上に形成するものであるから、本発明の説明については、ベースコート層形成工程、カラーコート層形成工程、トップコート層形成工程について説明する。
【0017】
(1)ベースコート層は、塗膜層の最下層にあたり、皮革の表面にある凹凸を平らにし、安定して上部に層を形成する準備のための層である。この層を形成するにあたっては、(a)樹脂、(b)顔料、助剤、触感剤及びレベリング剤及び(c)水からなる組成物を皮革の表面に塗布する。固形分となる樹脂と顔料と助剤と水の割合は、50〜75:5〜20:10〜30(合計100%、重量比)である。水溶性二液性ポリウレタン樹脂が用いる。顔料には色付けしたい色の顔料を用いる。助剤には界面活性剤、増粘剤、調整剤、マット剤などが含まれる。(a)樹脂、(b)顔料、助剤、触感剤及びレベリング剤と、(c)水分の割合は20〜40:80〜60(合計100%.重量比)である。塗布方法としては水溶液を含んだ状態で、はけ塗り、スプレー、カーテン塗装、ロール塗装が適宜選択して使用される。塗布量は70から150g/m、塗布後に温風を表面にあてて水分を蒸発させる。膜厚は20〜50μmである。
次いで、型押しを行う。型押しは、革表面に高圧プレスにより凹凸を出す加工で、革にさまざまな模様(シボ)をつけるものである。次に、空打ち工程そしてステーキング工程により、皮革繊維をほぐし風合いを調整する。
【0018】
(2)カラーコート層は、塗装膜の中間層にあたり、皮革を着色するための顔料及び染料を存在させるための層であって、皮革から見てベースコートの上部に設けられている。この層を形成するにあたっても、(a)樹脂、(b)顔料、助剤、架橋剤、及び触感剤及び(c)水からなる組成物を皮革の表面に塗布する。固形分となる樹脂(a)、顔料(b)と助剤(c)と架橋剤(d)と触感剤(e)の割合は、45〜75:10〜30:0〜15:0〜20:0〜10(合計100%、重量比)である。樹脂には、水溶性二液性ポリウレタン樹脂が用いられる。顔料には色付けしたい色の顔料を用いる。助剤には界面活性剤(レベリング剤等)、増粘剤、調整剤などが含まれる。樹脂、顔料、助剤、触感剤及と、水分の割合は20〜40:80〜60(合計100%.重量比)である。塗布方法には水溶液を含んだ状態で、はけ塗り、スプレー、カーテン塗装、ロール塗装が適宜選択して使用される。塗布量は20〜70g/m、塗布後に温風を表面にあてて水分を蒸発させる。膜厚は5〜25μmである。
【0019】
(3)トップコート層は、カラーコート層の表面に形成される。厚みは5〜20μmである。トップコート層は、自動車シート用天然皮革の表面で人に接触する。人と自動車シート用天然皮革の表面が接触することとなる。この部分では不快なきしみ音が発生することや、耐摩耗性がないことによる弊害が発生するがある。自動車シートを使用する者にとっては、自動車シートはソフト感があり、柔軟性や滑らかな触感を有し、ぬめり感のあることを要求する。このような特性をポリウレタンの塗膜が達成するためには添加されるポリウレタン微粒子とシリカ微粒子を中心にした添加物を組み合わせて達成しようということとなる。このための本発明の天然皮革塗膜形成用組成物は以下のとおりである。
【0020】
本発明では、トップコート塗膜層を形成するための以下の天然皮革塗膜形成用組成物を用いる。
二液性脂肪族ポリウレタン樹脂0〜50重量%、二液性脂肪族ポリウレタン・アクリル樹脂0〜50重量%(二液性脂肪族ポリウレタン樹脂と二液性脂肪族ポリウレタン・アクリル樹脂は合計で35〜50重量%)、粒径0.3〜30μmのシリカ微粒子2〜7重量%、Tg(ガラス転移温度)が−60〜−20℃であり、粒径が6〜15μmの範囲にある複数の粒径のポリウレタン樹脂微粒子を3〜15重量%、架橋剤15〜35重量%、シリコーン系触感剤5〜15重量%、レベリング剤0〜5重量%、増粘剤0〜3重量%からなる固形分(固形分各成分の合計は100重量%)及び水を含む水性エマルジョンからなることを特徴とする天然皮革トップコート塗膜形成用組成物。
【0021】
樹脂成分については、以下の割合の組成物の全体量に対して以下の重量%として採用される。
二液性脂肪族ポリウレタン樹脂35〜50重量%、二液性脂肪族ポリウレタン・アクリル樹脂35〜50重量%又は二液性脂肪族ポリウレタン樹脂と二液性脂肪族ポリウレタン・アクリル樹脂合計で35〜50重量%として用いられる。
第一の組み合わせは、二液性脂肪族ポリウレタン樹脂のみで構成される(35〜50重量%)。
第二の組み合わせは、二液性脂肪族ポリウレタン・アクリル樹脂のみで構成される(35〜50重量%)
第三の組み合わせは、二液性脂肪族ポリウレタン樹脂と二液性脂肪族ポリウレタン・アクリル樹脂の含有量の組み合わせである(脂肪族ポリウレタン樹脂と二液性脂肪族ポリウレタン・アクリル樹脂合計で35〜50重量%)。
これらの組み合わせはコート塗膜が形成された仕上がりの状態で天然皮革皮膜の触感が好ましい状態であるようにするために添加される
二液性脂肪族ポリウレタン樹脂及び二液性脂肪族ポリウレタン・アクリル樹脂は、同様の特性を有しており、塗膜は安定で、塗膜は黄色に変化しないなどの利点がある。
【0022】
ポリウレタン樹脂の微粒子はTgが−60〜−20℃であり、微粒子の粒径は6μm〜15μmである。複数の粒径のポリウレタン樹脂微粒子のトップコート塗膜形成用組成物固形分中の含有量は3〜15重量%である。ポリウレタン樹脂粒子は、つや消しの他に、ぬめり感を有している。きしみ音を発生させ難くする。きしみ音低減に有効である。
同時に用いるシリカ微粒子は、塗膜がぴかぴか光ることを防止する、つや消し効果を得るために用いる。シリカ微粒子はつや消し効果を達成できる反面、シリカ微粒子を用いると、触感がドライ(ぬめり感とは逆の、乾いたさらさらした感じ)になりやすく、また、きしみ音の発生の原因にもなる。粒径0.3〜30μmのシリカ微粒子であり、トップコート塗膜形成用組成物固形分中の含有量は2〜7重量%である。
従来より用いてきたシリカ微粒子に対して、ポリウレタン樹脂の微粒子を添加して用いることにより、ぬめり感を持たせると共に、きしみ音の低減及びその防止に有効である。
【0023】
架橋剤15〜35重量%は、樹脂成分に作用する必須成分である。トップコート層の重合体の調整を行う。
【0024】
シリコーン系触感剤5〜15重量%は、必須成分である。トップコート塗膜が形成された仕上がりの状態で天然皮革皮膜の触感が好ましい状態であるようにするために添加される触感の向上に役立つ。
【0025】
レベリング剤0〜5重量%及び増粘剤0〜3重量%は任意成分である。
性状を考えて適宜される。
【0026】
トップコート層を形成するために天然皮革塗膜形成用組成物を用いてトップコート層を形成する条件は以下の通りである。
塗布方法には水溶液を含んだ状態で、はけ塗り、スプレー、カーテン塗装、ロール塗装が適宜選択して使用される。塗布量は20〜70g/m、塗布後に温風を表面にあてて水分を蒸発させる。膜厚は5〜25μmである。
【0027】
二液性脂肪族ポリウレタンについては以下の通りである。二液性脂肪族ポリウレタンは水性であり、塗料として使用されるものである。天然皮革に塗膜形成するに際しては使用時に水性のポリオールと硬化剤として水性ポリ脂肪族イソシネートを混合して反応させて用いる。二液性脂肪族ポリウレタンは一定時間内に塗布作業などの処理を進めなければならないという、ポットライフの問題があるものの、本発明の場合には天然皮革の処理には6時間程度の間に処理すればよく、作業として問題を起こすことはない。できあがり塗膜は安定している。
脂肪族イソシアネートである、1,4−ジイソシアナトブタン、1,6−ジイソシアナトヘキサン、1,5−ジイソシアナト−2,2−ジメチルペンタン、2,2,4−および2,4,4−トリメチル−1,6−ジイソシアナトヘキサン、1,10−ジイソシアナトデカンなどのイソシアネートなどの脂肪族イソシネートを変性してウレトジオン基、イソシアヌレート基、ウレタン基、アロファネート基、ビューレット基および/またはオキサジアジン基を有するポリイソシアネートを含むものとし、エチレンオキシド単位を含むポリアルキレンオキシドポリエーテルアルコールと反応させてポリイソシアネート混合物を製造する(特許第2961475明細書などに記載がある)。
水性ポリオールとしては、カルボキシル基含有ジオールである、ジメチロールブタン酸、ジメチロールペンタン酸、ジメチロールヘプタン酸、ジメチロールオクタン酸、ジメチロールノナン酸を用いることができる。中でも工業的コスト等の点からジメチロールブタン酸、ジメチロールヘプタン酸、ジメチロールノナン酸が好ましく、最も好ましいのはジメチロールブタン酸である。カルボキシル基含有ジオールは公知の合成方法により得られることができ通常はアルキルアルデヒドにホルマリンを塩基性触媒存在下でアルドール縮合させ、次いで過酸化物を作用させてアルデヒド基を酸化することによって得られる(特許3493796号明細書、特開平8−359884号公報などに記載がある)。
混合するときのNCO/OHは、1.3から1.5の範囲とする。
ポリイソシアネート成分を、ポリマーポリオールおよび低分子量連鎖延長剤と完全に反応させて、ポリウレタンを得る。その後に任意に分離することができる溶媒を使用する。
また、中和することができる基を塩の形態に転化させ、分散液を、水を用いて製造する。中和度およびイオン性基含有量に依存して、分散液を、実質的に溶液の外観を有するような非常に微細に分散させることができる。
【0028】
二液性ポリウレタンについては、以下に示す市販製品を使用することができる。
Finish PF、PE、PFM、Matting MA, HS、LV(以上BASF社製)。Aqualen Top 2002.A、2003.A、2006.B、2007.A、2020.A、 D―2012.B、 D―2017、D―2018.B(以上Clariant社製)。BAYDERM Finish 60UD、61UD、65UD、71UD、85UD、HAT、LB、Hydrholac HW―G、UD−2、AQUADERM Matt 200(以上LANXESS社製)。
WD―21―163、WT―2586、WT―2511、WT―13―493、WT―13―486、WT―13―986、WT―2533、WT―2585、WT―13―992、WT―13―492、WT―2524、RU―6125(以上Stahl社製)。
【0029】
二液性脂肪族ポリウレタン・アクリルエマルジョンについて
二液性脂肪族ポリウレタン・アクリルエマルジョンについてはよく知られており、たとえば特開平5−320299号公報に記載されている。
末端にイソシアネート(−NCO)基を有するウレタンプレポリマーに、水酸(−OH)基を有するエチレン性不飽和単量体を前者のプレポリマーのイソシアネ−ト基と後者の単量体の水酸基の当量比(−OH/−NCO)が0.3〜0.6となる割合で反応させて分子内にエチレン性不飽和結合とイソシアネ−ト基を有する自己乳化性変性プレポリマーを得た後、この自己乳化性変性プレポリマーの固型分100重量部の存在下に、アクリル系単量体を主成分とするエチレン性不飽和単量体を100〜1000重量部の割合で混合した重合性混合物の水分散液を乳化重合することにより、ポリウレタン・アクリル樹脂水性エマルジョンを得ることができる。
前記末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーは以下の通りである。
末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーとしては、ジャーナルオブ コーティングテクノロジーのvol.58,No.738,1986年7月刊49〜51頁及び特開昭59−138211号公報に記載されるような、分子量が200〜4000のポリオールとイソシアネート基(−NCO)を2個以上有するポリイソシアネート化合物とを反応させて得られるウレタンプレポリマーをウレタン用鎖伸長剤で更に高分子量化した末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーで、これを酸またはアルカリでイオン化し、自己乳化性ウレタンプレポリマーとなりうるものである。
ウレタンプレポリマー原料のポリイソシアネートとしては、脂肪族、脂環族系のジイソシアネート類で、例えば、1,4−ブチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサンジイソシアネート、1,4−ジイソシアナートブタン、1,6−ジイソシアナ−トヘキサン、1,5−ジイソシアナ−ト−2,2−ジメチルペンタン、2,2,4−および2,4,4−トリメチル−1,6−ジイソシアナトヘキサン、1,5−ナフテンジイソシアネート等が挙げられる。
又、ポリオール類としては一般のウレタン製品に使用されるものであり、例えばポリエーテル類、ポリエステル類、ポリエステルアミド類、ポリチオエーテル類、ポリブタジエングリコール類など、いずれも使用出来る。ポリエーテル類としては水、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、等活性水素を有する化合物を開始剤原料としてエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、テトラヒドロフラン等を開環付加重合させて作られる。
ポリエステル類としてはエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等飽和及び不飽和の低分子グリコールと二塩基性酸との縮合により得られる。その他ポリチオエーテル類、ポリアセタール類も使用出来る、これらのウレタンプレポリマーを得るには通常ポリオール類のCPRを低くし(CPRについてはJIS K1557に準ずる)、30〜150℃程度の反応温度で合成される、合成時のポリイソシアネート/ポリオールの配合モル比はポリオール類の水酸基1個に対しイソシアネート基0.5〜2.5モル使用される。
鎖伸長剤としてはN−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N−オレイルジエタノールアミン、ジメチロールプロピオン酸、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、又ジアミノエタン、1,6−ジアミノヘキサン、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、4,4′−ジアミノジシクロヘキシルメタン、1,2−プロピレンジアミン、ヒドラジン等である。
水酸基を有するエチレン性不飽和単量体としては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシ−3−クロロプロピルアクリレート、プタル酸水素アクリロイルオキシエチル、β−ヒドロキシエチル−β−アクリロイルオキシエチルフタレート、1,4−ブチレングリコールモノアクリレート、N−メチロールアクリルアミド、ヒドロキシスチレン、ビニルアルコール、アリルアルコール、メタアリルアルコール、イソプロペニルアルコール、1−プチニルアルコール、エチレングリコールモノアクリレート、1,4−ブタンジオールモノアクリレート等が用いられる。 ウレタンプレポリマーと水酸基を有するエチレン性不飽和単量体との反応物は、遊離の−NCO基を有するが、活性水素と反応するので好ましくないためこの−NCO基をグリセリンやカプロラクタム等のマスク剤でマスクし、酸やアルカリ等でイオン化させる。アルカリとしては、第3級アミン類、アンモニア等か、酸としては、塩酸等の無機酸や酢酸等の有機酸が使用される。
購入して利用する場合には、以下の製品を使用できる。
【0030】
Hydrholac TS、CR―5(以上、LANXESS社製)。 WT―7370、WT―21433、RH―6677、RH 6663、 RH 6659、RH 6671、RH 6698(以上Stahl社製)
【0031】
シリカ微粒子について
シリカ微粒子は、塗膜がぴかぴか光ることを防止する、つや消し効果を得るために用いる。シリカはつや消し効果を達成することができる点では問題ない。
シリカ微粒子を用いると、触感がドライ(ぬめり感とは逆の、乾いたさらさらした感じ)になりやすく、また、きしみ音の発生の原因にもなる。
以下の実験で示すように、つや消しを十分に行うとともに、ぬめり感を出す効果を出すためにポリウレタン樹脂つや消し剤を併用することが効果的である。
ポリウレタン樹脂つや消し剤の効果はシリカ微粒子に劣る結果、シリカ微粒子に替えてポリウレタン樹脂つや消し剤のみを使用することはできない。
シリカ微粒子の含有量は2〜7重量%が好適である。これより少ないと、充分なつや消し効果が得られない。多すぎると、耐摩耗性など塗膜物性に悪影響を及ぼすおそれがある。
シリカ微粒子は、0.3〜30μm、好ましくは1〜10μm、特に2〜6μmの平均粒子径を有し、好ましくはISO787/5に従って150〜400のオイル数(oil number)を有する有機的にコーティングされたケイ酸を用いることも有効である。粒径が大きいと触感がざらついた感じになり好ましくない。
分散液のポリウレタン対ケイ酸の固体比(solid ratio)は2:1〜5:1である。同様に、好ましくは、このような分散液の強熱(ignition)時の残留物は1〜8%であるとしている。これらは以下の公報に記載されている(特開2000−119511号公報)。これらはいずれも市販品の中から粒径を特定して購入すればよい。
【0032】
ポリウレタン樹脂微粒子としては、粒径が6μmから15μmの範囲にある微粒子が有効に用いることはできることを以下に示す実験により見出した。ポリウレタン樹脂微粒子としては市販のものを用いることができる。本発明者らが採用したポリウレタン微粒子は以下の通りである。例えば、大日精化株式会社製6μm(UCN−5070D)及び15μm(UCN−5150D)(粉タイプ)がある。ポリウレタン樹脂微粒子の使用量については、以下の実験や実施例などから、3〜15%が好適である。この範囲より小さいと、ぬめり触感、きしみ音の改善効果が不充分になる。この範囲より大きいと、耐摩耗性や耐もみ性などの物性に悪影響が現れるおそれがある。
【0033】
この他にもポリウレタン樹脂微粒子には、ウレタンビーズA(日本化学塗料株式会社製、粒径6μm、親水基を有しており、分散剤は不要)、ウレタンビーズB(いずれも日本化学塗料株式会社製、粒径6μm、親水基がなく、分散剤の存在が必要。)、アートパールC−400(粒径15μm、Tgは−13℃)、アートパールC−600(粒径10μm、Tgはー13℃)、アートパールC−800(粒径6μm、Tgはー13℃)、アートパールP−400T(粒径15μm、Tgはー34℃)、アートパールJB−800T(粒径6μm、Tgはー34℃)、アートパールJB−400T(粒径15μm、Tgはー52℃)、アートパールJB−600T(粒径10μm、Tgはー52℃)、アートパールJB−800T(粒径6μm、Tgはー52℃)(以上、根上工業株式会社製)などが市販されている。これらのポリウレタン微粒子を用いて、粒径としてどの範囲のものが有効であるかを明らかにする。
【0034】
本発明者らはウレタン微粒子の効果を確認するために特定の粒径のウレタン微粒子を添加したトップコート層の特性を確認した結果を以下に示す。シリカ微粒子については、本発明者らは、シリカ微粒子とポリウレタン微粒子含有ポリウレタン樹脂を用いた従来の経験から、シリカ微粒子とポリウレタン樹脂微粒子と併用する場合にはシリカ微粒子は10重量%程度を使用すれば充分であると考えた。ポリウレタン樹脂についても、同様に15%程度加えれば効果が得られるものと考えた。
【0035】
【表1】

【0036】
上記の実験ではシリカ微粒子を用いない場合、ウレタン微粒子のみを用いる場合(粒径6,7、7,15μm)についてその効果を試した実験である。
実験に用いたトップコート塗膜形成用組成物の固形分組成は次のとおりである。
(1)ブランク1
二液性脂肪族ポリウレタン・アクリル樹脂42.5重量%、粒径0.3〜30μmのシリカ微粒子10.4重量%シリコーン系触感剤12.3重量%、架橋剤31.6重量%、レベリング剤2.0重量%、増粘剤0.6重量%(水を加えて全固形分濃度を34.0重量%に調整)。
(2)ブランク2
二液性脂肪族ポリウレタン・アクリル樹脂47.3重量%、架橋剤35.1重量%、シリコーン系触感剤12.3重量%、レベリング剤2.3重量%及び増粘剤0.7%(水を加えて全固形分濃度を34.0重量%に調整)。
(3)top1、top2、top3、top4
二液性脂肪族ポリウレタン・アクリル樹脂40.2重量%、ウレタン微粒子14.9重量%、架橋剤29.9重量%、シリコーン系触感剤12.3重量%、レベリング剤2.0%及び増粘剤0.6%(水を加えて全固形分濃度を34.0重量%に調整)。
ぬめり感は官能試験で5段階評価しており(評価者5人の平均)、数値が大きいほどぬめり感が強い。きしみ音も官能試験で5段階評価しており(評価者5人の平均)、数値が大きいほどきしみ音が小さい。きしみ音のレベル4は、きしみ音がほとんど感じられない場合を表している。
ウレタン微粒子を用いる場合には、粒径6μmのものから粒径15μmのものまでぬめり感・きしみ音が改善されていることがわかる。しかし、つやに関しては、シリカ微粒子を加えたブランク1が良好であるのに対して、ウレタン微粒子を加えたtop1〜top4では耐光試験でつやが上がる(gloss up)傾向があり、官能試験では梨地感・つやむら有りの結果で、ウレタン微粒子だけを用いたのでは十分に課題を解決できないことを示している。
【0037】
【表2】

【0038】
上記の表は、シリカ微粒子とポリウレタン微粒子の組合せが良好な結果を示す実験例である。実験に用いたトップコート塗膜形成用組成物の固形分組成は以下のとおりである。
(1)ブランク3
二液性脂肪族ポリウレタン樹脂30.7%、二液性脂肪族ポリウレタン・アクリル樹脂15.6重量%、粒径0.3〜30μmのシリカ微粒子5.5重量%、架橋剤32.8重量%、シリコーン系触感剤11.4重量%、レベリング剤3.4重量%及び増粘剤0.7重量%(全固形分濃度は34.0重量%)。
(2)top5、top6
二液性脂肪族ポリウレタン樹脂26.2%、二液性脂肪族ポリウレタン・アクリル樹脂13.3重量%、粒径0.3〜30μmのシリカ微粒子4.7重量%、ポリウレタン微粒子14.6%、架橋剤28.0重量%、シリコーン系触感剤9.8重量%、レベリング剤2.9%及び増粘剤0.6%(全固形分濃度は34.0重量%)。
ポリウレタン微粒子について7μmと15μmで良好な結果が得られることがわかった。また、シリカ微粒子とポリウレタン微粒子の量的関係は、シリカ微粒子4.7重量%及びポリウレタン微量子14.6重量%の割合が良好な結果となる。シリカ微粒子の粒径が特定である場合については、触感、つやで良好な関係にあることを示している。そして、物性については格別影響を与えず、維持されていることが分かった。
ポリウレタン微粒子について7μmではきしみ音の改善効果が小さい。
【0039】
本発明の特定の粒径のポリウレタン樹脂微粒子(粒径Tgが−60〜−20℃であり粒径が6μm〜15μmの範囲にあるポリウレタン樹脂微粒子を3〜1515重量%含む場合)を含むトップコート層についてすべり特性の関係を調べた結果を図1に示す。
点線はKESの測定結果である。
実線は摩擦特性を表している。
用いたトップコート塗膜形成用組成物の固形分組成は、二液性脂肪族ポリウレタン・アクリル樹脂41.4重量%、粒径0.3〜30μmのシリカ微粒子4.9重量%、ポリウレタン微粒子7.7重量%、架橋剤30.7重量%、シリコーン系触感剤12.7重量%、レベリング剤2.0重量%及び増粘剤0.6重量%(水を加えて全固形分濃度を34.0重量%に調整)である。
微粒子なしは、上記組成からシリカ微粒子及びポリウレタン微粒子を除いたものである。シリカのみは、上記組成からポリウレタン微粒子のみを除いたものである。
粒径が6μmと15μmの範囲内にあるポリウレタン微粒子を用いる場合には摩擦特性にしても、KESによる特性の測定結果については、安定して良好な結果が得られることが理解できる。粒径が大きいと滑り難い傾向を示している。
粒径15μmのポリウレタン微粒子の場合には、場合によっては、好ましくないと判断される場合が含まれる。この場合には15μm以下の6μm、又は10μmといったポリウレタン微粒子を混合物として用いると、15μmになる場合やこれを超える場合はなくなると考えられる。したがって、粒径が6μmと15μmの範囲内として、粒径が異なるポリウレタン微粒子の混合物とすることが有効である。
【0040】
架橋剤については、23〜37重量%を用いる。架橋剤には前記水性ポリ脂肪族イソシネートを用いることができる。この架橋剤についてよく知られており、たとえば、特許第2961475号明細書などに記載されている。前記ジメチロールアルカン酸とポリテトラメチレンエーテルグリコールからなるOH基を用いることにより水性ポリウレタン樹脂として数平均分子量18000から35000程度の水性ポリウレタン樹脂塗料を得ている(特許3493796号明細書、特開平8−359884号公報)。ポリウレタン樹脂の数平均分子量は通常1,2000〜20000、更に35,000の範囲、70000程度の水性ポリウレタンを得ている。ここで数平均分子量とはテトラヒドロフランにポリウレタン樹脂を1重量%溶解してGPC(ゲルーミエーション・クロマトグラフ)で測定し、ポリスチレン換算した数値である。分子量の測定は、以後この測定方法を用いている。最終のポリウレタンの分子量の目標にしたがって、反応に関与するポリ脂肪族イソシネート及びポリオールの分子量を調節することが行われる。脂肪族イソシアネートである、1,4−ジイソシアナトブタン、1,6−ジイソシアナトヘキサン、1,5−ジイソシアナト−2,2−ジメチルペンタン、2,2,4−および2,4,4−トリメチル−1,6−ジイソシアナトヘキサン、1,10−ジイソシアナトデカンなどのイソシアネートなどの脂肪族イソシネートを変性してウレトジオン基、イソシアヌレート基、ウレタン基、アロファネート基、ビューレット基および/またはオキサジアジン基を有するポリイソシアネートを含むものとし、エチレンオキシド単位を含むポリアルキレンオキシドポリエーテルアルコールと反応させてポリイソシアネート混合物を製造する。
【0041】
触感剤であるシリコーン系触感剤について
シリコーン系触感剤を7〜13重量%の使用量で用いる。
シリコーン系触感剤は、トップコート塗膜が形成された仕上がりの状態で天然皮革皮膜の触感が好ましい状態であるようにするために添加される。例としてヒドロキシポリジメチルシロキサン、アミノポリジメチルシロキサン、ヒドロキシポリジエチルシロキサン、ポリジメチルポリエポキシドポリシロキサン、ヒドロキシポリジフェニルシロキサン、アミノポリジエチルシロキサン、ジアルキルシロキサン(アルキル基としては、炭素数1〜10の1価脂肪族炭化水素であり、例えば、メチル基、エチル基、デシル基等)が挙げられる等が挙げられる。反応性シリコーンの分子量は約200〜10000、好ましくは300〜9000、より好ましくは1000〜5000である。
シリコーンは以下の一般式で表される公知のシリコーン樹脂を用いることができる。
【0042】
【化1】

RはCH、又はCである。
nは10以上100以下の整数である。
このシリコーンは改質したものを用いることができる。
改質されたシリコーンは2から3の官能性を有するポリジアルキル置換ポリシロキサンを意味する。このアルキル基は、それぞれ、1から10個の炭素を有し、官能基はカルビノール、アミノ、チオール、エポキシなどの基であってよい。ヒドロキシポリジメチルシロキサン(例えば、ダウ社のDC1248、QA−3667、信越化学株式会社のX−22−160C)、アミノポリジメチルシロキサン(ダウ社のDC−536ゲネシポリマー社のGP−4)、ポリジアルポリエポキシドポリシロキサンなどがある。
これらの分子量は200から10000程度である。
又、反応性シリコーン、ポリオール及びイソシアネートを用いることができる(特開63−317514号公報)。
摩擦力を低くすることができ、すべり特性を向上させることができ、耐摩耗性 などを向上させることができる。
購入して利用する場合には、以下の製品を使用できる。
【0043】
Rosilk 2229W、2000(以上、LANXESS社製)。
HM―183、HM―51―760、HM―18―639、HM―21―720、HM―13―843(以上STAHL社製)。
MELIO WF―5233、WF―5226 conc.(以上CLARIANT社製)。AQUADERM Additive SF、Additive GF(以上LANXESS社製)。
HM―13―632、HM―13―363、HM―13―843(以上STAHL社製)
【0044】
レベリング剤について
カラーコート層の表面にトップコート塗膜形成用組成物をスプレーコートしたときに、表面張力により組成物が水滴状にはじかれてしまう場合がある。このような場合には、均一な膜厚のトップコートが形成されず品質上問題が出る。レベリング剤は、表面張力によるはじきを防止してトップコート塗膜形成用組成物がカラーコート上に均一に拡がるようにするために添加する。
ポリエーテル変性トリシロキサン等のトリシロキサン類、ポリエチレングリコールエーテル等のエーテル類、アルコキシアルキルフォスフェートエステル等のエステル類、アルキルアリルポリエーテルアルコール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、3−メチル3−メトキシ−1−ブタノール、エタノール、2−プロパノール等のアルコール類を用いる。これらを混合して用いてもよい。
購入して利用する場合には、以下の製品を利用できる。
【0045】
AQUADERM Fluid H、LEVELER MA65(LANXESS社製)、MELIO LV03(CLARIANT社製)、LCC LEVELER RS−7(大日本インキ)、比較用レベラーLV3(ユニオンペイント社製)。
【0046】
増粘剤について
トップコート塗膜形成用組成物の粘度が低すぎると、型押しでシボ(凹凸模様)を付けた革にトップコート塗膜形成用組成物をスプレーコートした場合に、皮革凹部に組成物が流れ込み凹部を埋め、反面凸部は薄くなってしまうという問題が起きる。増粘剤は、組成物の粘度を高めこのような問題が起こるのを防ぐ。逆に粘度が高くなりすぎるとスプレーマシンからノズル詰まりのため噴射できなくなるという問題が起きるため、適切な粘度に調整することが重要である。
変性ポリウレタン系樹脂、変性ポリアクリル系樹脂、2−(2−エトキシエトキシ)−2−ブトキシエタノール等の高級アルコール等を使用する。
購入して利用する場合には、以下の製品を利用できる。
【0047】
RM1020(LANXESS社製)、アデカノールUH−420(アデカ)、RM4442(STAHL社製)、皮革用UW添加剤MO及びRO(トウペ)。
【0048】
テーバー摩耗試験及び耐もみ性試験についてはいずれも満足できる結果になっている。この他、熱老化(耐熱性)、耐湿熱性、耐光性及び不粘着性化について、粒径が6μmと15μmの範囲にあるポリウレタン微粒子を用いる場合につてはいずれも格別の支障はないことが示された。
【0049】
上記の試験に用いられた試験方法を以下に説明する。
【0050】
触感官能検査
(1)きしみ音についての触感官能検査
長さ約250mm×幅約180mmの試験片を準備する。塗装面を内側にし、二つ折りにし、親指と人差し指で挟み込むように強く握る。耳元で、握った革を 前後にずらし(滑らし)、「ギュギュ」と音が発生するか、しないかにより、きしみ音を確認する。(強く握った革をずらす際、摩擦抵抗による引っ掛かり、及び滑る(ずれる)際に発生する音を確認する。)
「ギュギュ」という音を「きしみ音」とし、音の大きいものを評価「1」、音のしない(無い)ものを「5」として、5段階で評価する。5人のパネラーの評価により評価し、平均を四捨五入した整数を評価点とする。
(2)ぬめり感についての触感による官能検査について
長さ約250mm×幅約180mmの試験片を準備する。
同じ大きさの板もしくはアクリル板に革を両面テープ等で貼り付ける。貼り付ける際には、革を引張った状態(伸ばした状態)では貼り付けない。
板あるいはアクリル板に試験片を置き貼り付ける。
板あるいはアクリル板に貼り付けた試験対象の天然皮革表面を5人の評価者に触らせて、その触感を5段階で評価する。
触感による感性因子の一つである「ぬめり感」の強いものを「5」として表し、ぬめり感が弱い(又はない)ものを「1」として表す。
5人のパネラーの平均値を四捨五入した整数を評価点とする。
【0051】
以下に実施例により天然皮革の表面に、仕上げ工程でベースコート層、カラーコート層及びトップコート層からなる塗膜を形成し、その評価を行った。仕上工程まで、仕上げ工程までのベースコート層及びカラーコート層の形成の内容は同一であり、トップコート層の内容のみ以下に述べる内容とし、その評価を行った。
【0052】
つやの評価
(1)グロス
グロス計により測定した。数値が大きいほど光沢が強い。
(2)耐光
一定条件下で光をあてたときの変化を観察した。光をあてる前にくらべつやが強くなる場合をgloss upとした。
(3)官能試験
つやの強さ、梨地感(革表面が梨の皮の模様のように見える)、つやむらについて官能評価した。
【0053】
テーバー式摩耗試験について
耐摩耗性を有することは、自動車シート用天然皮革において特に重要視される性能である。耐摩耗性については、テーバー式摩耗試験により評価した。直径150mmの試験片をテーバー式ローターリー摩耗試験機のテーブルに取り付け、その上に荷重1kgをかけたCS−10摩耗輪を乗せて試験機を動かし(試験機の回転速度は70rpmとする)、同時に集塵機も作動させる。試験回数2000回を行い、その後の塗膜の摩耗状況を目視観察し、等級をつける。
評価の等級は以下の通りとする。
等級5:全く観察されない。
等級4:わずかに認められるが、めだたない。
等級3:わずかではあるが、明らかに認められるもの。
等級2:やや著しいもの。
等級1:かなり著しいもの。
4級以上であれば、経験に基づいて自動車シート用天然皮革として好適であると判断する。
【0054】
耐もみ性について
もみに対する塗膜の耐久性について測定するものである。
測定手順は以下の通りである。
長さ120mm×幅30mmの測定対象である天然皮革の試験片を2枚準備する。天然皮革の塗装面同士を合わせ、スコット型もみ試験機(テスター産業株式会社製)にセットする。つかみ幅は30mmとし、試験片がズレないように、挟みねじを締める。
荷重1kg、移動距離50mm、サイクル往復120回/minの速さで、もみ試験を2,000回行う。もみ試験後、試験片の塗膜の割れ、剥がれを目視観察し判断する。
【実施例1】
【0055】
ベースコート層の形成について、
(1)天然皮革基材表面(バフ加工有り)の上に、ベースコートを形成した。手順は以下のとおりである。
ベースコート層は、塗膜層の最下層にあたり、皮革の表面にある凹凸を平らにし、安定して上部に層を形成する準備のための層である。この層を形成するにあたっては、樹脂、顔料、助剤、触感剤及レべリング剤及び水からなる組成物を皮革の表面に塗布した。
固形分となる樹脂と顔料と助剤の割合は、60:15:25(合計100%、重量比)であった。樹脂には、二液性ポリウレタン樹脂を用いた。顔料には色付けしたい色の顔料を用いた。助剤には界面活性剤、増粘剤、調整剤、マット剤、粘着防止剤などを用いた。
樹脂、顔料、助剤、触感剤及レべリング剤と、水分の割合は35:65(合計100%.重量比)である。塗布方法には水溶液を含んだ状態で、はけ塗り、スプレー、カーテン塗装、ロール塗装が適宜選択して使用される。塗布量は80〜120g/m 、塗布後に温風を表面にあてて水分を蒸発させる。
要求されている各種シボをプレス処理にて施した(今回はベースコートの上に行ったが、以後のカラーコートまたはトップコート後に行うこともある)。
空打ち工程そしてステーキング工程により、皮革繊維をほぐし風合いを調整する(これらの工程においても、カラーコートまたはトップコート後に行うこともある)。
(2)カラーコートの形成を行った。
ベースコート表面上にカラーコートを形成した。カラーコート層は、塗装幕の中間層にあたり、皮革を着色するための顔料及び染料を存在させるための層であって、皮革から見てベースコートの上部に設けられている。この層を形成するにあたっても、樹脂、顔料、助剤、架橋剤及び水からなる組成物を皮革の表面に塗布する。固形分となる樹脂と顔料と助剤と架橋剤の割合は、60:20:10:10(合計100%、重量比)である。樹脂には、二液性ポリウレタン樹脂が用いられる。顔料には色付けしたい色の顔料を用いる。助剤には界面活性剤(レベリング剤等)、増粘剤、調整剤、マット剤、粘着防止剤などが含まれる。樹脂、顔料、助剤、触感剤及と、水分の割合は30:70(合計100%.重量比)である。塗布方法には水溶液を含んだ状態で、はけ塗り、スプレー、カーテン塗装、ロール塗装が適宜選択して使用される。塗布量は30〜40g/m、塗布後に温風を表面にあてて水分を蒸発させた。
(3)カラーコート表面上にトップコートを形成した。トップコート層は、塗装膜の最上層にあたり、組成内容は別記の通りであった。塗布量は30〜40g/mとして、ポリウレタン微粒子の粒径とTg(ガラス転移温度)について検討した。
【0056】
粒径が6μmと15μmの範囲にあるポリウレタン微粒子を用いる場合の摩擦特性の触感及びきしみ音の発生を調べた官能評価の結果を示す(図2)。ぬめり感(横軸)について、縦軸はきしみ音について鳴り難いことについての条件を示している。
用いたトップコート塗膜形成用組成物の固形分組成は、二液性脂肪族ポリウレタン樹脂24.7%、二液性脂肪族ポリウレタン・アクリル樹脂17.6重量%、粒径0.3〜30μmのシリカ微粒子4.9重量%、ポリウレタン微粒子9.2重量%、架橋剤29.6重量%、シリコーン系触感剤10.3重量%、レベリング剤3.1重量%及び増粘剤0.6重量%(全固形分濃度は34.0重量%)である。
図中の「微粒子なし」は上記組成からシリカ微粒子及びポリウレタン微粒子を除いた組成、「シリカ微粒子のみ」は上記組成からポリウレタン微粒子を除いた組成である。
天然皮革の表面に形成されるトップコート塗膜の成分は以下のとおりである。
二液性脂肪族ポリウレタン樹脂24.7%、二液性脂肪族ポリウレタン・アクリル樹脂17.6重量%、粒径0.3〜30μmのシリカ微粒子4.9重量%、ポリウレタン微粒子9.2重量%、架橋剤29.6重量%、シリコーン系触感剤10.3重量%、レベリング剤3.1重量%及び増粘剤0.6重量%(全固形分濃度は34.0重量%)である。
ポリウレタン微粒子を加えたすべての場合において、微粒子なし及びシリカ微粒子のみと比較してきしみ音、ぬめり感が改善された。
しかし、改善効果はウレタン微粒子の粒径及びTGにより異なっていた。ウレタン微粒子の粒径が大きいほど、又柔らかいほど(Tgが低いほど)、きしみ音が鳴り難くなり、ぬめり感が強くなることを示している。
10μm以上から15μmの粒径ではぬめり感があり、きしみ音が鳴り難いことがわかる。6から7μmではドライの感じがすること、およびきしみ音が鳴りやすいことがわかる。きしみ音については、ウレタン微粒子の粒径が大きいほど、また柔らかいほど(Tgが低いほど)きしみ音が鳴り難くなることを示している。
ポリウレタン微粒子について6μm未満とすると、きしみ音を解消させる点では十分ではない。また、粒径が大きいほど表面触感が粉っぽくなり、15μmを超える場合には適当でないことを示している。
この場合にもポリウレタン微粒子粒径を限界の値である15μmとすると、十分でない場合があり得ることを示しており、15μmのポリウレタン微粒子を用いる場合の影響を若干和らげることが必要とされるので、粒系が小さいポリウレタン微粒子を混合することが有効であることを示している。
TGについては、TG−54℃、粒径15μmの場合に最も良好な結果であった。TGが低い場合でも(−13℃)、触感を改善する効果は認められるが、粒径6μmの場合には効果が小さい。TGは、−20〜−60℃の範囲が好適である。
つやについては、すべての場合で良好な結果になった。テーバー摩耗性はすべての場合で5、耐もみ性はすべての場合で異常なしであり、シリカ微粒子とポリウレタン微粒子の併用により物性が低下することはなかった。
【実施例2】
【0057】
さらに、表1のブランク1の固形分組成のトップコート塗膜形成用組成物を用いて、粒径0.3〜30μmのシリカ微粒子と、粒径7μmまたは15μmのポリウレタン微粒子を併用する効果を、ポリウレタン微粒子の添加量を減らした場合について検討した。
(1)ブランク1
二液性脂肪族ポリウレタン・アクリル樹脂42.5重量%、粒径0.3〜30μmのシリカ微粒子10.4重量%シリコーン系触感剤12.3重量%、架橋剤31.6重量%、レベリング剤2.0重量%、増粘剤0.6重量%(全固形分濃度は34.0重量%)。
(2)top7、top8
二液性脂肪族ポリウレタン・アクリル樹脂41.4重量%、粒径0.3〜30μmのシリカ微粒子4.9重量%、ポリウレタン微粒子7.7重量%、シリコーン系触感剤12.7重量%、架橋剤30.7重量%、レベリング剤2.0重量%、増粘剤0.6重量%(全固形分濃度は34.0重量%)。
天然皮革の表面に形成されるトップコート塗膜の成分は以下のとおりである。二液性脂肪族ポリウレタン・アクリル樹脂41.4重量%、粒径0.3〜30μmのシリカ微粒子4.9重量%、ポリウレタン微粒子7.7重量%、シリコーン系触感剤12.7重量%、架橋剤30.7重量%、レベリング剤2.0重量%、増粘剤0.6重量%(合計100重量%)。
結果を表3に示す。ポリウレタン樹脂の添加量を7.7重量%とした場合でも、ぬめり感、きしみ音を改善する効果が認められた。粒径7μmの場合には、きしみ音の改善効果がやや小さかった。
【0058】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0059】
シリカ微粒子とポリウレタン微粒子を組合せて塗料中で用いることは表面処理技術として利用できると考えられる。多方面への技術の移行を提案している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二液性脂肪族ポリウレタン樹脂35〜50重量%、二液性脂肪族ポリウレタン・アクリル樹脂35〜50重量%又は二液性脂肪族ポリウレタン樹脂と二液性脂肪族ポリウレタン・アクリル樹脂合計で35〜50重量%、粒径0.3〜30μmのシリカ微粒子2〜7重量%、Tgが−60〜−20℃であり、粒径が6〜15μmの範囲にある複数の粒径のポリウレタン樹脂微粒子を6〜15重量%、架橋剤15〜35重量%、シリコーン系触感剤5〜15重量%、レベリング剤0〜5重量%、増粘剤0〜3重量%からなる固形分(固形分各成分の合計は100重量%)及び水を含む水性エマルジョンからなることを特徴とする天然皮革トップコート塗膜形成用組成物。
【請求項2】
二液性脂肪族ポリウレタン樹脂35〜50重量%、二液性脂肪族ポリウレタン・アクリル樹脂35〜50重量%又は二液性脂肪族ポリウレタン樹脂と二液性脂肪族ポリウレタン・アクリル樹脂合計で35〜50重量%、粒径0.3〜30μmのシリカ微粒子2〜7重量%、Tgが−60〜−20℃であり、粒径が6〜15μmの範囲にある複数の粒径のポリウレタン樹脂微粒子を3〜15重量%、架橋剤15〜35重量%、シリコーン系触感剤5〜15重量%、レベリング剤0〜5重量%及び増粘剤0〜3重量%(固形分各成分の合計は100重量%)からなることを特徴とする天然皮革の表面に塗布形成されるトップコート。
【請求項3】
皮をなめす前の準備工程、なめし工程、再なめし・染色・加脂工程、乾燥工程を経た後、ベースコート層、カラーコート層を形成し、さらにこのカラーコートの表面に請求項2記載のポリウレタン樹脂微粒子を含むトップコートを形成したことを特徴とする自動車シート用天然皮革。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−40259(P2013−40259A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−176996(P2011−176996)
【出願日】平成23年8月12日(2011.8.12)
【出願人】(591189535)ミドリホクヨー株式会社 (37)
【Fターム(参考)】